IPEの果樹園2020

今週のReview

9/28-10/3

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ジョンソン政権 ・・・中国外交と民主主義 ・・・パンデミック不況と対策 ・・・リベラル・エリートの限界 ・・・アメリカ民主主義の転換 ・・・ワクチン開発競争と政治闘争 ・・・ポピュリストと泥棒国家 ・・・21世紀のガバナンス

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 ジョンソン政権

The Guardian, Fri 18 Sep 2020

This Brexit government’s ignorance is steering us towards disaster

Jonathan Freedland

この政権は、多くのことについて無知であるが、特に2つのことを知らない点で、この国に長く、深刻なコストを強いるだろう。2つとも、ブレグジット・プロジェクトの中心にある問題だ。

1に、アメリカとアメリカ政治を知らないことだ。イギリスの政治家階級が、まさに強迫症と言えるほどアメリカに注目するにもかかわらず、驚くほど無知である。

ブレグジット推進派は、英語を話す人々、英米圏優位の信奉者である。ヨーロッパ大陸をバカにし、大西洋をまたぐ従弟たちとの関係を称賛する。その感覚は地理を無視し、欧州単一市場を失っても、アメリカとの新しい通商条約で取り返せる、と保守党の大臣は約束した。

今週、ジョー・バイデンのツイートはその幻想を打ち砕いた。ブレグジットのせいでグッドフライデー合意が失われることは許せない、と。英米の通商条約は、アイルランドに国境管理を復活させない、という合意を守ることが前提だ。

保守党はバイデンを無知で無能だとけなした。しかし、そのような反応は、バイデンではなく、彼らの欠点を示しただけだ。せめてGoogleでバイデンの経歴を観ておくべきだった。

彼らの無知はさらに深刻だ。トランプ政権が通常合意を迅速に結ぶというのは幻想だ。トランプがホワイトハウスにいるとは限らない。より重要なことは、アメリカ議会が認めなければ、トランプは署名できない。アメリカ議会には、イギリスとではなく、アイルランドとの関係を重視する政治家が多い。

2の無知は、イギリスの保守党が北アイルランドの問題を無視し、あきあきして退屈していることだ。ジョンソンはロンドンの近隣区を再分割する問題にたとえた。アイルランド海に境界を設けないと連立政党に約束し、EUとの合意でそれをあっさり破った。ジョンソンは今、EU合意を破ろうとしている。

UKEUを離脱すれば、その間には境界が復活する。それを解決するために、グッドフライデー合意はEUを必要とした。北アイルランドとグレイト・ブリテンとは、境界線がどこにあるか、という問題に、答えを出せなかったからだ。内戦を終わることができたのは、双方が超国家のEUに帰属したからだ。

しかし、ボリス・ジョンソンとブレグジット推進派は、この問題を無視している。

FT September 18, 2020

No-deal hype obscures the real threat of a bad Brexit

Henry Mance

FP SEPTEMBER 18, 2020

Brexit Is a Distraction from the United Kingdom’s Real Economic Woes

BY TEJ PARIKH

2008年の金融危機から、UKは完全に回復しなかった。今、パンデミックにより、G7の中でも最大の落ち込みを経験している。最大の貿易相手であるEUとのデカップリングは、1231日に移行期間が終わると、潜在的な破壊力を発揮する。

これは長い衰退の歴史の新しい局面でしかない、と批判家は言う。しかし、衰退は不可避ではない。UKは、経済大国としての地位を取り戻そうとするなら、長期の視点を持たねばならない。

PS Sep 21, 2020

International Law and Political Necessity

ROBERT SKIDELSKY

UK政府は、EUと合意した文書は交渉のための策略であった、と認め、それを「突破」する法案を提出した。それは国際法に違反する。しかし、協定が自国にとって損害をもたらすとしても、それを文字通りに実行するか、というのは議論の余地がある。

国際法の違反は、計画的なものと、そうではない、即興的なものがある。たとえば、多くの国が債務を支払えなくなって不履行になる。あるいは、ECBは条約で禁止されている政府債券購入に踏み切った。

私は、ジョンソンが違反する気で合意に署名した、という説明に、北アイルランド問題を考慮すればありうることだ、と同情する。EU離脱の政治過程には法的な混乱が予想された。今また、UK-EUの通商取り決めに関して合意期限が迫っており、ジョンソンは新しい法案でEUに合意への圧力をかけたのだ。

これが優れた交渉術なのかどうか、議論の余地はある。しかし、法解釈だけで政府を非難するのは間違いだ。法律家が国を動かしているわけではない。

FP SEPTEMBER 21, 2020

Brexit Might Break Britain. What Will Scotland Do?

BY DAVID LEASK

FT September 22, 2020

Brexit and the City: Brussels’ new battle to rival London in finance

Sam Fleming and Jim Brunsden in Brussels and Philip Stafford in London


 コットンと労働者の国際規制

FT September 18, 2020

Forced labour is the price of a cheap cotton T-shirt

John Gapper

アメリカ政府は、今週、中国の新疆地域で強制労働によって作られたコットン(綿)の輸入を規制すると発表した。この動きには歴史的な経緯がある。19世紀のアメリカにおけるプランテーションから、最近のウズベキスタンにおける児童労働まで、コットンはつねに人権問題と結びついていた。

この動きは、中国が推定100万人のウイグル人・ムスリムを収容所のバラックで搾取しないよう、新疆の繊維産業が「職業訓練キャンプ」を利用しないよう求めるものだ。

この仕事のおよぶ巨大な範囲は、あなたが着ている衣服を見ればわかる。その繊維はどこから来たのか? あなたも、小売店も、ブランドもそれを知らないだろう。しかし、世界のコットンの約20%が新疆で生産され、トルクメニスタンとウズベキスタンも重要な生産者であるから、あなたの服も(人権蹂躙で)「汚れている」だろう。

コットンは貿易され、グローバルに紡績され、織られるから、生産地はわからなくなる。そしてバングラデシュやトルコの工場で服になる。それはあまりにも複雑で、遠距離である。

しかし、コットンに関する大義を捨てる必要はない。さまざまな生産者直販のブランドが広告を出している。現代の商品にこだわる消費者には、製品の信頼できる情報を示し、追跡可能で、透明性を高めることが魅力になる。強制労働は魅力を失わせる。優れた繊維であるだけでなく、倫理的な基準を満たすサプライチェーンであることを強調するべきだ。

NYT Sept. 18, 2020

50 Years of Blaming Milton Friedman. Here’s Another Idea.

By Binyamin Appelbaum

リベラルはM.フリードマンの自由市場イデオロギーを攻撃するのが好きだ。ビジネス界は、フリードマンの小論を大歓迎し、私益を公然と主張した。

しかし、それはどちらも間違いだ。企業や私益の役割ではなく、国家の役割を明確に再定義するべきだ。


 中国外交と民主主義

FT September 18, 2020

China’s assertiveness is against its economic interests

今月、重火器を使用した軍事衝突が、45年ぶりに、ヒマラヤにおける中国とインドの国境地帯で起きた。この事件は2つの核保有国が戦争するリスクだけでなく、世界中で、アジアの安全保障が中国の南部や東部で紛争を生じている事態に、懸念を強めさせるものであった。

アジアにおける個々の発火点には、地域の複雑な事情と歴史が関係している。しかし、それらに共通する1つの要因は、中国の姿勢が、特に、2012年に習近平が権力を握ってから、強硬策に転じたことだ。日本は尖閣諸島で緊張状態にあり、ベトナムやフィリピンは南シナ海で紛争を抱え、台湾をめぐってはアメリカの政府高官が訪問したことで中国が憤慨した。

