IPEの果樹園2021
今週のReview
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タルサの虐殺 ・・・ブレグジットの夢と現実 ・・・長期停滞か回復か ・・・資本主義の転換 ・・・地政学と国際協調 ・・・危機と真実 ・・・EU中国の投資協定 ・・・ハイテク企業の将来 ・・・独裁国家の反体制派 ・・・「責任あるステークホルダー」 ・・・核兵器と平和
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 都市の保守派
FT December 26, 2020
Last of the urban conservatives
Janan Ganesh
マイアミは都市の保守主義にとって生きることがむつかしい空間だ。しかし、ここにはドナルド・トランプが先月の投票で大きく支持を伸ばした地区もある。マイアミは、老人が多く、ラテンアメリカの左派政権が支配する諸国から逃れてきた移民たちが多い。
また、リバタリアンの集まる都市であり、テキサスやフロリダには個人所得税がない。脆弱なインフラと武装した警察が対照的な、ノージック主義者の夜警国家だ。
黄金の卵を産むガチョウを誰も殺すことはない。
2016年とその後のポピュリスト・ショックは、メトロポリスの進歩的な政治になれたリベラル派にとって衝撃だった。都市化・都市文化の大義が敗北した。
都市の主要な関心は商業であり、移民流入はその副産物だ。それによって文化も育成する。それゆえ都市文化はあいまいで、自由市場と、保護されたスペース、公共交通機関タオ犯罪を取り締まる警察がある。ゆるやかな境界線があるだけだ。
マイアミの建造物や人口変化は、その未来を示している。
● タルサの虐殺
NYT Dec. 26, 2020
The Haunting of Tulsa, Okla.
By Brent Staples
オクラホマ州、タルサの警察署が、1921年春の大虐殺の舞台を用意した。警察は、繁栄する黒人居住区Greenwoodを侵略して破壊した暴徒たちの代弁者であった。警察署長は、白人のタルサ市民が「銃を取って、黒人どもを狩り出せ」と呼びかけた。
暴徒たちは黒人家族を住宅から出して、気の向くままに殺した。宝石や毛皮、美しい家具など、価値のあるものを略奪した。松明や、油に浸したぼろを使って放火し、住宅、境界、医院、ホテル、その他のビジネス街を焼き払い、それは35ブロックにおよんだ。
2カ月前に、考古学チームがタルサの集団墓地を発掘した。それは、市が100年も沈黙してきた問題に答えを出すだろう。集団墓地が市の所有するオクラホマ墓地で発見されたことは、補償の関する裁判に市が直面することになる。
虐殺の後、タルサは速やかに死体を埋めた。熱波の中で病気が広がることが恐れた。そして記憶を死者の消し去ることが浸透した。白人の権力者たちはニュースに載せることを抑圧した。タルサのイメージを守り、殺害し、略奪し、放火した者たちの息子や兄弟、叔父をかばうためだった。かつて20代で虐殺に加わった者たちは、議会の重鎮になった。
● ブレグジットの夢と現実
The Guardian, Sun 27 Dec 2020
Throughout history Britain’s ruling class has created crisis after crisis – just like now
John Harris
ブレグジットの物語は、ボリス・ジョンソンという人間の欠陥と切り離せない。それは彼の欠陥というだけでなく、次々に危機を招くイギリス支配階級のもっと長期の物語である。
ジョージ・オーウェルはその『ライオンと一角獣』の中で、イギリスのエリートに関する多くの特徴を欠いている。「おそらくワーテルローの戦いはイートン校のグラウンドで勝利したのだ。それに続く多くの戦いはそこで敗北した。」
デイヴィッド・キャメロンが保守党の指導者になったのは2005年にさかのぼる。たとえ保守党がサッチャー後の世界観に執着していたとしても、保守党政治のインナーサークルは、現代世界ではなく、ライチョウの湿原でに戻って考えていた。ジョンソンが指導者になって、保守党はなじみの混合物になった。すなわち、特権的で、表面的で、信じられないような富裕さを持った人々だ。2016年の投票でも、COVID-19対策のイギリスにおける愚かさもそれを示す。
ジョンソンの伝記作家Sonia Purnellは、キャメロンの閣僚の1人を彼の妻Sasha Swireが書いた本について、「不真面目な、特権的で、卑俗な、近親相姦的、奇妙なほどの子供っぽさ」と評した。上流階級と中産階級との違いに固執しており、政治や権力は使命や義務ではなく、彼のような人々のやることだという怠けた信念を表明していた。
The Guardian, Sun 27 Dec 2020
I was one of the millions opposed to Brexit. I’ve seen nothing here to change my mind
Will Hutton
夢が終わる。新年を迎えて、イギリスは、ヨーロッパの協力と自由に関する高貴かつ偉大な試みに関わった期間に幕を下ろす。かつて当然と思われた、ヨーロッパのどこでも自由に暮らし、働き、財・サービスを取引する権利を失う。
輸出業者は、国境管理、付加価値税、税を支払うため、EUとの境界線で煩わしい検閲を受けねばならない。EUに物を売るには、その法律に従うことが必要だ。ビザなしに3カ月以上は滞在できない。
経済コストは甚大である。イギリス企業は貿易を制約される。さらに、イギリス政府はその規制を(加盟国として)EUの規制に転換し、さらに(EUの力で)グローバルな規制にも転換する能力を失う。たとえば化学物質や、携帯電話のネットワークだ。
そのうえ、われわれの影響力が失われる。防衛、外交、海外での安全保障に関して、EUとしての協力が失われるからだ。EUにおける同盟を構築しないし、バランス・オブ・パワーのゲームを外れる。力を示す超大国の世界で、すてきな小国になれるけれど、それだけでしかない。
EUとの合意は勝利の証として大いに称揚されているが、それを信じるのはイギリス・ナショナリスト・パーティの王子様、ボリス・ジョンソンを激励する仲間内だけだ。離脱の害を抑えるために、必然的に、ほとんどをEUの提示した条件で合意した。
UKはいくらかの新しい自律性を得る。それをうまく使えば、急速に成長する新産業、ドローンや医薬品で、ハイテク商品を促進できる。アメリカとの通商合意も可能だろう。しかし、最大の皮肉は、イギリス資本主義にとって有益であるには、自律性を、投資の促進、ステークホルダーを重視する、緊密な政府協力の姿に変えることだ。すなわち、それはヨーロッパ的な姿である。
