IPEの果樹園2020

今週のReview

8/3-8/8

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グローバリゼーションの逆転 ・・・アメリカの全体主義 ・・・欧州復興基金と債券発行 ・・・GAFA解体とSME ・・・米中冷戦思考 ・・・中央銀行への批判 ・・・牧場の未来 ・・・株式市場の予想 ・・・ウガンダの民主主義

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 グローバリゼーションの逆転

FP JULY 24, 2020

How to Deglobalize

BY GEOFFREY GERTZ

グローバル・サプライ・チェーンの脆弱性に反対し、重要な財の生産を自国内に呼び戻すことを政治家たちは主張している。

アメリカのトランプ政権は、中国からサプライ・チェーンを切断する作業を加速し、250億ドルの「呼び戻し基金」を準備している。ジョー・バイデンの選挙公約では、この問題を、通商、税制、移民とともに、グローバリゼーションの管理として扱う。EUは、「戦略的な自律性」を促すためにサプライ・チェーンを多様化する、と言う。日本は最も進んでおり、日本企業が中国から引き揚げる新しい支援金を発表した。韓国も同様だ。

しかし、多くのアナリストは懐疑的である。現代のグローバル・サプライ・チェーンは非常に複雑である。それを解体する試みは困難で、コストのかかるものになる。世界中の企業は、中国から彼らを引き離す政府の努力に、冷めた対応をしている。

しかし、グローバル・サプライ・チェーンも政策変化の結果である。現在のグローバリゼーションは唯一の姿ではなく、異なる世界も可能である。

グローバリゼーションの深化がもたらすリスクと脆弱性は懸念するべき本当に重要な問題だ。それは効率性を高め、消費者の選択肢を増やすだけでなく、必要な時に、国家が重要な財の流れを管理、規制、あるいは方向づける能力を制約するからだ。政府はサプライ・チェーンの混乱がもたらす脅威を真剣にとらえるべきだ。それは自然災害、経済危機、あるいは、相互依存を政治・軍事的な利用されることから生じる。また、個別の企業利益が必ずしも広義の国益に一致しないことも重要だ。

しかし、政治的な要請だけでサプライ・チェーンが変わることはない。再編成には、慎重な、戦略的な視点が重要だ。政府は行動する前に、宿題を済ませておくべきだ。すなわち、

1.情報を改善する。サプライ・チェーンをマッピングする。それは、安全保障や系zぁ伊的繁栄を議論するために必要だ。

2.潜在的な脆弱性を明確に知る。外国の、特に、中国からの供給に頼ることは危険だ、と言うが、現実はもっと複雑である。サプライ・チェーンを外国も含めて多様化する方が、すべての国内に集中するよりも回復力が高い。一般に、危機が起きたときしか、どこに脆弱性があるかはわからない。

3.さまざまな政策手段を評価しておく。

4.国際協力を強める。世界市場に対する政府の管理や介入は、必ず、他国にも影響する。情報を共有し、マイナスの波及効果を抑えるべきだ。

サプライ・チェーンの問題では、行政能力を改善し、安全保障と経済問題とを統合するべきだ。しかし、あきらめてはいけない。グローバル・サプライ・チェーンをよりよく管理するために、政府は長期的に投資しなければならない。それは緩やかで困難な過程である。

多くの政府は、軽いタッチの、ネオリベラルなアプローチで、数十年間、グローバリゼーションに参加してきた。グローバル・サプライ・チェーンについて産業政策や市場規制が必要なとき、それは放棄するしかない。政府には、次の危機に備えて、もっと頑健で回復力の高いサプライ・チェーンを築く責任がある。


 アメリカの全体主義

NYT July 24, 2020

American Catastrophe Through German Eyes

By Roger Cohen

ドイツ人以上に、トランプ大統領の下でアメリカが全体主義へ傾くのを恐れる国民はいないだろう。戦後のドイツにとって、アメリカは救世主で保護者、リベラルな民主主義のモデルであった。今、「アメリカの崩壊」を語るドイツ人は、衝撃を受けている。

ドイツ人は炎に突別な意味を感じる。1933年、ドイツの帝国議会が炎上したことで、壊れかけたワイマール共和国の民主主義をヒトラーとナチスが掌握し、権力を獲得した。殺戮に向かうヒトラーの悪夢が現実と化した。戦争、アウシュビッツ、ドイツの壊滅が続く。

私は多くの思想豊かなドイツ人外交官を知っている。自由、民主主義、開放性を望む彼らの情熱は、それらが容易に失われるものだ、ということを知っていることから生じている。

「アメリカの崩壊は日に日に悪化しているが、特に、ポートランドの事件は、ファシズムに向けた戦略的な実験を行ったものとして、警戒させるものだ。」とMichael Steinbergは語った。「そこには政治戦略としての人種差別主義がある。純粋な母国という人種差別主義の妄念。そして、都市は退廃の巣窟として憎悪される。」

戦時において、ジュネーブ条約は、たとえ非正規軍でも、「遠くからでも明確に識別できる標識を身に付ける」よう求めている。これは民間人を守ると同時に、合意を逸脱した場合の責任を明確にするうえで重要である。準武装した部隊が識別できる標識を付けていない場合、透明性や責任が失われ、それゆえ、罪を問わないことになる。民主主義が死ぬときだ。11月の選挙結果がトランプの好むものでない場合、トランプは自分で「国家の非常事態」を決めるだろう。

