IPEの果樹園2020

今週のReview

11/30-12/5

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ブレグジット後のイギリス外交 ・・・トランプの焦土作戦 ・・・トランプを支持した理由 ・・・習近平の成長目標 ・・・中国はこう考える ・・・米日豪印戦略対話 ・・・バイデン政権の安全保障・外交 ・・・株価ブームと連銀プット ・・・ソ連崩壊後のウィーン会議U ・・・中華帝国の辺境・香港 ・・・イエレン財務長官 ・・・日本病とその教訓

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 イギリスのグリーン革命

FT November 21, 2020

Green jobs must materialise if the UK is to lead the world in wind power

Camilla Cavendish

FT November 24, 2020

Grimsby’s green revolution is a model for other towns post-pandemic

Sebastian Payne


 ブレグジット後のイギリス外交

FT November 21, 2020

‘I don’t think the PM knows’: Boris Johnson and the Brexit endgame

George Parker and Peter Foster in London, and Jim Brunsden in Brussels

現在の条件で移行期が認められるのは年末までである。しかし、EUとの合意が達成されるとは思えない。

ジョンソンは、明らかに「合意なしの離脱」、あるいは、彼が「オーストラリア」とよぶ、WTOの条件による離脱を選んだ。それは最強硬派の選択だ。主権を取り戻すのに、条件は付けたくない。

政治的にはEUの交渉姿勢を非難すればよいが、UKGDPが将来にわたって減少する。北アイルランド問題もやり直しだ。

時間切れが迫っている。

The Observer, Sun 22 Nov 2020

The Observer view on the role of 'global Britain'

FT November 22, 2020

Why there will be a Brexit deal

Peter Guilford

離脱交渉の期限が1231日に迫っている。私は元EU通商交渉チーフの言葉を思い出す。それは10年以上もかかった、重要な世界貿易交渉の最後の1日であった。「たっぷり時間がある。24時間も残されている。EUは交渉を始めるときだ。」 取引は深夜に成立した。

ブレグジットの取引が成立すると、私は疑わない。ブリュッセルではこれが普通だ。欧州委員会の仕事は取引である。ヨーロッパの中で、また、外部の世界とも、大きな交渉をまとめてきた。鋼鉄の神経を持ち、かくれんぼにふけり、絶壁に立つことが仕事である。

前の交渉はもっと重大であった。いわゆるウルグアイ・ラウンドだ。もっと多くの国が、もっと難しい問題を含む交渉で、いっそう不統一なEUが、ヨーロッパとアメリカの農民たちから取引のすべてを拒む強い反対を受けた。それに比べたら、ブレグジットは簡単だ。

私の楽観論は2つの要因から成っている。1つは、取引に反対する強力なアクターがいないことだ。騒がしいが、力はない。

イギリスの漁民も、スコットランドの独立派も、タブロイド紙が騒ぐだけだ。漁業は経済にとって重要ではない。議会も、反EUを叫ぶブレグジット強硬派も、それを知っている。ボリス・ジョンソンと保守党の多数派は、この尻尾が犬をふりまわすことを止めるだろう。

EUの側でも、取引に反対する加盟国はない。漁業も、過去の貿易交渉を苦しめた農業も、ブレグジットの取引を拒むような感情的問題にはならない。

EUはイギリスが政府補助金を削るよう求めている。しかし、これはフランスも、ドイツも、イタリアも、スペインも、同様だ。こうした要素はいつも、あいまいな「原理」を立てて、別の委員会を設置する。EUには、進路をふさぐ障害物を見えなくする、こうした創造的解決策がふんだんにある。

楽観論の第2の要因は、地政学だ。ドナルド・トランプがホワイトハウスを去るなら、ブリュッセルとロンドンは大西洋間の関係修復に動く。バイデンは、グッドフライデー合意とアイルランド境界線の問題を懸念している。ブレグジットの取引成立は、新大統領への良いおみやげだ。さらに、ブレグジットで対立する以上に、中国の脅威こそが英欧米にとっての重大問題である。

ブレグジットで処理しにくいのは心理の問題だ。EUは理性で動き、イギリスは情で動く。経済的な利己心がアイデンティティー政治と衝突する。それはEUになじみのないものだ。

EU交渉は、典型的に、ロジックと戦術の混ぜ物だ。主要諸国の経済的必要が考慮される(ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、ポーランドが、この順番に重視される)。それらの妥協を縫い合わせ、EUに加盟する小国にうま味を与える。成果はヨーロッパ経済全体にとって良いものに見える。それが交渉の基礎だ。

最後に、欧州委員会は「人質問題」に対処する。最後の瞬間に加盟国は、無関係なことで、支持の条件として要求するからだ。たいてい、金がものを言う。それ以上に難しい問題が危機を生じることもあるが、委員会はこうした危機にも準備している。

EU諸国は、国民投票で離脱を決めたことがEUに関係ない問題だった、と考えている。ロンドンも、自分たちが何を求めているのか、わかっていないのだろう、と。しかし、有権者には主権を回復したと感じさせる必要がある。

欧州委員会は、最後の圧力をかけて、危機に備えている。

The Guardian, Tue 24 Nov 2020

Brexit stems from a civil war in capitalism – we are all just collateral damage

George Monbiot

カオスが広がっている。政府がそれを増幅する。UKの、特に北アイルランドの、企業や政治家が移行期間の延期を望んでいるが、ボリス・ジョンソンは無視している。何が起きようとも、われわれは11日にホワイト・クリフから飛び降りる。

なぜこうなったのか? 私が信じるところ、ブレグジットは資本主義の内戦である。

資本主義的企業には2つのタイプがある。1つは、国内の訓練された資本主義だ。国家行政と協力し、安定性と予測可能性から利益を受け、汚い手を使う、悪辣な競争相手が規制されることを好む。こうした企業は、飼いならされた、弱体な民主主義と共存する。

もう1つは、軍閥型資本主義だ。資本蓄積にとって制約となるものすべて、税金、規制、公共サービス、が違法である。利潤追求を妨げるものは何一つ許さない。それはハイエクFriedrich Hayekやアイン・ランドAyn Randのイデオロギーである。彼らは、社会を犠牲にするような、富裕層による支配体制の完全な自由を、「リバティー」とよんで信奉する。

例えば、ハイエクはピノチェトのチリを訪問し、「リベラルな独裁体制」のほうが「リベラリズムを欠いた民主体制」よりも好ましい、と述べた。ブレグジットは、軍閥資本主義にとっての大きなチャンスである。資本主義と民主主義との危なっかしい停戦状態を吹き飛ばす。

カオスが正当化される。困難な時代には、規制を解除し、ビジネスが再びわれわれを豊かにする自由を許すべきだ、と。ジョンソン政権の「合意なき離脱」は、最も野蛮な資本主義の制約さえも解除する。

訓練された資本主義はブレグジットを恐れる。ルールに従うビジネスで得た市場の優位が脅かされるからだ。規制がなくなれば、軍閥が彼らを一掃する。ジョンソン政権は軍閥から金で買収されている。

ブレグジットは、UK全体の利益に従うものではない。Rupert Murdochマードックのような人々にとって、UKは、最も豊かで、最も強力な、諸民族のための防壁だ。チリやインドネシアのような国をフリー・ポートにすることと比べて、UKははるかに大きな戦利品だ。

Nigel Farageファラージのような連中は、煙幕でしかない。外国人排斥や文化戦争によって、経済・政治的利益の闘いを見えなくする。

われわれは、資本主義の内戦に取り残されたままだ。

FT November 26, 2020

Dominic Raab: Targeted foreign aid remains a UK priority

Dominic Raab

FT November 26, 2020

Nostalgia is no substitute for a post-Brexit foreign policy

Philip Stephens


 トランプの焦土作戦

FT November 20, 2020

Trump’s big flaw: terrible hiring

Christopher Caldwell

NYT Nov. 20, 2020

Is Trump Trying to Take the Economy Down With Him?