北京は、これらを徴発されたものと考える。2012年のバラク・オバマによる「アジア旋回」から、ベオグラードの中国大使館空爆、日本の首相たちの靖国神社参拝、インドによる紛争地帯でのインフラ建設。

しかし中国も、強硬策を推進している。2017年には、習が、ケ小平から続く「韜光養晦」という外交姿勢を改めた。そして、それに代わる軍と産業の強化戦略を打ち出した。

中国の批評には、まだ中国の1人当たりGDP68位であり、こうした強硬な外交がグローバリゼーションの利益を、中国にとっても失わせる、と批判するものもある。近隣のアジア諸国やアメリカとの対立を深めることが何を意味するのか、慎重に考えるべきだろう。

FT September 20, 2020

The west should heed Napoleon’s advice and let China sleep

Kishore Mahbubani

21世紀に入って20年経つが、西側の最大の課題は明らかだ。それは、中国が舞台の中央に戻ったことだ。西側は失敗を準備しつつある。

それは3つの間違った前提から生じる。第1に、中国共産党CCPが支配する限り、中国はパートナーになれない。1980年代後半、ソビエト連邦が崩壊してから、共産主義は歴史のごみ箱に入った。中国人の知性を抑圧する政党と、世界は協力できない、と。

しかし多くの証拠は、国民がCCPを抑圧的とは感じていないことを示す。スタンフォード大学の中国系アメリカ人の心理学者は2019年に中国を訪れた後、「中国が急速に変化しており、・・・停滞するアメリカと対照的に、中国の文化、自己認識、モラルは、おおむね良い方向に急激な転換を遂げている」と書いた。

2の前提は、たとえ中国国民が共産党と幸せであるとしても、世界は中国がいますぐ民主化することで改善される。

ソ連が崩壊して生活水準が急激に低下するのを観るまでは、即時の民主化を支持する中国人もいた。しかし今や、多くの者は、中央政府の弱さが大規模なカオスや、中国人の苦難をもたらすことに、疑いを持っていない。中国400年の歴史、特に、いわゆる「恥辱の200年」がその証拠だ、と考える。

さらに、民主的に選出された政府は必ずしもリベラルではない。インドのネルー首相は、アメリカのケネディー大統領、イギリスのマクミラン首相が抗議しても、1961年、ポルトガル領のゴアを奪い返した。もし中国が民主的な政府のもとにあったら、香港や台湾に対する忍耐力はもっと少なかっただろう。

民主的な中国政府が新疆の分離独立主義者に対して弱腰であることを嫌い、行動することは、インド政府がカシミールをロックダウンしたことを見ればわかる。実際、アジアの近隣諸国は、その最大の民主主義諸国でも、中国の体制転換など推進していない。安定した、予測可能な中国は、たとえ外交姿勢が強硬であっても、それに代わる政治体制よりも好ましい。

3の前提は、最も危険である。民主的な中国が必ず西側の規範と慣行を受け入れ、西側クラブに追加してもらうことで幸せになる、というものだ。日本がそうであったように。

アジアに広がる文化のダイナミズムを観るべきだ。トルコは世俗化を捨てて、エルドアンのイスラム・イデオロギーに転換した。インドでも、英米風のネルーではなく、ヒンドゥー教に帰依するモディが指導者である。

脱西洋化の津波が起きている。トルコやインド以上に、中国には反西側感情の火山が爆発寸前である。現時点で、こうした中国ナショナリズムの勢いを抑えるほど強い政治勢力は、唯一、中国共産党だけである。

西側の諸政府は中国の指導部と協力して生きることを学ぶべきである。その転換や早期の崩壊を望むのは間違いだ。

FT September 23, 2020

China is escalating its punishment diplomacy

Jamil Anderlini

中国の習近平主席がドイツのメルケル首相と話す予定の2日前に、中国はドイツからの豚肉輸入をすべて止める、と発表した。これは中国国家の経済外交を示す最新の例である。

PS Sep 23, 2020

China Is Paying a High Price for Provoking India

BRAHMA CHELLANEY

NYT Sept. 24, 2020

China Has a New Plan to Tame Tibet

By Adrian Zenz


 パンデミック不況と対策

PS Sep 18, 2020

The Post-Pandemic Recovery’s Missing Link

BERTRAND BADRÉ, AURÉLIE JEAN

すでに世界金融危機の水準を超えてしまっている。これほどの介入や財政・金融負担をいつまで続けられるのか? 回復に向かうという信頼が強くなければならない。

FT September 20, 2020

How to survive the Covid-19 retail apocalypse

Rana Foroohar

旅行業、商業不動産は別にして、COVID-19による破壊的な影響を受けた業種として、小売業を超える業種は思いつかない。雑誌Vogueの編集長でさえ、自宅ではトレーナーを着ている。ドレスアップする者などいない。

しかし、レジャーウェアは違う。売り上げが伸びている。そうした企業の社長と話し合って、パンデミックを生き残る企業について、いくつかの興味深い教訓を得た。

教訓1。デジタル化を進める。それはコストカットのために以前から進んでいた。

教訓2。コストカットと契約再交渉に創造的である。商業不動産の取引で力関係が変わった。都市部の不動産価格が急変するのを抑える工夫が要る。

教訓3。価格は重要だが、目的も重要だ。若者たちは価格を意識しているが、それだけではない。倫理的基準、ローカリズム、環境保護といった、彼らの価値が実現された商品を求める。

パンデミックには新しいチャンスがある。

FT September 20, 2020

Expect long-term economic scarring from Covid-19

Gavyn Davies

GDP予測を上向きに修正するコンセンサスがある。それは厳しく検証されるだろう。

夏のアメリカ経済は驚異的な回復を示した。しかし、ワクチン開発や検査体制の整備は、来春までに大きく進むことはないだろう。学校やビジネスの再開は新しい感染者の増大をもたらし、再びロックダウンになるかもしれない。

先進経済にとって最大のリスクは、長期的に観て、不確実さとその心理的な影響である。家計は貯蓄を増やし、企業は投資に消極的である。特に多くの債務を抱える企業がそうだ。

「創造的破壊」としてはさにゃ失業が生じ、部門間の変化が生じることは、長期の回復にとって必要である。しかし、以前の不況に比べて、生産の水準が低い時期が長引くだろう。先の金融危機に比べてもそうなっている。

春に世界経済が底に達してから金融市場は強気である。しかし、厳しい時代はまだ始まったばかりだ。

PS Sep 21, 2020

The Economic Case for Biden

EDMUND S. PHELPS

批評家たちは、11月の選挙で、バイデンに投票すべき多くの理由を示す。エコノミストたちは人びとの生活が改善するかを議論するだけだ。しかし、その条件を決めるのは経済状態だけではない。

バイデンを支持する理由は、ドナルド・トランプ大統領が支持できない経済的理由から始まる。トランプは放漫財政を気にしない。アメリカ企業を脅す。ムッソリーニがやったように。無害な貿易赤字を減らす十字軍を唱え、内外で資源配分を悪化させた。ポピュリストのレトリックを多用するが、差別された者や低賃金労働者の条件を改善するために何もしていない。気候変動をでっち上げと断言し、米兵の英雄的な自己犠牲を侮辱した。アメリカの諸制度を攻撃し、政府機関を空洞化させている。同盟諸国を離反させた。通称DACAを廃止し、子供のときにアメリカに来た、正規資格のない外国人を強制送還の恐怖にさらした。

アメリカが繁栄し、公正で、調和ある社会になる道を、トランプは閉ざしている。

バイデンを支持すべき積極的理由がある。アメリカにおいて深刻な賃金の格差があることを、バイデンは理解している。この低賃金を、子供を育てる母親は改善できない。バイデンは、ペンシルベニアの鉄鋼地帯で育ったから、低賃金労働者たちの権利はく奪と苦痛を、決して忘れない。

気候変動についても、1970年代以来の不況についても、バイデンは人びとのアメリカン・ドリームを実現するため、改革を実行する。

NYT Sept. 21, 2020

Is the Stock Market Rooting for Trump or Biden?

