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IPEの種 2/21/2005

インフルエンザを患い,仕事も進まないと,どうしても悲観的になります.しかし,ウディ・アレンほどではないな,と彼に同情しました.

「人生については極めて悲観的だ.芸術が人間の持つ悲惨さを埋め合わせるとは思わない.人間の運命とは達成した結果と無関係で,全く嫌になる.あなたの人生にも意味など無い.死ねば永遠に消えるだけ.病死かもしれないし,老衰かもしれない.愛する人も死ぬ.いずれ宇宙そのものも消えてなくなり,シェークスピアもベートーベンもレンブラントも消える.」(「ウディ・アレン氏単独会見」読売新聞2月20日)

単純で楽観的な見方が支配的になれば,それに反対する複雑な個性は潰される恐れがある,と思います.受験勉強であれ,大統領選挙であれ,株式市場であれ,勝者による解説はたいてい単純で,強気です.アレンも,宗教的熱狂を政治に取り込むブッシュのアメリカに暮らす孤独を嫌って,ヨーロッパやカナダに移住するかもしれません.

確信的なナショナリストになった?安部晋三氏は,東シナ海における中国の天然ガス田開発について,「中国側に盗掘されていると言ってもいい」と述べたようです.なぜアジアにおける共同エネルギー開発を積極的に呼びかけないのでしょうか? 北朝鮮に対しても(単独?)経済制裁を強く主張するなど,私には理解できません.拒否する条件に固執せず(もちろん,受け入れる必要も無く),相互の安全保障や経済的繁栄を達成する過程に参加するために,合意できることを積極的に増やすべきです.

ライブドアの堀江社長も,フジテレビの重役たちも,金銭欲や権威の塊にしか見えないことに失望します.いくつかの報道番組が,ひとしきり「時間外取引」,「リーマン・ブラザーズ」,「村上ファンド」,そして当事者の発言,などを話題にし,本質をつく有益な解説もなしえないまま終わりました.確かに,現代の富豪メカニズムは,IT関連のハイテク企業,通信媒体,メディア産業,金融ビジネス,M&Aに集中しています.「女も企業も金で買えると思うか?」 ・・・「国民に情報を伝えるメディアが一部の富豪家族や系列企業に支配されることが,外資の参入よりも好ましいのか?」 ・・・そんな質問に答えるより,社会にとって望ましいメディアをどう育てるのか,買収合戦に関与する強欲家や政治家は,積極的に国民に向けて語る義務があるでしょう.

西部すすむ氏の紹介するオルテガ『大衆の反逆』から,≪保守思想≫と彼が呼ぶ,「歴史」と「会話」の重視に共鳴するものがありました.

「安っぽい抽象的概念の中に絶対性を見出した百科全書派の連中や革命家たちの腺病質な合理主義と違って,自由主義の理論家たちは,歴史的なものこそ真に絶対的なものであることを発見した」・・・「会話が歴史の原現象である」

『億万のココロ』で紹介されていた「空飛ぶ掃除機」には本当に感心しました.確かに,欧米の掃除機はやたらと重いのです.あんなものを部屋から部屋へ運ぶには,たくましい家政婦でもいないと,特に老人にはできる訳がない? だからメイド文化が今も続いているのでは? と思ったほどです.掃除機の訪問販売をしていた人が,重い,という苦情を聞き続けて,もっと軽い掃除機を作れないか,と自動車整備工場の親父さんと考えます.

なるほど,私も億万長者になれたかもしれません! 「空飛ぶ掃除機」と聞いて,即座に排気を床に向けて本体を浮かすことを考えました.それだけで飛ぶか? と自問し,本体を軽くするために竹や紙で設計し,使い捨ての自然素材に転換すればよい,と思ったのです.むしろ軽すぎて安定しないかな,とも思い,モーター部分は軽金属やプラスチックで何度も使用することを考えました.さあ,革新的な日本の家電企業が,一刻も早く開発してください.世界で数百万(あるいは数億?)台は売れるでしょう! (ただし,モーターの熱で本体が燃えないように!)

しかし,モノポリーの発明者がまさにゲームのような大富豪になり,その子供も富を持て余している姿には失望します.飛ぶ掃除機も,モノポリーも,その発明者は貧しい時代を経験しています.満足な食事もできなかった不況のグラスゴーや大恐慌のアメリカに暮らして,彼らは資本主義的な富豪メカニズムに触れました.その弊害や専横を,経済恐慌や社会的争乱,独裁者の煽動などによってではなく,議会や市民団体がチェックするべきではないでしょうか?

そして現実に絶望したウディ・アレンには,浅野あつこ氏の『バッテリー』が完結したことを教えてやりたいな,と思いました.あるいは,子供が朗読する『ごんぎつね』の話を.

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