IPEの果樹園2020

今週のReview

10/26-31

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もう少し言うと ・・・ブレグジットの政治支配 ・・・Amazon, Google, 司法省 ・・・US大統領選挙 ・・・トランプの政治アリーナ ・・・コロナウイルスと医療・社会 ・・・金融政策のルール ・・・安全保障の同盟再編 ・・・ノビチョ−ク列島 ・・・気候変動に生きる ・・・デジタル通貨の挑戦 ・・・ドイツへの難民と統合化 ・・・財政緊縮の退場 ・・・バイデンの政策ミックス ・・・菅・安倍のミックス ・・・国家のエゴと世界戦略 ・・・チリの新憲法制定

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 もう少し言うと

PS Oct 6, 2020

Nouriel Roubini

Says More…

連銀のパウエル議長は、少なくとも2023年まで金利をゼロ近辺にとどめる、と発表した。これはドル安リスクを高めないか? トランプが再選されて、ますます「覇権を失う」場合、何が起きるだろうか?

短期的には、アメリカの新しい金融緩和、財政赤字、COVID-19の感染拡大、回復の弱さが重要だ。しかし、長期的には、ドルに代わるものがない。人民元は、中国が大幅な金融改革を実行しない限り、その資格がない。

大規模なかく乱が起きるリスクを、金融市場は正しく評価していない。米中冷戦は、アメリカの次々に示す攻撃を、しだいに、中国が反撃する局面に入っている。戦略的な封じ込めに至るのか、あるいは、対抗関係を管理できるのか、それだけが問題である。台湾海峡などで、軍事衝突が起きるリスクも高い。

昨年、合意なしブレグジットの可能性は低かったが、11カ月を経て、唯一の選択肢にあった。さまざまな問題でUKは主権を主張して合意できず、薄いFTAでもないよりはよい。しかし、強硬策はスコットランド独立も、北アイルランドの紛争再発も、深刻なコストに至る。ただし、合意なしの離脱は、混乱を恐れてイングランド銀行が金融緩和するから、むしろ落ち込みは少ないだろう。

COVID-19は、需要と供給の両面で大きな後退が起きたが、短期的には需要のショックが強く、デフレの状態が続くが、長期的には供給ショックも現れる。金融緩和や財政支援を続けると、インフレと不況という、1970年代の条件が再発するかもしれない。


 ブレグジットの政治支配

The Guardian, Fri 16 Oct 2020

Boris Johnson's tough talk on a no-deal Brexit may not be all it seems

Anand Menon

ボリス・ジョンソン首相は合意なしのブレグジットを想うほど悪くないと強気の発言をしている。しかし、EUが基本的なアプローチを変えることで合意できる、というのは真実の半分でしかない。

UKは、カナダの状態よりも良いものを望んでいる。すなわち、単位のビジネス旅行にビザを相互に免除している。イギリスは、経済取引の規模やEUとの近さから、それでも不十分だ。オーストラリアは、WTOの条件に加えて、多くの協定を結び、FTAも求めている。どちらもUKのモデルにならない。

EUは、UKが基準を引き下げないように強く求めている。関税をなくして、UKが基準を無視した補助金でUK企業に不当な優位を与えることを、EUは恐れている。魚も同様だ。

双方が妥協するしかない。

The Guardian, Sun 18 Oct 2020

Boris Johnson is dancing with danger by threatening a crash-out Brexit

Andrew Rawnsley

ジョンソンは、イギリスがオーストラリアになることに準備せよ、と言う。しかし、その意味は、南半球に引っ越して陽光あふれるクリスマスを楽しむとか、海岸でバーベキューをするわけではない。むしろ彼は、COVID-19の冬をさらに暗くするような脅迫を楽しむ。

首相の周りに集まる、最も熱狂的なブレグジット推進派の人びとは、EUとの交渉が完全に失敗することになっても、まったく気にしていない。むしろ楽しんでいる。

PS Oct 19, 2020

Boris Johnson’s Failed COVID-19 Launch

MARIANA MAZZUCATO, ANTHONY COSTELLO

The Guardian, Tue 20 Oct 2020

Why worry about no-deal Brexit? If Gove says it'll be better that's good enough for me

Marina Hyde

The Guardian, Tue 20 Oct 2020

The Guardian view on Johnson and Greater Manchester: the politics of a pandemic

Editorial

FT October 21, 2020

Will coronavirus break the UK?

Robert Shrimsley, Peter Foster, Jim Pickard, Mure Dickie, Andy Bounds and Chris Tighe

The Guardian, Thu 22 Oct 2020

The Tories have treated Manchester as callously as they did the miners

Owen Jones


 Amazon, Google, 司法省

The Guardian, Fri 16 Oct 2020

The Guardian view on Amazon's dominance: we have to make different choices

Editorial

The Guardian, Sun 18 Oct 2020

Europe and America are taking on the tech giants. Britain needs to join the fight

Will Hutton

独占資本主義、特に、データ独占資本主義に対抗するべきときが来た。COVID-19によって世界はますますオンラインで生活し、オンラインで働くようになっている。

もしバイデンが当選し、その公約を実行するなら、株主価値だけを追求するUS企業を変え、気候変動危機に対処し、労働組合の権利を強化するだろう。アメリカ経済はヨーロッパ化して、こうした改革を協調して進める。イギリスは傍観者として、この変化から取り残されるだろう。

過去10日間に、アメリカ下院調査委員会と、仏独政府の圧力を受けたEU委員会が、Apple, Google, Facebook and Amazonに挑戦し、分割する準備を始めた。US企業に対してEUが一方的にできることは限られている。ドナルド・トランプは、EUUS企業に対して影響を及ぼす野心に、激しい怒りをあらわにしてきた。

しかし、バイデン政権は、このダイナミズムを根本的に転換する。司法委員会で民主党議員が多数を占め、画期的な報告書につながった。共和党議員も、対策には署名しなかったが、その分析を受け入れた。それは数少ない超党派の合意である。

巨大ハイテク企業は、アメリカ社会に大きな利益をもたらしたが、過大な力を持ち、傲慢で、独占的になった。略奪者のように、法外な手数料を取り、価値のあるデータを抽出している。そして競争相手を追い出す。彼らの支配は、企業家精神を破壊し、アメリカ国民のオンラインにおけるプライバシーを劣化させ、自由な、多彩な新聞活動の活力を奪い去った。その結果、革新は失われ、消費者の選択肢は減り、民主主義が弱体化した。

Amazonは競争相手の企業にも、そのプラットフォームで同じアクセスを保証しているのか? Googleの検索におけるグローバルな支配は、どのような利益をもたらしているのか? 彼らは自分たちを、民主的な監視の及ばない、特別な存在と考えているのかもしれない。そういう疑問に、彼らは答えなかった。

EU委員会は抜本的な改革を提案している。プラットフォームは、隣接する事業部門を禁止される。すべての製品とサービスは、その供給元が何であれ、プラットフォームに平等なアクセスが保証される。コンピューターのシステムは相互に完全に「相互運用」を可能にする。新聞・報道関連グループは協力して、新しい法制度を運用する。それに従って、より公平な、略奪的でない条件で、ジャーナリストや広告の記事を利用できる。

こうしてアメリカとEUがデジタル資本主義の改革に進むとき、われわれは恐ろしい真実を知る。ブレグジットのイギリスはどこにも加わっていない。

PS Oct 20, 2020

How to Govern the New Digital Domain

OSCAR JONSSON, TAYLOR OWEN

急速にパワーを強めているデジタル世界の変化する現実に、ガバナンスと規制を合わせるべきだ。

Apple, Amazon, Facebook, and Alphabet (Google)の資本評価額は5兆ドルを超えた。AmazonCEOであるジェフ・ベゾスの個人資産は700億ドル以上。パンデミックの始まったときから68%も増えた。FacebookCEOであるザッカーバーグの純資産は、300億ドルから878億ドルに増えた。

