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IPEの種 9/12/2005

変動レート制についての短い論文を書くのに大変苦しみました.選挙報道は断片しか見ていません.

投票所で感じるのは,誰に入れようか? どれに入れようか? メニューを探すレストランと同じです.誇大な広告を信じるか? セット・メニューを残さずに食べ切れるのか? しっくりしない印象です.

個人と政党名とが重なって評価されるのは,田中真紀子でなくても,奇妙な印象です.そんなに食欲が湧きません.いっそ,一人に10票を与えてもらいたいです.そうすれば誰かと誰かに入れて,政党もいろいろ見つくろって,自分の気に入った政界再編!を投票に反映できます.たとえば,小泉・自民党に5票.民主党に2票.自分の地区に社民党候補がいたから3票入れてやろう,・・・とか.

この制度が面白い!のは,将来,アジアで(あるいは日米欧で)相互に政治家を投票できるようにするとしたら,たとえば韓国と日本が相互に投票を認めればよいということです.きっと,外交政策や通商政策・エネルギー問題で,政治家の発言に重大な変化を生じると思います.

今回の選挙は,郵政民営化国民投票,小泉純一郎首相公選,という異なった性格が,どれも自民党に有利に働きました.しかし,国民投票は重要な改革に独自に行ってほしいですし,首相公選よりは,もっと魅力的な党首を各政党が育てることにエネルギーを注いでほしいです.たとえば,TVキャスターや映画俳優などを抜擢するのは安易ではないか? と思います.

最高裁判事の判断は,白紙委任状がどれほど多いのか,教えてほしいです.棄権すればよかったな,と後で思いました.○×式ではなく,もっと選択肢を増やしてください.裁判官が国民投票に問いたい理由を示してほしいです.もし自分たちは問われることなど無いし,問われるべきでもないと思うなら,これは茶番です.

むしろ,日銀総裁の仕事を国民投票の対象にしてはどうでしょうか? 日銀総裁の担う意思決定が,最高裁より重要でない,とは思えません.そして国民投票を通じて,彼が独自に評価される基準を示し,国民を説得してほしいです.そして,同じ評価にさらされている政治家たちとの関係も改善できないかな,と思います.

元外務省職員で2003年初当選,自民党の「造反」として郵政法案に反対したため公認候補になれず,片山さつき氏を「刺客」として送り込まれた,木内実氏の落選後の片づけが放映されていました.政治的人間が,地盤を継いで貴族化する一方,激しく入れ替わる事態も起きている,と実感しました.さまざまな組織で,人の入れ替えにどのような基準を用いようとも,完全な答はありません.選挙は欠陥に満ちた,最低だけれど,多分,最善かつ重要な政治ウィルス除去装置なのです.ただし,間違って遮断された人が,繰り返しチェックされても,生き残れるように設計してほしいです.

Swing Votersを「浮動票」と呼ぶのは間違いです.Floating Votesなら浮動票かもしれませんが,スウィングするのは小選挙区・二大政党制の特徴です.「無党派層」というのも気に入りません.政治そのものに無関心な層と,既存政党に満足しない政治意識の高い層,を区別してください.人を入れ替え,政策転換を図るには,スウィング(振幅・疾走)する有権者たちが必要です.そうであれば,落選しても,4年後の再生に備えて,大いに学び,有権者たちの意見を聞いて,野党は再生の時を待つのです.

漸く論文を書いて,メールに添付して送りました.夏バテで体調を壊し,疲れがたまっています.日が傾いてから,自転車に乗って珍しく本屋に行きました.

レヘイン,フィリップ・K・ディック,・・・ 新しいSF政治小説を見つけました.「ポスト小泉の改革路線が紛糾し,10年後に自民党が二度目の大敗を経た後,大物は誰も残らなくなった総裁選挙.そこに木内氏が残ります.他方,大阪弁を駆使して果敢に政府を批判し続けた辻本氏は,民主党の新しい党首に選ばれた.政権を争う新しい世代が,国内改革から開放と挑戦を唱える・・・」

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