IPEの果樹園2020

今週のReview

7/6-11

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アメリカの危機 ・・・コロナウイルス危機 ・・・コロナ対策 ・・・米中新冷戦 ・・・プーチンの憲法改正 ・・・アメリカ経済の回復 ・・・ポピュリストの無能さ ・・・香港国家安全法 ・・・バイデンの100日計画 ・・・世界の株価上昇

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 アメリカの危機

NYT June 25, 2020

America Didn’t Give Up on Covid-19. Republicans Did.

By Paul Krugman

NYT June 25, 2020

America Is Facing 5 Epic Crises All at Once

By David Brooks

アメリカには5つの巨大な変化が起きつつある。第1に、COVID-19との闘い。アメリカは敗北しつつある。第2に、特に白人のアメリカ人がアフリカ系アメリカ人の苦しみを学ぶ。第3に、ドナルド・トランプの共和党を拒む、政治の再編成。第4に、文化機関をめぐる一種の宗教戦争。第5に、深刻な経済不況が長期化しつつある。

すべてが同時に襲って来る、途方もない危機である。道徳、精神、情調における破局が生じた。アメリカは、行動においても、主張においても、暴力を支持する理論を探す。今回は、社会変革論だ。

そのもっとも声高な主張は、社会正義運動が示すものだ。エリート大学から現れ、文化構造を変革するなら、社会を変革できる、という。

この理論の問題は、現実の変化をもたらさないことだ。「疾風怒濤」は政治過程を困難にして、多数派を取れない。社会正義運動は、解決策ではなく、われわれの問題の兆候である。

問題を解決するには政権を執るべきだ。法律を作り、予算を組み、複雑な妥協を行う。それは退屈かもしれない。私はジョー・バイデンを知っている。彼が民主党の大統領候補であることを、私は神に感謝する。彼は、あなたの情念を奮い立てないかもしれないが、連携し、立法化を進めた。彼の精神は、同情と友愛だ。

ニューディールの持つプラグマティックな精神は、批判的な記号論より、これからの数年を指導する精神にふさわしい。

NYT June 26, 2020

Beyond ‘White Fragility’

By Jamelle Bouie

FT June 27, 2020

What reopenings tell us about national culture

FT July 1, 2020

US is stuck in the worst of all worlds

Janan Ganesh

2020年は、平和時におけるアメリカで最悪の年になりつつある。今も、世界最強の国家であるのは間違いないが。

まず、COVID-19の死者数が世界最大で、全体の死者数の約4分の1を占めている。EUや他の同盟諸国も、アメリカからの入国を認めていない。失業者数は史上最高水準である。ジョージ・フロイド殺害が支援した差別と殺人率の高さは、アメリカを他の裕福な諸国と大きく隔てている。

1930年代の大不況はもっと厳しかったが、パンデミックは起きておらず、国民を指導するフランクリン・ルーズベルトがいた。

アメリカは実現可能な世界でも最悪の世界に生きている。対外的パワーも、内部の結束も、顕著に衰えている。世界はその姿を厳しく観察している。

PS Jul 1, 2020

Late Soviet America

HAROLD JAMES

元国家安全保障担当大統領補佐官ジョン・ボルトンが本を出版した。しかし、その内容はそれほど危険ではない。この大統領があまりにも無能で、衝撃的なほど無知であることを、暴露したからだ。しかし、それは世界中が知っていたことだろう。アメリカには戦略がなく、一貫した指導体制もない。

実際、多くの点で、アメリカの破滅と不幸は、ソ連最後の数年間に起きた、社会・政治対立の激化を思い出させる。ソ連の場合、エスニック的な対立と民族の競合する野心が急激に表面化し、暴力、離脱、解体に至った。アメリカでも、人種差別、警察の暴力、不平等に対する抗議デモに、トランプが示した反応は、国家の分断を強めた。ソビエトの帝国崩壊につれてレーニンの銅像が倒されたように、アメリカでは南軍の指導者たちの銅像が至るところで引き倒された。

経済にも類似した点がある。ソ連では膨大な、複雑な計画化・資源配置の管理が、社会の最も優れた教育ある人々を集めて、非生産的で、しばしば破壊的な仕事を行わせた。アメリカにはウォール街がある。もちろん、アメリカの巨大な金融サービス部門はゴスプラン(ソ連国家計画委員会)ではないが、しばしば価値を創り出すより略奪する。

ソ連が崩壊する、その瞬間まで、ほとんどだれもその崩壊を予測していなかった。エコノミストは予測が下手だ。しかし、1960年代後半、エコノミストのロバート・マンデルが3つの予測を行った。ソ連は崩壊するだろう。ヨーロッパが単一通貨を採用するだろう。USドルは支配的な国際通貨の地位を維持するだろう。そのあと固定為替レート制(金本位制)が崩壊し、ドルの価値は大きく減少していくのだが、この大胆な予測も含めて、マンデルは3つすべてで正しかった。

しかし、ドルの長期の覇権を支えていた条件は変化しつつある。COVID-19のパンデミックは、グローバリゼーションのデジタル化を進めるだろう。他方、国境を越える人や材の移動は急減している。さらに、トランプ政権は政治的目的でドルを武器にした。北朝鮮、イラン、ロシア、中国企業が制裁を受け、ドルに代わるシステムを開発しようとしている。

非国家主体によるデジタル通貨の発行が広まれば、特に、国家の弱い、信用されていない地域で使用されるだろう。決済革命は、アフリカや旧ソ連圏で急速に起きるかもしれない。ドルに代わる安全な国際取引できる資産ができると、ドル保有の魅力は失われる。むしろ、トランプ政権の下で、アメリカはシステムが機能せず、その基本的能力や国家の実行力が疑われている。

ここでCOVID-19の危機が起きた。感染者数や死者数が示すように、アメリカは多くの国に比べて無能である。トランプ大統領のアメリカは国際的な恥であり、USドルは旧ソビエトのルーブルに見え始めた。改革が手遅れになるかもしれない。

NYT July 1, 2020

The World Builds a Wall to Keep America Out

By Farhad Manjoo

ドナルド・トランプは世界に対して壁を築くと選挙で主張し、ホワイトハウスに入った。「なぜ便所のような国から来た人びとをわれわれは我慢して住ませているのか」と、トランプは言った。「ノルウェーみたいな国から、もっと人を入れよう。」

