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IPEの種 5/29/2006

土曜日の夜,黄砂に呑み込まれつつある中国西域の貧しい小さな村と,そこに暮らす家族の様子に驚きました.日曜日の朝,テレビをつけると画面に映った,エゾリスやおしどりなど,北海道の生き物たちの姿に驚きました.希望に満ちていたポーランドの変革が,いまや外国人,同性愛者,リベラル派を弾圧する保守派の政府に変わってしまった,というThe Economistの特集記事にも,私はとても驚きました.しかし電車で見る若者たちの醜態には,もう驚きません.

IMFの改革や「国際的な最後の貸し手」が議論されています.今では,英語で電子化されたデータや論文は,Googleが簡単に見つけ出します.BIS年次研究会におけるBeth A. Simmonsの報告にEdwin M. Trumanがコメントしていました.国際通貨危機に際して歴史的に繰り返されたように,アジア諸国の中央銀行が蓄積したドルの外貨準備は,再び,中央銀行間の国際協調という緊急の課題を示しています.

NHK衛星放送の「今日の世界」を見ていると,ドキュメンタリー映画に対する関心がインドで高まっている,と紹介していました.若者たちが東京に集まって,ドキュメンタリーの撮影に取り組みました.たとえば,かつて日本も水俣病の存在を社会が知り,その解決に向けて政治家や裁判所が真剣な行動を起こすに至るまで,写真集やドキュメンタリー報道が重要な役割を果たしました.インドの現実がもたらす衝撃は,同時に,私たちが世界を知るためにも重要です.

また,ブラジル・アマゾン地域では,500以上のチームが参加するサッカー大会が行われるそうです.誰でもチームを作って登録すれば参加できますが,一人の代表クィーンを見つけなければなりません.不思議なルールによって,クィーンが美人コンテストに勝ち残ったチームも,リーグ戦の勝者と対戦する機会を得ます.この大会は,階層や貧富,地域,性別の差を超えて広く社会参加を促し,サーカー熱でブラジルを一つにする祭典なのです.

ハリウッドで作る映画やアカデミー賞,ドイツで開催されるワールド・カップも素晴らしいですが,私は,無名の監督が低予算・少人数で撮ったドキュメンタリー映画や,社会人のサッカーチームとクィーンが世界中から参加する大会を組織するほうが,はるかに素晴らしいと思います.

私が空想する世界大会において,ドキュメンタリー映画はそれぞれの社会が抱える問題を直視し,人々が取り組むべき重要な課題を,世界の公共心や大儀に訴えます.他方,サッカーチームの選手はアマチュアでなければならず,正規の労働時間をこなして練習に参加し,優れたチームを作ります.チームの代表クィーンは美しいだけでなく,彼らの地域内から選出され,チームの日々の練習や地域の素晴らしさをスピーチで世界に訴えます.

野球やホッケー,アメフトや相撲よりも,すべての階層や地域から参加できるサッカーや自転車レースのほうが良いと思います.東京からロンドンまで走る(それとも,アラスカからマゼラン海峡や,喜望峰からアムステルダムまで走る),自転車チームの長距離レースなんて,奇想天外で,楽しい話と思いませんか? もちろんその間,紛争地域は停戦を実現し,犯罪や疫病を完全に除去するため,ルートを国際社会が共同管理します.

22が国際通貨・金融危機について合意された予防策を推進し,危機への協調行動をまとめるとしたら,同じように素晴らしく,困難ではあるけれど非常に有意義なことです.グローバリゼーションにも,多くの社会的紐帯が必要なのです.

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