ドイツ人がトランプを恐れる要素はいろいろある。20世紀の教訓を、あたかもなかったように感じさせる、ナショナリズム、人種差別、暴力を駆使して恐怖を広めるショーマン。ヨーロッパに平和をもたらし、ドイツ人が再び顔を上げることができた、多国間の協調を破壊する者。ファシストになりつつある権力者。

ドイツ首相、アンゲラ・メルケルは、ウイルスに立ち向かった。それは想像の上での戦争、殲滅すべき見えない敵ではなかった。彼女にとってウイルスに勝つとは、民主主義のパワーを学ぶことである。「われわれは何かを強制されて繁栄するのではない。知識を分かち合い、積極的に参加することで繁栄する。」 それはわれわれ1人ひとりにかかっている。

メルケルは、アメリカ人を含む、すべての民主主義に活きる市民に向けて語っている。トランプはメルケルに立ち向かえない。この女性は科学者として訓練された、自由が最も崇高な価値である、という生涯の教訓に従う人物であるから。

The Guardian, Sun 26 Jul 2020

Trump has helped the US to see its dark side. It will still be there when he goes

Nesrine Malik

12人の大統領が奴隷を所有した。George Washington, Thomas Jefferson, James Madison and Andrew Jacksonもそうだ。

トランプを支持した者たちの条件は、彼の支持率を、性的暴力、白人至上主義の支持者と同じ水準を保っている。たとえトランプが再選されないとしても、この状況は短期的に変わらない。彼はナショナル・アイデンティティーを問う存在である。彼が示したように、白人至上主義は常に権力の陰に潜んでいる。いつでも刺激に応じるのを待っている。彼の支持者たちは、ロシア人が介入して示したように、愛国心よりも外国人・移民排斥の感覚が強い。

トランプは、1つのピークを示したのであり、異常さではない。トランプのことをあまりにも簡単に片づけてはならないだろう。彼が解き放った暗黒は、短い呼びかけで戻ってくる。

The Guardian, Sun 26 Jul 2020

Forget Putin, it's meddling by America's evangelical enforcer that should scare us

Simon Tisdall

ポンペオ国務長官は、昨年、Texas A&M Universityで、自分の政治キャリアにおいて、ふさわしいときには嘘をついた、と陽気に告白した。彼は2010年、極右のティー・パーティ―運動のメンバーとして当選し、CIAを経て国務省の長官になった。「私はCIA長官だった。われわれは嘘をつき、だまし、盗んだ。全体の訓練コースを受けたようなものだ。」

アメリカは世界に向けた2つの顔を持つ。1つは、良質の、開放的な、高い志の顔である。もう1つ別の顔は、暗い、自己中心的な計算に支配された、究極的に、野蛮な力を頼る顔である。トランプに最も影響力のある、その後継者であると思われるポンペオは、疑いなく、後者の牙をむいた顔、操作し、介入する、凶悪な顔である。

今ほど混乱していない、分極化していない時代なら、アメリカとの「特別な関係」はイギリスに有益であろう。多くの点から見て、今は逆である。USの戦術上の圧力で、イギリスの国家安全保障に有害な最新の例は、ポンペオが先週、中国の「新しい独裁者」と戦う「自由な諸国民」の統一戦線に加わるようヒステリックに求めたことだ。北京と製造業の冷戦に進むことは、権力を握るトランプと共和党の利益になるが、イギリスの利益にはならない。

同様に、トランプ政権は国際刑事裁判所を破壊しようとしている。それは亡くなった労働党のロビン・クック外相が、イギリスの創設した制度として誇りにしたものだ。

ポンペオと仲間たちは、トランプが2015年のイラン核合意を離脱してから、イギリスとヨーロッパ同盟諸国がイランと関係を維持することを全力で妨げた。

クレメント・アトリー政府は、1945年以後、アメリカとの友好関係が高いコストを意味することに即座に気付いた。スエズ危機における屈辱で、それは確認された。今も、「テロとの戦い」、イラク侵攻を経て、イギリスは国家安全保障、人権問題、国際法の面で、コストを支払い続けている。

ポンペオの福音主義的な「終末」観は、中東和平における長期のイギリスの目標である2国家案を、破棄する努力につながっている。彼はかつてイスラエル国民に、トランプはユダヤ人をペルシャ人から守るために神が遣わした人である、と語った。「神が手を貸してくれていると私は信じる。」

先週、UK訪問する前に、ポンペオはボリス・ジョンソンがフアウェーを排除したことを称賛した。重要州のアイオワでは、「100%のプロ・ライフ(妊娠中絶反対)外交」を約束した。この権利は、政府ではなく、神が与えたものと考える、と。

その主張に賛成するアメリカ人もいるが、神を称えるのではないイギリス人は、民主的な権利を勝ち取ったものと考えている。そしてここに、悪辣で、野心的な、危険人物がいる。トランプよりもずっと頭が切れる男が、異星のような、疎外された社会に、偏見、恐怖、分裂をばらまいている。

