IPEの果樹園2020

今週のReview

11/2-7

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アメリカ大統領選挙が迫る ・・・危機とポピュリズム ・・・チリの新憲法制定 ・・・ブレグジットとEU ・・・アメリカ外交の再編 ・・・グーグルと独占禁止法 ・・・アメリカ最高裁の危機 ・・・財政拡大策への転換 ・・・バイデンの経済政策 ・・・トランプはどこまで破壊するか ・・・グローバリゼーションの再編

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 アメリカ大統領選挙が迫る

SPIEGEL International 23.10.2020

Bob Woodward on the 2020 Election

How Can You Not Be Worried?”

COVID-19のパンデミックが続く中で、ワシントンは死んだように見える。ホワイトハウスの周りの事務所も閉じている。わずかに開店しているレストランにも、ほとんどからっぽだ。

あなたの本には、ドナルド・トランプが大統領にふさわしくない、と書いてある。なぜか?

・・・彼はウイルスの管理において破滅的な失敗を犯した。128日に、国家安全保障担当大統領顧問Robert O’Brienや他の者たちがトランプに明確に告げた。パンデミックが迫っており、1918年のスペイン風邪の流行はアメリカでも675000人の命を奪った、と。しかし、トランプは国民にそれを伝えるより、隠した。24日の一般教書演説でも、ウイルスには15秒しか触れなかった。

・・・トランプは、国民を守る責任を理解していない。真実を告げる責任を理解していない。大統領としての責務を果たす責任を理解していない。

トランプは、あなたを夜に呼んで、どのような印象を与えたがったのか?

・・・彼は私に金正恩の写真を見せた。彼は、独別な写真だと言った。しかし、だれでも知っている写真だった。

あなたは国の将来を心配しているのか?

・・・そうだ。心配せずにはおれない。この国は歴史的なバブルの中にある。極端に困難で、恐るべき時代がアメリカ人にはあった。ケネディーの暗殺やベトナム戦争だ。トランプは、無実の感覚を破壊した。どのようにして政府への信頼を回復すればよいのか。例えば、私の関わるニュース・メディアだ。われわれは信用されておらず、そのことを知っている。

FP OCTOBER 24, 2020

Here’s How the 2020 U.S. Elections Resemble Those of Fragile Democracies

BY ERIC BJORNLUNDthe president of Democracy International, chair of the Election Reformers Network

現職の大統領が選挙プロセスを不正な操作されたものだと攻撃し、選挙結果を受け入れることを拒否している。113日のアメリカ大統領選挙は、ますます、民主化を闘っている、専制国家の選挙に似てきた。私は過去30年以上にわたり、22カ国で約40の選挙を監視・指導した経験から、そう言える。

アメリカは、民主主義が確立されていない国で、選挙の国際監視コミュニティーで長く批判されてきた多くの問題と、まさに同じ諸問題を示している。本当の、民主主義が確立した国では、政治的に競争する党派が選挙のルールや公平さを批判しない。対立候補や選挙委員会を詐欺だと非難しない、投票する者を威嚇したり、暴力で脅したりしない。そのようなことをすれば、人びとの選挙に対する信頼は失われ、民主主義も信用されなくなる。

アメリカは今やバングラデシュ、エジプト、アフガニスタン、ケニアに似ている。

FT October 25, 2020

The world must prepare for a contested US election

Timothy Garton Ash

2000年のジョージ・W・ブッシュとアル・ゴアの大統領選挙でも論争になって、5週間かかって、最高裁が勝者を決定し、ゴアは敗北を受け入れた。

今は2000年よりもはるかに状況が悪い。COVID-19を恐れて、投票の半数以上は郵便によるものと予想される。たとえアメリカ人が仏教徒の静けさで事態を待つとしても、これは非常な困難を意味する。だが、政治情勢やメディアは極度に分断している。双方が自分たちだけの事実を観ており、他方に事実を認めない。

ドナルド・トランプ大統領は、選挙プロセスの正統性を疑うように猛烈な働きかけを行っている。特に郵便投票を信用できない、と言う。

もし激戦州でもバイデンが明確に勝利すれば、共和党もトランプが敗北したことを認めて、トランプに敗北宣言を求めるだろう。しかし、むしろもっと起きそうな事態は、共和党支持者より民主党支持者の方が多く郵便投票しているから、投票日の夜はトランプがリードするだろう。その後、郵便投票が数えられるにつれてバイデンの票が増える。それを「ブルー・シフト」という。それは数日、もしくは、数週間、投票所、カウンティ、市、州の選挙管理委員会で激しい論争になる。

選挙結果が、ブッシュとゴアの2000年の結果を決めた最高裁の決定に至るまで、はるかに激しい、大規模な形で混乱が起きる。20211月まで決まらず、暴動や株価の暴落、世界規模の混乱が生じるかもしれない。

世界の民主主義諸国は、この「ブルー・シフト」を心配している。最高裁が決定すれば、それは受け入れるだろう。世界中から多数の外交官やジャーナリストがこの選挙に注目して報道している。主要な内外のメディアに加えて、FacebookTwitterから大量の間違った情報が流れる。しかし、リベラルな民主主義の存立は事実によることが重要だ。

アメリカも参加しているOSCEthe Organization for Security and Co-operation in Europe)は、過去30年間に、370もの選挙監視活動を行った。最高裁が決める前に、各地の管轄区で法廷闘争と判決が示されるだろう。COVID-19、ポピュリズム、政治的パラノイアの時代に、人民の、人民による、人民のための政府が民主主義の再生をグローバルに展開する起点となってほしい。

FT October 27, 2020

The character of US democracy is on the ballot

PS Oct 27, 2020

The US Election’s Chaos Quotient

NOURIEL ROUBINI

バイデンが勝利し、上院も下院も民主党が多数を得て、政府の分裂状態が解消されるかもしれない。

しかし、ドナルド・トランプの信任投票となり、トランプは負けても、共和党は上院の多数を維持するかもしれない。

さらに、投票の多数を得られなくても、トランプが代表人制度のおかげで再選され、現状維持となる可能性もまだある。2016年の選挙でも、ヒラリーへの支持の一部は、隠れたトランプ支持者であったことが分かった。

もっと不吉なシナリオとして、勝者が誰かなかなか決まらない場合、双方が敗北を認めず、法廷、メディア、街頭デモで、醜い対立が激化するかもしれない。

さらに、2016年のときと同様、大規模な情報操作(国内から、外国から)が行われている。アメリカの監視機関は、ロシア、中国、イランその他の外国が、選挙プロセスに介入し、投票プロセスの正統性を損なうよう操作している、と警告した。

