IPEの果樹園2020
今週のReview
11/9-14
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トランプのパラレル・ワールド ・・・アメリカ大統領選挙と世界 ・・・経済学者たちは今もさまよう ・・・感染者の急増 ・・・バイデン・プランの基本 ・・・財政規律とMMT ・・・権力の平和的な移譲を拒む ・・・中国の経済的、技術的前進を受け入れる ・・・投票日の後 ・・・US選挙と大接戦
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● トランプのパラレル・ワールド
NYT Oct. 29, 2020
America Shocked Itself and the World
SPIEGEL International 30.10.2020
A Legacy of Hatred, Culture Wars and Discord
The Mess Created By Trump Will Be with Us for Years
By Valerie Höhne, Ralf Neukirch, René Pfister, Alexandra Rojkov und Alexander Sarovic
ドナルド・トランプJr.は、良い雰囲気を何も壊したくなかった。世論調査結果は無視した。「これは強化ホルモンを加えた2016年の大統領選挙である。」 しかし、集会には空いたスペースが目立つ。
ジョー・バイデンの息子のハンターは、ロシアの富豪から350万ドルを受け取った。それは人身売買や売春で得た金だ、という疑いがある。彼はそう述べた。もちろん、証拠は何もない。
しかし、ジュニアの目は将来しか観ない。彼の父がいなくなっても、トランプ主義は永遠に続く。アメリカ有権者の30%以上がドナルド・トランプに投票した。これは重要だ。パンデミックとその死者が22万人に達し、独裁者になることを願い、検察長官に対立候補の息子を捜査するように命じた男、大統領になって最初の年に750ドルしか税金を支払わなかった男に、投票したのだ。
トランプはパラレル・ワールドを築いた。そこでは彼の言葉だけが重要だ。それは現実にほとんど基づかないのだが、忠実な支持者たちは気にしない。たとえニューヨークの5番街で彼が誰かを射殺しても、支持者たちは彼を愛し続けるだろう。
ジョー・バイデンの最も重要な約束は、アメリカを再び団結させる、ということだ。しかし、トランプ主義は残る。トランプは共和党の変身が生んだ。かつては家族・軍隊・「小さな政府」という三位一体の価値観に依拠した共和党だが、超富裕層からの献金によって、その恨みと欲望を完全に受け入れた。
今や共和党は、党のエスタブリシュメントが反対しても、トランプに権力を与えた。妻をだましてポルノ女優と関係を持ち、米軍を「負け犬」、「税金の無駄遣い」とこぼし、任期中に政府の赤字を4.4兆ドルも増やした。
トランプの大躍進を支援したのは、怒りと衝突の種を蒔くことで多くの利益を得るビジネス・モデルの新興メディアであった。Facebookが無ければ、2016年の大統領選挙で、あれほど効果的に、ロシアはトランプにとって有利な情報操作をできなかった。また、ルパート・マードックのFox Newsが、嘘とプロパガンダを数十億ドルの利益と政治的影響力に転換する点で、テレビの歴史において抜きん出た存在であった。
PS Nov 2, 2020
Will Lies Win?
HAROLD JAMES
アメリカ大統領選挙は、奇妙な、中身のない討論会が示すように、嘘の洪水である。
政治において、嘘が増えると、互いをますます嘘つきと非難するようになる。嘘のエスカレーションが起きれば、合理的な討論は不可能だ。通常の政治は、例外の政治に置き換わってしまう。
最初の、直接的な嘘が無限のサイクルを開始する。嘘が、より多くの嘘、より大きな嘘を生むからだ。それは事実を歪めることになる。
たとえば、トランプは、就任演説に集まった聴衆が、4年前のオバマの就任式よりも多かった、と主張した。それは、写真が示したように、息を呑むほどの真っ赤な嘘である。しかし、それは重要ではなかった。トランプは、嘘を使って、彼の権力を示したのだ。
もう1つの嘘として、不適当な単純化がある。問題の複雑な議論を封じるために使用される。バイデンとトランプの討論会で、NYTがファクト・チェックを行う、2人のそれぞれの発言に、事実ではない、と判定した。
第1に、バイデンが、トランプが中国との貿易赤字を減らしたのではなく、増やした、と主張したときだ。真実はもっと込み入っている。中国との貿易赤字は確かに増えてきたが、それは中国からだけではなく、他国を経由した中国の中間財を含む。
第2に、トランプが、COVID-19のパンデミックを引き起こした中国は、巨額の代償を支払っている、と主張したときだ。政府が関税率を引き上げたことを意味する。しかし、関税を支払うのは、中国企業かもしれないが、アメリカの消費者かもしれない。それを決めるのは非常に複雑だ。しかも、中国からの輸入価格が挙がって、それを使うアメリカの工場は競争力を失い、雇用を減らした。
最後に、イデオロギーとしての嘘がある。
A. ソルジェニーツィンが1974年に逮捕される直前、“Live Not by Lies”という小論を書いた。それは衝撃的な言葉で、嘘をつかせるのは、事実について書くからではなく、それが思想であるからだ、と示した。嘘は避けられないものになる。
ソルジェニーツィンやハベルは嘘の行進に反対し、抵抗を呼びかけた。正直な政治にもどること、フェイクばかりの世界から出ることを求めた。アメリカ人には、今がその機会だ。
FP NOVEMBER 2, 2020
Misinformation Season Is Over
BY ELISABETH BRAW
NYT Nov. 2, 2020
The War on Truth Reaches Its Climax
By Paul Krugman
FP NOVEMBER 5, 2020
This Time, the Meddling Is Coming From Inside the House
BY ELISABETH BRAW
● アメリカ大統領選挙と世界
NYT Oct. 30, 2020
How Lincoln Survived the Worst Election Ever
By Ted Widmer
The Guardian, Sun 1 Nov 2020
Whatever happens, it will take more than promises to Make America Normal Again
Adam Tooze
11月3日が近づくと、世界が息を止めるように見える。アメリカ大統領選挙ほど注目を集める政治イベントはほかにない。
われわれはアメリカが圧倒的な超大国である時代に生きた。歴史的に、それは比較的最近のことだ。独立後の100年間は、主要国がアメリカに関心を持つことはなかった。ワシントンDCに代表も置かなかった。1893年、UKが正式の大使館を置いたのが最初である。1914年7月、外交の大事件で、第1次世界大戦に至ったが、小さなセルビアの方がアメリカよりも有名だった。
アメリカの選挙に世界が注目した最初のケースは、1916年、ウッドロー・ウィルソンの再選だった。アメリカの人的・経済的パワーと、ウィルソンの新外交が、第1次世界大戦の結果を決めた。さらにヨーロッパは、大統領選挙だけでなく、アメリカの権力分割により、議会政治に注意すべきことを学んだ。1918年11月の中間選挙で共和党が勝利し、ウィルソンのヴェルサイユ条約と国際連盟はその犠牲になった。
1916年に重要であった理由で、1940年には、F.D. ルーズベルトの三選がもっと重要になっていた。彼の勝利が巨大な支援パッケージである貸与法を可能にした。しかも、ナチス・ドイツや日本帝国に勝利した後、アメリカは敗戦国を見放すことなく、マーシャル・プランとNATOで包摂した。
2008年、バラク・オバマの勝利は、金融危機の最中に決まったが、歴史を感じさせた。世界はジョージ・W・ブッシュに代わるものを求めていただけでなく、野心的な未来を波及させたからだ。かつて奴隷制に依拠した国に、黒人の大統領が選出されたことは、国家を超えた希望のシンボルだった。当選が決まる前から、数万人のドイツの若者たちがベルリンの街頭に出てオバマを祝った。
かつて同じような熱狂を生んだ大統領は、JFK(ケネディー)であった。彼が選出されたことは、世界における、政治の新世代を意味していた。現在、AOC(オカシオ・コルテス)の選出はそれに遠く、アメリカの政治は、終末期のソ連が示した老人支配体制に近い。Ruth Bader Ginsburgは87歳で死去し、Nancy Pelosiは80歳、トランプは74歳、ヒラリー・クリントン73歳、Bernie Sanders79歳、ジョー・バイデンが当選しても、11月20日に78歳になる。