PS Jul 27, 2020

Mask Wars

HUGO DROCHON

FT July 28, 2020

It is too soon to write off Donald Trump’s election chances

Dan Senor

FP JULY 28, 2020

To Avoid a Coronavirus Depression, the U.S. Can’t Afford to Alienate the World

BY CHRISTOPHER SMART

FT July 30, 2020

A coronavirus vaccine could split America

Edward Luce

トランプがワクチン開発に言及することは、恐怖より希望を与えるものだが、むしろ、科学に対するアメリカ人の不信感を強めることが心配だ。

伝染病は不信の上に蔓延する。現在のアメリカ以上に、その影響を示す優れた実験室はないだろう。公衆衛生学と反ワクチン運動とが戦うとき、科学は激しく打ちのめされる。

NYT July 30, 2020

The Nightmare on Pennsylvania Avenue

By Paul Krugman

 


 欧州復興基金と債券発行

The Guardian, Fri 24 Jul 2020

The Guardian view on the EU budget: hitting the wrong notes in Hamilton

Editorial

EUは貿易と気候変動において重要だ。しかし、政治的には小さな存在だ。ブレグジットの陰謀論者は「ヨーロッパ合衆国」を論じたが、それは連邦政府ではない。官僚制でしかない。クラブの力は加盟国が握っている。それぞれが国益と主権を激しく擁護し、負担を分かち持つことや集団的意志から後退する。

EU予算は1993-1999年にクラブのGNI1.2%であったが、2021年に始まる次の6年間は1%でしかない。これではコロナウイルスによる破滅的な不況に対処できない。ヨーロッパ委員会は初めてEU支出を市場から一時的に借り入れることを許された。

これを「ハミルトンの瞬間」とみなすのは間違いだ。ハミルトンの国債は直接税によって返済が保証された。しかし、EU税制は期待できない。それには加盟諸国の全会一致が必要だ。ECBが復興債券を購入し、永久に保有すればよいが、それは禁じられている。

EU諸国は他の予算を削らねばならないだろう。そのような緊急支援に頼ることは、永久に緊縮財政を繰り返す罠にはまるかもしれない。

FT July 26, 2020

The best way for the EU to spend its €750bn fund

Reza Moghadam

EUサミットは7500億ユーロの加盟国支援枠を用意した。基本的問題がある。どのような支出が、長期的な回復に最もふさわしいか?

ロックダウンが終わり、職場の保護や低利融資に焦点が向いているとき、それに応えることは難しい。EUコミュニケは、少なくとも30%がグリーンとデジタルの投資に向けられる、と言う。その残りは何に使うのか?

最も厳しい打撃を受けた部門を助けるのか? もし需要が弱いことを重視するなら、減税や政府支出を増やすのか? パンデミックは部門によって異なった影響をもたらす。接触するサービス産業は、旅行、輸送・移動、レストランなど、大きく落ち込んでいる。信頼できるワクチンが普及するまで、数年間、活動は制約されるだろう。マクロ経済的にも、社会的、政治的な望ましさでも、EUはグリーン投資を望んでいる。

資源を懸命に使い、EUの財政的な連帯を高めることが、最も必要だ。

PS Jul 29, 2020

Europe Bails Out Its Populists

SŁAWOMIR SIERAKOWSKI

The Guardian, Thu 30 Jul 2020

Can Germany now hold the European team together?

Timothy Garton Ash

ある日、私は夢を見た。2030年の海辺に座って、ドイツやヨーロッパをどのように救ったか、振り返っていた。

ドイツ首相は、2020年のCOV-19危機からヨーロッパが復興するパッケージを交渉し、共通のヨーロッパ債務から、最も厳しい被害を受けた南欧経済を支援する巨額の援助と融資を決めた。ドイツは、ブレグジット後の英国と建設的な関係を保ち、リベラルな民主主義を守るハンガリーとポーランドの市民を助け、共通エネルギー政策を介してプーチンと対峙し、FacebookEUとして規制し、中国に対する共通戦略をまとめた。また、ドイツはヨーロッパのグリーン・ニューディールを指導して、世界に模範を示した。

ドイツは他のヨーロッパ諸国の間で「同等な国の第1位」として働いた。アメリカや他の民主主義諸国とも協力した。2030年代の初めにドイツとヨーロッパが達成したことは、1930年代と全く対照的であった。

私の夢は、1.8兆ユーロの7年間におよぶEU予算と、メルケル首相がマクロン大統領や他のEU諸機関の指導者たちとまとめた復興合意によって始まった。その突破口となったのはドイツの転換だった。ヘーゲルが歴史の狡知とよんだものが働いて、アジアが生んだ未知のウイルスと、ドイツ憲法裁判所の判決が、この長期に影響を及ぼすドイツの決断につながった。懐疑的なドイツ国民にも、ウイルスに苦しむ南欧市民に何の罪もないことは明白だった。また憲法裁判所はECBに打撃となったが、それは何でも金融政策に頼ったままでいることはできない、と示した。ヨーロッパの財政政策が対応しなければならなかった。