しかし、ノルウェーや他の欧州の国が旅行者の入国を許すのは、トランプが便所とよんだ大陸の国を3つ含む。アルジェリア、モロッコ、ルワンダだ。カナダ、そして、中国も加わる。

だが、トランプのアメリカはだめだ。アメリカの「偉大さ」どころか、パンデミック対策から観たアメリカの能力は底辺に近い。

私は南アフリカからの移民である。多くのアメリカ人と同様、アメリカ例外主義を信じている。アメリカ建国の理想は、われわれが特別に道義的に高い地位を占め、グローバル危機において特別な信用と知恵を示すことができる、という発想だ。

そうであるためにも、アメリカは移民に開放されているべきだろう。シリコンバレーがそうだ。トランプは、先週、技術者や季節労働者、学生など、外国人へのビザ発給を止めた。

それは医師にも影響する。アメリカの外科医の約4分の1127000人は移民である。移民の医師たちは、アメリカ人を診察して、感染による死を恐れるだけでなく、その家族が国外追放されるのを恐れなければならない。

これは狂っている。アメリカには、世界でベストの、最も賢い者たちが入国したいと待っている、という偏見でしかない。

例えば、ルワンダはどうか。ヨーロッパの入国許可リストに載っている。1994年、ジェノサイドに苦しんでいたが、アメリカや国連は介入しなかった。およそ100万人が殺害された。26年を経て、復興したルワンダはアフリカで最高水準の医療システム、全国民への医療サービスを実現している。コロナウイルスによる死者は2人だ。

アメリカは機能不全で、世界での指導力を失っている。

FT July 2, 2020

How America could fail its democracy test

Edward Luce

ドナルド・トランプは大差で選挙人の多数を得た。しかし、アメリカは怒りに震えた。世界中の都市がアメリカの民主主義を監視する火をともした。民主党支持の小さな諸州が、カリフォルニアの「カレキジットCalexit」に従い、アメリカ合衆国を離脱すると脅した。アメリカの多数派を支持するよう企業経営者たちに求めて、労働組合がストライキを計画する。

公平に見て、バイデンがトランプより得票数で600万票多かった。52%47%である。投票率は低かった。なぜならコロナウイルスの蔓延があった上に、不在者投票を妨害したからだ。しかし、規則に従って、トランプが再選された。アメリカの裁判所はこの結果に反対するだろうか?

アメリカの判事、知事、企業経営者たちが、そのような結果を恐れて眠れないだろう。この20年間で2度も、得票数では敗北した者が大統領になった。

ジミー・カーターや、ジョージ・HWブッシュが、公平なゲームに従い、敗北を認めることと、トランプが敗者になったときとは、まったく別だ。

現在の政治の有毒化は、南北戦争に先立つ1860年の大統領選挙に近い。バイデンが僅差で勝利した場合、または、代表人の結果が不明確であった場合、トランプは投票箱を封鎖して、バー司法長官、共和党議員が、民主党知事の示す開票結果と異なる結果を示すだろう。

いくつもシナリオがある。バイデンが大差で勝利できないとき、アメリカの民主主義は強烈なストレス・テストを受ける。

PS Jul 2, 2020

Florida as a Developing Country

MICHAEL SPENCE, CHEN LONG

NYT July 2, 2020

The Neoliberal Looting of America

By Mehrsa Baradaran

過去50年間で、1つのイデオロギーの権力掌握が社会を変えた。その起源は、冷戦期のヨーロッパで、オーストリア学派のF.A. ハイエクが指導した、社会的正義を追求する政府への攻撃だった。

ネオリベラリズムは1960年代からアメリカの政治に影響を広げ、1980年代には政策を支配するようになった。減税、規制緩和、民営化。保守的な反共産主義の思想が、急速に、大学、法曹界、立法府、裁判所にまでおよんだ。

市場のマジックがすべてのものを黄金に変える、と主張した。ただし、裕福な投資家にとって、だが。それは、プライベート・エクイティ産業の育つ理想の土地だった。高収益債券(ジャンク・ボンド)を発行し、アメリカの複合大企業を買収して、かつてない規模で、少数者のために富を奪った。それはこの10年で、倒産により、1300万人の職を破壊した。

2008年の金融危機でも、その神話は完全に払しょくされなかった。われわれはこの重大な欠陥を修理することができる。最大の資産家に課税し、巨大化した銀行を解体し、略奪的な行動を取るプライベート・エクイティ企業に市場のルールを当てはめることだ。

銀行、医療、インターネット・アクセス、輸送、住宅には公共部門が関与するべきだ。われわれは競争的な市場と繁栄する経済を、人間の尊厳、家族の幸福、健全なコミュニティーの観点から、実現できる。もしそこに対立があるときは、コミュニティーの繁栄を選択するべきだ。


 UKの人種差別

FT June 26, 2020

Waking up to the realities of racism in the UK

Gary Younge

FT June 28, 2020

Lex in depth: Examining the slave trade — ‘Britain has a debt to repay’

Jonathan Guthrie in London


 コロナウイルス危機

FT June 26, 2020

We must build back greener after Covid-19

Camilla Cavendish

PS Jun 26, 2020

The Triple Crisis Shaking the World

JOSCHKA FISCHER

NYT June 27, 2020

Waking Up in 2030

By Ross Douthat

PS Jun 30, 2020

The Road to COVID-19 Enlightenment

RICARDO HAUSMANN

データを集めてベスト・プラクティスを採用することは間違いだ。COVID-19の対策はまだ初期段階であり、われわれが知らない理由で異なった結果が現れている。ロックダウンも、ソーシャル・ディスタンスも、それぞれが異なっている。

FT July 1, 2020

Tourism: can Europe save its summer?

