IPEの果樹園2021
今週のReview
2/1-6
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ジョー・バイデン就任式 ・・・新しい経済政策 ・・・共和党と部族的政治 ・・・米中関係の打開 ・・・歴史と文化戦争 ・・・ナワルニーの最終決戦 ・・・医療・食糧と安全保障
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 資本主義のモデル
PS Jan 19, 2021
Anatole Kaletsky
Says More…
世界金融危機の後、市場と国家との間に新しいバランスは成立したのか? 1980年代のように、USとヨーロッパにおける資本主義のモデルは変化するのか? 次の世界資本主義はどのようなモデルをめざすのか?
● 移民政策
NYT Jan. 21, 2021
Can Biden Finally Fix America’s Broken Immigration System?
By Spencer Bokat-Lindell
昨年2月のインタビューで、バイデンは、オバマ政権の移民政策が犯罪にかかわった移民だけに焦点をあてていたことを、失敗だった、と後悔した。
大統領としての宣誓をして数時間後に、バイデンはこの間違いを正した。記録を持たない移民を逮捕させるトランプの大統領令を停止するだけでなく、反移民行政の4年間を終わらせて、「われわれの移民システムに人道とアメリカ的価値を取り戻す」と約束した。
バイデン・プランの中身は、まず、市民権を得るまで8年間の道筋を示す。1050万人が直ちに合法的な一時的地位を申請できる。5年後に、犯罪などの身元調査、納税を経て、グリーン・カード(永住権)を得る。さらに3年間を経て、市民権を得る。
家族の呼び寄せや雇用を重視した移民システムにする。職場における権利を侵害され、強制送還で脅されている移民たちを守る。そのための委員会を、労働者、雇用者、市民権運動の代表を入れて強化する。
中米El Salvador, Guatemala and Hondurasからの移民流入が起きる原因に対処するため、40億ドルの改善計画を設ける。それは、人びとが自国を脱出することを願う条件である、貧困や犯罪などを減らすことが目的に使う。
130万件の遅れが生じている移民法廷の処理を促進する。国境地帯の治安を回復する。難民制度を改善する。
FP JANUARY 21, 2021
Biden’s Bold Gamble on Immigration Is About America’s Future
BY EDWARD ALDEN
● ジョー・バイデン就任式
FT January 22, 2021
Joe Biden’s US must act like a new leader, not a returning one
Anne-Marie Slaughter
NYT Jan. 22, 2021
A President Can Govern in Poetry
By Timothy Egan
NYT Jan. 22, 2021
Biden’s 100-Day To-Do List
By Frank Augugliaro
FP JANUARY 22, 2021
And Now for the Hard Part
BY JONATHAN TEPPERMAN
ドナルド・トランプ前大統領の公約を優れたものとあなたが考えていたら、ここ数日のアメリカの変化に驚いただろう。ジョー・バイデン大統領の就任演説は、温厚で、人道的な、アメリカを真に団結させることを願う気持ちにあふれる、完璧なものだった。優れたスタッフをそろえて、この数日、アメリカ人の多くが支持する重要な政策転換を、気候変動、パンデミック、移民など、大統領令で行った。
それは目もくらむような変化であるが、バイデンが重大な障害に直面すると思う。これらは必要であっただろう。新政権に対する強い期待を和らげる。問題の解決には構造的問題を改革する、とアメリカが決断しなければならない。
上院では、すでに行き詰まりが見える。パワーの分担をどうするのか。共和党の議事妨害フィリバスターの権利を認めるのか。トランプの弾劾裁判をいつから始めるか。
バイデンは、上院が弾劾裁判で紛糾するのを避けて、新しい法案を審議することを望んでいる。しかし、民主党員たちは正義を求めている。
最も重要なことは、下院の139人の共和党議員がバイデンの勝利について反対投票したことだ。こうした行為は有権者やビジネス界、共和党指導部を不快にしただろう。しかし、議員たちは憲法に反するような姿勢を罰せられない。
これらのことが示すのは2つだ。第1に、アメリカが深く分断されていること、第2に、バイデンがどれほど改革を望んでも、その実行は非常にむつかしい。
バイデンが共和党からも支持を得る、と期待する者。上院における長い経験から超党派の支持を得られる、政治と文化戦争とを切り離す、と期待する者。バイデンの穏やかな性格と人助けに尽くす真情が、これまでの政治を変える、と期待する者がいる。
しかし、国家の重要な問題を解決した世界の事例が示すように、改革が実現するには、大きな危機が起き、政治家たちが自分たちの短期的利益よりも国益を最優先する、ということが必要だ。
アメリカではそれが期待できない。アメリカの政治システムは、すべての誘因が妥協を拒む方向に働いているからだ。議員たちは選挙区に居座り、議会では党派を超えて指示することを阻む。改革を阻むための特殊利益団体からの政治献金もそうだ。
改革は不可能ではない。集団的な善を、個人的な善よりも優先すると決断すれば。しかし、このシステムにおいては、前進するために政治家が巨大なリスクを取り、しかも政治的に得るものは保障されない(おそらくは、得られない)。
FT January 23, 2021
Joe Biden: the new president seeks to heal a divided US
James Politi in Washington
The Guardian, Sun 24 Jan 2021
Hurrah for triumph of the ‘centrist dad’ but don’t discount Joe Biden’s radicalism
Will Hutton
先週の水曜日。ワシントンの光景は素晴らしかった。アメリカ国民は、大嘘を吐く略奪者を取り除き、新しい夜明けを宣言する、尊厳と上品さを備える大統領を迎えた。
「民主主義が制圧した」と彼は宣言した。「真実があり、権力と利益を求める嘘がある。私たち一人一人が、真実を守り、嘘を退ける義務と責任を持っている。」 それは、驚くべきことに、退任した大統領が暴徒を使って威嚇した同じ場所である。アメリカはわれわれに、その最良かつ最悪の姿を示した。
バイデンは、COVID-19対策に「全面的な戦時体制」を採った。必要なものを、必要な規模で、生産するように命令できる。
アメリカは多国間の協力関係を再建する。EUは同盟者であり、ブレグジット後のイギリスは副次的な相手でしかない。バイデンが20億回のワクチン接種を国際的に約束したことは西側の友人を増やし、中国の野心を砕くだろう。メキシコ国境の壁を建設中止にし、イスラム教徒の移動禁止を撤回した。
