IPEの果樹園2020

今週のReview

12/7-12

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イエレン財務長官 ・・・ブレグジットに縛られる ・・・バイデンの外交政策 ・・・トランプの破壊力 ・・・裕福な社会のパンデミック不況 ・・・イランの核科学者暗殺 ・・・金融メカニズムとその評価 ・・・減税より高賃金 ・・・パンデミックと債務の限界

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 イエレン財務長官

NYT Nov. 26, 2020

In Praise of Janet Yellen the Economist

By Paul Krugman

バイデン次期大統領がイエレンを財務長官に指名したことは、大きな衝撃となった。彼女は、アメリカの経済政策に関する3つの頂点を経験する最初の人物になる。すなわち、大統領経済諮問委員会委員長、連銀議長、財務長官である。

そして、これは彼女の2期目を拒んだドナルド・トランプの決定を翻すことでもある。

彼女は、マクロ経済学を有益な学問として救済する知的運動の指導的人物であった。マクロ経済学は内外から攻撃されていた。

その前に、彼女が連銀議長になる前、理事であった2010年代に、金融危機後の大不況にアメリカ経済は苦しんでいた。それは議会の共和党議員たちが政府債務を懸念するふりをして、政府支出を削ったからだ。それは成長を大きく損なった。

同時に、金融政策に関して激しい論争があった。特に、2008年の金融危機から回復に向けた連銀の政策が批判された。Judy Sheltonは、まったく資格のない人物だが、ドナルド・トランプは連銀理事に指名しようとした。彼は2009年、連銀が「破滅的なインフレーション」をもたらす、と警告した。そして、イエレンは不況と闘うことを優先したハト派の指導者であった。

彼女の姿勢は1980年代にさかのぼる。「有益なマクロ経済学」は、不況と闘う財政・金融政策だった。しかし、政府が富裕層への減税で、魔法のように、好況をもたらすとか、人が合理的に行動するなら、不況と闘う政策には意味がない、という主張が広まった。

イエレンはこれに反対し、「新ケインズ学派」を指導した。人びとは愚かではないが、完全に合理的とか、完全に利己的、ということもない。彼女の主張は、若いエコノミストたちに、有益なマクロ経済学を学ぶライセンスを与えた。また、データとモデルの重要性を示した。

トランプ内閣は、アメリカ史上最悪の道化ショーであったが、220年までに、その無能さは明白になっていた。経済政策は、イエレンのような、その役割を理解した者に委ねるべきだ

FT November 28, 2020

Janet Yellen: a Fed veteran ready to take the wheel at the Treasury

James Politi

イエレンは、教師の母と、医師の父を持ち、彼女の父は自宅を医院として多くの労働者たちを診た。近隣にはヨーロッパ系の移民が多かった。「大きくなるにつれて、だれかが仕事をなくすとその家族に何が起きるか、しばしば聞くようになった。」と、イエレンは講演で語った。

74歳の彼女は、労働経済学者として、最も成功した、最初の女性の財務長官になるだろう。彼女はイエール大学でJames Tobinに学び、連銀の研究スタッフとして勤めたとき、George Akerlofと出会って結婚した。彼はノーベル経済学賞を受賞した。彼女の人柄について、才能について、仕事に就いて、ECBの元総裁Mario DraghiIMFの元主任エコノミストMaurice Obstfeld、元大統領Bill Clinton、彼女をワシントンに招いたLaura Tysonが、述べている。

FT November 30, 2020

Janet Yellen is the right woman for the times

Rana Foroohar

政治的分断が進んで今のアメリカで、だれにも愛される財務長官を見つけることは不可能に近い。しかし、バイデン次期大統領は見事にやった。ジャネット・イエレンを指名したのだ。

だれにも平等で、データを重視する、エゴを押し出すことがないリーダーとして、彼女は進歩派と保守派の両方から信頼されている。

イエレンの信念は、何よりも、経済学の人間的な影響を重視するものだ。20141月、連銀議長に指名された後、中央銀行が公共政策において果たす倫理的な責任を語っていた。インフレを抑え、金融システムを監視する。それだけでなく、普通の家計を助けて、人びとが安心して働き、前にすすむことができる、労働市場を創り出す。

彼女は、バイデンが構想する「ケアリング・エコノミー」を実現する完璧な人物である。それは、医療、教育、育児などを最優先する経済だ。

イエレンのもう1つの信念は、ウォール街よりもメイン・ストリートを重視することだ。彼女は、証券取引委員会など、9つの金融市場・銀行に関する委員会を統括するFSOCthe Financial Stability Oversight Council)の議長にもなる。財政支出以上に、将来の規制が重要だ。

われわれは経済を、資産市場のバブルではなく、雇用と所得の成長に依拠するものに移行させるべきだ。

PS Dec 2, 2020

What Yellen Must Do

JOSEPH E. STIGLITZ


 バイデンと金融政策

FT November 27, 2020

Biden administration faces a housing booby trap

John Dizard

FT December 3, 2020

Why central banks will double down on lending schemes 

Huw van Steenis


 ブレグジットに縛られる

The Guardian, Fri 27 Nov 2020

As Americans fix their 2016 error, we in the UK are doubling down on ours: Brexit

Jonathan Freedland

卑しいことだが、私は羨ましいと感じた。それは、月曜日、ジョー・バイデンが彼の指名した主要閣僚を公表したときだ。冷静で、有能で、経験を積んだ司令官たちである。それはイギリスの、すべて才能が乏しい閣僚たちと、あまりにも対照的になるだろう。毎日、アメリカでは、バイデンが当選し、トランプが拒否されたことが明確になっている。アメリカ人は2016年の重大な間違いを取り消した。私は羨ましい。われわれはまだ自分たちが犯した間違いの中にいる。

ロンドン大学(LSE)のThomas Sampsonが研究で示したように、2035年までブレグジットの痛みは残る。彼の推定では、COVID-19によってUKGDPは、現在価値で、2.1%減少する。しかし、ブレグジットは、その約2倍、3.7%もGDPを減らすのだ。もし合意がないまま離脱すれば、それは5.7%になる。これは自然現象でも災害でもない。われわれが自分でやるのだ。

残留派も離脱派も、これに対して言うだろう。もう決まったことだ。離脱は完了した、と。

しかし、2つの問題が残る。第1に、ジョンソンは「すでにできたようなもの」という合意だ、と約束して勝利した。有権者が観ているのは、ジョンソンのオーブンでできたはずの合意ではなく、「まだ料理していない、中は凍ったまま」のものだった。たとえ最終的に合意できても、それが非常に薄っぺらの、EUウォッチャーの言葉を借りれば、「90年代のスーパーモデルよりも痩せた」中身である。

2に、2019年と2020年との違いだ。われわれは最悪のパンデミックの中にある。サプライ・チェーンを根本的に変え、近隣諸国との通商協定を見直すには、最悪のタイミングだ。しかし、ジョンソンは延期せずに強行するつもりだ。

労働党は、合意なしの離脱に反対だ。しかし、もしジョンソンが合意案を議会に提出したら、それに賛成するのか?