それはブレグジットのパラドックスだ。イギリスは「ヨーロッパのすてきな小国」になりたくない。停滞した経済状態やEUのパートナーたちに物乞いするような関係を嫌う。その結果として、将来、よりヨーロッパ的な国になるだろう。
ブレグジットはイギリスが本当にEUの加盟国としての感情を持つために必要なステージであった。そして、失った自由や権利を取り戻すだろう。ヨーロッパとの歪んだ関係を終わらせる。ボリス・ジョンソンがまさしく望んでいることだ。まったく逆の姿で、彼の使命は達成される。
The Guardian, Sun 27 Dec 2020
The Guardian view on Britain out of the EU: a treasure island for rentiers
Editorial
The Guardian, Sun 27 Dec 2020
The Observer view on the Brexit trade deal
FT December 27, 2020
A deal to end the Brexit delusions
Martin Wolf
苦しい4年半を経て、われわれはブレグジットの開始期間の終わりに達した。それは、必然的に、EU加盟国よりも悪い条件である。しかし、合意なしの離脱という愚挙より、はるかにましである。
政府が、この新しい複雑な条件に調整する企業に数日しか与えないのは、無責任である。しかも、パンデミックの真っただ中において。これは間の抜けた、不必要な、離婚であるだろう。しかし、良い点もある。
EUにとって、もしUKが交渉に参加していたら、7500億ユーロの復興基金は成立しなかっただろう。今後、EUは目標を共有した諸国で迅速に行動できる。
UKにとっても、良いことがある。ブレグジットは幻想ではなく、現実になった。すでに幻想のいくらかは消滅した。すばらしい自由貿易協定をEUと合意することは簡単なことだ。「すべてのカードを」UKは持つのだから。しかし実際は、非常にむつかしい交渉だった。財政分担金の支払い、アイルランドの国境、EUが求める「平坦な競争条件」など、UKは厳しい譲歩をした。
EUとUKとは、主権に関して平等になった。しかし、パワーは平等ではない。それはUSとカナダの関係に近い。カナダやメキシコに対して、USは押し付けに近い条件を強いている。
「コントロールを取り戻せ」という離脱派にとって、その現実は衝撃的だ。移民を考えてみよう。2016年6月、国民投票までの12か月間で、EUと非EU諸国からの移入民は35万5000人だった。2020年3月までの12か月間では、純移入民は37万4000人であった。EUからの純移入民は18万9000人から5万8000人に急減したが、他の世界からの移入民が増えたのだ。
UKは、比較優位の無い製造業でいくらか有利な条件を得るが、比較優位のあるサービスに関して不利になる。漁業権に関して激しく闘ったが、漁業はUKのGDPにおいて0.04%でしかない。
ジョンソンは、合意なしでも、UKは「力強く繁栄できる」と約束したが、多くのエコノミストは、加盟し続ける場合に比べて、UKが長期的に大幅に貧しくなる、という。
イギリスのブレグジットは、多くの点でドナルド・トランプの「アメリカを再び偉大にする(MAGA)」に等しい。違いは、トランプの大統領任期には限りがあるけれど、ブレグジットは永久におよぶことだ。
The Guardian, Mon 28 Dec 2020
The Guardian view on Britain’s global role: shrinking around Brexit
Editorial
FT December 29, 2020
Brexit deal leaves much unchanged, institutionally
David Allen Green
The Guardian, Tue 29 Dec 2020
With a Brexit deal that puts workers’ rights at risk, we need unions more than ever
Owen Jones
2016年にイギリスがEU離脱を決めたのには多くの要因が働いた。労働組合のパワーや労働者の権利を解体することもその1つであった。
国民投票は「現状維持」に対する反対だった。そして、労働者たちはワーテルロー以来最長の困窮状態にあった。1979年に比べて、組合員数は半減し、特に民間部門では13%に壊滅している。それは長期のスタグフレーションにもつながった。
労働者たちは、要するに、賃金を引き上げる要求に見合う交渉力を失ったのだ。それは彼らに幻滅をもたらしたが、ブレグジットがその不満を吸収した。右派の離脱推進派は移民流入を賃金低下の原因と主張し、労働組合の衰退や、いわゆる、「弾力的労働市場」から矛先を変えた。多くの衰退した工業地帯で、安定性や威信をもたらす職場が、そうしたものの無い職場に入れ替わった。「コントロールを取り戻せ」という巧妙なスローガンは、彼らの多くに魅力的であった。
イギリスの政治的混乱は青天の霹靂ではなかった。その大部分は、サッチャリズムが踏みにじった労働運動の、社会的、経済的な帰結であった。離脱をめぐる「戦争」が終わるとき、政府に「平和」の定義を委ねてはならない。労働組合が闘いの中で存在を示すべきだ。
The Guardian, Tue 29 Dec 2020
The Guardian view on the future of the union: Britain faces breakup
Editorial
The Guardian, Wed 30 Dec 2020
Brexit is far from done – this deal is no ‘game, set and match'
Anand Menon
The Guardian, Thu 31 Dec 2020
The left must stop mourning Brexit – and start seeing its huge potential
Larry Elliott
FT December 31, 2020
Exit from single market closes a chapter UK did so much to write
Martin Sandbu in London
FT December 31, 2020
Brexit’s second act may break the UK union
Philip Stephens
● 長期停滞か回復か
FT December 27, 2020
The response to secular stagnation will drive the markets post-Covid
Gavyn Davies
サマーズLawrence Summersが2013年のIMFで長期停滞を世界経済の中心問題とした演説をしたのは、2010年代の金融市場に関する議論であった。それは今も重要だ。パンデミックが過ぎた後も、長期停滞が資産価格に決定的なものであるだろう。
