IPEの果樹園2021
今週のReview
2/8-13
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GameStop株の政治投機売買 ・・・バイデン政権の誕生 ・・・バイデンと米中関係 ・・・人種差別国家の転換 ・・・EUとロシア、トルコ、大英帝国、中国 ・・・ミャンマーの軍事クーデタ ・・・ワクチン接種
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● GameStop株の政治投機売買
The Guardian, Fri 29 Jan 2021
The GameStop affair is like tulip mania on steroids
Dan Davies
1636年の終わりにかけて、オランダでは腺ペストが広まった。当時はロックダウンの考えが確立していなかったが、商取引は減少した。暇になった若者たちが酒場に集まって、まだ取引されている少数の市場で球根の取引を楽しんだ。それは最初の金融市場におけるバブルとして記録されることになった。「チューリップ・バブル」である。
ほぼ400年後に、アメリカの株式市場で同じことが起きた。今週、GameStop社の株式が、金融ビジネスの大企業と、ディスカッションサイトであるRedditの一部、the WallStreetBetsにおいて意見交換していた暇な数百人との主戦場になった。
ニューヨークのヘッジファンドが、GameStopのビジネスモデルは時代遅れだと考えて、価格の下落に賭けた。他方、Redditの群衆は、この売却を不公平なものと決め、ゲーマーたちのために買いで対抗した。それはデリバティブやレバレッジを使って、大規模に行われた。
驚いたことに、群衆が勝利した。ヘッジファンドのリスク管理システムにより、彼らは高い価格で買い戻しを強いられた。しかし、証券取引所は、こうした協調行動とレバレッジを利用した価格操作を強く嫌ってきた。取引量は、行動に参加した群衆が好むような小規模の仲介業者にとってキャパシティーを超えたため、クレジットが利用できなくなり、口座が閉鎖されて、群衆が売却を強いられた。
こうした売りに対抗する攻撃の例は、株式市場で多く知られている。GameStopの事件が特徴的なことは、それがSNSを通じた自発的な組織による攻撃であったことだ。市場を操作するための資金をプールする操作は、最も熟練したプロの仕事であった。
WallStreetBetsに集まった群衆の主張には説得的でないものもあり、その売買は、証券市場が前提する、単純に利益を得る、ということではない、怒りなどの感情による。それは市場規制の問題を複雑にするだろう。
株式市場には投機が必要だが、その悪影響は制限されねばならない。
FT January 30, 2021
The wave of populism shaking Wall Street
好きでもない株に資金が殺到させてヘッジファンド投資家の儲けを粉砕した。それはポピュリズム、ソーシャルメディア、低金利が、現状を破壊するために結びついた、新しい株式市場の兆候であった。
チャットルームや、手数料なしの株式取引アプリのような新技術が、熱狂的な参加を促した。多くのトレーダーには、旧世代が金融危機以降の経済を操作して彼らから富を奪った、という不満が鬱積している。
小規模投資家たちは、ゴリアテを倒したような快感を覚えた。この感情はウォール街占拠運動に由来する。しかし、小口取引が証明したことは、優秀な大手投資家もみなと同様に株価の大幅な変動に傷つくということだ。他方で、投機的熱狂はリスクが高い。小口投資家のすべてが自分の貯蓄や政府からの支援金を使ったわけではない。オプション取引は下げ幅によって損失を増やす。仲介業者は証拠金を増額したり、投機銘柄の取引を取りやめたりした。
GameStopの株価は下がるだろう。長期投資を妨げるべきではない。市場の秩序を取り戻すために規制が必要だ。重要なことは、投資をギャンブルと同じものにしないことだ。
FT January 30, 2021
Reddit investors’ real power is over Wall Street’s future behaviour
Merryn Somerset Webb
The Guardian, Sat 30 Jan 2021
The real lesson of the GameStop story is the power of the swarm
Brett Scott
金融ビジネスを牛耳る大企業から見れば、小口の株式取引は、フンコロガシのようなものだった。金融大企業が市場を動かす中で、その糞を動かしているだけだ、と。
GameStopの神話は、その巨人たちを倒した点で際立っている。
株式トレーダーには2つのタイプがある。1つは、実際の企業を調査する「ファンダメンタル分析」。もう1つは、投資家の行動を分析する「テクニカル分析」である。デイ・トレーダーはテクニカル分析に偏ることが顕著である。他のトレーダーが行動したことを示すグラフを多用して議論する。
ここで、市場のシュールリアリズムが誕生する。テクニカル・トレーダーは、株価が代表する企業の利益ではなく、他のテクニカル・トレーダーを監視しているからだ。GameStopの株価は現実と完全に切り離されて動いた。
かつては、こうした行動が男性的マッチョを象徴していた。しかし、Robinhoodはミレニアム世代のための最初に「覚醒した」トレーディング・アプリである。それは「ブルシット・ジョブ(どうでもよい糞のような仕事)」の代わりになる。男のために働くのではなく、企業の一部を取引することで人間になる。
GameStopは、デイ・トレーダーのゼロサム的な空虚さに対する反動であっただろう。ブルシット・ジョブからの救済になるどころか、トレーディングはブルシット・ジョブそのものだ。一時的に勝利できるとしたら、それはあなたが市場との闘いにのめりこまないことだ。
FT January 30 2021
‘This is the way’: the Reddit traders who took on Wall Street’s elite
Eric Platt and Colby Smith in New York, Madison Darbyshire in London, Alice Kantor in Paris and Robin Wigglesworth in Oslo