The Guardian, Fri 27 Nov 2020

Don’t snark – this ‘Brexit festival’ may turn out to be just the tonic we need

Gaby Hinsliff

FP NOVEMBER 27, 2020

Scottish Independence Is Only Gaining Popularity

BY JAMIE MAXWELL

The Guardian, Sun 29 Nov 2020

Will we have a return of the roaring 20s? Fat chance when we are facing Brexit

Will Hutton

イギリスが1925年に金本位制に復帰したことは、自ら招いた経済破壊として語り草になってきた。金1オンスの価格を固定することで、ポンド・スターリングが信頼され、貿易が回復し、イギリスは繁栄の1920年代を迎える、と考えられた。第1次世界大戦と1918年のインフルエンザ・パンデミックは過去のものになる。

しかし、為替レートをあまりにも高く固定したために、物価とコストが切れ目なくつながった産業界は破局に陥った。その後の緊縮策、デフレーション、賃金引き下げの試みは大規模なストライキに至った。

当時は、保守党の意見が支配的で、労働党も反対しなかった。実際、ラムゼイ・マクドナルド労働党内閣も、その政策を継承した。帝国、自由貿易、健全財政の目標が変わることはなかった。

100年を経て、状況は変わったが、ロックダウンから脱出して経済の高揚が始まる、という希望がある中で、自ら大失敗を演じ続けている。合意なき離脱、あるいは、小さな葉っぱで隠す程度の合意しかないEU離脱は、1か月後に、貿易を破壊する。

パンデミックの中で、イギリス産業界は1925年に期待されたように迅速に調整するのだろうか。世界経済における優越を魔法のように回復し、グローバル・ブリテンは社会主義的なEUの規制から自由になる。発芽、成長する自由貿易の新時代が出現する。

しかし、2020年の貿易は木綿や石炭の塊を取引するのではない。精密に設計された複雑な人工物、高度なビジネス支援やサービスを取引する。その前提は、相互に合意された基準、仕様、資格、ルール、貿易の利益を得るために主権を共有する、交渉された枠組みなのだ。

ブレグジットは予算案で何も言及されなかった。しかし、ジョンソンのウルトラ・ハード版ブレグジットはCOVID-19よりも大きな失業とGDP下落をもたらすと広く指摘されている。イギリスの財政赤字は現在の2兆ポンドから、2024年までに3兆ポンドになる。

イギリス経済は、毎年、特異で恒久的な、大幅対外赤字を続けており、内外の借り入れ能力に依存している。外国からの資本流入は「見知らぬ者の厚意」である。対外収支の赤字はGDP5%に達し、合意なきブレグジットなら、もっと大きくなる。先進国で、これほどの赤字を長期に維持する国はどこにもない。しかも貿易は混乱し、輸出能力は失われ、大企業が劇的に困窮する。

失業者に焦点をあてた支援が必要だ。さらにもっと、ルーズベルト型の雇用創出機関を設けるべきだ。企業は海外市場を必要としている。1930年代には、帝国市場を利用できた。2020年に、それに匹敵する市場はEU単一市場だけである。ブレグジットで合意するだけでは不十分だ。少なくともEU単一市場にとどまり、関税同盟に参加する。さらに、たとえ今は考えられないとしても、究極的には、EU加盟国であるべきだ。

歴史から学べ。

FT November 29, 2020

No-deal Brexit is the UK’s biggest economic threat, not Covid

David Gauke

The Guardian, Mon 30 Nov 2020

Boris Johnson will get a deal: but it will be a betrayal of the Brexiters

Polly Toynbee

FT December 3, 2020

Betrayalism is dragging down Boris Johnson

Robert Shrimsley

The Guardian, Thu 3 Dec 2020

Labour shouldn’t fall out over Brexit: it ought to focus on what happens next

Peter Mandelson

FT December 4, 2020

Tough Macron stance leaves Brexit deal hanging in balance

Jim Brunsden and Sam Fleming in Brussels, Peter Foster in Brighton and George Parker in London


 UKの援助政策

FT November 27, 2020

UK must keep its foreign aid promises

Justin Welby


 中国の金融市場

FT November 27, 2020

Spate of Chinese defaults tests investor confidence

Tom Mitchell

FT November 30, 2020

China edges towards greater financial discipline


 バイデンの外交政策

PS Nov 27, 2020

Biden’s Modest Multilateralism

JEFFREY FRANKEL

国際協調を教えても、学生は退屈している。しかし、COVID-19を経験して、私たちは思い出すべきだ。WTOIMF、国連の諸機関など、国際機関はあるが、自国の主権を重視する人々に嫌われてきた。

バイデンが大統領になれば、多くの国際問題が解決を求めて待っている。国際経済協力を掲げて選挙を闘ったわけではないが、トランプの無思慮なWHO離脱やパリ協定離脱を逆転すると約束した。

COVID-19のようなパンデミックは、国際的な外部性の古典的例である。単独の政府が解決することは不可能だ。地球温暖化もそうだ。

バイデンと他の諸国の指導者たちは、1930年代以来最悪の世界不況に取り組まねばならない。パンデミック対策で居力するだけでなく、1978年のボン・サミットや、2009年のG20のように、主要諸国が財政刺激策で合意しなければならない。

協調して財政支出を増やし、その多くが環境対策やパンデミック対策に投資されるなら、グローバルなGDPと雇用の回復を助け、W字型不況のコストを緩和するだろう。それはまた、G20諸国の貿易収支悪化を防ぐ。

新興市場と発展途上諸国(EMDEs)は、債務の組み換えを必要としている。これまでのところG20の枠組みDSSIしかなく、不十分だ。SDRの新規発行も提案されている。

アメリカの戦略家は、USが設計したTPPを、トランプは離脱したが、他の諸国が維持しており、アメリカも参加するべきだと考える。それはルールに従う中国の参加をめざすものだから。

バイデンの閣僚指名が示すように、アメリカは国際協調に復帰するが、それは政権の最優先課題ではないだろう。アメリカがオーケストラの指揮者である、と期待する声もない。しかし、友好国、同盟国は、アメリカの復帰を喜んでいる。

The Guardian, Mon 30 Nov 2020

Biden says 'America is back'. But will his team of insiders repeat their old mistakes?

