IPEの果樹園2020
今週のReview
9/21-26
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終わりなきブレグジット ・・・イギリス保守党 ・・・ルールに依拠した国際秩序 ・・・大銀行と食糧部門 ・・・スウェーデンのケース ・・・インドと中国の戦争 ・・・11月の大統領選挙後 ・・・地中海の難民危機 ・・・金融政策のレジーム転換 ・・・ワクチンの共同開発
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 終わりなきブレグジット
The Guardian, Fri 11 Sep 2020
Brexit is the stage on which Boris Johnson acts out his theatre of provocation
Tom Kibasi
今週の法案提出は、終わりなきブレグジットの物語における、最新のひねりである。それは、国際法を無視し、離脱に関するEUとの条約に含まれる北アイルランドの特別な条文を破棄する権限を、政府に与える。
EUが悪意によって行動することを制限するため、と言うが、まるで必要な挑発だ。これはジョンソンが創り出した危機である。昨年秋には、国内法を破る(議会を無視して離脱する)と脅したジョンソンが、今度は国際法を無視すると脅している。
こうした破壊的傾向はジョンソンの政権と政治に関するアプローチである。分断や危機の衝動を煽ることが彼らの美意識だ。彼は危機に対処する自分の権力を望むが、自作自演のカオスを生きているのだ。
この筋肉質の主権に関する姿勢は、保守党の支持者を驚かせ、喜ばせるための演出である。賃金と生活水準が停滞し、長い危機の時代を経て、こうした姿勢を歓迎する人々がおり、EU残留を主張する「エスタブリシュメントたち」を攻撃する機会にしている。
しかし、漁業権でささいな領域の勝利をシンボリックに取り上げてパレードしながら、同時に、イギリスは発言権もないままEUの規制を受け入れ、国境における多くの摩擦が起きる代償を支払って、自主的な規制を手に入れる。ジョンソンは、人びとを現実から離反させ、復活した偉大さの幻想でだましている。
興味深いことに、この議会で示されたジョンソン政権の交渉姿勢は、監視体制の甘い、政府補助金である。これはサッチャー以来の保守党が信奉してきた「自由市場」とは正反対である。
ここには重大な戦略的決定がある。COVID-19による経済過程への国家の劇的な介入増大は、ジョンソン政権の主体をなすリバタリアンたちに、積極的な国家が国民に支持される、この姿勢を続けよう、と理解させたのだ。
これに対して、労働党は有権者に語る政策を持っていない。
NYT Sept. 11, 2020
Remember Brexit?
By The Editorial Board
コロナウイルスのパンデミックが起きる前、イギリスのEU離脱をめぐる長い論争は数年に及ぶグローバルなニュースであった。その長い政治ドラマの末に、世界時間の2020年1月31日、午後11時までで、イギリスは離脱を果たした。
しかし、まだ完全ではない。それは11か月間の移行期間が始まったからだ。その間、イギリスとEUの指導者たちは、将来の関係について交渉するはずだった。その期間が終わるまで、イギリスはEUの関税同盟と単一市場に残り、EU法に縛られるが、EUの諸機関に発言する席はない。
交渉は進まず、今週、イギリス政府は議会に法案を提出した。それは、EU幹部に言わせれば、「国際法の深刻な違反だ」。EU指導者は撤回を求め、イギリス政府は拒否している。
ボリス・ジョンソン首相は、10カ月前に、「焼きあがった」離脱合意を手にしている、と主張していた。今は、合意が無くても離脱するぞ、と脅している。ジョンソンに言わせれば、合意なしの離脱はイギリスにとって良いことだが、その主張には1年前と同じく根拠がない。
問題は、北アイルランドの扱いだ。アイルランドはEUに加盟しているから、北アイルランドとの境界を開放しておくという保証が必要だった。ジョンソンの新しい法案では、北アイルランドとの財の移動をイギリスが決める。前首相のテリーザ・メイは、将来の交渉相手の誰がイギリスを信用するのか、と質した。
アメリカでも、1998年のグッドフライデー合意を破棄することに強い反対がある。民主党の下院議長ペロッシは、条約を破るイギリスとは、アメリカが合意する見込みも全くない、と警告した。ジョンソンは、EU離脱で、アメリカとよりよい条件の通商合意を得られる、と主張していた。
ブレグジットの連続ドラマが再開される。最終期限。瀬戸際の攻防。「ハード」(合意なき)ブレグジット。アイルランド国境にイギリスはこだわり、ブリュッセルは非難する。
しかし、ドラマの背景が大きく変わった。コロナウイルスで経済は崩壊している。ジョンソンと保守党の支持率も下がった。EUは妥協しない。トランプの再選も危うい。野党である労働党の党首が変わった。スコットランドは独立を準備している。
離脱による厳しい結果は、2016年の国民投票ですでに議論された。4年経つが、何も変わっていない。論争の相手との距離はあいたままだ。EU加盟はイギリスの主権を損なっている、という者と、EUは経済ルールや価値を共有し、双方の利益になる、という者だ。
FT September 14, 2020
UK-Japan trade deal shows need for EU pact
FT September 15, 2020
Boris Johnson needs a Brexit deal to secure his revolution
Robert Shrimsley
FT September 17, 2020
Boris Johnson’s Brexit plan will break the UK union
Philip Stephens
ボリス・ジョンソンは、イングランドとスコットランドとの間に「国境」のようなものは存在しない、と述べた。2つの国民は無差別で、無視できる。しかし、スコットランドは国境も国民であることも放棄していない。法律も、教育システムも異なっている。
1707年の両国の合意は条件付きの選択であり、統一憲法ではない。共通の帝国という企画は消滅した。ブレグジット投票の結果は、もし合意なしにブリテンがEUから離脱するなら、スコットランドはそれから離反することを意味した。