国内の経済政策でもそうだ。1.9兆ドルの支援パッケージ、インフラの更新、ステークホルダー経済を築く、利潤よりも社会目的の重視する、労働組合を強化する。これはラディカルな中道派だ。
バイデンが成功するなら、それはイギリスの政治も変える。ブレグジットはわれわれのトランプだから。バイデンのように、広い同盟を形成し、ブレグジットに反対するべきだろう。労働党の指導部は選挙の敗北によって自信を失った。条件闘争ではなく、自分たちの信念のために闘うべきだ。
FT January 24, 2021
An African lesson in reform for the US after Donald Trump
Patrick Gathara
以前、アフリカで最も安定しているとみなされていたケニアの政治システムは、12年前、崩壊の淵に立っていた。紛糾した選挙に、エスニックな緊張状態が加わったことが、主要な原因であった。暴力が生じて、少なくとも92人の死者を出した。
選挙は国際的調停を経て、競争する双方の間に合意ができた。最も興味深いのは、その合意が、勝者は誰か、をはるかに超えるものであったことだ。より強固な政治システムに向けたロードマップが作成された。新しい憲法の制定、真実と和解のための委員会から、歴史的な問題地点の発掘、選挙システムの改革まで、暴力や政治的崩壊が再発するのを防ぐため合意された。
「改革せよ!」は、アフリカで醜い独裁者があらわれると、常に唱えられた。1980年代から20年にわたり、大陸に広まった。不安定化、軍事クーデタ、弾圧、略奪政治のはびこる大陸であったが、冷戦が終わり、各地の政治的な革新者、改革をめざす官僚が声を上げた。
私の記憶に照らして、最も重要なことは、謙虚さであった。これはアメリカ人の多くが示す特徴ではない。変化をもたらすのは、より良い未来の可能性だ。しかし、アメリカはつねにトップであることを意識しているから、未来の衰退をリスクとしてしまう。
The Guardian, Mon 25 Jan 2021
Biden wants unity and democracy. But in the US these have always been in conflict
David Runciman
バイデンは就任演説で、3つの言葉を多く用いた。「民主主義」、「統一」、「真実」である。
アメリカ建国の指導者たちは、これら3つを同時に主張することに驚いたであろう。彼らは、独立国を一緒の共和国として走らせることに苦労していた。バイデンと同じように、「統一」、「真実」を重視したが、「民主主義」は厄介なものであり、それが独裁にならないよう、厳重な制約を課した。
「民主主義」を強化するとしたら、激しい論争と分断をともなうだろう。「民主主義」は危険なものであり、予測不能であるため、団結や政治的平和を破壊し、「民主主義」が達成されたというより、それが無限に延期されたように見えるだろう。
NYT Jan. 25, 2021
How to Fix 4 Years of Trump’s War Against Government
By Neil Eggleston and Alexa Kissinger
NYT Jan. 25, 2021
Helping Kids Is a Very Good Idea
By Paul Krugman
FT January 26, 2021
Joe Biden must choose between unity and change
Janan Ganesh
NYT Jan. 26, 2021
Made in the U.S.A.: Socialism for the Rich. Capitalism for the Rest.
By Thomas L. Friedman
PS Jan 27, 2021
Biden’s Grand Opening
JAMES K. GALBRAITH
第1に、公衆衛生、第2に、所得支援、第3に、賃金上昇と公平な市場。
NYT Jan. 27, 2021
Biden’s Relief Plan Is a Trojan Horse. And I’m OK With That.
By Steven Rattner
FT January 28, 2021
‘Buy American’ plan will not help US workers
FT January 28, 2021
Biden should avoid America’s toxic history wars
Edward Luce
トランプは、任期の最後に、パンデミックを抑えることに失敗したため、争点を植民地からの独立、1776年に向けた文化戦争に変えた。COVID-19よりも、BLMを敵にしたかった。
FT January 29, 2021
Olive is the new green in fighting climate change
Gillian Tett
● 新しい経済政策
FT January 22, 2021
Markets love the colour of Biden’s money
Merryn Somerset Webb
FT January 23, 2021
‘A massive second-half recovery’: Biden, China and the global economy
Chris Giles in London
FT January 25, 2021
Joe Biden and the ‘great rebalancing’ of the US economy
Rana Foroohar
「富(資産)にではなく、厳しい労働に従う者に報酬が与えられるときだ。」 ジョー・バイデン大統領のこの声明は、おそらく、新政権の経済政策プランを、最も具体的に表現するものである。バイデンは、最低賃金を引き上げ、企業に増税し、労働と資本との間のパワー・バランスを変え始めている。
さらに、多くの企業がパンデミックを生き残るために、技術に投資することで労働者を減らして、コスト・カットをめざしている。労働者のGDPシェアが数十年にわたり低下した要因の1つは、自動化であった。
しかし、Googleなど、ハイテク部門の労働組合が結成されるだろう。また、労働者にとって不利に働いたグローバルな人口動態が終わり、逆転するという予測がある。
FT January 25, 2021
Investor anxiety mounts over prospect of stock market ‘bubble’
Katie Martin in London
PS Jan 26, 2021
The Fed Must Step Up Again
WILLEM H. BUITER
アメリカ連銀は、一段の、金融緩和を行うべきである。それは、政府が、パンデミック後の急速な回復に向けて、パンデミックによる需要の一時的減少を補うための刺激策を貨幣化するものだ。貨幣化はインフレーションに関する懸念を生むが、現在の生産余力を考えれば、そのリスクは小さい。
ワクチン接種が普及し、回復が本格化すれば、財政・金融政策を駆使して、インフレを抑制することができるだろう。
PS Jan 26, 2021
Will COVID Accelerate Productivity Growth?
