IPEの果樹園2020

今週のReview

10/5-10

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ハイテク大企業とアメリカ社会 ・・・アメリカ国家の崩壊 ・・・ドルの急激な衰退 ・・・中国はCO2排出をゼロにする ・・・右派のポピュリストに対抗せよ ・・・ミダス王ではなく、税金回避常習者 ・・・バイデンの経済政策 ・・・香港の民主派 ・・・世界の資本家と社会主義者の団結 ・・・資本移動が歪めた世界経済

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 ハイテク大企業とアメリカ社会

FP SEPTEMBER 24, 2020

Make Surveillance Capitalists Pay Their Dues

BY BHASKAR CHAKRAVORTI

COVID-19のパンデミックは、ハイテク大企業(Amazon, Apple, Facebook, and Google)のサーベイランス資本主義に解決を大きく頼る状況を生み出した。世界各地がロックダウンする中で、何もかもがリモートに移行し、人びとの動きを追跡し、職場や学校、娯楽を監視することが求められる。

しかし、ハイテク大企業への好意は短期でしかない。以前から議会はハイテク大企業を問題視してきた。分割することや、公益事業として規制することが議論されている。しかし、どちらも実現しないだろうし、パンデミックが明らかにした最重要課題を解決できない。

それは、アメリカ国民がインターネットアクセスを保証されていないことだ。パンデミックは、デジタル世界への包摂と公正さを求めている。

反トラスト運動の歴史は、解決策のヒントを示している。1956年、ベルは司法省と合意し、電話の独占を7年間維持するが、すべての特許を公開し、他の企業が利用できるようにした。トランジスターや太陽電池、レーザーの技術も含まれた。IBMの反トラスト訴訟は13年続いたが、分割されなかった。その代わり、IBMはハードウェアとソフトウェアを別々に価格付けて販売した。その結果、ソフトウェアの新企業が、後にMicrosoftになった。1998年から2001年、Microsoftが反トラストの対象になった。和解の一部は、Microsoftが競争企業の製品に互換性を保証する、ということであった。

今回も、こうした方法を参考に、アメリカ社会のデジタルギャップを解消することにハイテク大企業を活用するべきだろう。

FT September 27, 2020

Concentrated power in Big Tech harms the US

Rana Foroohar

この数年間で最も重要な経済問題は2つある。米中関係はどうなるか? 国家は大企業の独占力を管理できるか?

過去30年間で世界経済の最大の勝者は、中国と大企業であった、とUNCTADの研究は示した。

問題はトランプ大統領の矛盾した通商政策でも、中国でもなく、企業の集中である。それがアメリカ経済の活力を過去30年間に奪ってきたのだ。

司法省(DoJ)は、ついにこの問題に手を付ける。Googleサーチの独占を扱う。しかし、司法省は消費者にとっての価格を問うだけでは不十分だ。

デジタル取引は、価格ではなく、データによって評価される。GoogleFacebookはアルゴリズムへのアクセスを通じて支配する。このビジネス・モデルでは、異なる消費者に対して異なる価格を請求する。それは物理的な商店でも、航空旅客のようなサービスでも、違法である。

US法廷は、より複雑で、本質的な問題を扱うべきだ。それは大企業がわれわれの政治経済を支配する、という問題だ。

ジャーナリストのBarry Lynnは、その新著Liberty from All Mastersで、アメリカ史を大企業との闘いと観た。われわれに必要なことは、中国との闘いでも、資本と労働のバランスを変えるグリーン・ニュー・ディールでもない。アメリカ独立革命を動かした大企業の支配に対する疑念に立ち返ることだ。ボストン茶会事件は、課税に反対するだけでなく、植民地の通称を支配する東インド会社に反対する革命だった。

故ブランダイス最高裁判事は、鉄道などの寡占体制と闘った。運賃が高すぎるからではなく、大企業があまりにも大きな政治力を持ち、経済の大部分を支配すると、諸個人の仕事や競争がその条件を支配されるから、強く憂慮したのだ。

COVID-19の危機が続いて財政支援が枯渇すれば、観たこともないような中小企業の淘汰が始まるだろう。しかし、中小企業こそがアメリカ人の雇用の多数を創ってきた。ハイテク大企業(Amazon, Apple, Facebook, and Google)はS&P500の価値のほぼ4分の1を占めるが、雇用はアメリカ経済に比してわずかである。司法省が広い見地から判断することを望む。


 アメリカ国家の崩壊

The Guardian, Fri 25 Sep 2020

Donald Trump's plot against democracy could break America apart

Jonathan Freedland

アメリカの民主主義がバランスを失い、アメリカという国そのものが崩壊することもありえるのか?

今週、ドナルド・トランプは質問された。「選挙で敗北した場合、政権の平和的な移行に従うのか?」 彼の答えは、「さあ、どうかな。何が起きるか観てみよう。」

「平和で公平な選挙」なら、大統領はその結果を受け入れる、とホワイトハウスは説明した。しかし結局、トランプは繰り返し述べたのだ。もしバイデンが勝利したら、それは投票を「操作した」ということだ、と。

共和党はすでに、投票条件をゆがめてトランプが勝利するように全力を挙げている。選挙人名簿から民主党の支持者を追放し、郵便局を減らして、郵便投票が期限に到着しないように画策する。

それはまるで、ベラルーシのルカシェンコが演出した不正選挙のようだ。しかし、最高裁がそんなことを許さないだろう。しかし、まさにトランプと共和党は、最高裁にできた空席を、最速で埋めるために動いた。

アメリカの進歩派は、もし共和党諸州がトランプを強引に再任した場合、何をするだろうか? 民主党の諸州は、ますます連邦政府と異なる道を進むだろう。ニューヨーク州のクオモ知事は、連邦政府が承認するワクチンを、自州の専門家たちが検査するまで使用しない、と発表した。

南北戦争の前に、連邦政府の決定を州が無効にする権利を主張した。かつて分離独立を叫ぶ南部、人種差別主義者の主張であったが、今や、それがリベラル派の武器になるかもしれない。

Andrei Amalrik1970年にWill the Soviet Union Survive Until 1984?というエッセーを書いたが、バカにされた。しかし、数年遅れて、ソ連は崩壊した。アメリカも歴史の例外ではない。

NYT Sept. 25, 2020

Will Trump’s Presidency Ever End?

By Frank Bruni

FP SEPTEMBER 25, 2020

The Most Important Election. Ever.

