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IPEの風 11/19/2007

NHK・BSデジタルで,「ニューヨーク街ものがたり:人気作家は警察官」を観ました.コンロンさんはニューヨーク市警の警察官です.

歴史的に多くの移民が,ニューヨークに上陸しました.アイルランド人は最下層の移民として,この街の警察官や消防士になりました.

コンロン氏はハーヴァード大学で学び,作家を目指しました.しかし書くべきテーマが見つからない.半年かけて世界を旅したそうですが,それでも見つからなかった.

父親が警察官だった.だから,というのか,30歳で新米警官になり,ブロンクスを巡回するようになりました.そして,現職警官がその経験を基に, “Blue Blood” という最初の小説を書きます.そこには,ニューヨークで暮らす人々の生活とさまざまな思いが詰まっているのでしょう.

コンロン氏は作家になっても警察官を辞めません.4日働いて2日休む,という警察官の勤務パターンを守り,その休日に作品を執筆しています.もし警察を辞めれば,毎日,小説を書かなければならない.まるで宿題みたいに.それじゃあ,楽しくない.

番組には,アイルランド系移民のコミュニティーが助け合って生きる様子が紹介されていました.白血病の息子を助けたい,とそのお母さんがパーティーを開きました.多くのアイルランド系住民たちが集まって,母子のために寄付してくれます.

今週,ここに紹介する論説のなかでは,朝鮮半島の南北統一を共同で管理する「暫定連邦政府」の構想が興味深かったです.

韓国政府は統一の経済的コストがあまりにも膨大であると推定して,このままでは決して統一したくない,と思っています.北朝鮮はあまりに貧しく,独裁体制が社会インフラや教育を荒廃させてしまいました.他方,韓国の一部(左派)が期待する中国型の市場改革も,北朝鮮の支配層に決して受け入れられない,ということです.なぜか?

・・・もし改革が始まれば,南北の格差が大きいために,北朝鮮から多くの国民が南へ移動するだろう.その過程で,南の賃金は下がり,社会インフラは不足し,失業も大幅に増えて,犯罪組織が不満を吸収し,治安を悪化させるのではないか.改革が進んでも,独裁体制下でまともな教育や職場を得られなかった人々は,その後も長期にわたって統一された朝鮮半島の経済や政治のシステムに対応できない.他方,南の資本は北に流入し,土地を大規模に買収する.・・・

・・・漸進的に,緩やかに,改革を始めたとしても,人々の行動や情報は自由度を増し,外部との交流が始まる.いったん軍事的・政治的な抑圧体制が弱体化すれば,一気に,堰を切ったような形で体制は崩壊に向かうだろう.どのような合意があっても,北朝鮮の政治システムや軍隊において特権を享受している人々が,その地位を保つことはできない.そうであれば,彼らが現体制を死守し,どれほど小さな改革にも反対を唱えて,妨害することは間違いない.・・・

暫定連邦政府は,こうした困難を克服するために工夫されます.労働力の南北間移動を禁止し,政府が厳しく管理します.同時に,土地買収や,労働者の搾取も禁止します.南は財政移転を抑制しつつ,北の社会インフラや教育システムの復興を助けます.低賃金を利用した輸出加工区が開設されるでしょう.技術の移転や北側における都市の整備,企業の育成にも合意します.

ドイツのように,通貨を1対1で交換するような間違いは避けられるでしょう.南アフリカで黒人政権が行ったような,資産や社会的な地位を強制的に再配分する必要もないでしょう.EUのようにコストを分散する市場はないけれど,日本や中国,アメリカは積極的に市場を提供し,長期資本も供給できるはずです.旧支配層は,抑圧体制に加担した罪を免責します.

ベルリンの壁や,メキシコ国境のように,人の移動を厳しく管理する時代がいつまで続くのかは分りません.しかし,改革が成功することで,今の子供たちが大人になるころには,互いに移住したり,結婚したりできると思います.

・・・北の出身であるけれど,ソウル大学で学んだ青年が,世界各地を旅してから釜山の警察官になる.そして,日本との経済統合によって,さまざまな国から人や物が集まり,活気にあふれる街を巡回する日々を送りながら,新しいアジアの小説を書こう,と思いつくのです.

・・・拉致家族も,北の核とミサイルも,中国の台頭も,日本社会の衰退も,朝鮮半島を統一する暫定政府構想を日本が支持することで解決する.日本,中国,アメリカ,ロシアは,この構想を韓国政府が推進するための条件整備に協力します.

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