● イギリス保守党
The Guardian, Fri 11 Sep 2020
The Tories aren't incompetent on the economy – they know exactly what they are doing
David Edgerton
1980年代から最近まで、イギリス政治の決まり文句は「ほかに選択肢はない。TINA」だった。企業の振興、グローバリゼーション、技術革新、何であれ、変化のために唱えたのだ。しかし、もちろん選択肢はあった。国家は経済を放置することなどなく、その役割や姿を変えた。
イギリスの政策の目標は、年とともに変化した。経済成長率、貿易収支、国内の不平等解消、他国に比べた自国の強化。しかし、1950年代、60年代に比べて、いずれも悪化している。イギリスの相対的地位も改善していない。
1980年代以来、政治・経済政策の目標は、イギリス経済を改善することではなかった。国内の権力バランスを変えること、経済を世界に開放すること、それは本質的に、富裕層をより豊かにし、より強力にすることだった。サッチャー革命は、根本的に、支配者による革命だった。
1954年、エコノミストのW. アーサー・ルイスが発展途上国に関する二重経済論を発表した。そこには、大量の労働者が低賃金で働き、小さな、富裕な部門がある。アメリカの経済史家であるピーター・テミンは、このモデルを最近のアメリカに適用した。1970年代以来、多数の労働者の賃金は停滞しており、富裕層はますます豊かになっている。中産階級は減少した。同じことは、より少ない程度で、イギリスにも起きた。専門職の集まる、裕福なロンドンの飛び地経済と、他の地域には低賃金、低生産性の経済が広がっている。テミンは、アメリカを超富裕層の支配する政治、とみなす。
ブレグジットは、経済の政治的性格を示した。ブレグジット推進派が40年間の政策を逆転する、などと夢にも思わないことだ。彼らは経済ナショナリストではない。経済主権や国民経済の再建など気にしない。
彼らはサッチャー主義者だ。現実の痛みを否定する必要があっただけだ。彼らは成長を犠牲にして、一層の経済変化を推進する。マーガレット・サッチャーが失業者の困窮に無関心であったように、また2010年の連立政権が財政緊縮策のもたらす停滞に無関心であったように、ブレグジットも彼らの考えではその代償に見合うのだ。経済ではなく、政治こそ重要だ。
The Guardian, Sun 13 Sep 2020
The escalating delinquency of Boris Johnson and his gang of blue anarchists
Andrew Rawnsley
The Guardian, Sun 13 Sep 2020
Disruption, destruction and chaos has become the new way of governing
John Harris
今や分断は崩壊した。ドナルド・トランプは2期目に挑戦するが、選挙公約は何もない。4年間の混乱と挑発があるだけだ。イギリスでも、同様の兆候がある。
明らかに、UKの方向を決めたのは2016年の国民投票だった。離脱派が勝利し、その夢と偏見とあいまいな本能が現実とぶつかって粉砕した。政策は、感情的、刹那的要因の奴隷になった。
それはまさに、現実とシミュレーションとの区別がなくなった、ボードリヤールの描いた「スーパーリアリティー」の世界だ。
The Guardian, Mon 14 Sep 2020
Boris Johnson’s push for no deal will harm the country and his party
Polly Toynbee
The Guardian, Mon 14 Sep 2020
For the Tories, breaking the law is just a sign of strength
Nesrine Malik
● ルールに依拠した国際秩序
FT September 11, 2020
Hearts don’t beat faster for ‘the rules-based international order’
Timothy Garton Ash
世界中でスピーチライターたちは考えているはずだ。国連総会で演説する首脳たちのために「ルールに依拠した国際秩序」という言葉を使う。イギリス外務省は、「ルールに依拠した国際システム」を “BRIS” と省略する。
しかし、2つの意味で反対だ。第1に、中身がおかしい。COVID-19による世界不況から抜け出すために政府と中央銀行は行動している。それはしばしば「ルール・ブックを破って」という賞賛を受ける。ユーロ危機でもそうだった。すべての国に1つの硬直したルールを押し付けることが危機を悪化させた。
民主主義諸国による通貨同盟は、参加国が極端な経済的困窮に陥るのを、ルールの1つ、2つを無視してでも避けるべきだ。共有された基本的価値や原則を守ることは、恣意的なルールより優先される。それは実際、官僚的、外交的、政治的な妥協による迷走である。
そうしたルールをめぐる迷走と国際法を、イギリス政府のように、混同してはならない。国際法は上位に立つ高い価値で、保持されるべきだ。もし「ルール」を実際には法の意味で使うなら、より強い、簡潔、正確な言葉として、法、と言うべきだ。
それらに1つの表現が必要なら、それは「リベラルな国際秩序」という包括的な概念である。国際法と、数十年にわたり国際協調のために築かれた制度と実践が含まれる。
第2の反対は、その言葉が心に訴えるものではないことだ。われわれは、ナショナリストのポピュリストたちに反対して、リベラルな民主主義と国際協力を擁護したい。しかし、「ルールに依拠した国際秩序」という言葉は、ドナルド・トランプの「アメリカを再び偉大にする」、ブレグジット推進派の「主権を取り戻せ」に比べて、魅力がない。もっと短い、情念に訴える言葉が良い。
ベラルーシ、レバノン、ヴェネズエラで、勇敢な人びとが掲げる板には、その神髄だけが書いてある。「自由」、「正義」、「真実」と。
チャーチルとルーズベルトが書いた大西洋憲章も、その高い目標を掲げた。「すべての土地のすべての人が、恐怖や欠乏から自由に暮らすことができる」。
