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IPEの種 9/19/2005
子供の頃は誰でも,想像力が豊かで,いろいろな経験や寓話から夢を得ることができます.たとえ子供でなくても,チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』(集英社文庫)を読むのは,多くの人にとって楽しいことでしょう.
『クリスマス・キャロル』に描かれた子供たちや食卓,団欒の様子は,とても楽しく,彼らが喜ぶと幸せな気分になります.他方,子供たちが不幸であるときほど,世の中が間違っていると感じることはありません.子供たちが家族と一緒に,お腹いっぱいの食事をできる.若者になれば仕事を得て,家に稼ぎを持ち帰ることができる.そうしたことが幸せなのです.悲しいことに,現代の世界でも,その望みがかなわぬ人は多くいます.
この世界を変えるのは,富や権力や科学の力でしょうか? 私は,想像する力,見えないものを見る力,つまりディッケンズが描いたような,美徳を重んじる精霊たちの力だと思います.少なくとも,それを感じることの出来る者にとっては.他方,フィリップ・K・ディックの『流れよわが涙,と警官は言った』に出てくる新しい薬も,想像力と現実を混ぜる力があります.しかしこれは,作家自身の(そしてアメリカ社会の)精神磨耗と自傷行為を救済する作品だ,と思いました.
現代の精霊たちは,ホワイト・ハウスに現れて,ブッシュ氏に世界の貧しい者たち,卑しい者たち,愚かな者たちの,彼が見ようとしない喜びや苦しみを示し,彼が握る権力のほんの一かけらによって開かれる希望と,それが崩れ去った後を示すでしょう.友人や恋人を奪われ,家族の団欒を奪われ,子供たちに用意してやれたはずの食卓や,仕事の誇り,楽しかった集い,たわいないけれど,幸せな日常を奪われた人々の,かつてと今を見せるでしょう.
「ユートピア的」社会主義者たちは,小さな村落で営まれる共同食堂や,楽しみとしての協同労働を描いた,平和な空想小説を読んだでしょう.「共和国」や「フェミニズム」,「環境保護」なども,社会を成り立たせる新しい想像力を刺激したはずです.
たとえ現代の裕福な人々に比べて,さほど豊かではなくても,誰もが思う存分に働き,誰もが満足に食べたり,語り合ったり,旅に出たりできる能力を,人類は得ていると思います.市場によって繁栄する社会には,十分,その力があります.だから市場型社会システムが拡大することを支持する声は,その豊かさをまだ享受していない者たちにとって,切実なものです.
しかし,システムの全貌にまで,私たちの想像力が及びません.
昨日,自転車で奈良の大仏さんまで走りました.後で地図を見ると,片道約11キロです.奈良の小さな道路を駆け抜けて,鹿が散歩する公園までたどり着けたら,なかなか素敵じゃないか,と秋晴れの空を見て思いました.場所によっては自動車が多く,坂道もあって,決して思ったほど奈良の自然を楽しむことはできません.しかし,既にある財源の一部を使って,自然豊かな自転車道を子供たちのために整備してほしい,と思いました.
私は自動車に支配された世界が嫌いです.飛行機も好きになれません.できれば,船や飛行船で世界中を旅するネットワークがあればよい,と思います.遅くても,それだけで拒否されるわけではないでしょう.世界の主要な港にネットワークがあって,若者たちの仕事と勉学を助けます.早くて安いだけなら,50年後,地球の周りを回る衛星軌道を高速移動できる輸送手段が開発されると期待します.
また,自動車に支配されることを嫌うからと言って,自動車を通りに並べて金槌で叩き壊したり,それらをすべて国有化したりする必要は無いと思います.自動車の個人所有に高い税を課し,民間のレンタル会社を育成します.その場合,自動料金徴収システムとともに,レンタル料金が柔軟に政策目標を組み込むでしょう.また,無駄な道路建設は止め,自然公園や自転車道,路面電車を整備してください.
フラット・タックスが盛んに議論されています.むしろ,この社会に参加するすべての個人に最低所得を保障し,さまざまな教育機会を提供し,遺産相続を禁止してはどうでしょうか? ただし遺言で,遺産の利用目的や用途を,公共のためであれば,指定することができます.こうしたことは古くから,リベラルな社会主義の理想であったと思います.
貧しい者や,愚かな者は,救貧院か監獄に押し込んで,そのまま死んでくれたら社会の邪魔にならずに済む,と思っていたスクルージ氏も,恵まれない者への寄付に応じます.そして事務所で雇っているボッブ・クラチットの給料を引き上げ,彼の末っ子のティムが足を不自由にしており,からだが弱くて長生きできそうにないことを心配して,財政支援を申し出ます.
「彼は教会へ行き,街路を歩きまわり,人々があちこち急ぎ足に歩くのを眺め,子供たちの頭をなでてやり,乞食に言葉をかけ,家々の台所をのぞきこみ,窓を見上げ,そしてすべてのものが自分に喜びを与えてくれるのに気づいた.」
精霊によらず,世界の隅々を自分のこととして喜び,悲しむことのできる力を,私たちも持つべきです.「そして,ちびのティムが言ったように,神様がわたしたちすべてに祝福を与えてくださいますように!」
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