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IPEのタネ 5/10/2004
子供が読んでいた藤子・F・不二雄『のび太と鉄人兵団』を手に取って,パラパラめくる内に,話に引き込まれました.こうした漫画を描ける仕事が,本当に,うらやましいです.
私たちは,なぜ学ぶのでしょうか? なぜ働くのでしょうか? テレビや電車で観る学習塾の宣伝は,その問いを説得的に示します.が,答えは示していません.また,映画の『たそがれ清兵衛』では,娘が寺子屋へ行くことを励ます場面に出くわしました.子ども自身が頑張って,楽しければ,それが学ぶことの意味だ,と言うのも,一応,立派な答えです.
3・4年のゼミで,K.v.ウォルフレンの『日本/権力構造の謎』を読み始めました.彼は,日本には権力が無いのではなく,それが見えないように規則や制度,人々の感覚が作られている,と主張します.彼が正しいと考える権力は,合理的な政府,です.それゆえ,個人主義,合理主義,実力主義,を重視する市民が,選挙で代表を選び,政策を選択して政府を動かします.
官僚であれ,大企業であれ,学歴であれ,自分も権力システムのインサイダーになること.それが日本人の隠れた,本当の,動機でした.なぜ,という問いは消えてしまいます.それを知ったとき,子供たちの笑顔も消えてしまうでしょう.
私は嘘をつきたくない.私は君たちのために話したい.互いに,信頼と善意によって行動する場所が,学校の中でなら,あっても良いだろう,と私は話しました.
一年生たちのゼミだから,楽しい時間にして欲しい,と私は思いました.皆,知らないだろうが,キャンパスの北の端には厩舎があって,馬がいると聞いている.それを観に行こう,と促しました.何度も往復しなければならないので,私は自転車を借りて走らせました.しかし,意外に,坂がきつくて・・・! 学生たちに与えた課題は,詩を書くことです.
次は,作文を書いてもらうつもりです.もちろん,最後は,グローバリゼーションについて論述してほしいです.でも明日は,教室に,長田弘の『私の二十世紀書店』を持っていくでしょう.自分で面白いと思える文章を,彼らにも味わってほしいからです.
「ライラ・バアルバキイは,アラブ語で小説を書いた最初の作家だ,という.しかし,『わたしは生きている!』を書いたあと,4年間に4つの作品を書いて,ライラは,ながい髪をばっさり切ると,クリスチャンの理容師と結婚し,以後ふっつりと筆を絶ってしまったらしい. ・・・ベイルート,アラブの搾取と革命の首都.そこには,ヨーロッパに身を売ったブルジョアと,くたびれた貧しい革命家と,ながい髪をばっさりと切って,黙って道を急ぐ一人の少女がいる.」
もしアメリカのように,日本でも活発な社会的革新が可能であるとしたら,婚姻や子供のあり方も変わってくるだろうね,と私たちは話し合いました.私たちは,嫌な勉強でも我慢してやるし,嫌な仕事でも黙って続ける.なぜなら,誰にも家族が居る.もし自分が勝手に仕事をやめたら,家族は苦しむに違いない.
多分,もし転職や転居がもっと容易なら,社会は個人のレベルで革新をもっと実現できるでしょう.アメリカでも,中国でも,自分から仕事をやめるのは正当に評価されていないと考えるからです.もっと自分にふさわしい仕事,ふさわしい報酬が得られるはずだ,と人々は考えます.日本では,いったん就職すれば,転職は非常に難しく,たいてい,失業という社会的な偏見に脅かされ,大幅な所得の減少や社会的地位の低下を受け入れるしかありません.
たとえば,人々は子供のときから日本語と英語を話します.移民を歓迎し,移民として暮らし,転職が活発で,離婚と再婚を繰り返します.社会資本は充実し,所得分配は平等です.子供たちは幼い頃から,何より自立心を養うべきだ,と教えられます.北海道と沖縄が完全に独立し,同時に,アジア通貨制度が成立して,企業や銀行,市民がアジア市場の統合化を加速します.
社会的移動性に富んだ,平等な社会に住みたい,と私は思います.なぜ学ぶのか? なぜ働くのか? その答えに悩む必要も無いところ.
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