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IPEの種 5/2/2005

せっかくの連休に,風邪を引いて体調は不良.美しい自然を見るにも道路は渋滞し,日本の高速道路や鉄道はやたらにお金がかかります.ダッチ・オーブンの使い方を紹介する教育テレビの番組を観て,大いに心を動かされましたが,その道具にふさわしい「環境」がここにはありません.

教育テレビの英語番組で,なぜ日本の漫画はスゴイか? と聞かれて,日本人は想像力が爆発的だ,と外国から来たジャーナリストたちが話し合っていました.日本人はいろいろな制約に縛られて生活し,いつも感情を抑えているから,それが解放されるとおびただしい空想の奔流となって今度は抑えられなくなる.漫画やアニメの世界は現実を超越している.アメリカでは日本の少女マンガを英語に翻訳したものが大きなブームになっているそうです.

竹下文子の『黒ねこサンゴロウ』(偕成社)シリーズを末っ子が熱心に読んでいました.とても面白い,というので,早速,読んでみました.第4巻「黒い海賊船」と第5巻「霧の灯台」です.第4巻では,サンゴロウを尊敬し,慕う,イカマルという若者がマリン号に無断で乗船し,親分に怒られながら一緒に船の旅をします.また第5巻では,なぜ自分はここに居るのか,と苛立つサンゴロウが霧の中で灯台に招かれ,カイという燈台守の若者と友人になります.

感情の流れが,その陰影を含めて,とても細かく,しかも自然に描かれていることに感心しました.初めて大きな町を見た若者の心や,商売人,着飾った女たちの心を読むサンゴロウの独立心を感じます.あるいは酔漢の挑発,海賊との対決,知恵比べ.子供たちがこんな深い話をどんどん読んでしまうのは,やはり作者が上手に作品の世界を描ききっているからでしょう.

私は,以前から,絵本や童話が書きたいのです.単純な話で,複雑な人間の真実を伝える.子供にも分かって,子供にしか分からないような.大人なら言わないけれど,誰もが子供のときには想っていた.だから大人の心にも響くような話を,絵本や童話として書けるかもしれません.

もし現実がそうであるなら,つまり,絵本や童話のような真実が曇らされたり,壊されたりするのを黙って見過ごすしかない,そんな場面に心が固まってしまうのであれば,むしろ,そうした現実を描くほうが良いかもしれません.いつか,ルポルタージュや社会小説,特に,世界各地の小さな町の歴史を書いてみたい,と思います.

「ガイアの夜明け」で現在の中国を観ました.雲南省の貧しい農家の長女は,16歳で,上海の電子工場に出稼ぎに行きます.そして給与のほとんどを家族に仕送りします.最初は「笑った」と先輩に叱られ,工場の掃除をしていました.しかし休みの日でも勉強し,変圧器の配線作業を覚えて給与を上げてもらいます.「妹たちの学費は心配しなくてよい.私が彼女たちをきっと大学まで行かせてあげる.」と手紙に書きます.その手紙を読む妹は,遠く上海で働く,長く会うこともできない姉を想って,ぼろぼろと涙を流し続けます.

不動産買収ツアーが,上海のバブルがピークに達したと考える潮州人たちにより,オリンピックに向けて都市整備が進む北京の不動産を買収するために組まれます.彼らは集団で空港から北京に乗り込み,建築中のビルを見つけては不動産業者の事務所で値引き交渉を繰り返します.バブルは,外国人の不動産購入を規制しない中国政府の方針によって,人民元切上げ期待とともに「操作」された側面があると思います.

ハード・ボイルド小説,スパイ小説,SF小説,戦争小説,時代物,そして童話.すべての政治家が,現在の政治問題について,過去の戦争や歴史を利用するように,気に入った作品は自分の感覚や発想に役立ちます.

ロバート・B・パーカー『暗夜を渉る』を読みました.アメリカでは,職を失って新しい仕事を求める者,結婚生活に失敗した者,その他が,ハイウェーで新しい町へ移動します.そこで人生をリセットできるかもしれないから.ひとびとはとても孤独で,だから際限なく資産を求め,頻繁にセックスを交わします.会話であれ,行為であれ,犯罪であれ,これら二つが中心です.アメリカを繋ぐものとは何でしょうか? ラジオ局.ガス・ステーション.モーテル.野球.・・・ アメリカでは,ハイウェーを自動車で走るときに,もっとも自由だと感じるようです.そしてお金がないとき,自由なんてまやかしだ,と思うのでしょう.勇気があれば,犯罪者か警察官,兵士になり,力を争います.

せめてゴールデン・ウィークの間は,自動車とテレビを廃止してはどうでしょうか? 朝から,子供たちと散歩し,本を読みます.もし自動車が1台も走らず,テレビが一つとして電源の入らない日を10日も過ごせば,私たちに何が起こるでしょうか?

・・・始めはとても静かだと思うでしょう.小さな町が,農場を隔てて連なります.ときには大きな城門があって,さまざまなものを取引する都市が栄えています.しかし,自動車やテレビはありません.・・・旅することは冒険です.まるで資本逃避のように,私たちを社会から個別に逃避させていたこれらの手段が失われて,ようやく家族や友人たちが一緒に食事し,明日の計画や新しい町の様子を楽しく語り合います.・・・食事が食事であるような.仕事が仕事であるような.

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