1938年、A.ハンセンが最初に唱えたものだが、サマーズはこの言葉を、意図した投資に対して過剰な貯蓄が行われて、2000年から2010年の半ばまでに、グローバルな実質均衡利子率がゼロ以下に低下する、と解釈した。それは2008年の金融危機以降に必要な金融政策による刺激を困難にするだろう、と。
株価は、将来の利潤に対する割引率が低下することで、上昇した。生産における低成長に逆らって、株価は眼が眩むほど高くなっている。同時に、利潤は賃金上昇率の低下によって高揚しており、これも長期停滞の兆候と考えられる。
技術革新や構造変化によってFAANGs(Facebook, Apple, Amazon and Google and Netflix)のような特定の株が上昇しているが、これも最近はSpacs(special purpose acquisition companies)の投機と結びついている。金融市場は、アメリカの財政赤字膨張と中央銀行による債券購入に慣れてしまった。
投資家がすべて長期停滞論者になった、というのは誇張ではない。しかし、将来も、このままでよいのか。
構造的な諸力が逆転する、という考えを彼らは否定する。COVID-19の後、1920年代のような熱狂的な消費が現れることもない、という。
彼らにとって、1つの弱点は、実質均衡利子率の動きを転換するほど十分な財政刺激策が行われるかもしれない、ということだろう。バイデン次期大統領が就任すれば、財政緊縮を放棄し、2021-23年に2.5兆ドルの財政刺激策を取るかもしれない。インフラを更新し、気候変動に対処し、不平等を減らすために、こうしたマーシャル・プランは必要だ。
しかし、世界経済にとって良いことでも、資産価格・株価にはよくないことである。長期停滞の逆転が始まるかもしれない。
NYT Dec. 28, 2020
2020 Was the Year Reaganism Died
By Paul Krugman
やっとトランプは経済救済法案に署名した。こうしてレーガン主義は終わったのだ。政府は人々を苦境から救い出す。それは、苦しむ人々だけでなく、経済全体にとって良いことだ。
FT December 29, 2020
Corporate America experiences ‘K-shaped’ recovery
Andrew Edgecliffe-Johnson in New York
● 資本主義の転換
FT December 28, 2020
Covid exposes capitalism’s flaws
Mariana Mazzucato
この1年の教訓とは、COVID-19が異なる資本主義を実現する瞬間である、ということだ。経済システムは、単に危機にあるだけでなく、構造的な欠陥を示している。
ギグ・エコノミーの雇用は危機において保護されていない。拡大する不平等において人びとは生活するために、所得に対して債務を増やしている。ステークホルダー資本主義が称賛されているけれど、ビジネスでは株主に対する短期的な分配の利益を優先している。国家の能力はますます空洞化し、コンサルタント会社にアウトソーシングされている。気候変動のような未来の危機は悪化するだろう。
われわれは政策によって、競争場を平坦にならすのではなく、耕すべきである。平等な、グリーンな、持続可能な成長に向けて政策を決めることで、すべてのステークホルダーに利益をもたらし、われわれの重大な社会問題を解くべきだ。
第1に、景気回復のために何兆ドルも政府が投資するなら、それを最大の社会問題の解決に向けるべきだ。国連のSDGsはその見本だ。医療システムを強化し、社会的移動性を再設計し、デジタル・デバイドを解消する。
第2に、救済によって企業が利潤を増やしただけ、という金融危機後の失敗を繰り返さない。政府の支援策には厳格な条件を付ける。例えば、フランスでは炭素排出量の削減を求め、デンマークではタックス・ヘイブンを利用する企業に支援を与えない。
第3に、民営化、アウトソーシング、財政赤字削減がCOVID-19に対する政府の対応力を損なった。政府のダイナミックな能力を改善する投資が必要だ。優秀な公務員たちが挑戦する機会に満ちている時代だ。
第4に、グローバルな資金循環の多くが金融・保険・不動産に向かっているとき、UK政府がインフラ投資銀行を検討している。政府がグリーン社会への移行などに、長期の、忍耐強い、投資姿勢を示すことは、民間投資に対するシグナルになる。新しい評価基準が必要だ。
第5に、ビジネスだけでなく、労働者や公務員が価値を創り出している。国民の富に対する平等な取り分を確保する、市民への配当が政府介入や公平な社会をもたらすだろう。(ビジネスがリスクに対する報酬を取り、損失を国民に転嫁するのではなく)リスクと報酬の両方を社会化する。
第6に、科学や医療の革新は、研究者たちが知識をオープンに交換・共有することで前進する。ワクチンの開発・製造・供給がそうだ。特許をプールし、価格設定や供給においてグローバルなアクセスを確保する。デジタル・プラットフォームも同様だ。
FT December 30, 2020
A better form of capitalism is possible
パンデミックは、豊かな国の労働市場に脆弱な部分があることを示した。
われわれは、その生活を、商店の棚に並ぶストック、食品の配達、病院の清掃、高齢で病弱な者の介護に頼っている。これらの注目されない英雄的な労働に支払われる報酬は少なく、過重な負担を強いられ、雇用されるとしても、予想外の、不確実な就労を強いられる。こうした人々に対して「プレカリアート」という新しい言葉が生まれたのは当然だ。
過去40年間、増大するプレカリアートの仕事に対して、安定した、十分な所得が与えられてこなかった。賃金は上がらず、不安定で、緊急時に対する融資はなく、労働条件は非文明的なものである。その残酷さを示すのは、ある女性がシフトを失うことを恐れて、トイレの部屋で出産したという話である。多くの者はホームレスや麻薬の蔓延するリスクを味わい、アルコールに関連する病気に苦しむ。
経済変化に取り残された社会集団は、ますます、彼らの困窮を解決すべき人々が配慮を欠いている、さらに、社会の底辺層を犠牲にして自分たちの利益を得るため経済を不正に操作している、と考えるようになった。緩やかに、しかし確実に、資本主義と民主主義は互いに緊張状態を高めている。
世界金融危機以来、裏切られたという感覚が、グローバリゼーションやリベラルな民主主義の諸制度に対する政治的反動を生じていた。右派ポピュリズムはこの反動に乗って勢力を強めたが、資本主義的な市場をそのままにしている。しかし、約束した経済的成果を上げることに失敗すれば、彼らが資本主義の富をはぎ取るのは確実だ。フランクリン・ルーズベルトやJ.M.ケインズが戦後秩序を再建するとき理解していたように、資本主義を政治的に受け入れ可能にするには、その野蛮なエッジを削り取ることだ。