By Claudia Sahm

議会は、渇望されていた救済法案を合意することに失敗し、この国を見捨てた。今は、政権移行とジョージアの上院選挙に全力を注いでいる。

その結果、金融市場を安定し、経済回復を助ける仕事は、州政府、地方政府と、全面的に、連銀の緊急融資に依存することになった。その資金を使って財務省が社債を買い、自治体の赤字を埋める。これらの緊急融資を可能にするCARES ACTは、来月、失効する。それは市場を急落させるだろう。

昨日、財務長官のSteven Mnuchinムニューシンは、連銀のパウエル議長に衝撃的な文書を送った。地方政府や中小企業への緊急救済プログラムを拡大しない、というのだ。

パウエル議長は公式に反対を表明した。

ムニューシンの行動は、バイデン次期大統領が新しい財務長官候補者を発表したのと同時であった。それはトランプ政権が、政権移行や危機管理をじゃまするために何でもする姿勢を示している。

NYT Nov. 20, 2020

Donald Trump Is Leaving Behind Blueprints to End Democracy

By Timothy Egan

FP NOVEMBER 20, 2020

Trump’s Scorched Earth Farewell

BY MICHAEL HIRSH

問題は、ドナルド・トランプが投票結果を否定し、クーデタを試みることではない。問題は、COVID-19対策や経済救済計画から、アフガニスタン、イランなど、紛争地域まで、自分が政権にあるうちに問題の種を蒔き、世界中の首都やバイデン次期大統領の制約となるカオスを起こしつつあることだ。

最も緊急かつ重大な危機は、トランプ政権がCOVID-19の新規感染者増大に対応し損なっていることだ。この焦土作戦は、コロナウイルスによる経済的大虐殺にも適用され、来年も感染者と死者が劇的に増え続けるだろう。

最新の混乱は、木曜日、財務長官ムニューシンから連銀議長パウエルに送られた文書だ。彼は連銀に、ほとんどの緊急融資枠を閉じるように求めた。アメリカ全土で感染者が増加し、冬の気候、インフルエンザ、感謝祭の移動が、さらに困難な状況をもたらすと予想されているときに。

アメリカの感染者数はすでに1150万人、死者数は25万人に達している。ワクチンは試験段階でしかなく、学校やビジネスの閉鎖が新たに増えている。

トランプは外交政策においてもあらゆる手続きを無視している。アフガニスタンで、トランプは米軍を早期に撤退させるため、ペンタゴン指導部を追放した。米軍が撤退してアフガニスタンがどれほど混乱しても気にしない。珍しいことだが、それは共和党指導部に混乱を生じている。

マコーネル院内総務は上院で、「時期尚早の米軍撤退は、2011年にオバマ大統領がイラクから米軍を引き上げたよりもひどいものになる」と述べた。「それは1975年のサイゴン陥落を想起させるものだろう。」

パキスタンの駐米大使であったHusain Haqqaniは指摘する。「あらゆる助言を無視して、トランプはバイデンがその就任後に米軍を派遣するように強いようとしている。そしてトランプは自慢するだろう。自分は永久の戦争に反対だが、バイデンはアフガニスタンに軍隊を再び送った、と。」

トランプはイランへの最大限圧力キャンペーンでもバイデンに罠を仕掛ける余地がある。追加制裁を連発してイラン経済を破壊し、退任する前に、イランの核施設を空爆する計画を立てている。

トランプは、再選を阻んだ「チャイナ・ウイルス」に激怒しており。何か行動を起こすかもしれない。

FP NOVEMBER 20, 2020

Will Trump Try to Bomb Iran Before He Leaves the White House?

BY EMMA ASHFORD, MATTHEW KROENIG

NYT Nov. 23, 2020

Trump Wars II: The Loser Strikes Back

By Paul Krugman

NYT Nov. 24, 2020

Should Trump Be Prosecuted?

By Andrew Weissmann


 トランプを支持した理由

FT November 23, 2020

Corporate America’s deal with the Devil

Rana Foroohar

アメリカの大企業100社のCEOが、先週、オンラインで会合を開き、ドナルド・トランプ大統領の「選挙は盗まれた」という主張について議論した。商工会議所なども、選挙の混乱が早く終わって、トランプからバイデンへの政権移行が進むことを求めている。

こうしたニュースに、私は対立する感情を持った。一方では、ビジネス界の指導者たちがリベラルな民主主義を重視し、それを守ろうとしていることを喜んだ。しかし他方で、それが「遅すぎるし、少なすぎる」という不満も持った。大企業の多くは、トランプの大型減税を称賛したからだ。

私は、また、7200万人以上のトランプに投票した有権者のことを想う。彼らは、多国籍の大企業CEOたちが集まって政治力を行使するのを観て、「ほら観ろ。富裕層や有力者が国を操っている。彼らが民主主義をじゃまするのだ」と言うだろう。

それを示すデータもある。上位10%の好む政策が、政府を動かし、実現されている。普通の市民には何の力もない。それが人々を怒らせ、ポピュリストたちの支持を増やし、トランプを大統領にした。

トランプは、その原因ではなく、兆候である。独占的企業の市場支配力は高まり、政治やビジネスを腐敗させている。最高裁の判決が企業の政治献金に道を開き、アメリカの政治経済を金融寡頭制に極めて近いものに変えた。Uber, Instacart, Lyftなど、デジタル企業は、カリフォルニアの住民投票を利用して、その資金力で、ギグワーカーたちの権利を否定しようとしている。

ビジネス界の指導者たちは、トランプを利用して好ましい政策を手に入れ、必要ないと思えば、トランプを追い出す。彼らがバイデンに、COVID-19の効果的対策を期待し、通称や外交の正常化を求めるのは本当だろう。しかし、それにとどまらず、もっとその力を利用して、ヨーロッパの市民が享受している国民医療保険や、学生ローンの解決策を見出してほしい。