権力と富が少数のデジタル大企業に集中することは、パンデミックの中で変容する各国政治、国際政治の性格を決める。彼らは課税や社会保障のコストを支払わない。グローバル・ガバナンスは、有形の世界を前提しており、その法律や規制はデジタル世界にふさわしくない。

デジタル経済における勝者と敗者は、急激に拡大する不平等、消滅する中産階級を加速する。その結果、欧米で、民主主義やメディアへの信頼を損ない、非リベラルなポピュリストに有利な政治を生み出している。

3つの分野で政策を革新するべきだ。第1に、データ・ガバナンスのバルカン化を克服する。国家中心の中国、企業中心のアメリカ、それに対して、EUのデータ保護規制は一層進んでいる。しかし、これらが対話することを促す国際制度、公共財としての情報空間を標準化し、規制する仕組みが必要だ。

2に、ガバナンスのモデルを示す。平らな競争場、スマートな規制、ギグワーカーの権利保護。

3に、分裂する社会、政治的分断を克服する「新しい社会契約」。そして、インフラ、特に教育を革新して、人口が減少した地域に新しい移動性に富む地域社会を育て、バランスを回復する。

FP OCTOBER 20, 2020

The Case Against Big Tech’s Election Strategies

BY BHASKAR CHAKRAVORTI

NYT Oct. 20, 2020

The Justice Dept.’s Lawsuit Against Google: Too Little, Too Late

By Kara Swisher

FT October 21, 2020

Google antitrust case shows the flaws in competition regulation

Jessica Melugin

FT October 22, 2020

Google case is a chance to reframe antitrust debate

FT October 22, 2020

The good, bad and ugly of soaring tech stocks

Robin Harding

NYT Oct. 22, 2020

With the Google Lawsuit, the Long Antitrust Winter Is Over

By Tim Wu

FT October 23, 2020

DoJ case puts the detente between Google and Microsoft in spotlight

Richard Waters


 US大統領選挙

FT October 16, 2020

Elect Joe Biden to save the Republican party

Christine Todd Whitman

共和党はますます過激な保守層に頼る政党になってきた。トランプは白人至上主義を刺激し、それを加速しただけだ。選挙後のトランプによる混乱があっても、バイデンを支持するべきだ。バイデンが勝利することで、包括的な保守派と大きく連携する共和党が再生する。

SPIEGEL International 16.10.2020

What If Trump Won't Go?

Europe Preparing for the Worst in Washington

By Markus Becker, Christiane Hoffmann und Peter Müller

FT October 20, 2020

US election: Facebook’s political balancing act

Hannah Murphy in San Francisco

ザッカーバーグは、「狂った考えだ」と、2016年大統領選挙後に、Facebookのフェイクニュースが選挙結果に影響した、という可能性を否定した。しかし12カ月以内に、ロシアがこの世界最大のソーシャルメディアを利用して、嘘をばら撒き、選挙キャンペーンに緊張を高めるため介入していたと判明する中で、謝罪を強いられた。

4年を経て、ザッカーバーグは、彼のプラットフォームから、間違った情報の洪水、投票の抑圧、暴力を促す書き込み、を取り除くために苦労している。その成否が、113日の後、Facebookの将来と、ハイテク産業のグローバル規制を決める。

アメリカは憲法上の危機に直面している。トランプが負けた場合、ソーシャルメディアを駆使して大規模な介入や暴力的抗議を組織するのではないか、と専門家たちは恐れている。これを防ぐ方法も動機もない。

それはFacebookのルールや優先順位の問題である。社会の安全や真実よりも、企業の拡大と利益を重視している、という非難を受ける。

過去10年間で、Facebook27億人の利用者に対して、彼らが好むニュースを選択して表示するようになった。新聞社は広告収入の減少に苦しみ、特に、地方の新聞は消滅してしまった。

Facebookは、そのプラットフォームを利用して暴力やカオス、世論のかく乱を狙う者たちを排除することに失敗した。むしろ社会の分断を強める情報を広めることで利潤を増やしている、と非難されている。

大統領選挙で民主党が勝利しても、共和党が勝利しても、Facebookは不当な介入を行った、と敗北した陣営から攻撃されるだろう。

ザッカーバーグは、長く、政治広告にファクトチェックを行うことを、「表現の自由」の原則によって反対してきたが、その立場を逆転させた。その正しいやり方は見出されていない。すでにFacebookを拠点として、暴力的な兵と集団や武装したマリッシャが増殖している。

2017年、国連はロヒンギャの弾圧についてFacebookが「決定的な役割」を果たしたと告発した。2018年、スリランカで起きた反イスラムの暴動に関して、ヘイトスピーチの拡散を防げなかった、とFacebookは謝罪した。トランプを支持する、陰謀論の拡散集団であるQAnonの拡大は何よりも危険な予兆である。Facebookの推奨機能は、QAnonが無名の存在から数百万人の会員を獲得するのを助けた。

「民主主義はFacebookによって死滅するのか」と問われている。大統領選挙に関して、政治広告だけでなく、すべてのプラットフォームを遮断するべきだ、という意見もある。そのビジネスが急拡大したことで、皆がその代償を支払うのに、Facebookは四半期に50億ドルの利潤を得ている。

FT October 21, 2020

US Republicans must make peace with the state

Janan Ganesh

PS Oct 21, 2020

Is the Long-Awaited Constitutional Crisis at Hand?

ERIC POSNER

アメリカは「憲法システムの危機」に向かっているのか。トランプ大統領による数々の規範破り、特に、ロシアによる選挙介入に関してミューラー特別検察官を解任したこと、ジャーナリストや判事を非難すること、政治的反対派に対して検察捜査を求めることが、こうした危機を懸念させる。

憲法が定める諸制度の崩壊は始まっていない。しかし、危機は起きるだろう。それは、たとえトランプが敗北しても、危機は生じうる。アメリカ史において、裁判所と、人民に究極の権力を与える民主主義のシステムとの間に、緊張関係が存在するからだ。

2つの憲法システムの危機があった。どちらも、最高裁と、人民が支持する政府との間で起きた。第1のケースは、1857年のDred Scott v. Sandford裁判である。悪名高い判決で、最高裁はアフリカ系アメリカ人をアメリカ市民ではないと主張し、奴隷州と自由州とに分割する1820年のミズーリの妥協を憲法違反とした。それは北部と南部の対立を再燃させて、南北戦争に導いた。

2のケースは、1930年代に起きた。最高裁は、ニューディールの諸法令を大不況の非常事態に対処するものとみなして破棄した。1937年、F.D.ルーズベルトが圧倒的な支持を受けて勝利した後、ニューディールを支持する判事で最高裁を固める法律を提案した。法案は成立しなかったが、最高裁は立場を変えた。

現在のような政治的混乱が深まる中で、危機は以前のような対立を再現するだろう。すなわち、右派が最高裁を支配し、他方で、世論の支持を失うということだ。1980年代以来、保守派の判決が全国の経済規制を制約した。すなわち、銃を所持する個人の権利を認め、宗教の権利を強化し、政治献金に関する規制を翻し、人種的マイノリティに対する保護を弱め、妊娠中絶の権利を掘り崩した。

左派の不満は高まっていたが、近年、それは頂点に達していた。第1に、進歩的な議員が20年前に成立させたthe Affordable Care ActACA)「オバマケア」を、最高裁はかろうじて認めたが、下級の裁判所が脅かしてきた。最高裁はACAについてさらに反対する姿勢を強めるかもしれない。第2に、最高裁判事の指名に関して、2016年、大統領選挙が近いことを理由に、オバマ大統領の判事指名を拒んだ共和党が、選挙まで1カ月もないのに、トランプの指名したバレットの公聴会を一気に進めている。

最高裁の保守化と共和党への不信により、民主党側も「最高裁を包囲する」強硬策を取るかもしれない。バイデンは、この考え方を否定していない。すなわち、最高裁判事の数を9人から13人に増やし、リベラルの改革案を支持する判事を新しく指名して、バランスを回復するというものだ。

国民の強い支持を得ていたルーズベルトでさえ、包囲案を撤回した。バイデンは、左派の支持を失うことを恐れている。しかし、包囲案では民主党穏健派の支持を失い、政治的分断と最高裁への国民の不信を増す。他方、包囲案を拒めば、バイデンは政治力を失うかもしれない。

バレット新判事が最高裁を保守化することは、「憲法システムの危機」につながる。

The Guardian, Thu 22 Oct 2020

Is capital finally losing faith in Trump?