DALIA MARIN
FT January 27, 2021
Competence is Joe Biden’s best strategy
Martin Wolf
バイデンには成功してほしい。しかし、「成功」とは何か? それは何よりも、政治に秩序を回復することだ。共和党は現在の方向を変えねばならない。それなしには、国内の安定性が回復せず、世界におけるアメリカの指導力もむなしい。
トランプがいなくなっても、トランプ主義は残ったままだ。彼よりもっと賢いポピュリストが現れて、法律や憲法を緩やかに変更し始めるだろう。
新財務長官になるイエレンJanet Yellenは、数日前に、歴史的な低水準にある金利を利用して、すべてのことを実現することが最も賢明なことである、と語った。しかし、トランプ政権では巨大な財政赤字を出しながら、共和党が財政健全化の主張を復活させて、何としても反対するだろう。
2022年の中間選挙で敗北することを避けるために、政府は成果を必要としている。ワクチン接種とCOVID-19からの回復は良い結果をもたらすかもしれない。しかし、世界における役割は、アメリカの民主主義にかかっている。人種的、社会的、文化的な不満が蓄積されている。政治的な右派が大きな声を占めていた。
バイデン政権は有能なスタッフを集めて、民主的ガバナンスで、政府を攻撃するレーガンの偏見を翻すかもしれない。
政府だけでなく、ビジネス界と富裕層が重要だ。彼らの利益追求と右派ポピュリズムの融合が、共和党を破滅させたからだ。これはゲームではない。バイデンの勝利に、すべてがかかっている。
FT January 27, 2021
Learning from market bubbles past
Robert Buckland
FT January 28, 2021
Occupy Wall Street spirit returns as traders upset the elites
Katie Martin
● 共和党と部族的政治
FT January 22, 2021
We’re living in a golden age of ignorance
Tim Harford
近代史に、自由な社会において、これほど多くの人がそのように破壊的な嘘を信じた時期があっただろうか?
ドナルド・トランプに投票した人びとの90%近くが、ジョー・バイデンの勝利は違法である、と信じている。それゆえ、民主的な政権移行を暴力的に妨害した最近の事件を、かなりの人が支持しているのも不思議ではない。
COVID-19の危険性を、誇張されている、と否定する人々も多い。UKでは22%がそう考えており、他の国ではもっと多い。ワクチンの接種を否定する議論は、その典型だ。
歴史家のRobert Proctorは、真実を無視する現象を「アグノトロジー」とよんで研究した。タバコの大企業が、喫煙のリスクに関する科学的証拠に疑うよう勧めて、大成功した現象に興味を持って、そう名付けた。
人びとは、現実と切り離されて暮らしている。事実とは無関係な「ニュース」だけ観て過ごす。また、政治的な部族化が進む。仲間の言うことしか信じない。政治と関係ない科学の問題でも、政治的な党派によって歪められる。気候変動やワクチンがそうだ。
陰謀論を描く者は、たわいないことに、とんでもなくエネルギーを注いで、特別な意味を導き出す。圧倒的な否定する証拠があっても、それは陰謀によって作られたフェイクニュースだとみなす。
こうした者を一掃することは簡単ではない。
彼らを啓蒙するのではなく、同じような盲点をわれわれも持っているとみなすべきだ。われわれは切り離され、部族的に暮らしている。重要な真実を否定したり、無視したりすることになりがちだ。われわれも間違っているかもしれない、と問うことが、ゆるやかに事態を改善する。
FT January 23, 2021
The Republican party after Donald Trump
FT January 25, 2021
How to fix the flaws in American democracy
David Rubenstein
PS Jan 25, 2021
The GOP’s Fake Budget Hawks
JEFFREY FRANKEL
FT January 27, 2021
‘Here is Cyrus Vance’s moment’: Donald Trump’s new legal nemesis
Joshua Chaffin in New York
NYT Jan. 28, 2021
Why a Trump Third Party Would Be a Boon for Democrats
By Michael Tomasky
● 日本
FT January 22, 2021
The Tokachi Millennium Forest, a landscape for a thousand years
Robin Lane Fox
十勝地方に、アイヌの広大な土地を、1000年の時間で、景観設計するビジネスマンがいた。
FT January 23, 2021
Finding Tokyo’s hidden treasures
Stefan Wagstyl
FT January 24, 2021
Japan’s anime goes global: Sony’s new weapon to take on Netflix
Leo Lewis and Kana Inagaki in Tokyo
「鬼滅の刃」、ポケモン、スタジオジブリ。
● 米中関係の打開
PS Jan 22, 2021
The US and China Must Cooperate in Space
ANNE-MARIE SLAUGHTER, EMILY LAWRENCE
宇宙の開発、商業利用に関して、国際ルールを作るために、米中は協力するべきだ。
FT January 23, 2021
Wall Street eyes China despite continued tensions with US
Michael Mackenzie
FT January 24, 2021
Joe Biden and US allies need a joint approach to China
NYT Jan. 24, 2021
Hong Kong Crackdown Is an Early Test for Biden
By The Editorial Board
北京とトランプ政権とのしっぺ返し外交は続いているかもしれない。しかし、香港に関しては、前政権とバイデン政権は基本的に一致している。
習近平主席とその政権幹部たちは、香港をもっと超えて、人権問題や民主主義が西側の攻勢にとって武器になっている、と考える。習が、未来を共有する社会、画一性ではない調和、と言うとき、習の権威主義体制が、西側のリベラルな民主主義と同じように、正統なものだ、という意味である。
それゆえに、香港を許せない。香港の抗議は、習の非リベラルなイデオロギーを批判するからだ。勇敢な香港市民が、「一国二制度」の下で約束されていた人権を主張したことで、北京の真の意図を暴露した。
闘争は終わっていない。香港の司法は独立した判断を示した。
アメリカの中国政策は、中国の経済的・軍事的パワーを認めることと、香港市民の権利を擁護することとの間で、バランスを取る。北京の強権支配を拒むマカオ、ウイグル、チベットもそうだ。台湾の民主主義は、香港に並んで、北京の姿勢を問いただす。
バイデン新政権は、外交の重要な選択に直面するだろう。
PS Jan 25, 2021
A New Tone in US-China Relations?