そのパワーを、富裕層のための減税ではなく、国民全体のために行使することで、次のトランプを生む条件は消滅する。

FT November 24, 2020

US democracy could emerge stronger after Donald Trump’s assault

Peter Spiegel

PS Nov 23, 2020

The State of America’s Disunion

MICHAEL SPENCE, DAVID W. BRADY

NYT Nov. 23, 2020

What Makes Trump’s Subversion Efforts So Alarming? His Collaborators

By Henry J. Farrell and Bruce Schneier

PS Nov 24, 2020

Reckoning with American Democracy’s Enemies Within

KATHARINA PISTOR

NYT Nov. 26, 2020

The Rotting of the Republican Mind

By David Brooks

最近の調査では、トランプ支持者の77%が、バイデンが選挙で勝ったのは不正による、と述べた。同じ人たちの多くが、気候変動は真実ではない、コロナウイルスの拡大を抑えるのに科学者の意見を聞く必要なはい、と考える。

われわれは認識における危機の国に住んでいる。この国で共和党の多くは現実から離れてしまった。世界中で、右翼のポピュリスト政党が、間違った情報と嘘が満たす海の上に浮かんでいる。

原因は、インターネットではない。私はJonathan Rauchの「知識の憲法」論に注目する。すべての社会が認識の体制を持っており、アイデアの市場で、人びとは集団として現実を叩き壊しつつある。認識の体制は、学者、聖職者、教師、ジャーナリスト、その他の意見が違う、しかし、証拠を重視して知識を築くというルールを共有している。

この生態系は、じょうご、のように機能する。多くのアイデアが流されるが、少数のアイデアだけが生き残る、ということだ。情報の時代に、この認識の体制内で、多くの人々がアイデアの処理で生活するようになった。情報経済の発達は彼らに富と社会的地位を与え、繁栄する大都市に集中させる。

他方で、わずかな人だけが単科大学を出るような土地は、繁栄から外れて落ちていく。所得は伸びず、家族は離散し、コミュニティーが崩壊する。人びとは、安全を感じさせてくれる秩序を必要とする。それを失ったとき、冷笑と不信、疎外、そして、バラバラな状態になる。高等教育を受けた者に反対するポピュリスト的な反動が生まれる。それは、文化的、政治的な冷戦だ。

不安定な、頼りない状態の人びとは、物語を欲しがる。それは彼らの不信を説明し、彼らをその信者たちの安全なコミュニティーに囲い込む。21世紀の社会で、陰謀論を共有することが最も効果的な絆である。それによって彼らは優越感を持つことができ、無力な人びとでも、何か強力なものとの特別な繋がりを誇ることができる。

トランプの下で、共和党はそのアイデンティティーを、政策の組み合わせではなく、精神分裂病の真情によって定義した。彼らを生んだのは、不信と不確かな状態をもたらす、彼らに向けられた経済・文化・政治の脅威である。

それを解消するには、彼らと直接に接触を持つこと、そして、そうした不幸な状態を政策によって解決することだろう。

SPIEGEL International 26.11.2020

A Land in Decay

Where Did America Go Wrong?

By Philipp Oehmke

アメリカでは政治的な風刺や喜劇俳優が重要な社会的発言力を持っている。最近、"Saturday Night Live” でホストのDave Chappelleが問いかけた。COVID-19の前の生活がどんなだったか、覚えているか?

彼は覚えている。「毎週、無差別の銃撃事件が起きた。誰かこうした狂った白人たちを捕まえて、家に閉じ込めてほしい。」

アメリカは病気だ。それは多くの兆候が示している。


 習近平の成長目標

FT November 20, 2020

Why China could snarl global debt relief

John Dizard

FT November 23, 2020

Xi’s aim to double China’s economy is a fantasy

Michael Pettis

習近平主席は、中国経済の規模を2035年までに倍増させる、と共産党の会議で提案した。しかし、それは無理だろう。

1990年代はじめに中国が採用した、高貯蓄、投資主導の成長モデルは、1970年代、80年代の日本、その10年前のブラジルも採用したが、3つの段階を経ていく。第1段階は、非常に重要なインフラに集中的に投資し、多年にわたって急成長する。経済とともに債務も増えるが、投資は生産的であるから、債務の増加率よりGDP成長率が高い。

2段階、投資から消費に重心を移そうとするが、成功しない。成長率は高いままだ。投資の生産性がますます悪化し、債務がGDPよりも急速に増加する。

3段階は、債務の上限に達するか、それを恐れた政府が債務の増加を抑える。投資を減らして消費を増やすが、低成長やマイナス成長になる。

中国は第2段階にあり、債務のGDP比は政府統計でも280%を超えている。

労働力人口の減少が始まり、労働生産性の上昇は期待できない。もし中国政府が、それでも経済規模を2倍にするとしたら、それはかつてないような、一般労働者家庭への所得再分配を実行するときだけだろう。

PS Nov 23, 2020

A Tale of Two Chinese Cities

ZHANG JUN

中国は、深圳、上海が示すような都市開発モデルを各地に展開して、成長率を高く維持できるだろう。

深圳は、香港に隣接し、都市化の集積効果があった。香港は主権を中国に返還する予定であったが、その影響はわからず、深圳はそうした要因がなかった。香港、上海は、巨大な広域開発地域を形成している。

FT November 24, 2020

Lessons from China’s decision to halt Ant Group’s giant IPO

Henny Sender


 中国はこう考える

NYT Nov. 23, 2020

China Disappeared My Professor. It Can’t Silence His Poetry.

By Joshua L. Freeman

PS Nov 24, 2020

Kishore Mahbubani

Says More…

Project Syndicate:グローバルなパワー・シフトに合わせて、バイデン政権が国際秩序の改革に向かうだろうか?

Kishore Mahbubani:アメリカは、国際秩序を弱めるほうが自国の利益を実現できる、と誤解している。一極世界を好んだとしても、世界は多極化している。

PS:トランプは下層の反エリート主義を利用して支持を集めた。東アジアからバイデンが学ぶ教訓は何か?

KM:所得分配が、東アジアとアメリカでは逆転している。富裕層に富を与え過ぎだ。政治を金で買うことを許さない、強力な政治資金規正法を導入せよ。

PS:アメリカは超党派で中国を脅威と見ている。

KM:アメリカには長期の戦略がない。バイデンは戦略を立て、アメリカの核心的な利益である、中国に進出したアメリカ企業を守り、COVID-19など、共通の課題で協力することだ。チャーチルは、ヒトラーを倒すために、スターリンと協力した。

PS:戦略で重要なことは、正しい問題を立てることだ、とあなたは書いた。

KM10年後に、中国はアメリカの経済規模を超えるかもしれない。そのとき、アメリカはどうするのか? ケナンなら、中国の成長を抑えることや軍備拡大ではなく、「精神的な活力」を重視するはずだ。地政学の優位を決めるのは、銃弾ではなく、精神だ。

香港では、その不安定化が中国本土に波及することを許さない、という決意を示した。

アジアの文化では、特に中国では、体面(メンツ)を重んじる。オーストラリアは中国のウイルスに調査を公然と要求した。中国にとって、それは見過ごせない問題となった。アジア諸国には、米中の間で選択を強いてはならない。

国民国家は、グローバルな客船の小さな船室でしかない。最も豊かな者も、船が沈むことには逆らえない。

NYT Nov. 24, 2020

Cooperative Competition Is Possible Between China and the U.S.