GameStopはビデオ・ゲームを販売する店舗を展開する会社だが、オンラインに移行する経済において苦戦している。株価は6年間低迷しており、ヘッジファンドがその最終的下落に賭けた。
しかし、WallStreetBetsとDeepFuckingValueの影響で、株価は放物線上に上昇した。投資した1人は、WallStreetBetsの利用者が富裕層を軽蔑しており、彼らの富を掘り崩すことで利益を得ることは力になる、と考える。
過去1年間で、何百万人もの訓練を受けていない人々が株式市場に参加した。それは、20年間近く、年金基金やヘッジファンド、資産管理ビジネスが支配しているコミュニティーであったものを破壊した。
政治的要素が無視できないほど強まっている。
FT January 30, 2021
Short sellers face the rage of an army of small traders
Michael Mackenzie
The Guardian, Sun 31 Jan 2021
An uprising against Wall Street? Hardly. GameStop was about the absurdity of the stock market
Kenan Malik
GameStopに起きたことは、オンライン・フォーラムに集まったRedditのオタクたちが、600万人もの利用者をGameStop株への投資に向かわせた、ということだろう。それを投資と考えたのか、退屈だったのか、ウォール街を罰してやりたかったのだ。理由が何であれ、GameStopの株価は上昇した。数日で、40ドルほどから400ドルになった。巨大投資家が損失を被った。しかし、この話の中身は、トレーダーたちの成功ではなく、むしろ株式市場の異常さだ。
株式の売買は生産的な投資と関係ない。自社株買いも、以前は違法であった。投機が株式市場を高揚させている。だから巨大な投資機関は空売りなどで利益を得ている。
ウォール街の狼たちが犠牲になるのを観るのは楽しいかもしれない。しかし、Redditの変人たちの行動を美化してはいけない。これは「蜂起」ではないし、「金融におけるフランス革命」でもない。プロの投資家たちがしているゲームである。
プレーヤーの多くは間違いなく、反動的な政治に与する、不快な人物たちだ。彼らの行動は、市場の狂気に挑戦するものではないし、市場が多くの人々に強いる悲惨さを軽減するのでもない。それは権力に対する現代の挑戦の脆さと示している。
FT January 31, 2021
GameStop mania: why Reddit traders are unlikely to face prosecution
Kiran Stacey in Washington
FT February 1, 2021
GameStop is just latest sorry case of misallocated capital
John Plender
PS Feb 1, 2021
Corporate Governance after GameStop
FAITH STEVELMAN, SARAH C. HAAN
The Guardian, Wed 3 Feb 2021
Why the GameStop affair is a perfect example of 'platform populism'
Evgeny Morozov
世界市場に混乱をもたらしたGameStopの経緯は、理想主義的な個人投資家たちが一群の傲慢なヘッジファンドを懲らしめた、という話ではない。それは1月6日の暴徒による議事堂襲撃に続くものだと感じる。どちらも、ひどく軽蔑するエスタブリシュメントの最も神聖な機関を包囲する、怒りに満ちた、汚い言葉を吐くソーシャルメディア中毒たちに注目が集まったからだ。
2つの暴動の教訓は明白だ。現代の反エスタブリシュメント暴動を率先するシャーマンは、ストックオプションやデリバティブを習得する必要がある、ということだ。壁をよじ登ったり、南軍の旗を振り回したりするのではない。
GameStopの十字軍が威厳を示したのは、ヘッジファンドの評価が損なわれていることの反映だ。また、われわれの多くが、安価なオンライン株取引ができるプラットフォームの唱える「民主化」という呪文にとらわれているからである。Robinhoodはその1つだ。
「金融の民主化」を唱えるRobinhoodはシリコンバレーの革命家であることを望み、ウォール街の仲間を嫌う。ミューチュアルファンドではなく、アマゾンをめざす。個人投資家を集めるVanguard or BlackRock ではなく、輸送、居住スペース、オフィスを「民主化」したUber, Airbnb, and WeWork の仲間である。
しかし、すべてを民主化するという運動は、サウジアラビア政府や日本のソフトバンクからUberやWeWorkが莫大な資金を得て推進してきた。それは、以前は料金を取って行われたサービスを無料にする、という形で、進歩や社会的移動性の幻想を振りまいた。デジタルプラットフォームの多くは、豊富な支援を受けるか、利用者のデータを集めた高度な関連サービスの利益で維持されている。「民主化」とは関係ない、計算の結果である。
ハイテク企業が世界中でポピュリズムの指導的な拡散者になっている。それは誇張のように見えるだろうが、バノンやオルバン、エルドアンのような人物が増えるとき、同じ意味で、Robinhoodの投資家集団、ベゾスやザッカーバーグも考える必要がある。
原始的で、有毒な、ネイティビズムを示すトランプ型のポピュリズムだけに注目したため、われわれは、洗練された、コスモポリタンな、都市型の、異なるタイプのポピュリズムが登場するうえでプラットフォームの果たし役割を完璧に見逃してきた。シリコンバレーに起源をもつ「プラットフォーム・ポピュリズム」は隠れた、反動的な破壊勢力によって推進され、デジタル技術を駆使して進歩や「民主化」を妨害する。
プラットフォーム・ポピュリズムのレトリックはフェイクであり、究極の勝者はサウジアラビアやソフトバンクである。しかし、それは重要ではない。プラットフォーム・ポピュリズムは過程がすべてであり、結果ではない。一貫した政治イデオロギーではない。
ヘッジファンドを襲撃したGameStop十字軍の怒れる人びとは、その利益が一過性であることを知っている。しかし、長期の利益はヘッジファンドやマネージャーたちのものだろう。それは民主主義の深化などではなく、1つの笑劇であり、収益性の高い劇場になる。
PS Feb 3, 2021
What’s Different About the GameStop Bubble?