By Ruchir Sharma

PS Sep 22, 2020

Willem H. Buiter

Says More…

名目政策金利がゼロ近辺に落ちた世界で、財政刺激策や減税を中央銀行が融資している。これは、将来、金利が上昇するときに財政緊縮を強いるのか、中央銀行の政府融資を強いるのか? 連銀は危険資産まで含めて市場介入した。中銀の独立性は名目でしかない。

アメリカのインフレや世界のドル需要はどうなるのか? ユーロ圏では政府債務のデフォルトが避けられない。ESMを拡充して秩序ある債務整理をするべきだ。

発展途上諸国の債務も支払えない。債券諸国は債務の支払いを猶予している。同様に、マーシャル・プランを、かつての4年ではなく、もっと長期に行う必要がある。

パンデミックは社会主義的な実験を一斉に認めた。EUの復興基金がそうだ。アメリカには福祉国家の諸制度がない。そして、たとえ11月にバイデンが勝利しても改革は進まないと思う。もっと長期の不況が続いてからでしか、政治的意志は形成されない。

中央銀行がGDP20-30%を政府に与えることが、最も効果的なマクロ政策である。「ヘリコプター・マネー」による財政支出の拡大は切り札として今も残されている。

2016年から主張していたように、ブレグジットは、ハードな、合意なしの離脱になるだろう。サプライチェーンの混乱は大きなダメージを生じる。投資が減り、家計も貯蓄を増やす。しかしロンドンの金融街は、最も損失が少ない。離脱によって規制を大幅に緩和し、ヨーロッパから民間取引を奪うからだ。

しかし、COVID-19UK経済を破壊し、5年以内に、北アイルランドとスコットランドを失うだろう。UK解体が、ブレグジットの最大の不利益である。

FT September 24, 2020

Madrid vs New York: a tale of two cities during Covid-19

Daniel Dombey in Madrid, Joshua Chaffin in New York and John Burn-Murdoch in London

VOX 24 September 2020

A tale of three depressions

Paul De Grauwe, Yuemei Ji

COVID-19パンデミックを、1930年代の大恐慌、2007-2008年の銀行危機と大不況と比較する。

1930年代大恐慌と2008年大不況の違いは、始まりは似ているが、後者が10カ月を経て回復に向かったことだ。それはマクロ政策の緊縮と緩和の違いであった。

現在のパンデミックは、その落ち込みが急速であった。COVID-19とロックダウンが需要と供給を一気に破壊したからだ。しかし、マクロ的な拡大がそれを補ったため、2008年の不況よりも早期に回復し始めた。その違いは、2008年以降は、危機を経験した銀行部門が融資を再開しなかったからだ。

パンデミックからの回復は早いが、第2波、第3波があるか、わからない。V字回復が成功するだけの金融・財政の支援を続けることは難しいかもしれない。


 リベラル・エリートの限界

PS Sep 18, 2020

The Roots of American Misery

JAMES K. GALBRAITH

アメリカ人の不満について、深い分析と有効な解決策は示されたか? ハーヴァード大学とプリンストン大学の教授たちが、アメリカがどのように世界の模範から嘲笑の的になったかを説明する。

Robert D. Putnam (with Shaylyn Romney Garrett), The Upswing: How America Came Together a Century Ago and How we Can Do It Again, Simon & Schuster, 2020.

Michael J. Sandel, The Tyranny of Merit: What’s Become of the Common Good?, Farrar, Straus and Giroux, 2020.

Anne Case and Angus Deaton, Deaths of Despair and the Future of Capitalism, Princeton University Press, 2020.

パットナムRobert D. Putnamの本によれば、さまざまな次元で、20世紀初めから1960年代後半まで、事態は改善されていた。しかし、それ以降、事態は悪化し、退廃と機能不全が高まっている。パットナムは、この歴史的な転換を、逆U字型の「I-We-I」曲線として説明する。公共目的、集団精神は低下し、自己中心的な、ナルシシズムが増えた。この国のリーダーにも示されている、と。

サンデルMichael J. Sandelは、ポピュリストの台頭を「メリトクラシー(能力主義)」と結びつける。かつてのような悪しきWASP支配に戻ることがサンデルの主張ではない。社会階層、宗教、人種で差別した旧体制は、低い社会的地位がその人の劣等さを示すわけではない、と理解していた。人びとは達成することに誇りを持った。能力やその評価を数値化する社会は、敗者に絶望を与える。

しかし、パットナムもサンデルも、経済的なデータを誤っている。2人とも、マサチューセッツ州、ケンブリッジを中心に世界を理解している。彼らが依拠するのは、ハーヴァードとプリンストンの教授たちだ。しかも、ケンブリッジのリベラルは、1973年以来、ラディカル派や旧世代を排除してしまった。マルクスやケインズの遺産、ニューディールを支えたアメリカ制度学派の知識もない。

ケイスとディートンAnne Case and Angus Deatonは、有名大学の背後にあるアメリカの現実に、注目している。彼らは1つの目立った発想だけで事態を説明していない。薬物中毒を広めた悪人たちや制度の責任を追及する。

しかし、「絶望死」をもたらすものは何か。死亡率と貧困とを直接に結びつけることを否定する。所得の減少や失業は、社会保障システムによって補助されている。より重要なことは、コミュニティーの雇用を支える主要な企業が失われたことだ。そのようなコミュニティーでは、人びとが、不確実な、変化しやすい、絶望に向かうような生活を強いられる。

しかし、ケイスとディートンの解決策も、大学教育、医療コストの引き下げなど、中途半端な対策である。絶望死の議論は、移民、技術革新、グローバリゼーションなどに関して迷走し、企業の独占を批判する。しかし、市場競争が回復すれば、こうした諸問題が解消すると思うのだろうか?

ドナルド・トランプが大統領になったのは、過去半世紀に不平等の拡大が最小であった諸州である。他方、ヒラリー・クリントンは、急速に所得を増やした都市の専門職と、それに並行して、急速に増大した低所得の移民・マイノリティーたちから支持された。

アメリカには、苦しい現状を完全かつ正直に描き、大衆の声に応えるような、真のラディカリズムが欠けている。ハーヴァード大学とプリンストン大学の高い地位から、そのような批判を形にすることは難しい。他方で、トランプのような詐欺師の発言を8000万人がフォローしている。

政府、メディア、思想家、社会科学者の言うことなど、この国の大部分の人びとは信用していない。

FT September 21, 2020

A new era of hunger has hit the US

Patti Waldmeir

FP SEPTEMBER 21, 2020

You Can Only See Liberalism From the Bottom

BY DANIEL IMMERWAHR

アメリカが世界で最も優れた、最良の人々が住む国だとみなされたのは、それほど以前のことではない。ノーベル賞受賞者の数、科学技術、世界のエンターテイメント、そして夢を放出していた。

