IPEの果樹園2020
今週のReview
9/7-12
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共和党全国大会 ・・・安倍政権の終わり ・・・パンデミック後の世界経済 ・・・ベラルーシの民主化 ・・・連銀の新しい金融政策 ・・・アメリカのいない地域無秩序 ・・・デジタル監視国家 ・・・米中のナショナリズムを抑制する ・・・ジョンソンのトリレンマ
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 共和党全国大会
FP AUGUST 27, 2020
The October Surprise Is Already Here
BY MICHAEL HIRSH
共和党全国大会で、トランプとその支持者たちは、敵を倒す新しい方法を見つけた。同じ週に、黒人に銃撃した警察官がいたからだ。人種差別と棒慮億に反対する抗議デモが起きた。
トランプ陣営のメッセージはこうだ。もしあなたが、今、アメリカの危険な場所を思うなら、バイデンが大統領になるまで待つことだ。「バイデンのアメリカでは、誰一人として安全ではないだろう。」 トランプは、法を執行する警察官たちを称えて、指名受諾演説で語った。「われわれは警察官にパワーを取り戻す必要がある。われわれは」「民主党員が支配する」アメリカの諸都市のように「モッブ(暴徒)が支配するのを許さないだろう。」
「あなたの1票が、法律を守るアメリカ人を護るのか、あるいは、暴力的なアナーキストやアジテーター、市民たちを脅かす犯罪者たちに支配を委ねるのか、を決めるだろう。」 トランプはホワイトハウスから述べた。「間違うな。もしジョー・バイデンに権力を与えたら、ラディカルな左派がアメリカ中の警察を解体するだろう。・・・彼らはアメリカ中の都市を、民主党員が支配するオレゴン州ポートランドにするだろう。」
Kenoshaでは、黒人の父親Jacob Blakeが、警察から逃げようとして、彼の子どもたちが座っていた自動車を取り戻そうとし、後ろから7発、銃撃された。この事件は、ミネアポリスで警察官に殺害されたフロイドの引き起こした、醜く、解決策の示されない緊張状態を再燃させた。
Kenoshaの抗議活動はおおむね平和的であったが、高い注目を集める事件が他の面で起きた。抗議デモの3夜目に、17歳の白人少年が、デモ隊に放火されると伝えられた建物を、半自動ライフル銃で武装して護っている、と主張した。そして、2人を殺害し、3人目には重傷を負わせた。右派のコメンテーターたちは容疑者を称賛する。
The Guardian, Fri 28 Aug 2020
The Guardian view on Trump’s convention speech: the unwitting truth amid lies
Editorial
FT August 28, 2020
A mundane convention for a politicised America
Peter Spiegel
NYT Aug. 28, 2020
Trump Can’t Avoid Reality Forever
By Timothy Egan
NYT Aug. 28, 2020
Stephen Miller’s Dystopian America
By Jean Guerrero
ドナルド・トランプ・ジュニアは、バイデンを「ネス湖の怪獣」とよんだ。保守派の活動家チャーリー・カークは、ドナルド・トランプを「西側文明のボディーガード」とよんだ。
共和党大会の言葉は、「白人虐殺」陰謀論から来ているが、それは何よりも、黒人や有色人種が白人の文明を、反レイシストの助けを受けて、破壊するだろうと警告する。
人種差別主義の小説家Stephen Millerは、トランプの上級政策顧問、スピーチ・ライターを務めており、2015年に右翼のウェブサイト、ブライトバート、から出てその地位を得た。
言葉は心を変形する道具であり、ミラーは言葉を武器にするやり方を知っている。
トランプが白人至上主義者の方針を採用するにともない、極右の過激派がもたらす脅迫に直面する白人、黒人、有色人種、その他の社会集団の間に、新しい連帯が現れている。ジョー・バイデンとカマラ・ハリスはこの新しい連帯を反映する。
FT August 29, 2020
A tale of two very different US conventions
FT August 31, 2020
QAnon lures adherents by acting like a game
Izabella Kaminska
PS Sep 2, 2020
The Parties Must Go On
JAN-WERNER MUELLER
共和党は政策綱領を示さなかった。ただ、トランプの「アメリカ・ファースト」を熱狂的に支持した。政党が、トランプ組織の下部機関に転換したことを意味する。その中身が完全に失われた。もはや民主主義を担う政党ではない。
それはアメリカだけではない。オランダでも、UKでも、政党を富裕層のためのポピュリストたちが動かす、支持者たちの乗っ取りが起きている。政党は、文化的な戦争の道具になる。それは以前から極右のテレビ局やネットワーク、ウェブサイトに観られる現象だった。
もはや政党の中に「批判」は存在しない。人びとを積極的な論争に向かわせ、合意形成を目指すものではなくなった。そのような政党モデルは、分断・分極化の時代に、有効性を失った。
政党そのものが内部における権威主義を強めている。彼らを望むのは民主主義のシステムではない。
PS Sep 3, 2020
Trump’s Dirty Tricks
MARK LEONARD
● 安倍政権の終わり
FT August 28, 2020
Shinzo Abe to step down as Japan’s prime minister
Robin Harding in Tokyo, Christian Shepherd in Beijing and Demetri Sevastopulo in Washington
「日本政治に安定性をもたらし、国際的な存在感を高めた。」・・・「しかし具体的な成果は、何もない。」