しかし、私は冷たいにわか雨で夢から覚めた。ドイツとヨーロッパの前途には2つの困難がある。150年前の、最初のドイツ統一以来、この国の「決定的な規模」の問題があった。アメリカの国務長官であったヘンリー・キッシンジャーは、「ヨーロッパにとっては大きすぎるが、世界にとっては小さすぎる」と述べた。ドイツはヨーロッパの単なる1つの国ではないが、ヨーロッパの覇権国家でもない。ましてや世界の覇権も担えない。

ドイツの賢明な戦略は、国際的なパートナーを得て目標を実現することだろう。20世紀の初めにヴィルヘルムのドイツが直面したように、21世紀のドイツにとって、気候変動と中国の台頭が課題である。ジョー・バイデンのアメリカと建設的に協力することなしには対応できない。オーストラリア、日本、インドとも戦略的な関与を深めるだろう。ヨーロッパの問題でもそうだ。

もう1つの困難な点は、ドイツの世論がどう変化するかだ。親ヨーロッパの国際主義が社会的な合意であるように見える。しかし、大ドイツの復活を願うものや、大きなスイスとなって孤立する主張もある。排外的なAfDが議会選挙で支持を伸ばした。ドナルド・トランプを嫌って、アメリカよりも中国を重視するドイツ人が増えている。

ドイツの外交政策を一部の専門家に委ねる時代ではなくなった。より広範な教育と民主的討論の中で決めるべきだ。ドイツはヨーロッパにおける「決定的な規模」、歴史的責任において、その国際的役割をドイツ国民が理解し、支持する必要があるが、歴史的にみて異常に困難な、バランスの上に立つ外交でなければならない。

ドイツはミッドフィールダーである。安定した、技の巧みなミッドフィールダーがいるチームは、得点にからまないとしても、まとまることができる。そのようなドイツはチームのヒーローである。

FP JULY 30, 2020

Europe’s Faustian Union

BY R. DANIEL KELEMEN

EUの指導者たちは、パンデミックの対応において、歴史的な1歩を進めた。

しかし、合意には暗い部分がある。基金の利用には「法の支配」を条件にする計画が、あいまいに、薄められた言葉で書かれている。そのメッセージは、EU内の専制国家、専制君主になりたい者たちに向けた「宥和」である。EUは何十億ユーロもの補助金を彼らに渡し続ける。まだ当分の間は彼らと対決しない。EUは権威主義体制のハイブリッド国家に快適なホームを提供する。

メルケルとマクロンは、EU内の南北分断を回避すると決意していた。そのための合意が急がれたが、全会一致を必要とする。当然、オルバンと、ますます権威主義的な傾向を強めるポーランド政府は、基金の成立に拒否権を持った。

パンデミックの救済パッケージを、新しいファウスト的契約とみなすのは公平ではないだろう。なぜならEUは、その民主的な精神をはるか以前に放棄していたのだから。EUは、問題が起きると「制度を創る」。多くの手段がありながら、政治的理由でそれを使用できない。


 富裕税

The Guardian, Sun 26 Jul 2020

The Guardian view on a wealth tax: necessary but not sufficient

Editorial

FT July 27, 2020

The parallel universe of private equity returns


 GAFA解体とSME

FT July 27, 2020

Antitrust is changing from the ground up

Rana Foroohar

ハイテク大企業が議会の公聴会に集まった。Amazon, Apple, Facebook and GoogleCEOが下院の反トラスト小委員会だ。1990年代にマイクロソフトの独占に関する議論が行われて以来、最も重要な会である。彼らはハイテクだけでなく、金融や製薬に関しても規制強化を考えている。

反トラスト規制の強化に成功すれば、それはワシントンだけでなく、州・地方政府の勝利でもある。食品の安全性、停電、ブロードバンド普及率の低さ、など、この数年間、彼らは過度の集中による地方の問題を抱えてきた。コロナウイルス危機がそれを深刻化している。

全国レベルでは、民主党が企業の都市集中を選挙の争点にしてきた。40年におよぶネオリベラル思考を逆転しつつある。それは高所得や職場の安定ではなく、消費者に安価な商品を与えることで経済の成功を考える姿勢だ。

たとえば、ノース・ダコタは、コミュニティー・バンクと信用組合を金融部門の中心に据える、という決定を下した。COV-19の支援金もこうした金融機関が主に扱っている。企業は支払い能力が改善し、危機の中でも雇用を維持している。

議会が次の支援パッケージを議論している今、中小企業や州・地方政府への支援金増額が問われている。レストラン、サービス、個人ケアのような、生産性の劣った部門で、無数の零細企業にシュンペーター的な「創造的破壊」が必要だ、という声もある。これにより労働者たちがデジタル経済に向けて再訓練・再配置される、と言う。しかし、ハイテク大企業はますます雇用しなくなってきた。

SMEが重要な役割を果たす地域は、不平等にならず、家計所得がより早く伸びている。零細企業はローカルな、あるいは地域の経済関係が形成するウェブに埋め込まれる傾向がある。こうした主張は、まさにハイテク大企業がシリコンバレーとスタートアップを擁護して主張してきたことだ。

大企業との戦いは厳しい。小さな町や市の闘いが全国規模の影響を生み出すこともある。1920年代は、それが小規模の八百屋、家族農場に対するウォール街の支配であった。F.D. ルーズベルトの関心を反トラスト法に向けた。

今はエリザベス・ウォーレン上院議員たちだ。FDRは前の独占企業を解体した。今は彼女たちが独占を解体する。

FT July 28, 2020

Big Tech goes to Washington

NYT July 28, 2020

Four of the World’s Wealthiest Men Are Preparing for Battle

By The Editorial Board

NYT July 29, 2020

We Have a Question for Jeff Bezos and Other Billionaires

By Tim Bray and Christy Hoffman

Tim Bray is a former vice president at Amazon. Christy Hoffman is the general secretary of UNI Global Union.