By Fu YingA former vice foreign minister of China

主要国の国内政治は、その国境内にとどまるものではない。

アメリカは中国が世界の覇権を狙っていると考える。中国はアメリカが中国の前進を阻み、国民の生活改善をじゃましていると考える。

たとえば、一帯一路をどう見るか。中国のハイテク企業や留学生をどう見るか。米中関係はこの4年間で急速に悪化した。

米中両国とも国内に重要問題を多く抱えており、競争と協力を同時に行うことは可能である。

経済と技術に関して、ルールと法律が重要だ。北京はアメリカ企業の声を聴き、知的所有権、サイバー・セキュリティー、プライヴァシーの法律を整備するだろう。ワシントンも、アメリカで活動する中国企業に、平等な競争条件を保証するべきだ。国家安全保障に関する懸念として、中国企業に対する不当な扱いは、ワシントンがその違反行為を公に証明したものではない。

政治に関して、アメリカは他国の内政に干渉するのをやめるべきだ。アフガニスタン、イラク、リビアに関して介入し、失敗したことから学んでほしい。中国も、その行動の意図や目的を、世界に対して主張し、その事実に関して情報公開するべきだ。

安全保障では、両国がアジア太平洋地域の平和と安定に関して責任を担う。アメリカは、台湾問題や南シナ海で介入すべきではない。西太平洋における中国海軍の増強がアメリカを不安にしている。しかし、米海軍は、台湾の独立を支援するつもりか? 両国の軍は、戦略レベルまで対話し、潜在的な危機の管理と、平和的共存のために、効果的なメカニズムを築くべきだ。

グローバルな問題では、米中の協力が求められる。特に、コロナウイルス・パンデミックの対策だ。ほかにも、気候変動、経済的安定性、デジタル・セキュリティー、AIのガバナンス、など。マルチラテラリズム(多国間の協力)が人類の改善をもたらす。


 バイデンと米中関係

PS Nov 25, 2020

A Roadmap for Stabilizing Sino-American Relations

MINXIN PEI

FP NOVEMBER 25, 2020

How Will Biden’s Team Handle China?

BY JAMES PALMER


 米日豪印戦略対話

FT November 25, 2020

China sends a message with Australian crackdown

Richard McGregor

キャンベラの中国大使館は地方メディアに、両国の関係悪化に関するメモを渡した。そこにはなじみの14の不満が列挙されていた。台湾、香港、南シナ海、新疆、Huawei・・・

さらに、中国に関する敵対的な報道や宣伝、投資規制、報告書、人権に関するNGOsにも、くわしく不満を述べていた。しかし、これは偽善的であろう。北京が国営放送などで日常的に行っていることだから。

オーストラリアが、非リベラルな中国的世界秩序の出現を予知する「炭鉱のカナリア」とみなされるのは当然だ。オーストラリアはアメリカの主要な同盟国であり、英語圏の諜報活動で連携するFive Eyesに属している。

他の民主主義国は注意するべきだ。次の標的になるかもしれない。メディアが中国をあからさまに批判するなら、シンクタンクが否定的な報告書を出せば、政治家が中国を批判し続け、共産党の影響が拡大するのを示し、中国の国家や企業が市場に浸透するのを許さないとき、あなたは北京の報復を恐れねばならない。

中国の政治システムの敬意を表し、人権を抑圧することは黙認する、そういう未来が待っている。

FT November 25, 2020

Germany frets over its corporate dependency on China

Ben Hall, Europe editor

FP NOVEMBER 25, 2020

The Quad’s Malabar Exercises Point the Way to an Asian NATO

BY SALVATORE BABONES

クアッド(India, Japan, Australia, and the United States、米日豪印戦略対話)はアジア版NATOとよばれる。ベンガル湾で4か国によるMalabar軍事演習が始まった。クアドにはNATOのような大規模な軍事協力は不可能だ。しかし、NATOも最初はそうだった。

現在、NATOの役割も変化している。軍事訓練・協力だけでなく、様々な協力が行われている。アジアは、かつての東欧諸国が組織したワルシャワ条約機構を必要としない。単に、中国が平和を乱すことに備えるだけだ。

FT November 26, 2020

The worrying precedent in China’s quarrel with Australia

PS Nov 26, 2020

Division or Dialogue with China?

ANDREW SHENG, XIAO GENG


 多国間貿易協定

FP NOVEMBER 23, 2020

Why India Refused to Join the World’s Biggest Trading Bloc

BY SURUPA GUPTA, SUMIT GANGULY

PS Nov 20, 2020

America Must Mend Many Fences on Trade

ANNE O. KRUEGER

トランプが大統領としてアメリカの世界に果たす役割をどこまで破壊したか、完全に理解することはむつかしい。ユニラテラリズムを優先し、TPPNAFTA、米韓自由貿易協定などを破壊した。しかし、二国間取引で達成できることは限られる。USは世界人口の4.25%、世界GDP15.2%でしかない。

米中貿易に関しても、確かに「第1局面」の貿易不均衡の抑制は目標を超えて達成した。しかし、知的財産など、他の問題は解決していない。しかも、中国の政府介入、国家管理型貿易を助長した。

そもそも関税で2国間の不均衡を解消することはできない。中国からの輸入は減ったが、ベトナムからの輸入が大きく増えた。世界は多国間貿易になっており、現実認識を間違っている。

トランプは鉄鋼やアルミニウムで輸入に関税を課し、雇用を増やしたと言うが、アメリカの鉄鋼を使用する部門で雇用は0.7%減った。鉄鋼の雇用は、製造業全体の0.3%でしかない。しかも、鉄鋼の雇用を1人増やすために、消費者が負ったコストは817000ドルである。

こうした政策を逆転することは、アメリカの指導力を回復する。さらに、WTO改革も必要だ。


 バイデン政権の安全保障・外交

PS Nov 20, 2020

The Biden Formula

JAVIER SOLANA

PS Nov 20, 2020

America, Heal Thyself

ANA PALACIO

FP NOVEMBER 20, 2020

Biden and Flournoy Have Clashed Over Policy in Past

BY MICHAEL HIRSH

FT November 24, 2020

Biden’s ‘alter ego’ Antony Blinken will try to rebuild alliances

Demetri Sevastopulo in Washington

PS Nov 23, 2020

Crafting a Diplomacy-First US Foreign Policy

ANNE-MARIE SLAUGHTER, ALEXANDRA STARK

バイデン次期大統領は、外交をアメリカの対外政策の中核に置くことを鮮明にしている。就任初日にパリ協定に復帰し、NATOの同盟を確認し、イランとの核合意を復活させ、「民主主義サミット」を招集して自由世界の精神と目的を諸国民と共有する。