われわれアメリカ人は正直になるべきだ。トランプが示す醜い姿は新しいものではない。ウィルソンは本心から人種差別主義者だった。差別的な法制度を維持したアメリカ南部が、FDRやトルーマンを世界の指導者として支えていた。マッカーシズムの抑圧体制は、冷戦下のヨーロッパでもなかったものだ。トランプの醜悪さは、リチャード・ニクソンが吐いた、録音された、汚い偏見に満ちた声と重なっている。
アメリカの選挙制度は非常に脆く、法的な告発にさらされる。州の選挙制度はあらゆるレベルで党派的な政治に支配されている。しかし、われわれはトランプの恐怖劇に対抗する形で、リベラルの怒りのシアターが展開されていることを認めるべきだ。
2020年の大統領選挙が問うのは、アメリカの政治は変わることができるか? である。もし変わらないなら、21世紀は、ますます病的な、危険なスペクタルの目撃者となることを責められる。
The Guardian, Sun 1 Nov 2020
A win for Joe Biden would only scratch the surface of America’s afflictions
John Mulholland
The Guardian, Mon 2 Nov 2020
Even if Donald Trump loses the election, the US isn't going to heal any time soon
Richard Sennett
● ハイテク経済
NYT Oct. 30, 2020
How to Take On the Tech Barons
By The Editorial Board
FT November 5, 2020
A California setback for gig economy workers
Has Big Tech won 2020?
Richard Waters
● ホームレスの解決策
The Guardian, Sat 31 Oct 2020
I tried, and failed, to solve homelessness in Westminster. Here's what I learned
Robert White
ホームレスの問題を解決しようと参加した市議会の委員会から何を学んだか。
● ドル安とその将来
FT October 31, 2020
Long-term forces stack up against the dollar
Michael Mackenzie
ドルが下げ続けている。アメリカには、貿易赤字と財政赤字という双子の赤字が強まっている。連銀は歴史的な低金利状態を将来に向けて延長する。
ドル安は世界経済の安全弁である。ドローバル金融システムはドルに依存しており、特に新興市場では債務や貿易が影響される。ドル安・低金利は好条件だ。
コロナウイルスの状況や景気回復に期待する投資家は多いが、もう一つの条件は中国だ。
中国の人民元は上昇しており、政府はそれを容認しているように見える。北京の長期的目標は、ドル建資産による貿易黒字の保有をやめることだ。ドルの下落と世界経済の回復が進めば、ウォール街から資本が流出するだろう。アメリカの株価は世界の中でも突出して不均衡である。
逆に、アメリカの景気回復が強ければ、財政刺激策や、消費の遅れの解消で、連銀からの支援は少なくなる。ドル安に対して、アメリカへの資本流入が、大きなドル価値の回復をもたらすかもしれない。
● 共和党が税金を上げる
NYT Oct. 31, 2020
Republicans, Not Biden, Are About to Raise Your Taxes
By Joseph E. Stiglitz
トランプ政権は共和党と合意して、減税と同時に、その後の増税を法律the 2017 Tax Cuts and Jobs Actにした。それは富裕層を除いて、アメリカ人の多くに負担させるものだ。最初に税率を引き下げて、2021年から2年ごとに2027年まで増税する。
共和党にとって貧困層は重要でない。貧困の淵にある彼らはパンデミックとその後の不況で最も苦しんでいる。トランプの増税計画は貧困層におよび、特に無慈悲で、財政赤字を減らす役に立たないものだ。
FP NOVEMBER 3, 2020
America’s Inequality Election
BY EDOARDO CAMPANELLA
● 経済学者たちは今もさまよう
FP OCTOBER 31, 2020
On Election Eve, Economists Struggle to Figure Out a World That’s Unraveled
BY MICHAEL HIRSH
2008年の金融危機からCOVID-19のシャットダウンまで、世界中の優れたエコノミストたちは経済政策におよぼす彼らの影響力を取り戻そうと苦労してきた。それは成功していない。問題は、彼らが混乱するグローバル化した経済についての意味ある新理論を持っていないことだ。当分、その見込みもない。
エコノミストたちは、まだ事態をこれほど読み間違えたことを理解できない。ドナルド・トランプは、破壊された中産階級を助けるために、国境を閉ざし、貿易戦争を始めると約束して、大統領に当選した。かつてはネオリベラルの自由貿易論者であったジョー・バイデンが、4000億ドルの「バイ・アメリカン」を提案し、オバマのTPPを労働者の権利に関して再交渉すると約束している。
ニュー・ケインジアンの経済モデルは役に立たない。経済学は進歩するが、非常に遅い。大不況の中で、J.M.ケインズはマクロ経済学を開発し、政府の支出が雇用を増やし、不況を是正することを説明した。数十年後に、ミルトン・フリードマンは保守派のエコノミストを指導してケインズ主義を倒した。最小限の金融介入と小さな政府、特に、低課税と規制緩和を唱えた。しかし世紀転換期に、安定した経済、危機の無い「大いなる安定Great Moderation」を祝ったエコノミストたちが、その後の金融崩壊に面目を失った。
今もなおエコノミストたちは、物理学の統一理論のような、新理論を探しているが、現実に追いついていない。COVID-19後の危機に対する政策は、古典的なケインズ主義の政策であった。それは不況がさらに悪化するのを回避したように思う。
しかし、共和党はさらに財政赤字を増やすことを強く嫌い、一層の赤字支出を求める民主党との間で、議会は行き詰まった。市場はもっと多くの赤字と債券を求めている。この金融市場を利用しないのはばかげている、と議会予算局の元主任エコノミストは言う。
エコノミストたちは、2008-2009年の大不況からほとんど学ばず、低金利を続けても景気回復が遅かった。COVID-19にグローバル経済の全神経と筋力をやられた。それはまた、他の危機と並行して起きた。中国がアメリカの職場を奪ったような危機のスピードを、まるで理解できなかった。
グローバリゼーションは経済全体にとって利益になる、と言うだけで、エコノミストたちは「分配上の懸念」を真剣に考えなかった。成長の枯渇についても、経済学は理解しなかった。非常にわずかな数の人びとが、世界の富のますます多くを所有するとき、消費は長期にわたって抑圧される。こうした新しい経済的現実に、トランプの共和党は、事実上、非正統的な経済学で応えた。それはかつて左派の急進的な思想であった。
トランプ、関税を政治的武器に使い、政治的に好ましい部門には巨額の補助金を支出した。彼の中国との合意は、その中心に毛沢東主義者の支持した管理貿易がある。民主党も、バイデンを動かして、国民すべてに大学教育、医療サービス、ベーシック・インカム、はるかに累進的な税制を目指すよう迫った。
経済思想全体が左派に向けて移動している。それは政策立案者たちが「市場だけでは十分ではない」と納得したからだ。20世紀のほとんどをかけて闘ってきたイデオロギーを、われわれは受け入れようとしている。COVID-19はこの趨勢を加速させた、とF.ザッカリアは言う。
旧いマクロ経済モデルは、インフレと不況が同時に存在することを説明できないために崩壊した。エコノミストたちは、不況に向かうことへの自動的な安定化を模索する。膨大なデータを集めて、個々の決定がグローバルな均衡をもたらすミクロ経済学を再構築することに向かっているが、そのモデルは容易に完成しない。
● 世界の債務危機
FP OCTOBER 31, 2020
How to Fix Argentina’s Recurrent Debt Crises
BY HECTOR TORRES
PS Nov 3, 2020
How Africa Can Self-Finance its Economic Recovery
ALAIN EBOBISSÉ
● インドの外交
FP OCTOBER 31, 2020
What Is India’s Foreign Policy Vision?