51日、TimAmazonの重役をやめて、倉庫で働く労働者たちの条件改善を求めて解雇された者たちの側に立ち、会社に抗議した。

パンデミックの期間にハイテク大企業the Big Techは株価と収入を急増させた。他方で、Amazonの倉庫労働者たちはコロナウイルスに感染することを恐れていた。より安全な職場を求める活動家たちを、Amazonが解雇したのは許しがたいことだ。

われわれ2人は合意に至った。Amazonも、他のハイテク大企業も変化しなければならない。労働者たちが組合を組織する権利も認めるべきだ。

コロナウイルスは、世界で50万人以上を殺害し、大恐慌のとき以来、最高の失業水準をもたらしている。犠牲を分かち合うよう求められるが、その負担はあまりにも不均等だ。Amazonの株主価値は、3月撒か場から、5000億ドルも増大し、14000億ドルになった。株式市場は富裕層に偏って所有されており、特にベゾスの所有が大きい。ベゾスは地球上の富裕層の先頭に立っている。

この富は、それを創り出した労働者と分かち合うべきものだ。

FT July 31, 2020

Digital ‘gatekeepers’ face a moment of reckoning

The editorial board


 ウイグルのジェノサイド

The Guardian, Mon 27 Jul 2020

The Uighurs' suffering deserves targeted solutions, not anti-Chinese posturing

James Millward

FT July 27, 2020

Genocide or not, the Uighurs need urgent international support

Philippe Sands

75年前、ポーランド人の著名な法律家Raphael Lemkinがこの言葉「ジェノサイド」を創った。ギリシャ語とラテン語を合わせたものだ。その犯罪行為を止める法律や裁判が行われたが、非常に極端なケースにとどまった。

ウイグルで行われている、強制的な避妊手術や、信仰・文化の抹殺は、緩やかな定義によるジェノサイドに含めるべきだろう。


 世界のウイルス感染拡大

FT July 27, 2020

Modi stumbles: India’s deepening coronavirus crisis

Amy Kazmin in New Delhi

FT July 27, 2020

Africa needs more help with its pandemic response

PS Jul 27, 2020

Emerging Economies Should Build Back Greener

LUIS ALBERTO MORENO, HENRY M. PAULSON, JR.

FT July 29, 2020

Singapore’s divisions are deepening

Audrey Jiajia Li


 COVID-19とデジタル通貨

PS Jul 27, 2020

Will COVID-19 Kill Cash?

HOWARD DAVIES

パンデミック対策として、現金よりむしろデジタル給付したことで、人びとはデジタル貨幣に移行するだろうか。


 米中冷戦思考

NYT July 27, 2020

China’s Claims to the South China Sea Are Unlawful. Now What?

By The Editorial Board

マイク・ポンペオ国務長官が、中国の南シナ海における海洋資源に関する要求を「完全な違法状態」と断定した。

問題は、それに続けて一貫したトランプ政権の政策が示されないことだ。単なる選挙のための脅しではなく、関係する地域の諸国に合意形成を図って、外交、投資、安全保障に関する明確な約束を示すべきだ。

FP JULY 28, 2020

Oh God, Not the Peloponnesian War Again

BY JAMES PALMER

FT July 29, 2020

The contrasting world views of Donald Trump and Mike Pompeo

Janan Ganesh

FT July 29, 2020

Wary US watches for signs of Chinese-Iranian alliance

David Gardner

PS Jul 29, 2020

China Plays the Iran Card

VALI NASR, ARIANE TABATABAI

PS Jul 29, 2020

The Economic Costs of National Security

ANDREW SHENG, XIAO GENG

FP JULY 29, 2020

Trump’s Flip-Flops on China Are a Danger to National Security

BY PHILIP H. GORDON, JAMES STEINBERG

FP JULY 29, 2020

Britain Is Botching This Cold War Just Like the Last One

BY CALDER WALTON

FT July 30, 2020

A cold war does not answer China’s challenge

Philip Stephens

もちろん、アメリカは同盟諸国とともに、中国の攻撃的な姿勢に反対して、人権を擁護する戦線を形成するべきだ。

しかし、トランプとポンペオは、モスクワからケナンが送った電報の最も重要な部分を無視している。ソ連の前進を抑えるのと同様に重要なことは、われわれの社会の健全さと活気を維持することである、とケナンは主張したのだ。

最大の危険は、ソビエト共産主義に対処するために、われわれ自身が彼らと同じような社会になることだ。


 植民地主義

NYT July 27, 2020

Colonialism Made the Modern World. Let’s Remake It.