JEFFREY FRANKEL
1月の最後の週に、GameStopの株価が週323%、月1700%も上昇した。企業には何も変化がなかった。ファンダメンタルズは変わらずに、投機的なバブルが起きた。しかし、これは少し違う。
バブルでは、時機をつかんで参加し、ぬけ出した投資家が、大金をつかむ。遅れて参加し、長く持ち過ぎた者は大きな損失を出す。カジノでルーレットをしているようなものだ。Charles Schwabや Robinhoodは胴元だ。
GameStopバブルが異なっているのは、金融市場に関する2つの解釈を試すものだからだ。第1の解釈は、金融市場は効率的に資本を、ファンダメンタルズの弱い企業から強い企業に、配分する、というものだ。第2の解釈は、ウォール街のトレーダーたちは市場を不安定化し、小さな投資家を犠牲にして巨額の利益を得ている、という。
GameStopの株を買ったのは、しばしば、若い、アマチュアの投資家であった。彼らはRedditのWallStreetBetsなど、メッセージボードで協力し、第2の解釈を採用した。小さな投資家たちがウォール街を打ち倒す、という話だ。
しかし、ダヴィデとゴリアテの物語には深刻な欠点がある。GameStopバブルに明確な悪者は存在しないことだ。どちらも同じ技術、オプションを売買した。ヘッジファンドはプットオプション(先に打って安値を待つ)、小規模投資家はコールオプション(高値を期待して保有する)を買った。
ショート・セラーは敵意を持たれやすいが、どちらのアプローチも本来的に非道なものではない。ショート・セラーは、過大評価された株を売って、企業のファンダメンタルズに従わせる。それは、金融危機になるまでバブルが膨張するのを防ぎ、また、怪しい経営内容の企業に関心が集まることにつながる。
小規模の投資家も悪者ではない。カジノで儲けるのも、楽しむのも、あるいは、ポピュリスト的な政治的主張に従ってヘッジファンドを懲らしめるのも、彼らの権利である。明らかに、巨大なヘッジファンドがいくつか集まって、同じような投機を組織すれば、違法な市場操作である。しかし、自発的に集まってGameStop株を買った小規模投資家には当てはまらない。
極端な不平等の時代に、GameStop投資は多くの共感を得る。ヘッジファンドは損失を出したにもかかわらず、なお非常に裕福だ。しかし、トレーダーたちは苦しむだろう。遅れて購入した高値の株を保有しているからだ。ソーシャルメディアが投機を煽るキャンペーンを広めなければ、彼らは投資しなかっただろう。
しかも、Robinhoodは投機的に売買した銘柄を制限し、その株価は暴落した。金融規制の正当な任務の1つは、何もかも失うようなことになると知らない投資家を守ることだ。証券取引委員会SECは、ルーレットに参加する投資家ではなく、カジノの胴元を規制し、小規模投資家の保護を求めている。RobinhoodがSECの調査対象になったのは、これが最初ではない。
Robinhoodは金融エスタブリシュメントの一部である。しかし、投資家たちはまだWallStreetBetsを信用している。ポンチ金融(ねずみ講)の犠牲者を思い出す。彼らは自分たちの損失を詐欺師のせいだと思わず、閉鎖させた規制当局を憎むのだ。
FT February 4, 2021
The Robinhood drama teaches us to look beneath the surface
Gillian Tett
Robinhoodのようなアプリによる取引は、民主化を唱え、透明性を飛躍的に増した。しかし、ヘッジファンドなどが利用する金融市場の複雑な配管は、小口投資家に見えないままだ。
FT February 5, 2021
The money behind Robinhood is pure Sheriff of Nottingham
Gillian Tett
● アメリカ歴史論争
FT January 29, 2021
The language of war has no place in cultural debates
Roly Keating
NYT Feb. 1, 2021
The 1776 Follies
By Michael Kazin
FP FEBRUARY 3, 2021
The United States’ Demographic Revolution Doesn’t Need to Be Destabilizing
BY MONICA DUFFY TOFT
● ウイルスとの戦争
FT January 29, 2021
A time for big questions: lockdown life and late-stage communism
Alec Russell
FT January 30, 2021
Global co-operation is needed to beat the virus
FT February 1, 2021
Why the European Commission failed the vaccine challenge
Gideon Rachman
PS Feb 2, 2021
Vaccination Is Not Enough
SIMON JOHNSON, ANETTE (PEKO) HOSOI, MELEA ATKINS
FP FEBRUARY 2, 2021
Vaccine Nationalism Harms Everyone and Protects No One
BY TEDROS ADHANOM GHEBREYESUS
● アリババ規制
FT January 29, 2021
Crackdown on Ant Group will be echoed elsewhere
Claire Jones
PS Feb 2, 2021
Why Is China Cracking Down on Alibaba?
ANGELA HUYUE ZHANG
● 貧困国と債務
FT January 29, 2021
Time to blow up problem debt
Claer Barrett
PS Feb 1, 2021
Can Cheap Countries Catch Up?