ANDREW SHENG, XIAO GENG
FP JANUARY 27, 2021
Why Attempts to Build a New Anti-China Alliance Will Fail
BY KISHORE MAHBUBANI
オーストラリア、インド、日本、アメリカが中国について心配するのは当然だ。より強力な中国との共存は楽しいことではない。彼らがthe Quadrilateral Security Dialogue(Quad)を結成して協力し、リスクを回避するのも同様に正しい。残念ながら、クアッドは2つの単純な理由でアジアの歴史を変えるものではないだろう。第1に、4か国は異なる地政学的関心と脆弱性を持つ。第2に、根本的に間違ったゲームを戦っている。アジアの最大の戦略的なゲームは経済であって、軍事ではない。
オーストラリアは最も脆弱である。その経済が中国に高度に依存しているからだ。オーストラリアは、30年間も切れ目なく成長した、と自慢するが、それは中国の経済圏に機能的に統合したからだ。
それゆえ、オーストラリアが中国に対して、公然とCOVID-19の国際調査を要求して、そのメンツをつぶすのは愚かであった。そのような要求は、もっと賢く、慎重に、プライベートで行うべきだった。オーストラリアは今や墓穴を掘った。アジアの諸国はオーストラリアと中国に注目している。その結果はあらかじめ決まっているのだ。
中国を侮辱すれば、どの国もオーストラリアのようになる。「中国がすべてのカードを持っている。」 クアッドは機能しない。インドはアメリカの対中国政策と一致しない。日本も中国との関係改善を進めている。中国封じ込めには賛成しない。
日本は、違う意味で脆弱である。日本は友好的ではない近隣諸国、中国、ロシア、韓国に囲まれている。各国との関係は難しく、しかも緊張している。日本は、ますます強力になる中国との関係を調整する必要がある、と切実に感じている。20世紀の前半を例外として、日本はつねに、この強力な隣国と平和的に生きてきた。両国がすぐに友人になることはないが、日本は中国の核心的利益を理解している、というシグナルを送るだろう。
インドは、日本と逆である。インドと中国は、2つの古代文明として並んで生きてきたが、ヒマラヤ山脈によって隔てられていた。技術進歩でヒマラヤは乗り越えられない障壁ではなくなったため、両国の兵士が衝突する機会が増えた。2020年6月もそうだ。反中国の感情がインドを包み、数年にわたって関係が悪化するだろう。
しかし、中国は忍耐心がある。なぜなら、時間は中国を有利にするからだ。1980年、中国とインドは同じ大きさであった。2020年までに、中国は5倍の規模に成長していた。長期的関係は、常に、両国の経済規模に依存する。
ソ連がアメリカとの冷戦に敗北したのは、アメリカが莫大な投資をできたからだ。経済が最も重要なゲームである。アメリカは2017年にTPPを脱落した。インドはRCEPに参加せず、中国が優位に立つのを許した。中国にとって巨大な経済圏が発展しつつある。2009年、中国の小売市場は1.8兆ドルであったが、それに比べてアメリカは4兆ドルであった。10年後、中国は6兆ドル、アメリカは5.5兆ドルになった。中国の輸入額は、この10年で、22兆ドルを超えるだろう。アメリカの消費市場が1970年代、80年代に、ソ連を圧倒した。同様に、中国の消費市場が莫大な規模で成長していることが、地政学のゲームを決定する。
クワッドがインド洋で海軍の演習を行った。しかし、それはアジアの歴史を左右しない。4か国の経済利害と歴史的脆弱性が、時とともに、クワッドの存在理由を掘り崩すだろう。アジアの未来を決める4文字は、Quadではなく、RCEPである。
FP JANUARY 28, 2021
Biden Should Dump the Trump Playbook on Trade With China
BY EDWARD ALDEN
● 歴史と文化戦争
PS Jan 22, 2021
History at the Barricades
ROBERT SKIDELSKY
ドナルド・トランプは、その大統領在任中を通じて、架空の歴史理解を示していた。彼は「歴史」を現代の文化戦争の主要な戦場にしようとした。彼の大統領として最後の行動は、アメリカ建国の研究を解き放つことだった。
現在のアメリカ政治論争における過去の優位性は、西側中に観られるが、歴史はどのように作られたか、を問うものだ。
確かに、歴史は強い情念を生じる。ブラック・ライブズ・マターが示したように。アメリカ、ヨーロッパ、南アフリカで、植民地主義や奴隷制に関わる銅像や記念碑が撤去され、頭を切り落とされ、汚された。かつての奴隷所有州で、ジム・クロウ法の州で、南軍の指導的民間人や軍人の記念碑が破壊された。トランプはそうした記念碑を「美しい銅像」とみなし、「暴徒が支配する」ことから保護するよう連邦軍に命じた。
イギリスの多くの人びとが、ますます情念を煽る文化戦争において、歴史を意識するようになった。2020年、ブラック・ライブズ・マターの抗議がブリストルの奴隷商人Edward Colstonの銅像を破壊したときだ。2016年には、オックスフォード大学のOriel College外に立つ有名な帝国主義者Cecil Rhodesの銅像を撤去するよう学生たちが要求していた。2020年5月に警察官がGeorge Floydを殺害したことで、Rhodes像への反対運動が再燃した。今では、ロンドンのトラファルガー広場にあるHoratio Nelsonネルソン提督の銅像も撤去を求める者が出てきた。
London’s Victoria and Albert Museumの元館長Sir Roy Strongは、「そこまで歴史を書き変えるなら、銅像や史跡は何一つ残らない。」と述べた。「過去は過去だ。」
決定的な問題とは、「誰の歴史か?」 「どんな歴史か?」ということだ。こうした問いは、以前の歴史家にとって無視された。Leopold von Rankeランケは、19世紀の「科学的」歴史を創設した歴史家であるが、歴史とは単に起きたことであり。「過去にあったことをその通り語る」ことが歴史家の使命である、と主張した。歴史家は嘘と真実とを区別し、歴史を書くとは法廷で証人を審査することに近い。
しかし、2つの弱点があった。第1に、ランケは事実そのものが語ると信じたが、そうではない。事実はあまりにも多いからだ。歴史家は、証拠の信ぴょう性だけでなく、何が関連する証拠であるか、判断しなければならない。それは因果関係や、遠因を含む。たとえば、第1次世界大戦の原因は何だったか? 経済的な諸要因も、部分的に、関連していたのか?