しかしそれは、外交と開発を安全保障の永久の中心に据える制度改革を必要とする。そのために、安全保障とは何か、だれのための安全保障か、考えてみることだ。

安全保障とは、脅威から国民を守ることだ。脅威は、病気や暴力、火災、洪水も含む、日常生活を奪うものだ。脅威は、社会の最も脆弱なコミュニティーを破壊するが、それは偶然ではなく、政策の結果である。それゆえ安全帆所は、こうした社会集団が直面するリスクを減らす、自国内とグローバルな手段を開発することから始まる。

この点で、外交は国内から始まる。例えば、パンデミックが安全保障の脅威であれば、アメリカはもっと医療システムに投資するべきだ。同時に、次のウイルスに備えるWHOのような国際機関に参加する。

政治的暴力に関して、2001年の911テロ以来、聖戦主義のテロより、右翼のテロで死んだアメリカ人の方が多い、という。アメリカは、投票制度を含む民主的諸制度の信頼を回復するために、投資するべきだ。同時に、友好諸国と協力して、世界の民主主義後退や、情報操作に対抗するべきだ。

外交において、開発は非常に重要になる。アメリカの対外政策における開発支援の地位を、閣僚レベルに引き上げるのが良い。

FT November 24, 2020

Joe Biden’s foreign policy should steer clear of missionary idealism

Janan Ganesh

バイデンが示した首席補佐官Antony Blinkenは、昨年、理想主義の外交を唱えた。

しかし、イラン核合意に復活するのは、イランが民主主義を支持するからではない。気候変動の対策は、民主主義の国に限らない。中国に対してアジア諸国を集めるとき、民主主義の基準は無視されるだろう。

民主主義サミットを提唱しても、外交の役に立つものではない。雄弁家であり、歴史の進歩の側に立とうとしたバイデンのかつてのボスであったオバマは、十分な結果を残せなかった。理想を唱えて、愚かな戦争に参加しない、という地点に戻るのが良いだろう。

FP NOVEMBER 24, 2020

Biden Has the Team Obama Always Wanted

BY JAMES TRAUB

FP NOVEMBER 25, 2020

Say No, Joe

BY BENJAMIN H. FRIEDMAN, STEPHEN WERTHEIM

4年前、退任するとき、バラク・オバマ大統領は、世界の事態に「軍事的な対応」を反射的に処方する「ワシントンの行動基準」を批判した。オバマは正しかったし、今も、トランプの4年間を経て、いっそう正しいと言える。

海外に過剰関与し、国内にはパンデミックなど緊急の課題を抱えている。しかし、旧い行動基準が復活しつつある。バイデンは、明確に拒絶するべきだ。

1)グローバルな軍事的支配をめざさない。多極化した国際秩序が地域内でバランスすることは、アメリカにとって良いことだ。

2)「永久の戦争」と批判される、アメリカの海外における軍の関与を終わらせる。明確な時期を示して、アフガニスタン、イラク、シリア、ソマリアから米軍を、第1期の内に撤退させる。

3)米軍が中東の警察として必要だ、という考えを否定する。中東地域も、主要諸国(イラン、トルコ、サウジ、エジプト、イスラエル)の競争関係に入った。

4)バイデンは、NATO拡大を拒否する。フランスやヨーロッパ諸国の主導的な決定を支援する。

5)バイデンは、中国に対する軍事的な強硬策に反対する。人民解放軍の強化は、領海や国境線をめぐる地域紛争に応じるもので、(アメリカではなく)近隣諸国に対する脅威である。USの同盟諸国には、これに対抗する資源がある。

台湾問題では、「戦略的あいまいさ」の方針を変更する要求を拒否するべきだ。

FP NOVEMBER 24, 2020

Antony Blinken’s Wonk Rock Is Everything a D.C. Dad Could Dream Of

BY LAUREN TEIXEIRA

FP NOVEMBER 26, 2020

The Beautiful, Dumb Dream of McDonald’s Peace Theory

BY PAUL MUSGRAVE

1990年代のアメリカの極端な楽観主義が、T.フリードマンに「黄金のアーチ理論」を提唱させた。Thomas Friedmanによる『レクサスとオリーブの木』である。

「資本主義的な平和」のモデルといえる。マクドナルドの支店がある国は、互いに戦争しない、というのだ。それは、マクドナルドが、マクドナルドを買うほど十分に豊かになった中産階級が現れた国にしかマクドナルドは進出しないからだ。

その後、この単純なモデルは言及されなくなった。


 経済学の反省

PS Nov 20, 2020

Economics in a Post-Pandemic World

PAOLA SUBACCHI

パンデミックを経験する前に、経済学は根本的な反省を求められていた。4人の新著から、それを説明する。Diane Coyle, Paul Krugman, Martin Sandbu, Robert Skidelskyである。

経済学は、正しい政策を示すのか、望ましい経済とその実現を考えるのか? 「すべての者の利益」を増やす、というのは嘘だ。経済学は、そのような言い方で、富裕層にだけ過度に有利な経済システムを正当化してきた。

経済学の間違った・偏った政策は、不平等と、ポピュリズムの台頭、白人至上主義やキリスト教原理主義を広め、トランプを生んだ。

社会の資源を完全に効率的に利用する、という市場の概念は間違いだ。市場は、制度や個人とともに関係して結果を決める。集団的行動が重要な分野は多くあり、新古典派の前提は致命的な歪んだ世界を生み出した。

理想的な自己規律を生み出す経済という考え方が、狭隘な自己利益と不平等、強欲を解放した。

経済政策についての反省は、経済学と民主主義、政治との関係につながる。

経済学は自然法則ではないし、科学ではない。新古典派経済学は、合理的なアクターを前提することで現実から乖離した。しかし、その結論は非常に政治的だ。経済学の役割は、公衆の利益にとって間違った考えを、事実に依拠して批判することだ。

市場や権力が少数者の手に集中することが、政策論争をゆがめ、民主主義を破壊している。技術変化やグローバリゼーションとして、労働市場や地域経済が破壊されてきた。多くの職場を破壊するようなリスクは避けるべきだった。

世界金融危機の後も、政策的な失敗が指摘され、財政緊縮策が特に批判された。人びとは世界経済によって生活を改善できるという確信を失ったままだ。パンデミック、さまざまな問題を悪化させ、市場よりも、集団的な福祉、公共サービスに依拠する社会を求めている。


 株価ブームと連銀プット

NYT Nov. 19, 2020

Making the Most of the Coming Biden Boom

By Paul Krugman

FT November 23, 2020

Joe Biden needs to break the market’s codependency with White House

Mohamed El-Erian

バイデン次期大統領は、彼の前任者と株式市場との極端な共依存関係を減らすため何ができるか、考える必要がある。

彼がその考えを市場に対して説明するのが遅れると、ますます彼もアメリカ連銀やECBの指導者たちが就任初期に直面したジレンマと同じものを抱えるだろう。

ドナルド・トランプは、株式市場が彼の政策の正しさを証明している、と信じていた。それは投資家たちにとって、音楽のように流れた。政策が資産価格や株価の上昇を求めている。その状態が長く続くと、「連銀プット」という信念が強まる。連銀がいつも株価下落に介入して回復させる、というわけだ。