指導部の変化は日中関係に大きな不確実さをもたらす。中国は尖閣・釣魚島の論争に圧力を高めつつある。
安倍がトランプと築いた密接な関係は、トランプが再選されれば重要だった。しかし、最近はそれも、ワシントンで重視されなくなっていたようだ。
PS Aug 28, 2020
The Japan Shinzo Abe Has Left Behind
BILL EMMOTT
経済はなお弱い。しかし、安倍は日本を防衛と外交に関して、強く、自律的な国にした。東アジアの平和と、ルールに依拠した国際秩序を求める者にとって、後継者がこれを継承することは好ましい。
国際的な視点では、安倍が支持率を低下させたことは意外であろう。COVID-19による死者数は1300人しかおらず、経済的な後退も欧米諸国に比べて軽い。安倍政権は、国民とのコミュニケーションや政策対応を批判された。長期政権は多くのスキャンダルを生んだ。
さらに、経済状態、生活水準の現状に不満が強かった。アベノミクスで3度の選挙を勝ったが、デフレも、経済成長も、大きなショックがなかった割に、改善したとは言えない。出生率は低いままだ。
安倍は、大きな課題を実現する野心を掲げていた。憲法を改正して第9条を破棄する。しかし、連立政権の相手は平和主義的な公明党であり、議会でも憲法改正に必要な3分の2の支持を得るには至らなかった。
安倍は自民党の「新保守主義」の党派を指導した。強い国家、権力集中、伝統的価値観。そして、何よりも、頑健で自立した外交・安全保障を支持した。
安倍は時にはトランプとの緊密な関係に隷従するように見えたが、貿易においてはTPPを継承する独自の立場を取った。EUやUKとの自由貿易協定も結んだ。インドとの防衛面での協力関係を深めたが、日本の戦争に関するリビジョニストの見解から日韓関係は悪化した。
1952年にアメリカの占領が終わってから、すべての首相がアメリカとの関係を断ついかなる慎重な試みもなかった。しかし、トランプの下で、アメリカは信頼できない、協力を嫌う国になった。安倍は、独立した国際的発言力を持ち、世界にネットワークを築くための条件を準備した。
この戦略は続けるべきだ。
FP AUGUST 28, 2020
Unloved But Successful, Shinzo Abe Takes His Bow
BY WILLIAM SPOSATO
FP AUGUST 28, 2020
The Abe Era Ends, Cheering China, Concerning Washington
BY MICHAEL AUSLIN
FT August 30, 2020
Shinzo Abe’s legacy must not be squandered
FT August 31, 2020
Shinzo Abe and his struggle with Xi Jinping
Gideon Rachman
安倍晋三は2012年12月に58歳で、習近平はその1カ月前に59歳で、ほぼ同じ時期に権力を握った。安倍の中心的課題は、日本を強くして、ますます強くなり、権威主義的になる中国に対抗することであった。
この間、中国はますますアジアの最強国となった。東京のいかなる政府も、中国のナショナリズムが反日感情をともなうことを恐れた。それは1930年代の日本による中国侵略と蛮行に由来する。日中は領土問題も抱えている。
日本の人口は高齢化し、減少しつつある。しかも、その債務は莫大だ。中国の人口も高齢化するけれど、日本の10倍の人口規模がある。北京が強化する軍事力に日本は追いつけなくなるだろう。
その現実により、日本政府は中国を宥和する政策を取りたくなるが、その結果は、日本が自由と自律性を大幅に失うことになるだろう。住民のいない尖閣・釣魚島だけでなく、140万人が住む沖縄の主権も疑っている。中国のナショナリストたちは、1930年代の報復として、日本を貢納国家に位置付けることを喜ぶだろう。
安倍が領土問題で一切譲歩しなかったことは理解できる。しかし、習との関係改善は進められた。相互訪問として習の訪日が計画されていたが、コロナウイルスで延期された。日中関係がこのまま安定するとは、だれも期待していない。米中対立が激化する中で、中国は日本と一時的に緊張緩和しただけだ。
もしトランプが中国との対立で、日本に対する脅しを強めるなら、日本の反米感情が高まるかもしれない。トランプの気まぐれな政権は安倍を苦しめた。安倍の卑屈にも見えるトランプへの態度は、戦略的な思考を反映していた。
安倍の戦略的対応が正しかったどうか、結果はまだわからない。しかし、安倍の後継者たちは、数十年におよぶ中国の台頭と格闘し続けねばならない。
FT September 1, 2020
Buffett’s Japan investment is a bet on inflation and volatility
Michael Mackenzie
FT September 1, 2020
Six Abenomics lessons for a world struggling with ‘Japanification’
Robin Harding
2913年に始まった「アベノミクス」は、いわゆる3本の矢として、市場に支持された。大胆な金融緩和、弾力的な財政政策、成長戦略。
しかし、2%のインフレ目標は達成できず、その意味で、アベノミクスは失敗だった。ただし、その評価は、間違っていた、というより、十分でなかった、と言うべきだ。世界が「日本化」(停滞、デフレ、超低金利)と格闘する中で、アベノミクスの教訓は重要だ。
教訓1は、金融政策が効いた。黒田・日銀の「バズーカ」が、債券市場、株価、為替レートを動かした。1ドル100円を超える円安が産業活動と雇用を刺激した。
教訓2は、回復が十分でないまま、増税はできない。消費税引き上げは不況につながった。
教訓3は、信頼が全てである。最初のバズーカだけが成功した。
教訓4は、期待だけではインフレにならない。
教訓5は、財政刺激策は債務を増やすのではなく、成長によって債務を減らすものだ。
教訓6は、成長戦略には限界があった。特に、人口の減少が止まらず、しかも大規模移民を拒んだ。
もはやアベノミクスを人々は支持しないだろう。しかし、現状維持はデフレ、債務増を意味する。日銀が一層の資産市場介入をするか、あるいは、政府に緊密に協力して融資する。さらに進めば、「ヘリコプター・マネー」である。
