IPEの果樹園2020

今週のReview

5/11-16

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スウェーデンの集団免疫戦略 ・・・COVID-19とアメリカ ・・・ベーシック・インカムと労働者 ・・・危機後の世界に向けて ・・・パンデミックと都市・社会運動 ・・・COVID-19EU・ドイツ ・・・アルゼンチン ・・・米中欧の脆弱なガバナンス ・・・債務累積の管理 ・・・COVID-19と金融政策 ・・・ ・・・

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 スウェーデンの集団免疫戦略

The Guardian, Fri 1 May 2020

Has Sweden's coronavirus strategy played into the hands of nationalists?

Gina Gustavsson

スウェーデンのコロナウイルス対策は国民に支持されている。たとえ死亡率が世界のトップ10に入っても。100万人当たり240人で、さらに上昇しつつあり、ストックホルムでは介護施設の多くが感染してしまった。

このことについて、よくある説明は、スウェーデン人の「信頼」と「冷静さ」を強調するものだ。疫学者のAnders Tegnellは、スウェーデンのコロナウイルス対策を代表する人物になった。乾いた(感情を示さない)科学者から官僚に転身した人物であるが、ナショナリズムを煽動するポピュリストではない。

しかし、水面下では冷静とは決して言えない。公開論争は、国民的な威信を損なわれた、という感覚に火をつけた。それはI.バーリンが「折れた小枝」とよんだナショナリズムである。

痛みというより、喜劇的な自尊心に始まる。「スウェーデンはスウェーデンらしく」。「スマートなスウェーデン」、「親切なスウェーデン」。南欧のようにヒステリーを示さない。

次に、敵対者を侮辱し、非正統化する。22人の科学者たちが、対策の転換を求める共同コラムを載せた。しかし、数時間で、主張の中身には誰も注意しなくなった。論争は、彼ら(科学者たち)が死者数を利用し、スウェーデンのイメージを損なった、ということに終始した。批判は、彼らの主張や、ノルウェーやフィンランドより何倍も高い死亡率を、否定したわけではない。

その後、感情的な侮辱や女性蔑視が示された。

そもそもスウェーデンは孤立した実験、例外ケースではない。スウェーデンは、マイルドな規制にした、ということだ。

Tegnellは崇拝されて、イコン(聖画)になった。スウェーデンの魂を示した、とナショナリストは称賛する。彼の部屋には多くの花束が届いた。

スウェーデン・モデルの失敗はいくつもある。しかしそれは、言葉のわからない、教育を受けていない移民たちのせいにされる。介護施設の感染は、「避難申請者たち」「難民たち」と結び付けて語られる。

私は、スウェーデンのアプローチを猛烈に擁護することが、われわれの制御不能な感情を解放することを恐れる。ブレグジットに従った人々には明らかなように、ナショナリズムは批判を受け入れず、容易に社会を引き裂くことができる。

NYT May 2, 2020

She Predicted the Coronavirus. What Does She Foresee Next?

By Frank Bruni

ギャレットLaurie Garrettは、その2017年の著書“Warnings: Finding Cassandras to Stop Catastrophes”でカサンドラになった。その本で彼女は、HIVの衝撃だけでなく、より感染力の強い病気がグローバルに拡大すること予見した。

彼女は、現在の危機の先に何を観るのか?

治療法もワクチンも必要だ。しかし、COVID-19の危機は長く続く。アメリカ各地に、小さな感染拡大の波が起きる。われわれは旅行をやめ、大量輸送機関をやめ、対面ミーティングをやめ、州の外の大学へ子供を行かすのをやめる。

911の後も、同様に、「正常回帰」は起きなかった。ビルに入るときはIDを示し、金属探知機を通る。同じ警戒を行わない飛行機には2度と乗らない。

もし富裕層が、コロナウイルスの感染拡大から逃れて、株式市場で利益を上げ、職を失う人や住宅・店舗を失う人がいる中で、プライベート・ジェットで自分の島へ飛び、街で起きていることを気にしないなら、私は政治的な大変動が起きると思う。