Samuel Moyn

FT November 30, 2020

The perils and pitfalls of building multiracial democracies

Gideon Rachman

オバマ元大統領が新著のインタビューで述べた言葉に、私は跳び上がった。・・・「アメリカは、マルチ・エスニック、マルチ・カルチャーの大国における、民主主義の最初の重大な実験である。そして、われわれには、それが維持できるかどうか、まだわからない。」

それは荒涼とした見解である。アパルトヘイトの南アフリカでも、指導者が多人種社会で民主主義は機能しない、と述べれば非難されただろう。しかし、オバマの疑念は間違っていない。

もし間違っているとしたら、彼がそのような挑戦をアメリカだけのものと示唆したことだ。インドとブラジルも、マルチ・エスニック、マルチ・カルチャーの大国であり、民主主義は歪みを強めている。

インド独立の指導者たちは、新しい国が非宗教国家であり、すべての市民が平等に扱われる、と考えた。しかし、現在のモディNarendra Modi首相は、ヒンドゥー・ナショナリズムに依拠し、専制国家の性格を強めている。ムスリムの市民的自由は、司法やメディアの独立性とともに、脅かされている、と多くのリベラルは考える。

ブラジルでは、ボルソナーロJair Bolsonaro大統領が、アメリカの共和党に似た主張を展開する。不正投票の犠牲者だ、と述べ、黒人、混血人種、先住民へのアファーマティブ・アクションを攻撃する。21年間の軍政支配を称賛する。

それに反対する例は存在する。カナダ、オーストラリア、UKがそうだ。何が違うのか?

最大のエスニック・宗教集団が、社会的地位や特権を脅かされる、と恐れるようになったことだ。ブラジルでは、2020年のセンサスで白人が人口の半分を切った。アメリカでも、2045年までに白人がマイノリティーになる、という予測が、共和党に選挙で勝てないという憂鬱な想像を生じた。インドではヒンドゥー教徒が8割近いが、BJPの指導者たちはムスリムが不当な特権を得ている、と攻撃する。

民主主義内のこうした緊張は何をもたらすのか。マレーシアは多数派に教育や雇用の特権を与えた。レバノンは、議席や、公共部門の雇用を、宗教とセクトに割り当てた。しかし、両国とも、特権はクローニズムと腐敗を生じている。フランスは市民権を集団の権利よりも優先する。

世界中を観ても、オバマの疑念は当たっている。完全な解決の公式はないが、大規模な移民が起きている世界で、日本やハンガリーのような単一民族を強制することは難しく、機能しない。それはますます、停滞と独裁のレシピになっている。

あるエスニック集団の支配を維持することは、最悪の場合、「エスニック・クレンジング」や、中国の新疆に観られるような、大量の投獄や再教育収容所に至る。

マルチ・エスミックの民主主義は困難で、機能も不確かであるけれど、それに代わるシステムは魅力のない、機能不全の、ときに、恐るべきものだろう。

NYT Nov. 30, 2020

How to End a Forever War

By The Editorial Board

NYT Dec. 2, 2020

Biden Wants America to Lead the World. It Shouldn’t.

By Peter Beinart

バイデンの外交政策がどうなるのか、まだわからないが、その外交チームが信じているのは「指導力」である。

国務長官に指名されたブリンケンAntony Blinkenは、Foreign Affairs に論説“Why America Must Lead Again”を書いた。指名されたとき彼は、「アメリカは戻ってきた。世界を指導する準備はできている」と述べた。

しかし、そんなことは望まないでおこう。トランプ後の時代に、「指導力」はゆがんだ、危険な、アメリカと世界を結び付けるビジョンである。

バイデンは、過去70年間、民主党も共和党も、その大統領はルールを描く指導的役割を果たし、集団的な安全保障と繁栄をもたらした、と書いた。しかし、第2次世界大戦後のアメリカを理想化してはいけない。

Dov H. Levinによれば、1945-1989年、アメリカは63回も外国の選挙に介入した。James Goldgeier and Bruce W. Jentlesonが注意したように、アメリカ経済は世界GDPの役は文から7分の1になった。今や、EUはアメリカにほぼ等しく、中国はアメリカを超えている。パンデミックで、その差は拡大しただろう。

バイデンは、モラルを挙げる。しかし、Brown University’s Watson Institute for International and Public Affairsによれば、911後の戦争でアメリカは3700万人の難民を生んだ。ドナルド・トランプの前にも、地雷禁止やクラスター爆弾禁止など、アメリカは多くの国際条約を批准しなかった。ほとんどの国がこれらを批准している。

残念ながら、バイデンの顧問たちも、支配のない協力を支持しない。世界は自ら組織しないから、とブリンケンは言った。秩序が失われたら、その真空を埋めるのは悪いことばかりだ、と。

しかし、国民も、他国も、アメリカが指導力より同朋意識を持つことを望んでいる。それが、アメリカ的でない、というのは間違いだ。

バイデンは、指導力ではなく、連帯を広めることだ。

NYT Dec. 3, 2020

A Return to Decency

By Roger Cohen

FP DECEMBER 3, 2020

Biden Expected to Put the World’s Kleptocrats on Notice

BY AMY MACKINNON


 トランプの破壊力

PS Nov 27, 2020

America’s Political Crisis and the Way Forward

JEFFREY D. SACHS

トランプは、アメリカの政治の正統性を破壊する1つの要因でしかない。

すでに2000年の大統領選挙は、フロリダの再集計を最高裁が停止するという論争の多い結果によって、ジョージ・W・ブッシュが大統領となった。2008年のオバマの勝利は、その出生地や国籍に関して疑いをばら撒く「バーセリズム」を生み、これをトランプが利用した。2016年には、ロシアがトランプの勝利に向けた情報操作を行った。そして特に、2000年も、2016年も、共和党の大統領候補が過半数を得ずに勝利した。