FT September 2, 2020
Why Warren Buffett is gambling on Japan’s distinctive dealmakers
Leo Lewis and Kana Inagaki in Tokyo
NYT Sept. 2, 2020
What’s at Stake for Shinzo Abe’s Successor
By The Editorial Board
● パンデミック後の世界経済
PS Aug 28, 2020
The Post-Pandemic Economy’s Barriers to Growth
DAMBISA MOYO
パンデミック後の世界経済は成長にどのような制約を受けるのか? 危機の結果、政府の役割が増大するだろう。主要産業における資本の集中が厳しく規制され、企業の分割に至るかもしれない。グローバリゼーションの後退は加速する。
こうして成長に対する5つの障害を指摘できるだろう。第1に、政府債務がGDPに占める割合は増大する。財政赤字や金融政策の結果、世界のGDPに対する債務の比率は、2020年初め、322%に達した。危機が残す債務の負担は性y等を制約するだろう。
第2に、経済に占める国家の役割が増大する。伝統的な財政刺激策を越えて、金融政策と一緒に、たとえば、航空旅客、クルーズ、銀行業を支えている。また、政府が最後の貸し手だけでなく、最後の雇用者になっている。
ますます構造的な要因が重要になって、政府の支援範囲は拡大するだろう。主に技術的な要因で、職場が自動化によって失われる。現在の失業は一時的ではなく、自動化、リモート化、デジタル化にともなう労働需要の減少、長期的失業である。政府が、生産における資本と労働とのバランスを調整する役割を担うだろう。
第3に、それは、経済に占める民間部門の縮小を意味する。株式市場で取引される企業数も減少してきた。巨大な企業に買収されて、市場の集中が進んでいる。
第4に、税制や規制の点で、巨大企業を分割する圧力が強まるだろう。
最後、第5に、グローバリゼーションの逆転が加速する。リベラルな国際秩序への攻撃が強まる。各国政府はますます自国産業を保護し、労働者や有権者が求めるポピュリスト的な政策を取るだろう。保護主義、資本移動の規制、直接投資の減少、新興市場からの資本流出、移民や送金の減少、が起きる。
歴史の暗い時代は、パンデミック後に、再現されるかもしれない。
PS Aug 31, 2020
Winners and Losers of the Pandemic Economy
MICHAEL SPENCE
株価と実物経済との乖離は、完全に、現代経済における正しい価値の反映である。無形資本intangible capital、特にデータの管理と利用、を観るべきだ。
PS Aug 31, 2020
The COVID City
IAN GOLDIN, ROBERT MUGGAH
PS Aug 31, 2020
Realizing America’s Anti-COVID Potential
SIMON JOHNSON
パンデミックから抜け出すには、その国が3つのことをしなければならない。1.病気のことを理解する。感染の仕方について。2.科学的な解決策にアクセスできる。治療法、ワクチン、感染予防。3.必要な施策のための財源がなければならない。
究極において、それは経済学だ。政府は科学研究に十分な投資をして、十分な数の科学者がいるか? 緊急事態に際して十分な公衆衛生設備があるか? すべての者が十分な防疫体制の下にあるか?
今回の大規模なパンデミックに対しては、検査・研究を集めて、すべての者を包括的な公衆衛生プログラムに入れるべきである。他国が示すように、それは難しくない。しかし、アメリカにはそのためのリーダーシップがない。
FT September 1, 2020
A cheap, simple way to control this pandemic exists
Julian Peto
FT September 1, 2020
Goodbye to the ‘Pret economy’ and good luck to whatever replaces it
Sarah O’Connor
PS Sep 1, 2020
The COVID Middle-Income Trap
MASOOD AHMED, MAURICIO CÁRDENAS
PS Sep 1, 2020
What Next for Great Cities?
HAROLD JAMES
COVID-19でメガシティは終わったのか?
パンデミックは、確かに、グローバリゼーションを変形し、グローバル経済のハブを感染の震源地に変えた。その未来は不安定なものになった。しかし危機は、すでにあったメガシティの脆弱さを明確にし、問題の悪化を加速しただけである。
今世紀の初めまで、ロンドン、ニューヨーク、香港など、大都市は、資金、人、アイデアのグローバルな流れを結び付ける拠点であった。金融センター、文化都市、起業家、技術革新が集中して、世界を作り変えた。しかし、メガシティは別の一群のスキルも必要とした。移民たちが集まって、メルティング・ポットを形成した。
その結果は、必然的に、後背地との間の新しい緊張状態を生じた。郊外や地方に住む人々は、都市生活を手に入らない、あるいは、望ましくないものと観るようになった。ブレグジット、トランプ支持層、香港の「一国2制度」など、沿岸部の年エリートに対する反発があった。都市の住宅価格高騰が社会の共感を壊し、有毒化したのだ。不安定な、あるいは、季節的な職場に就く労働者たちは住宅を買えない。パンデミックの前から、ホームレスが恒常的に増えていた。多くの人々が頼りにならない公共輸送システムで長距離通勤した。
感染の恐怖は富裕層の大量脱出を招いた。医療サービス、公共輸送、商店では感染のリスクを冒して収入を得るしかない。対称的に、知識労働者はテレコミュニケーションを始め、混雑を避けた。リモートと、フロント・ラインという、新しい分断が起きている。高コストの、パンデミックに苦しむ都市を逃れて、どこかほかで働くべきではないか?