BY MICHAEL HIRSH

アメリカの共和政がその方向と生存をかけた歴史上の例を挙げてみよ。

1800年の選挙は、独裁者の本能を持つ、トランプに似たAaron Burrと、Thomas Jeffersonの闘いだった。1860年の選挙は、Abraham LincolnStephen Douglasが南北戦争に向かう中で争った。1932年の選挙は、大不況の中で行われ、Franklin D. Rooseveltに重大な結果をもたらした。彼は、もし景気回復策が失敗したら、お前はアメリカ史上最悪の大統領になる、と警告されて、「失敗したら、私が最後の大統領だ」と応えた。

トランプとバイデンの選挙は、歴史的に、それ以上の重大な結果をもたらすだろう。若い国家であった、1800年、1860年、そして1932年と比べても、世界システムにおけるアメリカが占める中心的な地位が違うからだ。

Edward J. Watts・・・「もしトランプが再選されれば、アメリカの民主主義にある規範と抑制が消滅すると思う。」

2020年の選挙は、歴史上の大国、諸帝国、国際的安定性の外交枠組みを転換させたような、重要な国際的再編成に匹敵するだろう。

Ivo Daalder・・・「COVID-19への対応は、アメリカのシステムにある深刻な諸問題を明らかにした。医療インフラの不足、所得分配の不平等、人種差別は続いている。アメリカは見下されるようになった。」

ヨーロッパの人々は自問しているだろう。「もし、1945年以来、頼りにしてきたアメリカが、トランプ・ランドのような予測不能な何かを生み出し、なおあまりにも分裂して機能しないのであれば、2024年や2028年がどうなるかを知ることは不可能だ。」

John Mearsheimer・・・リベラリズムは能動主義を核心に持っている。人類の不滅の権利、その権利を守るためには国内の他の懸念を顧みない。リベラル国家は、外国に介入する強力な誘因を持つ。

古代ローマにおいて、その自負心は傲慢さと地政学的な過剰拡大をもたらす究極の致命傷になった。

トランプは、巨大な歴史的諸勢力の原因であるより、その結果である。彼は何より「アメリカ・ファースト」のポピュリズムを基盤に大統領になった。アメリカ人の多くが、共和党と民主党の主流派が示した粗悪な政策選択に憤慨していたからだ。中国の経済的台頭に両党は立派な振る舞いを示したが、それはアメリカ中産階級の何百万もが失業する結果につながった。イラク戦争もそうだ。

トランプはまた、グローバル・システムが複雑さを増すことに、有権者たちがついていけない戸惑いを利用して成功した。排外主義とネオ孤立主義の波を起こした。ネイティビズムや白人多数派を支持基盤に、アメリカ社会を分断した。法と秩序を宣伝する独裁者の姿勢は、シーザーにまでさかのぼる。

トランプの再選は、アメリカの復活に道を閉ざすものだ。

FT September 28, 2020

America’s history war looms over the presidential election

Gideon Rachman

アメリカ建国は1776年か、1619年か? これは試験問題のようだが、そうではない。2020年大統領選挙の争点だ。

今月の初めに、ドナルド・トランプは「1776年委員会」を設置して「愛国教育を復活する」と約束した。そして、アメリカを「邪悪な、人種差別主義の国だ」と色づけるいかなる企てにも対抗する、と。アメリカ大統領は明らかに、1619年プロジェクトを標的にしたのだ。それはthe New York Timesが発表した一連の記事で、奴隷にされた最初のアフリカ人がヴァージニア植民地に着いた年にちなむ、非常に論争的な企画である。

オバマのアプローチは人道的で、アメリカ史の1619年が示す暗黒面と、1776年の高揚とを、微妙なやり方で和解させた。残念だが、人道的な、微妙な和解は、トランプ時代に通用する言葉ではない。

これは単なる文化戦争の1つではない。アメリカ合衆国の本質、政治権力の本質をめぐる論争だ。ジョージ・オーウェルは彼のディストピア小説『1984年』に書いた。・・・「過去を支配する者は未来を支配する。現在を支配する者が、過去を支配するのだ。」

FT September 29, 2020

Voter suppression: America must end this shame

Katica Roy

NYT Sept. 29, 2020

Trump Sent a Warning. Let’s Take It Seriously.

By Thomas L. Friedman


 EUとケインズ政策

The Guardian, Fri 25 Sep 2020

The Guardian view on the EU economy: adopt, not outlaw, Keynesian policies

Editorial


 金融政策の限界

FT September 25, 2020

Remember 1929 when looking for the cause of the coming financial crisis

John Dizard

連銀のパウエル議長は、政府に刺激策を求めている。しかし、議会はRuth Bader Ginsburgの死去がもたらした新しい判事の指名問題で激しく対立し、議論できない。

金融危機の引き金は、通常、巨大金融機関の破綻である。しかし、主要銀行の状態は、過去の危機によって資本を増強し、リスクを減らす慎重な姿勢を取ってきた結果、良好である。それゆえ、金融危機は銀行倒産ではなく、債券市場から起きるだろう。

それは、銀行融資のような担保もない、the commercial mortgage-backed securities (CMBS)である。元本の売却や利払いを長期に組み替えるような、銀行の役割も期待できない。


 復興基金とユーロ・システム

PS Sep 25, 2020

Europe’s Recovery Gamble

JEAN PISANI-FERRY

VOX 01 October 2020

The Eurosystem: An accident waiting to happen

Willem Buiter

ユーロ・システムは、ECB19の各国中央銀行NCBを持つ。NCBのリスク資産を保証することはないし、リスクを共有する資産もない。しかし、パンデミックで、いくつかの国(イタリア、スペイン、ギリシャなど)の政府債券がリスクを高めるだろう。NCBは政府債務危機に対応できない。

ユーロ・システムは、これ以上ないほど間違った多国間金融システムである。数年以内に、NCBの支払不能危機が起きるだろう。まともな中央銀行システムに変えるべきだ。すべてのNCBECBの視点に転換することは、シンボリックな意味で重要である。


 ドルの急激な衰退

PS Sep 25, 2020

The Vise Tightens on the Dollar

STEPHEN S. ROACH

USドルが急速な衰退期に入った。8月までの4か月間で、その実質実効為替レートが4.3%も下落したのだ。

これは3つの要因で考えるべきだ。1.アメリカ経済のマクロバランスが急速に悪化している。2.ユーロと人民元がドルに代わる選択肢として重要になっている。3.アメリカ例外主義の特別なオーラが消えて、第2次世界大戦後のUSドルにあった回復力は消滅する。

1の要因は、かつてない貯蓄率の低下と、経常収支赤字の増大である。COVID-19の影響が顕著である。一時的な個人貯蓄率の上昇と、それを超える財政赤字の増大があった。

経常収支赤字の増大も、同様に、凶暴な姿で現れた。2020年第1四半期に現れたGDP比で2.1%の経常赤字に対して、第2四半期も1.4%拡大したことは記録的なもので、これほどの赤字拡大は1960年にまでさかのぼる。

国内貯蓄の崩壊と経済赤字の拡大が、稲妻のようなスピードで拡大している。しかし、それだけではない。連銀の金融政策が変化したことも新しい重要な要素である。連銀は、従来考えていた以上に、ゼロ金利が続くだろう、それは2%のインフレ目標を一時的に超えることがあっても維持される、と述べた。

