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IPEの種 8/1/2005
函館から旭川,富良野,帯広,足寄を経て釧路まで1000キロを走ってきました.北海道には豊かな自然があるのに,雇用機会は乏しく,・・・自衛隊の基地を増やすか,国道を100キロ近いスピードで自動車が走る横で高速道路を建設するくらいしか選択肢はない?ようです.
先日,研究会で龍谷大学の田中宏氏の話を最後だけ(失礼)聞きました.日本の国籍法と言えば,父方の「血統」による男性支配・人種偏見を体現した旧世界の原理だと思っていたら,インターネットで検索してみると違っており,驚いたことがあります.「国籍」の付与について,各国政府はさまざまな事情で異なる対応を取っており,その結果,国籍の有無で人々を<合法的>に差別できます.
日本の国籍法が現在の姿に至った具体的な歴史とは,たとえば北米や南米への移民,韓国併合,敗戦後の在日韓国・朝鮮人への対応,沖縄,中国残留孤児,ベトナム難民,ブラジル日系人,国際人権条約に加盟する条件,などでしょう.西ドイツとの比較,ドイツへのトルコ移民やイギリスの旧植民地はどうしたのか? ソ連邦解体とロシア系住民,中東やアフリカからヨーロッパへ,中南米からアメリカへの難民流出はどう扱われているのか? 所得格差の拡大と工場の海外流出,輸送・情報インフラが整備されるアジアで,中国が市場開放し,成長と統合化を目指すとき,アジア諸国も日本も新しい対応を競うはずです.
欧米では,国籍の二極化論が改められつつあると言います.二重国籍や選択制,永住権の付与,内国民待遇など,住民としての権利が整備されつつあるわけです.それに比べて日本の対応は・・・理解できない,と聞きました.なぜ政府・官僚はもっと合理的な国籍付与・選択の原理を採用しないのか? と私は質問しましたが,田中氏の答えは,わからない,でした.私は,日本の政治家や官僚が,国籍を得た在日朝鮮人たちが発言して政治的影響を及ぼす事態(彼らは責任を追及されたはずです)を恐れたからではないか,と思いました.
過去にも,多くの国境変更や独立国について国籍は変更されました.たとえば,もしプーチンから北方領土を返還されたら,日本政府はロシア人住民をどうするのか? と田中氏は問いました.通貨・為替システムにおける二極化論(および最適通貨圏論)と中間的選択肢について議論されているように,最適国籍付与(変更)論を議論できるかもしれません.
奈良市の市長が議会と対立してリコールされ,議会を解散しました.そして,ここだけ選挙です.北朝鮮の拉致問題や核開発,中国の人民元や軍備増強,台湾海峡,アメリカのイラク占領,自衛隊派遣,アフリカの飢餓,ロンドンのテロ,中国・韓国・ロシアとの領土問題,小泉政権の構造改革と郵政民営化,日銀の金融政策,外国人労働者,・・・などには一言も触れません.
リコールされた元市長は無所属.対立候補は共産党以外のすべての推薦や支持を得ています.日本の政治には,共産党と公明党以外,政治結社が無い? 小泉と反小泉以外に争点も無いのですか?
松田**と岡田○○子の選挙カーが土曜日に近所を通りました.名前を連呼しただけの松田氏より,中身のある話をした岡田氏に好感を持ちました.しかし,それだけでは判断できません.選挙管理委員会の広報に,各候補が同じスペースでアピールしています.福祉・福祉・福祉・福祉・福祉・・・・ 教育・教育・・・・・ 安全・・・ 雇用・・・ 公共工事! 同じような表現が,何の検証も無く印刷して配布されていることに,選挙管理委員会の質を疑います.しかい,公約が具体的で,自ら結果責任を求める姿勢の候補も数名います.私は彼・彼女たちに投票しようと思います.
やかましい選挙カーは制限して,毎日,各地の公民館で候補者の演説会(たとえば各20分で3名)と対話の茶話会(たとえば10名ずつ各地を回る)を催してはどうでしょうか? ゼミを募集するのに,私たちは学生の前で説明し,さらにブースを設けて個別に学生たちから質問を受け,あるいは公開の模擬ゼミを開きます.地域に根ざした選挙であるためには,同じような機会を市民に提供するべきです.また大学や高校では,株式投資のゲームを教えるより,選挙過程に参加して候補者の公約や実績,特徴などを独自に調査・評価するグループ活動を育成してください.
それでも,奈良市が独立することは無いでしょうし,独自通貨を発行するメリットも無いでしょう.しかし北海道は? 鈴木宗雄元衆議院議員は,小泉首相が解散すれば,北海道新党を創立して立候補したい,と抱負を語りました.実際,シンガポールはマレーシアから独立し,独自通貨を維持して経済成長を実現しました.中国もまた,アメリカ・ドルから自立する道を選択したようです.
人民元論争の結末は? やっと,しかも,たった2%の切上げです.中国政府が採用した制度はシンガポール型のBBCというより,BCC,だと思います.つまり,「通貨バスケット,(バンドではなく)資本規制,クローリング・ペッグ」です.資本規制が効果を失うに連れて,おそらく,バンドの幅が拡大するでしょう.そして,貿易や投資が重要であるほど,各国政府は均衡為替レートをもっと真剣に推定し,主要諸国に呼びかけて協調介入や政策監視を行い,経常収支や成長率・インフレ率の目標を掲げて,地域市場統合の推進なども議題にするはずです.アジアの統一通貨や政治統合はさらに将来の問題であり,まだ不可欠でもなければ,理想でもないのです.
五・十払いの週末.どこから湧いたのか!? ・・・と思うほど大量の自動車群に埋まりながら,私は家族と一緒に父の見舞いに行くため大阪へ向かって走っていました.ふと思ったのですが,数億光年先の星から異生物発見を大ニュースとして報じる種族がいるとしたら,彼らが観ているのは,・・・あるいは,数万年前の地層を発掘している未来の地球の生物が知的生命体に覆われた時代について激論しているとしたら,そこで掘り出された物とは,・・・こうした自動車の列が蠕動する姿や,そのプラスチックの備品を廃棄したハイテク貝塚ではないでしょうか?
国籍,選挙制度,通貨秩序,などを発掘するのが,私たちの仕事です.
(ウィリアムソンの翻訳,校了しました.8月24日に書店で手にとって見てください.)
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