経済の分極化を放置すれば、それは資本主義の拒絶に至る。歪みを是正することは経済的利益をもたらす。慢性的な低賃金と不確実な労働条件が示すように、経済のフロンティアからその後背地に最新鋭の生産方法が普及していない。プレカリアートの存在こそ、人的、物的、組織的な資源の浪費である。経済の分極化は、不公正なだけでなく、非効率である。
ジョー・バイデンからボリス・ジョンソンまで、政治家たちは、“build back better”(再建ではなく、より良い社会を築く)という、政治的権限を与えられた。不平等は成長を損なう。すべての者の尊厳を得られるように、資本主義を改造できるだろう。
PS Dec 28, 2020
Living and Dying in America in 2021
ANNE CASE, ANGUS DEATON
アメリカ資本主義は、ほとんどの人々にとって機能していない。教育を受けたエリートたちは長生きし、経済的にも豊かになれる。しかし、教育をあまり受けていない、アメリカ人の3分の2は、早く死ぬか、物質的、経済的、社会的に苦しみ続けている。
COVID-19による影響も、同様に、「絶望死」を強めている。
● 地政学と国際協調
FT December 28, 2020
The perverse political effects of Covid-19
Gideon Rachman
何ものも地政学的な対立を止めることはできない。パンデミックも、国際的な旅行業の崩壊も、世界不況も。中国、アメリカ、EUは、異なるやり方でCOVID-19に対処し、ガバナンスの異なるアプローチについての公開テストを行った。その威信と影響力に関する国際競争の一環である。
明らかに、その前段においては、中国が勝利した。しかし矛盾するようだが、USとEUは、ともに、COVID-19による衝撃で、政治的な強化されるだろう。
USの民主主義は、COVID-19の対処に大きな失策を犯したドナルド・トランプが再選を果たせず、ジョー・バイデンにUS復活のチャンスを与えた。
EUは、イラク戦争と並行して、世界金融危機後のユーロ危機で統一した姿勢の欠如に苦しんだ。パンデミックの初期にも、EUは崩壊する恐れがあった。
しかし、夏が過ぎて、EUは7500億ユーロの連帯を促す復興基金に合意した。ドイツはその資金をEU共通の債務とみなすことに合意し、ユーロ成立から30年経って、政治的な大きな飛躍を示したのだ。
中国のCOVID-19対策と経済回復は、内外におけるプロパガンダを高揚させた。しかし、世論調査によれば、中国の評価は、UK、ドイツ、韓国など、主要諸国で10年前より悪化している。
USとEUはワクチン開発でスピードと効率を示した。ジョー・バイデン次期大統領が景気刺激策に成功すれば、彼が進める同盟諸国との関係強化は大いに歓迎されるだろう。アメリカは地政学的競争に復帰する。
FT December 28, 2020
Biden has a chance to revive America’s alliances
PS Dec 28, 2020
For a Post-Nationalist Biden
KAUSHIK BASU
PS Dec 31, 2020
How Biden Can Restore Multilateralism Unilaterally
JOSEPH E. STIGLITZ
多国間協議を重視するバイデン政権なら、SDR発行や政府債務の組み換え、WTOの債券も推進できるだろう。
● 2020年の言葉
FT December 28, 2020
Year in a word: Wolf warrior
Tom Mitchell
FT December 30, 2020
Year in a word: QAnon
Courtney Weaver
FT December 30, 2020
Year in a word: Cancelled
Gideon Rachman
● ベトナム
FT December 28, 2020
Vietnam prepares for supply chain shift from China
John Reed
● 危機と真実
PS Dec 28, 2020
The Seven Secrets of 2020
YANIS VAROUFAKIS
多くの嘘をわれわれは無意識に受け入れている。深刻な危機においては、真実が現れる。
グローバリゼーションが国民国家の能力を奪ってしまう、とわれわれは思っていたはずだ。大統領も債券市場には勝てない。首相たちは貧困層の苦しみを無視できても、スタンダード&プアーズ社の評価は無視できない。財務長官はゴールドマンサックスの回し者かIMFの地方統治者である。
そのとき、パンデミックが襲ってきた。一夜にして、政府は爪や牙をむき出した。国境を閉じ、飛行機を地上にとどめ、歳の封鎖を命じて、劇場も美術館も閉鎖された。親が死んでも葬儀を許さなかった。
第1の真実は、政府が圧倒的なパワーを持つことだ。政府がパワーを行使しないことを選択したことで、グローバリゼーションで豊かになった人々が権力を行使していたのだ。
第2の真実は、金・貨幣のなる木はない、というが、政府はカネのなる木を持っている。病院や学校に対して支出するのを嫌っていた政府が、突然、一時解雇にも賃金を支払い、鉄道を国有化し、航空会社を買収する。自動車会社だけでなく、ジムや美容院まで支援する。
第3の真実は、支払い能力は政治が、少なくとも豊かな西側が決めることだ。ギリシャを見ればよい。その公的債務は、2015年よりも、330億ユーロ多く、所得は130億ユーロ少ない。しかし、ヨーロッパの諸大国は10年におよぶギリシャ政府の破産処理に懲りて、ギリシャに支払い能力があると認めた。
第4の真実は、民間で富を集中する者たちは、その富が彼らの企業家精神とは全く関係ない、ということだ。Jeff Bezos, Elon Musk, or Warren Buffettは、金儲けのコツを知っているのかもしれないが、それは彼らの富のほんの一部でしかない。彼らは眠っている間に富を増やしたのだ。中央銀行が発行した貨幣を金融システムに注ぎ込んだから。
第5の真実は、科学的知識は国家支援によって促進できる、ということだ。市場の讃美だけでは生き残れない。個人の利益追求が社会に奉仕する、という市場競争の条件が失われている。
第6の真実は、資本主義に代わる、テクノ封建主義体制が、アマゾンなどのプラットフォーム企業によって築かれている。
第7の真実は、根本的な変化は困難であるが、現状を維持することはできない、ということだ。
● EU中国の投資協定
PS Dec 28, 2020
It’s Europe’s Turn to Reject Trump
JOSCHKA FISCHER