歴史的に、ヴェニスが参考になる。16世紀後半にピークを迎え、長い衰退を経てきた。通商路の変化、より貧しい、ダイナミックな都市との競争、疫病。COVID-19後のメガシティがヴェニスに学ぶことは、代表的な商品の拠点が、後背地の、小さな町に移されたことだ。ベネチア共和国は周囲の諸領域と新しい政治的関係を築いた。
今も、パンデミックをめぐって、ロンドンのカーン市長とUKのジョンソン首相とが衝突し、ニューヨークの市長が州知事やトランプ大統領と衝突している。
真の民主主義を復活させることが、テクノクラートの支配するグローバリゼーションに寄る諸問題への解決策だ、としばしば考えられる。しかし、民主的な政府がパンデミックの制御に有能で、さらに、貧困や住宅問題など、慢性化した不満の源泉に対処できるか、問われている。
PS Sep 2, 2020
The Siren Song of Scranton
EDOARDO CAMPANELLA
NYT Sept. 2, 2020
How to Avoid a Post-Recession Feeding Frenzy by Private Developers
By Brad Lander
The Guardian, Thu 3 Sep 2020
Germany is right to extend its furlough scheme. Why won't Britain do the same?
Peter Kuras
FT September 3, 2020
Why cities must make more of their rivers
Simon Kuper
PS Sep 3, 2020
Digital Finance for a Fairer Post-Pandemic World
MARIA RAMOS, ACHIM STEINER
NYT Sept. 3, 2020
Doesn’t Feel Like a Recession? You Should Be Paying More in Taxes
By Kitty Richards and Joseph E. Stiglitz
コロナウイルスのパンデミックに対して、議会は十分な対策を採っていないが、経済全般が破壊され、税収が落ち込んだ。州政府も地方政府も巨額の歳入不足が生じる。追加の需要を必要とするときに、支出や雇用を削減するだろう。
連邦政府は、単年度の均衡予算を強いられないから、この財源不足を解決できるだろう。しかし、議会が動くかどうかに関係なく、州・地方政府は、不況に苦しめられていない人々に課税することで、さまざまな救済策や支出を増やすことができる。それは人道的観点から正しいだけでなく、経済学から見ても正しい。
● 貧困と不正義
PS Aug 28, 2020
Poverty as Injustice
EDMUND S. PHELPS
FT August 31, 2020
Britain’s ethnic wealth gap needs closing
● 米中のシナリオ
PS Aug 28, 2020
The Four Paths of US-China Relations
YUEN YUEN ANG
アメリカは、トランプとバイデンが11月の選挙で争う。中国は、習近平が半永久に権力を独占できる。そのような見方は将来についてのシナリオとして十分ではない。
● ナワルニー毒殺未遂
FT August 29, 2020
Russia: who wanted Alexei Navalny dead?
Max Seddon and Henry Foy in Moscow
● ベラルーシの民主化
PS Aug 29, 2020
What Belarus Needs
SŁAWOMIR SIERAKOWSKI
ベラルーシの民衆が独裁体制を終わらせる闘いに、もっと支援を送り、声援するべきだ。
FT August 30, 2020
Europe needs a new plan for Belarus and eastern Europe
Arseniy Yatsenyuk(a former prime minister of Ukraine and now chairman of the Kyiv Security Forum)
ベラルーシにおける市民の蜂起は世界中からの連帯を呼び起こした。しかし、実際、緊急に必要なことは、EUとNATOによって守られていないヨーロッパ東方の諸民族に対する戦略を、包括的に刷新することだ。
現在、西側の公式は、東方諸国に対する「ソーシャル・ディスタンス」を維持する、ということだ。しかし、ヨーロッパ東方とは、東部の境界線よりはるかに遠い、コーカサスまで含む概念だ。1980年代後半から、驚くべき変化がいくつも起きた。植民地化の後の遺制を取り除く、民族のアイデンティティーが復活した。市民的自由の意識とそれを護る諸制度の構築が進んだ。経済発展と安全保障の進歩的なモデルを模索した。
しかし西側と違って、ロシアはこの地域と重要性に関する包括的なビジョンを持っていた。モルドバ、ウクライナ、ベラルーシ、どこであれモスクワは効果的な支配を確立し、西方への影響力を強める橋頭保を得ようとしてきた。それがウラジミール・プーチンの支配するロシアが、彼の望む、ソ連の復活に向けて進む道だった。
この「ロシア問題」に対する魔法の解決策はない。必要なことは、実際に、必要なステップを踏む政治的意志である。最近のベラルーシについても、ロシアの完全な影響下に置かれることを避けるのは、西側とウクライナが行動することだ。ためらっているときではない。
EUは、ベラルーシにおける市民の蜂起を、ヨーロッパの民主化過程として扱い、支援するべきだ。EUとNATOに加盟することも可能であると示すべきだ。西欧は、そのために、ロシアとの関係について幻想を捨てねばならない。それはプーチンが権威主義的に支配する、腐敗した国家である。外交的な見せかけではなく、圧力を強め、モスクワがウクライナで先導してきた軍事紛争の終結に向けた過程を再開することだ。
クリミア、ウクライナ東部、ジョージア、モルドバ。この地域における凍結した紛争を解決する新しい高いレベルの会合を、西側と諸政府は開くべきだ。われわれは西側からの投資と金融支援を必要としている。これはロシアのプロパガンダや軍事介入に対抗する、一種の介入である。
USとEUは、この地域と連帯感を共有してほしい。そして、ヨーロッパ統一の歴史過程を進め、権威主義体制の脅威、外国の介入からの解放、人間として、民族としての自由をもとめる使命を果たすべきだ。
FT August 31, 2020
EU needs a tougher response to Belarus
FP AUGUST 31, 2020
Lukashenko Unleashed Changes in Belarus That Are Out of His Control
