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IPEのタネ 6/21/2004

メンバーが足りなくてチームができない.そんな高校のラグビー部がいくつも集まって,合同の練習会を行った,というニュースを観て楽しくなりました.見知らぬ15人でチームを作り,対抗試合をする中で,きっと誰もが日本中に良い友達を見つけたでしょう.痛い,臭い,汚い,そんなラグビーのようなスポーツが,なんて楽しいんだ,と思える仲間たちが素晴らしいです.

私も,とてもできないだろうけれど,もしできれば,やってみたいことが三つあります.@音楽バンドを作る.実は,楽譜も読めませんが.Aラグビー・チームを作る.試合を観るのは好きなんですが.B政治結社を作る.最近は,手作り風の,デモや集会を見かけませんが.しかし小さなことでも,何か始めてみたいです.

昨夜のニュース23を観ていると,ハーヴァード大学の入江昭氏が,アメリカや日本の政治について語っていました.アメリカとの同盟関係だけを重視する日本政府は,アメリカが日本から関心を失ったとき,深刻な孤立状態に落ち込む危険がある,と注意します.実際,ブレアのイギリスは苦しんでいます.

日米安全保障条約だけでなく,将来は,地域的な相互の安全保障制度を整備して,日本も対話や協力を深めるしかないのです.そして入江氏は,日本が基本的に,国民の表現や結社の自由を保証する国である,ということに期待します.しかし,大学のキャンパスでさえ,政治的な集会など見かけなくなりました.政治家がキャンパスで討論会を開く機会もないでしょう.誰でも気軽に政治に参加し,政治を変えることができる仕組みを,若者たちが工夫しなくなったのはなぜでしょうか?

今の日本には,歌や踊りによって楽しみを分かち合う習慣が見られません.多分,以前はあったのでしょう.地方には残っているかもしれません.今では,地域の夏祭りか盆踊り,花見や忘年・新年会,冠婚葬祭で,大量の酒を飲むばかりです.こうした日本人の悪癖となった集団による飲酒,カラオケ,ディスコ?(ダンス・ホール)などは,小説や映画に出てくる,異国の人々の踊りや歌への情熱,昂揚感と,異質なものではないか,と自問します.

休日には,仲間と集まって楽器を演奏したり,踊ったりしたいです.いつでも公園に行けば,見知らぬ人たちとラグビー・チームを編成し,大いに駆け回って弁当が美味しい.先の選挙や次の選挙について,何を争点とするか,公開討論会に誰を呼ぶか,一緒に議論する.どこかの貧しい人たちが内戦に巻き込まれて困っている,と聞けば,皆で手分けして募金を集める.激しく対立する紛争地域の兵士や住民から,代表を送ってもらい,話を聞いてみてはどうでしょうか? 単純な答が無いとしても,だからこそ,困難な選択に備えて,私たちは政治システムを常に機能させ,自分の政治意識を鍛錬しておかなければなりません.

NHKドキュメンタリーで観る15年の記憶は鮮烈です.ロシアでは,アフガン帰還兵による殺人と,その母親の苦しみ,多くの自殺者を見ました.ドイツで亡くなった童話作家,ミヒャエル・エンデは,パンを買う貨幣と株式取引所の貨幣とは,同じものではない,と言い切りました.中国では,鉄マイカ(麦客)と老マイカの対比に,人間の苦労が機械化によって打ちのめされる姿を見ました.

ソマリアの少年は,アメリカ軍に家族全員を殺されました.幸せは家族とともにあった.父さんも,母さんも,今は居ない.今の幸せは復讐だけだ.アメリカ兵を殺したい,と.金融破綻したアルゼンチンの主都,ブエノスアイレス.預金封鎖された人々は金槌を持って集まり,銀行のドアや壁,シャッターを叩き続けました.

もしできれば,彼らをキャンパスに招いて,話を聞くだけでなく,一緒に音楽バンドを作って演奏し,ラグビー・チームで対抗試合をしてみたいです.

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