トランプと仲間の共和党議員は、QAnonのような狂った陰謀論を受け入れ、戦術として利用できる白人至上主義者たちを暗黙の裡に擁護している。

共和党が支配的な多くの州、共和党の知事、その他の公職にある者たちが、公然と、民主党支持者が多い集団の投票を妨害する汚い手を駆使している。

何よりも、トランプは繰り返し郵便投票を信用できない、と主張してきた。それは、民主党の支持者が多いと考えているからだ(パンデミックを警戒する)。しかも、彼は敗北した場合でも、権力を明け渡す、と言うことを拒んでいる。むしろ、極右の武装集団にウィンクして、彼らが街頭におけるカオスをもたらし、国内テロを計画することに、暗黙の承認を与えてきた。

もし投票日の夜、最初の開票結果が民主党の大勝を示していなければ、トランプは即座に激戦州で勝利宣言するだろう。すべての郵便投票が集計される前に。共和党の作戦本部では、すでに投票の有効性を理由に、主要な州で集計を停止する計画を進めている。

同時に、すべての白人武装民兵集団が、トランプの呼びかけで「待機して」おり、街頭での暴動とカオスを醸成するだろう。その目的は、左派の対抗暴力を挑発し、トランプが「内乱法」を発動して、「法と秩序」のために連邦法の強制手段、すなわち、米軍の出動を命じるためだ。トランプ政権は、すでに、民主党が指導するいくつかの大都市について、「アナーキストたちの集結場所」とみなし、制圧すべきだと考えている。

これほど深刻な政治不安がある中で、市場は一斉にリスク・オフになるだろう。選挙の論争が長引けば、株価は10%下落、債券利回りはさらに低下、金価格は高騰する。このような状況で、通常はUSドルが買われるが、アメリカの政治的カオスがもたらす話により、ドル売りとドル暴落も起こりうる。

アメリカが民主主義や「法の支配」を示す模範ではなくなり、ソフト・パワーを失うことだけは確実だ。

PS Oct 27, 2020

America’s Moral Tipping Point

KAUSHIK BASU

NYT Oct. 27, 2020

When My President Sang ‘Amazing Grace’

By Thomas L. Friedman

トランプは、CIAFBIに確かめもせずに、オバマ大統領が命じた海軍特殊部隊のウサマ・ビン・ラディン殺害は間違っていた、本当は生きている、というQAnonの陰謀論を広めた。

ホワイトハウスに、真実を語る、清廉な大統領がいることの重要な意味を、アメリカ人は忘れてしまった。

FT October 29, 2020

The non-trivial risk of repeating Florida 2000 election showdown

Edward Luce

PS Oct 29, 2020

Can America Avoid an Election Crisis?

ROBERT MALLEY, STEPHEN POMPER

過去にも、アメリカ大統領選挙は乱暴な、命がけの事件だった。しかし2020年のアメリカ大統領選挙は、かつて記憶にないほどの危険な状態にある。特に、現職の大統領が選挙結果を拒み、武力闘争にエスカレートする危険を現実に示している。

ICGthe International Crisis Group)は、暴力的な衝突が起きる場所で、それを緩和、予防、終息させることを使命としている。過去四半世紀に、われわれは世界中で活動したが、今までアメリカに注意することはなかった。

多くの国で、選挙はしばしば流血の事態になる。それが起きる要因としては、たとえば、政治の極端な分極化。勝者が全てを支配する。政治的目標を掲げる武装集団の手に多くの武器がわたっている。欠陥のある投票過程に多くの市民が疑いを持っている。こうした条件がある中で、対立する候補者がかなりの強力な支持基盤を持つとき、選挙は特に危険になる。

アメリカはまるで、できたばかりの、成熟しない民主主義国家のようだ。アメリカはまるで、今もなお、長い奴隷制の歴史、内戦、リンチ、居住地区の隔離、労働争議、原住民へのエスニック・クレンジングが続いているように見える。銃器が町にあふれる国、他の高所得国にはあり得ないほど多くの銃による自殺がある国、政府機関が警告するほど、白人至上主義者の運動がはびこる国だ。

アメリカは、人種差別、経済不平等、警察の暴力が、慢性的な緊張状態と、定期的な街頭の抗議デモ、ときには騒乱が発生する国であることに、世界は頭を抱える。アメリカの多くの都市が重武装した警察官を展開し、彼らは戦場や、外国への軍事介入において、米軍が採用するのと似た武器と戦術を採用する。主要政党は、国民のアイデンティティーをめぐる深刻な対立において、頑固な姿勢をまったく崩さない。民主党員は選挙を民主主義の最終決戦とみなし、他方、共和党員はトランプを、文化的、人口的な変化に反して、アメリカらしさを守る最後の砦とみなしている。

極右の細胞が流す脅迫も気がかりだ。ミシガン州の民主党知事Gretchen Whitmerに対する誘拐計画で13人が逮捕された。こうしたグループが投票所で有権者を威嚇し、選挙結果について論争が起きると、問題を悪化させる。街頭で行動を起こし、左派の活動家の反撃を挑発して、暴力的な反社会勢力も暴動に加わる。もしトランプが、正規の開票が終わるのを待たずに勝利宣言し、支持者たちに街頭での行動を呼びかければ、激戦州の開票作業は一気に混乱する。

諸外国の指導者や政府には、一つ重要な役割がある。113日にトランプが早期の勝利宣言を試み、圧力をかけてきても、彼の勝利を認めないことだ。彼の勝利を祝福する電話などすべきではない。

NYT Oct. 29, 2020

How Trump Lowered America’s Standing in the World


 危機とポピュリズム

The Guardian, Sat 24 Oct 2020

We’re endlessly told why populism works. Now see how it might fail

Nick Cohen

リベラルがその敵を邪悪な天才とみなすとき、彼らを称賛しているのだ。それがどれほど気味の悪いものでも、右派は超自然のパワーを持っており、有権者の心を操作し、システムをだます。

ドナルド・トランプは、天才でもなければ、邪悪でもない。もし彼が、ホワイトハウスに住む億万長者ではなく、ワシントンの歩道で通行人たちに叫ぶ乞食であれば、彼が精神病だと容易に言えるだろう。私はボリス・ジョンソンが特別な魅力を持った、ジャーナリスト的な詐欺師として、ネズミのようなずる賢さを持つことを認める。もし彼が政界の大物であったなら、イングランド南部の侮辱する、イングランド北部の人びとの深刻な政治不信を決して確認できなかっただろう。