Adam Tooze

ドナルド・トランプの支持基盤は、白人男性、地方の小さな村の住民、零細企業主である。選挙資金は富裕層の支持者が出した。この支持基盤は、トランプが何を言っても、何をしても、変化しない。

しかし、もう1つの支持層があると思うだろう。大企業、金融市場、商工会議所。言い換えるなら、「キャピタル」だ。だがその立場は明確でない。下院選挙で商工会議所が民主党候補を支持したことは、トランプの憤慨を招いた。

共和党のビジネスに友好的な政党である。トランプ政権には富裕層、CEO、ロビイストが集まっていた。そして減税と規制緩和を実現した。IRS国税局や環境保護局は抜け殻である。労働者の権利、環境保護、ビジネスの規制は、裁判で弱められた。

もしアメリカ経済が好調で、民主党候補がウォレンやサンダースであれば、ビジネス界はトランプを支持しただろう。しかし、民主党は中道派のバイデンを大統領候補にした。バイデンが上院議員となったデラウェア州は、経済の金融化が進む中、西側世界で最大のタックスヘイブンの1つである。

2016年、トランプは商工会議所の公認を取り付けるのに失敗した。保護主義を掲げ、移民に反対し、連銀議長を公然と攻撃する共和党員を支持することはできないからだ。

しかし、勝利したトランプは、株価の上昇が続き、減税と規制緩和をもたらした。ただし、戦略的な問題では裏切られた。通商政策、対中政策、連銀議長への攻撃、移民問題。

大企業にとって、その立場は明白だった。トランプは脅威である。退場するべきだ。なぜそう言わないのか? 左派の脅威を理由に上げるのはナンセンスだ。脅威は右翼から生じている。反グローバリゼーション、共和主義革命、サラ・ペイリン、ティー・パーティ、バノンとブレイトバート(オルタナ右翼)、今ではQAnonも。

共和党は、大企業とナショナリズム、ポピュリズム、排外主義の間の連携に依拠したが、その亀裂は明らかだ。2020年の違いは、共和党の過激化を促す人物がホワイトハウスにいることだ。

アメリカは大統領選挙で危機の淵にある。最大の危機は、選挙結果が紛糾することだ。また、バイデンが勝利しても、共和党が上院で多数を支配するかもしれない。

3の危機は、オバマが再選されたときのように、議会で多数を占める民主党が明確な改革を支持しないことだ。

FT October 22, 2020

The case for re-electing Donald Trump

Edward Luce

もしドナルド・トランプの再選を支持する理由を探すなら、それは外交政策の成果である。トランプは約束を守った、というだろう。新しい戦争を始めなかった。アフガニスタンと中東から米軍を引き上げた。アメリカの同盟諸国が、アメリカ抜きに、安全保障を負担するよう強いた。中国との対決を明確にした。

NATOの約束に従って、モンテネグロが攻撃されたらアメリカも戦争に参加するのか? アフガニスタンから米軍を引き上げても、ヒトラーへの宥和政策と同じではない。メルケルが防衛の負担を増やすのは、トランプが暴言を吐いたからだ。

こうしたトランプの言動は、ワシントンの外交専門家たちが憤慨しても、アメリカ中西部の有権者と共感するものだった。


 トランプの政治アリーナ

NYT Oct. 16, 2020

THE RADICALIZER IN CHIEF

BY JESSE WEGMAN

テロ、陰謀、武器の違法所持で、13人の男たちが逮捕された。そのうち6人は、ミシガン州知事のGretchen Whitmerを誘拐する計画を立てていた。彼女は、パンデミックの初期に都市をシャットダウンした他の知事たちと同様に、憤慨を買ったのだ。

その決断は多くの人の命を救ったはずだ。しかし、逮捕された男たちは、他のシャットダウン反対同盟の人々とともに州都に集まって、彼女を独裁者とよんでいた。

抗議が拡大する中で、トランプ大統領は、コロナウイルスの感染が拡大する困難の状況で苦労する知事たちを支援するより、「ミシガンを解放せよ!」とツイートした。彼のツイートは、民主党知事の各州を、憲法修正第2条の「占領下」という条件にあると想像させた。あたかもトランプは、彼が反政府暴動を指導する先頭に立つ、とみなしたのだ。

逮捕事件の後、Whitmer知事は語った。「ヘイト集団は、トランプの言葉を非難ではなく、彼らを声援するものとみなした。行動への呼びかけである、と。」

その後もトランプは、暴力的な煽動を非難することを拒んだ。そして、Whitmerは「ミシガンの独裁者になりたいのだ。民衆はそれに立ちふさがった。」と述べた。

大統領は、ホワイトハウスから国民に規範を示す立場にある。大統領が、身体障碍者をからかうのはOKだ、人種差別も、女性蔑視もOKだ、と言えば、それらは社会に蔓延するだろう。こうした事件が起きるのは当然だ。

トランプは敵を侮辱するでなく、邪悪な存在として、人間ではないと主張する。彼の攻撃は、そのような人びとを暴力の標的にする。

20158月、トランプは大統領の会見でメキシコ移民を「強姦魔」とよんで2カ月もたたないとき、2人のボストンの男たちがホームレスを金属棒で殴打し、小便をかけた。警察官によれば、「ドナルド・トランプは正しい」と彼らは言った。「非合法移民はすべて国外追放にするべきだ。」

NYT Oct. 16, 2020

WHY THEY LOVED HIM

BY FARAH STOCKMAN

NYT Oct. 16, 2020

THE FOREIGN POLICY THAT WASN’T

BY SERGE SCHMEMANN

NYT Oct. 16, 2020

Trump, or the Last Stand of White America

By Roger Cohen

選挙まで20日を切った。それは長い、困難な道だった。メキシコ国境で苦しむ、恐怖に満ちた移民たちの顔を観た。シャーロットビルで「ユダヤ人たちがわれわれの地位を奪うことは許さない」と叫ぶ、白人至上主義者たちの憎しみに満ちた顔を観た。

ドナルド・トランプは、「地位を奪われる者たちの恐怖」を表している。「大交代」とよぶべき何かだ。非白人に対抗して立ち向かう最後の白人である、と言いたくなる。

そのためには何でも許される。嘘、野蛮さ、煽動。しかし、恐怖こそトランプの主要な兵器である。ある集団と他の集団とを敵対させる。それはトランプ政権の流通貨幣である。ベトナム戦争以来、アメリカが最も分断されているのも不思議ではない。