Daniel Dombey in Madrid, Alice Hancock and Tanya Powley in London, and Kerin Hope in Athens

FT July 1, 2020

Reset? What a load of rubbish

Jo Ellison

FP JULY 1, 2020

Seeing Race In a Pandemic

BY ADRIENNE BROWN

FT July 2, 2020

The politicians who played the Covid19 crisis badly

Simon Kuper

アメリカ、イギリス、ブラジルは最初にCOVID-19が襲った国ではない。彼らには準備する時間があった。

アメリカは他の発展した諸国と同じくらい公衆衛生に支出している。さらに、医療に対する民間支出は歴史上のすべての社会を超えるものだ。しかし、アメリカ、ブラジルの感染者数は増え続けており、ヨーロッパや中国では減っている。Florida, Texas, Arizonaの知事たちは、トランプと同じように、経済を優先して、ウイルス対策にも経済回復にも失敗した。

これらの土地を支配したのは、メディアの印象を気にするが、資格のある専門家の意見を聞かない、右派のナショナリストたちだ。インド、ロシア、ベラルーシもひどい。社会民主主義の伝統があるスウェーデンは例外だが。

その始まりは、関心を集めることに経済が向かったことだ。ソーシャル・メディアとノンストップ・ニュースの時代に、関心を最も多く集める政治家とは、記憶に残る、普通ではない、自ら「本物である」という者たちだ。こうした「ほら吹き」の政治家は、真実かどうかに関心がない点で、嘘つきと区別される。

彼らが指導者になると、選挙後、すぐに退屈と慢心を経験する。過去の指導者たちは、権力を握って5年経ったときだけそうなった。イラク侵攻を決めたブレアや、ブレグジット投票を決めたキャメロンがそうだ。政治家の職務は統治することと考えられた。しかし、新しい男たちはコミュニケーターであり、彼らのゲームは選挙である。統治は退屈な終章でしかない。

成功は自信過剰をもたらす。破滅を予言する者たちを勝利によって黙らせた。統治することはむつかしい、だって? 先任者たちは愚か者だった。専門家のブリーフィングなど避けて、パンデミック対策班も解散し、休日ごとに勝利を叫ぶ。ナショナリズムと、例外主義を信奉しているから、そんなことはここでは起きない、と断言する。

統治することのむつかしさを何も知らないから自信がある。それは、心理学者が、無能なものは無能であることを理解しない、という効果の一例である。ボルソナーロ、トランプ、ジョンソンは、免疫があると信じて大衆と握手し、人びともそれにならった。ジョンソンは感染し、発症した。

いよいよウイルスが広がっても、繰り返し専門家が警告し、うんざりする説明を、長期のロックダウンに求めたことを嫌って、もっとましな処方箋を待った。その結果、ロックダウンに致命的な遅れが生じたのだ。

彼らは選挙で勝利し、多くの有権者たちが何でも信じることを示した。トランプとジョンソンは、人間が利己的に考えた合理的行動を取らない、という行動経済学を政治的に利用した。分断された政治空間では、支持者たちが立場を変えるより、指導者の無能さを容認する。たとえ、自分の祖父母が無能さによって広められたウイルスで死んだとしても。

閣僚たちは何でも支持するイエスマンだ。彼らは忠誠心で選ばれる。多様性など吹き飛んだ。トランプとボルソナーロは裕福な白人に囲まれ(親族が理想的だ)、ジョンソンの仲間は、男性、私立学校とオックスフォードの出身者だ。

もしかしたら、コロナウイルスが、無知で「糞まみれ」のナショナリストが正解で繁栄するのを終わらせるだろう。しかし、かつて示したように、彼らは現実を打ち破る。

PS Jul 2, 2020

A More Humane Post-Pandemic Social Contract

KOICHI HAMADA


 コロナ対策

FT June 26, 2020

Hail the dawn of a V-shaped recovery

Merryn Somerset Webb

PS Jun 26, 2020

A Stronger Recovery Through Better Accounting

WILLEM H. BUITER, IAN BALL, DAG DETTER

若年労働者たちは、一時的に、両親と暮らし始めた。アパートは貸し出して。仕事を失った場合、こうした家賃収入が必要な、歓迎すべき収入だ。ギグ・エコノミーのおかげで、景気悪化の犠牲者たちは企業のように行動する。持っている資産を活用して、所得を最大化するために、バランスシートを見直すのだ。

政府も、支出と歳入を観るだけでなく、資産と負債も見るべきだ。企業がリストラするのと同じく、政府も、過度の緊縮や、それがもたらす社会的苦痛を避けて、力強い回復への道をたどるべきである。政府投資を現時点の支出として観るのではなく、インフラへの長期投資で、公共の資産を増やすレバレッジとみなす。

そのようなモデルは1989年のニュージーランド財政法に観ることができる。強靭な財政基盤とネット資産に注意して、ニュージーランドは、30年前に深刻な金融危機を経験して以来、何度もマイナスのショックを受けたが、容易に乗り切った。

現在の危機では、政府が民間部門に債務保証を拡大している。そこには明らかに、債務保証が終わるとき、銀行や企業が倒産するリスクがある。政府も資産価値の損失リスクに対応したモデルを採用するべきだ。

AirbnbUberが個人に保有資産の有効な利用を可能にしているように、政府も財政の優れたアプローチを採用して、必要な歳入だけでなく、現在は無視している債務保証のリスクを考慮することができる。景気下降局面でにわかに資産を処分するより、もっと良い解決策があるはずだ。

政府資産の効率的な管理は、経済成長と、財政のキャッシュフロー管理、純コストの抑制に役立つことになる。

FT June 28, 2020

Corporate rescues need a strategic purpose

FT June 29, 2020

Raiding the pot: Pandemic deepens pensions crisis

Josephine Cumbo in London, Robin Wigglesworth in Oslo and Billy Nauman in New York

FT June 29, 2020

It is too soon to declare the pandemic has put paid to purpose

Andrew Hill

PS Jun 29, 2020

Learning from the Lockdown

IQBAL DHALIWAL, SAMANTHA FRIEDLANDER

PS Jun 29, 2020

How Inequality Fuels COVID-19 Deaths

JEFFREY D. SACHS

アメリカ、ブラジル、メキシコ。この3か国が世界のCOVID-19による死蔵者数の半分近く(46%)を占める。世界人口の8.6%でしかない。

各国の死亡者数を決めるのは多くの要素である。しかし、この3カ国には共通の構造的要素がある。それは、所得・資産の不平等な分配状態だ。世界銀行によれば、3か国のジニ係数は、アメリカ41.4, ブラジル53.5, メキシコ45.9である。アメリカは先進経済で最も不平等な国であり、ブラジル、メキシコは、世界で最も不平等な国に入る。北欧、東欧では、Finland (27.3), Norway (28.5), Denmark (28.5), Austria (30.3), Poland (30.5), and Hungary (30.5)である。

