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IPEの種 11/20/2006
ETV特集「お金儲けは悪いことですか?」を観ました.その後半だけ.
IT産業の若い経営者や,映画監督,アーティスト,NGOの代表,などが「働くとはどういうことか」を語っています.期せずして(?)IT企業の経営者とその他の仕事に誇りを持つ人たちとは,かなり異なる労働観を示します.
一番面白いと思った質問.「どういう奴が許せないか?」 ・・・「ここでの使命をどうしても理解しない奴」「自分の若い頃.利己的な奴.」 ・・・「フリー・ライダー」
「贅沢だな,と思うときは?」 ・・・「昼寝するとき」「森の中を歩く」「仕事の後で,仲間と温泉につかるとき」 ・・・「自分が最終の意思決定者であること」
休日のお昼.近くの巨大商業施設に車で出かけると,駐車場は一杯.フード・コートも人で一杯です.たいした食事でもないし,たいした値段でもないけれど,この一帯の商店や飲食店から客を奪ったことは確かです.つぶれる店もかなりあるでしょう.「なんでもカネ次第・・・か」と,私はつぶやきました.
松阪の単独交渉権獲得に60億円が支払われる.そんな話から,ゼミでは所得格差や資産の社会的意味を考えました.研究会では,チリのネオリベラリズム政策と所得分配に関する報告の後,成長と不平等との関係について,意見を聞きました.
・・・「資本(資本主義的な所有制度)は,偉大な文明化作用をもたらす.」
中国でもインドでも,急速に成長する社会は所得分配が極端に不平等化します.沿海部の都市で暮らす人々や,IT産業でにぎわう高級住宅地は,非常に限られた人たちの希望です.しかも,彼らが豊かになることで,社会全体が動き始めたことは確かです.しかし,拡大する貧富の差が,社会を改善する力にならない,と分かったら,隣人たちを不安にするでしょう.
以前,ソビエト連邦崩壊による社会的混乱を経験した諸国について,そこで暮らした(崩壊当時,20歳だった)若者のドキュメンタリーを観ました.質問.「あなたは子供たちに何を望むか?」 ・・・「人をだましてはいけない.裕福でなくても,正直に生きて欲しい.」「絶対に夢を諦めない.」「家族を大切にしてほしい.」 ・・・崩壊する社会秩序を,若者として生きた大人たちが残す,苦く,重い,言葉です.
・・・「戦争は,偉大な平等化作用をもたらす.」
偉大な文明は,帝国や戦争に至るものだ,という予言は確実に的中しそうです.その理由やメカニズムを正しく理解することは難しいとしても.大きな戦争が,時に,衰退した社会を活性化し,蘇えらせることもあります.マルクス主義者なら言うでしょう.ハイパー・インフレーションや恐慌,戦争によって,資本主義システムは次の蓄積を開始する条件を準備する,と.
民主党が議会多数派を占めるアメリカで,ブッシュ大統領のイラク政策や通商政策,最低賃金や社会保障制度,企業や銀行への監視,さまざまな調査委員会,弾劾裁判に関心が高まっています.アメリカの外では,国際安全保障の合意やコスト分担,ドーハ・ラウンドとWTO,そしてドル暴落への不安が生じています.環境問題やAPECを舞台に,アメリカの一方的な指導力に代わる国際協調,指導的な役割をめぐる主要諸国の積極的競争が起きるでしょう.
人と同じように,国家も「琢磨する」ことによって,優れた秩序を示すでしょう.発達した文明として,また,平等を実現する社会的意志として,資本も戦争も必要ない世界があるはずだ,と想いました.きっとどこかで,誰かの経験や会話から,構想されつつあるでしょう.
・・・「ユートピア的想像力」.次の政変は? あるいは,小説は?
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