トランプは、単に心を病んだ人物であるだけでなく、こうした暴力政治の兆候でもあった。

アメリカ国家の破綻と慢性病は、すでに主張されてきた、経済、文化、政治の趨勢を示すものだ。すなわち、急速な技術変化。デジタル社会の到来は破壊的な影響をともなった。それは大学卒とそれ以外との間で、所得やキャリアの大きな違いを生んだ。

また、白人・プロテスタントの国家が、有色人の市民権獲得と非白人が多数の国家になった。社会民主主義の政治勢力が衰退した。キリスト教福音派の政治活動が高まった。富裕層による政治支配が強まった。時代遅れの政治制度。ソーシャル・メディア。

すぐに解決できるようなものではない。内部の分裂状態と対外的な永久の戦争を終わらせるには、幸運と、能力の高い指導者が必要だ。

バイデンは、保守的な、白人労働者たちに、COVID-19の制御、医療サービスの利用、富裕層への増税、学生ローンの救済、と言った政策で、彼らとその家族に希望を与えることだ。党の基盤を超えた広い支持を得ることで、社会民主的な包括政策は支持される。

バイデンは、また、化石燃料から再生可能エネルギーへの交代が、国民的な好景気をもたらすことを示す必要がある。

アジアは、アメリカの冷戦思考、中国「封じ込め」を打開するために、その経済的、技術的な優位を、地域協力の枠組みで最大限に生かすべきだ。アメリカの覇権的な世界は終わり、中国を含むRCEPなど、アジアの協力関係にアメリカも参加する。

世界の環境、社会、安全保障の問題は、非常に複雑で、緊密に結合している。単独に解決することは不可能だ。地域内の、地域間の強い協力が求められる。バイデンは、このグローバル協力体制に建設的に貢献できる。

NYT Nov. 27, 2020

Why Did So Many Americans Vote for Trump?

By Will Wilkinson

PS Dec 2, 2020

Who Still Loves Trump?

IAN BURUMA

だれがトランプを支持するのか? 彼は今も、右派の強権指導者、デマゴーグ、彼らの支持者たちの間で人気がある。

トランプは、イスラエルと台湾でも非常に人気がある。それは彼らのもっとも強大な敵であるイランとチュ語句に対してトランプが強硬策を取ったからだ。

東アジアでトランプの人気が高いことは、もっと興味深い。香港や台湾では、トランプを、非礼だが、共産党独裁に対抗する自由世界の指導者として強く支持している。リベラルな民主主義を生んだ西側文明を守ってる、という。

韓国と日本では、その態度が不明瞭である。アメリカに安全保障を大きく依存していることが、必要ではあるが、心配事でもあるからだ。

民主的な超大国と専制的な超大国との対抗関係はまだ続く。もし中国の経済的な成功が維持されるなら、対立はさらに厳しいものになるだろう。

FT December 3, 2020

Classism is social activists’ forgotten prejudice

Jemima Kelly

NYT Dec. 3, 2020

Why Prosecuting Trump Is a Very Bad Idea

By Eric Posner

NYT Dec. 3, 2020

Trump Fades, but the Culture War Doomloop Is Eternal

By Charlie Warzel


 インド

FP NOVEMBER 27, 2020

Why India Has Become a Different Country

BY SALIL TRIPATHI

FP NOVEMBER 28, 2020

India’s Farmers Come out in Force Against Modi

BY FAHAD SHAH


 裕福な社会のパンデミック不況

FP NOVEMBER 27, 2020

The World’s First Affluence Recession

BY MAX EHRENFREUND

近代の経済は伝染病に冒されることはなかった。今までのところ。

アメリカは史上初めて、感染症による経済危機を経験している。4月から6月で、約2兆ドルの経済活動が止まった。19世紀のコレラ、1900年にサンフランシスコに達した腺ペスト、1918年のいわゆるスペイン風邪も、そういうことはなかった。

その違いは、消費者が世界規模で、その所得の大きな部分を非必需財・サービスに支出できるようになったからだ。多くの消費が選択的になった。消費できなくても死ぬことはない。消費の裁量的な部分が増えたことで、政府や消費者が非必需の消費を削ることがパンデミックを経済危機にする。

長期にわたる経済成長と構造転換の結果、現代経済は、高価なコーヒーから航空機を使った旅行まで、多くの奢侈財・サービスに依存している。こうした奢侈財の多くを、今、消費者はあきらめている。望むかどうかと関係なく、彼らは貯蓄する。この極端な貯蓄がコロナウイルス経済を定義する。

公共医療の危機は新型コロナウイルスのせいだが、経済危機の原因はわれわれの豊かさである。

パンデミックは21世紀の経済的難問を悪化させている。すなわち、過剰貯蓄、低金利、物価の下落、大量失業、しかも、所得水準は上昇し続けている。

専門家の多くが、サプライサイドの景気後退を予測した。財・サービスの供給が制約される。1970年代のオイル・ショックのように。物価だけでなく、賃金も上昇する。デマンドサイドの景気後退ほどは激しくない。

過去のパンデミックはサプライサイドに集中して作用した。黒死病はヨーロッパ大陸の人口の40%から60%の命を奪ったが、労働力不足は飢饉をもたらし、さらに、実質賃金の上昇につながった。同様に、1918年のインフルエンザの後も、賃金と所得が上昇した、という研究がある。以前の感染症は賃金を上昇させたが、今回、パンデミックは大量失業を生じている。

アメリカ人の消費の多くが裁量的な支出になったからだ。食料、衣服、住居といった必需品への支出は、1918年に、家計の予算の73%を占めたが、2019年、それは35%でしかない。人びとはレストランでの食費やカレッジの授業料に支出する代わりに、多くの貯蓄をした。貯蓄率は433.5%、524.2%、619%。第2次世界大戦以降、最も高い数値である。この期間の平均は7.3%であった。