BY TOMASZ GRZYWACZEWSKI
FP AUGUST 31, 2020
Time Is Running Out in Belarus
BY VLADISLAV DAVIDZON
PS Sep 1, 2020
Lukashenko the Impotent
SŁAWOMIR SIERAKOWSKI
NYT Sept. 1, 2020
What Belarusians Can Learn From Poland
By Bartosz T. Wielinski
ベラルーシの民主化運動は、まだ長い闘いの最初の1歩でしかない。反政府デモは、ルカシェンコの退場しか要求していないが、もっと幅広い民主化を要求するべきだ。運動を進める新しい政治指導者も必要だ。ロシアは、軍事介入も、特殊部隊による選挙も、考えるだろう。EUは国境を開放して、政治的迫害を救済し、若者たちの学習、自由なメディアの形成を助けるべきだ。
● ブレグジットの行方
The Guardian, Sun 30 Aug 2020
The Guardian view on a Brexit industrial strategy: theatre but no policy
Editorial
FT August 30, 2020
Arm’s destiny is vital for Britain’s future
John Thornhill
FT September 2, 2020
The route to a final post-Brexit trade deal
FT September 3, 2020
Scots should ask hard questions on independence
FT September 3, 2020
Only a level playing field will end Europe’s metals malaise
Mikael Staffas
● インドのタタ産業グループ
FT August 31, 2020
Tata: transforming a conglomerate for India and the world
Benjamin Parkin in New Delhi and Michael Pooler and Peter Campbell in London
● 連銀の新しい金融政策
FT August 31, 2020
ECB must follow the Fed’s embrace of a second mandate
Martin Sandbu
FT August 31, 2020
Only a shift in labour’s bargaining power can light up US inflation
Anantha Nageswaran
パウエルJay Powell連銀議長が、先週、示した新しい方針(Flexible Average Inflation Targeting, or FAIT)は、グローバルな準備通貨としてのUSドルが最期の局面に入ることを意味する。
それによれば、アメリカの公開市場委員会は、平均的なインフレ、を目標にする。金融政策は、雇用の最大レベル(明確な定義はない)から不足する程度を評価することに依拠して、決定される。中央銀行は、これによって、低金利を長期に維持するだろう。低インフレも高インフレも長期に容認するなら、価値の保蔵にUSドルを保有する者の信認は損なわれる。
元連銀議長のP. ボルカーは、1980年代のインフレを鎮静化するのに2度の不況を耐える必要があった。その後、グローバリゼーションと原油価格の下落があった。結局、資本と労働のバランスが、資本に有利に変化したのだ。グローバリゼーションは、仕事をアウトソーシングし(非正規)、工場を海外移転して、労働者の交渉力を弱めた。
それゆえ、インフレを抑えるのは独立した中央銀行のインフレ目標ではなく、労働者のパワーを奪うこと、賃金上昇が起きないことであった。日本、その他の国はインフレを高めようとしたが、できなかった。
金融政策という「薬」は効き目がなくなり、副作用だけが悪化した。2008年以後の金融緩和がまさにそうだ。しかし、パウエルは失敗した政策でさらに突き進む。ゾンビ企業が増え、株価上昇で国民の分極化は深刻になる。社会的にも、経済的にも、政治的な分極化が進む。連銀が金融バブルを促している。
インフレを高めるには労働者の賃金決定力を高めることだ。それがない限り、一層の貨幣供給は資産価格の上昇と不安定化をもたらす。しかし、そのバランスを変えれば、ドルの価値は減少し始め、USドルに最後の一撃を与えるだろう。
インフレの時代に戻るとは、資産インフレが終わり、1970年代に戻る、或いは、もっと悪い状態を意味する。社会不安、経済停滞、高インフレだ。新興市場は、別の新しい問題に直面する。自国通貨の増価を管理することだ。債務を削減し、国内生産と消費を増やす必要がある。
アメリカにとって、USドルに代わる通貨が存在しないことは良いニュースだ。しかし、ドルに反対するには金を買うしかない投資家にとって、それは悪いニュースだ。
PS Aug 31, 2020
The Fed’s Dangerous New Strategy
WILLEM H. BUITER
連銀の金融政策に関する新しい戦略は2つの点で間違っている。FOMCの元の戦略の方が明確である。物価水準が安定していても、完全雇用ではないとき、この戦略では金融政策が何をするのか、わからない。
もう1つの失敗は、金利が超低水準の、ゼロ近辺における金融政策として、他の手段を排除したことだ。連銀がこれを無視したことにより失敗したという議論を封じ込めた。
FT September 3, 2020
Fed’s inflation shift is another blow to ‘safe’ assets
John Plender
VOX 03 September 2020
Dual interest rates give central banks limitless fire power
Eric Lonergan, Megan Greene
● タイ王制への批判
FT August 31, 2020
Tongues loosen as protesters break taboos around the Thai king
John Reed
● 民主主義崩壊のとき
PS Aug 31, 2020
A Democratic Doomsday?
ANA PALACIO
民主主義崩壊までの時間を示す時計Democracy Doomsday Clockを示すべきだ。その時刻は迫っている。コロナウイルスはそれを加速した。
● アメリカのいない地域無秩序
PS Sep 1, 2020
Is Trump a Turning Point in World Politics?
JOSEPH S. NYE, JR.