FT October 27, 2020

Austerity vs populism tensions overhang LatAm debt markets

Michael Stott

NYT Oct. 27, 2020

The Lesson From Bolivia for Latin American Politics

By Brendan O’Boyle

The Guardian, Wed 28 Oct 2020

Poland's abortion ban is a cynical attempt to exploit religion by a failing leader

FT October 28, 2020

Incompetence is the real threat to democracy

Janan Ganesh

民主主義を称える名言は、その政治原理を支持するものではない。ウィンストン・チャーチルは、民主主義が最悪の政治形態である、と述べた。ただし、「これまで試された」すべての他の政治形態を除けば、と。したがって、検証された結果が重要なのである。また経済学者のアマルティア・センは「世界の歴史において、機能する民主主義では、飢饉が起きたことはない」と発見した。その意味は、ここでもまた、民主主義の有用さである。

大衆の自治が好ましいのは、それが良い結果をもたらすからであって、民主主義自体が正しいわけではない。

このことにこそ、世界で最も重要な民主主義、アメリカで投票が行われる際に、注目すべきである。ドナルド・トランプは民主主義システムへの脅威である、というのは正しいが、彼は通常の意味での独裁者ではない。トランプは、コロナウイルスを利用して権力を集中したのではなかった。むしろ、逆に、個人的自由に対するわずかな侵害も拒み、選挙されない、「シークレット」(秘密の)国家機関を、しばしば攻撃した。そして、政権の恐るべき能力不足には無関心であった。

トランプが民主主義の大義を脅かすのは、政治形態としての無能さを示すからだ。彼の政権は、民主主義に対する世界的な評価を損なった。中国がウイルスも不況も制圧するのを想うとき、アメリカがこの両者に苦しむ中で、世界はその意味を明確に受け止めるだろう。専制国家こそが勝ち馬である。

イラク戦争、金融危機、景気回復の遅さ、その他の諸問題で、アメリカの民主主義は評価を下げた。火曜日の大統領選挙に、世界の民主主義の運命がかかっている。トランプ再選が、警察国家や、普通選挙の停止に至るからではない。むしろ、町中に分断が起き、ワシントンの政治は冬眠し、集合的行動で問題を解決する能力を失うからだ。

1945年、民主主義国家は少数派だった。20世紀の終わりまで、専制国家と「混合型」システムが多数を占めた。世界の大部分は、民主主義の経験が浅い。他の政治形態が繁栄と秩序をより確実に実現できるなら、システムを変える可能性が高くなる。中所得国から高所得国へと上昇した中国がそうだ。民主主義と対抗するのは、もはや、機能しないソビエトの教条主義者ではない。名前だけの共産主義を掲げる、プラグマティストの超大国だ。

西側諸国は、ガバナンスを、民主主義そのものの有能さを問う、永久の住民投票とみなしてきた。社会に良い結果をもたらすなら、民主主義への支持が高まる。チャーチルの名言は、もし民主主義的システムの能力を損なえば、われわれはその支持を失う、という警句である。

FP OCTOBER 29, 2020

How Brazil Was ‘Ukrainized’

BY LEONARDO COELHO


 パンデミックと経済格差

FT October 24, 2020

Pandemic makes world’s billionaires — and their advisers — richer

Sam Jones in Zurich and Valentina Romei in London

FT October 28, 2020

Threadbare sick pay is a false economy

Sarah O’Connor


 チリの新憲法制定

FP OCTOBER 24, 2020

A Year After Protests Began, Chile’s Constitutional Referendum Goes Ahead

BY JOHN BARTLETT

FP OCTOBER 24, 2020

In Chile, One Word Defines the Political Revolution

BY KELLY KIMBALL, AUGUSTA SARAIVA

The Guardian, Wed 28 Oct 2020

Chile's latest steps towards true democracy are a beacon for the world

Kirsten Sehnbruch

チリの現在の憲法は、ピノチェトの顧問で右派のイデオローグであったJaime Guzmánが書き、不正な国民投票で承認されたものだ。その後、チリは1990年に民主化されたが、憲法に書かれた権威主義的な原理が民主化プロセスを制約し、ネオリベラルな経済発展モデルを押し付けた。憲法がピノチェトに上院議員を指名する権限を与え、右派が過剰に選出される選挙制度を定め、軍や教育のシステム変更には過半数を超える厳しい条件を求めたからだ。

過去30年間、憲法は政治エリートが権力を維持し、社会の変化や期待に合わせた政治改革を妨害してきた。教育を受けた中産階級が、不安定な雇用、失業や病気によって貧困へ落ち込む瀬戸際にあった。制度に対する信頼が汚職スキャンダルによって崩壊した。

2011年、学生デモの広がりはバチェレ大統領の下で重要な構造改革の政治的意志を高めたが、その過程は遅すぎた。201910月、メトロ運賃引き上げから抗議デモが起き、暴力が諸都市に広がって戦場のようになった。成長と投資が急減し、政治エリートたちにショックを与えて、中道右派のピニェラ大統領は抗議デモを宥和する試みを始めた。

それが議会両院の諸党派による社会的平和と新憲法への合意となり、日曜日の国民投票の舞台であった。

近年、ラテンアメリカでは民主主義の後退が深刻で、議会はしばしば大統領や党派の権力維持に利用された。チリは新しい先例となる可能性がある。すなわち、政治党派の分断状態を緩和し、人権や社会・環境の権利を憲法で保障し、政治的、社会的な不平等を解決する。そのためには、広範なアクターを集めた社会対話とともに、民主的な諸制度が機能することが重要だ。

新憲法が、最近の危機をもたらした多くの問題を自動的に解決することはないだろう。しかし、政治過程を多くのチリ人にとって正当なものと示し、政治エリートに包括的で、説明責任のある存在になるよう要求し、同時に、政治家たちが交渉し、必要な改革を実行することを可能にする。

チリの民主主義がここまでやり遂げたことを、われわれは祝福したい。アメリカが113日の選挙で同様に民主主義を進め、チリの教訓から指導者たちが学ぶよう、望むばかりだ。

FT October 28, 2020

Lessons from Latin America’s fallen angel


 ブレグジットとEU

The Guardian, Sun 25 Oct 2020

Brexit was no aberration. The European Union needs to learn from it

Vernon Bogdanor

ブレグジットは例外ではない。EUが、完全な連邦制をめざすことはないだろう。

一方では、各国のアイデンティティーが強く維持されており、1988年、メルケルが述べたように、2つのヨーロッパが併存している。国民を超越するヨーロッパと、政府間の合議で進むヨーロッパだ。これら2つは緊張をともなって進み、超国家的な政策が国民のアイデンティティーを損なう場合、広範な抵抗が起きる。