彼女は、コロナウイルスの感染が拡大したときに、驚かなかった。中国がそれを過小に見せ、世界各地でお粗末な対応しか取れなかったときも、驚かなかった。しかし、愚かで、お粗末な大国の見本がアメリカになるとは、全く予想していなかった。

彼女は、George W. BushがアフリカのHIV対策に示した行動を称賛した。しかし、トランプは「最も無能な、愚劣な道化師」である、と言った。アメリカがグローバルな対策で指導力を発揮していないのは、トランプが科学と科学者たちを貶めていたからだ。

問題はトランプよりも大きく、それ以前から続いている、とギャレットは述べた。アメリカは公衆衛生に十分に投資してこなかった。富裕層や地位の高い者たちは外科によく行く。心臓病や癌などの、新しい治療を好む。個人が利用できる医療サービスが政治を支配した。

すべての人が安全な空気や水を利用できるか、もっと議論すべきだったのに、政策やシステムは準備してこなかった。

NYT May 4, 2020

Coronavirus and the Sweden Myth

By Ian Bremmer, Cliff Kupchan and Scott Rosenstein

スウェーデンの「集団免疫」は十分に理解されていない。スウェーデンも規制は行われている。限定した分野で、緩やかな形である。しかし、高齢者の死亡を防ぐことには成功していない。アメリカが同じことをするのは間違いだ。スウェーデンよりも健康状態が悪い人口が多いからだ。経済的効果が優れているのは、限定して行っているからだ。「集団免疫」のせいではない。

NYT May 5, 2020

Lockdown Is a Blunt Tool. We Have a Sharper One.

By Tom Frieden and Kelly Henning


 COVID-19とアメリカ

The Guardian, Fri 1 May 2020

The Guardian view on Trump and Covid-19: Americans suffer. Will he?

Editorial

NYT May 1, 2020

Life in Trump’s Coronavirus Ghetto

By Erin Aubry Kaplan

The Guardian, Sun 3 May 2020

Donald Trump's four-step plan to reopen the US economy – and why it will be lethal

Robert Reich

The Guardian, Mon 4 May 2020

Under Trump, America has gone a bit late Weimar. We know how that ended

Lloyd Green

PS May 4, 2020

Can America Handle a Second Wave?

WILLIAM A. HASELTINE

NYT May 4, 2020

Americans Are Lining Up for Food. What Is Team Trump Doing?

By Matt Russell, Robert Leonard and Beto O’Rourke

アメリカ人は国の至るところで、数十、数百、数千も、食品の配給所に列を作っている。アメリカ人の6人に1人が失業し、その数はさらにもっと増えるだろう。

人びとは空腹でも、ミルクは捨てられている。フルーツや野菜は収穫されることなく、腐っている。豚は工場が動くのを待っており、農家は子豚を殺している。食肉加工場はCOVID-19の感染拡大拠点になり、閉鎖されたが、トランプ大統領はその操業継続を命じた。

アメリカの地方と都市をともに守る賢明な政策が求められる。特に、食料の緊急支援策だ。残念ながら、最近、農務省が示したCoronavirus Food Assistance Program, or CFAPはそうではない。

フード・バンクやコミュニティー、宗教団体の組織を指定したCFAPは、実際に問題を解決するためではなく、イデオロギーによって作られた。これらの組織に敬意を払うとしても、数千万人のアメリカ人の飢餓を解決する力はない。

われわれはすでに効果的な、効率の良い計画、Supplemental Nutrition Assistance Program (SNAP)を持っている。一般に、フード・スタンプと言われるものだが、いつでも、ローカルな食料品店で食品を入手できる。