FP SEPTEMBER 1, 2020
The Next Front in the India-China Conflict Could Be a Thai Canal
BY SALVATORE BABONES
FT September 3, 2020
Home truths in the eastern Mediterranean
Philip Stephens
フランスはギリシャ・キプロス海軍を支援するために軍艦と戦闘機を派遣した。エルドアン大統領はこれに警告した。トルコは東地中海で「資格を有することなら何でも」やるつもりだ、と。ドイツのメルケル首相は仲裁する努力を続けたが、トルコとギリシャの戦艦が衝突するかもしれない。西側の次の戦争がNATO加盟国の間で起きるとは、だれが考えただろうか。新しい国際的無秩序が始まった。
東地中海の事件が顕著に示すのは、パックス・アメリカーナの崩壊である。もちろん、グローバルな秩序をめぐっては米中が争っているが、同時に、世界の各地域が無秩序状態に戻った。アメリカという審判が退場して、昔の傷が開き、敵意がよみがえっている。
新しい不安定性は、現状を変更しようとするリビジョニストの大国、すなわち中国、ロシア、トルコであり、過去のような安全保障の関与からアメリカが退場し、ヨーロッパは地政学的な軍事紛争に加わることを嫌がっていることである。ギリシャとトルコの衝突は、長期的に縫い合わされた地域内の自制や達成された成果が、いかに急速に崩れるかを示した。
アテネとアンカラの対立は新しいものではない。キプロスもその旧い傷だ。海底に天然ガス田が見つかったことで、長期間続いている緊張状態が激化した。地域内の他の大国も加わった。イスラエルとエジプトは、すでに自国領の海底を開発している。レバノンやリビアも関心を持つ。
平和的に解決できないとき、以前は、アメリカを観た。ワシントンがアテネとアンカラを叱り、衝突が起きればエーゲ海に米艦を送った。しかし、そういう時代は終わったことで、エルドアンが強気になっている。アンカラはシリアとリビアでも反政府派を支援し、地域の覇権国家になるというエルドアンの夢を追求する。
エルドアンだけではない。新しいグローバルな無秩序からアメリカが退場すれば、ロシアがやってくる。アメリカの姿勢を変えたのは、トランプではない。シリアやリビアはアメリカの死活的な利益ではない、とオバマが示した。しかも、トランプの一貫性を欠く、無関心な態度と、エルドアンやプーチンなどの「強い指導者」を称賛する姿勢が、彼らを自由にした。
フランスのマクロン大統領は、アメリカが放棄した責任をEUが果たすべきだ、と述べた。エルドアンのような指導者と取引するとき、軍事力を避けることはできない、と。しかし、ヨーロッパ諸政府の見解は一致しない。フランスはギリシャを支援するが、イタリアとスペインは軍事対立の回避に熱心だ。メルケルは、トルコと対立して、報復にシリア難民をヨーロッパに送り出すことを心配する。
ヨーロッパが相違を乗り越えることは不可能ではない。EUはトルコに対して、必要なら海軍を送って軍事的にも対抗し、同時に、幅広い経済的包摂を示すことである。トルコのEU加盟は、ますます権威主義的な傾向を示すエルドアン政権に対して不可能だが、近隣諸国と貿易・投資関係を改善し、難民に関する長期的理解を深めることは可能だ。
その出発点は、EUが独自に思考し、行動することである。
NYT Sept. 3, 2020
The Terrible Cost of Presidential Racism
By Gary J. Bass
FP SEPTEMBER 3, 2020
A Biden-Harris Administration Would Mean a Harder Eye on Kashmir
BY ANIK JOSHI
● アメリカ大統領制の改革
NYT Sept. 1, 2020
How Do We Fix the American Presidency?
By Spencer Bokat-Lindell
● 西側による台湾支援
FT September 2, 2020
How western democracies can help Taiwan
西側諸国は協力して台湾の民主主義を守るべきだ。それは台湾の独立を支持することではない。北京が軍事力行使を示唆している。経済・軍事支援を行い、国際機関への参加を支持することだ。もし一致して指示すれば、中国による制裁は、中国自身を孤立させるだろう。
● レバノン
FT September 2, 2020
Emmanuel Macron lays down the gauntlet to Lebanon’s corrupt elite
David Gardner
FP SEPTEMBER 2, 2020
Lebanon Is Paralyzed by Fear of Another Civil War
BY ANCHAL VOHRA
● デジタル監視国家
FT September 2, 2020
Technology has abetted China’s surveillance state
Orville Schell
PS Sep 2, 2020
The False Promise of Digital ID
DIRK HELBING, PETER SEELE
デジタルIDを推進する者たちは、COVID-19のパンデミックを100年に1度の好機、80億人の巨大市場を開く「大当たり」とみている。
この危機の時代に、デジタルIDを使ってウイルスの感染拡大を抑え、最終的に、ワクチンの配分を管理することは適当なことであり、必要でもあるからだ。
しかし、知る限り、COVID-19は人類の生存を脅かすようなものではない。ところがその対策の多くは諸社会を大きく混乱させている。デジタルIDを実現する技術はすでにある。しかし、いったん、政府がデジタルIDを制度化すれば、それが民主主義や人権におよぼす影響は深刻だ。人間は対象物となって、その尊厳を根本的に侵されるだろう。
処理の手続きは不完全であり、RFIDチップやワクチンには健康を侵すリスクがある。その予測や分類は間違っているかもしれない。ビッグデータは万能薬ではないのだ。データとAIで管理する社会という考え方は、その限界を見失っており、倫理的な欠陥がある。われわれはもっと「価値を重視するデザイン」、「参加型の社会的回復力」という考え方に注目し、人びとが自分で改善し、互いに助け合うための手段を提供するべきだ。
危機におけるグローバルな回復力を高めるのは、デジタル技術によって強化された責任ある行動であり、権力を分散した、多様な、参加型アプローチである。オープン・データ型の製品を広め、マス・イノベーションと協力を強めるべきだ。
FT September 3, 2020