RICARDO HAUSMANN
貧しい国は生産性が低いのか。発展途上国が貧しく、その製品が安価なことは、成長を促すのか? むしろ、必要な技術移転を妨げ、経済発展を不可能にしている。
● 食糧危機
PS Jan 29, 2021
Prevent the Next Food Crisis Now
MARK LOWCOCK, AXEL VAN TROTSENBURG
● バイデン政権の誕生
PS Jan 29, 2021
Joe Biden’s Surprises
ELIZABETH DREW
NYT Jan. 29, 2021
What Should Drive Biden’s Foreign Policy?
By James Traub
The Guardian, Sun 31 Jan 2021
Joe Biden talks tough on putting the world to rights. But can he deliver?
Simon Tisdall
バイデンが署名した多くの大統領令は、トランプ政権の間違いを正すためであった。それ以外に、困難な課題は実質的な解決策を示すことができるのか。
日本の首相と東シナ海で領海に関して明確な方針を示したのは良いことだ。しかし、中国とは多くの発火点が残っている。ロシアのプーチンとの会談では、双方の争点を無視した。サウジアラビア、UAEへの武器売却を停止した。最もトランプ的なイスラエル首相との関係、そして、イラン、パレスチナとの関係回復は、まだわからない。気候変動に関する大統領令もそうだ。
その中身は、かつて上院で妥協を好んだバイデンが、どう変わったかを示すしかない。
FT January 31, 2021
Joe Biden’s ‘Buy American’ isn’t bad, it’s necessary
Rana Foroohar
過去5年間で明らかになったのは、アメリカの人口の大部分が、資本主義とリベラルな民主主義は壊れている、アメリカ経済は寡占体制だ、と考えていることだ。アメリカ企業の影響力や独占のパワーから見て、彼らがそう考えるのには十分な理由がある。
今後18カ月で、すなわち、中間選挙までに、バイデンは、彼の政権は国民に奉仕する政権である、株式市場の80%を所有する人口のわずか10%だけのためにあるのではない、ということを国民に確信させる必要がある。それができないとしたら、民主党は中間選挙で負けるだろう。バイデンが政策課題を達成する見込みは大きく失われる。他の世界との関与を再建する望みも失われる。
輸入財の低コストは、中産階級の他の支出が増加したことを相殺することができなかった。すなわち、過去20年間に多くの家計が実現できた所得の上昇を、教育、医療、住宅の費用増が上回った。リカード的な貿易理論が中国の国家資本主義や、金融化した世界市場の複雑さを説明しない、ということであり、それが浮動票を動かした現実である。アメリカ政府は、その両方を視野に入れる必要がある。
現時点で市場を支配しているネオリベラルなルールと構造は、20世紀の前半に登場したヨーロッパのファシズムに対応してできたものだ。当時の政策立案者たちは、ナショナリズムを抑えるためにグローバル資本とビジネスを結びつけようとした。
今は逆に、過大な経済グローバリゼーションが特定の利益集団に奉仕するようになったため、欧米で政治的な過激派が支持を集めている。バイデンの「バイ・アメリカン」計画は、新しい世界の経済的苦痛を粉砕する特効薬ではないが、現状における賢明な処置である。
PS Feb 1, 2021
Biden Goes Big
JOSEPH E. STIGLITZ
バイデン大統領は1兆9000億ドルの復興計画を提案した。共和党は反対している。しかし、2017年のトランプ政権が行った減税は富裕層と大企業のためだった。アメリカは巨大な財政赤字を出し、それは深刻な不況や戦争のときを除いて、かつてない規模だった。
対照的に、バイデンの支出計画は緊急に必要なものだ。アメリカの景気回復は、GDPでも雇用でも遅れている。経済はゼロ金利がなければ、もっと良いだろう。汚染に課税し、税制の累進性を回復することでも改善できる。
COVID-19を制御できても、パンデミックで傷ついた企業が回復することはない。強力なヒステレシス(履歴)効果があるだろう。また、グローバルな現象として、パンデミックは発展途上国の経済を悪化させるから、回復を妨げる。
バイデンの復興計画は、必要な特徴を備えているから、その成果は大きいだろう。州・地方政府が医療、教育、その他のサービスを供給する。中小企業を救済し、失業保険を延長する。それは貧しい人々の消費性向が高いから、効果的な回復策になる。
エコノミストたちはさまざまな制度の設計で意見を異にするだろうが、それは政治的妥協によって調整される。多額の支出が必要であることでは、意見が一致している。それに反対することは、苦しむ人たちへの同情心を欠き、危険なほどに近視眼的である。
FT February 2, 2021
Joe Biden should be doing more that really helps workers
Oren Cass
PS Feb 2, 2021
The Right Time for Joe Biden
IAN BURUMA
リベラルな民主主義は、危機においても、英雄的な指導者を必要としない。チャーチルは必要ない。バイデンは、F.D.ルーズベルトを見習うだろう。
NYT Feb. 2, 2021
How Afraid Should Corporate America Be of Joe Biden?
By Jesse Eisinger
PS Feb 4, 2021
What’s in a War?
HAROLD JAMES
戦争のたとえは正しいが、その意味を理解しなければならない。
● アメリカ情報政治
PS Jan 29, 2021
Can Digital Disinformation Be Disarmed?