トランプ政権は、反政府の政治を推進するために、SNAPを使うよりも、CFAPを作ったのだ。

FP MAY 4, 2020

China Will Be Front and Center During the 2020 Election

BY DANIEL B. BAER

NYT May 5, 2020

The W.T.O. Should Be Abolished

By Josh Hawley

FT May 6, 2020

Premature US reopening plays Russian roulette with its workers

Edward Luce

「コロナウイルスは平等化の偉大な推進者だ」と、ニューヨーク州知事は述べた。

しかし、アマゾンを考えてみよ。何人かの労働者はウイルスに感染する不安を表明して解雇された。「労働者たちは、商品を取り上げて梱包する、取り換え可能な消耗品にされている」と述べて、アマゾンのエンジニアTim Brayは抗議のために辞任した。

CEOのベゾスは、パンデミックの前でも、推定で毎分149353ドルを得ていたが、それはアメリカの中位の労働者の年収の3倍だ。その後、アマゾンの収入は急増している。

最初は、パンデミックが誰にでもおよぶ病原菌の平等主義を印象付けた。しかし、ロックダウンがすべてを変えた。ソーシャル・ディスタンスは富裕層に有利である。その居住や労働は、ほとんど影響を受けない。

他方で、ニューヨークを郵便番号の区分で分析すると、貧困地区ほど死者が多い。職業もそうだ。交通機関、医療、配達、食料品店、建設など、自宅を出て働く人々には死者が多い。

シンガポールやドバイで感染者が再び増えたのは、街の準隔離地区で、集合住宅に住む移民たちが感染したからだ。

鍋や釜をたたいて、エッセンシャル・ワーカーズを称え、人びとは連帯を示して感謝する。しかし、彼らは十分な保護手段を与えられていない。わずかな危険手当を得るだけだ。同様のことは、911以後の軍人たちに対してもいえる。国民は彼らに感謝したが、彼らの収入はほとんど増えていない。

ロックダウン解除にも、自宅で働くことができない者にはジレンマがある。多くの州がロックダウンを緩和しつつある。しかし、感染者が減らない州では、大統領の再開ガイドラインを無視した。

労働者たちは、働くことで感染リスクを冒すが、それを拒めば収入を得られない。小切手の給付ではなく、次の支援は雇用者・企業に与えられるだろう。多くの州は、雇用者に保護措置を命令できない。その結果、労働者たちは自宅にとどまることはできなくなる。

アマゾンの商品を使い、タイソンの加工した食肉を食べる。アメリカの消費者たちは、それにもっと高価な値札が付くべきことを知る。「あなたのサービスに感謝する」というのは、厳しい現実に対する薄いマスクでしかない。

NYT May 6, 2020

Why Isn’t Trump Riding High?

By Thomas B. Edsall

外国人排斥、権威主義的指導者の容認、社会・経済の分断という、パンデミックの利益をトランプ大統領はまだ受けているが、政治の風はトランプに向いていない。

歴史の教訓では、人びとが苦しみ、死者が増えると、人種差別や排外主義の波が起きる。悲嘆や経済的困窮の経験は、誰かを責める欲求を生み出す。

われわれは以前からスケープゴートを探す現象を観てきた。1832年、ニューヨークのコレラ感染では、プロテスタントが支配的な文化に変化を広めたカソリックのアイルランド移民が責められた。1876年、サンフランシスコで天然痘が流行したとき、中国人人口が責められ、1882年に中国人排斥法が成立した。

1918年、インフルエンザの死者が増えたことは、1932年、33年、ナチをまねた極右政党に投票する人が増えたことと連動した。

現代のリベラル・デモクラシー国ではその脅威が低いが、より独裁的な国では脅威が高い。「多くの諸国で、パンデミックが基本的な社会政治的結束を破壊する緊張をもたらす」と警告されている。

社会的結束を強調する傾向は、集団的規範の強制、部外者を拒否し、強権的な指導者に服従することにつながる。トランプを好む傾向は3月に上昇した。それは当選以来の最高水準だ。そのコロナウイルス対策が大失敗であったにもかかわらず、これは予想されたことである。

1932年の大不況に、ナチが投票総数の44%を得て、帝国議会の第1党になったことがそうだった。

危機に対するトランプの行動は、すでに周知のパターンである。他者を非難し、責任を否定し、人種的偏見や「外国」の危険を吹聴し、彼が間違った説明を広めたと告発する正直な人びとを糾弾した。