それがドル安を加速したのだ。連銀はインフレを抑えるよりも、株式や債券市場を支えるだろう。ドル安は始まったばかりだ。

FT September 28, 2020

CBDCs give libertarians the heebie-jeebies

Izabella Kaminska

FT October 1, 2020

Central bankers have been relegated to second division of policymakers

Chris Giles

FT October 1, 2020

The ECB begins its shift to a new inflation goal

FT October 1, 2020

Renminbi strength foretells dollar’s decline

Mansoor Mohi-uddin


 中国はCO2排出をゼロにする

PS Sep 25, 2020

China’s Inevitable Low-Carbon Future

XIZHOU ZHOU

中国は世界最大の化石燃料消費国で、CO2排出国である。その中国政府が炭素排出量ゼロを目指すと宣言することは、極めて疑わしい、真剣に受け止められない主張であっただろう。、ましてや、世界がパンデミックと不況に苦しむ中で、さらに信じられない。

しかし、中国指導部はもはや論争していない。中国の急速な経済発展が主要都市で極度の大気汚染を広めたことは悪名高い。住民たちからもますます厳しい批判を受けている。

また、エネルギーの分野で示された方針は、輸出向け製造業から国内消費へ、という中国の経済リバランスに一致する。労働コストの上昇、低賃金国への製造業の移転は、化石燃料の消費削減を加速するものだ。

同様に、多様、風力、年長電池、電気自動車、さまざまな新技術分野で中国は巨大な市場の可能性を観ており、投資を積極化している。

「グリーン経済への転換」を経済・技術・安全保障の長期的利益とみなすなら、COV-19危機は、それを阻むより、加速することになるだろう。中国共産党政治局は、「新しいインフラストラクチャー」を経済刺激論の焦点としている。

世界金融危機後の不況を克服するために、中国は高速道路や鉄道に投資した。それはエネルギー集約的な、セメントや鉄鋼部門を拡大した。今回、政府は最新情報インフラに投資することを決定している。

中国指導部の政治的意志はすでに固まった。

FP SEPTEMBER 25, 2020

How Xi Just Saved the World

BY ADAM TOOZE

国連から世界に向けた短いビデオで、中国の指導者は人類の将来を変える方針を示した。世界最大の炭素酸化物排出国が、2060年までに排出ゼロを実現する、と約束したのだ。

中国国内において、習の言葉は千金の重みをもっている。

習近平の動きは、中国がアメリカだけでなく、EUやインドとも関係を悪化させる中で行われた。EUは、長期の視野で、排出削減における中国との協力をめざしている。民主主義諸国は具体的なエネルギー政策を迫られるだろう。

アメリカが世界政治の支配的な声を示す時代は終わった。

PS Sep 29, 2020

Decoding China’s “Dual Circulation” Strategy

YU YONGDING

FT October 1, 2020

China’s net-zero target is a giant step in fight against climate change

Adair Turner


 右派のポピュリストに対抗せよ

PS Sep 25, 2020

Democrats Must Finally Play Hardball

JAN-WERNER MUELLER

世界中で、右派のポピュリストたちが民主主と法の支配を空洞化している。

20世紀の独裁者たちと違って、現代の独裁体制を望む者たちは、彼らが破壊している民主主義の制度的外観を維持しようとする。そのことが反対派の諸政党にとってジレンマとなる。反対派はポピュリストたちが操作する民主主義的ゲームのルールに従って闘うべきか? あるいは、自分たちのルールを決めて、リベラル・デモクラシーの真の破壊者である、という非難を受けるべきか?

民主主義の規範を破ることは、通常、単に民主主義の崩壊を加速する、と考える。しかし、特別な状況においては、立憲的な挑戦を行うことがふさわしい。独裁者の立法家たちが法を利用して民主主義の精神を破壊するなら、反対派たちはその反対のことをするべきだ。

多くの国でメディアの多元性が根本的に失われているとき、多くの民主派が共有する立憲主義的な主張によって有権者を説得する戦略は、その前提が間違っている。ハンガリーのオルバン首相や、トルコのエルドアン大統領にように、政府から独立したテレビ局や新聞社を攻撃することがどこでも増えている。アメリカでも、共和党の投票は、Foxニュースや右派のプロパガンダ・チャンネルからなるエコシステムの中で護られている。

こうした聴衆は潜在的な説得すべき有権者であるだけでなく、右派ポピュリストや機械主義者の同盟者であることを認めるべきだ。後者に対しては、単に、彼らを恥じ入らせることではなく、目には目を、の対策が求められる。

たとえばアメリカで、共和党が非対称的な行動(民主党は民主的原則を守るが、彼らは無視する)から有利にふるまっている。共和党が権力を獲得し、保持するために、何でもしてよいと考えるなら、民主党も行動の限界を破るべきだ。民主党がそれを確信するときだけ、共和党は行動を変えるだろう。

現在の共和党は、民主党を敵視するだけでなく、民主主義と敵対する。彼らは独裁者の指導に従う。共和党は多数からの支持を得ることを考えないから、上院や裁判所のように、多数派に従わない機関を利用する。非白人と投票を妨害することも厭わない。

共和党が数週間で最高裁判事を決めようとするなら、民主党は上院や裁判所に反対しなければならない。権力を取り戻すために最高裁判事を増やすことも必要だ。こうした手段は、完全に、民主主義の諸原理を反映している。有権者の権利を守るために、平等と自由の名において、正当化されるべきだ。


 米中対立

PS Sep 25, 2020

The Heart of the New Cold War

ANDREW J. NATHAN

米中はますます、経済的な利益よりも、イデオロギー的な対決を明確に意識するようになった。しかし、米中の冷戦は、米ソの冷戦と異なっている。中国に勝利するには、アメリカが人権を最も重視する姿勢を明確にし、国際機関を通じた同盟関係を拡大することだ。

PS Sep 28, 2020

The Transatlantic Tragedy

JOSCHKA FISCHER

PS Sep 29, 2020

Multilateralism Will Survive the Great Fracture

NGAIRE WOODS

NYT Sept. 29, 2020

Trump Has Sold Off America’s Credibility for His Personal Gain

By Alexander Vindman and John Gans

FP SEPTEMBER 29, 2020

American Leaders Sold a Dream of Changing China

BY ZACHARY HAVER


 バイデンのナショナリズム・カード

FP SEPTEMBER 25, 2020

Biden Needs to Play the Nationalism Card Right Now

BY STEPHEN M. WALT

トランプの失政と無能さは甚だしい。しかし、選挙人制度の下で、トランプが当選するかもしれない。人によっては、トランプの発信力に、バイデンは到底太刀打ちできない、と考えている。しかし、私は違う。民主党が無視している、トランプの重要な資産を奪うことができる。それは、ナショナリズムのパワーだ。