KELLY BORN
NYT Jan. 29, 2021
The Coup We Are Not Talking About
By Shoshana Zuboff
NYT Feb. 3, 2021
The QAnon Delusion Has Not Loosened Its Grip
By Thomas B. Edsall
● バイデンと米中関係
FP JANUARY 29, 2021
Xi Tells the World What He Really Wants
BY STEPHEN M. WALT
習近平の演説は、他の諸国の指導者が示す主張と同じように考えることができる。習近平の本当の意図が何かは、誰にもわからない。しかし、この主張に対して、アメリカは自分たちだけが高潔であるとか、合理的であると見せかけることは意味がない。トランプ政権がしたことだが。妥協しないとか、恐れないとか、利己的である、と自分たちを示すのは愚かである。トランプ政権はそうした。
習が提案した「協力」の分野をテストすることから始めるべきだろう。無批判に受け入れることも、手に負えない形で拒否することも、間違いだ。ともに回避したことは何か、ともに有益なことは何か、明確にすることができるだろう。習がグローバリゼーションや多国間協力を支持したことを積極的に受け入れるべきだ。
国際システムをめぐる競争の多くはゼロサムにならざるを得ないが、真の課題は、競争の分野を制限し、真に協力できる分野で国際秩序を作り始めることだ。
PS Feb 1, 2021
The Crisis of American Power
MARK LEONARD
PS Feb 2, 2021
Biden, Xi, and the Evolution of Cooperation
MINXIN PEI
FT February 3, 2021
Containing China is not a feasible option
Martin Wolf
アメリカと同盟諸国は、台頭する中国に、どのような政策を示すべきだ。
中国に対する「封じ込め」は正しくない。なぜなら、中国の経済規模、世界市場とのリンクは、ソ連と違う。また世界は、アメリカがトランプ政権を生んだことを観た。
そこで、第1に、民主主義と経済を活性化し、第2に、国内において、真実と、言論の自由を重視する。第3に、多国間ルールを改革し、その中で中国の行動を制限する。第4に、中学的利益を明確にして、必世なら、同盟諸国問ともに戦う。最後に、協力できるグローバル・コモンズを強調する。
PS Feb 4, 2021
Biden’s Asian Triangle
JOSEPH S. NYE, JR.
中国の経済規模と人口は、その攻撃的な外交政策をもはや変えることができないだろう、という悲観論は間違いだ。アメリカ、EU、日本を合わせた規模は、中国を大きく超えている。
ソ連との冷戦と違い、中国は市場と権威主義的支配とを組み合わせることに優れている。アメリカが中国と対抗し、同時に、分野によっては協力しながら、中国の行動を変えるために、特にアジアでは、日本との関係が重要である。この同盟関係は国民に強く支持されている。
クリントン政権の関与政策は、中国のWTO加盟を支持し、失敗したと責められるが、それは違う。日本との安全保障面での関係を強化した。安倍元首相は、憲法解釈を変え、国連憲章の下で軍事力行使を合法にした。TPPを維持し、インド、オーストラリアを含むクアッドを推進した。
バイデン政権が台頭する中国との関係を考えるとき、日米関係は最優先される。
PS Feb 4, 2021
The Limits of the EU-China Investment Agreement
DANIEL GROS
EUと中国との包括的投資協定は、その名前が示すほど実質的なものはない。中国が労働基準を改善しなければ、空虚なものになる。
FP FEBRUARY 4, 2021
The United States and China Need to Cooperate—for the Planet’s Sake
BY JULIAN BRAVE NOISECAT, THOM WOODROOFE
● 移民政策
FP JANUARY 29, 2021
Let’s Not Blow This Chance to Fix Immigration
BY VIVEK WADHWA, ALEX SALKEVER
● 人種差別国家の転換
FP JANUARY 30, 2021
Germany’s Lessons on Confronting a Racist Past
BY ALLISON MEAKEM
何世紀にも及ぶ暴力的な人種差別の遺産にもかかわらず、アメリカ社会はその野蛮な過去と向き合うことを避け続けてきた。
ドイツのVergangenheitsaufarbeitung「過去を処理する」は、しばしば、歴史的な悪行、人種差別の遺産について、他国のためのモデルとなっている。
ドイツ人は自分たちを戦争の犠牲者だとみなしていた。しかし、1960年代に、ナチ党員の子供が成長して、両親がしたことを知ったとき、彼・彼女らが信じられないほどの嫌悪感を示した。
文化が非常に重要な役割を果たす。犠牲者としての物語を国家は普及させた。しかし、ドイツ人もホロコーストの生き残りたちの証言を読む者がいた。そこには違う物語があった。特に、1978年、アメリカのテレビ番組、ホロコーストが西ドイツのテレビでも放送された。抽象的な600万人の犠牲者ではなく、特定の2人の犠牲者だった。ドイツ人もそこに自分を重ねることができた。