第2に、多くの話がある中で、何を語るのか。ランケは、そのような問題をほとんど知らなかった。歴史の主要な関心は、世界を支配するに至ったヨーロッパの(特にドイツの)興隆であった。戦争、外交、支配者たちの考えた計算に視点が固定されていたし、それに影響した宗教、文化、民族の質が、人類の精神に進歩をもたらした、と考えたからだ。
それは必然的に勝者の歴史であった。学校が教える歴史であり、生徒たちが学んだことだ。イギリス史においては「ホイッグ史観」とよばれるものだ。
歴史家Herbert Butterfieldの定義によれは、「プロテスタントとホイッグの側から歴史を書く傾向、彼らが成功した革命を称賛し、過去における進歩の原理を強調し、現状を称えるものではないとしても、それを合理化するために作った話である。」
自由主義と民主主義にいたるホイッグの進歩の物語で「敗者」はカトリックとトーリーであった。彼らの役割は無視され、矮小化されている。こうした類の歴史では、進歩を遅らせ、阻むような支配階級の術策を叙述した。
Butterfieldは、歴史が過去の行動や事件を、現在の政治や価値で解釈し、道義的な明瞭さを得ようとしている、と批判した。過去がそれ自体で声を上げることは許されなかった。
各世代が、その先入観に従って歴史を書き直した。今日では誰も、ローマ時代の奴隷制を道義にかなうとは主張しない。それは、われわれがもはや個人的にそれを受け入れないからだ。民主主義やフェミニズムが登場し、西側の人口に占めるエスニックや信仰の違う集団の割合が変化し、西側の衰退とアジアの台頭が起き、以前は排除されていた社会集団や諸国が、犠牲者として、歴史の主体として、それ自体の権利を認めるように主張し始めた。異なる一群の事実が、初めて、歴史に登場した。政治史が社会史に道を譲った。
西側の歴史の記述と教育において、過去1世紀に起きたことだ。一般的には、マルクス主義が歴史観の転換を指導した。カール・マルクスは「下からの歴史」の起源である。
帝国主義の扱いが、この転換の中心問題であった。しかし、驚くことに、マルクスもレーニンも大英帝国を批判したのではなかった。イギリスによるインド支配は、前資本主義的な眠りから巨人を目覚めさせる、と信じたからだ。レーニンは、帝国が支配住民に及ぼすダメージより、帝国主義諸国への影響を強調した。それは世界の再分割と、レーニンが望む、資本主義の最終危機につながる。
ヨーロッパの諸帝国が非白人の支配住民に与えた痛みについて、歴史家たちが詳しい研究を始めたのは、帝国が崩壊した1960年代であった。
インド、中国、アフリカ、南北アメリカの経済は、ヨーロッパの侵略を受けなかったとしたら、どうなっていたか、という班事実的な問いを立てる者も現れた。Kenneth Pomeranz and Thomas Pikettyは、大きく異なると考えたが、Angus Maddison, Stephen Broadberry, Joel Mokyrなどは、それに反対した。中国の経済発展は1800年以前に西ヨーロッパに比べて劣っていた。植民地化されたから弱くなったのではなく、弱かったから植民地化されたのだ、と。
現在、歴史家たちは、事実を議論することは少なくなり、認識や感情をより詳しく議論している。
暴徒がアメリカの議事堂を襲撃したことは、おそらく、文化戦争の進行が歴史を不揃いに爆破してしまった証拠である。歴史はつねに事実と価値の混合であったし、過去の解釈はつねに現在の偏見に合わせて行われた。ある文化を否定し、他の文化に置き換える者は、彼らの文化の優越性を確信していた。
過去の所有に関わる現在の闘争は、2つの特徴を示す。第1に、ソーシャルメディアが普及したことで、論争が加熱され、加速した。歴史家たちは継続して強い圧力を受ける。第2に、西側の文化戦争は啓発された道徳的感受性を反映するが、同時に、西側ではない文化へのパワーシフトをも反映している。
過去の勝者は確信を失ったが、かつての敗者は自分たちの歴史について確信し、情熱にあふれている。西側文明の没落は不可避なのだろう。あるいは、「覚醒した」人びとは違う歴史を見出すのか?