BY SUMIT GANGULY
● 感染者の急増
The Guardian, Sun 1 Nov 2020
The evidence is clear: if countries act together, they can suppress Covid
Devi Sridhar
The Guardian, Mon 2 Nov 2020
Why is Europe yet again at the centre of the coronavirus pandemic?
Laura Spinney
先週、ヨーロッパは新規感染者が150万人となり、再びパンデミックのセンターになっている。春のロックダウンからの解除戦略は失敗したのだ。
これからどうするのか? 公衆衛生の専門家たちは合意している。早期のロックダウンが欠かせない。大まかに、広く行ったが、それは時間を稼ぐためだった。感染者は減ったが、専門家たちが期待したほど減らなかった。その解除は、再び感染を広げている。
最善の戦略は、正確な、地域を限定したロックダウンを行うことだ。感染の拡大を検出しなければならない。効果的な検査と追跡システムが欠かせない。移動を規制し、ソーシャル・ディスタンスを守る。感染地域には公的な支援を行う。ロックダウンの前に感染者が流出するのを防ぐため、公共機関や交通を遮断する必要を説く者もいる。
確かに人びとは疲れている。1年前よりも貧しくなり、注意に従わなくなった。それゆえに、政府は明確に退出戦略を説明しなければならない。ウイルスを封じ込めるしかない。それ以外は、事態の悪化を意味する。
FT November 3, 2020
Ten ways coronavirus crisis will shape world in long term
Martin Wolf
COVID-19の長期の影響を観るとき、10の視点から考える。
Divided America: healing the rift starts with a national Covid plan
Heidi Heitkamp
● バイデン・プランの基本
FT November 1, 2020
A blueprint for America’s economic recovery
Rana Foroohar
幸い、数日中に、ジョー・バイデンがアメリカ大統領になり、ドナルド・トランプは去るだろう。バイデンが唱える「思いやりの経済」が今ほどふさわしいときはない。現政権下で、政治は文字通り、私たちを殺し続けている。
民主党員でなくても、トランプ政権が行った正しいことが1つある、と思うだろう。経済発展の自由放任モデルであったネオリベラリズムが死んだことを、事実として暴露したからだ。
過去40年間、共和党も民主党も、政権に就けば、アメリカ全土をネオリベラリズムに染めた。資本、財、労働力が世界中を制約なしに移動できることで、すべての者が豊かになる、と。この哲学は破綻し、リベラルな民主主義もその犠牲になった。
金融の規制緩和と貿易自由化は、紙の上で美しいとしても、人間におよぼすコストを考慮せず、世界的な規模で不平等をもたらした。その痛みの結果が、今われわれを支配する政治である。資本は自由に移動した。世界の金融資産は実物経済の4倍以上に達している。財も移動可能になった。しかし、ほとんどの人々、その職場は移動できなかった。政治家にとってはそれが問題だ。人びとは投票する。
多国籍企業の運命と労働者たちの運命は、同じように上昇しなかった。市場は完ぺきに効率的ではなく、政治と人びとの声が重要だった。世界は混乱し、ますます複雑化している。US、ヨーロッパ、中国は別々の方向に国々を導く極であり、別の政治経済をもたらした。
民営化や自由化の言葉が盛衰を繰り返したが、中国は共産党が厳しく管理するシステムを維持しており、国益に従って運営されるだろう。アメリカと対抗して進む、世界的な規模での「一国二制度」という問題は長期に及ぶだろう。
次期大統領はこの挑戦にどのように対応するべきか。愚かな貿易戦争に法人税引き下げを組み合わせることは、答にならない。企業は世界中に資金を移動するばかりで、アメリカに投資しない。関税がアメリカ経済に及ぼす影響をよく考えるべきだ。成長の見込みと安定性のない国に、企業は投資しない。
バイデンは率直にアメリカ国民に真実を告げるべきだ。教育が技術に追いついていない。生産性上昇が遅れている。医療サービスや道路、橋、ブロード・バンドを更新するべきだ。バイデンが巨額の投資計画を立てていることは賢明である。21世紀の経済にとって基本的資源である、人的資本の価値を高めるからだ。企業は、機械だけでなく人にも、投資を怠ってきた。
共和党は、債務を重視せよ、と反対するだろう。しかし、債務を減らす唯一の道は、民間の緊縮(消費抑制)と成長との組み合わせである。トリクルダウン型の、金融緩和によるネオリベラルな資産バブルはそれをもたらさない。生産性のバブルが必要だ。政府が支援して、高成長する技術開発を促す。また、大企業が主要産業を独占しないように法を強化して、競争を確保する。
これがバイデン・プランの基本だ。
FP NOVEMBER 2, 2020
If Biden Wins, Progressives Are Getting Their Wish List Ready
BY COLUM LYNCH
FP NOVEMBER 3, 2020
The Markets Want Much More Than Just a Biden Win
BY ADAM TOOZE
● ヨーロッパのデジタル革命
FT November 1, 2020
Europe should embrace digital change, not strangle it
Nicolas Petit
● マクロンの政教分離とイスラム
FT November 1, 2020
Emmanuel Macron, secularism and Islam
FT November 5, 2020
Letter: France is against ‘Islamist separatism’ — never Islam
From Emmanuel Macron, President of the French Republic
● 財政規律とMMT
FT November 1, 2020
The future of fiscal policy without traditional constraints
Gavyn Davies
主要な先進経済の政府債務とGDPの比率は、2019年から26%上昇して、来年、141%に達する。その半分以上は中央銀行が保有する。
グローバルな経済危機に対して、この政策対応が間違っているというエコノミストは少ない。しかし、財政政策に関する基本的な考え方の転換に注意するべきだ。インフレ率や金利の上昇が債務危機を懸念させる状況は、短期的には、考えられない。
L. サマーズは、「長期停滞」論を2013年に提示した。1970年代後半、インフレ抑制に重点がシフトした「革命」と同じような思想の転換が起き、十分な需要と公平さを確保するために、主として、財政政策を使うことを主張した。
パンデミックに対応する構造的な経済変化は数十年かかるだろう。1980年代前半から、先進経済の実質と名目の利子率は低下しており、民間貯蓄に対して十分な投資が行われないことが主な原因であろう。バイデン政権が大幅な予算赤字によって、グリーン・エコノミーや所得の改善、インフラ整備を進める好条件になる。
