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IPEの風 3/31/08

アメリカの新しい大統領が(オバマかクリントンか,もしかするとマッケインかもしれませんが),誰であれ,朝鮮半島の統一と,中東和平(パレスチナ難民問題の解決),チベットと台湾海峡の民主的な合意による安定化に成功する可能性はどのくらいあるでしょうか?

日本でも,その率直さに,少し驚く事件が起きました.何か・・・が動いたように思いました.

福田首相が道路特定財源の暫定税率について大胆な提案をしたのです.自動車の中で会見を聞いていた私は,良い提案だ,と感じました.しかしその後のニュースには否定的な反応が多いようです.なぜこんな時期に,自民党の中でも委員会でも議論しないまま,提案したのか? 議員たちは皆,不満な様子です.

言い過ぎかもしれませんが,ブレア元首相がイラク攻撃を命じた演説(あるいは,小泉元首相が街頭で改革のために支持を訴えた瞬間)を連想しました.今では,イラク戦争の結果は非常に悪く,ブッシュ大統領との共謀,国民に対する情報操作においても,ブレアのかつての人気も失われました.しかし,政治と国民を動かす点で,トニー・ブレアやビル・クリントンは,日本にぜひ輸入したい(!)雄弁政治家であったと私は思います.

「見直すべきは大胆に見直す」と福田首相は語りました.演説には4つの提案が示されました.

1.(国会で追及されたような)道路予算の不適切な支出について,国民が不満を感じているのは正しい.公益法人の廃止,天下りの排除,無駄な支出をなくすべきだ.

2.道路特定財源制度を廃止し,09年度から一般財源化する.そして,地方財政に悪影響を及ぼさない措置を講じ,温暖化対策,救急医療体制の整備,少子化対策にも使う.

3.暫定税率を検討する.その際,温暖化防止のためにガソリン税を考慮している国際的動向,地方の道路整備,国と地方の厳しい財政状況を考慮する.

4.道路整備計画も見直す.10年間は長すぎるし,与野党で協議して必要な道路を決める.

その通り.もし福田首相が,記者会見ではなく,国会の演説でこの提案を行ったとしたら,国会が首相を動かして画期的な転換を実現した,という勝利の声で迎えるべきではなかったか? これは,自民党の選挙対策や,制度の権益に固執する者たちの圧力を,もっともらしく改革として粉飾した提案ではないと思いました.

暫定税率を延長せず,ガソリン価格を下げることは,参議院で多数を占めた時点で民主党が拒否権を得た争点でした.その意味では民主党幹部の作戦勝ちです.しかし,日銀総裁人事もそうでしたが,政治家たちは本当に国民の利益を考えているのか? という不満が残ります.

「国民生活に大きな混乱を生じかねない」,財政再建や温暖化防止を重視する,道路族や自民党・官僚制度の支配する特定財源を廃止して,国民生活にもっと必要な用途に支出する,という提案の中身を野党は拒むべきではないでしょう.具体的な協議を始めてください.

自民党の派閥や,支持組織を離れて,首相としての見識を示した緊急会見は,福田首相が孤立するだけであれば,「指導力の欠如」として忘れられるでしょう.また,このまま自民党の内紛で辞任するなら,安倍前首相の呆然記者会見と比べられるだけです.あなたが政治家として得た経験と全能力を傾けて,国民を動かし,与野党の姿勢を正してください.

アメリカの政治指導者が持っているのは,世界最強の軍隊や海外の軍事拠点,世界最大の金融市場,事実上の世界通貨を発行する権限,世界共通言語で発信する情報と,それを支える分析や理論化のネットワークやアメリカ系の世界企業,音楽・映像などの文化,そして,国際秩序・制度の改編,撤廃,創設に関わる決定的な発言力・拒否権,などです.

その上で,最も重要な力とは,指導者個人がそれらを駆使して未来を開拓する意志,政治的な支持を訴える優れた言葉を発する才能ではないでしょうか?

新しい大統領が,朝鮮半島,中東和平,チベット,台湾で8年間に成功する確率は,そう,・・・50%です.日本の政治は,むしろEUに似ているのかもしれません.共通の通貨・金融政策,共通の外交・安全保障政策,共通の軍隊を,日本政府は国民に示さなければなりません.アメリカが動くこの8年間に,日本政府が自国民だけでなく,アジアの人民に対して呼びかける確率は,・・・5%? ・・・0.0000005%?

内外の秩序が転換する中で,日本のリベラル派や社会正義の要求が沈黙したままではいけない,と思いました.

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