PS Dec 29, 2020
The EU That Can’t Say No
JEAN PISANI-FERRY
PS Dec 31, 2020
Europe and China’s Year-End Breakthrough
JEFFREY D. SACHS
欧州委員会は中国との投資協定に合意した。それはEU、中国、世界、そして、アメリカにとっても利益になる。アメリカはその合意を結ばないよう警告していたが。EUと中国は、互いの経済に投資するアクセスを保証し、経済関係を深める意図を確認した。
アメリカのトランプ政権は、中国との経済関係を断つだけでなく、中国の成長を封じ込めるためのUS主導の同盟を築こうとしていた。その明示的な理由は、中国が敵対的で、人権を蹂躙する国であるからだ、しかし、超党派で進めてきたUS外交が、800もの海外軍事基地を維持し、繰り返し、非合法な戦争や制裁を行ったことを、また、国連憲章や国際条約、安全保障理事会の決議に従わなかったこと、を注意するべきだ。
アメリカの真の意図は、人権ではなく、中国に対して、支配権を譲りたくない、ということだ。そのために、中国の技術的、経済的な台頭を阻止しようとしている。しかし、世界の経済システムが、人類のわずか4%でしかないアメリカに、覇権国の利益を与えることは不可能であり、すべきでもない。
COVID-19対策でも、ワクチン開発と供給でも、再生可能エネルギーや電気自動車でも、デジタル技術でも、中国とEUとUSは協力するべきだ。
トランプ政権は、中国が情報をスパイするという理由で、フアウェイの5G通信技術を使用することに制裁すると警告している。しかし、中国の技術は他の分野でもUSの制裁に打ち勝つだろう。ヨーロッパが中国との積極的な、建設的な関係の深化を進めることは正しい。
FP DECEMBER 31, 2020
What Merkel Really Thinks About China—and the World
BY NOAH BARKIN
メルケルは中国の経済的成功を称賛してきたし、中国がユーロ危機の中でヨーロッパの債券を買ってくれたことを感謝する気持ちがあった。地政学的な意味から、EUが中国と投資協定を合意したことは、メルケルが強く推進したものだが、アメリカのバイデン政権誕生をけん制するものであっただろう。メルケルはつねに、ドイツの地政学的な弱さを意識していた。
しかし、メルケルの方針は、ドイツ国内やヨーロッパ全体の合意ではない。
● 発展途上国
NYT Dec. 28, 2020
Which Developing Economies Will Rise After the Pandemic?
By Ruchir Sharma
PS Dec 30, 2020
African Countries Need Not Fear Default
MORITZ KRAEMER
● ハイテク企業の将来
FP DECEMBER 28, 2020
7 Reasons Why Silicon Valley Will Have a Tough Time With the Biden Administration
BY VIVEK WADHWA, TARUN WADHWA
FT December 31, 2020
The big questions for Big Tech in 2021
John Thornhill
2020年は、ハイテク企業にとって成功が過度の水準に達し、グローバルな反動を生んだ年になった、とみられるようになるかもしれない。規制当局、政治家、市民運動、さらには被雇用者の側からも過剰なパワーに対して是正を求める声がある。
2021年に直面するのは3つの問題だ。
第1に、投資家たちはハイテク株に投資し続けるのか? 2000年に崩壊したドットコム・バブル(ITバブル)が比較される。しかし、当時の経済では今のようにハイテク企業が支配的ではなかった。
第2に、規制当局の反動はどれくらい激しいものか? 特に中国がJack Maの企業帝国を制限したことは重要だ。それは、北京の意図が、1人の企業家のパワーを制限しただけなのか、習近平のハイテク部門に対する支配を強化するものか、による。
「絶対的な支配は可能だ。ダイナミックで、革新的な経済も可能だ。しかし、その両方はできない。」
第3に、ハイテク企業は革新的であり続けるか? 技術革新は優秀な人を集めることに依存している。シリコンバレーのスタートアップ型モデルは、各国でも、グローバルにも、広く実現している。優れた人々を集める企業だけが繁栄できる。Googleでも、Facebookでも、被雇用者たちからの告発が起きている。
ハイテク企業の回復力を示す最善の指標は、優れた人々の移動である。
● 香港
The Guardian, Tue 29 Dec 2020
Hong Kong's democracy movement was crushed in 2020. But the spirit of resistance survives
Jessie Lau
国家安全法の制定・施行により、香港の抗議活動は沈黙を強いられた。パンデミックを理由に、香港の行政府は集会を禁止した。民主化を求めた運動にかかわった者が、毎日のように逮捕されている。
外部からの検閲も、自己検閲も厳しくなり、ソーシャルメディアのインタビューも、なんでも、監視されている。恐怖が蔓延し、かつて中国における自由の砦であると自慢していた香港が、沈黙の衝撃に震える。
しかし、すべてがそうであるとしても、その背後では、抵抗は存在し、人びとは連帯している。
● 感染対策
FT December 29, 2020
Covid has no grand lesson for the world
Janan Ganesh
PS Dec 29, 2020
There Will Be No Quick COVID Fix
WILLIAM A. HASELTINE
感染症を抑えるのは、基本的に、4つの要素からなる。指導力、ガバナンス、社会的連帯、医療手段。ほとんどの国が最初の3つに失敗し、最後の要素に期待している。それはワクチンと治療技術だ。しかし、それらにはまだ時間がかかるだろう。
中国政府は感染拡大を抑え込んだ。その理由を、しばしば、全体主義体制に求める議論は間違いだ。彼らが用いたのは標準的な方法、マスク、ディスタンス、入国管理、隔離であった。同じように、ニュージーランドも成功した。人びとは個人の自由が奪われることに反対する。しかし、戦争のときには、その危険が確実に迫っているという自覚から、協力した。
指導力、ガバナンス、社会的連帯がなければ、2021年も感染は続くだろう。
PS Dec 29, 2020
COVID and the Comeback State
ANA PALACIO
PS Dec 29, 2020
Whose Post-Pandemic Century?