NYT Jan. 26, 2021
Silicon Valley Workers Have Had Enough
By Ben Tarnoff and Moira Weigel
● ナワルニーの最終決戦
FP JANUARY 22, 2021
Navalny Is All-In on Bringing Down Putinism
BY VLADISLAV DAVIDZON
ロシアの諜報機関がナワルニーを暗殺することに失敗してから5か月後に、彼は大胆にもモスクワに帰還した。その過程で、ナワルニーはロシアの反政府運動を指導する、秀でた地位を確立した。
暗殺失敗後、ウラジミール・プーチンはナワルニーが亡命することをまさに望んだだろう。
ナワルニーが空港で逮捕され、投獄された翌日、彼の調査チームはプーチンの秘密の個人的な宮殿を長編作品として紹介した。それは彼のロシア帰還と同様に、高度に演劇的で、詳細な作品として、最高のタイミングに公開された。プーチンの、豪勢で悪趣味な宮殿の内部を、その費用や賄賂とともに報告している。
プーチンが築いたハイブリッドな政治体制は、あらゆる種類のあいまいさが許される巨大な空間をもたらし、蒸気を吹き出している。それは専門的にも、個人的にも、プーチンに服従することを求めている。しかしナワルニーは、そのシステムに直接挑戦した。そのことが、彼をどう扱うのか、という選択を強いる。ナワルニーは自身の命をもって、体制に対する最終決戦を通告した。彼は、投獄されるか殺されるまで決して止まらないだろう。おそらく、投獄されて、殺されるだろう。
ナワルニーは驚くべき賭けを行い、システムに対抗する運動を加速した。今週末の抗議デモが、その賭けの成否を示す。
The Guardian, Sun 24 Jan 2021
The Observer view on Russia’s protests against Putinism
Observer editorial
FT January 25, 2021
Alexei Navalny is a real threat to Vladimir Putin
Gideon Rachman
NYT Jan. 25, 2021
Something Special Just Happened in Russia
By Alexey Kovalev
FP JANUARY 25, 2021
With Russia Protesting Navalny’s Arrest, Calls Mount to Target Putin’s Inner Circle
BY AMY MACKINNON
FP JANUARY 25, 2021
Navalny’s Bravery Is Unlikely to Shift Putin’s Entrenched Power
BY JEFF HAWN
FT January 26, 2021
West needs a strategy to oppose the jailing of Alexei Navalny
FP JANUARY 26, 2021
Putin Has Learned From Belarus in Handling the Navalny Protests
BY ALEXANDER GABUEV
FP JANUARY 26, 2021
Russia Is in Agony, but Putin’s Dictatorship Is Going Down
BY JONATHAN TEPPERMAN
FT January 28, 2021
Alexei Navalny protests show the power of digital ‘samizdat’
John Thornhill
● 医療・食糧と安全保障
FP JANUARY 23, 2021
No Bread, No Peace
BY EHUD EIRAN, MICHAELA ELIAS, ARON M. TROEN
先史時代から、人口に対して十分に、安全な、そして、栄養ある食料が手に入ることは、国家の主要関心事であった。
しかし、最近まで、安全保障においては食糧問題が消えていた。少なくとも、開発の進んだ諸国では、政策担当者の関心になかった。18世紀から始まった農業の技術進歩が「飢餓」を、食糧不足ではなく、流通の問題にした。その時以来、飢餓はますますまれな現象になった。
コロナウイルスのパンデミックが示したのは、少なくともその初めにおいて、食糧のサプライチェーンが、多くの予想よりも脆弱であることだった。2020年3月から6月、牛肉や豚肉など、輸入食糧品の価格が20%も上昇した。イギリスのスーパーマーケットは、2020年12月、フルーツと野菜が不足するかもしれないという警告を発した。フランスがイギリスからの変異型ウイルスを恐れて海峡を超える輸送を封鎖したからだ。発展した諸国はさらに急激な食糧価格の上昇を経験していた。
COVID-19による食糧不足と景気悪化は、各地で社会不安を生じている。ケニア、バングラデシュ、ジンバブエ。諸苦慮はもはや、単に周辺における人道上の問題ではなく、グローバルな競争なのである。
もっと食料を自給するには国家の活動を拡大することが必要だ。特に、環境の保全政策をともなわないとき、多くの食糧システムが崩壊する危険は高い。安全保障として食糧を考えることで、その責任を負う国際規範や組織が変化を迫られる。食料の専門家と安全保障の専門家は、双方が地平を拡大し、協力して仕事を進める時が来た。
FP JANUARY 24, 2021
The Greatest Humanitarian You’ve Never Heard Of
BY ROBERT D. KAPLAN
冷戦とその後の40年近く、Robert Gersonyガーソニーは、ホロコーストのユダヤ人難民の息子で、高校中退者、ベトナム戦争の退役軍人であるが、国務省のコンサルタントとして、事実上、世界中のあらゆる戦争、災害地域で働いた。
寝袋の外では一人で暮らし、それぞれの場所で、難民たちに何千ものインタビューを行った。そして報告書を書いたが、それは外交政策を、より明敏で、人道的なものにした。しばしば、その変化は劇的なものだった。発展途上世界の草原や砂漠から来る彼の報告は、行政機関の最高レベルに届いた。彼は決して昇進を求めず、紛争の膨大な、非人格的な諸力、そして官僚の変化を嫌う性格と格闘する、孤独な個人であった。しかも、しばしば彼が勝利した。
1988年のモザンビークは、内戦によって破壊された典型的な国だった。難民たちにインタビューする現地調査の中で、ガーソニーは、反共産主義で、白人の南アフリカが支援する反政府軍RENAMOが、実際は、ガバナンスの仕組みを持たない、大規模な殺害とレイプ、手足の切断を行う集団であることを知った。RENAMOはレーガン・ドクトリンの下で巨額の軍事援助を受けようとしていた。モザンビークから帰ったガーソニーは、国務長官George Shultz と大統領の娘Maureen Reaganに報告した。
シュルツは報告を詳しくメモしてシステム外のポケットに届け、RENAMOは即座に援助対象からはずされた。それは内戦の終結を促す条件になり、何万人もの命を救い、レーガン・ドクトリンの評価を損なわずに済んだ。「あなたの苦労した成果に対して深甚の謝意を表したい。・・・それは困難な、しばしば破滅的な状況であったでしょう。」と、シュルツはガーソニーに書き送った。
ガーソニーにとって、難民たちは歴史の真の記録者である。ただし、出来事の連鎖の始めには意思決定者たちがおり、難民たちは連鎖の最後にいるのだから、それを聞くのは面倒であるが。ガーソニーは、アルコールもカフェインもない、1日に1回の食事で済ますような、禁欲的な人だった。
1989年、世界のメディアはベルリンの壁が崩壊するニュースに湧いていたが、ガーソニーは一人で国境を越え、エチオピアからソマリアを調査した。そしてのちにthe Isaaq Genocideと知られるようになった、親米的なソマリアの独裁者Siad Barreの軍が行っていた大量虐殺をあばいた。ガーソニーが生涯を通して集めた証言は、あいまいな、文字を知らない人々に起きたことであったため、しばしば歴史に記録をとどめないものだった。
1994年、国連難民高等弁務官事務局の所属で、調査旅行を行い、ルワンダにおいて、ツチ族が支配的なPaul Kagameの新体制がフツ族を大量に殺害している、とガーソニーはあばいた。それはフツ族が組織した、100万人におよぶツチ族のジェノサイドの後、起きていた。フツ族が邪悪で、ツチ族は善良、という観方でカガメ政権を支援していた国際社会が聞きたくない真実であった。ガーソニーは人権団体や国務省から攻撃された。しかし、きめ細かい調査で人びとの声を拾ったガーソニーの正しさは、結局、証明された。国連とアメリカ政府の圧力を受けて、カガメの行動は抑えられたし、ルワンダの体制が改善されたことで多くの命が救われた。