それは意図しない結果をもたらす。過度の、ますます無責任な、リスクの高い投資が増える。将来の金融不安定性が増大する。経済全体の資源配分が悪化する。ますます不平等化が進み、「ウォール・ストリートとメイン・ストリート」との分断が悪化する。ゆっくりと、しかし確実に、経済・金融制度の高潔さや信頼性が失われる。

連銀のパウエルも、ECBのラガルドも、就任したとき、市場を支援することに限界を設けようとした。しかし両方とも、明確なUターンを強いられた。

大統領就任のはじめに、バイデンは株価の人質にはならないと明確にし、株式市場はすでに、成長のために資金を効率的に配分するという元来の役割を大きく逸脱している、と説明する必要がある。

PS Nov 24, 2020

A Tale of Two Economies

STEPHEN S. ROACH

FT November 25, 2020

Goldman leads Wall Street bulls as markets ride high

Katie Martin


 米欧における財政・金融の危機

NYT Nov. 20, 2020

If Biden Wants to Be Like F.D.R., He Needs the Left

By Jamelle Bouie

FP NOVEMBER 21, 2020

The West’s Constitutional Crises Threaten the Economy’s Last Best Hope

BY ADAM TOOZE

アメリカ連銀とECB2人の総裁がコロナウイルス危機に対するもっと積極的な財政政策を要求した。かつて、中央銀行が政府に、大規模な税制刺激策を求めるようなことがあるとは、だれにも想像できなかった。

パンデミックの対策は、財政刺激策と、それによる物価上昇には金融政策が対応した。パンデミックは、銀行部門や金融システムにではなく、実物経済に生じた衝撃であったからだ。EUの復興基金はショックの吸収だけでなく、グリーン・ディールにも及んだ。

しかし、昨年夏から、大西洋の両岸で、財政政策に関する政治対立が生じ、金融政策がショックの緩和も担うようになった。通常なら、政治家たちは財政政策による刺激策を喜んで行う。しかし、党派対立が深まっていた。

米中貿易戦争などでミニ・リセッションが起きたとき、ドナルド・トランプは連銀が金融緩和しなかったことを攻撃した。ヨーロッパでは、金融健全化を求めるドイツ連銀の主張がECBの量的緩和(政府債券購入)に反対し続けていた。

EUでは、ハンガリーとポーランドへの財政支援が政治問題となっていた。それは、ドイツ連銀のECBによるグリーン投資基準に対する反対と重なった。

政治と金融政策の分離について、パンデミックから危機と混乱が生じるだろう。

The Guardian, Tue 24 Nov 2020

Biden will have the presidency. But Republicans still have the power

Adam Tooze

FT November 25, 2020

It is too soon to shut down US pandemic lending programmes

Hal Scott


 ソ連崩壊後のウィーン会議U

NYT Nov. 20, 2020

A Quick End to a Dangerous War

By The Editorial Board

FP NOVEMBER 25, 2020

When Great-Power Politics Isn’t Great Enough

BY HANS GUTBROD

アルメニアとアゼルバイジャンとが戦ったNagorno-Karabakhの停戦合意は、長期的な解決策にならないだろう。なぜなら紛争に深く関与する大国、ロシアとトルコが、当事国の要求を高めたからだ。

Nagorno-Karabakhは、ゼロサム・ゲームのように扱われているが、本当はそうではない。この紛争は、行き詰まりと、紛争激化中と、ときには爆発的な衝突を生じる、ウクライナからコーカサス、カスピ海沿岸、シリア南部にまで及ぶ紛争地帯の一部である。

Transnistria, Crimea, the Donbass, Abkhazia, South Ossetia, Karabakh、そしてトルコの南部は、いずれもユニークであるが、解決をむつかしくしている構造は共通である。

すべてのユーラシア中央部における紛争を解決するために、諸大国を含む、関係諸国を集めて大きな取引を行う国際会議を開くときだ。相互にいくらかの授受を強いて、地域全体に大きな利益をもたらす。理想主義だけでなく、こうした難しい和平交渉について、歴史的な先例がある。1814年のウィーン会議がそうだ。フランス革命とナポレオン戦争後の、多くの相互に結びついた紛争を、大国を含む、ヨーロッパ諸国が集まって合意した。

かつてウィーン会議を研究した元アメリカ国務長官キッシンジャーHenry Kissingerが示したように、指導者たちを合意に向けた大きな要求とは、事実上の領土として統合した土地に対して、明確な合法性を与えることだった。そのうえで、彼らは機能する、安定した、理想的な繁栄の秩序を築こうとした。より大きな解決策がなければ、不安定さは続くのだ。

ロシアは、その国内に民主主義を欠いているがゆえに、会議において主要な取引を指導する重要な役割を担えるだろう。キッシンジャーは、ウィーン会議の後、ヨーロッパは最も長い平和を得た、と書いた。ヨーロッパに中産階級が現れて、繁栄をもたらした。

FP NOVEMBER 25, 2020

Moldova’s Election Result Is a Blow to Russia’s Regional Dominance

BY NICOLAE REUTOI

FP NOVEMBER 25, 2020

Russian Troops in Nagorno-Karabakh ‘Clearly a Win for Moscow’

BY JACK LOSH


 エチオピア

The Guardian, Sun 22 Nov 2020

If Ethiopia descends into chaos, it could take the Horn of Africa with it

Simon Tisdall

エチオピア軍がTigrayを攻撃した。ノーベル賞を受賞したアビー首相の方針が大きく後退した。多民族国家を平和的に統一することができなかった。

エチオピアは、リビアやユーゴスラビアのように分裂し、大規模な難民流出や地域全体の不安定化をもたらす危険がある。Tigrayとその人民解放戦線TFLPは、1991年、それ以前のソ連に支援されたマルクス主義的独裁体制を倒した後、エチオピア政治を中心的に担う勢力であった。しかし、経済成長を達成した指導者Meles Zenawi が死去した後、TFLPが権力を失い、逆に、アビー政権下で犠牲になったという不満を強めて政府に反対した。

USEUは即時停戦を求めたが、アビーはエチオピア民主主義の自決権を強く主張してきた。欧米の「アフリカの角」に対する安全保障上の関心が低下し、その影響力も落ちている。それに応じて、地域の大国が対抗と介入を強めている。しかしドナルド・トランプは米軍撤退を決めた。カタールとUAEの対立激化、アラブの春以後、リビアとシリアに介入し続けるトルコの関与、スーダンにおけるロシア海軍の拠点。

アビーによる軍事力行使が平和をもたらすことに失敗する、と懸念される。なぜならエチオピア軍は多民族で構成され、Tigray制圧を喜ばず、他の民族にも不安が広がるからだ。イスラム過激派の影響も懸念される。

USUKEUは、ますます影響力を失い、虐殺の傍観者になる。

NYT Nov. 26, 2020

I Was a Child Refugee. Another War in Ethiopia Is Forcing More Children Into the Camps.

