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IPEの風 10/26/08
地政学的な危機と、国際金融市場の危機、世界貿易の自由化交渉決裂、食糧・エネルギー危機などが、結びつくことはあるでしょうか?
アメリカの新大統領が恐れるイラク、パキスタン、イラン、アフガニスタン。ロシアにとってのグルジア、ウクライナ、バルト3国。中国が関わる北朝鮮、台湾、チベット、新疆ウィグル自治区。あるいは、政治経済体制の不安定化を懸念されるミャンマー、ジンバブエ、スーダン、キューバ、ケニヤ、タイ、ヴェネズエラ、南アフリカ、アルゼンチン・・・
予想外の危機が生じて、個人投資家たちがさらに深刻な危機を予感し、政治家の発言が市場不安を強め、その安定化政策を実行するには通貨・経済面でますます国際協調や統合化を強いられます。しかし他方で、政治やイデオロギーは分裂し、安定化政策の押し付けに反発して地域や民族の自律・独立を求めるでしょう。政治的反対派が資本逃避をあおって、自国政府を転覆することもあるわけです。
逆に、もし主要諸国が金融市場を協調して管理し、予想外の危機にも政治的な強い共同責任や共同行動を優先する姿勢を確立しているなら、投資家は通貨価値の下落や株価の下落を長期的な均衡水準からの一時的な乖離とみなすでしょう。
日本は円高と株安に苦しみ、韓国はウォンの下落に苦しんでいます。アメリカやイギリスの住宅価格が下落し続けているだけでなく、中国でも株価や住宅価格の下落が問題となっているようです。アイスランドでは金利を18%に引き上げて通貨価値の一層の下落を防ぎたいと考えています。市場と政府の役割が交代し、政府が市場に規律や秩序を与え、信頼を回復しなければならないと主張されています。
銀行だけでなく、不況産業や不況地域にも政府雇用や国有化が拡大するのでしょうか? 差し押さえられた住宅を政府が最低価格で買い取り、低所得者向けの公営住宅にするのでしょうか? 政府系金融機関による中小企業への融資を増やし、公共交通手段を充実させ、こうした公的機関による雇用を急速に増やすのかもしれません。
それはセピア色の1950年代、もしくは、戦争や内戦により疲弊した経済を復活させるために政府が全面的に介入する時代や地域を思い出させます。そもそも私たちは、極端なバブルを生じさせる金融市場を規制・監視することに失敗したわけです。信用で膨張した市場の空気が抜ける過程で、誰が苦しみ、誰が救済されるのか? 既存の政治集団や制度、政治体制を超えて、厳しい政治的論争が始まっています。
金融危機は終わったけれど、世界中でヒトラーやプーチン、タクシン、などが権力を握った、という世界の姿を見るのでは、さらに先の危機を予感させます。政治指導者たちがマルクスやケインズを読み直すときです。
国際金融市場の不安から世界経済不況へと危機の焦点が移るにつれて、国際金融制度の改革が議論される情勢になっています。しかし、たとえブレトン・ウッズUを開いても、新しい国際金融制度ができるとは思えません。ヘッジ・ファンドやタックス・ヘイブン対策に終始し(ヨーロッパ)、あるいは、情報の透明性や金融ビジネスの競争促進を唱える(アメリカ)だけなら、あるいは、各国の産業保護主義を追認する(アジア)だけかもしれません。むしろ、すでに地殻変動は起きたのだ、と思います。
短期資本移動の安定化策が必要です。株式や土地・住宅の安定化策。銀行や企業、地域経済や雇用の安定化策。EUやユーロ圏への参加を国民投票で否決しても、金融危機に直面すれば、小国ほど統合化を急ごうとします。資本流入と通貨の急激な増価に苦しむ国は、資本流出と通貨の減価に苦しむ国に資本を環流させるメカニズムを築くでしょう。国境を超えて預金保険制度を構築するために、金融機関の監視強化を受け入れるでしょう。また、株価の暴落と金利低下(国債への資本流入)に苦しむ国は、政府による資本市場への介入や融資に動くわけです。しかし、それが一方的な保護主義となり、敵対的な報復を招くなら、むしろ破滅や停滞をもたらします。
かつて安全保障と国際介入をめぐって、人道援助の回廊、が議論されました。戦争・内戦の拡大する地域で、人道物資の輸送や負傷者、避難民の移動を認める、安全地帯を設けるべきだ、という議論です。国際金融危機においても、安定化の回廊、が必要ではないでしょうか? 各地の安定化策を協調させ、長期的な調整を促すために国際合意されたルールの下で、積極的に国際支援するのです。その一部として、アジア通貨基金を復活させ、将来の共通通貨も議論すればよいでしょう。
金融商品やウォール街がアメリカの大量破壊兵器であったと批判されている以上、金融市場や金融機関、金融商品を、IAEA(国際原子力機関)の核管理体制と同じ、国際機関によって監視するべきではないでしょうか? 日本が世界恐慌の引き金を引くのではないか、として政策介入し、中国のペットフードや餃子、機関車トーマスが有毒で危険である、として安全基準や国際検査体制を要求することを思えば、欧米日が主要な黒字諸国、特に中国や産油諸国にも参加を呼びかけて、国際金融安定化の回廊、を創設するべきだ、と要求されて当然です。
・・・インフレ・ターゲットと完全な変動レート制を採用すること。政府はできるだけ経済に介入しないで、中央銀行の独立性を重視し、民営化と資本市場の内外の自由化を推進すること。教育や医療、年金制度の改革に集中することが推奨されました。万国の労働者は団結せず、市場自由化せよ! 何でも金融資産に変えて「市場で」評価する金融ビジネス万能の時代。・・・政府が全権を掌握し、今すぐ、パニックを止めよ!?
何万光年も離れた宇宙に、私たちは瞬間移動しました。
アメリカの指導力回復を待ち続けるのは間違いです。地平線の向こうで、戦争と金融危機がすでに始まっています。日本政府は韓国と協力し、中国とも話し合って、ブレトン・ウッズUに向けて欧米に提案してください。
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