しかし、政治家はこれをどこまで利用できるのか? 債務を貨幣の増発で賄えても、賢明な政府は債務率が増大するのを抑えるだろう。債券市場は見張っている。つまり、パンデミックの終息後、政府は利子率が成長率を下回ることで、債務率が減少するモデルを採用する。それは、景気循環を通じて、プライマリー・バランスを維持するよう、予算シーリングを受け入れることを意味する。
民主党政権は、この限界を超える予算を望むだろう。それは、2030年代に高齢化で債務が増えるより前に、債務・財政危機を懸念するべきだ、ということである。
PS Nov 3, 2020
The MMT Myth
OTMAR ISSING
現代貨幣理論Modern Monetary Theory (MMT)を、COVID-19のパンデミックで政府が採用するべきだ、と多くの人は言う。しかし、そのメッセージは危険なほどに単純だ。
MMTによれば、完全雇用になるまで、政府は思うままに支出できる。財源を心配する必要はない。なぜなら中央銀行がコストなしで政府に貨幣を供給するからだ。この新しい「理論」は、オリジナルではないし、陳腐なものだ。
数年前、MMTに関する本が出たとき、あらゆる党派のエコノミストに批判された。しかし、UKの労働党指導者コービン、US上院議員サンダースなど、政治家たちが取り上げた。サンダースはMMTのよく知られた提唱者Stephanie Keltonの助言を受け、経済政策に取り入れた。民主党左派は強い関心を持った。それは、彼らの公共政策を何でも実現できる、と思ったからだ。
政府支出に限界がないなら、だれでもミルクと蜂蜜の楽園に住めるだろう。しかし、この楽園は一時的なものだ。政府支出の拡大は必ずインフレに至る。機会は失われ、人びとは失業の増大と実質賃金の停滞という形で、代償を支払う。
MMTはこの問題を認めるが、必要な時に、インフレを回避するだけ十分な貨幣を取り除くため、増税するという。これは、財政政策や民主主義に対するMMTの無邪気さを示すものだ。インフレを止めるには多大なコストをマクロ経済に生じる。西側諸国は1970年代後半と1980年代前半に、その苦しみを経験した。
MMTの主張が技術的に正しいとしても、それは自国通貨建の債務が、貨幣の増発で支払える、という意味だ。しかし、外国投資家がいつでも喜んで投資するとは思えない。US金利が政府の思うままに変えられるか、MMTは答えない。
中央銀行の独立性は、各国のインフレ率を抑制することに有効である。しかしMMTは、貨幣の発行を、中央銀行から政府が取り戻すべきだ、という。戦争のような非常時には、歴史がそれを支持したが、MMTはそのようなカオスへの道である。
FT November 2, 2020
Global liquidity trap requires a big fiscal response
Gita Gopinath
● EU内の不一致
FP NOVEMBER 1, 2020
The Case for Disaggregating the European Union
BY DALIBOR ROHAC
● 権力の平和的な移譲を拒む
NYT Nov. 1, 2020
Why the U.S.’s Electoral Machinery Is More Robust Than People Think
By Daniel Larsen
NYT Nov. 1, 2020
What Happens if Neither Trump Nor Biden Concedes?
By Daniel Larsen
大統領が権力の平和的な移譲を拒むとき、多くの評論家たちが、「がたがたの」アメリカ選挙制度が、投票後の危機に対して特に脆弱である、と警告している。しかし、法的な失敗の可能性を検討するとき、そこには重要な問題が無視されている。誰の権力を移譲するのか?
究極的に、すべての民主的な移行は、一方が他方にすすんで権力を移譲する。ある段階で権力が移譲されないなら、権力は力で分割される。それは軍隊が決めるか、内戦を意味する。アメリカにおいて、移譲することが不可能な瞬間が来るのではないか、と懸念されている。
選挙制度を重視するという意味で、アメリカのシステムは多くの点で驚くほど強固である。通常、他国の大統領制度では、選挙委員会が結果を発表する。その後、焦点は敗北した候補に移り、もし彼らが敗北を受け入れなければ、直ちに、決定的な瞬間に至る。
これに比べてアメリカでは、奇妙な、欠陥多い選挙制度だが、多くのセーフガードを用意している。1人の、1度の決定ではなく、2か月半にわたる法手続きの迷宮を経る過程で、憲法が定める多くのアクターが権力の移譲に関わってくる。
アメリカ大統領選挙は、2つの段階を経ねばならない。第1に、州ごとに投票数が数えられて、選挙人が12月半ばに投票する。第2に、議会が選挙人の票数を数える。
第1段階には、多くの州と地方レベルの公務員、裁判所が含まれる。その過程で、敗者が権力を移譲する機会がある。第2段階では、議会が選挙人の票を数えるが、さらに多くの譲歩の機会を提供する。
FT November 2, 2020
Democracy can fail anywhere, even in America
Gideon Rachman
民主主義の失敗は、アメリカ人にとって外国の話だった。しかし、民主主義はいたるところで失敗している。アメリカは他国に民主主義を導入しようとして痛い教訓を得た。
民主主義は投票以上のものである。自由なメディア、強力な市民サービス、独立した司法、憲法への信頼。何より、選挙の敗者が敗北を受け入れる文化である。
こうしたすべてのことがアメリカでは当然だと思われていたが、もはやそうではない。選挙が操作されている、勝利を奪われた、と主張することは危険である。
もし敗北のコストがあまりにも大きいとみなされるなら、たとえ投票が公正でも、敗北を受け入れることは難しい。オバマ政権の高官であったPhilip Gordonは、エジプトの将軍たちとムスリム同胞団の政府高官たちとを説得しようとした。同じ政治システムの中で共存するべきだ、と。しかし彼は拒絶された。双方が生存の脅威を観ており、敗北はいかなるコストも上回る。同じロジックが、アメリカの政治にも見える。
エジプトやイラクで民主主義が崩壊することは、その国の悲劇である。しかし、アメリカの民主主義崩壊は、その国だけでなく世界の悲劇である。
PS Nov 2, 2020
American Democracy’s Moment of Truth
RUTH BEN-GHIAT
NYT Nov. 2, 2020
This Might Be the Most ‘West Wing’ Election of Our Lives
By Margaret Renkl
私のお気に入りのマグカップには、こう書いてある。「ジェドのように指導せよ。レオのように助言せよ。ジョシュのように考え、C.J.のように話し、サムのように原稿を書け。」“Lead like Jed. Advise like Leo. Think like Josh. Speak like C.J. Argue like Toby. Write like Sam.”