われわれは、力強い、独創的な、簡潔で、心に訴える言葉を必要としている。スピーチライターたちは考えるべきだ。
● アメリカの大銀行規制
FT September 12, 2020
The good times for big US banks cannot last under Biden
Robert Armstrong
● インド
PS Sep 11, 2020
India’s Silenced Parliament
SHASHI THAROOR
FP SEPTEMBER 11, 2020
What the West Needs From Modi
BY SALVATORE BABONES
● 西アフリカへの軍事介入
FP SEPTEMBER 12, 2020
France and the United States Are Making West Africa’s Security Situation Worse
BY SAMUEL RAMANI
● 大銀行と食糧部門
FT September 13, 2020
The next subprime crisis could be in food
Rana Foroohar
COVID-19によって多くの問題が起きたが、中でも最も目につく3つの問題がある。食糧の安全性、中小企業の閉鎖、資産価格の浮動性である。
これらは、ABN Amro, ING and BNP Paribasなど、大銀行が中小企業への融資を減らした・やめたことに始まる。農家や農産物生産者、流通業者、グロサリー(食料品店・小売り)は中小規模であるが、グローバルな食糧のサプライチェーンを支えている。
食糧の関連企業群で2層、3層の企業は、農産物価格の変動に対してヘッジを購入する。この融資が失われれば、食糧価格が高騰するだろう。大企業に取引が集中し、市場リスクが高まる。おそらく、この数か月で、それが起きる。大銀行からの融資を得られない中小企業は、影の銀行システムに頼る。その透明性は低く、大きな抵当が要求される。
COVID-19は食糧部門の集中度を高め、地域による過剰や不足を創り出す。その結果は、経済的に「効率的」かもしれないが、非常に脆弱な、壊れやすいものである。
商品価格の変動は、しばしば、経済的な影響だけではない。政治的な影響を及ぼす。社会争乱や革命さえも、しばしば、食糧価格や燃料価格の急激な上昇によって始まる。
大銀行や、食料関連の大企業、取引業者が繁栄している。他の者たちはそうではない。
● スウェーデンのケース
FT September 13, 2020
Sweden’s Covid-19 experiment holds a worldwide warning
Wolfgang Münchau
大雑把なデータから強い結論を引き出すのは愚か者である。今年、最大の愚か者は、4月から6月にスウェーデンの感染者数が急増したとき、ロックダウンをしなかったスウェーデンの実験は失敗だった、と結論した者たちである。
夏を過ぎて、スウェーデンはウイルスの制御を、地域のロックダウンも含めて、他の手段を実行したが、ヨーロッパの他の地域では感染者が再び増加している。われわれはまだ結論を出すべきではない。
より成果のあるのは、データの背景を観ることだ。スウェーデンでは、明らかに、高齢者のケアホームに対する保護が足りなかった。それは、たとえば、ドイツでもっと実行されている。しかし、地域による大きな差がある事情は、よくわからない。
私は、ロックダウンが西側の資本主義的民主主義体制に対する最大の脅威であると思う。グローバルなパンデミックに対する唯一の対策はロックダウンだ、というコンセンサスには一定の不確実さを認めるのが有益だ。
● インドと中国の戦争
FT September 13, 2020
India and China are edging towards a more serious conflict
Devesh Kapur
インドと中国との戦争が起きる深刻なリスクがある。世界はパンデミックに忙殺され、アメリカ国内政治は選挙一色だ。そんな中で、インドと中国は長い国境地帯の紛争に、かつてない規模の軍事力を結集させている。
ヒマラヤのGalwan Valleyで深刻な衝突があった。それ以来、双方は軍事力を増強している。数万の兵力と、戦車、重火器、ミサイル。それはもはや紛争地帯に限らない。気温が下がり、雪解け水が引けば、山岳地帯における重武装した軍の移動が容易になる。中国による建設作業が一層のエスカレーションを招くだろう。
中国側の動機が分からない。習近平主席が追求する攻撃的な外交と、その戦術的な機会があると見たのか。その場合でも、インドと戦争までする意味があるのか。中国の攻撃的姿勢は、インドのあいまいな立場を転換させた。アメリカとの関係を緊密化し、4か国(米、日、オーストラリア)同盟など、反中国の姿勢を明確にした。中国との経済関係を断ち、中国製アプリも禁止し、別の国のものに代えた。
習が国内の威信を高めるために戦闘を喧伝している、という事実はない。1つの可能性は、チベットの独立問題だ。インドは今もダライラマとその亡命政府を受け入れている。中国は、インドが支援をやめるよう圧力をかけたのか。
中国の意図が不明なことでリスクは高くなる。冬季にはマイナス20度、30度になる高地に、数万の軍を中国が維持する理由はわからない。厳しい寒気が戦争を抑えることは期待できない。1941年、冬季にもかかわらず、ソ連赤軍は侵攻するドイツ軍に対して壊滅的な反撃を加えた。中国がミサイル攻撃を行うのはさらに容易だ。
インドの世論は反中国に染まった。モディが強硬策を取らない限り、政権を維持できない。国際状況も軍事衝突を起きやすくする。インドと中国の軍事衝突が1962年に起きたのは偶然ではない。アメリカがキューバミサイル危機に奔走する時期を狙ったのだ。今、アメリカは11月の大統領選挙によって分裂している。
もはやインドと中国との衝突は小競り合いでは終わらないだろう。歴史家バーバラ・タックマンが書いたように、「戦争は誤算から始まる。」
● 11月の大統領選挙後
FT September 14, 2020
What happens if Trump loses but refuses to concede?