ルワンダのすぐ後、ガーソニーはボスニアにいた。デイトン合意が実行される最善の方法を知るため、難民や救援隊員たちにインタビューした。デイトンは、非常に脆い、壊れやすい合意であった、とUSAID のボスニア局長Tim Knightは述べた。ボスニアがまだ平和である1つの理由は、ガーソニーとナイトの住宅建設計画が成功したからだ。帰還した難民家族のために、48の村で2500戸以上の住宅を建てた。難民の80%はムスリムで、建設作業は4000人の雇用をもたらした。
インターネットやソーシャルメディアの普及にもかかわらず、世界の遠く離れた所で、地上において何が起きているのか、今もまったくの謎である。難民や住居を失った人々から学ぶことは、しばしば、衛星写真や通信傍受で知ることができないものだ。ニュアンスや質の違い、ある場所と他の場所とは同じでないことを知る。フィールドの知識は、それゆえ、政策の一部でなければならない、と彼は説明した。
「教育を受けていないから、あなたは明晰に考えられないだろう、というのは、非常に間違った前提である」と、ガーソニーは私に語った。教育の無い人々がそれでも非常にすぐれた観察者であり、記憶している。難民たちに何が起きたかを聴くことは、文字通り、かけがえのない真実である。それが歴史の中身なのだ。
彼は、現実主義、理想主義、新保守主義のいずれの主張も、危険なものになりうることを知っている。なぜなら、それぞれの土地が独自のアプローチを必要とするからだ。その解決策は、大使館からの方向であり、外交官たちをデスクから遠く離れた現場に行かせることだ。そしてワシントンの高官たちに、実際、何が起きているかを知らせる。ガーソニーの生涯は、国務省とUSAIDの再建に必要な教訓である。
PS Jan 25, 2021
Does Pandemic Debt Relief Work?
ANNE O. KRUEGER
NYT Jan. 25, 2021
Dissidents First: A Foreign Policy Doctrine for the Biden Administration
By Bret Stephens
FT January 27, 2021
The blunt force of China’s mobilisation campaigns
Kristen Looney
PS Jan 27, 2021
An Africa Roadmap for Biden
CÉLESTIN MONGA
● インド農民の抗議
The Guardian, Sun 24 Jan 2021
The Guardian view on India's farming revolt: a bitter harvest
● Brexit後のUK
FT January 24, 2021
Post-Brexit UK will need all its growth engines firing
Martin Wolf
The Guardian, Mon 25 Jan 2021
Johnson's last-minute bid to save the union can't undo years of neglect
Martin Kettle
FT January 25, 2021
EU has a chance to change from negotiator to political enforcer
Martin Sandbu
FT January 26, 2021
Britain after Brexit: behind Boris Johnson’s green conversion
Sebastian Payne and Jim Pickard in London
FT January 27, 2021
There is no cunning wheeze to stop Scottish independence
Robert Shrimsley
首相はUKの崩壊を避けたいと願っているが、投票を妨害するのではなく、議論に勝つことができるのか。
FT January 28, 2021
The UK is partner and prisoner in US special relationship
Philip Stephens
FT January 29, 2021
The battle is under way to save the UK union
● 極右の広がり
FT January 24, 2021
Europe’s far right is often its own worst enemy
Tony Barber
FT January 27, 2021
Central European populists feel the effect of Trump’s defeat
Ivan Krastev
こんなジョークがある。2人のトランプ支持者が死んで、天国の門に行った。彼らは神に「教えてほしい」と言う。「2020年大統領選挙の本当の結果は何だったのか。不正を働いたのは誰か。」 神は答える。「子供たちよ。不正はありませんでした。」 わずかの間、恐ろしい沈黙の後で、1人がもう1人ささやく。「俺たちが思っていたよりも、これはもっと上にまで達しているぞ。」(神様もだまされている。)
政治の分断は、多くの人が思う以上に深刻だ。敵と戦争するように、国内の反対政党とも殺し合う。
FP JANUARY 27, 2021
This Is the Year Democracies Fight Back
BY AZEEM IBRAHIM
● ロックダウン
PS Jan 25, 2021
England’s Lockdown Lessons
MOHAMED A. EL-ERIAN
FT January 26, 2021
Vaccines have been oversold as the pandemic exit strategy
Anjana Ahuja
ワクチンだけでは集団免疫とウイルスの消滅には至らない。ワクチン接種には時間がかかり、変種が現れ、しかも、感染予防が機能していない国との関係が新しい感染源をもたらすからだ。
予防接種を待つだけでなく、検査、追跡、隔離、防疫管理体制が必要だ。
The Guardian, Wed 27 Jan 2021
Here are five ways the government could have avoided 100,000 Covid deaths
Devi Sridhar
PS Jan 27, 2021
COVID-19 and the Doomsday Clock
GRO HARLEM BRUNDTLAND
終末時計は進んだ。人類の終末は、核戦争ではなく、核拡散や気候変動、パンデミックを含む、ガバナンスの失敗によって起きる、とわかってきた。
NYT Jan. 27, 2021
Pandemic Rescue: It’s ‘And’ Not ‘Or’
By Paul Krugman
FT January 28, 2021
A grim accounting of the UK’s virus mishandling
PS Jan 28, 2021
The Problem with the COVID Convergence
PINELOPI KOUJIANOU GOLDBERG
FP JANUARY 28, 2021
The Global Vaccine Rollout Is Failing—and That Means Trouble for Americans
BY JONATHAN TEPPERMAN
● イラン核合意
FP JANUARY 25, 2021
Biden Has a Model for Dealing With Regional Fears of Iranian Missiles and Proxies
BY HANNA NOTTE
FT January 27, 2021
Reviving the Iran nuclear deal will test Joe Biden
David Gardner
NYT Jan. 27, 2021
Biden Wants to Return to the Iran Deal. He Can Start Here.
