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IPEの風 9/22/08

日経新聞の社説「中国は景気重視に転じたが」(9/20)は、中国経済の悪化について深刻な見方を示します。中国やロシアがアメリカから資本を引き揚げて、ドル暴落と不況を加速する、という事態は、今のところ、起きていません。

<先週のReview>に書いた感想とは逆に、現実には、欧米の金融危機に対して、中国や産油諸国の政府系投資ファンドが資本を供給してきました。日本の三菱UFJ銀行がモルガン・スタンレーの筆頭株主となり、野村証券もリーマン・ブラザーズの一部を買収するようです。Googleで関連記事を探しますと、たとえば、920日、朝鮮日報の記事で、「日中の金融機関、世界金融市場に大攻勢」とあります。韓国の金融機関が出遅れている、という不満を表したものでしょう(The Economistにも記事があります)。中央銀行の協調によるドル資金供給だけでなく、ブラックストーンや、中国政府系投資ファンド(CIC)が、投資銀行や保険会社などを買収するという噂があります。

一方で、金融機関が国家との深い関係なしには活動できないだろう、という見方があり、他方では、金融市場の統合や証券化は、金融機関が国境を超えて合併しなければ生きていけない、という見方もあります。超国家的な金融規制や救済融資の仕組みが必要ではないか、という議論が起きるわけです。少なくとも、G7の共同金融監督庁が。また、そうでなければ、国境を超えた買収や、その後のビジネスは予測できません。

・・・NHK/BS1「ヨーロッパこだわりライフ」を観ました。「刑務所サンタフ・ブランドでよい社会を」。

ドイツ・ハンブルグのサンタフ刑務所の話です。再犯で戻ってくる囚人が多い。そこで所長は、再犯を減らす工夫として、刑務所ブランドの商品を開発しました。

再犯の問題は、彼らの多くが定職に就かず、働いたこともない、ということにある、と考えたからです。仕事のやりがいを知ってほしい。一生懸命やれば、仕事は楽しい。新しい商品の企画や生産、販売を、刑務所の中から社会に対して行って、仕事の意味を示そうとしました。

企業として商品を販売するために協力した外部の専門家は、囚人たちが示すユニークなアイデアを喜んでいました。Tシャツにプリントするロゴマークは、<終身刑>。あるいは、<仮出所>。など。こんな商品では売れないんじゃないか・・・? いや大丈夫。世の中には束縛されている(と感じる)人は多くいるから、と。

囚人たちが考えた脱獄ゲームもありました。他にも、囚人による料理のレシピが人気とか。彼らは刑務所内で、ある程度、自炊できます。もちろん、食材と道具は限られていますが、それを工夫して自分で料理する。コメントも面白い。・・・まるで鶏に手錠をかけるみたいだ。

このレシピ集にあるイラストは、殺人罪で服役していたスヴェンさんが描きました。彼はこの作品で、料理部門の国内最高イラスト賞を受賞し、仕事を得たそうです。スヴェンさんには才能があったでしょうが、賞を与えるドイツ社会も立派です。

もう一つのドイツの社会問題として、犯罪被害者の支援が紹介されました。犯罪被害者は、事件の後も心身に苦痛や不安を感じ続けます。日常生活に戻れず、社会的に孤立する場合もあります。サンタフ刑務所は、利益の一部を犯罪被害者の支援団体バイサーリングに寄付しました。被害者たちは、最初、それを嫌いましたが、償いたいという気持ちを受け入れるようになったそうです。

再犯を防ぐには、被害者がいること、その痛みを知ることが重要だ、と刑務所長は語ります。犯罪者はいつも罪から目を背ける。自分が犯した罪を知ることで、新しい道を見出す。・・・

ロイター通信の記事「金融不良資産の買い取り、米政府の唯一の選択肢である可能性」(9/22)は、不良債権の公的買取機構を作る場合、買取価格の決定が難しいことを詳しく述べていました。入札方式も完全な答えにはなりません。

国際金融は何のためにあるのか? ロスチャイルドやモルガンの時代に戻って、投資銀行や個人資産家・富裕層が国際金融システムの安定化に尽力する超国家制度を、ポールソンたちは築こうとします。その際、刑務所と、被害者の救済、罪の意識を忘れずに。

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