Katrina Manson and Kadhim Shubber in Washington
悪夢のシナリオが膨らんでいる。ドナルド・トランプが敗北しても、彼はそれを受け入れないかもしれない。
トランプは繰り返し、選挙結果を受け入れるという約束を拒んだ。大規模な不正が行われると予告した。そして、パンデミックで大幅に増えると予想される郵送による投票について、その結果がわかるまでに何か月も、何年もかかるだろう、と主張した。
バイデンは、トランプが選挙を盗もうとしている、と責めた。もしトランプが拒めば、軍が彼をホワイトハウスから連れ出すべきだ、と主張した。
僅差の選挙結果の場合、街頭での暴動を抑えるために、憲法上の危機が起きる。この数か月、アメリカの諸都市で起きているように。
最高裁と議会が、だれが大統領になるか、決める役割を担う。しかし、多くの法学者が強調するように、選挙の終結は誠意と妥協に達する意欲が決める。要するに、どちらかの候補とその政党が、自分たちの敗北を受け入れることだ。
双方が、選挙をこの国の生存に関わると決めている場合、敗北を受け入れることは難しい。2000年のG.W. ブッシュとアル・ゴアがそうだった。フロリダの再集計が最高裁で争うことになったが、ゴアが譲歩し、ブッシュが大統領になった。
もし合意がなされない場合、アメリカは第3の、深刻な不安定期に入る。下院議長、今のままならナンシー・ペロッシが大統領を代行する。しかし、共和党も民主党も、自分たちの候補が勝利することを望むから、ペロッシは介入しない。それは政治圧力と民衆の抗議、究極の妥協で決まる。
その不確実な状況では、双方が勝利を宣言し、内戦の危機が迫る。軍と民衆が対立するかもしれない。
PS Sep 14, 2020
America’s COVID Election
ELIZABETH DREW
NYT Sept. 16, 2020
Whose America Is It?
By Thomas B. Edsall
2020年は、一触即発の選挙になる。
保守派のサイトFederalistは言う。「左派は、もしトランプが勝った場合の、クーデタの準備をしている。」
過去3カ月の、AntifaとBLMの行った暴動、略奪が、ある意味で、11月の計画を進める左派のドレス・リハーサルだった。
左派Democratsの採用する戦略は、何か月もかかる訴訟、再集計、バイデンに有利な不在者投票の集計、その間はどうするか? 街頭を占拠せよ。
反対側でも、同じように準備している。
J.J. McNab(the George Washington University’s Program on Extremism)は、銃規制問題、市民蜂起、パンデミックがこの国に与えているストレス、陰謀論、新聞に対する反感、高度に分断的な選挙サイクル、これらの間で、国民は暴力から離れていられるか。準軍事「民兵集団」を含む極右のグループの緩やかな連携がある。
同時に、左派集団がルーツの集団もある。右派・左派と言うのは、以前ほど明確ではない。
FT September 17, 2020
America is drifting into a perfect storm
Edward Luce
双方が選挙を生存の危機とみなしている。左右の過激派が武装して対決の準備を進め、多数の国民は事態にうんざりしている。この選挙の勝者が10年間の選挙方法をも決めるだろう。
パンデミックが終わる気配はない。アメリカは秋に、1日の新規感染者数が3万5000人、1日の死者数が800人に向かっている。
オクトーバー・サプライズの条件はそろった。ワクチンの発表か、イランとの戦争か、中国と軍事衝突が起きるかもしれない。この選挙は、それが噂では終わらない。
● 菅義偉・新首相
FT September 14, 2020
Investors in Japan should get set for a ‘Suga high’
Yunosuke Ikeda
FP SEPTEMBER 14, 2020
Japan’s Suga Will Struggle to Pull off Abe’s Defense Transformation
BY JACK DETSCH
FP SEPTEMBER 14, 2020
Japan’s New Prime Minister Is a Fixer, Not a Leader
BY WILLIAM SPOSATO
菅義偉・新首相は物事を実現する達人である。究極のフィクサーとして、彼の目標は安定性であり、革新ではない。
FT September 15, 2020
Japan after Abe: Suga aims to consolidate power
Robin Harding in Tokyo
PS Sep 15, 2020
Abenomics After Abe
AKIRA KAWAMOTO
日本がグローバルな役割を果たせる国であるためには、アベノミクスの構造改革を実行して、生産性を高めることだろう。菅首相は、そのために議会を解散し、選挙を行うべきだ。
FP SEPTEMBER 15, 2020
Suga Promises Continuity. But on Economics, He Can’t Possibly Deliver.