豊かな消費者が、支出するか、貯蓄するかを、裁量的に決めている。これほど高い貯蓄率は第2次世界大戦中にもあったが、割当制が消費者に、兵役や軍需工場での高賃金を貯蓄するよう強いた。戦後、彼らはこの貯蓄を使って、住宅や電化製品、自動車を買った。そして、子供を産んで育てた。それが1950年代、60年代の好況であった。

戦時経済とコロナウイルス経済には違いがある。かつて消費者は耐久財を購入してきた。しかし今、豊かな消費者はそれらの需要を満たしてしまった。さらに、アメリカ製造業は、国内だけでなく、外国の需要を満たすようになっている。そして、外国の消費者がますます貯蓄する傾向を、バーナンキが「貯蓄過剰」として問題にしていた。

バーナンキは外国政府を責めた。しかし、ますます多くの人々が老後の暮らしや子どもたちのために貯蓄する。外国の銀行は、中央銀行も、アメリカの銀行システムに安全な資産を求める。日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)はその巨大機関だ。こうした過剰貯蓄が、次第に解消される、という彼の予想は裏切られた。

ケインズは、有名なエッセー「孫たちの経済的可能性」において、経済進歩が基本的需要を満たしてしまう、と予想した。コロナウイルス経済がそうである。しかしまた、生活水準の上昇が失業を生む、と予想した。多くの伝統的な職場はなくなるが、社会な新しい需要を創り出し、労働者たちに新しい機会を与える。

20世紀に、彼のこの予想も正しかった。しかも、富裕層に課税して再分配し、政府が労働組合を守って、労働者たちの賃金を引き上げた。20世紀前半の過剰生産や過少消費は回避されたのだ。しかし、こうした保護や利益は弱められ、失われてきた。

資本主義システムの経済成長は、世界中で庶民に多くの可能性を拡大した。特に、不確実さや不安を回避できるようになった。パンデミック後はどうか。世界的な規模で、諸政府が協力し、再分配や公共支出で過剰貯蓄を緩和できるだろうか。あるいは、景気後退が常態なのか。

豊かさが経済のルールを変えた。2008年の景気後退で、ケインズがしばしば言及された。しかし、あの危機は過去の危機であった。コロナウイルス不況は未来の危機である。


 イランの核科学者暗殺

The Guardian, Sat 28 Nov 2020

Was scientist’s killing the opening shot of a Trump-led war on Iran?

Simon Tisdall

イランの指導的な核科学者が暗殺された。

先週末、かつてない会談がサウジアラビアであった。イスラエルのネタニヤフ首相、アメリカのポンぺオ国務長官、サウジアラビアのムハマド・ビン・サルマン皇太子の会談だ。中東には、トランプが、表裏の、軍事もしくは情報操作、いずれかに関わらず、イランを攻撃するのではないか、という観測が広まっていた。

暗殺は核計画に対する攻撃だけで終わるのか? もっと長期的な遺産を狙っているのか?

しかし、次に起きることは、イスラエルとサウジアラビアの指導者たちにかかっている。彼らは慎重に計算するだろう。バイデンの考えを無視すれば、イスラエルの安全が損なわれる。サウジアラビアの皇太子もテヘランを叩きたいだろうが、自国の都市や石油施設が標的になる。彼らにとって、暗殺はリスクの高いギャンブルだった。

イラン指導者は選択するしかない。報復の要求を抑えるのか、あるいは、それに従って紛争を拡大し、コロナウイルス対策をむつかしくし、制裁によって経済を破壊されるのか。中東全体にとって運命の選択だ。

NYT Nov. 28, 2020

A Scorched Earth Strategy on Iran

By Barbara Slavin

イスラエルは2010年から2012年の間に、イランの科学者たちを何人も暗殺した。それを擁護して、国際交渉が進展しない中で、イランの核保有を遅らせるためだ、と主張した。

しかし、金曜日、核科学者のトップであるMohsen Fakhrizadehを暗殺したのは、事情がまったく逆だ。イランは、バイデン政権が同じように順守するなら、核合意に復帰する、と繰り返し明言していた。

この暗殺は、ネタニヤフ首相とトランプ大統領が焦土作戦を実行し、バイデン次期大統領が外交へ復帰することを困難にするために行われた。

The Observer, Sun 29 Nov 2020

The Observer view on Donald Trump and the murder of Iran’s leading nuclear scientist

Observer editorial

NYT Nov. 29, 2020

Dear Joe, It’s Not About Iran’s Nukes Anymore

By Thomas L. Friedman

FT November 30, 2020

Killing of Iran’s nuclear scientist complicates Biden’s Middle East plan

David Gardner

イランの戦略的な忍耐が試されている。

FT November 30, 2020

Machine guns and a hit squad: the killing of Iran’s nuclear mastermind

Najmeh Bozorgmehr in Tehran and Mehul Srivastava in Tel Aviv

FP NOVEMBER 30, 2020

Israel Is the Wrench in Biden’s Iran Policy

BY NERI ZILBER

FP NOVEMBER 30, 2020

How Will Iran React to Another High-Profile Assassination?

BY ARIANE TABATABAI

The Guardian, Tue 1 Dec 2020

The Guardian view on an Iranian nuclear scientist’s assassination: danger ahead

Editorial

FT December 1, 2020

Reckless killing in Iran endangers Biden’s nuclear plan

FT December 3, 2020

Re-engaging with Iran will not be a simple matter for the US

David Gardner


 金融メカニズムとその評価

FT November 28, 2020

Investors right to see through the gloom to economic upturn

John Plender

株価は上昇を続け、最高値を更新している。他方で、アメリカ経済の回復は思わしくない。雇用は低調で、政府と民間の債務はパンデミックで膨張している。

投資家たちは空想的な楽観主義にふけっている、と批判したくなるが、そうではない。市場はこの乖離傾向を正しく理解している。コロナウイルスによるパニックは、財政・金融の大幅な拡大策で不況が回避され、さらに最近のワクチンに関する良いニュースで、2021年の強力な回復が期待されるからだ。

景気の底から新しい上昇局面で、過剰な貯蓄が投資に流れ込む。しかし、政策の問題には注意するべきだ。超低金利政策はリスクと価格評価を歪めている。政府の債券発行には投資家のインフレ警戒心が働くことによる限界がある。ケインズの述べた「金利生活者の安楽死」と「流動性の罠」が同時に起きている。