By Majid Takht-Ravanchi
FP JANUARY 27, 2021
What a New Iran Nuclear Deal Really Requires
BY BILAL Y. SAAB
● スーダンの失望
FT January 26, 2021
Sudan’s revolutionary protesters must fight on
Nima Elbagir
スーダンの独裁者に対する革命は、失望に変わった。敗北した者たちの絶望は深い。しかし教訓は何か? それは忍耐だ。軍の弾丸と野蛮さに対して、平和的なデモを続けること。
● アメリカの復活
PS Jan 26, 2021
Raghuram G. Rajan
Says More…
● ソーシャルメディア
FP JANUARY 26, 2021
Taking Trump Down Has Exposed Social Media’s Inherent Contradictions
BY DIPAYAN GHOSH
FT January 27, 2021
Big Tech is trying to take governments’ policy role
Marietje Schaake
FT January 27, 2021
Big Tech’s reckoning over paying for news
FT January 27, 2021
How China is tackling fintech risk and regulation
Pan Gongsheng
FP JANUARY 28, 2021
How to Counter White Supremacist Extremists Online
BY BHARATH GANESH
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The Economist January 9th 2020
Trump’s legacy
Dealing with China: Advantage, Beijing
Chaguan: Winners and losers
The Republican Party: After the insurrection
Charlemagne: The clown ceiling
Bagehot: Patience wins
Deutschland AG in China: Riding high
Free exchange: Social studies
(コメント) 「アメリカの虐殺」を止めると宣伝したトランプの任期は、議事堂襲撃で終わりました。その遺産とは何か? 共和党はジョージアの選挙で上院の多数を失いました。しかし、共和とは変わるのか? 有権者の幻想と分断は残ったままです。
貿易でも、コロナウイルス対策でも、民主主義は中国の専制国家に劣っています。西側諸国は対応がばらばらであり、特に、ドイツ企業の中国市場とサプライチェーンへの依存は驚異的です。中国の台頭は、世界貿易を通じて、その政治体制を容認する立場を広めています。EUは米中対立を利用して、有利な条件が得られると冷徹に計算したから、中国との投資協定を結んだのか。
EU諸国で次々に現れる「道化」のような右翼指導者とその政党の躍進には、越えられない天井がある。UKIPだけでなく、ジョンソンの保守党もそうなりつつあります。他方で、ジョンソンはUK分裂を避けるために、スコットランドとの新しい合意を説得する力が試されています。アメリカ経済学会の主要な報告が、社会研究に舵を切ったのは当然です。
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IPEの想像力 2/1/21
リモートの講義が終わって、労多くして学生たちは観てくれない(?)資料作りも一段落です。次は採点や入試の季節ですが、合間に小説を読む余裕はできました。藤沢周平。山本周五郎。池波正太郎。・・・時代小説が面白い。
山本周五郎の『人情裏長屋』や池波正太郎の『鬼平犯科帳』を、何度なくしても、古本屋で買ってしまいます。
時代小説の、人がおもしろい。「たそがれ清兵衛」の主人公は、病気の妻女の介護と家事に励み、彼女を良い医者に診てもらい、転地療養させることだけを願って、藩政を牛耳る堀を斬った。
時代小説は、なぜ斬るのか。「祝い人助八」の主人公は、悍婦(人をさいなむ荒い女)となった妻を亡くし、人目にはうらぶれた、悲しむ姿でありながら、独り身の自由気ままを喜んでいた。そして、汚れて、だらしなくなる。助けを求めてきた幼馴染の波津を、離縁された男から解放するために秘剣を使い、そのため助八に、藩主を怒らせた剣客を斬殺せよ、という藩命が下った。
時代小説は、なぜ苦しむのか。彼らは時代を拒めない。藩の支配体制、身分制、貧困や、醜い人間性の中を生きながら、合理的な解決策や逃げ道は見いだせない。
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歴史をめぐる文化戦争を、Robert Skidelskyは見事に整理している。トランプ支持者による議事堂襲撃は、彼らの文化戦争であった。投票や政権交代は答にならない。
戦争、外交政策ではなく、難民たちの記憶として残る歴史を、Robert D. Kaplanはアメリカの国務省に意識するよう求めている。アメリカ大統領を選ぶのは国民であるが、その影響は世界におよび、戦争や和平、貧困の在り方を決める条件が変化する。
日本人の一人ひとりが、歴史論争と外交政策、将来の戦争において、その姿勢や理解を問われるのは当然です。
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現代の私たちは、幸い、秘剣を駆使して人を斬ることが生涯ないでしょう。しかし、正しいと信じることを、地位や名誉を捨てる覚悟で発言する瞬間は、おそらく、何度かあるはずです。
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