By Sulaiman Addonia


 中華帝国の辺境・香港

FT November 22, 2020

Rivals spy weakness in HK’s status as Asia’s prime financial centre

Leo Lewis

The Guardian, Mon 23 Nov 2020

How can we pay off the global coronavirus debts? Tackle the powerful

Ben Tippet

NYT Nov. 25, 2020

Reports of Hong Kong’s Death Are Greatly Exaggerated

By Yi-Zheng Lian

香港の民主主義は死んだ。それは半分だけ真実だ。

北京が資格をはく奪すると決めたことで、それに抗議する立法会の民主派議員4人がすべて辞任した。しかし、立法会の民主派は香港の植民地時代から、香港返還後に民主的制度を維持するためにあった。政府はそれを無視してきたし、その体制内改革の性格には、特に雨傘革命で強い批判が生じていた。

雨傘革命後の普通選挙要求は、もっと若い世代の民主化運動である。彼らは指導者や組織を持たず、北京は認めない新しい民主主義を求めてきた。北京は激しく弾圧し、国家安全法の導入と、多くの活動家やメディア、ジャーナリスト、知識人の拘束、弾圧を行った。もはや香港立法会は、人民代表大会と同じ、権力者たちのための承認機関になった。

それはつねに中華帝国の行動計画であった。辺境における反抗的な人びとを、征服する前に、徐々に吸収した。2047年まで「一国二制度」を約束したのも、香港のシステムを継ぎ目のない中華システムに組み込むためだ。かつての王朝が数世紀をかけて行ったことを、中国共産党はわずか数十年で行った。

しかし、権威主義体制の弾圧は抵抗を強めるだろう。これまでの弾圧がそうであった。

確かに、香港民主化運動の前衛は完全に解体された。それは他の権威主義体制がそうであったような地下組織に変わるだろう。1939-90年のポーランド、1945-87年の国民党独裁の台湾。香港の地下組織も我慢の時を過ごす。そして多くの海外支部が国際的な支持を求める。

香港の新しい民主派は、小さいが、中華帝国の拡大に反対する闘いの前線として、決定的に重要だ。たとえ中国が大砲をもって攻撃しても、彼らは生き残る。


 コロナウイルス危機と債務再編メカニズム

FT November 23, 2020

The US Treasury’s unnecessary fight with the Fed

FT November 23, 2020

Why financial policymakers are still fighting the last war

Megan Greene

2008年金融危機の後に残った問題は、コロナウイルスによって強められた。中央銀行と財務省は、長期停滞、流動性の罠、成長モデルの消滅という3重の脅威に直面している。

それらの解決には、唯一、大規模な財政政策だ。債務の懸念より、成長を回復することが優先される。

PS Nov 23, 2020

A Good but Incomplete Start to Debt Relief

PAOLA SUBACCHI

G20の貧困諸国に対する債務支払い停止措置Debt Service Suspension Initiative (DSSI)は出発点でしかない。明確な秩序ある債務の組み換えを交渉する、国際的な制度が求められる。

FT November 24, 2020

Bearing the burden of coronavirus debt

PS Nov 24, 2020

Restructuring the Debt-Restructuring Process

WILLEM H. BUITER, ANNE SIBERT

政府債務のデフォルトはつねにあった。債務の組み換えが必要だが、その機会を利用する「禿鷹ファンド」が現れる。債務国政府もパックマン戦略を採用する。集団決定を保証する条項が求められるが、その実行にはIMFBISが、債務の組み換えとその実行を管理するSovereign Debt Restructuring Mechanism (SDRM)を設立することが重要だ。

FT November 27, 2020

‘Economic emergency’ adds pressure for a rethink on fiscal rules

Chris Giles


 イエレン財務長官

FT November 24, 2020

Janet Yellen prepares for second act at pinnacle of US economic policymaking

James Politi in Washington and Colby Smith in New York

「彼女は、スマートで、タフで、原則を重視する。彼女は連銀議長として最も成功した1人であり、労働者家族をだましたウェルズ・ファーゴの責任を追及したように、ウォール街とも対決した。」 エリザベス・ウォレンは「卓越した人選だ」とツイートした。

FP NOVEMBER 24, 2020

Yellen’s Mandate: Massive Stimulus, Assuaging Fears of Inflation

BY MICHAEL HIRSH

FT November 26, 2020

How Janet Yellen will deploy her soft power at the Treasury

Brendan Greeley

4年前、ボストンの演説で、イエレンJanet Yellenは異なるソフトパワーを発揮した。彼女はアメリカのマクロ経済学者たちに、彼女が何を知りたいか、語ったのだ。

バイデン次期大統領は、彼の財務長官にイエレンを指名すると予想される。彼女は、連銀議長出会ったときに話し合った財務官僚たちと話し合う外交官になる。

マクロ経済学は単なる社会科学ではない。それは文化である。社会学者や歴史家がこうした力をもっと持っている。もしマクロ経済学者たちの分化と、そのモデルを少しでも変化させたら、その予測や助言を変えることができる。それがワシントンのあらゆる機関で起きていることだ。

イエレンは2016年の演説で、需要が崩壊したら、企業は長期にわたって投資を行わなくなる、と述べた。それは長期の供給能力を減少させる。彼女は、ショックの後に、アメリカ人の消費を続けさせる「攻撃的」な刺激策に意味があるか、と問いかけた。また、不況に対して、人びとが異なった反応を取ることにも注目した。エコノミストがインフレの原因を本当に理解しているか、も問うた。


 EU諸国の汚職スキャンダル

FT November 22, 2020

Other leaders should stand firm in resisting Orban and Kaczynski

Martin Sandbu

FT November 23, 2020

Corruption is rotting the periphery of Europe

Gideon Rachman

ハンガリーやポーランドに限らず、EU諸国に汚職スキャンダルや法の支配を疑わせる事件が起きている。Bulgaria, Romania, Slovakia, Slovenia, Croatia, Malta and Cyprusがそうだ。その数は、加盟国全体の4分の1から3分の1におよぶ。

たとえ小さな加盟国でも、EU27か国の全会一致が必要な、EU予算案のように、重要な事案で彼らが拒否権を持つことになる。

PS Nov 23, 2020

Europe’s Faustian Bargain

MELVYN KRAUSS


 日本病とその教訓

FT November 23, 2020

Lessons from Japan: coping with low rates and inflation after the pandemic 

Robin Harding in Tokyo and Chris Giles in London

1980年代末の日経株価指数は38957であった。日本経済の成長は続くと思われたが、今、日本が注目される理由は全く違う。奇跡の成長の秘密ではなく、衰退期の秘訣である。

日本は、バブル後の銀行における資産悪化に対する公的資金投入が遅れた。アメリカはこれを学んで、2008年の金融危機救済に成功した。

日本の金利はゼロまで下がった。それでも、「量的緩和」によって経済を安定させることができた。しかし、適度なインフレを回復することはできなかった。それは、人びとのインフレ期待に影響することはできないからだ。インフレ期待が失われると、自己実現的に、インフレ率が低下する。