By Adom Getachew


 リベラルの没落

NYT July 27, 2020

Twilight of the Liberal Right

By Michelle Goldberg

なぜ彼女の友人たちは、かつて民主主義と古典的なリベラリズムを広める保守派のチャンピオンであったが、精神分裂病的な極右のポピュリストに変わったのか? それを理解するためにAnne Applebaumは本を書いた。

NYT July 30, 2020

The Future of American Liberalism

By David Brooks


 ブレグジット

The Guardian, Tue 28 Jul 2020

I'm optimistic about a Brexit deal – despite the gloomy outlook

Charles Grant


 感染拡大と生きる

FT July 28, 2020

Living with infection spikes is the new normal


 中央銀行への批判

FT July 28, 2020

Rage against central banks is misdirected

Robin Harding

住宅価格の急騰、ゾンビ企業、不平等の拡大、株価の膨張、貯蓄することは困難であり、資本主義それ自体が破壊される。そうした中央銀行の金融緩和策に対する非難を免れるとしたら、それは、他に選択肢がないことだ。

1世紀以上も、経済学は「自然利子率」という概念を重視してきた。それは貯蓄と投資を均衡させる利子率、物価の安定性と両立する利子率のことだ。

自然利子率より金利を高く維持した実験的ケースを探すとしたら、それは1990年代と2000年の最初の10年間に、日本が行ったことだ。20年間の経済停滞、低雇用、資産価格の下落、インフレ率は平均で0.2%しかなかった。

真の問題は自然利子率が下落したことだ。


 債務の優遇税制

FT July 28, 2020

Should we end tax deductibility on business interest payments?

Amy O’Brien and FT Readers


 牧場の未来

PS Jul 28, 2020

Pandemic Policy Must be Climate Policy

RENZO GUINTO

PS Jul 29, 2020

Keeping Poverty Reduction Front and Center

JUAN MANUEL SANTOS, SABINA ALKIRE

FT July 30, 2020

A farming revolution is what we need in this crisis

Donna Kilpatrick

私は自分の牧場が10年間で変わる様子を夢に見た。

肥沃な黒い土、チョコレートケーキのように豊かで、ミミズと菌類がいっぱい含まれている。鳥のさえずりにあふれ、ウズラがいたるところに巣をつくり、放し飼いされた家禽たちは多様な飼料を豊富に食べ、澄みきった清流が多く流れている。これこそが私にとっての農場というものだ。

COV-19が食糧と農場のグローバル・システムに内在する問題に光を当てた。アメリカでパンデミックが始まると、レストランの食糧ストック、学校やオフィスの閉鎖、サプライ・チェーンの混乱が、工業化された農場や食肉加工場に衝撃を受けた。非人道的、言語道断の労働条件が農場や作業場に広がり、小規模農家は破産状態に近い。

このパンデミックにより、われわれはどこで、どのように食糧を得るのか、再考することになった。グローバルな農場革命を実現するべきだ。生態系におけるすべてが改革されるだろう。労働者には生活賃金を支払い、彼らの健康を守り、動物たちは動く余地を与えられ、健康な食べ物で育つ。われわれの最も貴重な商品である、汚物・排泄物を処理する。土壌の侵食はすでに進んでいる。

土壌再生に向けた農業が必要だ。それは工業化された、破壊的な、何千エーカーも単一作物を植えるモノカルチャーをやめることだ。作物の多様化は、農民たちを危機から守る。健全な農業の生態系を育成する。小規模農家にとって、これは大きな挑戦であり、お金が儲かるやり方だ。高価な農業機械や加工、包装、配達に投資するべきではない。協同組合モデルが成功への道である。

われわれの顧客が、危機における最大の同盟者である。人びとが地域の農家を助けることに関心がないなら、変化は起きない。協同組合から買い、ファーマーズ・マーケットで買い、農家が家庭に届けるサービスを利用することだ。こうして小規模農家を助けるなら、われわれは新しい食糧システムを手に入れる。食の安全性を確保し、貧困、気候変動、公衆衛生の問題を解決する。あなたの食事と買い物は、すべてに結びついている。

FP JULY 30, 2020

As Pandemic Rages, the United States Slashes an Economic Lifeline

BY AUDREY WILSON


 株式市場の予想

FT July 29, 2020

US Treasuries: the lessons from March’s market meltdown

Colby Smith in New York and Robin Wigglesworth in Oslo

FT July 29, 2020

ETFs are the canary in the bond coal mine

Gillian Tett

FT July 29, 2020

Antique Chinese bonds are now in play

Izabella Kaminska

FT July 29, 2020

This surge in Chinese stocks is not like the last one

Diana Choyleva

中国の株式市場はブームが来ても暴落に終わることを繰り返した。それは個人投資家たちのカジノだと言われてきた。

しかし、最近の株価上昇には新しい要素があるようだ。第1に、そのレベルはまだ低い。第2に、習近平主席は住宅価格の上昇を終わらせるという決意を明確にした。20年間、上昇した住宅価格を抑えて、所得分配が不平等化したことを解決するのは、「中国的性格の社会主義」を示すものだ。

3に、中国は金融市場を近代化し、国際競争に負けないものをめざしている。その変化は、同時に、人びとが住宅への投機ではなく、より専門的な貯蓄機関を通じた株式投資によって資産を築く時代を、予想させるものだ。