独裁から誕生した新興諸国家は、主権を譲歩することに熱心だ。しかし彼らも、主権の共有には厳しい条件が付くと理解した。ドイツが債務を共有すること。ギリシャが予算を制限されること。中欧のヴィゼグラド諸国(the Czech Republic, Hungary, Poland and Slovakia)がシリア難民の割り当てを受け入れること。

ヨーロッパが必要とするのは、ヨーロッパ連邦制への強化ではなく、より機能するEUである。それにはサービス市場の競争を促し、単一デジタル市場を形成することだろう。

EUは、加盟諸国の政府間会議(欧州理事会)を維持しなければならない。欧州理事会が変化のスピードを決めるべきだ。そこにおいては、加盟国が自国の国益だけでなく、欧州大陸全体の利益を考える。

ヨーロッパの過去において、そのような視点は存在しなかった。もし1914年に各国政府が2つの視点で考察していたら、戦争を回避できたかもしれない。


 アメリカ外交の再編

The Guardian, Sun 25 Oct 2020

From climate to China, how Joe Biden is plotting America’s restoration

Simon Tisdall

PS Oct 26, 2020

Last Call for Transatlanticism

JOSCHKA FISCHER

FP OCTOBER 26, 2020

Afghanistan Is Not Doomed to Repeat Its Past

BY BARNETT R. RUBIN

FP OCTOBER 26, 2020

The U.S. Foreign Service Isn’t Suited for the 21st Century

BY PHILIP ZELIKOW

21世紀に向けてアメリカのパワーは委縮した。アメリカ人は自分たちのハード・パワーを自慢するが、政府がもっぱら支出している防衛力や諜報活動に関するパワーは、新世紀の安全保障を達成するうえで重要ではない。すなわち、新しい安全保障のテーマとは、バイオ・セキュリティー、デジタル・セキュリティー、経済・金融セキュリティー、超国家犯罪や汚職、テロに対するセキュリティー、生命圏(バイオスフェア)のセキュリティーである。

たとえ、中国、ロシア、イランの脅威に対する場合でも、アメリカのハード・パワーの主要部分は紛争の役に立たない。より重要な点は、アメリカの政策が利用できる手段、特に軍事的選択肢を中心に議論していることだ。それは資源の問題ではない。中核的な問題は、外交の目的達成を決める、国務省など、関連の諸機関を無視していることだ。

21世紀の外交サービスは、政府機関を横断するものになるだろう。国務省はそのコアを担当するが、諸機関の情報やスキルを全体として指揮することになる。そのような専門家を外部に依存するだけでなく、機関内部で養成する必要がある。

FP OCTOBER 27, 2020

Does the U.S. Nuclear Umbrella Still Protect America’s Allies?

BY IVO H. DAALDER

この数年に起きたアメリカと同盟諸国の関係悪化は、各国政府がアメリカによる核の傘を信用できるのかという懸念につながった。ヨーロッパでは、ロシアがポーランドやバルチック諸国に核攻撃で脅迫するとき、アメリカはその防衛を担うのか、不安が生じている。アジアでは、中国の軍事力が増強され、核武装した北朝鮮が長距離ミサイルを得ることで、同様の懸念が高まっている。

イランやサウジアラビアだけでなく、韓国やトルコなど、同盟諸国にも、核兵器が拡散するのを防ぐために、アメリカは核による安全保障の信頼性を再確認しなければならない。

ほとんどの人が忘れてしまっているが、50年前、核武装が拡大するのを抑える主要な国として注目されたのは、パキスタンや、北朝鮮、イランではなく、ドイツと日本だった。両国や他の同盟諸国が最終的に核保有せず、核不拡散条約に非保有国として署名したのは、アメリカが必要な場合はその核兵器を使って防衛すると確認したからだ。NATOでは、核計画グループを創設し、核武装の任務と使命を共有した。アジアでは、より制度的ではない条約の形で、明確に、アメリカ政府が核による防衛を約束した。

次期大統領は、明確かつ疑問の余地のない形で、同盟と集団安全保障がアメリカの安全保障の核心にあることを確認しなければならない。それは、言葉だけでは十分な保証にならないだろう。次の政権は、核計画プロセスを同盟諸国に開放し、核戦略、核配備、核兵器の近代化について、彼らを含めた形で検討する必要がある。それはまた、ロシアとの新START条約を延長したことで始まった、核兵器制限交渉を、核の脅威に関する同盟諸国の懸念を含めて、優先するものである。

FT October 28, 2020

US global role at stake in this election

Martin Wolf

アメリカ大統領選挙は、1932年に、フランクリン・D・ルーズベルト(FDR)が大不況の中で当選したとき以来、最も重要なものである。アメリカは特別な役割を担っているからだ。機能するリベラルな民主主義。その諸価値を共有する諸国の指導者。グローバルな課題を解決するための不可欠のプレーヤー。

もしトランプが再選されれば、アメリカ国民はこれらの役割を拒んだことを意味する。

194012月に、ルーズベルトはアメリカを「民主主義の兵器工場」とよんだ。それは第2次世界大戦に勝利する資源を供給したからだ。アメリカは軍事力を供給しただけでなく、法が支配する民主主義のモデルを提供した。1948年に始まったマーシャル・プランだ。1941年には、4つの自由を促進する、と約束した。言論の自由、信仰の自由、欠乏からの自由、恐怖からの自由だ。アメリカはその実現のために、国際機関を創設し、協力を広めた。

トランプは、こうしたアメリカの役割を拒否する。彼は、理想に生きる男ではなく、食欲・欲求を満たす男だ。法律や議会、その他、何であれ制約されることなく、彼の好む行動をする。独裁者になりたい。そして、腐敗し、悪意に満ち、能力を欠いた政権を指導し、呼吸するように多くの嘘をつく。自由で公平な選挙で負ける、という考えを拒む。

民主主義に満足するという意見は世界中で減っている。特に、若者がそうだ。トランプはこの感覚を増幅する。共和党の政治資金を供給する富裕層にとって、これは好都合だ。その見返りに、税率の引き下げ、規制の廃止が得られる。トランプは、共和党が生き残るためにファウストと契約して呼び出した魔人である。