その墜落はあまりにも急速で、憤慨をよんだ。今やアメリカのイメージは、愚か者たちの集まる村、である。

これはわれわれの時代の謎である。もとから、まぐれ、だったのか。そうではない、という理論がある。インド生まれのエッセイスト・小説家・歴史家であるパンカジ・ミシュラPankaj Mishraがそうだ。英米の指導者たちは危険なほどに現実を無視する、と彼は論じた。

ミシュラが注目したのは第1次世界大戦だった。それに先行したのはヨーロッパにおける「100年の平和」であった。その間、指導的諸国はめったに戦争せず、戦争しても短かった。J.M. ケインズは平和がもたらした経済的繁栄を称賛した。ヨーロッパは文明の高みを表し、イギリスはその頂点を極めた。

あるいは、すくなくとも、ロンドンから見れば、そうだった。しかし、北京、レオポルドヴィル、カルカッタから見た世界は違った。ヨーロッパの平和な時代は、侵略、征服、文字どおりの殺戮を、世界に広めた時代であった。それは、ケインズの観た、文明世界の西側中産階級が快適に暮らす代償だった。

しかし彼らは、その無慈悲な野蛮さを、ほとんど無視した。第1次世界大戦で起きた何物も、彼らに植民地化された世界で暮らす人々が驚くようなことではなかった、とミシュラは考える。そして、この第1次世界大戦のパターンを、現代でも再現する、と警告する。

リベラルのプロジェクトには、その中心に巨大な矛盾がある。リベラルは、その歴史から、彼らが好むシステムに慢性的に生じる不平等、暴力、人種差別を消し去った。だからNiall Fergusonは、公然と帝国を擁護するのだ。Thomas Friedmanはイラク戦争を熱烈に推進したし、イスラエルが市民たちを空爆しても、サウジアラビアのサルマン皇太子を称賛しても、アメリカのコモン・センスを示す大物として扱われる。

ミシュラは、西側リベラルの過ちを知っている南の声を聴くべきだ、と主張する。彼らはもっと複雑で、世界を統一基準で観ないし、過度の個人主義を唱えない。


 アメリカ民主主義の転換

SPIEGEL International 18.09.2020

Harvard Philosopher Michael Sandel on the Trump Phenomenon

"The Democratic Party Opened the Way for Trump"

Interview Conducted by Susanne Beyer

NYT Sept. 18, 2020

Can We Escape the Political-Industrial Complex?

By Elliot Ackerman

アイゼンハワーDwight Eisenhower大統領は、その退任演説で警告した。「政府の諸会議において、軍産複合体が、望んで、或いは、望むものでなくても、不当な影響力を獲得することに、われわれは反対しなければならない。誤った権力配置が破滅的に増大する潜在的可能性が存在し、それは続くだろう。」

アイゼンハワーは、連合軍を指導してヨーロッパでナチスと戦った軍人でもあった。その演説は19611月、冷戦の高まりを受け、アメリカ社会が劇的に軍事化する中で行われた。

演説から60年近くたつが、諸産業が自己正当化し、永続化する傾向を指す言葉として、「産業複合体」がしばしば使用されてきた。製薬、娯楽、教育などだ。今、最も危険なことは、そこに政治がよみがえっていることだ。

日々の行動や結果を形成する様々なルールは、われわれの政治システムの中枢を占める2大独占体、すなわち、民主党と共和党の利益に従い、その利益になるように巧妙に最適化されている。われわれはこれを集合的に政治・産業複合体とよぶ。

選挙キャンペーンのスタッフ、世論調査、コンサルタント、その他の政党機関だけでなく、メディアもそうだ。政治・産業複合体の影響は、政治を越えて広くおよんでいる。生活のすべての面に、左右の政治対立が反映される。あらゆる質問が政治的な意味において見られる。

米ソの冷戦を助長した軍産複合体と同じやり方で、政治・産業複合体は左派と右派の対立を助長している。

われわれは2020年の大統領選挙に向けて暴力を促す断崖の淵に立っている。双方が選挙結果に反対する準備をしている。われわれは、どちらの側も敗北を受け入れようとしない、絶望的なまでに分断された国民の時代に入るのか? 民主主義において、それこそまさに相互確証破壊である。

PS Sep 22, 2020

The New History Wars

JEREMY ADELMAN, ANDREW THOMPSON

NYT Sept. 22, 2020

America’s Tech Billionaires Could Help Protect the Election. If They Wanted To.

By Charlie Warzel

FP SEPTEMBER 22, 2020

The Republican and Democratic Parties Are Heading for Collapse

BY LEE DRUTMAN

アメリカの民主主義は目の前で崩れ落ちそうに見える。しかし、アメリカは以前にも政治・経済危機を経て、政治と経済に必要不可欠な転換を遂げることで危機から再生した。2020年代もそうなる理由がある。アメリカは、政党システムを見直し、展開する民主主義を再生するときだ。

概ね、アメリカは6つの政党システムを経てきた。各時期には、政党間競争が安定的で、経済に占める政府の役割のような、主要な論点で勢力が均衡していた。すなわち、1796-1820, 1832-1856, 1868-1892, 1896-1928, 1932-1968, and 1980 から今まで。システム間の移行は、一般にトップ・ダウンで、典型的には社会的危機が触媒となり、エリートの連合体に亀裂や再編が起きることだった。5つの政党システムは、24年、24年、24年、32年、36年続いた。人びとの寿命が長くなってきたので、ここには明確な規則性がある。それによれば、現行の政党システムは、今、崩壊している。

もちろん、過去は未来の保証にならない。

単純小選挙区、1ラウンドで、勝者が全ての選挙人を取る、アメリカ特有の選挙制度により、2大政党が政治的競争を支配する。そのために、2つの政党は巨大なテントを広げて、多くの党派を吸収する連合を形成しようとする。政権を取る多数派は、多くの異なった利益を、広大な地理的領域で、包摂する必要がある。しかし、こうした連合を長期に維持することは難しい。

時間が経つにつれて、連合を組んだ原理は弱まり、かつて問題を解決したイデオロギーは新しい問題を生じ、人口の変化が政党の内外で勢力均衡を変える。しかし、選挙の地盤には粘着性がある。特に、2大政党制では、連合を離脱することに高いコストがともなう。反対の政党が迎え入れてくれるとは限らない。それゆえ、連合の分解・再編には、経済不況や人種対立など、重大な事件が引き金となる。

現在の政党システムは、1980年頃に確立された。共和党は、市場崇拝のリバタリアン、福音はキリスト教徒、外交におけるタカ派の連合であった。民主党は、世界市民的なリベラル、非白人の低所得者層、社会的な大義を掲げる支援者の連合であった。両政党とも、「ネオリベラリズム」が支配的な経済イデオロギーであった。それは、市場と民営化を内外の公共政策における主要な道具とみなす、曖昧な言葉である。ネオリベラリズムに関する相対的なコンセンサスがあったために、2大政党は文化や人種の問題でシステムに支配的亀裂を生じ、ますます強まる都市と地方の分断をともなった。

この政党システムは4年前に粉砕されていた。2016年の大統領選挙は新しい政党システムを予告した。ドナルド・トランプが、経済的なポピュリスト政党となった共和党の前衛として当選したのだ。しかし、候補者として社会福祉国家や製造業の復活という公約をした彼は、大統領となっても、政策インフラがなく、党内のコンセンサスも築けなかった。彼の政権は既存の共和党連合を維持した。柔軟な姿勢、政策に関する無知、個人に対する驚くべきカルト、「ラディカルに支配された民主党」を攻撃する能力で、トランプは共和党の内部分裂を抑え込んだ。