BILL EMMOTT
COVID-19による死者の数字が示すように、アジアで最も貧しい医療システムしかない国でも、アメリカやヨーロッパの最も豊かな医療システムより、優れた結果を残している。しかし、ガバナンスの優秀さで「アジアの世紀」を予想するのはまだ早いだろう。
PS Dec 30, 2020
Learning to Live with COVID-19
ERIK BERGLÖF
● 2021年
FT December 29, 2020
2020: charts from a year like no other
FT reporters
FP DECEMBER 29, 2020
10 Conflicts to Watch in 2021
BY ROBERT MALLEY
FT December 30, 2020
Forecasting the world in 2021
WHOは非常事態の終結宣言を出すか? ・・・No.
ボリス・ジョンソンの保守党が労働党に明確な優位を維持するか? ・・・No.
スコットランドは独立を問う住民投票を実施するか? ・・・No.
緑の党はドイツの次期政権に参加するか? ・・・Yes.
ブリュッセルは基金の利用にあたって法の支配に違反する国を除くか? ・・・No.
ジョー・バイデンはレイムダックの大統領になるのか? ・・・No.
アメリカと中国は貿易交渉で合意するか? ・・・No.
香港で中国政府に対する大規模な口語デモが再発するか? ・・・No.
● 独裁国家の反体制派
FT December 29, 2020
North Korea can change — but only if information gets in
Andrei Lankov
15年間、ソウルの人権団体とNGOsは北朝鮮に向けて、文書やUSBを、気球を使って送った。それらには北朝鮮が境界を封鎖している外の世界に関する情報が収められていた。
最近まで、北朝鮮はこれを非難しても容認していた。しかし、6月に、南北対話を行う条件として、韓国政府にこの活動を禁止するよう求めた。ムン・ジェイン政権は外交的な苦境を打破するために、北朝鮮の要求に応えることを選び、それを非合法化する法律を制定したのだ。
この法律は反民主的である。北朝鮮を変える可能性を減らすものだ。外交的な要求が失敗してきた以上、北朝鮮の住民が改革を求めるという解決策しかない。ソ連と東欧諸国に対して、人びとが異なる生活を知ったことで不満を持ち、冷戦が終結したことはそのモデルである。
北朝鮮の指導者たちは厳しく孤立状態を維持している。
FT December 29, 2020
A bleak year looms for Russian dissenters
Tony Barber
Yemelyan Pugachev
ロシアの反体制派には尋常でない勇気が要る。
帝政時代に農民反乱を指導したプガチョフYemelyan Pugachevは、1774年に捕らえられた。檻に入れてモスクワに送られ、斬首、引き回し、四つ裂きにされた。
ヨシフ・スターリンの独裁の下、1930年代に、共産党指導者たちは公開裁判で自白を強いられ、銃殺された。
現在も、リベラルな野党政治家であったネムツォフBoris Nemtsovは、2015年、クレムリンの壁の近くで暗殺された。プーチン大統領に対する最も著名な批判家であるナワルニーAlexei Navalnyは、2020年8月、神経ガスのノビチョークで殺害されかかった。
2021年は、こうしたロシアの伝統により、反体制派にとって冷酷な年であると予想される。しかし、ロシアでは不思議なことが起きる。モスクワの530キロ東にある村Povalikhinoで、プーチンを支持する統一ロシア党の代表が、35歳の清掃婦に、彼の対立候補として出るように求めた。2人の候補者が必要だったからだ。誰もが驚き、彼女も驚いたが、このまったく政治経歴のない清掃婦が勝利した。
9月の議会選挙で、同じようなことがロシア全土で起きるとは思えない。クレムリンは個人の政治活動を厳しく禁じている。与党の統一ロシアに対する不満は広がっているが、クレムリンはそれを中和するために、いくつかの新しい「スポイラー(だめにする)」政党を奨励し、政府への批判を吸収させる。For the Truth, Green Alternative and New People、政府から影響を受けないというこれらの政党は、プーチンの支配を助ける、政治的な競争の幻想を振りまくだけのために存在する。
たとえナワルニーが選挙活動を許されても、その支持者は少ないだろう。人びとは「寄生虫のような官僚制度」に憤慨するが、プーチンが大統領をやめるまで大きな改革は不可能だ、と認めている。7月の憲法改正で、プーチンは2038年まで大統領にとどまることができる。
ジョー・バイデン次期大統領は、「われわれは、プーチンの略奪的な権威主義体制に繰り返し立ち上がった、ロシアの市民社会を支持する」と書いた。
それは大胆な言葉だが、プーチンを動かすものではないだろう。
FP DECEMBER 30, 2020
Beijing’s Hong Kong Fables Have Unhappy Endings
BY JEFFREY WASSERSTROM, SHUI-YIN SHARON YAM
● 開発の最重要点
PS Dec 29, 2020
The Missing Link in Economic Development
RICARDO HAUSMANN
エコノミストたちは市場における誘因を重視する。しかし、たとえ政府が補助金や税金で誘因を操作しても、人びとがそれに応えることができなければ意味がない。発展途上国の開発には、むしろ、ケイパビリティの構築こそが重要だ。
● 「魔女狩り」
PS Dec 29, 2020
Three Terms That Misdefined 2020
JEFFREY FRANKEL
ドナルド・トランプ大統領とCOVID-19パンデミックが2020年の紙面を支配した。そのときの3つの言葉がこの1年を代表する。「魔女狩り」。「ブラックスワン」。「指数関数的」。
トランプはおよそ3日に1度は「魔女狩り」という言葉をツイートした。元来の「魔女狩り」とは、近代初期のヨーロッパで始まり、アメリカ植民地にも広がった。1400-1782年、ヨーロッパで推定4万から6万人の人が、しかも主に女性が、魔女として処刑された。1692-93年、マサチューセッツ州のセイラムで、30人が自白し、19人が絞首刑になった。