つまり私は ‘The West Wing’を愛するファンのように、アメリカを信じている。
それはもはや他の惑星のように思える。しかし、おとぎ話かもしれないが、われわれは今もそこから学び、政治に願うことがある。「アメリカの魂」を回復してほしい。そう思って1票を投じた。
FP NOVEMBER 2, 2020
An Election Everyone Is Too Scared to Call
BY MICHAEL HIRSH
FP NOVEMBER 2, 2020
What International Election Observers Will Be Looking For on Tuesday
BY ERIC BJORNLUND
NYT Nov. 3, 2020
Be Ready for a Lengthy, Vicious Struggle
By Thomas B. Edsall
FP NOVEMBER 3, 2020
Don’t Call the Race Too Early
BY NIC CHEESEMAN
FP NOVEMBER 3, 2020
The U.N. Guide to Avoiding America’s Election Mayhem
BY COLUM LYNCH
今週、国連本部はスタッフに警告を発した。それはモガディシオではなく、マンハッタンにおける選挙に絡む暴力に関してであった。
● 中国の経済的、技術的前進を受け入れる
FT November 2, 2020
Chinese economy outstrips US despite Beijing bashing
John Plender
FT November 3, 2020
China gears up to fight back in tech war over chips
Kathrin Hille
PS Nov 5, 2020
The US Must Accept China’s Rise
DANIEL GROS
激しい選挙戦の対立において、1つの問題で両党は一致していた。「中国を止めろ」である。
アメリカ政府と欧州委員会は、今や、中国が経済的、技術的な優位を、不公正な方法で得ていると信じている。政府が広く経済に影響を与えることによって、先端技術を促進している、と。
しかし、それは間違いだ。国家介入が目標を達成できるとは思えない。かつて日本がそう言われた。戦後から1970年代、1980年代まで、日本の高成長が注目されたとき、通産省(MITI)が神話的な高い評価を得ていた。戦略部門に資源を誘導して成功したからだ。
だが日本は不動産バブルで成長が大きく失速し、MITIが支援した部門も実際には成功していなかった。日本経済が高成長したのは、高い貯蓄率と、教育水準の急速な改善であった。同じことが今の中国に起きている。
最近まで、中国の指導部は国家介入の限界を理解していたようだ。国有企業(SOE)は一般に民間企業よりも非効率である。経済に占めるSOEの割合を下げてきた。しかし今、その見解を転換し、政府はハイテク部門の成長を国家の指導下に置いている。
しかし、その成功の理由は、高い貯蓄率であり、教育の改善、特に、高等教育に巨額の投資を行っていることだろう。中国は今や、アメリカの2倍のエンジニアを育て、同じだけ多くの研究論文を発表している。次の10年でアメリカを抜くだろう(すでに抜いているかもしれない)。
アメリカが中国の前進を止めるどころか、邪魔することもできないだろう。中国経済が成長し、それに従って、輸出に依存しなくなり、自国の技術開発が増えるからだ。
対照的に、アメリカの戦略はお粗末だ。中国との「デカップリング」は実行可能でないし、むしろ非生産的である。中国からの供給を遮断することは、生産性の低い、高コストの企業に暗黙の補助金を与えるだけだ。究極において、それはアメリカ消費者への課税である。
結論は明らかだ。アメリカの次期政権は、中国の経済的、技術的前進を受け入れるべきだ。中国がアメリカを超える、というのは気に入らないだろう。しかし、その結果を拒む試みは、無益であり、コストが高い。
● ウクライナ
FT November 2, 2020
Ukraine courts cannot be allowed to throw out anti-corruption gains
Volodymyr Zelensky
FT November 4, 2020
Zelensky is fighting back against state capture
● 投票日の後
PS Nov 2, 2020
Donald Trump’s COVID Comeuppance
SIMON JOHNSON
The Guardian, Tue 3 Nov 2020
This election isn't about the next four years. It's about the next four millennia
Bill McKibben
NYT Nov. 3, 2020
Either Trump or Biden Will Win. But Our Deepest Problems Will Remain.
By Yuval Levin
選挙が終わった後、何をするべきか? この国の深刻な諸問題は、大統領の決意だけで解決するものではない。
その問題とは、社会的危機に至った何かである。政治文化の崩壊だけでなく、自殺と薬物中毒につながる孤立感と絶望、コミュニティー全体がアメリカの成功物語から排除されているという感覚、そして、それに憤慨し、拒否すること。
二大政党が互いをアメリカの未来に対する脅威として攻撃し合うのは、こうした人びとを助けることにつながらない。選挙の勝利は諸問題を一掃するわけではない。
われわれは今、希望を失い、敵意に満ちた状態を、どうやって解決するのか、自身に問うべきである。なぜならそれらが機能する政治の前提条件を破壊しているからだ。
疎外という危機の核心にあるのは、責任感の喪失、深く根を張った文化的な分断、連帯感の欠如である。大統領も、議会も、これを解決できない。底辺から積み上げることで、再生する機会はある。国民の政治が機能するために必要とされるエートスの回復は、人と人との関係に近いところで起きるだろう。
「私には役割があり、何をなすべきか」と問う。教師や隣人として、牧師や会衆として、雇用者や従業員として、教師や生徒として、議員や市民として。関係性の中で責任を果たす。
この問いかけを怠った。多くのアメリカ人が、われわれの制度は自分を人間として扱っていない、という感覚を持つ。それがトランプ大統領の失敗であり、ある種の彼の批判者たちの失敗でもある。
重要なことは、われわれが互いに、特定の制度における自分の役割が何かを問わないことだ。重要な瞬間に、自分のブランドを売り込むのではなく、自制と責任が求められる。この国は、そのような直接の節操・清廉さに飢えている。あたかもポピュリズムが何位でも腐敗を観るけれど、それは清廉さを求めているのだ。
崩壊した社会は、怒り、冷笑主義、伝統の拒否を生み出す。しかし賢明になるなら、われわれが求めているのは、責任、清廉さ、何よりも連帯である。
それらは底辺から生まれる。われわれがいる、その場所から。
FP NOVEMBER 4, 2020
10 Problematic Ways in Which U.S. Voting Differs From the World’s
BY ERIC BJORNLUND
アメリカの民主主義が他国と異なる10の問題点。
The Guardian, Thu 5 Nov 2020
The Guardian view on Trump’s tactics: calculated brazenness
Editorial
それは計算された「厚かましさ」である。この選挙はアメリカの民主主義システムが深刻な弱点を持つことを示した。トランプはそれを利用して破壊を試みている。
背後にあるのは選挙人制度である。この時代錯誤のシステムは、18世紀アメリカを建国した白人たちが、投票の多数に対抗するよう、州に権限を与えたことによる。それは権力をけん制するものではなく、廃棄すべき権力の濫用だ。
火曜日の選挙は、国を分断し、中間派を圧殺するものだった。トランプとバイデンはあらゆる問題で対立し、妥協を拒む。少数派は妥協と取引を望むが、それが起きる見込みは極めて少ない。
トランプは計算された恥知らずな態度で、事実を無視し、今後数日、数週間、邪悪で、苦々しい、爆発の危機をはらむ時間が続く。政治的な形にゆがんだ、最高裁も、上院も、解決できない。
● UKのコロナウイルス危機
FP NOVEMBER 2, 2020
Voters Are Picking Ideology Over Competence on Both Sides of the Atlantic
BY AZEEM IBRAHIM
スコットランド国民党(SNP)は一連の失敗を犯したが、それでも高い支持率を維持し、責められることがない。ニコラス・スタージョン党首は、まるでドナルド・トランプ大統領のように、その無能さを責められない存在となっている。
政府が、その有能さではなく、イデオロギーとアイデンティティーによって支持されることは、決して良いことではない。
FT November 3, 2020
Boris Johnson’s mistakes in the pandemic are depressingly familiar
Henry Mance
FT November 5, 2020
Magna Carta offers no way to get out of lockdown
Robert Shrimsley
UKのコロナウイルス危機でもっとも記憶に残るシーンは、やってきた2人の警察官に、ソフトプレイ・センター(子供の遊び場)のボスがマグナカルタを読むように求める動画である。COVID-19の規制に従うよう求められるが、彼は法律が自分味方する、と考える。
マグナカルタは、個人の自由と議会制民主主義に向けた重大な一歩であった。しかし今も、自分たちが好まない法律に対して、人びとは法律に従わないことを示すとき、マグナカルタに意味を見出す。
USでは、武装した人々と“Live Free or Die”のステッカーを貼った自動車。UKでは壁に貼ったマグナカルタ。
SPIEGEL International 03.11.2020
The Perfect Storm of Brexit and Corona
Boris Johnson's Failures Add Up to Eroding Trust
By Jörg Schindler in London
● ポーランドの政治に反対する女性たち
PS Nov 3, 2020
Will Women Defeat Poland’s Illiberal Regime?
