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IPEの風 11/10/08
IMFだけでなく、アメリカが、ロシアが、中国が、日本が、金融危機に陥った諸国への救済融資を始めています。IMFが強化されて世界中央銀行になるより、ドル体制が国境を超えて再編されるのでしょうか? かつて、インタビューしたある研究者は、ドルの準備を保有する主要国がFRBに参加することを示唆しました。すでに各国通貨は国境を超えて使用され、現地通貨に代替しつつあるのです。
黒字国が赤字国に融資し、その返済条件と、それを満たす経済運営を要求する(もしくは、不況対策や経済再建を支援する)という原則は、IMFであれ、FRBであれ、ユーロ圏やアジア通貨基金であれ、次第に制度化されていくわけです。世界的な規模の財政的刺激策や貿易自由化も、こうした金融協力があって、初めて実現可能になります。
マッケインとオバマの大統領選挙は、最終局面で、世界を震撼させた金融危機に襲われ、マッケインの敗北が確定しました。しかし、黒人と若者を熱狂させたオバマの演説、そして人種的偏見だけでなく、ヒラリーと宗教的右派を破った選挙運動は、アメリカの政治を革新する大きな力になると思います。それはまた、世界各国の民主政治の行方にも影響を与えるでしょう。すでに、麻生でも小沢でもない、日本のオバマを私たちは探し始めています。
演説のうまいオバマの内面が、むしろ非常にタフであることを、評論家は「鋼鉄の拳を包むビロードの手袋」と評しました。彼がシカゴで選挙に負けたとき、「厳しい質問をしてほしい」と親しい友人たちに頼んだ、という話も興味深いです。・・・
オバマの勝利演説が予想された内容であったのに比べて、マッケインの敗北演説に感銘を受けました。「私は光栄にも、バラク・オバマ上院議員に祝福の電話をかけました。」・・・この一言に、集まった支持者たちはブーイングをします。しかしマッケインは、聴衆に聞いてほしいと頼むのです。
「どうか。お願いしたい。われわれ二人がともに愛するこの国の、大統領に選ばれた彼を、祝福してほしい。」
「彼は何百万人という多くのアメリカ人の希望を奮い立たせることで、この長い、困難な選挙戦に勝利した。その能力と忍耐に、私は敬意を抱いた。」・・・「私は常々思っていた。アメリカは勤勉なすべての者に機会を与えるし、それをつかむ意志のある者に報いる、と。オバマ上院議員も、そう信じている。」
「われわれの国は困難なときにある。私は今夜、彼に約束した。私のすべての力を尽くして、われわれの直面する多くの課題に、あなたがわれわれを導く助けになりたい、と。」
「私は、すべてのアメリカ人に。・・・私を支持したすべてのアメリカ人に、強く願う。彼を祝福してほしいし、それだけでなく、われわれのすべての善意と熱意を、次のわれわれの大統領に捧げてほしい。そして一緒に、われわれの違いを克服するのに必要な妥協の道を見出したい。また、この危険な世界でわれわれの安全を確保し、われわれが受け継いだ時よりも、一層強く、素晴らしい国を、われわれの子供や孫たちに残してやりたい。」
「われわれの違いが何であれ、われわれはアメリカ人であり、仲間である。」・・・「もちろん、今夜は、失望に沈むだろう。それは当然だ。しかし明日になれば、われわれはそれを克服するに違いない。そして、一緒にこの国を前進させるだろう。」
・・・同様に、オバマもその勝利演説で、自分を支持してもらえなかった人たちに呼び掛けています。意見は違うかもしれないが、私はあなたたちの大統領になりたい。私はあなたたちの声に耳を傾けるつもりだ、と。
麻生首相や中川財務・金融相、竹中平蔵氏、などが、「アメリカの指導力低下に対して日本が暫定的な指導国になる」、あるいは、「日本のバブル崩壊から金融再生への経験を世界の金融危機に生かす」と何度も主張しました。しかし、少なくとも英米メディアにおいては、全く評価されていません。国際金融サミットでは、新興諸国、特に中国の政策や成長減速が繰り返し話題になっても、日本の提案や姿勢、金融協力を期待する声は、今のところ皆無です。
テレビ番組で観た中曽根外務大臣の、不明瞭で、危機感を欠いた、まったく要点を示せない発言に失望しました。バブル崩壊と金融危機を経験しながら、まだ21世紀のコーナーを曲がることもできない日本を、アメリカや新興諸国の指導者たちが「周回遅れのトップ・ランナー」と見るのも当然ではないでしょうか? ・・・マンガ好きを自慢する麻生首相を、国際社会や世界市民たちはどう見るでしょうか?
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