「魔女狩り」という言葉が広く使用されたのは20世紀になってからだ。「ベッドに隠れた」共産主義者たちを熱狂的に探し出す行為を指した。アーサー・ミラーが1953年にセイラムの裁判を舞台にした。それは、アメリカ政府に共産主義者が侵入している、という疑惑による、ジョゼフ・マッカーシー上院議員の聴聞会の比喩だった。
しかし、これら2つの歴史的な事件と、ドナルド・トランプに対する告発との間には大きな違いがある。魔女と共産主義者は、邪悪な行動を取る特定のタイプを示しており、ハンターは、だれがそれに当たるか、隠れた者を探した。
しかし、大統領と彼の支持者たちは、彼を批判することを「魔女狩り」とよんだ。トランプが良くないこと、犯罪に関わっている、と確信し、そこから批判が起きている、と。大統領の地位を奪う理由を探している、と。彼らの主張する意味は、「告発」や「ハラスメント」であるだろう。
1931年にアル・カポネが告発されたが、それは「魔女狩り」ではなかった。告発はその対象を定めるし、捜査を行うが、法の支配を実行している。
FP DECEMBER 29, 2020
Polarization Is Ruining America—Just Not the Way You Think
BY CARLO INVERNIZZI ACCETTI
● 中国の変貌
SPIEGEL International 29.12.2020
The Dawn of the Dragon
How Xi Jinping Has Transformed China
By Bernhard Zand
PS Dec 31, 2020
China’s Pro-Monopoly Antitrust Crusade
MINXIN PEI
● 「責任あるステークホルダー」
FP DECEMBER 29, 2020
Washington Still Wants China to Be a Responsible Stakeholder
BY ANDREW TAFFER
北京を「責任あるステークホルダー」にするという、アメリカの長期的な関与政策が失敗だった、という不満がますます強まって、ワシントンの政策コミュニティでは思考方法が変化した。北京にコストを負わせ、経済的関与を制限し、中国を押し戻す二国間の摩擦を受け入れ、より攻撃的にアメリカの利益を守る、さまざまな戦略が競い合っている。しかし、しばしば指摘されることだが、競争はその目的ではない。これらの戦略が達成する目標は何なのか?
中国の国際的な行動を変形する上で、ワシントンが目標とするものは、おおむね変わっていない。このことは、タカ派もハト派も、中国に関して語るときにはめったに認めない。アメリカは中国の攻勢を抑え込み、地域における戦略的な位置を維持するのだが、それに加えて、中国を国際社会のルールを守る、システムを維持する、そういう国に変えようとしている。15年前に、ゼーリックRobert Zoellickが述べた「責任あるステークホルダー」である。
トランプ政権は米中関係を対決する方向に進めたが、2020年5月の政府文書で、明らかに、それは中国の発展を封じ込めるものではない、と述べた。むしろその目的は、中国を責任ある国家の行動に従わせるものだ、と。続けて、その文書は、中国が朝鮮半島の非核化を助けること、を挙げている。トランプのホワイトハウスは、米中が協力して、世界の平和、安定、繁栄に資することを希望した。
ジョー・バイデン次期大統領は、アメリカが同盟諸国とともに、中国が無視できないような仕方で、ルールを決める作業を進めて、中国に対抗すると述べた。その目標は、中国に国際システムのアクセスを閉ざすことではなく、北京がシステムにとどまり、ルールに従うことである。バイデンは、気候変動、核兵器の不拡散、グローバルな医療安全保障に対応するため、中国にパートナーシップを呼びかけた。
中国政府の高官たちが、今や公然と、アメリカは中国の台頭を嫌っている、封じ込めようとしている、と語るようになった。中国に「責任あるステークホルダー」を要求することは、常に、野心的で原則的な目標であるべきだ。しかし、どうしても、失敗するだろう。むしろ失敗のコストとリスクを減らすべきだ。一方的に譲歩することや奇跡を期待するのではなく、互恵性の原則に戻るべきだ。そして、民主化のレトリックを強めるのではなく、北京が市民たちを人道的に扱う、という約束を守るように、要請するのがよい。
決定的なこととして、北京が変わらないとしても、アメリカが中国に「責任あるステークホルダー」を求めていると宣言することは、世界中のパートナーたちに重要なメッセージとなる。多くの国は米中関係の悪化が続くことを懸念している。アメリカが衝突や体制転換を求めず、責任ある諸国のコミュニティに中国を迎えたい、という意志を歓迎するはずだ。
PS Dec 30, 2020
A Messy Financial Divorce for the US and China
GEORGE MAGNUS
米中は政治的な対立を強めていたが、その間も、金融的な関係は深められた。多くのアメリカの金融機関は中国市場を求め、進出してきた。
しかし、トランプはドルを政治的な武器として使用した。金融市場の分断も強いるつもりだ。それは非常に混乱する過程をもたらす。バイデン次期大統領が、この分断政策を継承するのか。
中国は、アメリカの金融技術を吸収することに関心がある。これを利用して、新しい関係を築くのが良いだろう。
FP DECEMBER 30, 2020
The Great Game With China Is 3D Chess
BY HAL BRANDS, ZACK COOPER
米中関係は冷戦時代を再現しない。もっと複雑なものである。アメリカは多角的な交渉を重視し、同盟関係を築くべきだ。
PS Dec 31, 2020
The Sino-American Race to Zero
ANDREW SHENG, XIAO GENG
● 債券市場
FT December 30, 2020
Why obituaries for the bull market in bonds might be premature
Tommy Stubbington
● アラブの春
PS Dec 30, 2020
Arab Hope Springs Eternal
CARL BILDT
「アラブの冬」ともいえるほど、反革命は厳しいものだった。しかし、Saudi Arabia, Iran, and Egypt、いずれの国でも、体制は持続可能なものではない。代表制の政府に向けた改革、社会や経済の開放は避けられないものだ。それこそが、増大し続ける若者の人口を抱えた国に、「アラブの春」が与えた教訓だ。
