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IPEの種 1/9/2006

年越しのミステリー・スパイ映画を観るような,ウクライナへの天然ガス禁輸措置は,プーチン大統領の政治サーカスに国際メディアのスポット・ライトを集めました.ロシアがウクライナに,またアメリカがイラクに,疑いなく示したような《エネルギー帝国主義》は,主要諸国による人類全体のための世界システムと,取り替え可能でしょうか?

ドイツの政治家たちが眠れなくなっているとしたら,私たちも少しは想像してみることです.重要な資源やエネルギーが自国に無いにもかかわらず,それを外国から輸入することによって,国内に発達した産業システムを築いてきました.その場合,この資源とエネルギーに対する安定した供給を確保することが,日本にとって非常に重要な政治課題となるでしょう.ところが,資源・エネルギーの生産国は政治的あるいは経済的に不安定であり,次第に自国と敵対する政治的な主張に傾いている,と分かったとします.この国の政治指導者にはどんな選択肢があるでしょうか? そして,あなたは何を求めますか?

帝国主義のシステムとは,軍事的な介入,戦争と占領,植民地化によって,世界の領土再分割を目指す政策を主要国が互いに採用する国際システムです.それが絶対に間違いだ,と証明できるでしょうか? 自国の経済システムや政治的自立の確保のために? 市場・金融システムの安定化? 文明化の使命? 虐殺阻止や貧困救済?

もし帝国化が選択できないとすれば,一国としてできるのは,供給国や供給経路,エネルギーの種類を多様化すること,そして備蓄システムを築いて,できるだけ備蓄できる資源を利用することです.その延長上に,エネルギー市場が整備されて,多国籍企業が供給することを指示する,また,消費国が共同購入したり,生産国との価格安定化システム,共同資源開発プロジェクトに出資したり,共同技術開発機構を立ち上げるでしょう.

しかし,どうしてもエネルギー・資源への外部依存を転換できないとすれば,政策によるか,市場圧力によるか,それらが並行的に働いて,価格が大幅に上昇するでしょう.消費量は激減し,破綻する企業や個人に政府は生産システムの転換を促しための融資を与え,もしくは生き残れる力のある者が不況を耐えるしかありません.その力は,エネルギーの節約,効率改善,代替エネルギーの開発,原子力発電,新規油田開発,・・・などで示されます.

もし空想的な解決が選択肢としてまじめに検討されるほど危機が深刻で,指導的な諸国の政治的意志が強いとか,その他の有利な条件も重なった場合,超国家機構によるエネルギー・資源の強制的な管理と政治的配分が組織されるかもしれません.さらに空想的,すなわち,長期的に見るなら,エネルギー・資源の限界と両立可能な文明だけが残るわけです.太陽,風,潮流,地熱,エコロジカル・サイクル・・・

かつて,経済大国へと台頭する日本が示す旺盛な資源・エネルギー需要について,アメリカとの競合と対立を予想しつつも,日本はアメリカとの親密な関係から決して抜け出せず,この奇妙なカップルは続くだろう,それ以外にない,とレイモンド・バーノンは結論しました.市場(ドル),安全保障,エネルギー供給を,すべてアメリカの国際システムに依存していたからです.しかし,今後もそう言えるのでしょうか? そして,中国はどうでしょうか?

BSドキュメンタリーで中国の現状を観ていると,そのアメリカ的な拡大と刺激に,プラスであれマイナスであれ,感動と畏怖を覚えます.日本政府は,早急に,問題別の次官級定期会談を,毎月,周辺諸国と持つべきでしょう.エネルギー・資源,安全保障・国境,歴史認識・共通教科書,貿易・投資,為替レート・マクロ政策,経済改革,環境保護,・・・ そして毎年,首脳会談を開いて,重要問題に関する協議を準備し,解決に向けた方針を互いに示してほしいです.

それが,エネルギー・資源問題の帝国主義的でない解決策なのです.

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