1985年、Richard von Weizsäckerワイツゼッカー大統領の演説が行われた。ドイツの敗北した1945年5月8日を「解放の日」とよんだ。
歴史を書き直すのは、非常に深い、複雑な作業であった。それは子供の育て方、子供たちが歌う歌にまで影響する。国家の物語を書き変え、それは学校教育にも影響する。
人種差別のような犯罪の物語だけしかないような国家は、生き延びることができない。国民にはヒーローが必要だ。ヒーローが、われわれの共有するコミュニティーとそれが求める価値を実現しているからだ。
アメリカ南部にも黒人のリンチに反対する者がいたはずだ。彼らの名前はわからないが、彼らの名を思い出す必要がある。
賠償は、正義の問題であるとともに、戦術の問題である。アメリカ人も、当然、先住民たちに賠償するべきだ。
● スコットランド独立
The Guardian, Sun 31 Jan 2021
Scotland deserves true devolution – not the divisiveness of independence
Anas Sarwar
FT January 31, 2021
Now is the time for a detailed plan for Scottish independence
Andrew Wilson
スコットランド独立はかつてないほど起きる状態になっている。まだ不可避とは言えないが、起きるだろう。
2014年の住民投票では、統一派が「恐怖プロジェクト」を展開した。独立が自動的にEU加盟を意味することはない、というのだ。
しかし、UKの成長パフォーマンスはOECDの底に近く、ブレグジット推進派はスコットランドが望まないことを強行し、コロナウイルス対策ではUK政府が無能さを露呈した。
独立支持派は、移行期の詳細について、正直な議論を示すべきだろう。通貨、財政、債務に関するレガシーの支払い、そして境界線。
FT February 4, 2021
Tories must choose between Boris Johnson and the Union
Philip Stephens
● EUとロシア、トルコ、大英帝国、中国
FT January 31, 2021
A path for Joe Biden to reset US relations with Turkey
Sinan Ulgen
PS Feb 1, 2021
The Empires Strike Back at Europe
JOSCHKA FISCHER
EUの隣接地域に、旧帝国の栄光を回復することに執着する、3つの世界強国の末裔が対峙している。ロシア、トルコ、大英帝国だ。それぞれが、現在も歴史的にも、多くの共有する部分を持つ特異な関係を築いている。
プーチンのロシアは、ソ連としてアメリカに対峙した超大国の記憶に固執する。エルドアンのトルコは、バルカン半島から中央アジア、東地中海、北アフリカから中東全域におよぶオスマン帝国の地政学的、文化的な広がりを夢想している。最後に、ブレグジット後のイギリスは、NATOや文化的、歴史的な紐帯をヨーロッパ大陸と維持しつつ、自ら望んだ孤立を模索している。
良くも悪くも、EUはヨーロッパと3つの旧帝国との関係を継承し、平和的共存を求めねばならない。核大国であるロシアに対して、EUだけで対抗するのは難しく、まだアメリカの保護に依存している。しかし、ヨーロッパの主要な挑戦は東地中海である。海底に天然ガスの埋蔵が発見され、NATO加盟国間の衝突するリスクが高まった。トルコとギリシャ、EU加盟国のキプロスが含まれている。またリビア沿岸で、武器密輸を取り締まるNATOの任務から、フランスとトルコの間で艦船が激突する危険な状態があった。
潜在的な発火点が多く存在する。天然ガス開発をめぐる競争、リビア内戦へのトルコの介入、エーゲ海における昔からの紛争、上空と海上の境界線問題、キプロスをめぐる未解決問題。
エルドアンのトルコは、拡大主義的な「新オスマン」政策をすでに数年にわたって推進している。AKP政権との間でEU加盟交渉が行われたが、2006年、メルケル、シラクが交渉の扉を閉じた。
グローバルな好景気に乗って近代化を進めたが、エルドアンは自国の経済力を過大評価している。国内の政治基盤を変更してかもも、エルドアンはイスラム主義を掲げ、西よりも東に向けてアピールしている。
EUとトルコは加盟をめぐる論争を無視するとしても、まったく別々に進むことはできない。ロシア、イラン、中東、中央アジア、コーカサスの問題で、両者は関心を共有している。また難民の移動など、アジアとヨーロッパをつなぐ架け橋の位置にある点で地政学的な重要性を保持しているからだ。
ヨーロッパは長期のゲームにおいて負けるわけにはいかない。それは中国と、ブレグジット後のイギリスだ。もし中国の一帯一路が南欧に地保を築けば、EUの未来は大きく変化する。
● ミャンマーの軍事クーデタ
FP FEBRUARY 1, 2021
Myanmar’s Coup Shouldn’t Surprise Anyone
BY SALIL TRIPATHI
FP FEBRUARY 1, 2021
Is Beijing Backing the Myanmar Coup?
BY AZEEM IBRAHIM
FT February 2, 2021
Myanmar coup reverses a fragile democracy
FP FEBRUARY 2, 2021
Who Lost Myanmar?