所得の不平等は多くの意味で社会を荒廃させる。社会の結束は低く、信頼は低く、政治は分裂し、それらが政府に強力な規制手段の採用をむつかしくし、政府の能力を損なう。清掃や集金、警備など、感染リスクの高い職に就く低所得者が多い。彼らは密集した住宅環境で暮らす。

ポピュリスト指導者は不平等を拡大した。怨嗟の政治は感染予防の政治と対照的だ。彼らは専門家を排除し、科学的証拠を無視し、労働者とエリートを対立させた。

パンデミック自体が貧富の格差を拡大する。

PS Jun 29, 2020

The Pandemic Response, Act II

JEAN PISANI-FERRY

12年前の金融危機では、銀行が国有化され、金融緩和が行われた。巨額の財政支援とグローバルな協力が行われた。

しかし、大きな失敗があったことも次第に明らかになった。金融崩壊についての責任を問わなかったことだ。それは近年のポピュリストに対する支持の高まりをもたらした。COVID-19の危機でも、同じ失敗を繰り返すのか?

公衆衛生、ロックダウンと経済コストの公的支援、アメリカにおける感染者の爆発、経済回復に向けた政策、経済コストと不況、需要刺激策だけでは不足、企業倒産の波、大規模な債務組み換えの必要、政府による支援。生産性の不足にも対策が必要だろう。

今、その第2幕が始まった。

The Guardian, Tue 30 Jun 2020

The latest figures are a wake-up call: the global Covid-19 crisis isn't close to over

Adam Tooze

PS Jun 30, 2020

The COVID Class War

YANIS VAROUFAKIS

ユーロ危機と同様、パンデミックによる経済危機も階級間戦争である。ヨーロッパの社会経済モデルは、ブレトンウッズ体制崩壊後の金融エンジニアリングにより、民間資本移動が利益を上げるシステムに変わった。そのサイクルを管理するのは、事実上、世界の中央銀行となったアメリカ連銀だ。バブルで利益を上げる金融資本は、危機を繰り返すが、回復のコストを負担するのは赤字国の緊縮策と労働者である。

共通債務はユーロ圏の家計や企業を救済するが、復興基金の分配は国家間の競争になる。

PS Jun 30, 2020

Waze for Viruses

SIMON JOHNSON

VOX 30 June 2020

Eight priorities to strengthen international cooperation against Covid-19

Aida Caldera, Shashwat Koirala

NYT June 30, 2020

World War C

By Paul Krugman

FT July 1, 2020

The great interruption continues

Martin Wolf

PS Jul 1, 2020

Priorities for the COVID-19 Economy

JOSEPH E. STIGLITZ

まるで古代のように感じるが、世界の経済がCOVID-19のパンデミックに対してロックダウンしたのは、それほど前のことではない。多くの人が急速なV字回復を期待したが、それは幻想だった。

パンデミック後の回復は、弱い、貧血症の回復になるだろう。IMFの予測では、2021年末までに、USや欧州経済は4%ほど縮小する。

2つの面でこれは理解できる。1つは、支出が減る。というのも家計や企業のバランスシートが悪化し、倒産が増え、非常に慎重な行動が求められるからだ。同時に、ウイルスは、人と接触する産業に課税するようなものである。消費と生産のパターンが変化する。それは広範な構造変化を意味する。

市場は、このような変化の実行に適していない。航空会社の社員は、ZOOMのエンジニアになれない。拡大する部門は労働を必要とせず、高度なスキルを求める。

構造変化は、伝統的なケインズ的問題を生む。所得効果と代替効果だ。非接触型の部門が拡大するとき、その所得と支出は増えるが、縮小する部門における所得・支出の減少におよばない。パンデミックの場合、これに不平等の問題が加わる。投資は、人ではなく、ウイルスに感染しない機械に対して行われる。貧困層の買う商品は労働集約的で、個々に機械化が進む。こうして2重に不平等が強められる。

悲観論を強める、さらに2つの理由がある。まず、金融政策は効果がない。支払い不能の企業に追加の融資をしても無駄である。すでに世界金融危機後から金利はほぼゼロになっている。債務の累積に関する保守派の反対がある。しかし、ウイルス対策や医療サービスは拡充しなければならない。

必要な流動性を供給し、不必要な倒産を避け、労働者と企業との関係を維持するべきだ。しかし、「ゾンビ」企業が増えることは成長を損なう。連銀がジャンク債市場を救済したのは間違いだった。

むしろCOVID-19が長くわれわれの経済に残るなら、われわれは政府支出でさまざまな問題を解決するべきだ。人種差別、不平等、医療サービス、化石燃料など。解決策に導く条件を公的支援の配分に反映することが望ましい。

実際、今こそ、労働集約的な、環境に優しい経済に移行する大規模投資計画はふさわしいだろう。

FT July 3, 2020

The shape of the recovery is not a given but must be decided

Martin Wolf


 ポンド危機

FT June 26, 2020

Sterling has not become an emerging market currency

By: Jemima Kelly and Claire Jones

FT July 2, 2020

Sterling’s faded illusion of sovereignty

Philip Stephens

マーガレット・サッチャーは、かつて、ポンドの価値を「ベルギー人たち」が決めることは絶対に許さない、と語った。ベルギー人とはEUのことだ。

しかし、ERMに参加して2年後、投機の圧力でこのシステムから離脱する。保守党にとって、1992年、ブラック・ウェンズデーは、2016年のブレグジットにつながっている。

1945年、世界貿易はその半分をポンドで取引していたが、1967年、スエズ危機を経て、ポンド危機を繰り返し、ブレグジット以降もポンドの価値は下がった。


 米中新冷戦

PS Jun 26, 2020

The American Muddle

ANDREW SHENG, XIAO GENG

FP JUNE 27, 2020

Bullied by Beijing, America’s Closest Allies Regret Saying ‘Yes’ to China

BY SALVATORE BABONES

FP JUNE 30, 2020

Everyone Misunderstands the Reason for the U.S.-China Cold War

BY STEPHEN M. WALT

米中新冷戦を誤解してはいけない。習近平体制の性格や、ドナルド・トランプの悪意を説明しても、対立は解消しない。もし今すぐ、完全な解決を望むなら、どちらかが消滅するしかない。

アメリカは同盟関係を駆使して、衝突を回避し、何より、米中が互いの行動に限界を認めることに共有する利益があることを知るべきだ。そして協力できる問題について対話する。

FP JUNE 30, 2020

Facing Trump, Putin, and Xi, London Needs Old Allies for New Ideas

BY BEN JUDAH

NYT July 1, 2020

America and Europe Are Split on China. They Must Come Together.