BY CHRIS MILLER
最も大きな成果は、日本を攻撃してきたトランプ大統領との関係を巧みに管理したことだ。菅の最大の課題はコロナウイルスで落ち込んだ経済の回復である。矛盾を含んだアベノミクスの継承だけでは、菅が何をするのかわからない。特に、日銀の金融政策がどうなるのか、アメリカが金融緩和とドル安を進めるとき、円安に頼る日銀には困難な情勢になる。
PS Sep 17, 2020
Japan’s Geopolitical Balancing Act Just Got Harder
MINXIN PEI
米中が地政学的な対立がエスカレートする中で、安倍のように米中の選択を回避する戦略は維持できなくなる。特に、技術の分断は避けられない。
● 地中海の難民危機
PS Sep 14, 2020
The New Eastern Mediterranean Crisis
HRISHABH SANDILYA, KYRIAKI CHATZIPANAGIOTOU, SARAH MORSHEIMER
シリアとレバノンの移民を乗せた船、6隻が、北レバノンからキプロスの港をめざした。レバノン政府が崩壊して、この海域は移民を運ぶ密輸業者のパラダイスである。
キプロスは難民の流入に対する準備がない。監獄のような収容キャンプはすでに人口稼働だ。東地中海の地政学的な対立は激化している。その中で、レバノンの政治家たちは外国勢力に依存し、一連の経済危機は国内政治をバラバラにした。
さらに、先月の大爆発だ。COVID-19のパンデミックがレバノン市民の大脱出を加速し、大量に居住するシリア難民、パレスチナ難民も言うまでもない。
事態をこれほど悪化させているのは、トルコのエルドアン大統領が新・オスマン帝国を構想し、地域全体にトルコの影響力を強め、代理戦争、海底資源採掘、モスクの復活、難民を使ったヨーロッパへの脅しを重ねてきたからだ。ギリシャのKyriakos Mitsotakis首相はトルコの戦艦に対抗する。
The Guardian, Wed 16 Sep 2020
Brutality against migrants has become normal on the EU’s lawless borders
Apostolis Fotiadis
EUは、2016年、トルコとの合意で大規模なシリア難民の流入を外国で管理することにした。しかし、これで話は終わらない。それ以来、ヨーロッパの移民・国境管理は、暴力集団を雇い、法を捻じ曲げて行われるようになっている。欧州委員会は、事実上、何の監視も行っていない。
FP SEPTEMBER 15, 2020
Macron Wants to Be a Middle Eastern Superpower
BY STEVEN A. COOK
● イスラエルとアラブ諸国
PS Sep 14, 2020
The Consequences of the Israel-UAE Peace
SHLOMO BEN-AMI
イスラエルとUAEとの合意は、イラン封じ込めの一環だ、と言われる。ネタニヤフとトランプが推進し、F35戦闘機の売却をアメリカ国内の孤立主義的傾向にも受け入れやすくする、と。
しかし、そうではない。UAEはイランに対して慎重な姿勢を取ってきた。最近は、サウジアラビアが主導するイエメン戦争での連携を破棄した。トランプのイラン制裁にも参加していない。
パレスチナ人は、その硬直した交渉姿勢によって、最大の資産を失ったのだ。すなわち、パレスチナ難民がアラブ世界とイスラエルとの和平に拒否権を握っている、ということだった。かつて中東地域の震源となったパレスチナ難民は、今や、使い捨ての大義になった。
NYT Sept. 16, 2020
Trump’s Middle East Deal Is Good. But Not That Good.
By The Editorial Board
イスラエルと、アラブの2カ国、アラブ首長国連邦UAE、バーレーンは、関係正常化に合意した。
トランプとネタニヤフをノーベル平和賞に推薦するノルウェーの保守派政治家もいるが、彼らはエジプトのサダト大統領とイスラエルのラビン首相とかなり違う。両国の苦痛に満ちた敵愾心を終わらせるために決断したが、結果的に、その反対派に命で支払わされた。イスラエルとこの2国が戦争したことはないし、トランプとネタニヤフは政治的な利益を得る。
そもそも、この合意はパレスチナとイスラエルの和平に何も言及していない。
FP SEPTEMBER 16, 2020
Palestinians Can’t Stand In the Way of Israel’s Regional Integration
BY DOUGLAS J. FEITH
FP SEPTEMBER 17, 2020
Don’t Politicize Water
BY ERIKA WEINTHAL, NEDA ZAWAHRI
● バイデンの反応
FP SEPTEMBER 14, 2020
Joe Biden Is Actually Listening
BY JAMES TRAUB
20年前、私はジョージ・W・ブッシュにインタビューした。そして、ブッシュの外交政策は基本的に「リアリスト」の、強硬派、ユニラテラリストである、と考えた。もしワールド・トレード・センターへのテロ攻撃が無かったら、そうなっていただろう。かつてイギリスのハロルド・マクミラン首相は、何が外交を決めるのか、と尋ねられて、「事件だよ、坊や、事件さ。」と答えた。しかし、それは真実の半分でしかない。
ある指導者が、9・11のような構造転換を及ぼす事件に直面したとき、経験したことのない衝撃に対して男は福音派の信仰で応じた。そして、テロとの戦い、「自由のエジェンダ」というミッションに従った。
第1次世界大戦、バルカン半島のジェノサイド、コロナウイルスによるパンデミック、その他の予測しなかった、予測不能の事件は避けられないものであり、新大統領になればバイデンが何をするか予測するにも、謙虚であるべきだ。国内政策は予測できるが、外交はそうではない。問題は、彼の世界に対する基本的な直観、予想外の事件に反応する仕方である。
この点で、バイデンはG.W. ブッシュと対極にある。政策の知的な立案者ではなく、それを多くの人に会って話し合う。生まれつきのプラグマティストであり、旧来型の職人だ。世論を重視して政治を動かす、野心的な政治家である。
外交官であったWilliam Burnsは、バイデンを、一貫性と感情移入のセンスで優れている、と評価する。同盟諸国がますます懐疑的になる時代に、バイデンは他国を安心させる。
FP SEPTEMBER 14, 2020
The Biden-FDR Connection Runs Deeper Than You Think
BY JONATHAN ALTER