変化を恐れる気持ちが、大交代の陰謀論を支えている。フランスの作家、Renaud Camusは、不気味にも、「代替による虐殺」を警告している。フランスやヨーロッパの白人支配体制が、コスモポリタンなエリートたちの計画の中で、イスラム教徒によって代替される。トランプの場合は、白人のアメリカ人による支配体制が、メキシコ人の強姦魔や黒人の略奪者によって代替される。

アメリカ人が特に恐怖に襲われるのは、世界が急速に変化して混乱しているからだ。権力はアジアに移った。アメリカは最近の戦争に勝利できなかった。ヒスパニックを除くと、世紀半ばに白人が半数を下回る。

ケンタッキーの炭鉱のように、製造業も消滅した。トランプは、自分が誰を代弁しているか理解している。壁を築いて有色人たちを外に追放する。

アメリカは決めねばならない。未来に向かうのか、自己破滅的な過去の幻想を守るのか。

PS Oct 22, 2020

Divided We Stand

MARK W. MOFFETT


 コロナウイルスと医療・社会

FT October 16, 2020

Sweden: why the ‘moral superpower’ dissented over Covid-19

Richard Milne, Nordic and Baltic Correspondent

グローバルな危機は、スウェーデンを除く、ほぼすべての諸国が一致した対策を採った。スカンジナビア人の国が単独に行動したことは、なぜ群衆から孤立するのか、国際的にメディアの関心を集めた。

2015年の移民危機においても、スウェーデンはその規模に比べて、他のヨーロッパ諸国を超える多くの移民を受け入れた。「スウェーデン例外主義」が信じられている。

その理由として、小国であっても、スウェーデンは「モラル超大国」という自負がある。他のヨーロッパ諸国が政治的打算や感情によって行動するときでも、スウェーデンは合理的に行動する。その地位は、長く永世中立国であったことと関係がある。

スウェーデンの目標は、ウイルスを制圧することではなく、医療システムを国民すべてに保証することであった。「スウェーデンは、すべての者に最善の社会を設計することに関して、集団として、強い自信を持っている。政治家も市民も、自国政府の権威を深く信じている。」

2014年、2015年の移民危機でも、スウェーデンは他の諸国と違い、国境を閉鎖しなかった。それは中道右派の政権が選択し、その後の選挙で、中道左派の政権に代わったが、維持された。スウェーデンの戦略を「自由を愛する」右派の人びとが称賛した。しかし、スウェーデンでは、そのような党派的支持はない。

今、スウェーデンの政策は次第に変化して、地域ごとの公共交通の停止も考慮している。スウェーデンは合理的で、プラグマティックに、事態の変化に対して柔軟に合わせる。

NYT Oct. 19, 2020

What Fans of ‘Herd Immunity’ Don’t Tell You

By John M. Barry

人びとは、自分が聞きたいことしか聞かない。

信頼される科学者たちがウイルス対策の転換を求める宣言“Great Barrington Declaration”を出した。集団免疫を実現する、と言う。十分に多くの人々が免疫を獲得することで感染は止まる。高リスクの人々に、より良い保護を与える。

こうした科学者は明らかに少数派である。ほとんどの医療関係者は、これが実行できないし、倫理に反する、と考えている。William Haseltineは「大量殺人だ」と非難した。

感染を抑える規制が多くの痛みを生じているのは確かだ。経済へのストレス、家庭内暴力、薬物の濫用、がん検診の減少。それゆえ、正常への回帰というアイデアは魅力的である。

その誘惑を受ける前に、宣言が触れない3つの省略を知るべきだ。第1に、低リスクの人々にも有害な影響があり、それは数年を経て明らかになる。まったく兆候の無い人でも、心臓や肺にダメージが現れる。

2に、宣言は高リスクの人々にどのような保護を与えるのか、示さない。高齢者と同居している家族。25歳の糖尿病患者。癌の既往症。肥満。彼らも毎日仕事に行く。

3に、集団免疫の達成までに、どれほど多くの人がこの政策によって死ぬか。ホワイトハウスが使っている予測モデルで、現在の規制でも、21日までに415000人が死ぬ。集団免疫のために規制が緩和されると、571000人を超える。そして21日を過ぎて、もっと増えていく。

それでも集団免疫は達成されないだろう。21日までに、私の予測ではまだ人口の25%しか感染していない。

40%の人口が免疫を得て集団免疫が達成されるとした場合でも、アメリカ人の死者数は80万人だ。おそらく100万人を超える。その後に現れる症状も含めて、恐ろしい代償である。

集団免疫の支持者はスウェーデンを例に挙げる。スウェーデンはそのような戦略を否定するが、経済活動や学校を閉鎖しなかった。隣接するデンマークとノルウェーは閉鎖を実施した。スウェーデンの死者数はデンマークの5倍、ノルウェーの11倍だ。多くの死者で、経済が繁栄したのか? 第2四半期のGDPの落ち込みで見ると、スウェーデン8.3%、デンマーク6.8%、ノルウェー5.1%であった。

代替策はあるのか? 公共医療の専門家が何か月も要求してきたように、ソーシャル・ディスタンシング、集団を避ける、マスクをつけ、手を洗い、感染経路を追跡する。自宅で隔離することや休業を求められた場合、必要な期間、必要な額の支援を行う。

PS Oct 20, 2020

Immunization Is the Best Weapon Against Poverty

ANURADHA GUPTA

FP OCTOBER 20, 2020

Moving Beyond a Post-Pandemic World

BY MICHAEL HIRSH

次のパンデミックは必ず来る。世界にはその準備がない。

NYT Oct. 20, 2020

After the Pandemic, a Revolution in Education and Work Awaits

By Thomas L. Friedman

仕事はない、学校もない、大学もない、工場もない、オフィスもない。それはホワイトカラーにも、ブルーカラーにも影響し、この選挙を重要にしている。職場を変わっても利用できるポータブルな医療保険、ポータブルな年金、生涯を通じて新しいスキルを学ぶことができる機会を、最悪のときにも苦しみを緩和してくれる仕組みとして、113日の後、われわれは政治に要求する。さもないと、われわれは本当に不安定な国になってしまう。

パンデミック後の時代は、魔法のような世界である。

あまりにも破壊的で、しかも、創造的である。あまりにも多くの革新的手段がある。あまりにも安価な融資、実際、無利子のお金が利用できる。そして、あまりにも多くの医療・社会・環境・経済問題が解決を求めている。

FT October 21, 2020

The threat of long economic Covid looms

Martin Wolf

世界金融危機の後、金融緩和をやめるのが早すぎた。今回はその失敗を繰り返してはならない。COVID-19の長期コストを避けるには、今、行動しなければならない。

FT October 22, 2020

When Milton Friedman, prophet of profit, met a pandemic

Andrew Hill

NYT Oct. 22, 2020

America and the Virus: ‘A Colossal Failure of Leadership’

By Nicholas Kristof

FT October 23, 2020

Even Germany’s localism is questioned in the pandemic

Frederick Studemann


 金融政策のルール

PS Oct 16, 2020

Who’s Afraid of Rules-Based Monetary Policy?