しかし、今回、多くのアメリカ人はこうした詐欺を信じていない。自分たちのコミュニティー、職場、家族に、人びとは危機の衝撃を観ているからだ。

トランプが、従来のアメリカの指導的な役割、国際協力の呼びかけを放棄しているせいで、中国に舞台を提供した。中国は喜んで真空状態を埋めるだろう。

11月の大統領選挙に向けて、民主党と共和党の行動に変化が起きるとは思えない。分断状態が短期の変化や選挙運動を支配している。気候変動が分断状態に利用できたように、ウイルスも利用される。

国民的なポピュリズムはCOVID-19で弱まる、という意見もある。移民やグローバリゼーションは制限され、医療問題が重視されるからだ。それは文化戦争を抑え、専門家の意見を尊重する。多様な、外国生まれの医療サービス労働者がヒーローである。

他の意見によれば、COVID-19は既存の傾向を変えない。危機は、すでに緩やかな死を迎えていたネオリベラリズムの衰退を継続する。ポピュリストの支配者は独裁傾向を強める。

基本的な視点の変化を重視する者もいる。パンデミックがグローバルな脆弱性を示した。世界は他者と共有されており、そのことを選べない、と示した。生きるために、われわれは環境、社会空間、緊密な関係を必要とする。他者がわれわれに触れ、われわれが触れたものに他者も触れる。空気であれ、動物であれ、世界の表面であれ。社会生活は、こうした相互の結びつき、相互依存、脆弱性を受け入れることだ。

「脆弱な集団」を指定して、その人々を隔離し、保護する。それは十分な医療を受けられない黒人や有色・ヒスパニックを含む。貧困層、移民、囚人、身体不自由者、権利と医療のアクセスを求める性転換者などを含む。

われわれは、不平等が広がる社会の致命的な脆弱性を知ることになる。


 ベーシック・インカムと労働者

The Guardian, Fri 1 May 2020

Young people face a jobless future – unless ministers learn from the past

Polly Toynbee

VOX 02 May 2020

Protecting informal workers in urban India: The need for a universal job guarantee

Swati Dhingra

The Guardian, Sun 3 May 2020

Why universal basic income could help us fight the next wave of economic shocks

John Harris

6週間前まで、仕事を2つに分けるあいまいな考えを多くの人は持っていた。勝ち組と、不安定な職場の負け組。「野心的」職業と、政府に依存した職業。グローバリゼーションに調整する者と、その犠牲者たち。

しかし、コロナウイルス危機ですべては過去の話になった。数千万人の生活にとって、不確実さは中心を占める問題である。(不安定で不確実な職に就く人びと)「プレカリアート」は、突如、潜在的な労働者すべてに当てはまる普遍的条件になった。

フード・バンクの必要が急激に増えている。政府は中小企業や個人向けの融資を熱狂的に増やしている。しかし、そもそも貧困状態の人々には問題があったから、こうした措置で解決することはむつかしい。

よく知られるようになった考えが注目されるべきだ。食料や光熱費のような必需品に対して、政府が定期的に支払うことを権利・資格として認める、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)である。左派系の団体Compassは、10日前、議員100人以上と主要政党に「リカバリー・ベーシック・インカム」を求める文書を送った。付属する文書は、これを短期的措置として、恒久的なベーシック・インカムを段階的に導入する。労働年齢の大人は週60ポンド。子供は週40ポンド(4人家族で年1400ポンド)。失業手当などは残す。将来は、「所得の下限」を大人100ポンドにする。

スコットランドではSNPが強く支持している。他の諸国でも同様の姿勢が示されている。トランプ政権は、膨大な数のアメリカ市民に1200ドルを1度だけ支払ったが、Alexandria Ocasio-Cortezなど、未来志向の民主党議員はUBIを支持している。

UNIについては、ポピュリズムに毒された社会で、明らかに意見が対立する面もある。多くの人は本能的に好むとしても、働かないことを(ロックダウンで実感したように)懸念するだろう。