理論的には、国家的危機が1つの政党に、必要な、新しい連合を固める、統治の新しいイデオロギーを採用するよう強いるだろう。COVID-19はそうではない。多くの者が一時的な危機だと考えている。気候変動は、重大な経済不況が侵攻する中で、そのような危機になるかもしれない。しかし、極端に分極化した政治では、危機が党派政治に利用される。そうなればアメリカは混乱の渦に消える。

だから、アメリカがボトムアップ型の民主的転換を迎えるのは良いことだ。理想と現実とのギャップを、通常、アメリカ人は受け入れるか、無視するか、否定している。しかし、周期的に、このギャップはあまりにも拡大し、改革や革新の精神が広がり、社会運動がアメリカ民主主義に、もっと包摂的に有権者の声を聴くよう求める。

いつの時代も、改革はワシントンからではなく、ボトムアップに起きた。政治エリートはそれを結局受け入れた。アメリカが、アイルランドやオーストラリアで使用されている、複数当選の選挙区で、優先順位付きの投票制と比例代表制を採用すれば、2大政党制の行き詰まり、過激化、交渉決裂に向かうダイナミズムを阻止して、多くの政党を支持できる。重要なことは、新しい、より柔軟な連合が形成されることだ。

アメリカ民主主義の未来は変えることができる。

NYT Sept. 22, 2020

A Divided America Is a National Security Threat

By Susan E. Rice

FP SEPTEMBER 24, 2020

A Perilous Presidential Handoff

BY TIMOTHY NAFTALI


 アメリカ最高裁判事の指名

FP SEPTEMBER 18, 2020

Ginsburg’s Death Could Change the 2020 Presidential Race

BY MICHAEL HIRSH

NYT Sept. 19, 2020

Can Mitch McConnell Be Stopped?

By Michelle Goldberg

FT September 20, 2020

Ginsburg’s death adds uncertainty to volatile US election

Kadhim Shubber and Courtney Weaver in Washington

NYT Sept. 22, 2020

The Special Hell of Trump’s Supreme Court Appointment

By Frank Bruni

トランプは、マコーネルと共謀し、3人目の最高裁判事を指名する。オバマは2人を指名した。しかし、28年間だ。3人目を指名することは、マコーネルが阻んだ。

FT September 23, 2020

US conservatives expect too much from the Supreme Court

Janan Ganesh


 トランプの中東政策

NYT Sept. 18, 2020

Trump’s Middle Eastern Mirage

By Roger Cohen

トランプが中東にもたらしたのは、新しい夜明けではなく、幻想だ。

確かに、サウジアラビアのサルマンMohammed bin SalmanMBS)皇太子も、イスラエルとの関係正常化を望んでいるのだろう。また、ジョー・バイデンが当選して、ジャーナリストの殺害やアメリカのイラン外交が代わることは望まないはずだ。

しかし、バーレーンとUAEはイスラエルと戦争したことがない小国だ。MBSは動けないままである。サウジアラビアの保守派や、聖戦主義者、イランはイスラエルとの関係正常化を嫌うだろう。パレスチナ人が国家を得るというアラブの大義を失う。

アラブの春は、たとえ弾圧したとしても、アラブの指導者たちが転嫁する戦術を終わらせた。すなわち、中東諸国の国内問題である、とんでもない無能さ、野蛮さ、弾圧を、イスラエルによるパレスチナ人の弾圧にすり替えることだ。

イスラエルとバーレーンとUAEの国交正常化ではなく、ネタニヤフが法に反してもヨルダン川西岸の一部を国土に併合する方針が問題になっている。それは、トランプとクシュナーの中東和平案がパレスチナ国家を軽視したことにつながる。

トランプのオクトーバー・サプライズは、アメリカ軍がイランと軍事衝突に至ることではなく、サウジアラビアがイスラエルと国交正常化を発表することかもしれない。

FT September 22, 2020

Palestinians face a new reality

FT September 23, 2020

Two-state solution is becoming a cause of the past

David Gardner


 ワクチン開発競争と政治闘争

FP SEPTEMBER 19, 2020

The World Is Winning—and Losing—the Vaccine Race

BY ADAM TOOZE

世界を停止させたパンデミックに対して、常に、ワクチンが解決策であるとみなされてきた。自然の脅威を科学が解決する。

しかし、そうではない。ワクチンの製造と供給は一定の政治・経済問題を解決するかもしれないが、それはまた、新しい問題を生じる。ワクチン接種を祝福するかもしれないが、むしろグローバルな不正義と、世界中で恨みを生じる。

アメリカは国連が推進するCOVAXに参加しないと表明した。世界でワクチンの共同開発・供給をめざす計画だ。アメリカ政府はこれを、腐敗したWHOに頼るものだ、と非難する。

アメリカは自国の解決策に賭けている。それは政治的な利益だけでなく、製薬業界の巨大企業と、公衆衛生の問題に深く結び付いている。

このドラマの中で強力なアクターたちは、国民国家、その国民、そして製薬大企業だ。グローバルな公共レジームの影は薄い。WHOの予算は、1つの巨大病院よりも少ない。国際関係論が教えているように、それは常態であるが、コンストラクティビストは、アナーキーを作るのはわれわれだ、と注意する。問題は、78億人に高品質のワクチンを、利用可能な価格で供給するために、アクターたちは協力できるか、ということだ。

それは緊急に必要な問題であるが、同時に、国際秩序と国内秩序の正統性の問題である。

COVID-19は悪である。しかし、この時代は「新人世Anthropocene」と記録される。人類が自然環境に対して、包括的に、不安定化するような転換をもたらしている。その1つとして、他の生物種のウイルスが人間にも感染する変異を生じているのかもしれない。われわれは、生活、労働、遊び、旅行、食事、住居を再調整する必要がある。

321種類もワクチン候補があるのは非常に多いようだが、1つもまだ開発されていない。COVID-19とその経済封鎖は、何兆ドルもの損失を生じている。数億人が失業した。世界銀行の推定では、断固とした対策がない場合、人的資本の損失は10兆ドルに達する、という。

経済的ダメージを埋めるために、政府は戦時のように大規模な刺激策を取った。しかし、その規模で十分なのか。マンハッタン計画(原子爆弾)や宇宙開発、ペンタゴンのF-35戦闘機開発に比べて、ワクチン開発に投じた資金はまだ少ない。

本当に懸念されるのは、ワクチンができた後だ。パンデミックはグローバルな現象を指す用語だが、ワクチン接種では国家のエゴ、企業利潤が、深刻な不平等問題につながる。

パンデミックに対する進歩派の答えは、莫大な資産に対して課税せよ、である。ワクチンの生産には公共の医療インフラを整備し、世界中の大学と研究所が、知的所有権や特許権に制約されることなく、競争するチームを組織して資金提供される。検査体制と生産体制でも、過剰利潤を排除し、コストを抑える。科学者たちは賞と名誉を得る。それは科学者に限らない。

問題は、それを実現する政治パワーはあるか? 混乱する既存秩序をそのような解決策に向かる勢力はあるか? だろう。

ビジネス界では、明らかに製薬産業だ。複雑な薬品の有効性を信頼できるビジネス・モデルを知っている。しかし、彼らを所有するのは、現代資本主義の大企業がそうであるように、巨大なポートフォリオを運用する機関投資家である。

