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IPEのタネ 8/9/2004

長期の景気循環と国際体制(レジーム)とを関連付ける研究は多くあります.私の印象では,3〜5年単位で考えるなら経済政策,10〜20年単位で考えるなら教育・産業技術,50〜100年単位で考えれば国際体制・軍事力が重要でしょう.しかし,1000年後の文明については,何が重要でしょうか?

たとえば,エネルギー,合議制,エリート主義と群集管理技術 ・・・

原油価格は高騰し,中東の武力衝突は終わらず,原子力発電所は老朽化して事故を起こす.1000年後にも人類の文明が存在するとしたら,エネルギーの供給や管理システムは全く異なっていることでしょう.石油に代えて,太陽エネルギーを利用するべきだ,という主張があります.特に印象的であったのは,太陽エネルギーが地球上に広く供給されることです.豊かな資源を持つ国ほど内戦や貧困に苦しむ,「石油の呪い」は解消されます.

さらに言えば,輸送や供給システムにおける非効率・浪費や搾取もなくなるでしょう.エネルギーの生産だけでなく,その供給システムに依拠した専制的な支配体制も,それがもたらす富と都市文明も,消滅するのではないでしょうか.太陽エネルギーは,むしろ熱帯地域に豊富に供給されますから,エネルギーを必要とする加工業は熱帯に移動し,南北問題も消滅(あるいは逆転!)します.

もし社会がもっと分散し,小さな単位で,合議制によって行動を選択できるなら,巨大な都市やTVの政治ショー,インターネット上の宣伝合戦と企業の政治献金で動く「民主主義」よりも,私たちの意志が反映されるでしょう.合議制に決まった形は無く,集団の性質や集合行為の目的,その条件が変化することに対して,常に革新される柔軟性が必要です.さまざまな政治のモデルが試される中を,私たちは渡り歩くのでしょう.

現在は,巨大な民主主義の政治システムを機能させるために,市場でも官僚でもない,エリート主義が模索されています.たとえば,経済財政諮問会議について,読売新聞が調査記事の連載を始めました(8月5日,第1回〜).「四人会」(牛尾治朗:ウシオ電機・奥田碩:トヨタ・本間正明:大阪大学・吉川洋:東京大学)は,官僚と自民党・政治家との間で,首相の権限を強化する独立の顧問を務めます.

また,政治家はスポーツを常に利用します.いっそ,スポーツ選手を政治家にします.投票率は低下しても,スポーツによる熱狂は衰えません.むしろ,世界中の家庭に衛星放送され,携帯電話でどこからも参加できる賭けや風説は,ますます熱狂的なファンやフーリガンを増やすのです.税金は支払わなくても,衛星放送にはお金をかけます.政治家はジョークを飛ばし,競技場の外には騎馬警官が並びます.選手たちは買収され,薬物に冒され,試合に勝てば英雄や富豪になり,負ければ殺されます.

政治家,スポーツ,商業的利益,と来れば,汚職です.そこで,IOCは次のオリンピックをどこで開催するか,競技の採点をどうするか,新しい方式によって決定するでしょう.一つは,おとり捜査を全面的に認める.もう一つは,各委員がダーツを持って並ぶ.地球儀を回すのは前大会の金メダリストたち.選考委員たちは,回転する地球儀に,5メートル以上離れて,一斉にダーツを投げます. ・・・おめでとう!

こうして次回オリンピックの開催国が決まります.各競技の審査員たちも決めます.もし開催国が,財政的な負担に耐えられないほど貧しい発展途上国なら,近隣地域から支援諸国グループを結成してください.TV放映権の交渉や競技場の建設,選手村の運営など,開催国にIOCと支援諸国が加わって,効率的で公正な管理を行ってほしいです.

末っ子の夏休みの自由研究,「風はどこから吹くのか?」 「磁石はなぜくっつくのか?」 というテーマをいっしょに考えていました.私は,風と磁石でできた文明の絵を描いてみたいな,と思いました.そこでは,たとえば,エネルギーを節約するため,渡り鳥や遊牧民のように,風や海流に乗って,未来の人々が地球規模で季節的な移動を繰り返します.

政治は少集団で行われ,各部族の言語や習俗は相互に影響し,共有されることでしょう.優れた立地や人口増加に関する部族間の紛争を解決する合議制と,さまざまな武力紛争を抑制する仕組みについて,最も優れた思想や習慣を生み出す部族とその指導者が,世界的な移動のルールを確立します.なぜか? 風と磁石の時代には,大規模な戦争を行う部族が,真っ先に,滅亡するからです.

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