もっとも有害な影響はモラルハザードである。IIFによれば、グローバルな債務の膨張は、2019年の20兆ドルから、今年末に277兆ドル、世界GDP365%に達する。債務の水準を考慮して、中央銀行は金利を引き上げることをためらい、独立性を捨ててインフレを容認するかもしれない。

金融政策の限界を恐れて、IMFと中央銀行は財政政策による刺激を要求している。しかし、アメリカの議会は財政支援策に関しても動けず、EUの復興基金もハンガリーとオーストリアが予算の承認を拒否する脅しをかけている。

FT November 30, 2020

Contrarian scenarios that could upset the market consensus

Robin Wigglesworth

PS Nov 30, 2020

Making Sense of Sky-High Stock Prices

ROBERT J. SHILLER, LAURENCE BLACK, FAROUK JIVRAJ

PS Dec 1, 2020

The Financial Equivalent of a Vaccine

HAROLD JAMES

COVID-19がグローバルな分断を劇的に拡大している。

いくつかの諸国はパンデミックとロックダウンのコストを、巨額の財政支援策と、そのための中央銀行による債券購入によって埋めてきた。しかし他の多くの諸国は借り入れコストが増大し、財政政策が利用できない。世界は金融・財政的な持つ者と持たざる者、あるいは、 “cans” “cannots” とに分裂する。このまま放置すれば、グローバリゼーションは完全に脱線するだろう。

豊かな国は政府債務が増えても、長期的に低金利が利用できる。中央銀行の貨幣は、ますます、債務というより、国民的な努力に対する市民の持ち分と考えられている。それは市民権の一部であり、コミュニティーの統一を維持するためにどれほどの貨幣が必要か、という問題である。

しかし、持たざる国はそうではない。例えば、トルコでは、COVID-19の対策として低利融資を大幅に増加したが、それは通貨価値を暴落させた。その結果、金利を大きく上げるしかなかった。国際的な融資を行う中央銀行がなければ、彼らの財政的な制約は明らかだ。貧しい国がCOVID-19の対策に支出したのはGDP2%でしかなく、これに対して豊かな国は15-20%を支出した。

民主主義の未来が深く懸念されるときに、市民間のつながりを欠き、国家の福祉が失われる。現代の拡大するグローバルな分断状態は、19世紀の金本位制が再生したように見える。当時は、一握りの国(イギリス、フランス、ドイツ、日本、アメリカ)だけが低利で融資された。そして、政府の借り入れ能力は軍事力の拡大を可能にしたから、金本位制は、帝国主義的な国際的支配の拡大を促したのである。

システムの周辺では、絶えざる不確実さ、高コスト、極度の脆弱性に人々が苦しんでいる。こうして周縁化された諸国はシステムの中枢に加わることを熱望しているが、彼らの努力はいつも投機や市場のパニックによって打ちのめされる。彼らの悲惨な経済状態は、初期には、豊かな諸国の消費者の利益になる。安価な輸入品を利用できるからだ。しかし、それは国内の製造業雇用にも及び、保護主義への政治的圧力を増している。

SDRやユーロの導入は、そもそも、こうした金融システムを是正する改革であった。貧しい人々の暮らしや成長を支え、債務危機を回避するために、もっと利用すべきだ。単に国民的コミュニティーとしてでなく、グローバル経済の全体が団結するための金融メカニズムを、考えるときが来た。

PS Dec 1, 2020

Designing Vaccines for People, Not Profits

MARIANA MAZZUCATO, HENRY LISHI LI, ELS TORREELE

FT December 2, 2020

A light shines in the gloom cast by Covid-19

Martin Wolf

FT December 3, 2020

The ‘everything rally’: vaccines prompt wave of market exuberance

Robin Wigglesworth in Oslo

FT December 3, 2020

Vaccine approval brings a ray of economic hope


 減税より高賃金

NYT Nov. 28, 2020

Let’s Talk About Higher Wages

By The Editorial Board

共和党は、経済成長に関する単純な公式をプロパガンダとして繰り返した。減税せよ。

この公式は間違いだ。しかし、減税万能論には多くの批判がなされても、滅ばなかった。対抗するアイデアがないからだ。

国民は成長をもたらすエンジンについて、もっと良い物語を求めている。公共政策の改善を支持するような話だ。1つの有望なアイデアが現れた。高賃金だ。

その利益を説明する最も良い例は、ヘンリー・フォードの決断だろう。1914年、彼の工場の組み立てライン労働者に日給5ドルを支払った。彼は生産を拡大し、信頼できる労働者がとどまるようにプレミアムを支払った。そして、労働者たちが自動車の購入者になる、という利益も得た。

同様に、アメリカ経済は消費で動いている。労働者の高賃金はより多くの支出を意味する。

長い間、主流の経済学は持続可能な賃金水準を決めるのは市場である、と考え、これを不可能とみなした。生産性の上昇だけが高賃金を可能にする。賃金の引き上げを要求し、交渉することは「非生産的」である。最低賃金の法律も、集団交渉権も、間違いだ。

こうした世界観が、減税を繁栄への道と主張させる。富裕層が投資する。それは生産性を高めて、賃金が上がる。

現実はそうではない。もっと複雑だ。賃金は雇用者と労働者との綱引きに影響される。賃金は生産性上昇に大きく遅れている。パワーは重要である。

富裕層は、他のアメリカ人の暮らしから孤立している。コミュニティーに属しているという意識がない。彼らの企業は外国市場から利潤を得ている。それはますますアメリカの消費者を無視させる。

経済成長を高賃金で動かす、そういう話を始めよう。

FT December 1, 2020

The academic precariat deserves better

Sarah O’Connor

FT December 2, 2020

Time for US to address savings crisis for workers

Michelle Seitz


 バングラデシュ

FP NOVEMBER 28, 2020

Bangladesh Is Everyone’s Economic Darling. It Might Not Last.

BY SUMIT GANGULY


 日本の教訓

FT November 29, 2020

Will Australia’s ‘hydrogen road’ to Japan cut emissions?