By Jochen Bittner


 グローバリゼーションの逆転

PS Jun 26, 2020

The Retreat from Globalization

WILLIAM H. JANEWAY

VOX 26 June 2020

From Smoot-Hawley to ‘America first’ and ‘strategic sovereignty’

Koen Berden, Joseph Francois, Fredrik Erixon


 北朝鮮

NYT June 26, 2020

Why Did Kim Jong-un’s Sister Become the Face of North Korea?

By Sung-Yoon Lee

YaleGlobal, Thursday, July 2, 2020

Questions on Succession in North Korea

Mike Chinoy


 インド

FP JUNE 26, 2020

The Galwan Killings Are the Nail in the Coffin for China and India’s Relationship

BY JEFF M. SMITH

FP JUNE 27, 2020

A Portrait of India on Fire

BY RAVI AGRAWAL

Megha Majumdarの小説 “A Burning” は、炎上する列車で始まる。

「インドで貧しい家庭に生まれることは犯罪なのか? ムスリムであることは? 女性であることは? 犯罪なのか?」 

現代のインドに関する小説であり、ナショナリズムが蔓延し、言論の自由が抑圧されている。主人公はFacebookに書いたことで、テロリスト・グループとの関係を疑われ、逮捕される。

FP JUNE 29, 2020

Why a Trade War With China Is a Bad Idea for India

BY JAMES CRABTREE

FT June 30, 2020

Delhi’s retaliatory strike at Chinese coffers threatens to backfire

Amy Kazmin


 中国とアメリカの抗議デモ

FP JUNE 26, 2020

China Ridicules U.S. Protests Out of Fear of Its Own People

BY KEVIN SLATEN


 プーチンの憲法改正

The Guardian, Sat 27 Jun 2020

Putin is up to no good. But Johnson needs little help in creating chaos

Nick Cohen

FP JUNE 27, 2020

How Putin and the KGB Took Control of Russia—and Duped the West

BY HOWARD AMOS

プーチンの使命はKGBのパワーを復活させることだ。

プーチンは、1985年、東ドイツのドレスデンで、KGBの諜報員だった。プーチンはスパイ活動を指揮し、要員を補充し、技術を盗み、暗殺を企てる左派のテロ集団を運営していた。同時に、ソビエト帝国が崩壊した場合、影響力を維持するためKGBが取った措置に関係していた。

NYT June 30, 2020

Why Does Trump Put Russia First?

By Susan E. Rice

FP JULY 1, 2020

This Time, Russia Is in Afghanistan to Win

BY SAJJAN M. GOHEL, ALLISON BAILEY

FT July 2, 2020

Vladimir Putin has just done a Brezhnev

Tony Barber

大きなファンファーレとともに、ソビエト連邦は1977年に新憲法を採用した。ブレジネフ憲法として知られるものだ。その前文は、プロレタリアートの独裁は終わり、一党国家は、今や、全人民の国家だ、と述べた。こうして憲法は、ソビエトの幻想と現実との間にある隔絶した違いを公式化した。

ウラジミール・プーチン大統領がしたことはブレジネフと同じである。1週間ほどのクレムリンの宣伝が終わって、1993年憲法を修正する長いリストを有権者は承認した。それは、近代化された、法に依拠する国家、という幻想を創り出す。しかし、現実とは遠いものだ。

1989年まで共産党の時代に投票したのと同じように、すべてのロシア人がその投票結果になることを疑わなかった。しかし、プーチンとロシア国民との社会契約は緊張度を増した。

社会契約はコロナウイルス危機の前にも解体しつつあった。世代交代が進み、約束した石油・天然ガス依存からの改革は進んでいない。

プーチン主義は政策の機能マヒと空虚な政治的儀式となり、それはブレジネフが1964-1982年の時代に似ている。


 アメリカ経済の回復

FT June 28, 2020

Small business: a canary in the US economic coal mine

Rana Foroohar

あなたがアメリカ経済の回復経路を予測しようと思うなら、VWL、あるいはKでもなく、株価の変動など見なくてよい。そうではなく、中小企業を観るべきだ。彼らこそアメリカの雇用の半分をもたらしている。彼らこそアメリカの現状を示す指標であり、非常な困難にあることを意味する。

現状の支援策だけでは、小規模ビジネスは次々に倒産する。私の好きな映画館とレストランの複合ビジネスは、3月に閉鎖された。

4月半ばまでに、鍵屋、美容院、ペット業など、個人サービス業の収入は80%も減少した。それらの事業主はマイノリティーが多い。これも、パンデミックが不平等を拡大する理由である。ヘルス・クラブ、レストラン、小売業など、雇用の半分が危機にある。

大企業の多くは好調だ。特にハイテク企業は、パンデミック前よりも、企業の富のより大きな部分を得ている。彼らの株価は上昇しているが、それは現実と無関係だ。アメリカ連銀が全ての資産価格を保証したからだ。ハーツは倒産を発表したが、株価は上昇した。

感染者の統計や、怪しい株価分析を観なくても、街を歩けばアメリカ経済がわかる。多くの中小企業は閉店したままで、それはパンデミックが起きてから失われた2000万人の雇用の3分の2を占めている。感染の第2波が襲うのは確実だろう。

その影響は絶大だ。零細企業の多くはネット取引では生きられない。彼らはロックダウンに対応できず、グローバル資本市場から資金を得られない。彼らが依拠するのは地域社会である。

NYT June 30, 2020

American Companies Are Sick. Here’s How to Cure Them.