グローバルなCOVID-19危機への対応は、製薬産業の「ビジネス・モデルが適切で、持続可能なものかを調べるリトマス試験紙」である、とファンド・マネージャーが述べた。ワクチン開発競争はこの産業の正統性を確立し、あるいは、破壊する。それ以上に、世界経済は解決することを求めている。それなしには、広範な領域で、何兆ドルもの資産を運用するマネージャーたちの将来が厳しい。

ファンド・マネージャーたちは新時代を開く。そこではインデックス・ファンドのマネージャーたちが公共財の代表と執行者になり、こうして「社会主義の前衛」になるのだ。そう示唆する評論家もいる。気候変動の政治や、Exxonなどの石油大企業、エネルギー政策についても同様だ。

社会主義を語るのは早すぎる。しかし、もし大不況がアメリカの住宅担保証券市場に公的支援を与えるためファニーメイを作ったのであれば、2020年のワクチン開発危機が同様の対策を求めるかもしれない。完全な国有化は無理でも、「バイオテク巨大ファンド」ならどうか。もし適当な政府保証が与えられれば、金融エンジニアリングでAAA格付けの債券ができて、保険会社や年金基金が購入するだろう。

しかし、巨大ファンドのマネージャーたちに頼ることは、われわれが渇望する解決策を、巨大なファンドの、選挙で決めることのない者たちにパワーを与える。彼らの安定性は不確かで、その利益は人口の中のごく一部の資産家にだけ結びつく。彼らの金融資産は、政治的正統性をまったく欠いている。

COV-19危機への対策を非政治化するという考えは、魅力的だが、危険な幻想だ。

より大きな公正性や民主的な管理と支配を求める左派の声は不快なものかもしれないが、彼らはシステムの基礎を疑うわけではない。社会主義を語るのは、恐怖をあおるものだ。それは、右派の政治が資本主義システムの一般的な長期利益を決める王座から降りること、そして、保守派の政治家たちとビジネス界が、進んで非合理的なポピュリストたちと同盟すること、を示唆するものだ。

2020年、連銀が債券・株式市場に劇的な介入を行い、銀行は安定している。ますます多極化する世界で、アメリカは世界金融危機のときほど、パンデミック危機に対応する中心にいない。トランプが勝利することは災厄だ。しかし、構造改革のための政治的連合を実現する民主党の能力が問われている。新人世にふさわしい政治経済を創り出すときだ。

The Guardian, Mon 21 Sep 2020

As more local lockdowns begin, the hard truth is there's no return to 'normal'

Devi Sridhar

The Guardian, Mon 21 Sep 2020

The Guardian view on the Covid crisis: Boris Johnson let it happen

Editorial


 ヨーロッパ移民政策

FP SEPTEMBER 20, 2020

Europe’s Failed Migration Policy Caused Greece’s Latest Refugee Crisis

BY ANDREW CONNELLY

FT September 21, 2020

The Next Great Migration, by Sonia Shah

Stefan Wagstyl


 EU復興基金

FT September 20, 2020

Beware of smoke and mirrors in the EU’s recovery fund

Wolfgang Münchau

3100億ユーロの復興基金は歴史的な合意である。それを称賛する者は多いが、正しい評価は実際に支援が行われてからするべきだ。最も難しい局面は、合意されたガイドラインが守られるかどうかである。

それはアメリカ人が「ポーク・バレル」(利益誘導)支出とよぶ形になる危険がある。すなわち、政治的支持を得るために財源を無駄にするのだ。欧州委員会が決めたガイドラインは目的が分散しすぎている。

FT September 22, 2020

ECB faces uphill struggle in efforts to talk down the euro

Martin Arnold in Frankfurt

PS Sep 23, 2020

Europe’s Digital Emergency

CARL BILDT


 法とビジネスの米中対立

FT September 21, 2020

Beware the long arms of American and Chinese law

Gideon Rachman

FT September 23, 2020

China has the upper hand in corporate proxy wars with US

Tom Mitchell


 菅政権

FT September 21, 2020

Japan’s new premier needs a message and a vision

安倍は、何でも楽観的な、日本復活の単純なメッセージで答え、指導者は政策と判断を示すこと、ビジョンとコミュニケーションにおいて秀でること、と考えた。日本の有権者はこれに応じて、安倍のスキャンダルと政策失敗を受け入れ、菅政権に引き継がれた。

菅は、政策の継承だけでなく、メッセージとビジョンを示さねばならない。人物の生い立ちはもう十分だ。菅はもはや官房長官ではない。首相として、行政官僚を指導し、国民を自分の目標に向けて説得しなければならない。この立場の転換は容易でない。

FT September 24, 2020

Japan’s problems with shareholder voting underscores need for reform

David Baran


 国連75周年

PS Sep 21, 2020

Celebrating 75 Years of the United Nations

JOSÉ ANTONIO OCAMPO

国連は75周年を迎えたが、世界は混乱を深めている。パンデミック、世界不況、自然災害、そして、アメリカは世界の協力を指導することをやめ、友好国や同盟国とも敵対する。世界の連帯を信じる機関として、国連はかつてないほど重要になっている。

国連には3つの柱がある。平和、人権、開発だ。その課題を実現するために不可欠な要素として、国連は公平なグローバル経済システムを築き、進歩を分かち合うように求めてきた。

ILOは初めて「ベーシック・ヒューマン・ニーズ」を唱え、ベルリンの壁崩壊の後、一連のグローバルな会議で人間的な発展の範囲を広げた。国連は、事実上、「持続可能な開発」の概念を拡張する指導的役割を担った。

人類の最善の力を実現する唯一の道は、人びとの基本的な尊厳にふさわしい形で、協力することだ、という信念を、国連は体現している。

PS Sep 21, 2020

Reopening the Peace Factory

JAVIER SOLANA

FP SEPTEMBER 21, 2020

Much Maligned But Still Necessary: the U.N. at 75

BY MICHAEL HIRSH

FP SEPTEMBER 21, 2020

What the U.N. Is Good For… or Could Be

BY SARAH NAKASONE, KORI SCHAKE

PS Sep 22, 2020

The EU Stands With the UN

JOSEP BORRELL

PS Sep 23, 2020

Returning to Multilateralism

BAN KI-MOON


 人民元のスワップ

VOX 21 September 2020

Jumpstarting an international currency

Saleem Bahaj, Ricardo Reis

アメリカのドルが国際通貨の役割を獲得した過程に比べて、世界貿易で同様に重要な役割を果たすようになった人民元は、いまだに資本取引規制を行っている。しかし、スワップ合意を諸国と結ぶことで、人民元は諸外国での利用拡大に成功した。


 イタリア

FT September 22, 2020

Italy experiments with a smaller parliament

Tony Barber


 グローバリゼーションの逆転

PS Sep 22, 2020

Trump’s Spectacular Trade Failure

ANNE O. KRUEGER

トランプ政権はWTOを通じて通商交渉を進めることで、貿易問題で多くの成功をおさめただろう。狭い、一方的な、二国間交渉ではなく、仲間の国と一緒にWTOのルールを多国間で改善すれば、長期の改善が得られた。しかしトランプはWTOを拒み、国際通商システムの全体を破壊し、アメリカの企業と家計に大きな損失を強いたのだ。

PS Sep 23, 2020

Are Intellectuals Killing Convergence?