FT September 16, 2020
Biden to offer a ‘drastic shift of tone’ on Latin America
Michael Stott, Latin America editor
FT September 16, 2020
The welcome lack of enthusiasm for Joe Biden
Janan Ganesh
● イギリス政府
The Guardian, Tue 15 Sep 2020
To lead Britain through a crisis, you have to be able to see beyond it
Gordon Brown
50年続いたネオリベラリズムには、どの国も小休止だろう。インフレ抑制、規制緩和、自由化、民営化。公平さや雇用、持続可能性が犠牲になった。
FT September 16, 2020
Weaning Britain’s economy off furlough
● COVID-19と経済政策
PS Sep 15, 2020
The COVID Silver Linings Playbook
MOHAMED A. EL-ERIAN
COVID-19が引き起こした大規模な経済の破壊は、すでに6カ月以上も公的な経済支援を行い、この先もそれを続けるだろう。しかし、緊急の危機対応が続く中で、われわれはその機会を見失ってはならない。
企業、家計、政府、国際機関はこの混乱する時代を乗り切る中で、基本的課題として同じものをめざしている。危機の向こうに続く未来への道筋を観ることだ。長期を経て、この社会や経済を改善する趨勢、条件を目標にしなければならない。それは6つあると思う。
第1に、医療の歴史的な改善、革新が起きている。その実現と普及には複雑な諸問題がある。
第2に、民間部門の協力、政府の予想をしばしば超える、境界を越える協力が飛躍をもたらす。
第3に、経済の崩壊は多次元の民間部門の努力を強める。従来のデータを越えて、集積と分析が進む。
第4に、COVID-19のショックが、起こりそうもないが、強い衝撃を生む「テール・リスク」について、われわれの集団的な意識と感受性を変えた。気候変動もそうだ。
第5に、パンデミックにより、国と国との間で「自然実験」が行われる。ガバナンスのシステムや指導者の在り方が精査され、強大なショックに対する対応能力が試される。
第6に、危機がワーク・ライフ・バランスを変え、被雇用者の必要に答える革新的方法を求める。
機会をつかみ、長期的なプラスの趨勢を定着させる。ともに行動すれば、困難な時期から、共有された福祉の改善、将来世代の改善をもたらすことができる。
FT September 16, 2020
Ditch the zombies and embrace the entrepreneurs
DeAnne Julius
FP SEPTEMBER 16, 2020
COVID-19 Has Crushed Everybody’s Economy—Except for South Korea’s
BY MORTEN SOENDERGAARD LARSEN
FT September 17, 2020
Support people rather than jobs for a more resilient post-Covid economy
Chris Giles
パンデミックの下で、雇用・職場を守るべきか、人・暮らしを守るべきか?
ヨーロッパ諸国は職場を守ってきた。公的支援で雇用を維持し、時間短縮を支持した。失業率は6.5%から7.2%と、わずかに上昇しただけだ。
アメリカは失業手当を増やし、職を失った個人に支給してきた。アメリカの失業率は、2月の3.5%から4月は14.7%に急上昇し、8月に8.4%まで低下した。
支援策は失業率に異なる影響を与え、将来も、重大かつ持続的な効果をもたらすだろう。パンデミックの初期にはヨーロッパの支援が優れていた。しかし、期間が長引くと、ソーシャル・ディスタンスや部門の回復が以前と異なるものがはっきりしてくる。職場よりも人を支援し、新しい産業や雇用に移ることを支援する方がよい。
しかし、この転換の判断は容易でない。もしワクチン開発が早く成功すれば、政策転換を遅らせるほうが賢明だ。数か月を経て、人びとの消費や旅行は変化しつつある。
FT September 17, 2020
Covid crisis has accelerated big trends in China’s favour
Jim McCormick
PS Sep 17, 2020
The Rise of Covidnomics
KAUSHIK BASU
COVID-19に感染するリスクが高い職場には、非常に高い賃金を支払う。そして、ウイルスの感染拡大を抑えながらサプライチェーンを維持するのだ。
● 金融政策のレジーム転換
PS Sep 15, 2020
Crunch Time for Central Banks
STEFAN GERLACH
戦間期の金本位制崩壊に関するGolden Fetters(金の足かせ)という研究書の中で、経済史家のBarry Eichengreenは、政治と社会の重要な変化を強調した。特に、フランチャイズの拡大が、金本位システムを維持不可能にした。金本位制の要求に従おうとしても、有権者たちはもはやその緊縮策を我慢しなかった。
金融政策の支配的なレジームが、新しい政治状況において放棄された。アメリカやUKのような諸国は、新しい現実に速やかに適応したが、フランスやスイスのような他の諸国は反応が遅く、長く苦しんだ。
今、中央銀行は「金の足かせ」をはずす新しい瞬間に向かっている。10年足らずの間に、世界金融危機、気候変動、そして、COVID-19によるパンデミックが、金融政策の環境を作り変え、世論は中央銀行を支持しなくなっている。
2つの心情の変化が顕著に起きている。第1に、グローバルな気候変動は本当に起きている、という広範な合意がある。政府や中央銀行は、それに対策を採るべきだ、と考える人が増えた。
第2に、金融危機やパンデミックに対する中央銀行の政策は、資産の不平等を拡大している。経済を刺激するために、ゼロ金利や量的緩和は資産価格を上昇させる。それは金融政策の働きであるが、多くの人々は不公平だとみている。危機による失業や不況で苦しむ人が多いのに、資産保有者たちはさらに富を得た。
中央銀行の権限や政策手段では、不平等や気候変動を緩和できない、と説明しても、それが真実を含むとしても、人びとを説得できない。
ECBのラガルド総裁は新しい現実に直面して、気候変動を考慮する政策を採用した。銀行規制当局も、気候変動による対策を採る銀行を優遇する。アメリカ連銀のパウエル議長は、金融政策に不平等の緩和や、黒人・ヒスパニックのコミュニティーが利益を受けるという観点を取り入れる。