PS Jul 29, 2020

Revisiting the White Swans of 2020

NOURIEL ROUBINI

巨額の財政投資とワクチン開発でCOV-19危機は急速に回復する、という前提で、株式市場の高騰に騒ぐなら、投資家たちは考えておくべきだ。多くのホワイト・スワンがやってくる。

アメリカと4つの歴史を見直す諸国との対立は激しくなる。中国、ロシア、イラン、北朝鮮だ。

トランプ政権は、財務省証券を売却されるリスクを恐れて、中国、ロシア、その他の敵対的な諸国が保有する資産を凍結するかもしれない。そして、それらの国は、金など、もっと安全な資産に転換するだろう。財政赤字の膨張とインフレを懸念して金を買う動きが強まった。アメリカはドルを武器として利用し、諸国はドル建資産から離れて、多様化を進めている。

環境の危機も懸念される。東アフリカの砂漠化とバッタの大群は、高温だけでなく、穀物への甚大な被害を生じている。何千万人もの難民がアメリカやヨーロッパ、その他の温暖な土地に向かうだろう。南極やグリーンランドの巨大な氷山が崩壊すれば、海面の上昇が破滅的な影響を及ぼす。

ますます野生の領域に踏み込む人類は、動物の病気と接触している。シベリアの凍土が溶解すれば、そこに閉じ込められていた致死的なウイルスが現れて、急速に感染を拡大するかもしれない。


 ウガンダの民主主義

NYT July 29, 2020

My Torture at the Hands of America’s Favorite African Strongman

By Bobi Wine (a musician and a member of the Parliament in Uganda

警察による暴力はグローバルな危機である。しかしアメリカは、1986年以来、ウガンダの大統領であるYoweri Museveniを支援してきた。彼の治安部隊は議会の野党議員を攻撃し、大統領に反対する民主主義的な行為を粉砕しようとした。

これは私の経験からも言えることだ。私はウガンダ議会の代表であり、ミュージシャン、活動家、そして、ピープル・パワー運動の創設者である。この3年間、人口の8割を占める、貧困に苦しむ若者たちのために、社会、経済、政治の変革を求めてきた。

419日、私の仲間、29歳の議会代表であるFrancis Zaakeが、逮捕されて拷問を受けた。それは、331日に、予告なしに政府が導入した、コロナウイルスの厳格なロックダウンに起因する。多くの市民は働けなくなったのだ。議員たちが選挙区の住民に食料を配ろうとすると、ムセベニ大統領は逮捕すると脅した。しかし、実際、与党の議員たちは配ったのだ。そのメッセージは明白だ。体制を支持するか、飢えていろ、と。

選挙で議員となった者や支持者たちを攻撃するのは、民主主義という考え方に対する攻撃に等しい。ウガンダはムセベニ独裁の下で34年間を過ごした。最高裁判所は、過去に2回、ムセベニの当選を翻そうとした。2016年の大統領選挙では、対立候補が自宅軟禁状態に置かれて、裁判所に不正選挙を告発できなかった。

ピープル・パワー運動の支持が拡大すると、ムセベニの弾圧はその頻度と野蛮さを増した。2018813日、私は仲間と北部の町Arunにいた。野党候補の選挙戦を支援していたのだ。突然、ウガンダの特別警察部隊がわれわれのホテルを襲撃した。私のドライバーが撃たれて死亡したが、彼は私の身代わりになったのだ。立候補し、選挙に勝利したKassiano Wadriを含む、34人が逮捕された。われわれは1週間以上も拘束され、拷問を受けた。解放されたとき、助けなしには歩けなかった。

20179月、野党議員たちはフィリバスターで、1995年憲法が定めた大統領の年齢制限、75歳を撤廃する法案を阻止しようとした。ムセベニ大統領は2021年に75歳になる。919日、法案が提出されたとき、ムセベニは議会周辺に装甲車タオ武装警察官を配置した。われわれのフィリバスターは1週間続いたが、27日に議会に現れた多数の職員たちによって排除された。私を含む約30人の議員が逮捕された。201712月に年齢制限は撤廃された。

私は貧困の中で育ち、幸運にもミュージシャンとして成功した。私はすぐに、汚職、貧困、弾圧について歌うようになった。音楽は人々に勇気を与えるが、彼らが本当に力を得るのは政治を通じてだけである。だから私は議会に立候補した。

先週、私と仲間たちは、2021年はじめに予定されている大統領選挙に向けて、国民統一プラットフォームを立ち上げた。われわれは民主的な統治を求める。治安部隊や司法、その他の機関を政治から切り離すこと。地域に平和をもたらし、汚職の蔓延を終わらせること。それはウガンダ経済の繁栄につながる条件だ。

アメリカ政府がムセベニの逸脱を容認する姿勢を取らなければ、われわれはこれほど長く苦しまなかっただろう、と私が残念に思う。ムセベニは、ソマリアやイラクの治安部隊と並んで、ペンタゴンが親密な関係を維持する、アフリカの安全保障における同盟相手である。

国際社会はわれわれを拷問する者への支援をやめて、民主主義のために立つべきだ。


 中国の核の均衡

NYT July 29, 2020

China’s Arms Buildup Threatens the Nuclear Balance

By James Anderson


 UK零細企業

FT July 30, 2020

‘Calm before the storm’: UK small businesses fear for their future

Daniel Thomas in London


 イエメン和平

PS Jul 30, 2020

Peace at Last for Yemen?