A tale of two Hong Kongs: Beijing cracks down while the financial hub thrives
James Kynge, Nicolle Liu and Hudson Lockett in Hong Kong
● 米中のナショナリズムを抑制する
NYT Sept. 2, 2020
America, Don’t Try to Out-China China
By Jessica Chen Weiss and Ali Wyne
米中関係を、互いのナショナリズムが過熱するような形ではなく、緊張緩和の余地を残す対応に変えることが望ましい。
中国政府の強硬姿勢を支えるナショナリズムは、国内ではコロナウイルス対策で支持されているが、国際的には厳しい批判にあっている。ウイグル人、香港、台湾、インドとの国境紛争、南シナ海である。国内にも、不満を示す者がいる。
アメリカが報復的な対抗策を取らなくても、中国の攻撃的姿勢は自滅的なのだ。しかし、政府は、アメリカが批判したから姿勢を軟化させる、ということを受け入れられない。むしろ、国内の軍事力を誇示する勢力に主導権を奪われる恐れがある。
また、オーストラリア、インド、日本、韓国なども、中国の攻撃的な姿勢を懸念しつつも、アメリカが中国の貿易や投資について制裁することまで同調したくない、と考えている。アメリカは中国の体制転換を示唆したり、習近平を支持する勢力を刺激するより、たとえば、香港からの移住者を多く受け入れるほうが良い。
中国自身がナショナリズムに頼る戦略の限界を知るまで、慎重に、放置するべきだ。
● 極右の陰謀論
FP SEPTEMBER 2, 2020
Germany Is Losing the Fight Against QAnon
BY TYSON BARKER
FT September 4, 2020
A Fox News-style channel will be a hard sell in the UK
Jemima Kelly
● ケニアの選挙
FP SEPTEMBER 2, 2020
Kenya’s 2022 Elections Have Already Begun
BY CAREY BARAKA
● イギリス左派の訃報
The Guardian, Thu 3 Sep 2020
The left is not dead. Britain is still crying out for a radical alternative
Aditya Chakrabortty
訃報を読むのは楽しい。そうだろう? この場合、亡くなったのはイギリスの左派だ。
コービンの時代は終わった。それは驚くほど何も残さなかった。しかし、反システム運動は続くだろう。その1つに過ぎなかった。
コービンが党首になったとき唱えたように、「この国は機能していない。それに代わるものがあるか?」
The Guardian, Thu 3 Sep 2020
What now for Britain's economy – a new direction, or business as usual?
Larry Elliott
● ジョンソンのトリレンマ
The Guardian, Tue 1 Sep 2020
The Guardian view on Boris Johnson’s trilemma: deficits, taxes or inflation?
Editorial
この40年にわたり、イギリスは生産性が伸びず、不平等が増大し、環境の危機的状態と金融危機を繰り返し経験した。コロナウイルス危機はこれらを救済し、新しく創り出した。このシステムの改革を、権力を握る者たちは進んで行わない。改革を考えず、パフォーマンスだけを気にする。
それゆえスナック蔵相Rishi Sunakがラディカルな、再分配型予算を考慮している、という示唆は有益な批判である。富裕層、大企業、年金生活者、自動車の所有者に増税する。もしスナックがこれを実行するなら、2019年の労働党選挙公約を盗んでやり遂げることになる。蔵相は、国家の役割を小さくするブレグジット推進派の評価を無視して、パンデミックに苦しむ企業や多くの職場を救う赤字予算を組んだ。
それはジョンソンが、すべての者のために、経済再建と社会のバランスを変える行動を始めたからだ。しかし、保守党の姿勢は違う。保守党議員たちはサッチャーの信念:小さな国家、低い課税、を信奉しており、そのような転換を受け入れにくい。
保守党が昨年12月の選挙に勝利したのは、ミッドランドとイングランド北部の、貧しい元労働党支持者たちから票を得たからだ。その後、パンデミックが政治の優先獣医を劇的に変え、政府債務のGDP比は100%を超えた。1961年以来、最高水準だ。ジョンソンは支持基盤を維持するために、旧労働党支持基盤が望む、イギリス経済の「レベルアップ」(地域格差の解消)、首相が約束したインフラ投資と、NHSなどの公共サービスに支出しなければならない。
これを保守党の本能、小さな国家、低い課税、とどうバランスさせるのか。大蔵省は、支出の増加は歳入の増加を要する、と考える。上位1%の富裕層にだけ増税することは支持されるだろうが、それでは財政赤字が変わらない。
財政赤字は危機の時に限らない。コロナウイルスがイギリスの生産能力を低下させた後より、以前は制約が少なかった。ジョンソンは、インフレによる赤字の解消により、批判を抑え、支出を増やせる。しかし、物価の上昇は企業や労働者に名目所得の上昇をめざす激しい闘いをもたらす。資本主義システムの対立を強め、合意なきブレグジットへの不安は資本流出とポンドの下落、グローバルな通貨戦争を刺激する。
ジョンソンは闘いの窮地に自らを追いやった。財政赤字、増税、インフレーション。この政権のトリレンマから逃れることはできない。
FT September 3, 2020
Raising UK taxes now would only hamper recovery
Chris Giles
● コロナウイルス対策
PS Sep 3, 2020
How (Not) to Fight COVID-19
PETER SINGER, JOANNA MASEL
PS Sep 3, 2020
The Uncertainty Pandemic
KENNETH ROGOFF
経済危機に対する財政支援を続けても、パンデミックの将来の不確実性を抑えなければ、この際も長期において、世界経済は回復しない。
FP SEPTEMBER 3, 2020
Trump’s Vaccine Can’t Be Trusted
BY LAURIE GARRETT
大統領選挙を前にして、政府が発信するいかなる情報を信用してはならない。11月1日までにコロナウイルスの有効な、信頼できるワクチンが供給されることはないだろう。
