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IPEの風 5/19/08

グローバリゼーションへの社会不安とナショナリズム,少数派のテロによって,リベラルな国際秩序は崩壊するのでしょうか? あるいは,「グローバル・ラディカル・モデレーツ」と「民主主義の同盟」が,次の国際秩序に向けた改革を提案できるでしょうか?

「グローバル・ラディカル・モデレーツ(GRM)」は,私が勝手につけた名前です.グローバリゼーションをめぐる様々な批判,サマーズの提案とその批判,フリーデンやアッシュの示す世界資本主義の改良,などを念頭に,グローバリゼーションに対抗する次の社会勢力を考えました.世界的な規模で連帯し,中産階級を社会的・政治的に復権させるため,根本的な社会制度の改良を推進します.

ますます多くの投資ファンドや多国籍企業が,世界中の技術者や労働者を利用して,地球を何周もするような情報処理の過程を前提に,投機や生産ラインを展開するとき,使い捨てられる一時雇用の労働者や出稼ぎ外国人は社会の底辺に滞留するしかありません.同じ社会的分業に帰属していながら,こうした極端な富と権力の配分を,安定した秩序として長期に維持することができるとは思えません.

NHKスペシャルの第1回「沸騰都市ドバイ」を観ました.世界の全生産額の5%,20分の1を買い占めることができる石油の富は,産油国の基盤です.例えばドバイは,人口140万人の内,半分はインドなどからの出稼ぎ労働者であり,都市建設の設計・管理は欧日の企業が出向きます.海のナキール,陸のエマールという,二つのドバイ開発企業が巨大な開発プロジェクトを動かし,世界1の高層建築物,130階以上のブルジェドバイや,島々を富豪たちに分譲したリゾート開発,あるいは,海を埋め立てて人口の陸地を造形します.

これは何なのか? 何が起きているのか? どうなるのか? 未来を想像したくなります.たとえば,1.石油の富に依拠した地主たち(金融と歓楽の都は繁栄する),2.フロンティアの拡大(激しい変動をともなう高い成長),3.競争と過剰投資,4.安全保障の欠如,5.世界都市の社会的二極化,について.

また,第2回は「ロンドン」でした.左派のリヴィングストン市長は,ロンドンを世界の首都として復活させるため,新興諸国の人と資本を集めます.ロシア,中国,インド,アラブなどから投資が流れ込み,また証券市場には多くの企業が上場しました.しかし,富裕層による購入によってロンドンの住宅価格やサッカー・チケットは高騰し,ポーランドなどからの移民労働者がイギリス人労働者の職場を奪ったという反感を強く買って,リヴィングストンは落選します.

「民主主義の同盟」は,アイケンベリー(G. John Ikenberry)のような,リベラルな国際主義を支持する意見を考慮したものです.17日のReviewで紹介したように,中国の台頭をアメリカだけでなく民主的な西側同盟がリベラルな国際秩序に迎えるなら,そのショックを平和的に吸収できる,と考えます.(同様に,北朝鮮の非核化や朝鮮半島に関する米韓同盟の重要性も主張しています.検索してください.)

先週のReviewで紹介したDavid Shambaughの論説(“China's competing nationalisms”)によれば,日本はもちろん,西側諸国を不安にした中国のナショナリズムは,一方で,その歴史的に形成された中国人の魂を国際社会(もちろん,日本)が理解し,また中国人が国際秩序の改革に参加することで,次第に穏健化するでしょう.また,中国自身が国内の社会・政治改革を実現する過程で,国際秩序の維持に積極的に貢献する,自信に満ちた開明的な国家として,中国の威信を示す集団的意欲にもなるのです.

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