SŁAWOMIR SIERAKOWSKI
FT November 4, 2020
Polish protesters are aghast at abortion ban’s moral hypocrisy
Magdalena Miecznicka
● タイの抗議デモ
NYT Nov. 3, 2020
The Sovereigns of Thailand and the Skies
By Edoardo Siani
タイの王室はもはやその高貴さを失った。毎日のように抗議デモが行われている。王室を風刺するスタイルで、さまざまな抗議が示される。新憲法、プラユット首相の退陣、王室が真に法に従うよう要求している。
現在の王様King Maha Vajiralongkorn Bodindradebayavarangkunは2016年後半に王位に就いた。それは軍事政権が導入した新憲法による統治だ。それゆえ彼はドイツに住んだまま支配する。2018年には、王室の資産をすべて直接管理下に置くと主張した。当時の価値で400億ドルになる。絶対王政の復活を望んでいる。
抗議デモは、沈黙を強いられているが、真剣だ。王室批判で罪に問われることも恐れない。彼らはコスモポリタンであると同時にタイ風である。2015年の香港民主化デモを継承して、黒いシャツを着ている。
● アメリカ大統領と外国
FP NOVEMBER 3, 2020
South Korea Has Got a Lot at Stake in Tuesday’s Vote
BY MORTEN SOENDERGAARD LARSEN
FP NOVEMBER 4, 2020
U.S. Allies Look to ‘Strategic Autonomy’ Amid Deadlock
BY COLUM LYNCH, AMY MACKINNON
FP NOVEMBER 4, 2020
Japan Worries About Four More Years of Trump—and About Biden
BY WILLIAM SPOSATO
FP NOVEMBER 4, 2020
India Would Have Counted the Votes Already
BY BARKHA DUTT
FP NOVEMBER 5, 2020
For Afghans, the U.S. Election Feels Very Familiar
BY ALI M. LATIFI
アメリカ大統領選挙にかかわる諸問題は、カブールの市民にとってなじみ深いものだ。アフガニスタンから、バイデンとトランプの取引を仲介する特使を送ろうか、という冗談が聞こえる。
FP NOVEMBER 5, 2020
What South Africa Can Teach the United States About Repairing a Divided Society
BY EUSEBIUS MCKAISER
FP NOVEMBER 5, 2020
Xi Doesn’t Need to Invade Taiwan Right Now
BY MICHAEL MAZZA
● US選挙と大接戦
NYT Nov. 3, 2020
2020 Will Not Be Decisive
By Ross Douthat
多くの論争、反駁を経て、選挙ですべてが決まる。特定の日に、特定の結果が、明白に与えられるという意味で、選挙は政治のリアリティー・チェックである。
ドナルド・トランプが共和党の大統領候補になる可能性を、また専門家たちの無意味さを嘲笑するべきだ。民主主義は失敗しうる。多くの人が危惧するように。それでもアメリカは、まだそれらを回避できる。
過去の選挙より、その意味が失われている1つの理由は、イデオロギー的な物語と、ヴァーチャル・リアリティーが強烈な影響を持ったことだ。
また、2大政党制と憲法の保障するシステムが機能しなくなった。歴史的には選挙人制度が、地理的な分散を克服し、党派の妥協を促して、地滑り的勝利をもたらした。
ジョー・バイデンの、中道を選んだ、情熱を欠いた選挙戦。ドナルド・トランプの、選挙人制度を利用した、多数票を得ない勝利の戦略。
アメリカの統治可能性を高める上で、バイデンの地滑り的な大勝利を期待した人々は、その可能性がないことを知った。
The Guardian, Wed 4 Nov 2020
The message from the 2020 election? The US still stands divided
Martin Kettle
The Guardian, Wed 4 Nov 2020
OK, America, so what the hell happens now?
Marina Hyde
大言壮語するときではない。むしろ、控えめに暗闇に手を伸ばし、この偉大な瞬間の訪れを、それにふさわしい言葉で示すだけである。
アメリカの咆哮する自我であるドナルド・トランプはまだ、この選挙で敗北していない。ジョー・バイデンの勝利もまだである。ツイッター、武装集団、訴訟。QAnon。
COVID-19の下でも、トランプは2016年の選挙より多くの票を得た。
ヘンリー・キッシンジャーがノーベル平和賞を得たとき、平和賞は死んだ。ドナルド・トランプがアメリカ大統領になっととき、大統領は死んだ。
The Guardian, Wed 4 Nov 2020
Why 2020 won't be a repeat of Gore v Bush in 2000
Richard Wolffe
The Guardian, Wed 4 Nov 2020
The Guardian view on the US elections: a nation dangerously divided
Editorial
NYT Nov. 4, 2020
There Was a Loser Last Night. It Was America.
By Thomas L. Friedman
FP NOVEMBER 4, 2020
Dear Americans: The Election Party Was Bad, but the Hangover Will Be Worse
BY NERI ZILBER
FP NOVEMBER 4, 2020
Both Parties Are Heading Toward a Reckoning
BY LEE DRUTMAN
FP NOVEMBER 4, 2020
Biden and Trump Fight Out Surprisingly Close Election
BY MICHAEL HIRSH
予想外の大接戦である。
両者は中西部の、いわゆるブルー・ウォール(青い壁)、かつての民主党支持基盤であるペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州を激しく取り合っている。4年前、クリントンがここで負けた。
1つ明白なことは、アメリカが恐ろしいほど分断されたままであることだ。
FT November 4, 2020
A bitter US election that resolves little
FT November 4, 2020
A critical moment for US democracy
NYT Nov. 4, 2020
Make Puerto Rico a State Now
By Christina D. Ponsa-Kraus
NYT Nov. 4, 2020
Let the Votes Be Counted
By The Editorial Board
NYT Nov. 4, 2020
When a President Sabotages His Own Country
By Nicholas Kristof
ドナルド・トランプは、ロシアや中国、イランや北朝鮮ではなく、アメリカの民主主義と選挙制度に対する最悪の攻撃をホワイトハウスから行った。
私は問題に答えを見出そうとして苦しむだろう。これほど多くのアメリカ人が、なぜこの男を支持したのか?