世界は変化したが、かつて以上に、民主主義国家アメリカの指導的役割が求められる。ますます専制的な国家になる中国が台頭し、各地でカリスマ的独裁者の成功が増える世界で、われわれのグローバルな課題を解決しなければならないからだ。トランプのアメリカは、それにふさわしくない。

FT October 29, 2020

Americans are still internationalists at heart

Robert Zoellick

ドナルド・トランプの外交政策を観て、アメリカは孤立主義に回帰した、とみなすことは間違いだ。

2020年のサーベイによれば、アメリカの外交に関して、超党派の68%が、アメリカは世界情勢に積極的な役割を果たすべきだ、と答えている。冷戦期よりもわずかに高い。さらに、68%が指導力を共有することに賛成している。アメリカが独占することを好むのは24%だけだ。

アメリカ人はグローバリゼーションを支持している。3分の2がグローバリゼーションはアメリカの利益だと確信している。ほぼ4分の3が国際貿易は経済にとって良いことと考えている。82%が消費者に利益をもたらすと考え、59%が国内に雇用をもたらすと考える。

バイデンの政権移行チームは、1981年に首席補佐官となったジェームズ・ベイカーがロナルド・レーガンに与えた助言を思い出すべきだ。あなたが最初にすべきことは3つある。景気回復、景気回復、景気回復である。

FP OCTOBER 29, 2020

Threats and Border Walls Are Destroying the United States’ Biggest Strategic Advantage

BY KORI SCHAKE


 グーグルと独占禁止法

FT October 24, 2020

Google lawsuit: the opening salvo in a battle to restrain Big Tech

Richard Waters in San Francisco and Kiran Stacey and Kadhim Shubber in Washington

The Guardian, Mon 26 Oct 2020

The Guardian view on trustbusting Google: change is needed

Editorial

FT October 26, 2020

Big Tech collaborates to conquer

Rana Foroohar

ゴッドファーザーのシーンを思い出してほしい。暴力団の5大ファミリーが、地域と分野でパイを分け合う。ハイテク大企業の関係は、いつも、私にそれを想わせた。

競争が少なすぎる、という不満に対して、指導者たちはしばしば答えた。競争はある。実際、非常に激しく互いに競争している、と。しかし、司法省の主張や、議会下院の司法小委員会が提出した報告書は、彼らが個々の領域で、互いの支配的地位を維持する手助けをしている、という疑念を強く持つ。

「相互利益の生態系システムだ」と、コロンビア大学のLina Khanは言う。それは20世紀の石油、鉄鋼、鉄道の企業大富豪たちが、その利益を守るために、しばしば協力した産業トラストにそっくりだ。こうしたトラストは、1890年の反トラスト法で解体された。

Googleの規模は、「需要と供給」の両面で競争企業の参入を阻む。もはや、いかなる新しい検索エンジンの提供も、Microsoftを除いて、試みる者はいない。

解決策はいくつも指摘されている。特に、Googleの創設者たちがそれを考えていた。鉄道や通信の独占が最終的にそうなったように、公共企業として規制するというものだ。


 パンデミックと中国の優位

FT October 24, 2020

How to prevent the next pandemic

FT October 26, 2020

China’s Covid triumphalism could be premature

Gideon Rachman

FP OCTOBER 29, 2020

China Has the V-Shaped Recovery of Which Trump Can Only Dream

BY YUKON HUANG

FT October 30, 2020

Policymakers can learn from industry’s resilience


 アメリカ最高裁の危機

NYT Oct. 25, 2020

We Were Clerks at the Supreme Court. Its Legitimacy Is Now in Question.

By Jamie Crooks and Samir Deger-Sen

われわれはバレットAmy Coney Barrett判事を上院が承認しない、あるいは、指名を大統領選挙の後まで行わないように求める。選挙の進行中に承認を急ぐことは、最高裁の正当性を脅かすものだ。

われわれはレーガン大統領が指名した保守派の判事Anthony Kennedyに仕えた。彼はわれわれ2人に最初に尋ねた。それは法理論ではなかった。「われわれはどのように行動するべきか?」 彼がわれわれの法律に関する細かい知識よりも、裁判所の外で、最高裁がどのように認識されているかの方に関心があると知って、最初は戸惑った。

しかし1年を経て感謝した。彼は、しばしば見逃されている真実を理解していた。裁判所の影響力は、それが正当と認識されている限りにおいてだけ、存在する、ということだ。アレクサンダー・ハミルトンが述べたように、裁判官は「剣にも、財布にも」何の影響も及ぼさない。もし裁判所が人びとに従うよう求めるとしたら、それは「力でも意志でもなく」、その判断だけによる。言い換えれば、最高裁の意思表明は、もし大衆がそれを法律とみなさなければ、死文になる。

今、バレットの承認を急いだ共和党は、最高裁の判事の構成を、最悪の政治的産物に変えた。その戦略は近視眼的であり、究極的には、自己破壊的なものである。

数年後に、子供たちがわれわれに尋ねることが心配だ。「最高裁はどのように動いているの?」 と。その答えは、どの政治家が最高裁に人を送ったか、を示すものとなり、裁判所の判決の理由を説明することではないだろう。

PS Oct 26, 2020

America’s Tarnished Supreme Court

CHRIS PATTEN

FT October 27, 2020

How the new justice’s ‘originalism’ could reshape the US Supreme Court

Michael Rips

PS Oct 27, 2020

Trump Packs the Court His Way

ELIZABETH DREW

NYT Oct. 27, 2020

HOW TO FIX THE SUPREME COURT

NYT Oct. 28, 2020

The Supreme Court Should Not Muck Around in State Election Laws

By Akhil Reed Amar, Vikram David Amar and Neal Kumar Katyal


 インドの独裁化

The Guardian, Mon 26 Oct 2020

As India drifts into autocracy, nonviolent protest is the most powerful resistance

Amartya Sen

哲学者のカントは、すべてのことに自分の理性を働かせる自由は、何よりも重要である、と主張した。残念ながら、カントはまた注意した。議論する機会はしばしば社会によって制約され、ときには、非常に厳しく制約される、と。

現在、世界を混乱させる事実とは、多くの国で権威主義的な傾向が現れていることだ。アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカ、アメリカ国内でもそうだ。この不幸なバスケットに、私の母国であるインドも含めねばならないことを恐れている。