JOHN B. TAYLOR

アメリカの連銀が金融政策の決定方法を変えるのは、不必要なあいまいさを持ち込むことになる。

FT October 17, 2020

Federal Reserve debates tougher regulation to prevent asset bubbles

James Politi in Washington

金融緩和を続けるという説眼は、投機的な取引、資産バブルを防ぐために、規制強化がともなうべきだ。

FT October 21, 2020

Change intra-EU trade to counter US currency aggression

Melvyn Krauss

FT October 22, 2020

MMT: The case against Modern Monetary Theory

Stephen King

政府の債務が急速に増大している世界で、投資家たちがMMT(現代貨幣理論)に関心を示すのは当然だ。その中心にある主張は、財政赤字に意味はない、である。政府が借り入れを増やしてもインフレが起きない限り、そして今のところ、それほどないが、政府は赤字を心配する必要がない。

Stephanie Keltonが著書に書いたように、貨幣の印刷機を使える政府は、貨幣発行者である。支出は、原則として、すべて貨幣創造で融資できる。税制は、所得やと意味の再分配、罪深い行動の抑制など、他の目的に使用される。MMTの世界にマクロ経済学はない。

しかし、それは間違いだ。政府の財政と、企業や家計の金融との違いは、徴税する権力である。損失を出した企業は、他のすべての人に課税して損失を埋めることができない。政府はできる。

しかし、そこには限界がある。困難な状況では、政府は税収を増やせない。新興市場は、しばしば、通貨の切り下げ、デフォルト、インフレーションに頼る。

もし政府がMMTを信奉して、MMTの理論化が主張するように、貨幣の印刷機を「選挙されない中央銀行家」から取り上げ、「国民に説明責任を負う」、選挙を勝った財務長官に与えるとしたら、そのほうが良いのか?

まったく逆だ。ギャンブル中毒の男がカジノの鍵をもらったようなものである。多くの政治家は、権力を維持することを最も重視する。短期的な成果のために、長期的な安定性を犠牲にする強い動機がある。イギリスで1970年代前半に、A.バーバー蔵相が選挙で勝つためにブームを起こした。その後、保守党な政権を失い、2年後、IMFから救済融資を受けた。

インフレと課税とは、多くの点で、同じコインの裏表である。税収を欠いた政府は、その代わりに、「悪鋳」を行った。MMTの支持者はそれを否定するが、歴史が多くの例を示している。

COVID-19で、政府の債務は急増している。ロックダウンが再発すれば、企業と労働者がウイルスを制圧するまで「冬眠する」のは良いことだ。倒産が多発し、大量失業が広まるような選択肢を誰も支持しない。しかし、ある時点で、支払うことになる。冬眠政策が成功するとしたら、将来、われわれは支払える状態にあるだろう。

増税か、財政緊縮か、インフレか、デフォルトか、それを決めるのは政治である。


 安全保障の同盟再編

PS Oct 16, 2020

The Quad Sharpens Its Edges

BRAHMA CHELLANEY

中国の攻撃的な外交に対抗するため、インド・太平洋の4つの民主主義諸国が連携the Quadを強化した。オーストラリア、インド、日本、アメリカ。それはアジア版NATOをめざすものではないが、諸価値や利益に関する共通の基礎に立ち、安全保障における緊密な連携をめざしている。すなわち、法の支配、航海の自由、領土の統一性と主権の尊重、平和的な紛争解決、自由市場、自由貿易。

FT October 19, 2020

A distracted US is dangerous for Taiwan

Gideon Rachman

アメリカ大統領選挙が「オクトーバー・サプライズ」によって激変する可能性を政治評論家たちは議論している。しかし、もし中国がアメリカの混乱を好機と見れば、11月もしくは12月に台湾を統合するサプライズで、国際政治に激震が走るかもしれない。

中国メディアにおいて、戦争しかない、といった攻撃的な表現が飛び交っている。

FP OCTOBER 19, 2020

America Needs To Talk About a China Reset

BY ROBERT D. KAPLAN

トランプも、バイデンも、中国のことを明確に議論しない。バイデンはトランプの中国政策を効果がなかったと言うが、自分はもっと強く要求する、と言う。

米中関係の見直しは、平和や善意をもたらすことや、米中冷戦の終わり、を意味しない。両国が多くの問題木基本的に異なるのは明らかだ。南シナ海、通商政策、イデオロギー。簡単な解決策はない。しかし、偶発的な軍事衝突を避けるためのルールが必要だ。あるいは、グローバルな平和と繁栄を脅かすサイバー空間の戦争を避けるべきだ。

この4年間で、米中関係は悪化しただけでなく、劇的に、機能しなくなり、感情的になった。このような状態を続けることは危険すぎる。

キューバ・ミサイル危機が米ソ両国に示したのは、核戦争が現実に起きる、ということだ。どちらも再発を望まなかった。それゆえ、核兵器やその他の軍事力に関する制限条約を結んだ。指導者間で話し合うホットラインを結んだ。超大国間でサミットを繰り返した。

1962年の後も、冷戦や基本問題での対立は終わらなかったが、多くのパラメーターや道路規則ができた。冷戦は危険さを減らしたのだ。それゆえ、次期政権は中国の指導部と落ち着いて話し合うべきだ。規則的なサミットを繰り返し、官僚たちが諸問題領域で進展具合をチェックする。サイバー戦争にも上限を設けるべきだろう。紛争海域での航海にもルールを作る。相手が事前に知らない形で、急激に行動するのを抑制すると、双方が約束し、それを守ることは重要だ。

PS Oct 20, 2020

The Arctic Comes in from the Cold

CARL BILDT

PS Oct 21, 2020

A Modest Hope for the Post-Trump World Order

ANA PALACIO

FP OCTOBER 21, 2020

America’s Pullback Must Continue No Matter Who Is President

BY CHARLES A. KUPCHAN

バイデンが当選しても、アメリカが国際的な役割をすべて回復する、とは考えられない。戦略的な後退は、もっと一貫した、賢明な形で続くだろう。

グローバルな相互依存は深まっており、安定的なアメリカの指導慮オクト関与が必要である。しかし、アメリカの有権者は明らかに内向きになった。中東で軍事的な拡大が過ぎたこと、技術革新とグローバリゼーションがもたらした経済的変化、COVID-19による国民の困難。

バイデンは、慎重に、プラグマティックに、より選択的な国際主義を採用し、中国の脅威にも国際協力を通じて対処するだろう。アメリカは世界の警察官ではなく、同じ価値観を持ったパートナーとともに空白を埋める。外交とチームワークが重要だ。


 ノビチョ−ク列島

PS Oct 16, 2020

The Novichok Archipelago

ALEXEI NAVALNY interviewed by TIKHON DZYADKO

毒殺を免れたナワルニーAlexei Navalnyへのインタビュー。ラインTVの編集長による。EUによる制裁よりも、ロシアに帰ることをナワルニーは願った。そして、むしろ、西側諸国がロシア市民を助けたいなら、ロシアからの汚れた金の流れを止めるべきだ、と。


 気候変動に生きる

PS Oct 16, 2020

The Time Bomb at the Top of the World

MARIO MOLINA, DURWOOD ZAELKE

FP OCTOBER 17, 2020

Welcome to the Final Battle for the Climate

BY ADAM TOOZE

中国の習近平主席が2060年までに炭素排出量をゼロにすると一方的に宣言して、西側は驚いた。世界の脱炭素化に向けた地政学とビジネスのバランスが、旧工業諸国や西側の秩序を超えて、大きく転換し始めた。

中国の宣言は、単なる外交戦術ではない。共産党指導部は、国内の中産階級が環境意識を高める中で、次の100年をかけて、気候変動を真剣に対処すべき問題だと考えている。西側が中国の姿勢を時代錯誤の東西対立で観ているのは間違いだ。中国は国際秩序のゲームを転換する役割を担うだろう。

1980年代、1990年代、その後、超大国間の取引は重要な意味を失ってきた。脱炭素化には、新興市場が重要な意味を持ち、アメリカの関与も欠かせない。それにふさわしい国際機関は、脱炭素で利潤を上げるビジネスモデルに向かう巨大企業とともに、主要国を包摂しなければならない。

ブレトンウッズ会議を見習って、ラテンアメリカ野債務危機、アジア通貨・金融危機で、G20が誕生した。2008年の金融危機では、19世紀風の「大国間協調」が批判された。気候変動と脱炭素化に向けて、中国とEUが協力するだろう。それは新興諸国や途上諸国のインフラ投資を支援する、グリーン「一帯一路」戦略だ。もちろん、グローバルな炭素価格、炭素税と国境における調整、さまざまな規制がそれを促す。

巨大な機関投資家も、持続可能な開発目標、脱炭素化に向けた資本を供給することで、中国と合意する。アメリカの冷戦と石油をめぐる中東支配に依拠する覇権体制は、1973年の危機で問題を意識した。化石燃料による工業主義は終わった。中国とEUがアンカーだ。

NYT Oct. 19, 2020

I Am Watching My Planet, My Home, Die

By Margaret Renkl


 デジタル通貨の挑戦

VOX 16 October 2020

A proposal for an Asian digital common currency

Taiji Inui, Wataru Takahashi, Mamoru Ishida

国際的な機関で非効率な共通通貨を管理するより、アジアの中央銀行はデジタル共通通貨を発行して協力するべきだ。

FT October 20, 2020

Does a digital euro challenge the dollar’s global dominance?

