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IPEの種 11/13/2006

「なぜ犬や猫,鳥に同情するのに,魚には同情しないのですか? 」

もちろん,私はマグロではないし,地球の気持ちも分かりません.同情や共感というのは,たとえ親しい人間の間でも,容易に成立しない感覚です.しかし・・・子供が持ち帰った金魚を,数日,水槽で飼いました.すべて死なせてしまったとき,私は彼ら(魚)に同情し,彼らの命を奪う結果になったことを謝りました.

100円で食べられるすし屋,100円で買える古本屋は,私がデフレを嫌わない理由の一つです.しかし,そのせいで海からマグロや大型の魚が絶滅し,また,多くの特徴ある古本屋が廃業するとしたら,その意味するものが何であるのか・・・考えないではおれません.

「金持ちのまま死んだら,浮かばれないぞ!」(アンドリュー・カーネギー)

少しは日本の資産家たちも,社会事業や慈善事業によって,有名になって欲しいです.新しい奨学金制度や,貧しい国からの国際交流基金を立ち上げてみてはどうでしょうか?

「学校でまじめに勉強しなさい.さもないとイラクの戦場に送られる!」(ケリー上院議員)

日本で自衛隊を担っているのは誰か? カンボジアやイラクに派遣された自衛官たちは,今,何を想うのでしょうか? 日本の政治家たちは,戦場に足を運んでいるでしょうか? まじめに勉強しても・・・

私は,また,ドルではないし,波間を漂うボート・ピープルでもありません.けれど,イラクやパレスチナで死ぬ子供や親の無念,いじめで自殺する子供や親の悔しさ,を想像します.

ウォルター・リップマンの名著,『世論』は,戦争が実は終わっているのに,まだ戦い続けている人々の話で始まります.

リップマンは,インターネットの情報や,メディアの買収を,どのように考えるでしょうか? 彼は,今回の中間選挙について何を想うでしょうか? GoogleWikipediaではなく,ジャーナリズムの良心をもつ人たちが集まって,小さな,すばらしい新聞を作る,そんな話を読んでみたいです.

「この国には何でもある.ただ,『希望』だけがない.」(村上龍)

日本の不良債権処理が遅れた理由は? 「(この国には)『真実』がない.」(フェルドマン)

『希望』も『真実』もない国.なぜなら,世界史と同じように,自分の受験科目ではないから.「良い大学を出て,良い会社に入る.」 若者たちは,まるで,その前後をおまけのように考えているのでしょうか? いや,それさえも,勉強する理由にならない・・・

ひとつ,楽しい文章を見つけました.日曜日の朝日新聞・書評欄です.最相葉月氏が書いた,三浦しおん『風が強く吹いている』の書評です.

「目的の定かでない行為を無性に必要とするときがある.」・・・それは,箱根駅伝に没頭する若者たちの騒動.・・・「著者がこの直球勝負の物語で描いたのも,小説によってだけたどりつける『もっと遠く,深く,美しい場所』ではないか.」

美しい海,山,野生の生き物,社会のもたらす富,慈善,学校,子供の幸せ,安全保障,世界通貨,・・・ それらが損なわれることに,誰も責任を持たず,痛みを感じない.

人は,鬼にも畜生にもなる.池波正太郎の『鬼平犯科帳』を,イラクで翻訳出版してはどうでしょうか.

「人間とは,妙な生きものよ.」・・・「悪いことをしながら善いことをし,善いことをしながら悪事をはたらく.こころを許しおうた友をだまして,そのこころを傷つけまいとする.」

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