FP NOVEMBER 4, 2020
Even if Biden Wins, It’s Trump’s America Now
BY JONATHAN TEPPERMAN
この選挙結果は、アメリカにとってどのような意味があるのか。
最も重要なことは、ホワイトハウスに誰が入るにせよ、アメリカの投票の約半数が、白人ナショナリストの、権威主義的な、虚言を慢性的にまき散らす人物を支持したことだ。彼らはまた、トランプのむき出しの残酷さ、性差別主義を無視した。政府や世界に対する無知と関心の無さを無視した。フェア・プレイ、法の支配、報道の自由といったアメリカの伝統的な価値観を、彼が軽蔑したことを無視した。多年にわたって、たとえ欠陥はあったとしても、われわれの平和と繁栄を支えてきた内外の諸制度を、彼が熱心に破壊したことを無視した。
2016年には、共和党員たちもトランプのことを知らなかったと言えただろう。しかし、今は違う。われわれは、トランプがどんな男か、よく知っている。
トランプは2016年よりも500万票多い、約48%の票を獲得した。ラテンアメリカ系有権者、黒人有権者に支持を拡大し、共和党は上院の多数を守るようだ。われわれは1つの結論を得た。2016年はまぐれではなかった。勝者が誰かに関わらず、われわれはみな、トランプのアメリカに生きている。
トランプの影響は政治に残り、共和党を支配し、バイデンの宥和策を拒み、アメリカをますます破壊する。政府が失敗を犯すことに人びとは憤り、あるいは、共和党は政府の試みをくじき、悪意に満ちた分断状態はさらに悪化し、超党派の協力の可能性は消滅し、政治は暴力に向かう。
オバマが同じことを試みた。しかし、それは共和党の激しい反対を呼ぶだけだった。国民のさらに多くが、バーサリズム(オバマには大統領になる資格がない、出生証明書を見せろ、という反政府運動)やその他の陰謀論を信じた。
The Guardian, Thu 5 Nov 2020
Trump has not been repudiated – a Biden presidency would face obstruction at every level
Adam Tooze
The Guardian, Thu 5 Nov 2020
Even if Biden wins, the world will pay the price for the Democrats' failures
Owen Jones
ほとんどすべての主要な新聞が支持したにもかかわらず、ジョー・バイデンは予想外の僅差で勝つだけである。
民主党の候補者争いにおいて、バイデンの支援者たちが主張した。社会主義者のサンダースではフロリダの有権者が離反する。ドナルド・トランプが陽光の州で勝利するぞ、と。彼らはまた、上院の多数を得られるかもしれない、と思った。しかし、上院は共和党が多数を守り、下院でも民主党は数を減らす。
コロナウイルスが無かったら、明らかにトランプが勝利して、さらに4年間の任期を得て、アメリカの民主主義に長期の破壊的影響を残しただろう。トランプは負けても、トランプ主義は生き残る。
民主党のエスタブリシュメントたちは、トランプ劇場を理解しなければならない。トランプは、民主党「穏健派」にとって、青天の霹靂なのだ。彼らはトランプを「逸脱」や「まぐれ」と思った。
民主党は答えられなかった。彼らは騙されたと言い、ロシアを責めた。積極的な対抗策もないまま、バラク・オバマの栄光でバイデンを飾った。そして、トランプ支持者が、能力の点でバイデンを支持すると願った。
金融危機後の銀行救済でも、賃金の停滞でも、人種差別でも、人びとは民主党に期待しなくなった。民主党のエスタブリシュメントは政治的な破産し、こうした挑戦に応えられない。バイデン政権は、上院と最高裁に縛られるだろう。共和党はすぐに始まる中間選挙でさらに選挙区を有利に改編する。人にとは何もできない政府に幻滅するだろう。
希望はある。民主党の新世代、いわゆる議会の進歩派だ。著名なAlexandria Ocasio-Cortezもその1人である。新世代の指導者たちが、トランプの時代を終わらせる。
FT November 5, 2020
Liberals should worry about the lack of a landslide
Janan Ganesh
FT November 5, 2020
Trump insulted but then boosted the Latino vote
John Paul Rathbone
FT November 5, 2020
Biden risks being a lame duck president
Edward Luce
時代を転換するという左派の夢は破れた。
バイデン政権は2つの和解不可能な勢力の間で膠着する危険がある。トランプ主義の右派と、民主党の左派だ。
外交においてだけ、バイデンの主導権がある。それはアメリカ民主主義の盛衰が世界を舞台にして決まる、というパラドックスである。
バイデンはWHOにとどまり、パリ協定に復帰するだろう。イランとの核合意も再生する可能性がある。しかし、最低賃金引き上げの可能性はゼロだ。富裕層への増税はそもそも議題に上ることもない。トランプの亡霊がバイデンのアメリカにからみつく。
Donald Trump’s legal war against the US election results
Bernadette Meyler
PS Nov 5, 2020
Truth and De-Trumpification
JAN-WERNER MUELLER
2016年、「彼女を投獄しろ」と叫んだトランプとその支持者たちに対して、トランプを投獄することで応えてはならない。しかし、「忘れて、許す」だけが答えではない。
アメリカは3つの問題を区別するべきだ。大統領になる前のトランプの犯罪疑惑。大統領就任期間の彼とその仲間たちに関する汚職や犯罪にかかわる疑惑。US政治システムの内部にある構造的な弱さ。それぞれ異なる対応が必要だ。
PS Nov 5, 2020
Why Trump Cries Electoral Fraud
RAJ PERSAUD
自分たちの優秀さを確信しているナルシストたちには、いかなる場合も敗北を受け入れることはできない。彼らのエゴを脅かすものは破滅である。だれも彼らを公正に、まともな方法で、打ち負かすことはありえない。ずるい手を使った、だまされたという主張は、彼らの心理に一致する。支持者たちはその感情を指導者と共有する。
バイデンの、時間をかけて和解を待つ、という戦略は心理学に無知である。潜在意識にある感情をつかみ損ねると、彼に敵意が向かうだろう。トランプの投票を捜査したという主張を、単に反対するのではなく、積極的に、心理的包摂をめざすべきだ。
NYT Nov. 5, 2020
It Shouldn’t Be This Close. But There’s Good News, Too.
By Nell Irvin Painter
FT November 6, 2020
The promise and limits of Joe Biden
Philip Stephens
FT November 6, 2020
Divided America: it’s a good election outcome
Charlie Dent
● 選挙後の経済
FP NOVEMBER 4, 2020
Welcome to the Worst Election Outcome for the Global Economy
BY ADAM TOOZE
FT November 4, 2020
A divided electorate spells trouble for the US economy
Mohamed El-Erian
US経済にとって3つの問題がある。
1.アメリカは分断されており、重大な政治的決定を行えない。長期的な改革には限界があり、生産性の上昇は遅い。家計の不確実さ、不平等は強まる。
2.感染の第2波がさらに状態を悪くする。感染対策には、合意ができず、反対が生じる。
3.政府の効果的な経済政策が取られないため、連銀は再びショックを吸収する役割を担う。しかし、回復を刺激す津効果は弱く、金融市場をゆがめ、無責任な投機や資源配分の失敗をもたらす。
What Economic Stimulus Could Look Like Under a Divided Government
BY ALLISON SCHRAGER
FP NOVEMBER 5, 2020
Free Trade Is Over
BY EDOARDO CAMPANELLA
● アント・グループ
PS Nov 4, 2020
Ant Group’s Long March
SHANG-JIN WEI
FT November 4, 2020
Ant’s rocky road holds lessons for business in a digital age
John Thornhill
アント・グループの新規株式公開IPO(市場評価額は推定3000億ドル)が直前に停止された事件から、この企業とデジタル・ビジネスモデルについて、3つ考えた。
第1に、消費者指向の、データ利用型のビジネスは、偶然、生まれた。中国市場におけるネット売買で購入者の支払代金を保管したからだ。
第2に、中国におけるデジタル決済処理は、既存企業・銀行が存在しなかったために、急速に普及した。
第3に、すべてのハイテク企業は政治的な影響力と無関係ではない。中国共産党の政治的制約を抜け出ることはあり得ない。
FT November 5, 2020
‘The party is pushing back’: why Beijing reined in Jack Ma and Ant
James Kynge and Henny Sender in Hong Kong and Sun Yu in Beijing
FT November 5, 2020
Ant’s failed IPO points to wider clash on fintech
● 気候変動
FT November 4, 2020
We can avert irreversible climate change
Martin Wolf
● 日本の企業家
Japan’s ethical capitalism has lessons for the world on ESG
Jim McCafferty
● エチオピアの内戦
FP NOVEMBER 5, 2020
Is Ethiopia Headed for Civil War?
