******************************

IPEの風 3/10/08

自民党にも,民主党にも,一人一人が抱える問題を解決するために必要な公的支援や制度を積極的に整備する意欲が感じられません.

なぜもっと地方の衰退や老人介護・年金の問題,若者の不正規雇用や低賃金,住宅や交通事情の改善,自然環境や歴史的・文化的景観の保護・再生,森林の回復と花粉症対策,医療・保険制度,などを取り上げて,互いに改革案を示し,議論しないのですか?

東京へ行って,NGO訪問や文献収集をしました.グリーン・ピースとオックスファムに行ったのは,以前,ゼミに講師を招いてお話を聞いたことがあったからです.また,国際協力NGOセンター(JANIC)にも行きました.日本のNGOを知ることが主要な関心でした.そのすぐ近くにあるシャプラニールも訪れました.

新幹線の中で,NGOとは何か? と考えました.NGOは社会にとって何を実現しているのでしょうか? 自分が正しいと思うことを実行せよ,という教えと,地獄への道には善意が敷き詰めてある,という警句との間に,私たちは取り残されています.小さな善意と,大きな社会改革との間を結ぶものが,何かないだろうか? と思いながら,私はNGOに関心を持ち続けました.

政治のネットワークが機能するのは,陳情・救済・補助金型だけでなく,そのような善意や改革意欲を吸収するネットワークとして信頼されるからでしょう.日本の政治は目詰まりを起こし,誰の声に応えているのか,分りません.

民主主義は住民の声を反映することで権力を委ねられると思います.しかし,そのためには情報の開示や伝達,その分析や分りやすい解説,さまざまな異なる視点,要点を衝いた討論の積み重ね,執行権力者へのチェック機能,などが必要です.ところが,メディアは権力者によってコントロールされ,産業界や軍隊が自分たちの都合の悪い情報を流さないように圧力をかけると,非常に弱い,と聞きます.

どこの国にも,愚民化政策,といわれる傾向はあるでしょう.テレビや新聞の主要メディア,イエロー・ジャーナリズム,大衆紙,週刊誌,インターネット上の投稿サイト,2ちゃんねる,書評紙,読書クラブ,機関紙・広報,広告,・・・ 政治や社会への関心より,パンとサーカス,・・・スポーツ・スキャンダル・セックスに向かいます.そんな中でも,NGOは独自の情報網や判断基準,政策志向を示します.

グリーン・ピースは西新宿の東京都庁に近いのですが,再開発地区にも近く,表通りから小路を入ると,ここが新宿か・・・? と思うような住宅の建て混んだ土地にありました.オックスファムは,御徒町の駅を出てアメ横から,地図を参考に歩くとすぐ分りました.迷惑だろうな,と思いながらも米良さんの時間を割いてもらいました.どちらもボランティアの若者たちが熱心に話し合う様子は印象的です.JANICとシャプラニールは西早稲田にあり,隣接しています.高田馬場から古本屋などを横目に,早稲田大学のそばを通ってたどり着きました.

花粉症,食糧自給率,安全保障,捕鯨団体,開発援助・里親基金,若者の雇用促進,起業支援,自然環境の保護・回復,・・・変えてほしいことは一杯あるはずです.だから今すぐ,政府ではなく自分たちで,NGOを作ってください.NGOの誕生から成長,成熟,老成,死滅,もしくは,世代交代,若返り,まで,概観できる指導書があれば,もっと多くのNGOが誕生するでしょう.NGOのネットワークが社会変化のシリコン・バレーになります.

自分たちの善意なんだから,その社会的な影響や経済的・政治的評価など関係ない,という姿勢もあるでしょう.だからNGOが相互に協力し,知識や情報をプールしておくことは重要です.方針変更や合意形成,組織の管理,人事と会計,法律の整備,説明責任,NGO同士の連携,政府との関係,国際協力,現地情報,企業との関係,成果・評価と情報公開,政策としての評価,などを共有し,たとえば,サミットに向けた政策提言を作るために集まり,互いに意見をぶつけ合った,というのは興味深いです.

政府も答え(有効な手段や資源・情報)を持たないことが増えたからかもしれません.欠乏の経済学から,エリートの共産主義へ? 資本主義を介して欠乏は解消され,世界は,抑圧された労働者階級の苦闘から,次第に,穏健なエリートたちの文化生活に向かうのだ,と思いたいです.

******************************