ナショナリズムを消滅するパワーとみなすエリートたちがいた。内外の政治に悪質な要因でしかない、と考えた。しかし、それは間違いだった。ナショナリズムは今も最も強力な政治イデオロギーである。アメリカ合衆国は、ナショナリズムなしには生き延びることができない。バイデンは、世界の舞台での「パートナーシップ」や「指導力」について多く語るべきではない。もっと愛国心や国民の統一を語るべきだ。虹の連合を示すよりも、国旗を体に巻いて、それらが相互に強め合う目標であることを示すべきだ。

トランプに対する決定的な勝利を収めるためには、バイデンがナショナリズム・カードを切るべきだ。

社会を、侵すことのできない権利を持った諸個人から成るものとみなすリベラリズムに対して、ナショナリズムは人間を社会的な動物とみなす。そして、人間は同じ文化を共有し、同じ領土を尊ぶ者たちに愛着を示す。ナショナリズムは、ほとんどの人間が国民の一部であり、国民は自らを統治するべきだ、と考える。

グローバリズムやリベラルな国際主義は、ナショナリズムと矛盾する。しかし、冷戦の中で、多くのアメリカのエリートたちはこうした主張を取り入れた。共和党も、民主党も、その大統領たちはグローバリゼーションを支持した。確かに、多文化主義的なメルティング・ポットは魅力的だが、アメリカ人の多くはそのような世界に住んでいない。また、そのような未来を望むこともない。

バイデンは、「ポピュリズムやナショナリズム」を警告するのではなく、アメリカのナショナリズムを称賛し、国旗を抱擁するべきだ。「アメリカの中道を守る」という宣伝より、「アメリカを守る計画」を示すべきだ。トランプは、自身をナショナリストと称するが、ホワイトハウスの4年間を国民の分断に費やした。国民統合ではなく。

FP SEPTEMBER 29, 2020

America Needs to Prosecute Its Presidents

BY PAUL MUSGRAVE


 コロナウイルス危機の終息

The Guardian, Sat 26 Sep 2020

Welcome to libertarian Covid fantasy land – that’s Sweden to you and me

Nick Cohen

The Observer, Sun 27 Sep 2020

The Observer view on Boris Johnson's feeble plan for second-wave coronavirus

Observer editorial

FT September 27, 2020

Let’s be clear on policy trade-offs over a second wave of Covid

Anjana Ahuja

もし早期に世界的規模で検査体制があり、追跡と隔離ができていれば、ロックダウンなどの厳しい措置は必要なかっただろう。

ワクチンができても、われわれの生活スタイルは変えるしかないだろう。たった1つだけ確かなことは、将来も闘いは長く続き、予測不可能で、厳しい選択が続く、ということだ。

PS Sep 30, 2020

After the Vaccine

SIMON JOHNSON

ワクチンは決定的な解決策ではないだろう。ワクチンの接種には限りがあり、効果も持続しないだろう。長引く検査体制にはコストがかかる。集団的検査がコスト削減のための解決策だ。

PS Sep 30, 2020

The COVID-Climate Nexus

JEFFREY FRANKEL

パンデミックによる死者数が恐るべき水準に達したことで、われわれは3つの重要な点を思い知った。1.科学の重視。2.公共政策・政府介入の必要。3.国際協調の必要。これらは地球温暖化にも共通している。

もしある諸国(US、ブラジル、メキシコ、UK)の政治指導者がパンデミックを化学の軽視によって悪化させることができたのであれば、温暖化においても同じことが起こせるだろう。

陰謀論者たちは、温暖化を中国が流布したデマだ、主張していたが、COVID-19が中国によって作られたという非難と同じく、まったく無意味になった。

経済学者たちは、感染症や温暖化を、外部性の古典的なケース、と教えてきた。それは、公共政策が本質的な役割を果たすべき問題だ。制度は効率的に設計されていなければならない。

しかも、これはグローバルな外部性である。パリ協定やWHOのような国際協力が欠かせない。温暖化対策として、不況下の公共政策を考えるなら、今、グリーン・ニュー・ディールに投資して、将来、経済が回復してから課税することが正しいだろう。

11月の大統領選挙は、パンデミックと気候変動の脅威に直面する中で行われる。有権者は3つの点で正しい答えを求められる。

FT October 1, 2020

Covid: we’re in the same storm but not the same boat

Gillian Tett

PS Oct 1, 2020

How to End the Pandemic This Year

REDA CHERIF, FUAD HASANOV, MARIANA MAZZUCATO

すべての国が長期的な視点を持ち、その製造能力を示すべきだ。政府主導の産業・協力体制があれば、世界的な検査体制を実現し、パンデミックは数か月で終息する。

PS Oct 1, 2020

The Limits of American Recovery

J. BRADFORD DELONG

アメリカ消費者の不安は正しいものだ。その意味で、景気回復は政府が行動しなければならない。しかし、検査体制の整備においても、トランプ政権は全く無能であった。北の諸国が回復しても、アメリカの景気回復は遅れるだろう。

PS Oct 1, 2020

The Perils of Big COVID Government in Asia

LEE JONG-WHA


 アメリカ最高裁判事

FT September 27, 2020

Why conservatives have faith in Amy Coney Barrett

Kadhim Shubber and Lauren Fedor in Washington

バレットAmy Coney Barrettは敬虔なカトリックで、非常に保守的な判事である。ドナルド・トランプが指名する最高裁の3人目の判事として、30年以上にわたって最高裁の保守化を支えるだろう。

NYT Sept. 27, 2020

Is Amy Coney Barrett Joining a Supreme Court Built for the Wealthy?

By Kim Phillips-Fein

FT September 28, 2020

Supreme Court may not be the deciding factor for Midwest voters

Patti Waldmeir

FP SEPTEMBER 29, 2020

Trump’s Pick to Replace Ruth Bader Ginsburg Could Make the Supreme Court ‘America First’

BY SALVATORE BABONES


 破綻国家を改革する

FP SEPTEMBER 27, 2020

Can One Woman Fix a Failed State?

BY KATRINA MANSON

アフリカ政治・制度改革の先頭に立つ1人の女性がいる。


 アメリカ大統領選挙TV討論

NYT Sept. 27, 2020

We Don’t Need Debates

By Charles M. Blow

FT September 29, 2020

The US presidential debate: five things to watch out for

Lauren Fedor and Courtney Weaver in Washington

The Guardian, Wed 30 Sep 2020

Trump heckled, bullied and lied through the debate. It won't help him beat Biden

Richard Wolffe

45代大統領は、彼がこの4年間にしてきたように、これ以上ないほど、大統領らしくない振る舞いに終始した。

彼はやじり、嫌がらせ、大声を上げ、嘘をついた。彼の立場は揺れ続け、拳を下した場所も気にしない。なんでもけなした。

バイデンはトランプの最初の攻撃に対処できないようだった。トランプは彼を無視して話し続けた。

民主党員たちが、バイデンによってトランプが追いつめられることを期待していたなら、失望しただろう。

討論の戦術として、トランプがしゃべり続けることは会話を支配した。

「大統領、やめてください。」 Fox News Chris Wallaceは言った。それはテキサスのハイウェーの真ん中にいるアルマジロみたいだった。

FT October 1, 2020

Trump comments embolden far-right Proud Boys

Demetri Sevastopulo in Washington, Sid Venkataramakrishnan in London, and Patti Waldmeir in Chicago