By: Claire Jones


 アメリカの変貌

FP OCTOBER 16, 2020

Americans Are Officially Giving Up on Democracy

BY MICHAEL ALBERTUS, GUY GROSSMAN

PS Oct 21, 2020

Trump’s Crony Capitalism

ANNE O. KRUEGER

アメリカは今やクローニー資本主義となった。それはプーチンのロシア、そして旧ソ連の諸国に観られるものとよく似ている。

PS Oct 21, 2020

America’s Multilateralism Election

JAVIER SOLANA

FP OCTOBER 22, 2020

America’s Language of Mass Destruction Convinces Nobody

BY DOUG BANDOW


 ドイツへの難民と統合化

FP OCTOBER 16, 2020

Inside Germany’s Successful and Broken Integration Experiment

BY EMILY SCHULTHEIS

ドイツ、ゲルゼンキルヘンGelsenkirchen。人口26万、ルール地方西部の町である。5年近く前に、Mohamad Akkourはこの町へ着いた。15歳のとき、シリアのアレッポを逃れ、何度も恐ろしい目にあったが、トルコ、バルカン半島を経て、ドイツに着いた。彼はドイツ語を熱心に学んだ。

20歳になったAkkourは、春に、仲間のドイツ人学生よりも好成績で高校を卒業した。医師を目指したい。North Rhine-Westphaliaで秋の地方選挙があり、Akkourは、ゲルゼンキルヘン統合委員会に社会民主党から立候補し、落選した。

「人びとはいつも、統合、統合、統合を語る。そして、私たちの多くは統合された。」「私たちは働き、税金を支払っている。統合は成功した。」

メルケル首相は、2015年、「われわれにはできる」と述べて、ドイツ人の決意を示す言葉が誇りとなった。しかし5年後、今も移民と統合はこの国を深く分断する問題である。極右のポピュリスト政党、Alternative for Germany (AfD)が、2017年、初めて地方議会の議席を得た。

メルケルの肯定は正しかったのか? この国は多くの難民を統合したのか? しかし、それに答えるには、まず別の問いに答える必要がある。完全な統合とは何か? 統合過程を進めるのはだれの責任か?

ゲルゼンキルヘンの地方政治は、この問いの複雑さ、明確な答えを出せないことを教えている。ルール地方は特に、高い失業率と貧困に苦しんでいる。生活コストが安く、空室のアパートが多くあった。低スキルの東欧労働者が多く流入した。それは難民の統合支援における財政の限界も意味した。Akkourのようなサクセスストーリーもあるが、統合に苦しむ者、統合を望まない者もいた。システムによって統合は困難になった。コミュニティーが異なれば、統合の意味も異なる。

ゲルゼンキルヘンは多様である。石炭と鉄鋼で栄えたが、その後、産業は変遷し、ヨーロッパ中からゲストワーカーを入れたし、トルコ、北アフリカからも加わった。外国生まれの人口は全体の20%を占める。

難民や移民を責める声がある。彼らに対する最も重要な反論は、難民や新移民が全力を尽くして成果を上げることだ、とAkkourは考える。この町を改善することを望んでいる、と。

「わたしたちは町の重荷ではない。その反対である。私たちもまた、ここで何かを達成し、良いことがしたい。」


 財政緊縮の退場

FT October 17, 2020

Global economy: the week that austerity was officially buried

Chris Giles in London

それは緊縮論の葬儀であった。1970年代、80年代、債務危機とインフレーションの中で成立してから長期の正統を維持した財政緊縮論が破棄された。積極財政の復活だ。

IMF・世銀総会が、ワシントンと世界の主要な金融・財政の幹部とを結ぶヴァーチャル会議で行われた。世銀の新しい主任エコノミストとなったCarmen Reinhartラインハートは、かつて財政緊縮を唱える指導的な研究を出版した。

しかし、彼女も、IMFも、今は違う。金融市場にアクセスできるすべての国が、緊縮のことは後回しで、債券を発行して支出せよ、と命じている。

財政の正統派は、1950年代、60年代のブームの後に成立した。景気循環を効果的に緩和するために、税金や政府支出を増減させることは、ほとんどの政治システムにとって困難であった。金融政策が、理想的には政治から独立した中央銀行が、それをやるべきだ、と。しかも、財政政策は長期の安定性をめざすことが良いとされた。

なぜ思考がこれほど激しく逆転したのか? その理由は3つだ。過去10年間の厳しい経験、状況の変化、政治圧力。

2010年代はすべての経済が苦しんだ。主要な経済圏が、賃金を上げるような、インフレが起きる条件を達成できなかった。先進経済においては、政府の借り入れコストが、借入期間のすべてで、ゼロかマイナスになった。それが続くと予想される。

2010年代の厳しい経験を経て、もはやだれも緊縮策を支持していない。新しい経済学を望んでいる。緊縮策こそが、ある意味で、ドナルド・トランプやボリス・ジョンソンのようなポピュリスト政治家への支持を高めたのだ。指導的なエコノミストたちが積極財政論を唱えている。

しかし、富裕な、高齢化する経済では、将来、財政が逼迫するだろう。もし政府の借り入れコストが高まって、高齢化の問題とぶつかれば、緊縮論がよみがえるかもしれない。

FT October 17, 2020

The death of austerity should not be mourned

FT October 18, 2020

Europe is on track to repeat its fiscal policy mistakes

Shahin Vallée

FP OCTOBER 20, 2020

Start Preparing for the Coming Debt Crisis

BY DAMBISA MOYO

次のアメリカ大統領は、アメリカだけでなく、世界経済の債務危機を回避するべきだ。アメリカだけでなく中国の協力が必要だ。


 バイデンの政策ミックス

FT October 18, 2020

Joe Biden needs an economic team that will support workers

Rana Foroohar

バイデンの次の政権構想には、労働者の声が届いているか?