Jamie Smyth in Sydney and Robin Harding in Tokyo

FT November 29, 2020

Japan’s lesson on ageing gracefully

日本の教訓とは、穏やかに老いることだ。すなわち、人口減少を考慮すれば、日本の1人当たり実質成長率は劣らず、失業や不平等は抑制されている。世界が学ぶべきは、「日本病」、すなわち、デフレ・長期停滞、政府・民間の債務膨張ではない。

FT November 29, 2020

Japanese legal reforms can only go so far

Leo Lewis


 ハイテク大企業と政府

FT November 29, 2020

Warning lights are flashing for Big Tech as they did for banks

John Flint

FT December 1, 2020

China’s move on Ant makes the fight on Big Tech global

Marietje Schaake


 インフラ投資

The Guardian, Mon 30 Nov 2020

The Guardian view on a national infrastructure bank: proving Keynes right again

Editorial

PS Dec 2, 2020

Taking National Investment Seriously

DIANE COYLE


 パンデミックと債務の限界

FT November 30, 2020

The risks of the global Covid debt bridge

Gavyn Davies

PS Nov 30, 2020

How Much Debt Is Too Much?

RAGHURAM G. RAJAN

COVID-19のパンデミックで、先進経済の政府はGDPの被害から家計や企業を救うためGDP15-20%も支出した。債務の規模は膨張し、第2次世界大戦以来の高さに達している。

超低金利であるから可能だと言うが、限界はないのか?

すぐにジンバブエのようになるとは言えないが、たとえ先進国でも、債務不履行やハイパーインフレーションが始めるかどうかは、債務を何に使うか、による。貧しい、脆弱な家計を支援するために支出し続けるなら、政府は将来の返済能力を失う、と疑われる。


 アメリカ政治の「正常」

NYT Nov. 30, 2020

1918 Germany Has a Warning for America

By Jochen Bittner

FP NOVEMBER 30, 2020

Democracy Is Still Not Safe in the United States

BY MALKA OLDER

FT December 1, 2020

Trump fights on with claims of voting fraud even as legal paths close

Courtney Weaver

NYT Dec. 1, 2020

Our Democracy’s Near-Death Experience

By Susan E. Rice

FT December 3, 2020

Be wary of a return to ‘normal’ America

Edward Luce

トランプが去って、「アメリカは正常な状態に戻る」と喜ぶ。しかし、正常とは、トランプが依拠した状態だ。すなわち、バラク・オバマは民主党からホワイトハウスに入り、共和党は議会を支配した。大統領が進めることは何でも、議会が阻んだ。

アメリカ政治はこのやり方に戻るだろう。


 US経済再生

PS Nov 30, 2020

The US Economy Needs a Booster Shot

LAURA TYSON, LENNY MENDONCA

FT December 3, 2020

Joe Biden’s team of economic reformers


 ヨーロッパの財政政策

PS Nov 30, 2020

An Effective Response to Europe’s Fiscal Paralysis

GEORGE SOROS


 デジタル経済

VOX 30 November 2020

Antitrust in the digital economy: Views of leading economists on the market dominance of technology giants

Romesh Vaitilingam

FT December 2, 2020

Australia’s new tech code is a road worth exploring

Joseph Stiglitz

FacebookGoogleは新聞社にフリー・ライドしている。このやり方は続けられない。利益を分配するオーストラリア政府の介入は正しい。


 韓国

FP NOVEMBER 30, 2020

South Korea Matters More to the United States Than North Korea’s Nukes

BY S. NATHAN PARK


 プーチン

FT December 1, 2020

‘Foreign agent’: Putin’s new crackdown on the opposition

Henry Foy in Moscow


 アメリカのミッション

PS Dec 1, 2020

Mission Sustainable Development

JEFFREY D. SACHS

60年前、ジョン・F・ケネディーが人類を月に届けるミッションを始めたように、われわれは持続可能な開発を地球に届けるミッションを開始する。


 トルコ

FP NOVEMBER 30, 2020

Erdogan’s Economic Hail Mary Won’t Work

BY SHLOMO ROITER JESNER


 トルコ系ドイツ人

NYT Dec. 2, 2020

A Turkish-German Couple May Save Us From the Virus. So Why Is Germany Uneasy?

By Anna Sauerbrey

ドイツ企業のBioNTech Pfizerがコロナウイルスのワクチンを開発できそうだ、というニュースは人々を非常に興奮させた。なぜなら、BioNTechを起業した2Ugur Sahin and Özlem Türeciはトルコからの移民の子孫でドイツ国籍を得た者たちだったからだ。

この2人の物語は、ドイツの政治論争をゆがめてきた過去の反移民感情を払拭するインパクトがあるだろう。

しかし、事実はそれほど単純ではない。彼らは自分たちが例外として称賛されることに違和感を示す。


 香港、アフガニスタンと、バイデン

NYT Dec. 2, 2020

Mr. Biden, Keep the Pressure on Hong Kong

By Nathan Law Kwun Chung and Alex Chow

FP DECEMBER 2, 2020

Afghanistan Needs Truth Before It Can Have Reconciliation

BY EZZATULLAH MEHRDAD


 2極より4

FP DECEMBER 2, 2020

Cutting Through the Hype on Asia’s New Trade Deal

BY SALVATORE BABONES

FT December 3, 2020

Europe must take sides with the US over China

Philip Stephens

PS Dec 3, 2020

China Can Spend More to Grow More

YU YONGDING

PS Dec 3, 2020

Australia’s China Problem

GARETH EVANS

PS Dec 3, 2020

The Case for a Quadripolar World

DARON ACEMOGLU

米中の2極世界が来ることを恐れるアメリカ人の最後の反撃がドナルド・トランプであった。

米中による国際秩序がどうなるのかは、3つのグローバルな問題を解決することにかかっている。すなわち、ハイテク大企業のパワー集中をどうするか? 人権や民主主義の問題を、国境を超えてどうするか? 気候変動をどうするか? 米中は異なる解決策を示している。

米中の不安定な2極支配体制は、EUと、新興諸国すなわちMexico, Brazil, India, Indonesia, Malaysia, Turkey, South Africa, and othersを含むE10が加わることで、解決できるだろう。4極体制は、グローバルな問題に対する多様な発言とガバナンスの改善を促すからだ。