By Tim Wu

莫大な支援策が、かつて金融危機の救済で「プライベート・エクイティの時代」を招いたように、大企業による吸収合併を増やしてしまうだろう。それは市場をますます少数の企業に支配させ、貧富の差を拡大する。

改善策はある。第1に、M&Aや大量解雇を支援しない。第2に、支援には「社会的責任」を要求する。第3に、労働者による企業の所有権獲得を支援する。第4に、M&Aの政府規制・監視を強める。

NYT June 30, 2020

Why Do the Rich Have So Much Power?

By Paul Krugman

NYT July 1, 2020

We Socialize Bailouts. We Should Socialize Successes, Too.

By Mariana Mazzucato

経済危機では誰もが政府に支援を求める。しかし、経済が好調になると、われわれは政府を忘れ、企業は報酬を吸い取ってしまう。それは2008年の金融危機でも起きた。

この問題は不平等の拡大につながる。リスクは社会化するのに、報酬は私有化する。コロナウイルス危機は、このダイナミズムを変える好機である。

価値は価格や支払によって測ることがベストではない。政府は、毎日、ビジネスや市民に利益をもたらすような、価値を創り出している。ハイウェー、教育、その他の不可欠な財やサービスを政府は供給している。また、GPSなど、重要な技術を提供して経済を形成している。

市民がその「配当」を得られるなら、政府により支援や救済、市場介入は、より平等な社会をもたらすだろう。COVID-19のワクチン開発はその出発点だ。政府と企業の共同パートナーシップで開発し、特許権は共通の資金プールが所有する。ワクチンは世界中で利用でき、無料である。

NYT July 1, 2020

Here Come the 4 Horsemen of the Techopolypse

By Kara Swisher


 ポピュリストの無能さ

FT June 29, 2020

Coronavirus could kill off populism

Gideon Rachman

ポピュリストは、ポピュラーでないことをひどく嫌う。それは、彼らがCOVID-19の危機にこれほど対処できなかった理由だ。悪いニュースを伝えなかった。死者。景気悪化。自由の制限。

トランプ=ボルソナーロ型アプローチとは、リアリティを観る致命的な無能さだ。トランプは3月半ばまで、COVID-19が魔法のように消滅する、と言っていた。最近も、アメリカは単に検査をやめればよい、と述べた。

対称的に、アンゲラ・メルケルは、トランプや他のポピュリストに避難されているが、危機に適切な対応を示した。指導者に有益な資質とは証拠を理解する能力だ。メルケルは化学の博士号を持つ。しかしトランプは不動産開発業者、ボルソナーロは軍人、ジョンソンは古典学の二流学位である。

パンデミックはポピュリスト指導者たちを不人気にした。しかし、ポピュリストを生んだ不平等な社会構造は変わらない。むしろ強まるだろう。危機の中で民主主義の規範が破壊されるかもしれない。

ポピュリズムが有権者によって拒否されても、ポピュリストたちが静かに退場することはないだろう。

FT June 30, 2020

New Deal Tories show the scale of Labour’s challenge

Robert Shrimsley

FT June 30, 2020

Britain’s government has a new political hero: FDR

The Guardian, Thu 2 Jul 2020

ジョンソンは、チャーチルの再来を夢見たが、今は違う政治的なシンボルに仕えている。F.D. ルーズベルトとそのニューディールだ。

 

Trump and Johnson aren't replaying the 1930s – but it's just as frightening

George Monbiot


 EU復興基金

FT June 29, 2020

The EU needs a €5tn tech and green investment plan

Corrado Passera

FT June 29, 2020

A rapid rebound would challenge EU contradictions

Wolfgang Münchau

ユーロ危機では失敗した財政・金融政策の統合が、コロナウイルス危機に対しては実現するのか? 2012年には不況になった。しかし、今度はある諸国が急速に回復するかもしれない。そのとき、他の人びとを支援することができるか?

ECBも欧州委員会の復興基金も、その法的な根拠や節理湯に反対する声がある。EUの低成長を前提して議論することでは、より起きそうな不均等な成長を、諸政府が財政政策の協力によって管理する政治的判断にまでおよばない。

デジタル経済に適用した北欧圏と、もし観光が回復するなら、5G情報通信網によって要塞化する南欧圏が急速に回復するだろう。ドイツや中欧の工業センターはロックダウンから長期的に損失を被る。

金融政策は不均等成長問題を解決できない。財政政策はある程度効果がある。しかし、EUの復興計画には、それにふさわしい手段が盛り込まれていない。

FT June 29, 2020

EU debt plan makes sense and is worth backing

Karel Lannoo

PS Jun 29, 2020

Europe’s Self-Help Moment

MARK LEONARD

FT July 1, 2020

EU carbon market shrugs off pandemic

Mark Lewis

FT July 2, 2020

EU stimulus must be strong, co-ordinated and focused

Olli Rehn

FT July 2, 2020

Germany can unlock the EU’s recovery fund


 ポーランド

FP JUNE 29, 2020

Poland Needs Migrant Workers. The Pandemic Has Kept Them Away.

BY MARIA WILCZEK


 香港国家安全法

The Guardian, Tue 30 Jun 2020

From London I watch the crisis engulfing my beloved Hong Kong, and I despair

Jessie Lau

FT July 1, 2020

Hong Kong’s pre-eminence threatened by new law

James Kynge

北京が香港に施行した国家安全法は恐怖をもたらし、香港がアジアの世界都市として機能した自治と自由を失わせるだろう。

その法律の中身は、香港の代表にも示されず、法案が通過して15時間後に、ようやく全文が公表された。

「一国二制度」、法の支配、表現の自由は失われた。しかも、国家安全法は、香港の領域を超えて世界中に適用される。

The Guardian, Wed 1 Jul 2020

The Guardian view on Hong Kong: still fighting

FT July 1, 2020

US-China spat puts future of Hong Kong dollar in the spotlight

Henny Sender

香港は米中対立の焦点になった。香港ドルとUSドルとを固定した為替レートシステムだ。大規模な資金流出の圧力で、香港ドルの崩壊が迫っている、と投機業者は考える。

しかし、香港通貨庁(金融管理局HKMA)のEddie Yue長官は、それを懸念しているだろうが、平静である。金利が底にある世界で、通貨防衛は容易である、と。

20年前のアジア通貨危機に比べて、現在はまるで恐怖を感じない。当時、タイ・バーツ、インドネシア・ルピー、韓国・ウォン、マレーシア・リンギ、台湾ドルの価値が下落し、香港ドルも強大な圧力を受けた。