● 気候変動
PS Dec 30, 2020
A Marshall Plan for the Planet
PAUL POLMAN
● 核兵器と平和
FP DECEMBER 30, 2020
America’s Asian Allies Need Their Own Nukes
BY DOUG BANDOW
アメリカは世界中で安全保障に関与している。中国に対抗するには、アメリカも同盟諸国に核保有を促すべきだ。
The Guardian, Thu 31 Dec 2020
Joe Biden should end the US pretence over Israel’s ‘secret’ nuclear weapons
Desmond Tutu
アメリカの新政権は、イスラエルの核兵器保有を事実として批判し、パレスチナ人への野蛮な弾圧を行ってきた国に、援助を与えるべきではない。
イスラエルの現状で、真の平和は得られない。南アフリカのように核兵器を放棄し、敵対的な弾圧政策を破棄して、ユダヤ人とアラブ民族は和解するべきだ。
● パンデミックとデモクラシー
PS Dec 31, 2020
Doing Democracy During the Pandemic
LARA WODTKE
NYT Dec. 31, 2020
Bosses: Consider Caring a Bit
By Jessica Powell
NYT Dec. 31, 2020
2020 Taught Us How to Fix This
By David Brooks
● ジョー・バイデン
NYT Dec. 31, 2020
My Joe Biden Story
By Linda Greenhouse
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The Economist December 12th 2020
Will inflation return?
Inflation: Prognostication and prophecy
Covid-19 in Japan: 3C epiphany
Suicide in South Korea: Deepening despair
Corporate balance-sheets: A year of raising furiously?
Productivity trends: Reasons to be cheerful
(コメント) コロナウイルスの感染を抑える方法は見つかりません。ワクチンが本当に大きな前進となるのか、国によっては信頼されず、貧しい国には手に入らない。そんな中で、日本はロックダウンを重視しなかった、という「3C(三密)回避政策」を評価する記事が載っています。
しかし、パンデミックで注目を集めているのは、巨大なマクロ政策介入する。まさに風船を膨らませるように、政府は赤字を増やし、中央銀行は債券市場に通貨を供給しています。この先、何が起きるのか? 当然、さまざまな予想が闘っています。インフレも、財政破たんも、あるいは、生産性の上昇によって、ソフトランディングに成功するのか。
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IPEの想像力 1/4/21
イギリスは、さまざまな不満と、さまざまな幻想、さまざまな政治的愚かさによって、EUから離脱する舞台に熱狂した。すくなくとも、そういう人たちに権力を与え続けた。日本にも、そのような政治的熱狂が襲うのだろうか? 日本にとってのブレグジットとは何か? US経済圏からの離脱? さらに、中華経済圏からの離脱。
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新海誠の映画、『天気の子』を観ました。とてもおもしろくて、少年に戻りたいな、と思いました。
建物や空の様子、人びとを空から観る。『ブレードランナー』のような都市の景観でした。
雨の都会。
離島から都会に出た少年、帆高は、一人の少女に出会った。
背景にあるのは、さまざまな社会・都市問題。
家出。ネットカフェ。マクドナルドのバイト。
異常気象。オカルト。MacBook。iPad。犯罪者。ラブホテル。
大人たちの政治や制度は、警察も、児童保護相談所も、帆高や陽菜のために機能してくれない。
もちろん。これは気候変動の話だ。そして、コロナウイルスの蔓延を予告したような。
人類が地球の気候さえも変える時代だから。
天気を祈るのは、人柱になることを意味する。
不思議なパワーと人とが交わること。
まるで、社会的な連帯と、個人の自由。
少年と少女は不幸だった。しかし
人として、幸福になる瞬間を発見する。
都会の、小さなビジネスも、就職活動も。
晴れることで気分がよくなるのはなぜか?
人を幸せにする、小さな晴天をよぶために、陽菜が祈る。
雲間から日が差し、空が見え始める変化は美しい。
幸せを感じる人のためになって、陽菜の体は少しずつ消えていく。
晴天を売るビジネス。しかも、1回、5000円。えらく安い。
彼女の命の値段なのに。
人を愛する感情を意識するとき。
小さな指輪を選ぶのに3時間も店で考える。
彼女はどうにか地上に戻れたが、仲間から切り離され、
ひとりで悲しみに沈む。
それから毎日、雨が降り続き、
ついに、東京は水没してゆく。
「それでもこの世界に生きると、ぼくたちは決めた。」
「世界を変えるなんて、うぬぼれるんじゃない。」
3年経って、彼は再び上京する。
そして、陽菜が祈る姿を観た。
世界中の貧しい家族、ホームレスにもチャンスを与える。
雨雲を抜けて陽が差すような、「天気の子」がいるかもしれない。
だれでも、死ぬまでに誰かを、幸せにすることができると思う。
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卒業研究を書いている学生と話して、フィンランドの人口は550万人ほどでも、日本より豊かで、4週間の長期休暇を取り、労働時間も少ない、大学は授業料を取らず、だれでも何度でも職業訓練を受けて転職できる、と知りました。東北地方の人口は870万人です。
冬の長い、氷の国のように思っていましたが、「天気の子」たちがいっぱい元気に暮らしている。フィンランドに子供たちを送ったら、彼・彼女たちがとても熱心に学んで帰国した。東北独立党ができ、議席を増やしている、という話を聴いてみたいな、と思いました。
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