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IPEの種 6/19/2006
美しい伝統的な町並みや,静かで住みやすい環境,向学心に燃える若者のためのキャンパス,・・・などを育て,守ることは,非常に難しいわけです.タスマニアの湖に住む巨大ザリガニも,ヘイ・オン・ワイの古書街も,急速な変化の波を避けがたいように.
北朝鮮は新型の弾道ミサイル,テポドン2号を発射するようです.もし日本が,もっと人口や産業を分散し,弾道ミサイルの発射を阻止できるほど強固な軍事協力関係と,ハイテク防衛網を持つことができていたら,北朝鮮との交渉に余裕と決断力を示せるでしょう.
毎年,この季節には大量の雨が降ると分かっています.しかし,沖縄の雨は丘陵地を崩し始めました.各地で梅雨末期の集中豪雨のように激しく降っています.空からこれほどの水が供給されるなんて・・・! 砂漠や岩山ばかり見て育った人々は,神や,悪魔の力を想像して,きっと怖れることでしょう.しかしまた,これがもし人間の作り出した異常気象であるとしたら,自然を破壊せずに生きる道を見出すべきだ,と実感します.
かつて,日本に着いたヨーロッパ人は,その緑の多さと美しさに圧倒されたと言います.ところが日本の森林は,もはや花粉症の原因として憎まれる程度で,森林の管理が放棄され,雨を吸収する力も少なくなっている,と聞きます.せっかくの肥沃な土地が,美しい森林や水田ではなく,アスファルトの道路,鉄とコンクリートの建造物に覆われています.梅雨がもたらす水も,清流をなして生物を育てることは無く,排水溝から地下水道に捨てられます.両岸をコンクリートで固めた河川が,自然に氾濫する平野も無いまま,濁流となって海に土砂を運ぶだけです.
雨の休日,住宅地を縫うように走る道路を乗用車が占拠し,ふと横を見ると,道路わきを汚れた大量の水が流れています.こんなとき私は想うのです.本当は自分が静かな森林に住んでいて,この雨がやんだら,近くの小川に残った大物の魚を釣りに行こうか,などと空想をめぐらせていたら,どんなに楽しいだろう・・・ と.
ルイス・モデルを,W.A.ルイスの長期波動論と組み合わせて整理した拙論を,大学院のゼミで取り上げました.ルイスが考えたように,農村社会から都市化と工業化を経ながら,さまざまな革新を二重経済と,世界的な分業=貿易,長期波動の形で波及させてきたことに,私は深い感銘を覚えます.さまざまな政治的介入によって格差の解消には時間がかかりますが,温帯地域は豊かな農業国となり(そして,ハイテクとサービス部門でほとんどの人が雇用される),人口過剰の熱帯地域は工業化して活発に製品を輸出するでしょう.
もし政治的な介入が無く,移動を嫌う人々の頑迷な保守主義も無ければ,日本という土地には,この降雨を活かした豊かな農業と,自然に逆らわない産業が繁栄しているのではないか,と思います.平野には輝くような水田が広がり,山には森が生い茂る.美しい緑と清流を泳ぐ魚たちを求めて,山荘から山荘に山歩きを楽しむ家族旅行者と釣り人が世界中から集まってくる・・・ という光景を想像してみてはどうでしょうか?
日本人(5000万人?)のほとんどは,各地の町(数万人程度)や村(千人以下)に分散して,森の端や川辺りに住みます.豊かな農家と公務員,流通・消費・教育・医療=介護サービスなどを除けば,高度な工作機械や精密機器,アニメ製作や工業デザイン,ゲーム,ハイテク・ソフト,ジャーナリズム,文学,そしてさまざまなロボットを製作して,世界に輸出しています.
今,豊かな雨と森に恵まれながら,私たちは緑を死滅させた灰色の住宅地に暮らし,渋滞した道路で停まったままの自動車から,下水に流れ込む泥水を眺めています.石油富豪が砂漠にスキー場を作ったり,カリフォルニアの裕福な住宅にはプールがいつも水をたたえていたりするのと同じように,日本人がこの雨や森を捨ててしまうのは,天に唾する愚かな行為です.
・・・セレベス島のツカツクリ(キジのような鳥)は,地熱を利用して卵を孵化しています.日本人も森や川へ回帰して,虫,鳥,魚,など,小動物たちにもっと学ぶべきでしょう.
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