しかし今なら、10ないし15%のプレミアムで資金が戻るのに十分だろう、とYueは言う。香港は、JD.comNetEaseなど、中国の優良国有企業の上場からも利益を受けている。

通貨庁の最初の防衛ラインは、4420億ドルの外貨準備だ。マネタリー・ベースのおよそ2倍ある。Yueは、取引監視システムの能力がアジア通貨危機のときより大きく向上し、銀行が投機業者に融資すれば察知できる、と言う。

それでも投機圧力が続くとき、通貨庁はアメリカ連銀ではなく、中国人民銀行の支援を求めるだろう。香港通貨庁がアメリカ連銀の支援を受けることは、たとえ金融政策の独立性を前提しても、アメリカ政府・財務省が同意しなければ不可能だ。

すべての放水車が機能すれば、火災を鎮めるのに十分だろうか。しかし、今回は異なる危機だ。香港の依拠するシステムが疑われている。

「香港は、かつて冷戦時代の西ベルリンのようなものだった。」とKevin Laiは言う。しかし、「東ベルリンになるだろう。」

NYT July 1, 2020

How China Scammed Hong Kong

By Yi-Zheng Lian

NYT July 1, 2020

President Trump Has Tools to Pressure China. Will He Use Them?

By The Editorial Board

The Guardian, Thu 2 Jul 2020

Britain can't protect Hong Kong from China – but it can do right by its people

Simon Jenkins

FT July 2, 2020

The end of one country, two systems in Hong Kong

FP JULY 2, 2020

Why Taiwan’s Assistance to Hong Kong Matters

BY SHEENA CHESTNUT GREITENS, ARAM HUR


 コンゴ

FT June 30, 2020

Congo has little to cheer 18 months after its stolen election

Martin Fayulu


 バー司法長官

FT June 30, 2020

William Barr: defender of the presidency or a threat to rule of law?

Kadhim Shubber in Washington


 アメリカの中東外交

FT June 30, 2020

America’s four pillars in the Middle East are crumbling

Hisham Melhem

NYT June 30, 2020

Where the Powerful Can Kill the Weak, as Long as They Pay

By Mustafa Akyol

FP JUNE 30, 2020

World Rebukes U.S. Over Iran

BY COLUM LYNCH, ROBBIE GRAMER

FP JULY 1, 2020

Trump’s Syria Policy Is Working

BY JONATHAN SPYER


 日本のスーパーコンピューター

FT June 30, 2020

The 416 quadrillion reasons why Japan’s supercomputer is number 1

Leo Lewis


 世界の株価上昇

FT June 30, 2020

What happens when asset prices are in the grip of central banks?

John Plender

世界の株価が急速に回復したのはなぜか? 1つの説明は、投資家たちが、パンデミックの最悪の時期はすぐに終わる、と考えたからだ。

もう1つの説明は、投資家たちが、中央銀行は資産価格を完全に管理するようになった、と考えたからだ。それは、アメリカ連銀も日銀と同じような、イールド・カーブの管理政策を始めた、ということを意味する。長期金利の上限を決めて、それに見合う大量の債券を購入する。

2次世界大戦後、確かに連銀は金融抑圧を実施した。それは政府債務が例外的な高水準にあったからだ。名目金利を名目成長率よりも低く維持する。

しかし、アメリカ連銀は、国際通貨ドルを準備として海外の投資家が保有する。彼らに対して、ドルは信認問題を生じるだろう。

また、ゾンビ企業の債券を購入することは成長力を低下させる。

基軸となる労働者に対して、賃金引き上げを受け入れ、労働者の交渉力が強まることにもなる。それはインフレーションを高めるだろう。


 貧しい国の財政赤字

PS Jun 30, 2020

Making Multinationals and the Wealthy Pay

JOSÉ ANTONIO OCAMPO, TOMMASO FACCIO

ロックダウン、ソーシャル・ディスタンスが続けば、経済活動は急停止し、先進諸国においては金融・財政政策で大規模な支援がなされている。それは、税収を減らし、失業者を急増させ、将来の財政赤字が巨大なものになることを意味している。

この見通しは発展途上諸国にとって特に厳しいものである。政府は歳入を増やさねばならないが、企業への減税や労働者たちに増税することは間違いである。むしろ、ロックダウンで売り上げを伸ばしたAmazon などIT企業に増税し、多くの独占・寡占的な多国籍企業に増税するべきだ。MNEsは税金を支払うことを嫌って、タックス・ヘイブンなどを利用している。それは不公平で、雇用をもたらすことへの妨げである。また、デジタル・サービス課税も導入するべきだ。

パンデミックのコストは、貧しい、弱い立場の者たちが非常に多く負担する。そのためには、経済救済パッケージよりも、累進的で、最低税率を課す、グローバルな税制が望ましい。


 トランプとバイデン

NYT June 30, 2020

Is Trump Toast?

By Frank Bruni

NYT June 30, 2020

This Should Be Biden’s Bumper Sticker

By Thomas L. Friedman

NYT July 1, 2020

Trump Wants a Backlash. Can He Whip One Into Shape?