 不平等

PS Dec 2, 2020

How Inequality Reduces Growth

WILLIAM H. JANEWAY

FT December 3, 2020

The wealthy must prepare for depressed asset growth

Stefan Wagstyl

VOX 03 December 2020

Capitalist systems and income inequality

Marco Ranaldi, Branko Milanovic

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The Economist November 7th 2020

Financial markets: How to fix the market for Treasury bond

Circling back: China’s “dual-circulation” strategy means relying less on foreigners

Look who’s back: Nigel Farage returns to torment the Conservative Party

The bonds that bind: Why the bond market might keep America’s next president awake at night

Buttonwood: Why dollar assets are still riding high after America’s election

(コメント) アメリカの金融市場、その中心である財務省証券の市場が、緊張を生じたことに、世界は動揺を感じています。ドルを中心とした金融市場に終わりが近づいた予感がするからです。 ドル価値の下落もそうです。

中国の「二重の循環」戦略は、指導者が述べた空虚なタームを、信仰対象にして奉るようなものではないでしょうが、怪しい中身です。アメリカの「デカップリング」もそうですが。

ナイジェル・ファラージは、保守党の混乱に乗じてイギリス全土をブレグジットの狂気に翻弄した張本人です。彼が政界に旗を立てて復帰したことは、ジョンソンの憂鬱を深めるでしょう。

The Economist November 14th 2020

President Joe Biden will face two extraordinary economic challenges

Banyan: Filipinos working abroad are a source of money, not reform

Peace, for now: A peace deal ends a bloody war over Nagorno-Karabakh

Bagehot: How Princess Diana shaped politics

(コメント) バイデンの挑む課題は、パンデミックを調伏し、技術革新によるゲイ対転換を、国民にとって有益な、好ましいものに導くことです。グローバリゼーションのような失敗は許されません。

フィリピンが国を挙げて、組織的に労働者を海外に輸出してきたことは有名です。220万人。タクシー運転手、ホテル従業員、レストランのバンドや歌手。フィリピ人の船員がいなければ、グローバルな海上輸送は停止するほどです。また特に、女性たちは世界中で家政婦や看護婦となって働きました。家族を支え、国を支えたのです。彼らがフィリピンの政治や経済運営を改善する政治的圧力になるという期待は、残念ながら、間違っています。

最も興味深い記事は、ナゴルノ・カラバフの紛争と、イギリス政治のポピュリズム蔓延に果たしたダイアナ妃の深い影響です。エスニックな飛び地をめぐる小国の流血の争いを利用して、トルコは中国の一帯一路に結びつき、ロシアはこの流通ネットワークの安全と利益を確保する地位を得たのだ、という結びに感銘を受けます。

ダイアナは、もっと感銘深いものですが、要約より、記事を読んでください。

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IPEの想像力 12/7/20

若者たちは、苦しい思いで勉学を続けるべきか、悩んでいると思います。

大学は、国費によって授業料を大幅に安くし、授業内容を濃くして、試験で厳しく学生たちの思考を鍛えるべきです。そして、大学を卒業する学生が、どれほどすばらしい若者たちか、企業がこぞって迎えに来るようでなければなりません。

リモートでも積極的に学ぶ若者はいると思います。しかし、数パーセントであることを認めざるを得ません。特に、人文・社会系は、よほどの工夫が必要です。

あるいは、学生たちが大学を中退する方がよい。働いて、あるいは、旅をして、人生や社会・政治について考えるのは、良いことです。知識を求める最も強い動機になると思います。コロナウイルスで社会や政治が分裂状態に向かうより、自分たちの国や故郷を想う、志の高い若者こそが、人文・社会系の学問を求め、深めようとするはずです。

政府は、ゴー・トゥー・トラベルやゴー・トゥー・イートではなく、長期の休業に対して、積極的な公的雇用を拡大すべきだと思います。それは一時的な雇用(特に、医療・福祉)から、中長期的な産業・雇用の転換促進、地方振興の移住支援(特に若い夫婦や家族)を含みます。

デジタル化やAIを推進したい、というなら、新しい研究機関やインフラ整備のために、また、再生可能エネルギーの普及、ソフトの開発など、新会社の設立を呼びかけ、多くの若者・大学中退者を積極的に雇用します。

もっと学びたい。もっと新しい人間関係を獲得し、新しい分野に挑戦したい、という強い意欲に駆られたら、そういうときこそ大学に戻ってくればよい。ちっとも学びたくない者が、教室に縛られているより、自由に仕事を探し、若いときから職場で学ぶ方が、健全な職業意識を獲得するでしょう。すばらしい職人、すばらしい仕事、仲間や、土地の人々に貢献する。そういう意識があれば、おそらく、パンデミックも、中国も、私たちがむやみに恐れる話ではないのです。

大学が変わっても、それを阻むのは雇用機会です。中退し、働き、復学し、さらに、いろいろな大学で学び、再び就労する。たとえば、企業が採用を世代ごとに行うのはどうでしょうか。さまざまな世代で、復学や転職を望む人が増えれば、企業もこれに応じるはずです。技術革新や国際環境の変化が加速するとき、ビジネスの急速な転換を可能にし、社会の活力を高めます。

専門のリクルーターや新興企業・ベンチャー企業の人材募集を、政府が共通のプラットフォームで提供することで、女性や外国人も包摂して、労働市場が透明な、公平なものになると期待します。

こういう話は空想的で、理想主義なのでしょうか?

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The Economistの配達が3週間ほどありませんでした。2週間なかったとき、気が付きました。クレジットカードを変えたからです。ネット上のアカウントでカード情報を訂正しました。でも届かない。

メールでクレームを出そうか、と思ったら、シンガポールに電話するか、あるいは、チャットでした。チャットはいいな、とポチポチと英語で尋ねると、「彼」?はすぐに私の記録を調べて、来週から届く、と約束してくれました。

「彼」が、どこの国の、どんな人か、さっぱりわかりませんが、助かりました。さまざまなサービスがリモートで行われるのを実感します。彼・彼女たちは、英語の堪能なポーランド人、中国人、リトアニア人、フィリピン人、バングラデシュ人、シエラレオネ人、・・・地球人英語族、かもしれません。

若者たちも、退屈な大学を中退し、世界中で働き、学べばよい、と思います。そして、いろいろ学ぶうちに、そうか、日本の大学にも面白そうな先生がいる、と、訪問してくれないかな、と想うのです。

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