 中東の覇権と代理戦争

FT October 27, 2020

Nagorno-Karabakh conflict is heading to the point of no return

Carey Cavanaugh

FT October 29, 2020

Putin tests Erdogan’s over-reach

David Gardner

トルコ大統領、エルドアンRecep Tayyip Erdoganの闘いには終わりがない。

マクロンと闘い、トランプと闘い、プーチンとは双方の兵士に多くの死者を出した。エルドアンの過剰な拡大策と脆弱さは、必ずいつか試される。経済と通貨にも問題を抱えている。

FT October 26, 2020

UAE vs Turkey: the regional rivalries pitting MBZ against Erdogan

Andrew England in London, Laura Pitel in Ankara and Simeon Kerr in Dubai


 財政拡大策への転換

FT October 26, 2020

What the shift on austerity means for markets

Mohamed El-Erian

IMF・世銀の年次総会が示したように、財政緊縮に関する思考は逆転した。世界はCOVID-19によるパンデミックの衝撃を吸収することに合意している。2008年の世界金融危機とは逆に、政府は赤字を奨励されている。

金融市場はこれを良いニュースとして受け止めている。中央銀行が流動性を供給し、極端に金利を下げて、同時に、政府債券から社債まで、購入しているからだ。投資家のリスク分散や警戒心は失われる。COVID-19による企業倒産の急増は免れた。

しかし、金融市場への金融・財政支援には選別が必要だ。われわれがCOVID-19と共存することを学ぶ中で、全般的な支援策から、選択的な支援に代わるだろう。企業より人を救済し、ダメージが永続する部門ではなく、活力を示す部門に集中する。家計の支援は部分的になる。

株式や債券は選択が始まる。政府の財政に関しても、資金の利用は市場によって選択されるだろう。成長や外貨準備が問い直される、デフォルトの懸念が再現する。問題は、秩序ある債務のリスケジューリングができるかどうかだ。

成長への道が見えるときに、政府も中央銀行も債券を減らすことができれば幸いだ。しかし、そのためにはグローバルな景気回復が必要であり、倒産を延期し、債務のリスケジューリングを進めるだけでは不十分である。

FT October 28, 2020

Spend, spend, spend raises global debt to precarious levels

Dambisa Moyo

PS Oct 28, 2020

Kenneth Rogoff

Says More…

株価と実体経済とが乖離しているのは、COVID-19の影響が上場企業より零細企業に対して強いからだ。これほどのショックに対して、政府が財政赤字を増やして吸収するのは正しい。特に、ゼロ金利状態である。

しかし、それが「フリーランチ」であると思うのは間違いだ。インフレで調整した後の金利水準が重要だが、連銀はそれを管理していない。必要なことは、反トラスト法の適用、競争の回復である。


 中国の指導的役割

PS Oct 26, 2020

China Leads Again

STEPHEN S. ROACH

ウイルスを完全に制圧できなければ、人びとは長く不安と慎重さを拭い去れない。アメリカの回復は遅く、中国は早いだろう。

FT October 28, 2020

China races ahead in electric vehicles

James Kynge

人びとが新技術の普及に対して、非合理的な熱狂ではなく、新時代を革新するのはいつだろうか? イギリスは1840年代の鉄道に、また2000年代に入って初期にITバブルに、投資した。

現在、中国で起きている電気自動車に対する株価ブームをどう見るべきか? 株価上昇は投資をさらに集め、サプライ・チェーンを拡大して、中国の電気自動車が世界市場を席巻する。

PS Oct 28, 2020

The False Dichotomy of Autocracy and Democracy

YUEN YUEN ANG

FT October 29, 2020

The march of Ant is a Chinese success story

ニューヨーク証券取引所で、ジャック・マーは6年前、Alibabaで世界最大の株式公開を行った。その地位は、サウジアラビアのAramco上場で奪われたが、香港・上海市場におけるAnt Groupの上場で再びその地位を取り戻すだろう。

マーは中国の金融サービス産業を革新した。数十億の顧客と小企業の取引、支払い、融資、投資の在り方がAlipayのアプリで変化する。

それは中国のグローバルな覇権競争を加速する。トランプが貿易や技術で制裁しても、ウォール街からは中国に資本が流入している。他方で、監視・規制当局はデジタル金融ビジネスを厳重に警戒している。

消費者データの管理、マネー・ロンダリング、その他、金融のルールを習得することが課題だ。


 バイデンの経済政策

PS Oct 26, 2020

Biden’s Economic Edge

JEFFREY FRANKEL

共和党大統領の方が、民主党の大統領より、経済パフォーマンスが良い、というのは間違いだ。トランプ政権の経済成果も、オバマの遺産が大きい。

トランプは、バイデンが左派の急進的な政策を採用した、と言うが、それは間違いだ。バイデンは穏健派であり、急進的改革を拒んだ。他方、トランプには選挙公約がない。

2016年のトランプの公約は、オバマケアの解体・拡大、企業の利潤を増やす大型減税、すべての人の生活を悪化させる米中貿易戦争、であった。

対照的にバイデンの目標は、経済的繁栄を取り戻し、すべてのアメリカ人にシェアできるものにすることだ。取り残された過程を支援し、環境問題で改革を前進させる。激しい論争より、プラグマティックに政策を実現する。

まず、専門家の意見を受けたウイルス対策だ。追加の政府支出。インフラ、研究開発、教育などへのインフラ投資。オバマケアの実績をさらに拡大する。財源として累進課税を採用し、賃金の控除額は引き上げる。

環境保護の目標達成と、アメリカの世界における役割を回復する。それらは戦後の民主党大統領が示す傾向を継承し、成長にも効果的だろう。

NYT Oct. 28, 2020

Say Yes to Progressive Taxation

By The Editorial Board

FT October 29, 2020

Bidenomics: can Democrats deliver on their new leftwing agenda?