By Thomas B. Edsall

FT July 2, 2020

Markets are right to be nervous about the US election

Tina Fordham


 バイデンの100日計画

PS Jul 1, 2020

A 100-day Agenda to Reunite America

LARRY HATHEWAY, ALEXANDER FRIEDMAN

バイデンの100日計画を提案する。・・・(最低賃金ではなく)生活賃金の法制化、公共投資のための基金、国民皆保険制度、WTOの多角的貿易交渉再開を条件としたトランプ関税の90日間停止、パリ協定への復帰、企業・コミュニティー・社会サービスなどへの支援基金、など。

PS Jul 1, 2020

The Recovery Plan America Needs

LAURA TYSON, LENNY MENDONCA


 指数投資

FT July 2, 2020

How index investing can drive sustainable finance transition

Lionel Paquin

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The Economist June 20th 2020

The new world disorder

Global trade: Invisible hands

The pandemic: Not Britain’s finest hour

Federal Reserve (1): From yields to maturity

Federal Reserve (2): Swapping panic for calm

Global trade: Ninety percent of everything

Free exchange: Changing room

(コメント) 《世界無秩序》の特集記事は、国連再考です。ざっと見ただけですが。

世界貿易が、コンテナやタンカーの多国籍乗組員によって機能しているのは、すばらしい市場メカニズムでしたが、パンデミックの犠牲になっています。まさに「共有地の悲劇」です。労働者の代表組織と世界の輸送インフラを代表する協議会が必要です。

アメリカ連銀の立場は、ますます、微妙な位置にずれてきています。内外の金融市場に対して、アメリカ連銀が関与しなければならず、ますます金融管理体制に頼るしかない世界で、実際の経済をどのように転換させるのか、見通しが立たないからです。中央銀行や金融政策の積極的な役割を、いつまで、避けているふりを続けるのか。

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IPEの想像力 7/6/20

突然、スマートフォンが警報を発するような大雨が始まった。熊本、宮崎、長崎、九州北部、そして、高知や山口、東海や北陸地方にも、豪雨が襲っている。

これほどの大雨が毎年のように襲うのであれば、地域によっては、もうこの土地に住めない、と思うのではないか。東北の太平洋岸を津波が襲ったときのように、大雨に弱い土地から人びとは集団で退避し、移住するという判断をしなければならない、と思いました。

コロナウイルス危機も、私たちの職場や住居、さらに、貿易や投資のパターンを大きく改造するに違いありません。

ペストと戦争が広まった時代には、城壁で囲まれた都市が、その周囲の農民とともに、略奪や疫病から人々を守ったと思います。21世紀の人類も、気候変動、ウイルス感染を避けて、金融グローバリゼーションを離脱した土地が各地に現れるのでしょう。時代の支配的な政体や思想が変態し、世界の景観が変貌し始めたように思います。

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ロックダウンでは、経済活動を急停止することになります。

もしこのまま東京の感染者が爆発し、1日に1000人を超えたら、東京をロックダウンするのだろうか。東京の住民が外へつながる交通手段、道路も空港も、港も封鎖される。そして、食料品の購入のほかは、屋外へ出ることを禁止する。外出する際には許可を申請し、スマートフォンで位置確認情報を通知し続ける。

居酒屋、レストラン、ホテル・旅館、映画館、劇場、商店、オフィスビルも閉鎖する。それに対して、緊急融資と財政支援によるベーシックインカムの補償、コロナウイルス危機の「ソーシャル・ディスタンス」を行う。ロックダウンは、経済に対する大きな穴を空ける。絶壁となって、その土地の活動水準が低下する。そして、一定期間を経て再開し、回復する。

今は、政府と中央銀行がこのギャップを緊急融資と財政支援で埋めている。しかし、永久にはできないし、全域でもできない。将来、債務をどのように処理するのか? だれが負担するのか? 各地の政治対話と合意形成が問われる。中央銀行は、どのような形で、政治的決定に参加し、従うのか?

政治家は問いかけに答えない。自分たちの中に、深い問いかけと思想が準備できていないからである。補償と財政赤字、膨大な融資は、答えることを先送りしている。

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被災者の声を、なぜもっと集めないのか? 国民的な連帯、救済や支援についての具体的な仕組み、それを支える財源と思想を、もっと語る必要がある。

東日本大震災でも、各地の水害でも、コロナウイルス危機でも、被災者は自分たちの住宅と雇用を、何とか回復し、子供たちに希望を持てるような道を示してほしい、と願っただろう。13メートルの堤防を国費で建設できる、というのは、それに応えたものではない。

IPEの果樹園」に載せた「IPEの想像力 3/11/19」を観てください。

https://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2019/031119review.html

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政府を担う政治家であるなら、国民の合意形成に向けて、責任ある答えを示してほしい。

接触型職種の減少。移動や観光、劇場の閉鎖。自宅待機。外出規制。こうした方針が経済や社会にもたらす意味と、それに対して長期的な展望を与え、国民の負担を減らすような方針を示すこと。だからお店を閉め、業態を変え、職場を変わる。移住する。

医療サービス、医療保険、ワクチン開発。検査、追跡、隔離。感染者と非感染者の分離。それらはどのように組織されるのか。UKUS各州、スウェーデン、ブラジル、インドなど、集団免疫は達成されるのか。医療崩壊と死者数はどうなるのか。

エッセンシャル・ワーカーズが、中国でも、アメリカでも、外出規制の中で生活を維持している。ネット販売と倉庫、配達。黒人、マイノリティー、移民労働者。農業の季節労働者。食肉加工場。だれが、どこで生産し、だれがそれを運ぶことで、感染爆発を回避するのか。

もっと急速に死者数が増加するなら、戦争状態のように国家の指揮・命令が強化されただろう。独裁化する危険と、民主主義の適応力が求められる。

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政府とは権力を握り、それを行使するエリートだ。

女性記者に「おっぱい触らせて」と手を出す福田事務次官を、何が悪いのか、という顔でかばった麻生財務大臣や、「国家の分離、政権転覆、テロ、外国勢力との共謀」を国家の安全を脅かすとみなし、終身刑にまで問える香港の治安組織の幹部なら、政府とはそういうものだ、と考えるのかもしれない。

パワハラ、セクハラのなにが悪いか。それが権力だ。

人種差別、女性差別こそが権力だ。それ以外に権力なんてあるかよ。

そう思っているのかな?

暴力に対抗する。正義を行う。協議や交渉によって合意を形成する。積極的に説明し、改善策を見出す。コロナウイルス危機が、権威主義的な支配体制と、民主的な統治システムとの違いを示す。グローバリゼーションが動揺し、変貌し始めるとき、そのさまざまな変種と混合体制が生まれてくる。今や、「私たちは皆、香港市民だ。」

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