日本の低成長、低金利、低インフレの原因は、高齢化と人口減少である。高齢化自身は、それが進むと貯蓄が減少し、消費を増やすから、デフレは解消する、と考えることもできた。しかし、安倍政権は成長を刺激するためにアベノミクスを導入し、宣伝した。その成否は明確ではない。

そもそも日本経済は問題なのか、ということも問われた。1人当たりの実質成長率は他の先進諸国と比べて劣っていない。しかし、日本はその潜在成長力を十分に発揮できなかった。労働市場の悪化で、多数の大学卒業者が人生のチャンスを損なわれてきた。

バブルは避けるべきであったし、成長モデルを再構築することが重要である。

FT November 24, 2020

Lessons from Japan: High-income countries have common problems

Adam Posen

「日本化」というのは、金融不安に対してマクロ刺激策を十分に行わなかった失敗例に対して使用すべき概念だ。他方、デフレや低金利の「長期停滞」は、日本に限らない問題である。

日本の1人な足り成長率は、1990-2002年にG7で最低であったが、2003-2019年は第3位と2位であった。

日本病のせいで成長が制約されたわけではない。重要な要因はドルに対する円高であった。2003年初めにドルに対する実質為替レートが安定してから、日本の成長率上昇が加速した。高齢化も回復を妨げたわけではない。企業の債務を維持したゾンビ化、デフレーションも、成長を阻むほど重要ではなかった。

日本が示すように、必要な財政刺激策を持続的に行えば、デフレでも成長を実現できる。債務の水準は重要でなく、成長をもたらす優れた公共投資を行うことが重要だ。

FT November 26, 2020

What Mrs Watanabe can tell us about how to handle low returns

Leo Lewis in Tokyo and Robin Wigglesworth in Oslo

FT November 26, 2020

Takeaways from 30 years of covering the Japanese market

Jonathan Allum


 イスラエル・サウジアラビア

FP NOVEMBER 23, 2020

Secret Flight Shows Netanyahu and Mohammed bin Salman Joining to Face Biden

BY JONATHAN H. FERZIGER

FT November 26, 2020

Saudi crown prince and Israel’s Netanyahu meet after Biden win

David Gardner


 ビットコイン

FT November 24, 2020

Bitcoin finally finds a rationale in doomsday scenarios

Izabella Kaminska


 パンデミックと最底辺

PS Nov 24, 2020

The G20 Debt Plan Does Not Go Far Enough

SHAMSHAD AKHTAR, KEVIN P. GALLAGHER, ULRICH VOLZ

PS Nov 24, 2020

Protecting Child Workers During the Pandemic

JINIYA AFROZE

PS Nov 25, 2020

Keeping the Global Focus on Low-Income Countries

KRISTALINA GEORGIEVA, SIGRID KAAG

もっと多くの支援がなければ、世界で最も貧しい人々がCOVID-19のパンデミックによる経済不況から最悪の代償を支払うことになる。低所得国に住む15億人は、公共医療システムの不足、制度の能力不足に苦しみ、多くの場合、高水準の対外債務を負っている。

PS Nov 25, 2020

A Triumph of German Innovation and Immigration

HANS-WERNER SINN


 アメリカの分断

FT November 26, 2020

Playing up the US urban-rural divide misses the real problem

Elizabeth Currid-Halkett

アメリカ人の所得格差が拡大しているのは、都市と地方との問題ではない。大学教育とそれを受ける富を持つ者が、そうでない者との間で、格差を拡大している。


 気候変動

PS Nov 26, 2020

China’s Global Climate Boost

KEVIN TU

PS Nov 26, 2020

Europe’s Green Opportunity

ANN METTLER, CYRIL GARCIA

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The Economist November 7th 2020

(コメント) 次週、紹介します。

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IPEの想像力 11/30/20

かつてビスマルク、リー・クアンユー、キッシンジャーが生きた世界は、今も、私たちを取り巻いている。

ソ連崩壊とトルコ帝国の重なる紛争地帯に平和を築くウィーン会議U、中華帝国の拡大に合わせたクアッド(米日豪印戦略対話)、グローバリゼーションに代わる多国間地域貿易協定・・・ パワー・シフトと国際秩序の改革を求めるダイナミズムは、諸国家を呑み込む勢いで、動き始めています。泥をこねたり、海を割ったり、人と世界を創った、神話的な終わりと始まりの物語を、これから数十年の人類も経験する。

イスラエルがサウジアラビアと話し合い、その後、イランの核開発計画を推進した科学者が武装集団に襲撃、殺害されました。コロナウイルス危機とトランプのグローバル焦土作戦は、国際秩序の転換過程でアメリカが果たす重要な回復力を、奪ってしまうと思います。

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拙著『グローバリゼーションを生きる』では、こんな風に書きました。

・・・たとえダイヤモンドや金,石油があっても,その社会が豊かであるとは限りません.富をめぐって内戦を繰り返す貧しい社会では,武装した民兵が大人たちの手足を切り落とし,子供を連れ去って兵士や奴隷にしました.砂漠に逃れた難民たちには食べるものも無く,路上に眠る子供たちは「学校に行きたい」と願いますが,夢は叶いません.運よく豊かな国に逃れることができても,彼らはしばしば差別され,まともな職を得られず,満足な学校や住宅に入ることもできません.ときには,慈善に頼って生きる若者がテロ活動に傾倒したり,警察と衝突して町中で暴動を起こしたりするのです.彼らが依拠できる「社会構造」は,一体,どこにあるのでしょうか?

・・・グローバリゼーションに関する模擬講義の後,一人の女子高生が質問してくれました.「貧困や争いはなくならないのですか?」と.

・・・貿易であれ,移民であれ,私たちは「社会構造」が変化することを通じて豊かになります.その過程を正しく理解しなければなりません.

・・・社会構造が変化するとき,たとえ激しい対立が起きても,孤立し,排除するのではなく,「一緒に解決しよう」と呼びかける優れた政治指導者がいれば,人々の声を聞いて,問題を解決するための新しい制度や仕組みを作るでしょう.グローバル化が良いか悪いかは,正しい理解と,社会的な工夫(革新的なアイデア),それを吸収して広める指導者と国民の能力にかかっています.

13年を経て、小著『ブレグジット×トランプの時代』を出しました。その序章は、「時代を生きる」という形で、彼女に答えています。

その時代に生まれ、時代に参加し、時代を変える。ブレグジットやトランプが示した政治的混乱は、新しい社会構造を求めるポピュリズムに代表され、金融に乗っ取られたグローバリゼーションを変える各地の反乱と、民主主義の危機はつながっています。

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コロナウイルスによるパンデミックで、レストランや食堂、旅館、旅客・輸送産業の多くが閉鎖され、若者たちは学業をあきらめ、卒業しても就職氷河期Uに入り、女性たちはパートを失って風俗業・売春で家族を支え、世界の最底辺では債務危機によって医療や食事が奪われ、さらに何億人も貧困状態に入る。

新しい社会構造は求めて、だれもが激しく変化する時代を生きる。

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