FP SEPTEMBER 30, 2020

In First Debate, Biden and Trump Get Personal

BY MICHAEL HIRSH

The Guardian, Wed 30 Sep 2020

The Guardian view on the US presidential debate: a bad night for the world

Editorial

火曜日の大統領討論会の勝者は間違いなく1人だけだ。習近平である。そして敗者は、アメリカの民衆。90分間の陰鬱な闘争を不幸にも聴く羽目になった人たちだ。

その酷さをさまざまな言葉で批評家たちは表した。しかし、それが2020年のアメリカだ。ドナルド・トランプの4年間を経てこうなった。

民主党のバイデンは、彼を道化と非難し、嘘つき、アメリカ最悪の大統領とよび、黙れと命じた。しかし、税金を支払わない問題や最高裁の判事指名などで、衝撃を与えることができなかった。

アメリカの選挙は、33000万人だけでなく、70億人に影響する。トランプがもし再選されれば、その破滅は国境を超えるだろう。彼を失脚させてもアメリカの諸問題は解決しない。しかし、出発点である。


 ミダス王ではなく、税金回避常習者

NYT Sept. 27, 2020

18 Revelations From a Trove of Trump Tax Records

By David Leonhardt

トランプの不動産の多くは損失を出した。マンハッタンのトランプ・タワーは例外だ。彼は毎年2000万ドルを得ている。

トランプは、NYTが調べた18年間のうち11年で連邦所得税を払わなかった。2017年、彼は大統領であったが、納税額はわずか750ドルであった。

彼は問題のある方法で納税額を減らした。たとえば、7290万ドルを還付されていた。

トランプの名を冠したビジネスの多くは巨額の赤字であった。それも課税を減らした。

彼は多額の、何億ドルもの債務を個人として負っている。その支払期日は迫っている。

損失を出しながら、トランプはぜいたくな生活スタイルを続けてきた。多くの人が個人支出とみなす邸宅や、飛行機、テレビ出演のための7万ドルのヘアスタイルも、課税されない。

多くのビジネスは損失を出し続けている。

NYT Sept. 27, 2020

THE PRESIDENT’S TAXES

LONG-CONCEALED RECORDS SHOW TRUMP’S CHRONIC LOSSES AND YEARS OF TAX AVOIDANCE

By Russ Buettner, Susanne Craig and Mike McIntire

NYT Sept. 28, 2020

The Trump Tax Bombshell

By Giovanni Russonello

NYT Sept. 28, 2020

The Picture of a Broken Tax System

By The Editorial Board

アメリカの税制は著しい不平等と納税義務の混乱状態を示している。

NYT Sept. 28, 2020

Trump’s Debt, His Future and Ours

By Paul Krugman

トランプ時代の他の多くの暴露がそうであるように、彼の納税額は「ショッキングだが、驚くことではない」という反応だ。トランプがまったく、あるいは、わずかな税金しか払わないこと、聡明なビジネスマンであるという自慢は虚構でしかないこと、巨額の債務にまみれていることが、確認された。

それはアメリカの将来にとってどういう意味があるのか?

多くの人にとって、「750ドル」というのは、「本当かよ?」である。収支を合わせるために苦労している何千万人ものアメリカ人にとって、トランプの納税額が彼らより少ない、というのでは憤慨する。

トランプが注意深く作り上げた、大成功したビジネスマンのイメージも、まさにフェイクニュースだった。これは有権者にとって重要だ。彼らはしばしば、有能なビジネスの指導者が国を率いるべきだ、と考えている。

しかし彼はそんなものじゃない。テレビのショーを除いては。大統領になって、あらゆる面で失敗した。外交、インフラ、貿易戦争、パンデミック。トランプはミダス王(触れるものすべてを黄金に変える)の反対だ。

トランプは巨額の個人的な債務を負う。資金繰りに苦しむ人物が公職に就くことは、常に、警戒すべき問題だ。それは汚職の始まりになるからだ。

司法システムの執行を担う責任者が、国家安全保障を担うべき司令官が、債務にまみれている、というのは恐ろしい。企業の財務に詳しい専門家なら、債務が大きくなって倒産するほどなら、破壊的な動機が生じる、と言うだろう。債権者に請求される前に、できるだけ資産をはぎ取る。たとえ勝ち目がなくても、巨大なリスクを冒す。失敗しても、債権者の損でしかない。

しかしトランプの場合は、ビジネスだけでなく、アメリカ合衆国を経営している。

NYT Oct. 1, 2020

A Brief History of the Taxpayer in Chief

By Margaret O’Mara

NYT Sept. 30, 2020

Trump’s Tax Avoidance Is a Tax on the Rest of Us

By Brooke Harrington


 ドイツの30周年

The Guardian, Mon 28 Sep 2020

Since reunification, Germany has had its best 30 years. The next 30 will be harder

Timothy Garton Ash

お誕生日、おめでとう! ドイツは30歳です。103日は、再統一から30周年だった。

しかし、ちょっと待て。71歳か? 1949年に連邦共和国が設立されたのだから。いや、149歳。1871年のドイツ統一なら。1220歳。シャルルマーニュ(カール大帝)が、ドイツ人の帝政とよぶ、一般には神聖ローマ帝国の、800年に行われた戴冠式から数えるなら。あるいは、2000歳くらいか。FC Bayern Munichの聡明な元ミッドフィルダーBastian Schweinsteigerが、その好戦的で、しかもプロト民主主義の部族として、タキトゥスの描いたゲルマニアの末裔であるのだから。

この30年間は、長く、複雑なドイツの歴史において、最良の時代であった。ポピュリズム、ファナチシズム(熱狂)、オーソリタリアニズム(権威主義)が広まる世界で、連邦共和国は安定、市民、穏健の砦であった。それはアンゲラ・メルケル首相に体現されている。

ドイツの民主主義はまだ強いテストを受けていない。それはドイツ経済自身の強さとともに、中国向けの輸出、競争力を維持するユーロの水準(マルクであれば通貨価値がもっと高かった)、中東欧における安価な労働力があったからだ。

ドイツ人なら、ブレグジットのような混乱した事態を招かなかった、と彼らは考える。即座に超党派の委員会が任命され、合理的な計画を実施するだろう。

その発想は面白いが、ドイツにはAfDがあり、彼らがベジタリアンのNGOになると期待するようなものだ。また、イギリスが抜けてもEUは存在するが、ドイツの抜けたEUは存在しない。

その意味で、ドイツはEUと切り離せず、それは同時にアメリカとの大西洋同盟を抜きには、ドイツの今は考えられない、ということだ。今後の30年に解決しなければならない問題は、気候変動、AI、パンデミック、レーニン主義的な資本主義国家体制の中国が展開する攻撃的な外交、など、グローバルな性格のものである。