時代は変化している。中央銀行はそれに対応し、遅れた者は評価を損なうだろう。
PS Sep 16, 2020
Central Banking’s Next Act
HOWARD DAVIES
ニュージーランドで始まったインフレ目標が中央銀行の金融政策を決定する時代を終わった。しかし、パウエルの示したインフレと雇用のバランス再調整は、まだその入り口でしかない。再び、予測不可能な歴史が始まる。
● ワクチンの共同開発
FT September 15, 2020
Bill & Melinda Gates: Vaccine fairness will make us all safer
Bill and Melinda Gates
われわれはできるだけ早くパンデミックを終わらせたい。われわれはできるだけ多くの命を救いたい。ワクチン接種を自国だけに確保する動きがある。しかし、研究が示すように、われわれは協力型のアプローチを採用しなければならない。
2つの異なるシナリオをモデルで予測してもらった。1つは、裕福な50カ国が最初の20億回のワクチン接種を独占する。他のシナリオでは、富ではなく人口により、各国はワクチン接種をグローバルに配分される。
いくつかの仮説を設けたが、予測は観察された事実に基づいている。
より公平な後者のシナリオでは、ワクチンが9月1日までに死者数を61%減らすだろう。裕福な諸国がワクチンを確保する不公平なシナリオでは、2倍の死者が出る。そしてウイルス感染は、世界の4分の3で、4か月間、放置される。
残念ながら、多くの裕福な国がワクチン接種の確保を競っている。しかし、いくつかの2国間で合意できる効果的戦略がある。
パンデミックと経済不況はグローバルな性格だ。1国による解決策では不十分だ。国境線は病原菌にとって意味を持たず、経済についても経過とともに同様になる。ニュージーランドは感染を見事に抑えたが、経済は今も縮小し、ウイルスの感染拡大が再発して、再びシャットダウンした。
グローバルで、公平なワクチン配分は、すべての者にとってパンデミックを早く終息させる。世界全体で約5000億ドルが節約される。他方、一部の国が国民全員にワクチン接種を行う場合、経済はほとんど改善しないだろう。いたるところでパンデミックが猛威を振るい、グローバル・サプライチェーンも、海外旅行も、止まったままだ。
効果的で公平な対策とは何か。すべての国がワクチン接種の一部、Covaxを得られるよう保証することだ。ワクチンの配分に応じて、リスクの高い人々に接種できる。欧州委員会、韓国、日本、一部のアラブ諸国がCovaxに支持を表明している。
Covaxに参加しない諸国にも、他の方法でグローバルな対策を支援できる。確保したワクチン接種の一部を低所得国に与える。あるいは、ワクチン連合Gaviに寄付する。製薬会社も、危機においてはすべての者に薬を利用可能なものにしなければならない。
企業と政府は、未来がゼロサム競争ではないことを理解しなければならない。
FP SEPTEMBER 15, 2020
Joining COVAX Could Save American Lives
BY ERIC A. FRIEDMAN, LAWRENCE O. GOSTIN, MATTHEW M. KAVANAGH, JOHN T. MONAHAN, HAROLD HONGJU KOH
SPIEGEL International 16.09.2020
Interview with Bill Gates on COVID-19
"It's Mind-Blowing That We're Not Further Along!"
● トランプと大火災
FT September 15, 2020
US wildfires reveal partisan divide on climate
ドナルド・トランプはカリフォルニアを訪れて、温暖化ではなく、森林管理のまずさを批判した。トランプは今も地球温暖化という現象を認めない。民主党のバイデンは2兆ドルの温暖化ガス排出ゼロ計画を示し、パリ協定を承認する。トランプにとっては、政府が温暖化の緩和のために行動することなどない。むしろ「行政管理国家」を解体する彼の十字軍は、海外でパリ協定の離脱、国内では環境規制解体を意味する。
● 貧困とグローバリゼーションの逆転
PS Sep 17, 2020
How Poverty Reduction Can Survive Deglobalization
PINELOPI KOUJIANOU GOLDBERG
● カースト制
FP SEPTEMBER 17, 2020
Feeling Like an Outcast
BY YASHICA DUTT
2001年9月、南アフリカのダーバンで、the World Conference Against Racismが開催された。インドのダリット活動家たちは、カーストを人種差別と認めるよう支援を求めた。ダリットはインドのカースト制で最下位の、かつて「不可触民」とよばれた人びとだ。
EUやグアテマラ、スイスなどが支持を表明した。しかし、ダリットが自分たちの政府を求めることは支持されなかった。インドは、長年、南アフリカのアパルトヘイト反対に指導的な国だった。しかし、カースト制の問題は国内問題として国際的な行動を認めなかった。
Isabel Wilkersonは、アメリカの階層化した人種差別を認識するために、カーストの概念を使用した。彼女は、ナチズムによる強制収容所も、ヒンドゥー教が起源のカースト制も、ダリットが味わった弾圧と同じものだと考える。
● 国連安保理常任理事国
FP SEPTEMBER 17, 2020
Decolonizing the United Nations Means Abolishing the Permanent Five
BY HANNAH RYDER, OVIGWE EGUEGE, ANNA BAISCH
かつて帝国を前提に世界人口の半分を代表した安保理常任理事国5か国P5が、今では世界人口の26%でしかない。P5が国連を植民地化し、行動できない状態に陥っている。常任理事国を追加する改革案では成功しない。しかも不十分だ。P5を廃止するべきだ。
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The Economist August 29th 2020
What Putin fears
Belarus and Russia: The people lose patience
Migration: Cheques don’t check treks
Germany’s refugee influx: Did they handle it?