James Politi in Washington

PS Oct 29, 2020

Three Global Steps to a Biden Climate Initiative

SHANG-JIN WEI

NYT Oct. 29, 2020

Trump Killed the Pax Americana

Paul Krugman

ドナルド・トランプがホワイトハウスから退けば、アメリカの政治に文明的な理性と協調の精神が戻っている。私たちはそう夢見るが、もちろん、それは幼稚な幻だ。

もしバイデンと民主党が大勝すれば、トランプの政策を逆転させるだろう。環境保護と社会保障は強化される。富裕層への課税も行われる。

しかし、トランプが負の遺産として、最も重要な問題は国際情勢にある。アメリカは70年間も特別な役割を担ったが、トランプがそれを破壊し、われわれにも回復できる見込みはない。

それは超大国が示す新しい形の覇権であった。

アメリカ政府の行動は決して聖者のようではなかった。各地の独裁者を支援し、イランからチリまで、民主主義を転覆した。あたかも我々の唯一の目的は多国籍企業にとって安全な世界を創ることだけのように見えた。

しかし、われわれは野蛮な略奪者、自分たちの利益のために他国で海賊行為に走ったのではなかった。敗戦国の再建のためにマーシャル・プランを開始した。ルールに依拠した国際貿易システムを樹立した。そして、そのルールに従った。通商問題、その他の対立はあっても、西ドイツや韓国が侵略されたとき、その防衛をアメリカが迷うことはなかった。

トランプは、すべてを変えた。カナダからのアルミニウム輸入を国家安全保障への脅威と主張し、NATOにおける防衛予算が少ないという理由で、ヨーロッパ諸国を防衛しないと示唆した。長期にわたる民主的な同盟諸国より、民主主義を事実上解体したハンガリーや、指導者が反対派の殺害を命じるようなサウジアラビアとの方が、友好的である。

そして、トランプが敗退し、バイデン政権になっても、オムレツを卵に戻すことはできない。

アメリカに対する信頼の消滅には、すべてを壊すような腐食効果がある。アメリカが保護主義に走ったことで、他国は報復するより、自分たちも保護主義に頼るだろう。アメリカがルールを無視したことで、他国も無視し、大国は周辺の小国に対する経済的、軍事的な嫌がらせをするだろう。どこでも、名目的な民主的選挙の中身は、露骨な不正選挙になるだろう。

世界は、より危険で、公平でない場所になる。


 トランプはどこまで破壊するか

PS Oct 26, 2020

Trump’s Last Stand for Apartheid America

JEFFREY D. SACHS

2020年の大統領選挙は、トランプという人間だけでなく、彼が代表する問題、アメリカが何世紀にもわたって維持してきた人種差別的な権力構造を問うものだ。

アメリカには、国家の支援する人種差別の長い歴史がある。それは若い世代において消滅しつつあるが、トランプはその消滅を逆転させる強烈な反動である。白人ナショナリズムを誇るトランプは、アメリカの評価を内外で損なった。

著書The Color of LawRichard Rothsteinが示したように、連邦・州・地方政府は、白人の自警団と協力して、アメリカ中にアフリカ系アメリカ人のゲットーを建設し、白人の郊外住宅地の隔離を進めた。

2016年、中西部の白人労働者層の票がトランプ支持に流れた。彼らは伝統的に民主党の支持基盤であったが、自動車や通商で仕事を失っていたからだ。移民やマイノリティーが彼らの仕事と住宅を奪っている、とトランプは挑発した。そして、製造業の雇用を中国から奪い返してやる、と約束した。

それらの約束は果たされていない。COVID-19の対策は取られず、医療問題が注目を集め、さらに、バイデンが環境に関連するインフラ投資で雇用を増やす、という言葉に期待する。トランプのメッセージは、もはや多くの有権者に届かないだろう。

選挙後の事態悪化をトランプは脅すが、バイデンの勝利はますます起きそうだ。トランプは、もし負けたら国を出るかもしれない、と言う。その前に、これまでの脱税や金融詐欺の清算を求められるだろう。

The Guardian, Tue 27 Oct 2020

The Guardian view on the 2020 US elections

FT October 27, 2020

Donald Trump’s path to victory runs through Pennsylvania

Demetri Sevastopulo in Washington

FT October 28, 2020

Corporate America is breaking with Donald Trump

Andrew Edgecliffe-Johnson

NYT Oct. 28, 2020

How Far Might Trump Go?

By Thomas B. Edsall

投票日の夜、そして数日間は、この国がジェットコースターに乗って、上昇し、下降し、期待を高め、あるいは損ない、怒りと挫折感を増幅する。

オハイオ州立大学のEdward B. Foley教授は2019年に論考を書いた。 “Preparing for a Disputed Presidential Election: An Exercise in Election Risk Assessment and Management.”

投票数で負けても権力の平和的移譲を認めないとき、共和党はトランプを支持するのか? 

投票日の夜にペンシルベニア州で勝利宣言したトランプは、開票が進むにつれてバイデンの票が増えるのを観て、「われわれの勝利を取り戻せ!」とツイートする。

Barton GellmanThe Atlanticに載せた長いエッセー“The Election That Could Break America”は、その続きを示す。就任式に向けた、郵便投票に反対する聖戦だ。

FT October 29, 2020

If Biden wins, what’s next for Trump — and Trumpism?

Simon Kuper

PS Oct 29, 2020

The Economic Incompetence of Republican Presidents

J. BRADFORD DELONG

PS Oct 29, 2020

Trump’s Election Gift to China?

MINXIN PEI

トランプ大統領が中国に与えたすばらしい贈り物は2つある。1つは、コロナウイルス危機で破滅的な無能さを示した。もう1つは、伝統的な同盟諸国をアメリカから離反させた。もうすぐ、3つ目のすばらしい贈り物が届くだろう。それは、民主的な選挙がどれほどひどく国を崩壊させるか、ということだ。


 EUの再構築

VOX October 26 2020

Reforming the EU fiscal framework: Now is the time

Niels Thygesen, Roel Beetsma, Massimo Bordignon, Xavier Debrun, Mateusz Szczurek, Martin Larch, Matthias Busse, Mateja Gabrijelcic, Eloïse Orseau, Stefano Santacroce

安定・成長協定the Stability and Growth PactSGPの改正を求める。

コロナウイルス危機で、EU諸国は大幅な赤字に直面し、その中長期的な再建をどのように進めるべきか。SGPが、財政赤字を制限したことで、逆に成長を損ない、赤字を増やしたことを反省して、その改正が求められている。

FT October 27, 2020

ECB: the EU needs a regional ‘bad bank’

Andrea Enria

FT October 27, 2020

Germany needs to step up to Europe’s defence

Constanze Stelzenmüller

トランプは、ドイツにとって最悪の事件だった。ロシアの侵攻、中国の支配圏拡大、東地中海におけるトルコとの衝突よりひどい。

しかし、トランプ個人ではなく、超党派のアメリカ政治が、ドイツとの基本的な姿勢で対立している。ドイツの黒字、イランとの核合意、中国との関係、ロシアとつなぐパイプラインthe Nord Stream 2、防衛予算額。

トランプ再選は一気に問題を悪化させるが、バイデンでも、ドイツの姿勢は修正を迫られる。アメリカと対立したくない。しかし、アメリカとの違いは明らかだ。


 貧困の撲滅史

VOX 26 October 2020

A (very) short history of the idea of ending poverty

Martin Ravallion

貧困を終わらせる、という目標は、善意の象徴でしかない場合が多い。単に、貧しい人々に同情を示すだけである。特に何もしないが、政府や国際機関は貧困層を支援するつもりだ、と表明する。それは「シンボリックな目標」である。経済成長があるときだけ、政治は実質的な行動をともなう。


 ソニーと日本

FT October 28, 2020

Sony’s new PlayStation is making Japan cross

Leo Lewis


 ロシア政治

PS Oct 28, 2020

How YouTube Brought Politics Back to Russia

EKATERINA KOTRIKADZE

PS Oct 28, 2020

Has Putin Lost His Mojo?