アメリカが指導する二次側同盟が、ドイルを守ってきた。ドナルド・トランプのアメリカはそれらを否定する。しかし、ヨーロッパはアメリカを必要としている。ジョー・バイデンなら、それを回復できるだろう。

新大西洋同盟に依拠することで、ドイツは113日に誕生する。

FT October 1, 2020

Germany’s tough choices amid the global disorder

Philip Stephens


 バイデンの経済政策

FT September 28, 2020

Bidenomics: sharp shift to left touts workers over wealth

James Politi in Washington

「私は誰かを罰したいとは思わない。私はこの国の豊かさを用いて労働に報いたいだけだ。」

穏健派の副大統領であったバイデンが、選挙公約には、サンダースやウォレンが推進したアイデアをいくつも採用した。その核心には、富裕な家計や企業に増税して、39000億ドルのインフラ投資を行う基金を設け、不平等を減らす。

PS Sep 28, 2020

The Redistribution Games

YANIS VAROUFAKIS

VOX 28 September 2020

The case for numerical employment policy targets

Lars Calmfors

PS Sep 29, 2020

Why Biden Is Better Than Trump for the Economy

NOURIEL ROUBINI

アメリカ経済の運営について、民主党より共和党が優れている、という神話は長く広まっていた。しかし、それには全く根拠がない。民主党の大統領任期は、共和党の期間に比べて、より高い成長、より低い失業率、そして大きな株価上昇を示した。

実際、アメリカの不況のほとんどは共和党の政権下で起きた。1970, 1980-82, 1990, 2001, 2008-09, そして2020年の不況は、ホワイトハウスに共和党の大統領がいた時期だ。

トランプはポピュリストとして選挙運動を行ったが、プルートクラット(超富裕層の政治支配)になることを願い、それゆえ、プルート・ポピュリストであった。まさにそのように政府を動かした。彼の経済政策は労働者にとって悲惨なもので、アメリカの長期の経済競争力を損なった。アメリカ人の職場を回復するため、という彼の通商政策と移民政策は、その逆の効果を持った。

白人ブルーカラーの不安定な労働者に多い「絶望死」は、彼の大統領執務期間に減少しなかった。2019年、薬物の過剰投与による死者数は7万人を超え、「アメリカの殺戮」は続いている。アメリカ人が将来の高付加価値の職場を必要とするなら、自己破滅的な保護主義や排外主義を唱えるより、労働者たちの再訓練をするべきだ。

FT September 30, 2020

Be bold like FDR and create jobs directly

Sarah O’Connor

FDRのニューディールでは連邦政府が「最後の雇用者」となった。

FT September 30, 2020

Biden fights a class war, not the culture war

Janan Ganesh


 香港の民主派

PS Sep 28, 2020

China’s Leaders Can’t Be Trusted

CHRIS PATTEN

独裁者の言葉は信用できない。私が返還過程の交渉を行う中で、共産党指導者の言葉は「殺し屋のようだが、必ず信用できる」と言われた。その前半は正しかったが、後半は違う。

NYT Oct. 1, 2020

Give Hong Kong the Autonomy It Was Promised

By Nathan Law Kwun Chung

香港の若者たちは孤立を感じている。社会的なつながりを失い、政府の白色テロに脅かされているからだ。630日に導入された国家安全法は、半自治的な香港で、民主派の抗議活動が続くことに応じて、あいまいな定義による告発を行うものだ。

ほとんどの人は、ネット上でも、政治的見解を表明することを控えるようになった。北京は民主派が公職に立候補することをやめさせる。目に見えない自己検閲が膨れ上がる。こうした抑圧状態はパンデミックを理由に一層強化された。

「水になれ」という抵抗のスローガンにしたがって、いつでも、どこでも、われわれは柔軟な戦略をとる。究極の目標は、香港人による香港の統治を実現することだ。それは、「高度な自治」とおして、共同宣言で約束されたものである。

自由、民主主義、人権、法の支配。これらは過去において香港の繁栄の基礎であったし、将来のグローバル・シティという地位に欠かせないものだ。根本的な構造改革だけが香港を救済できる。反対派には統治能力がないのではなく、その機会がないだけだ。

NYT Oct. 1, 2020

Hong Kong Is China, Like It or Not

By Regina Ip

香港は中国の一部である。

香港市民は平和を望み、政府はそれを実現した。

西側は抵抗する者たちを自由の擁護者として称賛したが、彼らは香港に害をなした。民主化運動は危険な過激派に乗っ取られた。

選挙の1年延期は賢明な判断だ。


 アルメニアvsアゼルバイジャン

FP SEPTEMBER 28, 2020

Why Are Armenia and Azerbaijan Heading to War?

BY JAMES PALMER

FT September 30, 2020

Erdogan is in danger of overreaching with foreign interventions

David Gardner

The Guardian, Thu 1 Oct 2020

The Guardian view on Nagorno-Karabakh: new interests in an old conflict

Editorial


 ブレグジット

SPIEGEL International 29.09.2020

Brexit Negotiations

It Is Not Helpful to Play Games

An Open Letter to Britain from Michael Roth, Minister of State at the Federal Foreign Office


 都市の復活

FT September 30, 2020

Cities are too resilient to be killed by Covid

Robin Harding


 マクロンの不毛な宥和策

FT September 30, 2020

Macron’s rapprochement with Putin is not worth it

Anne-Sylvaine Chassany


 世界の資本家と社会主義者の団結

PS Sep 30, 2020

Minding the Digital Economy’s Narrowing Gaps

MICHAEL SPENCE

PS Oct 1, 2020

Capitalists and Socialists of the World, Unite!

HAROLD JAMES

世界で最もダイナミックな経済を統治するのは共産党である。他方、以前は資本主義世界の牙城であった国は、ビジネスを6度も破産させた男が失政を重ねている。指導的な政治イデオロギーはますます一貫性を失い、そのラベルは何も意味していないようだ。

トランプと共和党は「社会主義革命」を阻止すると言い、ジョー・バイデンは、そんなこと言っていない、「株主資本主義の時代を終わりにする」と言う。いずれにせよ、資本主義と社会主義の問題が再び世論を動かし、有権者からの支持を得る焦点になっている。

しかし、以前と違って、資本主義を擁護する標準的な主張は、知的、政治的に弱まっている。アメリカのビジネス・ラウンドテーブルの声明は根本的な資本主義改革を求め、ダヴォスのワールド・エコノミック・フォーラムを創設したクラウス・シュワブは、ネオリベラリズムや市場原理主義を批判した。

現在のイデオロギー的混乱は新技術による混乱と関係が深い。デジタル化、情報・通信技術(ICT)の拡散は、集中と分散についての既存思想を崩壊させた。伝統的に、資本主義の擁護論はシステムの回復を確実にする手段として分散化を支持した。間違った決定は市場で清算され、学習・適応を促す。市場システムは安定的で、しかも、自己修正ができる。

