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IPEの風 9/1/08

日本のNGO「ペシャワール会」のスタッフ、伊藤和也さんが、農業支援のために暮らしていたアフガニスタン東部で殺害されました。地元のインタビュアーからマイクを向けられて、代表の中村哲氏は「アフガニスタンで長い間、復興のために協力してきた。これまで多くのアフガニスタン人の仲間が亡くなったが、今、日本人の伊藤さんも亡くなった。だから私はアフガニスタンやこの地の人々を責めはしない。協力を続けていきたい。」 と答えていました。アフガニスタンの記者がうなずいたように見えました。

早速、テロ対策特別措置法の延長に結びつけた議論が出ました。いや、もっと出るかと思いましたが、わずかに言及されただけです。自民党も民主党も、安全保障を次の選挙の争点にしたくない、ということでしょうか?

総合経済対策といっても、石油価格の上昇を補填する対策、に見えます。しかし、価格が上昇したので補てんする、というのは間違いです。派遣労働者・貧困家庭や中小企業、地方経済、などへの財政的な支援(定額減税)もあるようです。しかしその目的は、もちろん、選挙対策です。民主党から何人か抜けて、自民党に移るわけでもなく、新党?を作ったような「政治」。そして、アメリカでは、オバマもマッケインも、その副大統領候補の指名を、選挙の投票行動から計算した組み合わせにしました。

民主党のジョー・バイデンは白人で、労働者階級にも人気があります。上院の外交委員会委員長を務め、議会対策の経験も豊富です。イラク問題でマッケインの攻撃に対抗できるでしょう。他方、共和党のサラ・ペイリンは女性で、44歳のアラスカ州知事、元準ミス・アラスカです。また5人の子の母であり、妊娠中絶や銃規制、ゲイの結婚に反対する明確な保守派です。アメリカ初の女性副大統領となれば、ヒラリーを抜きます。

つまり、日本・自民党も、アメリカ・民主党も、アメリカ・共和党も、経済改革には特効薬がなく、後ろ向きだ、ということです。

大阪市が、阿倍野再開発の収支見通しは2100億円の赤字であろう、と報告しました。安倍のは私の故郷であり、自分のすぐ近くに2100億円の失敗が存在することに驚きました。商業施設の賃貸、マンションの分譲、といった計画をもとに、バブル期にも続けた投資が失敗だった、というのです。背景には、中央政府からの財政移転メカニズム、建設業界と政界との癒着・圧力、バブルに浮かれた金融業界、などがあったでしょう。だれのための開発だったのか、という批判を、誠実な検証作業として示してほしいです。

他方、朝刊には、830日、鳥取県境港市で行われたゲゲゲの鬼太郎「妖怪そっくりコンテスト」が紹介されていました。政治が既得権に支配されず、草の根の社会運動として、地方からワシントンを変えよう、とオバマは主張し、多くの若者が参加しました。日本でも、自然を守り、地域経済を活性化するのは政治の役割です。本当の政治家がいたら、国民にとって重要な長期的課題を示し、合意を形成して、旧来の枠組みを超えた協調行動を実現するでしょう。

高速道路料金の大幅割引はいいな、と思いました。週末や深夜には、料金を半額にしてください(週末の深夜は4分の1です。ただし、トラックは除く)。金曜日の夜から月曜日の朝まで、レンタカーを安く借りる週末パックが良いでしょう。土曜日の晩は、地方の観光地に家族で一泊します。

都市再開発は民間のブローカーがいくらでも企画を立てるはずです。政府は基準を示すだけで十分でしょう。しかし、地方の自然環境を守り、若者たちが参加するような地域経済の活性化は、ぜひ地方と中央が政治協力して進めてください。

政治の中にはいろいろな要素があると思います。旧来の利益集団に依拠して動くのではなく、それを超えてフロンティアを築くことも「政治」でしょう。都市ではなく、地方や農村で、多くの新しい試みを支援してください。

「民家全焼3兄弟死亡」の記事に同情します。8歳、5歳、3歳の兄弟が亡くなりました。今朝、BBCのインターネット画面で、うつろな目をした婦人の白黒写真を観ました。ネパールの貧しい農民たちが出稼ぎに行き、政府と毛派ゲリラとの内戦で行方不明になった、その関係者たちの写真でした。妻や子供たちが、何年も、彼らの帰ることを信じて待っています。

同じ命であり、家族です。世界のフロンティアで日本の力が発揮できるなら、平和で、繁栄した社会の再建を支援し、彼らと協力するために行動してはどうでしょうか? ときには個人が政治の制約を超えて行動するとしても。

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