THOMAS R. PICKERING, MALCOLM RIFKIND, NORBERT RÖTTGEN, YANG GUANG, ANDREY KORTUNOV


 ヨーロッパと独裁

PS Jul 30, 2020

The Caudillo of the Kremlin

ANDREI KOLESNIKOV

PS Jul 30, 2020

No Europe Without the Rule of Law

HAROLD JAMES

ヨーロッパの呪文とは、危機は統一をもたらす、であった。

アメリカを観ても、巨大な連邦制の内部で、法の支配が実現することは容易でなかった。奴隷制の廃止がそうだ。EUも、統一した基準がなければ、1つになることはない。


 大西洋同盟

FP JULY 30, 2020

Trans-Atlantic Ties Should Put Finance, Not Security, First

BY EDOARDO SARAVALLE, BEN JUDAH

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The Economist July 18th 2020

Oil and the Arab world: There will be pain

The Arab world: Twilight of the petrostates

(コメント) 他の記事は、ざっと見た感じでは、ポイントがわからない。

冒頭の特集記事は、世界貿易が中国に対する不信によって解体しつつある問題です。知的財産の窃盗やスパイ活動について、産業補助金について、そして、民主化運動の弾圧について、貿易をめぐる不信が固まっています。

学校の再開。ポーランドの大統領選挙。アメリカの銀行。

アラブ世界の革新圧力は、個々の国家を超えて、石油の富とイスラム教による権力の根本を失わせると思います。そして、問題は次の体制がどうなるか、です。アラブ世界の再編が、イスラエルやイラン、トルコの影響によって、それらの地域国家の革新も含めて加速するのか、崩壊と新しい独裁や小国の分裂や内戦に向かうのか。

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IPEの想像力 8/3/20

さまざまな難問が、市場による経済活動の革新と柔軟性を、市民社会の充実とともに求めていると思います。それは、たとえば、年齢や資格を問わない、住む場所や身体条件にも制約されない、自由大学・教育投資社会の誕生です。

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新著を紹介して、コロナウイルスが大学をオンライン化して解体する、『未来の国』を描きました。修正して再録します。

1)ネット講義は容易にコピーされ、アクセスの制限もできない。その結果、きわめて優秀なネット講義だけが、安価な定額制(たとえば、月1000円)で残ります。多くの視点による評価制が、競争激化とともに、少数の講義にアクセスが集中する。大学間でスター講師の争奪が始まり、サッカー・リーグのように、報酬の巨大な差が生まれる。

2)かなり高度なものまで標準化され、AIによる解説と質疑・テスト処理が進む(つまり補助員だけで、教員は不要)。学生たちは効果的に知識や資格を得る。他方、10名程度のクラス授業では、AI処理に優位がないような、多様で特異な研究・評論、具体的な時代や事例の叙述・分析が学際的・総合的・双方向に行われる。研究や教育が好きな教員たちは、公務員と同じように、安定した地位と少ない報酬で熱心に働く。

3)「ネット大学」では、一定期間のアクセスを購入し、多くの単位や資格を取ることが可能になる。学生たちは、遠隔講義、AI解説・評価、クラス授業を選択できる。その場合、どのキャンパスに帰属するか、学生が自由に選択する。クラス授業だけが人や土地に縛られるので、季節・セメスターごとに学生の地域間流動化が起きる。あるいは、教員たちもさまざまなグループで各地のキャンパスに依拠し、離合集散して研究に励み、キャンパスの特徴を形成する。

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大学の解体を促すオンライン化の圧力は、たとえば、並行した政治力学に動かされるでしょう。

学生たちは、特に、両親がコロナウイルス危機で店を閉じ、職を失う中で、授業料の返還請求に立ち上がります。彼・彼女たちは、初年度授業料の全額返還、次年度以降の授業料を8割削減するよう要求します。ネット大学による単位取得と感染者のいない地方キャンパスへの移動、すなわち、学生寮と学食、強力な自治会のある大学は評価が急上昇します。

持続化給付金が終われば、それを受けて、コロナウイルスによって売り上げが落ち込み、苦悩する個人経営者、解雇された労働者・専門職、その家族に対して、ベーシック・インカムと学寮・学食がセットになった公教育支援プログラムが登場します。

大学の変化に応じて、教職員は、雇用の安定性、給与基準、配属やキャリア形成をめぐる交渉に取り組むため、労働組合に参加し、改革を強化する。それだけでなく、キャンパス文化の創造をかけて、コロナウイルス感染予防と地域経済の活性化、コミュニティーとの連携を進めます。

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地方の特色ある都市と経済圏が発達し、新興企業群が爆発的に増えて、東京中心の産業・政治体制を葬るでしょう。日本やアジア、世界につながる市場の公正さを守るルールを求めて、各地の指導的地域国家が集まります。そして、奴隷解放宣言(1863)、穀物法撤廃(1846)、関税同盟(1834)をネット社会の民主的統治として再生するのです。

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