しかし、重力の無い、「規模の経済」が支配的なデジタル経済では、そのように主張することがむつかしい。非物質的な生産の限界コストは限りなくゼロに近い。ある領域で、規模を拡大した者の大きな優位を、ネットワーク効果が強める。ICTは価格メカニズムも破壊する。価格差やその差別化は、デジタル経済の特徴であり、かつては想像もできなかった規模になり、消費者の需要とは関係がなくなっている。

社会主義の主張も変化した。旧い社会主義者は、集権化した計画が資源配分を一層効率的に行う、と主張した。しかし、人間の間違った決定は不完全な情報に由来する。われわれの時代は、コンピューターが複雑な人間社会でできる以上に、多くの情報を処理している。

それは1950年代、60年代の巨大企業についても議論された。その経営は、資本主義でも社会主義でも変わらない、と。同様に、資本主義や社会主義という言葉が広まる前、初期産業革命の時代には、フランスのサン・シモンが、銀行家、知識人、芸術家が、時代遅れの神学や封建制を打破し、「産業主義」に向かうと展望した。イギリスのロバート・オーエンは、ユートピア的な利潤共有のコミュニティーをアメリカとイギリスで運営した。そこでは、労働に基づく貨幣が計画された。

われわれは思い出すべきだ。資本主義も社会主義も、ともに機能的には同じ目標を追求していた。資源配置の分散型システムを築くこと。その中では、自発的な必要と欲求とが充足されることだ。そして何世紀もかけて示したのは、それらが過度の権力を集中するとき、どちらのアプローチも失敗した、ということだ。

源・資本家、源・社会主義者が求めた初期の夢に回帰して、新しい分散型の配分を探すべきだ。現代の技術は、ハイブリッド型社会主義の下で実現する。

19世紀初めの闘いは生産手段の所有をめぐるものだった。今日、われわれが最も必要とするのは、データの所有を求める広範な運動だ。それは19世紀初めの労働全収益(全収穫)権闘争に似ている。社会的利益、個人、プライバシーを妥協することなく、データを共有して、利益を最大にする方法とは何か?

この問題を解くために、資本主義者も社会主義者も団結せよ。失うものは、データ以外に何もない。


 資本移動が歪めた世界経済

FP SEPTEMBER 30, 2020

Global Capital Is the Tail That Wags the U.S. Economic Dog

BY MICHAEL PETTIS

アメリカ大統領、ビル・クリントンは、1993年、NAFTAに最終署名した。それは数か月前の選挙戦で約束したことに背くことだった。その決断を説明した彼の言葉は有名だ。金融と技術との結婚が、世界経済に主要な変化をもたらす、と。

「瞬きする間に人々が巨額の資金を動かすことができる現実を変える術はない。」

確かに、資本の自由(規制・制約のない”unfettered”)移動は経済運営を変える。しかし、クリントンは間違った結論を導いた。例えば、つごうよく法律を変えられる土地に生産拠点を移すことで、投資家たちは、ビジネスの利益に反して労働者の所得を守り増やそうとする政策を、即座に、罰することができる。常識とは逆に、このことは高賃金国から低賃金国への生産の移転を意味するのではない。賃金が生産性に比べて高い国から、賃金が生産性に比べてより低い国に移転する。(例えばドイツは、賃金の高い国だが、労働者の生産性は高いので、それに対して賃金水準は今でも低い。)

グローバルな貿易不均衡を生んでいるのは、低賃金そのものではなく、賃金と生産性とのこうしたミスマッチなのである。

ドイツと中国は巨大な貿易黒字を築くうえで成功した国だ。それは両国がより効率的だからではなく、家計の所得を犠牲にして、製造業を促進する政策を取ったからだ。彼らはそのために、直接、賃金を抑え、あるいは間接に、通貨を安くし、補助金を与え、環境を破壊し、セーフティーネットを劣化させた。それは実質的に所得を移転することだ。より多くを支出する中産階級、労働者、農民から奪い、より貯蓄する大企業、政府、富裕層に与える。そこには双子の問題が生じる。国内経済で吸収しきれない、過剰貯蓄と過剰生産力である。

彼らはその解決を貿易相手国に押し付ける。もし外国がそれを吸収できないなら、自ら政策を逆転する(すなわち、賃金を引き上げ、産業補助金を削減する)か、あるいは、失業者が増大することになる。

しかし、この解決策(輸出を増やす)には2つの問題がある。第1に、世界経済は需要不足に苦しんでいる。製造業の競争は厳しく、賃金を抑圧している。第2に、過剰貯蓄を受け入れる国は、それに応じて貿易赤字を累積する。それは資産の所有権を移転することを意味する。株式、債券、不動産、工場が輸出国(貿易黒字国)の所有になる。他方、資本流入国(貿易赤字国)は、その経済を調整する。それが先進国の場合、常に、失業の増大や債務の急激な増大(アメリカのような国ではより起きること)になる。

アメリカは貯蓄率が低いから、外国資本の流入が必要だ、という者がいる。それは逆立ちしている。アメリカの貯蓄率を下げているのは、外国からの資本流入である。外国資本の流入が、失業の増大と債務をもたらす。

アメリカが発展途上国なら、貯蓄不足で制約された投資が、資本流入によって増えるだろう。19世紀にそうだったように、資本流入は良いことだ。しかし、グローバルな貯蓄過剰と歴史的な低金利が続く世界で、アメリカ企業は投資しない現金を貯めこんでいる。外国の貯蓄が流入しても、投資は増えない。資本流入が投資を増やさないとき、貯蓄が減る。これは収支表の鉄則だ。

資本流入はドル高になり、輸出企業から輸入品消費者への所得移転は消費を増やす(貯蓄を減らす)。輸入の増大は失業を増やす。失業増に対して、財政刺激策は政府の赤字(債務)を増やし、金融当局は融資基準を甘くする(債務増は貯蓄源である)。外国投資家が株や債券、不動産を買うと、その価格が上昇してアメリカ人は豊かになったと思い、債務を増やして消費する。

自由な資本移動に関して、エコノミストたちは、グローバルな経済で資源のより生産的な利用を実現する、と擁護する。理想化された世界では、小規模の投資家たちが世界中の効率的投資を探しており、インフラや生産設備の能力を改善することで利潤を得る。

現実はそうではない。国際投資は主にポートフォリオの管理である。株や債券を短期のフローとして管理する。それは投機であり、流行の仮説、資本逃避、インデックス、その他、さまざまな理由で取引されるが、資本配分を効率化することとは関係ない。莫大な国際投資が、すでに過剰貯蓄と安価な資本に苦しむ先進経済に向けて流入している。

「制約のない資本移動」を崇拝することは間違いだ。それは、過剰貯蓄のある世界で、生産的投資をもたらさない。グローバルな貯蓄配分の不均衡を強め、赤字国の失業と債務を増やし、労働者の交渉力を損ない、いたるところで不平等を強めている。グローバル資本という尻尾が、経済という犬をふりまわす。

政府が介入して、資本移動を制限・安定化するときだ。例えば、アメリカ政府は外貨取引もしくは資本移動に課税する。海外で得る利子や配当にも課税する。USドルの海外での使用を制限し、通貨バスケット(SDRなど)に代えるか、新しい貿易・資本移動の体制を友好諸国の間で模索する。

資本移動を制限して初めて、貿易は世界経済を適切にバランスできる。その制限に対して狂信的に反対するのはウォール街だ。しかし、正しい政策によって、労働者、生産者、農民、中産階級を破滅させる経済のゆがみが取り除かれる。アメリカ史の大部分でそうであったように、利潤を求めて競争する大企業は、賃金抑制ではなく、自国の生産性を高めることに投資するだろう。

FT October 1, 2020

SoftBank: technology evangelist or hedge fund?