大型の景気刺激策、気候変動に対するインフラ投資、しかし、アメリカ政治の多様性を反映するのは難しい。資産価格は歴史的な高水準にあり、他方で、US経済の実物面ではGDP31%も減少している。大恐慌の水準だ。特定の業種では失業が異常に高まっている。

債務危機を懸念するのはナンセンスだろうか? しかし、アメリカがドルをグローバルな準備通貨として維持できるのか、不確かだ。少なくとも、トランプ政権はその寿命を縮めた。バイデンは、気候変動のインフラだけでは不十分だと知るべきだ。アメリカ経済全体の大転換が求められる。

意志と能力のある政府機関が必要だ。同時に、政治資本を動かす真の指導者も。マサチューセッツ州の上院議員、エリザベス・ウォレンのような人物を財務長官に、元ニューヨーク市長のブルームバーグのような人物を商務長官に任命することだ。

PS Oct 19, 2020

Think Small for an American Recovery

LAURA TYSON, LENNY MENDONCA

マイノリティがオーナーのビジネス、女性がオーナーのビジネスは、870万人を雇用しているが、COVID-19の危機で経済悪化の最も脆弱な部分である。

FP OCTOBER 19, 2020

Team Biden Should Start With an Asia Pivot 2.0

BY JAMES CRABTREE

オーストラリア、インド、日本、アメリカの外相が東京で会談を持った。画期的なことだ。しかし、アメリカの中国封じ込めにとってはジレンマを意味する。

中国外相は、Quadクアッドを、北京に羽風を送る、と認め、地政学的競争における「インド太平洋版NATO」を築くものと批判した。しかし、クアッドはNATOに大きく劣り、テロ対策、サイバー・セキュリティ、沿岸警備のような問題を扱うにすぎない。

従来は中国との対立を避けてきたインドの姿勢が変わった。ヒマラヤでインド軍と中国軍とが衝突したことで、ニューデリーの外交バランスが反中国に変化したからだ。クアッドは、中国の攻撃的な姿勢に対する協調として生まれた。将来、中国の行動がそれを加速するかもしれない。

アメリカのジレンマは、すべての参加諸国がインド太平洋の未来を中国が決めることに反対であるが、何をすべきか、という点で合意がないことに始まる。最近、元通商代表、外交官のRobert Zoellickゼーリックは、アジア諸国の広い範囲で、より深い関係を築くような経済目標をアメリカは何も示していない、と批判した。

トランプ政権は中国を恐れ、中国の戦略をまねて、アメリカの強さを忘れている。それは、公平な、法の支配に基づく、革新と競争に富む市場である。

アジアにおける中国海軍の拡大は顕著であり、将来も続くだろう。誰が大統領になっても、アメリカは軍事力を再構築するべきだ。しかし、COVID-19後の経済に追加の軍事予算はむつかしい。ワシントンは異なる軍事的関係をパートナーたちと築く必要がある。

反中国の外交が軍事力をアメリカに大きく依存するなら、アメリカは「アジアの傭兵」となってしまう。同盟諸国やパートナーは、中国の軍事力とバランスを取るためにアメリカを求めているだけだ。他方で、アジアの経済・政治問題を解決するのはアメリカではなく、中国だろう。ヨーロッパでNATOが効果的な均衡を生み出せたのは、軍事力だけでなく、非軍事的な紐帯、目標、諸価値を反映した信頼関係があったからだ。

オバマは2011年に「アジア旋回」を提唱し、批判された。しかし、アジアにより大きな軍事力を常駐させ、伝統的な同盟諸国との関係を修復し、より深い経済協力を築くというのは、正しい構想であった。バイデンが大統領になれば、アジア旋回Uの提唱から始めるべきだ。

FT October 20, 2020

The three pillars of US foreign policy under Biden

Anne-Marie Slaughter

バイデンが大統領になっても、その外交はそれほど変わらない。

国際協調や同盟諸国を重視するだろうが、内向きである。気候変動やパンデミックなど、グローバルな問題に取り組むが、大国間競争や中国との対抗はなくならない。価値を重視する外交だが、シリアやアフガニスタンに米軍を戻すことはないし、外国への軍事介入は行わない。

バイデン外交の柱は3つだ。国内再建、抑止力、民主主義。

FT October 21, 2020

Why the Pope might tacitly support Joe Biden for US president

David Gardner

PS Oct 21, 2020

Inequality and Its Discontents

MICHAEL J. BOSKIN

FP OCTOBER 21, 2020

The Realist Case for the Non-Realist Biden

BY STEPHEN M. WALT

トランプではなく、バイデンへの投票を呼び掛ける最近の公開書簡に私が署名したことを、友人が説明するよう求めた。彼は、私が著書で厳しく批判したオバマ政権の外交スタッフと、まさに同じスタッフが、バイデンの外交を担うことを知っているからだ。

また、アメリカが多くの戦争に関与したことを批判し、中国に真剣に対抗し、NATOの負担は大きすぎるし、不要であると考え、世界市場や移民に依存しすぎる姿勢を逆転し、中国から引き離して、ロシアとの関係を修復すること、アメリカ外交のエスタブリシュメントを批判する点で、トランプは私の意見と一致している。

なぜバイデンか?

FT October 22, 2020

How Joe Biden is spending his huge fundraising haul

Courtney Weaver in Washington and Christine Zhang in New York

FT October 22, 2020

Joe Biden’s promise is of a life beyond Donald Trump

Philip Stephens

FT October 22, 2020

Bidenomics can preserve support for capitalism

NYT Oct. 22, 2020

How Democrats Won the War of Ideas

By David Brooks


 菅・安倍のミックス

FT October 18, 2020

Japan’s Suga inherits an economy stabilised by Abenomics

Gavyn Davies

201212月に安倍晋三が政権に就き、「アベノミクス」を採用して、日本はようやく長い苦境を脱し、世界の投資家の前に再登場した。

「日本化」にさらされた他の諸国は、何を学ぶべきっか。すなわち、ゼロ金利、低インフレ、成長の停滞、極めて高い公的債務。西側エコノミストたちは日本に「正しい」マクロ政策を講釈し続けたが、青梅伊芸財とも同じ問題に直面し始めた。

アベノミクスの3つの矢は、日銀総裁の黒田東彦が、10年物国債の利回りを0.1%にした。日銀の国債保有額は発行額の84%に達した。この政策は、主に30%の実質円安により輸出を刺激した。資本が流入して、日経225は最初の30カ月で120%も上昇した。しかし賃金は上昇せず、インフレ目標を達成できなかった。

「弾力的な」財政政策は混乱したものだった。財務省は消費税の引き上げによる債務の抑制に熱心であった。2度の消費税引き上げは、プライマリー・バランスをプラスにしたが、その政策は、金融危機を起こさないと同時に、インフレを刺激することもなかった。

産業政策における改革は政治的に困難だった。潜在成長率は低下し、人口減少に加えて、生産性上昇の減速が大きかった。他方、失業者は半減し、労働市場が改善した。

菅は、アベノミクスの継続と、構造改革を強調する。それは、地銀再編と、デジタル市場の改革を通じて価格競争を刺激することだ。

先進経済の中で、日本のコロナウイルス対策は優れており、2021年の回復は早いと期待される。他の先進経済も、パンデミック後の長期停滞、という同じ問題に直面するだろう。2020年代の、どれだけ低速で走れるか、という自転車レースでは、日本が経験を積んで有利かもしれない。

FT October 20, 2020

Japan’s Mothers market spurs new generation of investors

Leo Lewis

FP OCTOBER 21, 2020

Abenomics Can Flourish Without Abe

BY WILLIAM SPOSATO


 国家のエゴと世界戦略

FT October 19, 2020

Brexit Britain adopts the Microsoft model

Robert Shrimsley

大きすぎるエゴを持つ国民が中規模国家として生きるには、どうすればよいのか?