ARVIND SUBRAMANIAN, JOSH FELMAN

グローバリゼーションによって貧困諸国が豊かな国に追いつく「収斂」が起きる、と主張された。しかし、トランプ政権の保護主義、パンデミックによるサプライチェーンの停止など、グローバリゼーションの逆転が起きている。貿易、開発の理論家たちは、この重要な問題について沈黙している。

FP SEPTEMBER 23, 2020

As Decoupling Grows, the West Risks Losing Insight Into China

BY JIMMY ZHANG

FT September 24, 2020

An African at the WTO’s helm would fit its free trade instincts

David Pilling


 気候変動

PS Sep 22, 2020

Avoiding a Climate Lockdown

MARIANA MAZZUCATO

FP SEPTEMBER 21, 2020

Repairing Humanity’s Relationship With the Planet Will Be Cheaper Than Continuing to Let It Slide

BY CARTER ROBERTS, CARLOS MANUEL RODRIGUEZ

FT September 24, 2020

Why we need to put a number on our natural resources

Gillian Tett

PS Sep 23, 2020

The Financial Climate Has Reached a Tipping Point

HUW VAN STEENIS

気候変動に応じた金融部門の基準を採用するべきだ。

PS Sep 24, 2020

Europe’s Green Dirigisme

HANS-WERNER SINN

ECBが気候変動に関して、中央計画方式の官僚による介入や部門・企業の差別化を行うことは間違いだ。CO2排出を減らすコストはECBに正確に把握できない。そのコストを転嫁できるなら、無駄な投資が起きるだろう。1989年に社会主義体制が崩壊したことを繰り返すものだ。

全分野に共通のCO2価格を定めて取引させる方がよい。

PS Sep 24, 2020

How Climate Targets Can Help Economic Recovery

FRANCISCA TONDREAU


 アメリカの戦略

FP SEPTEMBER 22, 2020

Is the Blob Really Blameless?

BY STEPHEN M. WALT

FP SEPTEMBER 22, 2020

The United States Needs a New Strategic Mindset

BY ZACHERY TYSON BROWN

TikTokの使用禁止、WHOからの離脱、ドイツからの米軍撤退、など。短期的視野で問題を処理する姿勢はトランプ政権だけに限らない。アメリカの指導者たちは大国間競争における長期的な視野で劣ってきた。中国は、情報時代における大国間競争で、グローバルなインフラ投資が重要であることをよく理解している。

戦略とは、目的に到達することではない。勝利することですらない。これは19世紀の軍事化された戦略概念であり、現代ではふさわしくない。戦略とは、無限のゲームとして理解するべきだ。競争では、ある点での勝利や敗北に意味はなく、プレーを続ける。チェスのような有限ゲームと対照的に、無限ゲームではプレーヤーの選択肢が増える。ゲームのルールも変えることができる。

「有限ゲームは境界内でのプレーであるが、無限ゲームは境界を使ってプレーする。」


 ポピュリストと泥棒国家

FT September 23, 2020

Populists and kleptocrats are a perfect match

Martin Sandbu

リベラル・デモクラシーには盛りだくさんの価値がある。特に、EUは「法の支配」、「民主主義」、「専制的なポピュリズムに反対するルール」を推進する。

専制国家と泥棒国家(クレプトクラシー:国家を悪用して富を奪う)は、しばしば同時に進行する。2つは同じ手法を用いるからだ。情報を操作し、混乱を広める。公権力の説明責任を問わず、法の執行や行政を私物化する。2つは別々のものではない。専制国家が手段、泥棒国家はその目的である。

ロシア、ウクライナ、旧ソ連の中央アジア諸国がそうだ。寡占体制のネットワークが国家を自分たちの利益に奉仕するように私物化される。アメリカでは、トランプの選挙に関わった者たちの多くが、まさに同じような諸国の犯罪に関わっている。トランプが民主主義の独立した諸機関を攻撃する背後には、泥棒国家の本能が働いていると思う。

ヨーロッパもそうだ。警報ベルが鳴り響く。泥棒国家の汚れた資金が議会や政党、政治指導者に流れている。政治的な分裂で、銀行業を取り締まることをあきらめている。銀行は泥棒国家の富裕層を大切な顧客として招き入れる。

ヨーロッパの指導者たちは、高尚なリベラル民主主義の価値を唱えても、その内外で泥棒国家やその資金と闘う意志がない。醜聞はいつも、アメリカの金融監督が公表する記録から流れてくる。

EUも、国家を超えて金融を取り締まる権限を確立する必要がある。銀行の顧客データにアクセスして、マネー・ロンダリング規制に従わねば処罰する。単一の法律でユーロの資金を統治する。欧州委員長Ursula von der Leyenの言葉、「ヨーロッパの価値は売り渡さない」とは、そういう意味であるべきだ。

FT September 24, 2020

Why autocrats are lining up for Donald Trump

Philip Stephens

プーチンはドナルド・トランプの選挙戦を支援し、トランプは世界で最も強力な民主主義国家を権威主義体制の仲間に入れた。世界の権威主義的体制がトランプに親しみを感じ、支援を求めて集まってくるのは当然だ。


 金融政策と中小企業

FT September 23, 2020

Jay Powell adds voice to small business cry for help

William Cohan


 金融危機

PS Sep 24, 2020

White-Collar Crime, No Punishment

KATHARINA PISTOR

FT September 25, 2020

The next financial crisis may be coming soon

Gillian Tett


 21世紀のガバナンス

FP SEPTEMBER 24, 2020

Why Europe Wins

BY ANDREW MORAVCSIK

ヨーロッパではCOVID-19が襲った後、ロックダウン、マスク、検査と追跡の体制を政府が実行して、感染者を数か月で抑え込んだ。しかし、アメリカは衝撃から立ち直れない。その対称は、偶然ではなく、ヨーロッパにおける、所得の平等、専門家を重視した政府組織、を反映している。

1世代にわたり、人びとはヨーロッパの将来を悲観する意見ばかり聞いた。高成長、中央集権的政治制度、国内の正統性、ハードな外交手段としての軍事力、こうしたものをヨーロッパは欠いている。ユーロの崩壊、加盟国の急増による失敗、ヨーロッパという理想から離反する有権者、など。こうした評論、シンクタンク、外国の政治家たちは間違っていた。

彼らがその能力を疑う点で、外交に勝る分野はなかった。2014年、ロシアはウクライナを攻撃し、2015年、地中海を渡る移民の波が起きた。翌年、ブレグジットの国民投票でイギリスはEUを離脱すると脅し、アメリカ大統領候補であったドナルド・トランプがNATOと大西洋貿易を壊す発言をした。

しかし、ヨーロッパはいずれも静かに退けたのだ。ヨーロッパは非軍事的な能力を展開ことに成功した。外国援助、通商協定、雇用協定、規制基準の国際適用、国際法・国際組織の促進、確実な、しかし静かに行う外交、民主主義の支援。ヨーロッパのシビリアン・パワー行使はプラグマティックであり、退屈で、遅く、官僚的であるため、注目されない。しかし最後には、対抗する諸大国が行使する手段よりも、多くの成果を上げた。

ロシアが2014年にウクライナを攻撃し、クリミアを併合し、東部の2つの地方で分離主義者をひそかに支援した。ロシアがウクライナに持つ歴史的、文化的、経済的、戦略的重要性から、キッシンジャーやミアシャウマーのような伝統的リアリストたちは、ヨーロッパはウクライナを手放すべきだ、と助言した。さもないとモスクワが冷酷な対応を示し、必ず、西側の敗北に至る、と警告した。