(コメント) 読みが浅いせいだと思いますが、ポイントがつかめない。特集記事は “dementia” 認知症です。何を主張しているのか? 増えることを心配する。何をすべきか? 財政負担は? どこかに成功例はないか? よくわかりませんでした。
他にも、株式市場の国際競争、ハリウッド、COVID-19による心理的変化、安倍辞任、中国のポドキャスト、カリフォルニアの大火災、QAnon、など。
2つがおもしろかったです。ロシアのプーチンはなぜベラルーシの体制を支援するのか? なぜナワルニーを毒殺しようとしたのか? それは、石油価格だけでなく、プーチンの巧妙な心理的支配が効果を失いつつあるからです。
EUがアフリカからの移民を抑えるために行った経済支援、貿易・投資協定は、期待した効果がなく、むしろ移民を増やしたかもしれない。また、ドイツの移民統合化政策は、必ずしも成功しなかった。
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IPEの想像力 9/21/20
「Go To トラベル」 東京発着が解禁された。その盛況ぶりをニュースが伝えていました。
温泉地より白馬高原の巨大ブランコ、沖縄より北海道、そして山にはテントがあふれています。旅行に出かける家族の笑顔も、それを迎え入れるホテルや旅館、商店街や温泉の人たちも、忙しくなってとても嬉しそうです。
しかし、高速道路の渋滞が20キロも続く。・・・キャンプ場のトイレ待ちが2時間。・・・松本城に入るにも2時間半かかる。
「Go To トラベル」と同時に、休暇を分散するよう呼びかけるとよかったです。年間を通じて長期滞在やリピーターを増やす。異なる季節の魅力をアピールする。
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ツーリズムにはさまざまな問題があると思います。
富士山の山頂を目指す大行列を観ると、環境・自然破壊を実感します。入山を制限したうえで、宿泊施設を建設し、食糧を運び、人間がもたらすゴミや糞尿の処理システムが必要です。
リゾート開発はしばしば金融バブルにも重なって、豊かな自然を破壊した末に廃棄し、地域経済も後遺症に苦しみます。大都市や外国からの富裕層を優遇し、地域社会が共有する規範や倫理的抑制を欠く者たちのためのカジノや売買春、麻薬、非合法な利益を求めて集まる国際・犯罪集団や暴力組織の浸透が懸念されます。
観光客による需要は時期や地域が偏っており、その地域全体に繁栄をもたらすには限界があります。むしろ、地域の伝統的利益を破壊する新しい社会集団が力を強めて軋轢を生じます。観光による雇用の不安定さ・低賃金は、女性の就労機会を増やす一方、家族の伝統的な役割を破壊し、農業や林業を支える男性の孤立や、若者の地域からの流出を刺激するように思います。
その先にあるのは、外国人労働者への依存、地域住民の住環境悪化、外部の資本や組織(そして、外国銀行や国際カジノ・グループ)による生活空間・政治への侵食です。たとえ一時的に成功するように見えても、突然の外的ショックに弱く、大きな波が引くと、後には地域自治体の債務や伝統産業・自然の破壊だけが残ります。
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2018年に、ゼミ旅行で訪れたとき、志摩スペイン村について考察しました。
https://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2018/082718review_s.html
ブレグジットや大阪都構想にも見られる「領邦国家の悲劇」と言えるでしょう。連邦政府や世界市場への不満、ローカルなネイティビズム、愛国心。極右と左翼の理想が混在するポピュリストたちの舞台です。
しかし、だからこそ彼らが民意を動かせるなら、政治を取り戻す「衝撃」を駆使する可能性があると思います。解決困難な課題があるときほど、既得権や既成概念、支配組織を破壊して、闘う姿を政治は演出します。何年かに一度、投票するだけの民主主義を、私たちが真剣に考えるなら、彼らの真実を問うことです。
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地方の活性化とは何でしょうか。外国人のもたらす需要より、国内、地域内の需要を増やすことが、本当は、重要であったはずです。
アベノミクスは多面的な効果を及ぼす政策として、評価の分かれるものですが、株や土地など、資産価格が上昇し、円安が進みました。外国人観光客を増やす「インバウンド」は、アベノミクスの目玉の1つでした。外国人の雇用を増やす「技能実習制度」も、「ふるさと納税」も、・・・ 日本で生きる人々は豊かになったでしょか? 国籍や、住む場所や、年齢、社会的地位によって、その答えが大きく異なるなら、それは政治の失敗です。
ニュースで、技能実習生として宮崎県で働いていたベトナム人の若者が、台風10号の土砂崩れで死亡したことを知りました。
移民の積極的な役割を認めるなら、出稼ぎ労働者のための医療体制と災害保険をつくるべきだ。移住から定住、国籍取得までの道筋を示すべきだ。このとき、私はそう思いました。
しかし、ネットで彼らのことを検索する中で、以前、観た作品を思い出しました。NHKスペシャル「夢破れる外国人労働者たち」です。観たでしょうか? その内容が詳しく紹介されています。「日本で働く外国人はまもなく150万人を突破する。彼らは、私たちのすぐそばで働いている。」
https://www.nhk.or.jp/special/plus/articles/20190726/index.html
ベトナム人の若者が日本に来て、希望にキラキラ輝く目を、しだいに、苦悩で閉ざしてしまうことを、この作品は訴えています。不法就労の末に死んだ若者、アインさんは、日本で罠に落ちたまま、裏切られたと思って死んだでしょう。
「お金のためにキャリアを失った」
「自分の行為は自分に返ってくる」
「神様、許してください。取り戻すチャンスを与えてください……」
アメリカの多くの都市でデモが行われました。日本も、VLM(ベトナム人の命は大切だ)と訴えなければならない。希望をかなえられる法律や制度を整備し、不当な抑圧をなくすべきだ。そう、強く思います。
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