BY MICHAEL HIRSH
FP FEBRUARY 2, 2021
The Myanmar Coup Is the First Test for Biden’s Democracy Agenda
BY MICHAEL J. GREEN
あまりにも広く軍隊が支配する中で、ミャンマーの民主化に圧力をかけるためアメリカのオバマ政権が制裁を解除するのは早すぎた。
PS Feb 3, 2021
After Myanmar’s Coup
SHASHI THAROOR
FT February 4, 2021
The west needs to talk to Myanmar’s generals
Gwen Robinson
ロヒンギャ難民問題でスーチー女史の名声が傷ついた後、再び西側は彼女に指導力を期待することになった。選挙の大勝で、彼女は軍の不満を軽視したのかもしれない。軍は暗黒時代の復活を求めている。
中国は安保理による制裁を拒否している。軍と交渉するうえで、日本からの投資と、ASEANの圧力は、軍事政権にとって有効な影響力になるだろう。
FP FEBRUARY 4, 2021
What America Should—and Shouldn’t—Do About Myanmar’s Coup
BY STEPHEN M. WALT
ミャンマーのクーデタに対するバイデン政権の対応が、民主化に対する最初の試金石だ、という主張は間違っている。リアリストから観て、アメリカ政府がミャンマーの軍政に対して行動することはほとんど何もない。
こうした状況について、アメリカ外交には基本的なガイドブックがある。ミャンマーに侵攻することも、経済封鎖することもない。インフラを攻撃したり、重要なサービスの提供を拒否したりする案もあるが、採用されない。口頭での非難といくつかの援助計画の見直し、的を絞った数名の個人に対する制裁であろう。
明白な事実として、アメリカはミャンマーに対するレバレッジを持たない。貿易額は14億ドルあるが、中国はその10倍以上も貿易している。投資額も中国の方が多い。ミャンマーは、中国の一帯一路における重要な目標国だ。クーデタについて、中国は驚いていない。
しかし、より長期的には、アメリカの影響力が明らかに重要である。中国はミャンマーを自国の戦略に必要な経済回廊として、鉄道や港に大規模に投資してきた。マラッカ海峡を通らずにインド洋に出るためだ。しかし中国とミャンマーの関係は諸刃の剣である。強力な隣国に支配されるのを恐れるミャンマーの支配者たちは、そのヘッジとして、西側との関係強化を望んできた。
バイデン政権は、ミャンマー政府が民主化や人権を重視する改革から後退し、軍事体制に戻ろうとするなら、アメリカや西側との関係が悪化することを明確に伝えるべきである。
また、ミャンマーの実験は民主化を支持する外交への警鐘だ。独裁者を追放し、リベラルな価値を広めることに熱心なあまり、新しい政治秩序を築くことがどれほど困難なものか、新しい体制になっても、旧来のネットワークや縁故、制度、価値が続き、あるいは、復活することを忘れることがある。それは予想外の結果を不可避に生じ、めったに期待されたことをもたらさない。
Aung San Suu Kyiスーチー女史の変遷について失望が生じた。民主的な選挙によって決まった指導者が、すべてネルソン・マンデラになるわけではない。アフガニスタンのカルザイ、イラクのマーリキ―首相、オーストリアのオルバンになるかもしれない。
ミャンマーは、リベラルな価値を広めるのが、遅い、不安定で不確実なプロセスである、と教えている。加速させるための情熱的な努力が、不道徳な無関心と同様に、その過程を損なう可能性がある。バイデンの真のテストは、ミャンマーを始まったばかりの政権にとって重大な瞬間とみなすのではなく、忍耐と抑制を示せるか、ということだ。
● ワクチン接種
FP FEBRUARY 1, 2021
Reopening Haves, and Have Nots
BY EDOARDO CAMPANELLA
ワクチン接種の普及が経済回復の差をもたらす。
FT February 2, 2021
No long-term silver lining for markets
Brendan Greeley
FT February 2, 2021
Europe should pay attention to Germany’s debt brake debate
Ben Hall in London
PS Feb 2, 2021
Give Workers a Fighting Chance
DARON ACEMOGLU
資本に対する分配が労働よりも増えるのは、過剰な機械化を奨励する税制に依存している。
PS Feb 3, 2021
From Moonshots to Earthshots
MARIANA MAZZUCATO
パンデミックは資本主義のさまざまな弱点を明らかにした。社会にとって必要な部門、医療システムに十分な民間投資を実現することに失敗した。政府は、勝者を選択することはないが、方向性を選択することができる。
PS Feb 3, 2021
Multilateral Cooperation for Global Recovery
EMMANUEL MACRON, ANGELA MERKEL, MACKY SALL, ANTÓNIO GUTERRES, CHARLES MICHEL, URSULA VON DER LEYEN
最も深刻な危機は、最も野心的な政治的決定、国際協力を実現する。パンデミックは、検査やワクチンについて、グローバルな公共財の供給を求めている。
The Guardian, Thu 4 Feb 2021
I struggled as a self-employed Amazon driver – while the company boomed
Rupert Shakespeare
FT February 4, 2021
Investor-friendly economics on trial in Andean elections
Michael Stott, Latin America editor
● ヨーロッパ左翼
FT February 2, 2021
Joe Biden is no guide for Europe’s lost left
Janan Ganesh
● 日本のロボット
FT February 2, 2021
Japan’s love of robots is paying off
Leo Lewis
● 核軍縮・管理体制
FP FEBRUARY 3, 2021
STARTing Over, or the End of the Line for Nuclear Arms Control?
BY MICHAEL MORAN
FP FEBRUARY 4, 2021
Biden, Asia, and the Politics of Nuclear Arms Control
BY C. RAJA MOHAN
中東であれ、朝鮮半島であれ、西太平洋であれ、アメリカ政府の真の課題は持続的な均衡による秩序を築くことだ。
● 再生可能エネルギーの世界政治
FT February 4, 2021
How the race for renewable energy is reshaping global politics
Leslie Hook and Henry Sanderson
● UK自動車産業
FT February 4, 2021
UK carmakers after Brexit: a race to attract battery production
Peter Campbell in London and Kana Inagaki in Tokyo
● ベゾス退任
FT February 4, 2021
Jeff Bezos joins changing of guard at crunch time for Big Tech
Richard Waters
● ドラギ就任
PS Feb 4, 2021
Draghi and the Defense of Democracy
MELVYN KRAUSS
FP FEBRUARY 4, 2021
Italy’s Politics of Purgatory Won’t End Well
BY CARLO INVERNIZZI ACCETTI
ポピュリズムに、テクノクラシーがもたらす簡単な解決策がある、というのは幻想だ。
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The Economist January 16th 2020
Village elections: Why bother counting?