NINA L. KHRUSHCHEVA

NYT Oct. 29, 2020

So, Russia, You Want to Mess With Our Voting Machines?

By Tim Wu


 大都市に逆らう市長たち

FT October 29, 2020

Battle of the mayors and the metropolis

Sebastian Payne


 グローバリゼーションの再編

PS Oct 29, 2020

Globalization Needs Rebuilding, Not Just Repair

JEAN PISANI-FERRY

トランプが敗北した場合、次期政権は国際システムの何を回復するのだろうか? まず問題を知るべきだ。

1に、気候変動の抑制など、グローバル公共財に関して、共通の枠組みを得ることだ。第2次世界大戦後の国際秩序は、冷戦の影響もあり、経済問題に偏っていた。

2に、グローバル経済を、できる限り、米中対立から切り離しておくことだ。緊密な市場統合の中で進む米中対立を、冷戦にたとえるのは間違っている。

3に、グローバリゼーションに関する不満や不安に答えて、市民、労働者の保障を充実させることだ。教育・訓練の充実、再分配、そして市場開放を維持しながら各国の政策余地を確保しなければならない。


 中央銀行のデジタル貨幣

VOX 29 October 2020

CBDC architectures, the financial system, and the central bank of the future

Raphael Auer, Rainer Böhme

世界の主要な中央銀行がデジタル貨幣を導入するとき、その銀行システムやグローバルな金融市場の構造はどうなるのか。かつて中央銀行の依拠した商業銀行間の決済システムに代わるものが必要だ。民間部門と協力した、データの管理と安全保障、犯罪行為の監視が重要である。


 石油時代の終わり

FP OCTOBER 29, 2020

The End of Oil Supremacy

BY EDOARDO CAMPANELLA

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The Economist October 10th 2020

On the march

Nagorno-Karabakh: No one in charge

American democracy: Don’t rob them, count them

War over Taiwan: Straight shooting

Lexington: The battle in miniature

Special report: The peril and the promise

The future of finance: The digital surge

Free exchange: Beggars banquet

(コメント) Ant Groupというのを知りませんでした。アリババから分かれてネットの金融ビジネスを革新した。その規模は主要な銀行を集めてもかなわない。なるほど、これか。菅政権がデジタル庁でめざす「構造改革」というのは。

アメリカの民主主義と、中国の台湾侵攻と。日本にとってはどちらも死活的な問題です。そして、ゼロ金利の世界では、財政赤字を拡大しなければ、コロナ不況を回避する金融の超緩和状態は、通貨の切り下げ競争と保護主義にいたった1930年代のシナリオだ、という記事に注目しました。

なぜ菅政権は、デジタル金融革命や市場改革を指導したい、と、直接に有権者を説得しないのか。その社会的なインパクトが大きいほど、素直に学術会議の人事問題を訂正しても、むしろ支持されるでしょう。

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IPEの想像力 11/2/20

自分には、大阪人の心も、アメリカ人の心も、正しく理解できていないのだ、と思いました。

大阪都構想の住民投票と、アメリカ大統領選挙を観て、これほどの接戦であることに驚いたからです。大阪都構想は敗れ、もしかするとトランプが勝利するのでしょうか?

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アメリカ大統領選挙の投票日です。NYTで動画を観ました。‘It’s Like You Want to Stop People From Voting’: How U.S. Elections Look AbroadBy Chai Dingari, Brendan Miller, Adam Westbrook and Emily Holzknecht

Gerrymanderingを実際に選挙区で見ると、その異常さに唖然とします。

7時間4512秒。これは制限時間ぎりぎりでフルマラソンを完走した、という話ではなく、ある黒人の若者が投票するのにかかった時間です。

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ブレグジットとその後の政治について、強硬派を「例外主義」と「ショック療法」に観た。それはトランプを支持した労働者層や、大阪都構想を支持した住民にも言えると思う。特に、大阪維新の会、だ。

東京政府に対抗する。地方分権への渇望。橋下の強権的手法。ショック療法。

旧政党・政治家への不満、批判。政治的無関心。刺激、暴言、覚醒。

自民党への不満。革新政党の不振・不調。

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“ダイナーズ”で聞くアメリカの本音。

アメリカ人の失業、生活不安、貧困に驚きました。そして、・・・食べ過ぎじゃないの? と。

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デマの攻撃と反撃。論争より攻撃。

信頼できる情報や真実が失われた。

「二重行政」が問題なのか? 都構想は何を実現するのか? 大阪市が亡くなる、という宣伝は重要か? カジノ、万博は効果的な政策か?

大阪の南北問題、貧困問題に向き合わない。

箱だけ作っても客は来ない。社会の平和(調和)と繁栄とを実現する道筋を議論する力が足りなかった。だれにガバナンスの再構築を説く力はあるか? だれが支持するのか?

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大阪も、アメリカも、イデオロギーを選び、ナラティブ(物語)を選び、人を選ぶ。もともとそういうものなのだ、と思いました。

政治は、その言葉を選び、政治ゲームの質や、変化に対する信用できる(自分たちの利益を代表し、実現できる)手腕を持つ人間を求めている。だからこそ、その人物の強烈な経歴とそこにあるエピソード、それを有権者に示す雄弁さが勝敗を決めるのです。

大阪の人たちは、トランプや習近平、Facebookのリブラや、Ant Financeに対抗できる人物、その構想と熱量を見つけたのだろうか? どうも、それはない・・・な。

これほどバラバラな、苦しみや不満、夢や野心を持った人たちに、政治が一体感を示すのは、一種の革命運動や戦場のような選挙戦に参加し、お祭りのように歌ったり、騒いだりする情念の絆ができるからか、とも思います。しかし共感が、教会や野球場、ボーリングで育つこともなく、新聞やテレビがその形成を促すこともなくなって、インターネットやSNSに粉砕された時代を、政治は生き残れない。

アメリカが変わった。

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