BY TOM GARDNER
Ethiopia must step back from brink of civil war
● プーチンの経済不安
PS Nov 5, 2020
Putin’s Flatlining Economy
SERGEI GURIEV
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The Economist October 17th 2020
Torment of the Uyghurs
The American election: Grading Trunponomics
Ruling Thailand: Battle royal
Xinjiang: Orphaned by the state
Trunponomics: Watered with liberal tears
Far-right extremism: Making the world glow
Dubai: Old is gold
An interview with Russia’s opposition leader
Bagehot: Mad, bad and dangerous
(コメント) アメリカ大統領選挙の2週間前に、こうした記事が並んでいました。
新疆・ウイグル自治区におけるイスラム教徒への厳しい監視と拘束、改宗、同化のシステムは、現代の強制収容所である、ジェノサイドである。スキャンダルにまみれたタイの新しい国王は、ドイツに暮らしながら、タイの民主主義を絶対王政に転換し、王室の富を自分だけで支配することが正しいと考えている。アメリカにおける白人ナショナリストたち、極右の過激派は、大量の武器を蓄えて、政府に対する武装蜂起を考えている。
そして、他の記事では、石油の出ない中東の都市国家ドバイが、経済危機から脱出するために、豊かな高齢者を世界から自国へ招き寄せる。ロシアの反プーチン指導者、毒殺未遂から奇跡的に生還したナワルニーは、ドイツの病院でインタビューに回答した。ブレグジットを生んだイギリスの狂気を、いまさら驚くべきではない。
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IPEの想像力 11/9/20
アメリカ大統領選挙の投票日、恐れられた騒乱は起きませんでした。少なくとも、まだ今は。
しかし、民主主義の表面的な正統性のベールをはいだ、私たちの異なる姿、社会の対立、鬱積する不満、既存の秩序や支配者を引きずりおろしたいという欲求が、アメリカだけでなく、ヨーロッパにも、中東にも、ラテンアメリカにも、インドや韓国、タイなど、アジア諸国や、新時代を期待されたアフリカの諸国にも、深く根を張り、巨大な都市で沸騰し続けていると感じるのは、世界政治を想像する、だれもが共有した経験ではないでしょうか。
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イギリスの議会政治は、フランスのような革命や、ドイツのような独裁に頼らず、漸進的で、現実的な妥協を積み重ね、法と社会制度の改革に成功した、と称賛されていました。そういうイメージが広まっていると思います。
しかしブレグジットや、その後のボリス・ジョンソンが首相となった数年間の迷走は、これがイギリスというイメージからの逸脱ではなく、むしろ本質なのか? という驚きと恐れを世界に与えました。
The Economistの記事( “Bagehot: Mad, bad and dangerous” )は、そうだ、と書いています。1783-1846年のイギリスを扱う the Oxford History of England のタイトルが示すように、イギリス人とは「狂った、性悪の、危険な」人びとである、と。
フットボールの国際試合で、各国がイギリスからのフーリガンに特別な警戒態勢を取り、ときには国境を封鎖したことを私は思い出します。まるで、コロナウイルスのように。
なぜか? なぜ絶望して、憎しみ合い、紛争・対立し続ける人びとになったのか? 左派によれば、かつて階級政党が担った議会政治はその安定した論争のイデオロギー的基礎を失い、保守派によれば、資本主義が国民的な政治文化を破壊し、大衆とエリートとの乖離を際立たせた。
さらに、1冊の本( “Brexitland” )から、2つの視点を紹介しています。政治が階級ではなくアイデンティティーに依拠するとき、対立する集団が経済的な妥協点を見出すことはできなくなり、むしろ対立を過激化する政治家が「勝利」する。いわゆる、「部族主義」の政治です。さらに、メリトクラシー(能力主義)が社会組織の原理として広まった。人びとの地位や富を、その能力で説明し、過度に単純に結びつける。成功しなかった者は、システムに反撃するか、あるいは、自ら絶望する。
イギリスの分断の背後には、大学の急拡大がある、と言います。かつて人口の3%だった大学卒業者は、今や6倍にも増えた大学が量産している。人口の半分は大卒者で主要な都市に住み、他の半分は田舎に住んでいる。後者は議会やメディアが彼らの声を代表していない、と感じる。さらに、学校を中退した者は特に社会の周縁に追い込まれ、暴発しやすい。他方、大学教育を受けた者も、多くはだまされたと感じている。大学卒業はエリートへの入場許可証ではないし、債務と「プレカリアート」(不確実で、低賃金)の仕事が待っているだけだ。
ボルシェビキやナチが示すように、「過剰な教育と過小な高級職との組み合わせは、政治的な火薬庫である。」
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トランプが投票の半数を占める国とは、どんな国なのだろうか? 彼の計算された(?)暴言が刺激し続けたアメリカの分断は、ミシガン州知事の誘拐や庁舎爆破を計画した武装民兵たちとつながっています。
過激派を研究する歴史家は、これほど多くの武装集団がアメリカに現れたのをかつて観たことがない、と言います。「コロナウイルスのロックダウンを行った州に広がる怒り、失業の不安、人種的な正義や警察に対する抗議、政党政治の不快な紛糾、長期に及ぶ(ほとんど無視された)海外から戻った多くの退役軍人。」 それは「完璧なパラノイア(偏執症・妄想)の嵐」となっている。
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中国とロシアには、また異なる世界政治が広がっている、と実感します。The Economistによれば、「世界的規模の人権危機」が起きています。中国西域では、親を失った孤児たちが増えている。コーランよりも習近平思想を信じるように求め、子供たちに家の中での信仰や祈りについて問い、収容所で100万人規模のイスラム教徒を再教育するから。過激派を抑えるため、と政府は説明する。
破綻国家と権威主義、民主主義の関係は、巨大な長期のサイクル、地理的な拡大から崩壊へ、という、「帝国の循環」を想像させます。
バイデンのアメリカが、トランプのいないこの国を和解させるより、朝鮮戦争や台湾海峡の危機に立ち向かう意志を問われるかもしれません。
投票日前にオクトーバー・サプライズはなかったけれど、トランプの国に住み続ける武装集団が、たった一発の銃弾で、大統領の交代を強いるかもしれない、という恐怖を、アメリカ人は知っているはずです。
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