しかし、ヨーロッパの指導者たちはロシアをその隣国でも抑え込んだ。ロシアとそれに協力する分離主義者が占拠する国土の7%を除いて、ウクライナは、今、西側と緊密な関係を結ぶ独立国家である。ウクライナは経済成長を享受し、民主主義を確立した。EUは、戦争による破壊に苦しむウクライナが債務を維持できるように、2014年以来、約200億ドルを提供した(アメリカからの支援額は20億ドルに満たない)。推定400万人のウクライナ国民が流出し、ヨーロッパで働き、年160億ドルほどを送金する。EUとの協定により、ウクライナは貿易を拡大し、年250億ドルを輸出する(アメリカ向け輸出額の20倍)。

移民・難民の流入に対しても、ポピュリストたちに対しても、ヨーロッパは現実的に、有効な、さまざまな手を打った。移民たちは統合化を進め、難民に対してはより経済的・人道的な基準で扱えるような条件を整えている。反イスラム、反移民、反テロ、反ヨーロッパを主張するポピュリスト運動が支持を拡大していた。しかし、パニックを起こすより、指導者たちは移民やテロに対処することで、そのエネルギーを失わせた。イギリスの離脱交渉は厳格に対処した。

唯一、EUの重要な国でポピュリストたちが権力を握ったのはイギリスだけだ。しかし、ブレグジットはルールではなく、その例外である。ほかではありえない驚異的状況で、巨大な嵐が起きた。イギリスはヨーロッパで唯一、有権者の一部を越えて、EU攻撃が効果を発揮する国だった。それでも当時の首相は、党内紛争を抑え込むために、必要でなかった国民投票を実施した。先の選挙でも、ボリス・ジョンソンは44%の得票で権力を固めた。しかし、ヨーロッパで最も多数派に有利な、イギリスの偏った選挙制度でなければ、EU支持派が多数を占めただろう。

COVID-19でアメリカの多くの人が気づいたように、民主主義国家が、将来を観て、データに依拠する、専門家たちの政策を実行することは難しい。多くのトランプ、多くのプーチンが現れて、そのような政策は望ましくない、もっと自国を偉大にするべきだ、と主張するかもしれない。

しかし、その答えはヨーロッパにある。21世紀にも、正しい政策を維持してきただけでなく、成果を上げた。ヨーロッパに未来がある。

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The Economist September 5th 2020

How Abe Shinzo changed Japan

Politics : America’s ugly election

America’s presidential election: A house divided

Japanese politics: A new story at last

Unite Nations peacekeeping in Congo: Blue helmet blues

Japanese business: Rebalancing act

Culture: A social turn: Hard work and black swans

Financial coupling in China: Present tense, future market

Free exchange: Parting shot

(コメント) 安倍首相が辞任し、その時代を高く評価する記事と、他方で、アメリカ大統領選挙の深刻な投票・開票作業と当選者をめぐる危機を予想する記事が、まさか同じ号になるとは思いませんでした。安倍政権の時代に日本のガバナンスが強化された点は、保守政治の基盤とともに、英米から見て優れた点でした。

「確かに、われわれはすべて日本人だ」と言われるように、世界の富裕諸国はCOVID-19とともに日本病のパンデミックにも苦しみます。アベノミクスが効能を証明された、副作用の少ない、優れたワクチンだ、と断言することはできませんでした。

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IPEの想像力 9/28/20

半沢直樹の最終回を観ましたか?

おもしろい。・・・なぜかな?

ドナルド・トランプの納税額が、ゼロ、もしくは年750ドルであった。

NYTがそうスクープしました。大富豪だ、天才だ、と自慢するトランプが、収入より多くの損失を出すのか? しょっちゅう、ゴルフを楽しむのはビジネスに必要な経費なのか?

どこに資産を隠し、どのような仕組みで税金を支払わない企業や富裕層が増えるのか、私の小著でも少し紹介しました。何より、彼・彼女たちには、それが正しい、と主張するイデオロギーがあるのです。

・・・税金などというのは、ちっぽけな人びとが払うのだ。

・・・政府に税金を渡して無駄に支出されるより、できる限り民間に残して投資する方が正しい。そういう仕組みを合理的に、合法的に利用できる社会は素晴らしい。

本当にそうなのか? もちろん、そうであれば、あなたの資産、資金の流れを示してほしい。もちろん、だれの所得や資産もネットに公開する必要はないが(そういう国もある!?)、政治家や公職に就く者であれば、要求されて当然です。

半沢直樹に登場してほしい、テレビ・ドラマのような話です。

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土下座するシーンが、何度か出ました。これはよくない、と私の奥さんが横で注意しました。

確かに、小学校で半沢たちの物まねが流行り、中学や高校で、半沢ごっこと称したいじめが横行するのではないか、と心配です。

私は、それを禁止するよりも、なぜ土下座シーンが重要な意味を持つのか、そのストーリーだけでなく、社会・政治・経済的な背景を理解できることが重要だと思います。

そして、怒り、にらみつけ、激怒するシーンがやたらに多い。これも心配です。えてして、優しい、正しい者が、(富裕層に比べて)貧しいため、社会的・経済的な地位の低さによって見くびられ、沈黙することを美徳として称賛する日本社会に生きるからこそ、怒りをあらわにするドラマチックな演技がおもしろいという意味を、正しく教えるべきだと思います。

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だれのための、何のための、デジタル化なのか?

エストニアは、デジタルIDのシステムを安全に市民が利用できる仕組みを作り、支持されている、とThe Economistは伝えます。市民の記録が一括してリンクされます。税金や医療データをどこからでもアクセスでき、結婚も、引っ越しも、就職も、ネット経由で簡単に処理できます。

どういう感じかな、と思いました。先日、パソコンを購入して、少し理解できました。私の情報は大学のサイト経由でリンクされ、Office365により電子メールや講義のデータはそのまま使えます。ネットはChromeを使っていたので、これもダウンロードした後、スマホ経由で同期できました。お気に入りのバーも、購読中のネットジャーナルとそのパスワードも、勝手に入力できています。

たとえば、富裕層にはデジタルIDの義務化を求めます。所得や資産、資金の流れが透明になるでしょう。脱税も、政治献金も、遺産相続、株や不動産の売買も。

高齢者にも、デジタルIDを義務化するとよいでしょう。年金や医療費は明確になり、詐欺事件が大幅に減ると思います。

パンデミックで苦しむ個人商店や職人は、デジタルIDにより、即日、その資格や条件に照らして、全員に支援金が給付されます。

しかし、もし市民たちが何重にもチェックしなければ、これは監視社会なのだ、と思います。オーウェル的な世界、トランプやプーチンが拡散するフェイクな情報と、ポスト真実の世界です。

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ADAM TOOZEは、ワクチン開発と接種の普及に向けて、巨大ファンドのマネージャーたちによる「社会主義」的な基金の推進を批判します。それは、より大きな公正性や民主的な管理と支配を求める左派と、進んで非合理的なポピュリストたちとも同盟する保守派の政治家、ビジネス界との闘いである、と。

Willem H. Buiterによれば、中央銀行がGDP20-30%を政府に与えることが、最も効果的なマクロ政策です。「ヘリコプター・マネー」による財政支出の拡大は切り札として今も残されており、(資産家たちの富を増やす)不平等化の副作用がある金融市場の安定化や金融緩和策より、それは優れています。

MORAVCSIKは、移民・難民の流入、ロシアの軍事攻撃と占領、政府債務危機、ブレグジット、トランプによるNATOへの脅しを、21世紀のEUは、軍事力に代わるソフト・パワーで抑え込んだ、とANDREW論じています。

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この数年で、世界に現れるのは。トランプが10人。プーチンが10人。・・・そして、デジタル世界の巨大スクリーンには、あのテーマソングと、半沢直樹の顔。

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