Leo Lewis and Kana Inagaki in Tokyo, Arash Massoudi in London

PS Oct 1, 2020

The Need for a Great Transformation

ANN PETTIFOR

世界経済は多次元の不均衡に苦しんでいる。都市化、環境破壊、土壌汚染、森林破壊、野生生物種の絶滅、海洋の生態系も破壊されている。経済の不均衡は、19世紀のJ.A.ホブソンが『帝国主義』で「過少消費」とよんだ、グローバルな購買力不足だ。巨大な経常収支不均衡が保護主義や貿易戦争を生じている。ブローバルな金融不安定性、資産所有の史上空前の格差、労働に比べてあまりにも資本の力が強まっている。

Michael C. Klein and Michael Pettisが著書Trade Wars Are Class Warsで述べたように、社会・政治・経済対立の核心は、銀行家・資産保有者と、普通の家計との間の対立である。国際金融システムを民主化するべきだ。ドルの支配に代えて、新しい「合成覇権通貨」を採用する。

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The Economist September 12th 2020

Brexit and international law: A shocking breach

Turkey: Erdogan’s world

Germany and Russia: The lady may toughen up

Charlemagne: Last of the cedntre-lefties

Brexit negotiations: A new barrier

Bagehot: Revolutionary conservatism

Government debt: Putting on weight

Free exchange: Which market model is best?

(コメント) イギリスのジョンソン首相が、国際法を破ってEU離脱交渉を有利にする脅しをかけたことは、保守党もしくは保守主義に流れる過激な発想として理解できます。元来、保守派は社会の漸進的な変化を支持し、歴史的に与えられた秩序や伝統を守る党派ですが、革命派による攻撃に我慢できず、過激な権力戦略を採用して革命派の主張を(実は認めて)横取りします。

市場モデルのどちらが優れているか、という最後の記事もおもしろいです。資本主義には、ドイツなど「協力型」と英米の「自由市場型」に加えて、今では中国の「権威主義国家型」も加わりました。コロナウイルス対策で、自由市場型は負けましたが、技術革新に強いので、コロナ後の再編やワクチン開発では優位を奪う返すかもしれない、と主張します。

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IPEの想像力 10/5/20

ブレグジットでUKが解体するかもしれない、と私は思いました。保守党はポピュリストに占拠され、労働党は支持者から見放され、若者は政党政治に関心を持たなくなっている。主要政党が解体し、新しい政治・社会運動やイデオロギー、新旧の支配勢力が、政治的な同盟関係を組み替える歴史的瞬間に至る前に、こうしたデマゴーグたちは歴史の中の道化師たちなのか、と思いました。

しかし、トランプがアメリカの民主主義をここまで解体する・できる、とは思いませんでした。共和党はトランプ・ショックで新しい保守主義を模索するのか。民主党は、ポピュリストに対抗するために、金融的利益に従うグローバリゼーションや、政治経済モデルの質を転換し、広い、革新的な政治基盤を探し始めるのではないか。

私は楽観していました。国際秩序だけでなく、トランプの独裁でUSそのものが分裂するかもしれない、と本気で思ったのは最近です。

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この時代の政治経済秩序を狂わせたダイナミズムは何か? デジタル化によるハイテク大企業への富と権力の集中、また、無制限の資本移動自由化がもたらした階級対立を、考える論説に感銘を受けました。

HAROLD JAMESは、私たちのデータを集めて、それを加工するハイテク大企業の利益が、市場競争や価格メカニズムで決まらないこと、資本主義の擁護論も、社会主義の資本主義批判も当てはまらないことに注意します。

まともに良い商品を生産しても、なかなか利益が残らない。消費者はネットで検索するから、厳しい価格競争に圧倒される。より安価な供給者が世界中から現れる。アイデアは模倣され、新商品は偽造され、信頼されるブランドも買収される。

データを加工するハイテク企業は、さまざまな無料のサービスを提供して、非常に多くの利用データを集積する。どのような属性の人びとが、いつ、どのように動くのか。何を買うのか。詳しく予測する。企業は、何としても新しい商品を売りたいと願い、そのためのデータと予測を彼らから買うだろう。

企業もそうだが、政治家は選挙にどうしても勝ちたい。あなたが勝つ方法がわかっている。対立候補を落選させる情報と戦略を教えることができる。そう言われたら、政治家たちはそれを買うだろう。コンサルタント契約を結んで、大金を支払う。

市場も政治も、データによって細分化され、効果的な情報を、消費者や有権者に個々に送り付ける。それは、市場の均衡でもなければ、民主主義的な選挙でもない。情報操作、情報戦争である。

MICHAEL PETTISは、資本移動と貿易とが逆転した世界を発見する。より多くの富を生産するグローバル経済の再編によって、貿易不均衡が生まれているのではない。短期の、投機的な利益を目的とした、制約の無い国際資本移動があることで、貿易不均衡が所得分配の不平等、失業と債務の増加につながっている、と批判する。

1国の貯蓄と投資のバランスを理由に、貿易(経常収支)不均衡が決まる、という説明をよく聞くけれど、Pettisは反対する。最大の貿易黒字国は、自国の労働者の消費を抑える中国とドイツである。彼らの輸出向けに強化された産業政策が間違いだ。また、その反対にドル高や安価な輸入を歓迎し、ウォール街の利益や、債務に依存した貧しい家計を生み出す政策に従うアメリカ政府が問題だ、と。

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小さな民主主義に、私は期待しました。秩序を築くのは、普通の人たちが話し合う場を尊重する世界なら、優れたアイデアによる社会の改善を支持する同盟でしょう。

グローバルなハイテク企業も、国際通貨・金融システムも、民主的な諸社会の実現に向けて、人びとを助ける形で活動します。大きな民主主義は、優れた政治経済構想と国際秩序を人々が獲得することにかかっていると思います。

J.M.ケインズが生きた時代が、再現しているのかもしれません。

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