Lexington: Conscience of some conservatives
Sticky authoritarianism: The ghetto strikes back
The economy after Brexit: Not with a bang but whimper
Bagehot: Trump? Don’t think I know him
Democracy: Maddison’s nightmare
(コメント) 支持者たちによる議事堂襲撃を根拠にしたトランプの弾劾裁判について、また、間違った情報を拡散する政治手法とプラットフォームについて、いくつか記事が載っています。
中国で、1998年に、地方で選挙が導入され、クリントン大統領は政治改革が進むことを期待しました。中国共産党は地方政治における腐敗を抑えるために、代表を選ぶよう圧力をかけたようです。また、共和党が落ち込んだジレンマは、トランプに限らず、軍や保守派に限らず、労働者からも支持を得ることと、小さな政府という主張でした。財政規模を拡大せずに、彼らは価値をめぐる論争に注意を向けたのです。
ブレグジット後のイギリスが、EUとの交通を遮断されてパニックになったわけではなく、物資も不足していない、と自慢するのは早過ぎる、と記事は注意します。成長に必要な技術革新と生産性上昇を、EU単一市場の競争から孤立することで失うだろう、と。
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IPEの想像力 2/8/21
森元首相が、発言を撤回し、辞任しないというのであれば、それも「不可能」ではないと思います。何が問題だったかを良く学んで、日本のさまざまな分野で続く支配的な男性社会の価値観、政治的コネによる密室の調整、権力や富の老人による既得権化・・・など、すべて徹底的に改革する、と約束すること、そして、オリンピックに至る発言と行動でそれを示すことでしょう。
The Economist (January 16th 2020) の記事は、アフリカのウガンダ、USとUKの政治、そして民主主義に関する悲観論を示しています。
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記事によれば、ゲットー育ちの大統領候補Robert Kyagulanyi Ssentamu、通称ボビー・ワインを厳しく弾圧した現職大統領Yoweri Kaguta Museveniムセベニは、独裁者イディ・アミンを打倒する政治指導者で、マルクス主義者であった。
ウガンダは、他のアフリカ諸国と同様、1980年代に国際的な債権者からの圧力を受けて市場改革に向かった。債務免除と、一次産品価格の上昇により成長を実現した。しかし今なお、多くの国が農業と鉱業に依存したまま、若者たちは都市のインフォーマル部門で、貧しい、不安定な生活に苦しむ。
ムセベニは、冷戦終結とともに、貿易や外国投資を受け入れ、インフレ率は2桁にならなかった。しかし工業部門の雇用は減った。仕事の無い若者たちは産油諸国へ出稼ぎに行き、都市の不平等、不正義は顕著になった。ボビー・ワインの歌は、若者たちの不満を代表して強く支持された。
ワインの選挙キャンペーンは都市の若者が中心で、地方に浸透するのはむつかしい。老人たちはかつての無秩序と暴力の再現を恐れている。独裁者と闘った若きムセベニは、今、スラムの制圧にその力を注ぐ。
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MAGAの帽子を脱いで、ごみ箱に捨てた。イギリス政府は、議事堂襲撃に驚き、トランプを国賓として議会に招いて演説してもらう、という考えを消し去った。
しかし、ブレグジット推進派とトランプ勢力とをつなぐパイプは太い。イギリスの右派とトランプの世界観は、広く、深く、結びついている。シンクタンクも、保守派の知識人も、新興メディアの手法も共有した。
ブレグジットとトランプは大西洋を越えて英米保守派の共通する問題に対する解答だった。保守政党が、教育を受けた若者たち、労働者階級から支持を得るには、経済的な利益ではなく、保守的価値による文化戦争で政治を分断するしかない。経済政策ではなく、ナショナリストの政治的宣伝に終始した。
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The Economistの記事「民主主義:マディソンの悪夢」は、民主主義に関する楽観論と悲観論を紹介しています。数千年におよぶ民主主義の歴史において、「群衆の狂気」について悲観論が常にありました。プラトンは、民主制を必ず独裁や無政府状態に至る「群衆の支配」とみなして拒否し、むしろ、文明を維持する支配的エリートを求めました。子供のときから衝動を抑える訓練を受けた、本能よりも叡智を優先する哲人王です。
自由を求める民衆のパワーが称賛されるようになったのは、フランス革命とアメリカ独立革命が起きたからです。しかし、革命は暴力の支配で終わります。バークがフランス革命に対する保守派の反対論を書いたのは、テロが支配する前でした。群衆が広める集団心理は、おとなしい人々にも狂気を広めて怪物に変える。革命は、集団殺戮に至り、その後、独裁者が現れて法と秩序を再建する。
アメリカ革命でも、指導者たちは群衆を恐れました。民主主義は、憲法、上院、最高裁、権力の分割とチェック・アンド・バランスで、何重にも制限を受けたのです。トクヴィルは、それに加えて、市民文化を重視しました。富や権利において平等は社会で、自律し、教育を受けた市民たちが、民主制においても、常に、責任あるエリートを生むように。
アラブの春も、アメリカの議事堂襲撃も、私たちは観ました。今や、民主主義に対する楽観論は後退し、悲観論が優勢になっています。より洗練された楽観論を求めます。
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森元首相が変心して組織委員会委員長を続けるのは、ムセベニが秘密警察を廃止し、ボビー・ワインを称えて、軍や与党の幹部を覚醒した若者たちに入れ替え、民間部門の成長と雇用を促すための選挙と位置付けて、すべての国民に投票を促すことに等しい、困難なものかもしれません。
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