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The Economist August 15th 2020
Xi’s new economy
American politics: What Kamala says about Joe
Britain’s economy: Grey v Growth
China’s hybrid capitalism: Blooming for glory of the state
Economic policy: A grey and stagnant land
Free exchange: Conscious uncoupling
(コメント) 習近平の政治権力は、国家資本主義の体制を呑み込んだ形で進化している。金融危機も、トランプ政権による貿易戦争やデカップリング、新しい冷戦も、中国はそれによって抑え込まれるのではなく、ますます独自の経済システムを、資本主義システムの中に創り出そうとしている。世界市場の舞台にした、中国、アメリカ、EUなど、国家・技術・インフラを介した産業政策競争だ。
イギリス保守党・ジョンソン政権に関する分析が興味深い。ブレグジットを支持したのは地方の保守層・老人たちだ。彼らはグローバリゼーションや成長のための改革・混乱や痛みを嫌う。移民を嫌う。老人たちは、教育や高速鉄道に投資するより、年金や医療サービスの充実に支出するよう求める。それは、ジョンソンを含めて、サッチャーの過激な自由主義的改革を支持する保守党の成長プログラムを制約する。
ブレグジット×トランプの時代は、右派の過激主義、保守的な老人、国家を嫌うリバタリアン、重荷に苦悩する中央銀行など、奇妙な政治基盤を維持する成長戦略を求める。もはや、仮想の敵や21世紀型戦争しかないのか。
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IPEの想像力 9/7/20
朝の「NHK/BS1国際情報」を観て、ため息をつきました。
ベラルーシの大統領は「対話を拒否する」とロシアのテレビ局のインタビューで答えました。治安維持の秘密警察や軍隊が残っている限り、選挙の結果など重要ではない、とまでは言いませんが、そう思っているのでしょう。
息をのむのは、ベラルーシの地図です。東はロシアと長い国境を接しています。容易に介入できる位置です。南はウクライナ。北はリトアニアなどバルト3国です。EU/NATOに加盟しています。西がポーランド、さらにその西にドイツがあります。リトアニアとポーランドの間にはロシア領の飛び地、そしてウクライナの南は黒海があり、その向こうがトルコです。
ロシアは黒海の海軍の拠点、クリミアを一方的に併合し、ウクライナの民主革命を嫌って、東部に隠蔽された形の軍事侵攻と「分離独立派」として占領を続けています。
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同じニュースで、アメリカの「自警団」が紹介されていました。
警察ではなく、白人のコミュニティは自分たちで護る、と主張する者たちが集まって、重火器で武装し、訓練に参加します。黒人の殺害や人種差別に反対するBLM(黒人の命は大切だ)などの抗議デモを、白人コミュニティに対する攻撃とみなしているのです。
互いに武装して憎悪を煽れば、殺し合いは時間の問題です。公的な秩序は、紛争から武器を奪い、暴力を抑え、話し合いの場や法廷を用意するはずです。しかし、トランプはホワイトハウスから右翼の暴力に拍手し、過激な主張を広めます。銃社会であり、人種対立や文化対立の政治的利用を競って、民主主義を富裕層やSNSが戦争状態に同一視したことが、深刻な影響を社会におよぼしています。
トランプ大統領は、ワクチン開発でコロナウイルス対策が劇的に進む、と予告します。パンデミックを選挙戦の条件に利用することを考えます。郵送による投票が、時間のかかる作業になり、最終結果が何日も出ない。郵便作業の妨害。敗北した場合に、本当に自分の票を数えたか、支持者が再集計を求める。裁判を起こす。
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パンデミックのもたらす国家債務の累積が、グローバルな資本移動を許したまま安定した形で維持・管理できるものか。グローバル・サプライ・チェーンへの圧力を回避できるものなのか。
ポスト・バブルから、ポスト・パンデミックの世界へ。金融の超緩和だけでなく、財政赤字の上限も無視してよい。それは、日本のアベノミクスや欧米の「日本化」が、中国の国家資本主義や、さらには、ソ連崩壊後のロシアのイメージに似てくるな、と思いました。
金融・財政政策について、同じことなら、インフレ抑制ではなく、完全雇用や労働者の生活水準改善を、直接、政策の目標にする、というのは、こうした異常な時代にふさわしい考え方かもしれません。金利(資産市場)ではなく賃金(労働市場)、インフレ抑制ではなく労働者の交渉力回復が、グローバル化した市場型経済が完全雇用を維持するのに必要な条件だ、と中国もアメリカも主張し始める。
それは、国家介入主義の、富裕層に支持されたポピュリスト権力か、「グレート・リセット」を唱える、都市下層や地方生活者の声を集める新民主国家か。
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選挙制度も、政党も、民主主義を実現する効果的な仕組みではなくなっている、と思います。
石破氏の「グレート・リセット」は、安倍・菅批判とともに、その個性と剛腕を誇示する、一種の傑作だな、と思いました。
菅氏が東北の朴訥な人柄、安倍首相に対する忠誠心を売り物に、自民党長期支配への神話的な信頼感を広める姿勢で、さまざまな不安と保守的な心情を吸収し、高い支持率を得ています。しかし私は、橋下徹が菅氏を絶賛していたテレビ映像を思い出します。自分と同じ、政治の冷徹な戦略思考を称えたのです。
安倍が日本国民に広めた<権力像>を引き継げるのは、菅ではなく、橋下徹や小池百合子だな、と思いました。自ら争点や目標を掲げ、強大な権力を駆使して、巧みな弁舌で政治闘争に勝利することを最優先するポピュリストです。
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新生・立憲民主党が、枝野幸男を代表に、政権を取る態勢を示しました。国会論戦、積極的な政策提案、わかりやすい言葉で、国民一人一人の仕事や生活を救い、支援して、豊かさを実感できる仕組みに、政治経済の在り方を変えて行く。
日本の権力は、必ず交代する。そして抜本的な発想の転換を、土地の人びとの声を吸収して、民主的な選挙によって社会を変える。次の時代を、枝野政権が8年間続くとき何を観るだろうか、と想像することで私は楽しみます。
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