EUを離脱したイギリスは、それでもNATO、国連安保理、G7に席を占め、重要な役割を担っている。ブレグジット最強硬派には2つの信念がある。すなわち、UKは特別な国だ。ブレグジットは停滞する経済へのショック療法である。

かつての大帝国が、新興の諸大国によって退けられたが、再興に向かう道を見出す。それは、国家ではなく、企業の話だ。アップルとグーグルに圧倒されたマイクロソフトが、デスクトップを支配するという間違った戦略を捨てて、顧客の中でサービス提供を確立した。ブレグジット後のイギリスは、マイクロソフトをモデルにする。

マイクロソフトと契約すれば、OfficeTeams、クラウド・サービスなどを得られるように、UKに進出する企業は、世界秩序の頂点と法、教育サービス、フィンテックを得られる。

貿易において、海に囲まれたUKは戦車の大軍を恐れる必要がない。軽武装で十分だ。自由貿易とルールに依拠した秩序を支持する。G7にインド・韓国・オーストラリアを加えて、G10にすることを望む。CPTPPJapan, Australia, Canada, Mexico, Chile and Vietnam)への参加で、拡大する貿易圏を得るだろう。

しかし、アジア市場を狙うのは正しいが、ファーウェイの制裁に加わって中国との関係を損なった。ドーバー海峡をあてにして、ドイツのE3安保という呼びかけに応えないのも間違いだ。

FT October 19, 2020

EU economy: fear of no-deal Brexit stalks the fields of Flanders

Sam Fleming in Sint-Truiden and Jim Brunsden in Brussels


 中国の不安

FT October 19, 2020

China’s crackdown on the Uighurs

Christian Shepherd

「テロとの戦い」として北京が正当化したウイグル弾圧は、人類学者の研究によって、何の根拠もないことが分かった。

FT October 20, 2020

China risks cementing its structural flaws

PS Oct 22, 2020

The AIIB’s Transparency Deficit

KORINNA HORTA, WAWA WANG


 国家を乗っ取る

PS Oct 19, 2020

Justice in a Hijacked State

JOHN PRENDERGAST, NATHALIA DUKHAN


 チリの新憲法制定

NYT Oct. 19, 2020

Will Chile Set an Example for True Democracy?

By Michael Albertus

1025日に、チリは新憲法制定のプロセスを始めるかどうか、国民投票で決める。(その後、圧倒的な多数でプロセス開始を支持した。)

ミャンマー、韓国、トルコのように、権威主義体制下の憲法を持ったまま、民主化された国はいくつもある。権威主義体制は、不平等と不満を市民の間に蓄積した。COVID-19による感染や経済的打撃がそれを強めている。

新憲法制定は、市民のさまざまな権利や要求を政治システムに制度化するチャンスである。世界の最も古い、最も発展した民主主義諸国は、スウェーデンやデンマークのように、権威主義体制の打倒から始まった。しかし、他方で、このプロセスには、さまざまな過激な集団が論争を乗っ取る、というリスクがともなう。

チリが、インドネシアやグアテマラ、ペルーなど、同様の課題に直面する新興民主主義国のモデルになることを願う。


 タイの民主主義

FP OCTOBER 19, 2020

Thai Protesters Claim a Temporary Victory

BY TYLER RONEY


 インドの不満

FT October 20, 2020

Backlash against Indian advertisers championing progressive values

Amy Kazmin

FP OCTOBER 20, 2020

Angst and Denial in India as It’s Now Officially Poorer Than Bangladesh

BY SALVATORE BABONES

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The Economist October 3rd 2020

Germany: Growing up at last

China’s countryside: Mass destruction

Joe Biden’s economic plans: The pragmatist

Consolidating villages: On Harmony Road

Bello: The missing local klinks

Race: Not black and white

Virtual realities: Reaching into other worlds

Reunified Germany, 30 years on: Waking Europe’s sleeping giant

(コメント) バイデンの経済政策が何を含むのか、特集記事が論じています。しかし、私が興味を持ったのは、中国の農村破壊(人口が減少した農村を破壊して農地に転換し、住民は近代的なアパートへ)と、人種問題の解決策(黒人と男性とが結婚して、混血の子供たちが増える)です。どちらもかなり乱暴な解決の仕方ですが、決して無視できない問題です。

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IPEの想像力 10/26/20

人口の減った中国の農村がブルドーザーで破壊され、政府は土地を平たんにならす。住民たちは新しい町に移住します。そこには、近代的な街並みと、新しい設備が配置され、小さな畑も与えられる、という話をTVで観たことがあります。

The Economistの記事でも、生活の大幅な改善だ、と市長が自慢します。もとは大人たちが都市に出稼ぎへ行って、農村が崩壊したのだとしても。14億の人口と農地の不足を心配する政府にとって、これは不退転の政策です。そして、それが開発業者に販売する地方政府の財源や賄賂をもたらすのは、当然です。

特に、老人たちが負う心の傷が無視されているのではないか。そういう批判が現れます。同時に、本当に開発業者に転売して、ぼろ儲けができるのか。地方政府は売れないアパートをかかえて苦しむかもしれません。

読者は、垂直農場や、折り畳み式北京を、この話から思い出すかもしれません。

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他の記事の始まりは、かつて社会的平等を願ったイギリスの左派的な作家(あるいは、リベラルな理想主義者)、ジョージ・バーバード・ショーです。彼は、それを実現する最善の策は「社会全体が(人種間、黒人と白人の)結婚できる状態に保つこと」である、と考えた。(拙著『グローバリゼーションを生きる』の35ページも参照)

この記事は、イギリス社会に混血の人々が増えていることを紹介します。混血市民 “a mixed-race citizen” もしくは混成異文化国民 “Britons who say they have a mixed-ethnic background” とよびます。2001年と2011年の間に倍増し、120万人、人口の2%に達しました。奴隷貿易商人の銅像をBLMの抗議デモで群衆が倒したブリストルの市長もそうです。

しかし記事の要点は、混成異文化の市民たちが、大英帝国や白人の特権に反対でも、過激な主張を嫌うことです。彼らは、自分たちの両方の伝統や歴史に親しみと誇りを感じるから。1つのアイデンティティーを強いられることを嫌うから。アイデンティティーは変化し、それを人為的に政治が利用する姿勢に反対します。

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難民危機、文化戦争、格差と差別、アイデンティティー政治、国民投票・大統領選挙によって生じる分断で、絶滅の危機に瀕する「民主主義」を救出するには、互いの経験を共有すること、共感する能力を高めることが重要です。

The Economistは、技術に関する特集記事が載る週でした。ヴァーチャル・リアリティー(VR、仮想現実)です。ビデオ・ゲーム産業が核となって、音楽や映画、そしてコロナウイルスによる学校閉鎖、自宅待機、リモートワークなどで、現実の世界から仮想現実の世界が膨張する時代は、おそらく、現実を変えるほどの衝撃を生む水準になったのです。

その内容は飛ばし読みでしたが、私たちが戦争や貧困、病気に苦しみ、社会的差別や政治的分断に翻弄される状況を、なるほど、VRが結びつけるかもしれないな、と思いました。

その部屋に入るとき、あなたはAIに訊かれるでしょう。・・・「どの世界を築きましょうか?」 ・・・「誰の姿で生きますか?」 ・・・「では、あなたの運命を選んでください。」

ただし、1度自分で選ぶためには、他の3つの人生をランダムに経験しなければなりません。その選択肢を決めるのは、コミュニティーの平等と政治的な和解を推進する委員会です。

1.小さな民主主義で議論を尽くす。2.投票や選挙を最終決定・答とみなすのではなく、議会の論戦を重視する。そして、3.ヴァーチャル・リアリティーで異なる人生を経験する。

中国の政府官僚は、年老いた農婦の気持ちがわからず、ドナルド・トランプは、メキシコ国境で親から引き離される子供の悲しみを理解できない。もし日本でも、日本と韓国の混成異文化MEB人が国民の10%、日本と中国のMEB人が人口の10%、その他のMEB人が5%を占める時代には、差別的姿勢を誇示する政治家やイデオローグが、テレビで自説を流すことはないでしょう。

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