しかし、労働と福祉の基本的問題は残る。自動化は不可避ではない。COVID-19のような危機は今後もわれわれを襲うだろう。気候変動についても同様に考えておくべきだ。われわれはこの衝撃を再発する世界に準備しなければならない。

今、人びとは家族や友人、そしてコミュニティーのために、無償の労働に従事している。そうすることの自由が必要だ。われわれは今、ベーシック・インカムの入り口に立っている。

FT May 4, 2020

How to help the poorest through the lockdowns

FT May 5, 2020

How to move workers on to the land

イチゴ、レタス、ブロッコリーが春の太陽を浴びてみ載っているけれど、コロナウイルスは脅威になっている。摘み取るための労働者が集まらない。ウイルス感染を抑えるロックダウン、移動の禁止が行われる中で、UK農家は7万人の季節労働者を集めている。それは主に東欧からの移民労働者たちがやっていた摘み取り作業だ。

解決策は明らかだろう。仕事がなくなった、レイオフされた、他の産業の労働者たちがそれを埋めることだ。UK政府は、戦時の戦意高揚をまねて、“Pick for Britain”という雇用キャンペーンを進めている。しかし残念ながら、その実現はむつかしい。

ヨーロッパ中で、自国民が農産物の収穫を行っている国は少ない。ほとんどは移民労働者が担っている。5月末までに、フランスは20万人、スペイン8万人の農業労働者が足りない。4月、5月に、イタリア25万人。ドイツも同じ季節に、30万人を雇用する。

先週終わりまでに、UK政府の摘み取り作業に応じたのは、わずかに150人だった。雇用を探したけれどオファーがない、農場は移民労働者やその雇用構造を前提している、という者もいる。他方、農場は、柔軟で、経験を積んだ労働者を求めている。その多くは移民だ。

季節労働者は、ときに現代の奴隷労働と言われる劣悪な条件で働いている。しかも、農場が感染のクラスターになる危険もある。キャラバンのような一時宿舎はソーシャル・ディスタンシングが困難だ。ドイツ政府関係者は、例外的にルーマニアから農業労働者の入国を飛行機で認めたが、空港に集まってくる夜行バスが満載する労働者たちを観て、恐慌に陥った。

国内労働者を農場で就労させるために、また、経験のない労働者たちが作業になれるために、政府はもっと柔軟に十分な支援をしなければならないだろう。農場も、すぐに辞めるかもしれない労働者たちを受け入れ、しかも、感染対策を十分に行うべきだ。

これらはすべてコストを引き上げる。消費者たちが受け入れる限界があるだろう。小規模の農場によって担われていることもあるが、EUの共通農業政策で巨額の補助金を得ている産業は、救済されるべきではない。

農産物の供給が縮小し、来年は食糧価格の上昇が景気回復を妨げる要因になる。


 危機後の世界に向けて

PS May 1, 2020

How to Avoid a W-Shaped Recession

JEFFREY FRANKEL

COVID-19は世界経済を破壊した。経済の回復がV字か、U字か、あるいは何度も後戻りするW字になるか、その違いは歴史から理解できる。

3月まで、V字回復が起きると思われていた。しかし、それは楽観的過ぎるだろう。中国の生産回復も始まったが、世界経済はV字型ではない。

政策によってU字型の回復を実現できるはずだ。そのためには、大規模に、無料の検査を行う必要がある。それは、技術的に可能で、高所得国には実行できることだが、UKUSのように失敗する政府もある。

治療薬とワクチンの開発は状況を大きく改善するものだが、少なくても、1年半はかかる。もしその長い期間に不況が続くなら、1930年代以来の大不況になる。

さらに悪いシナリオは、W字型の回復だ。歴史は、2つの政策ミスがそれをもたらす、と教えている。第1に、早すぎる「勝利宣言」だ。多くの指導者と並んで、トランプ大統領も始めているように。しかし、100年前のスペイン風邪は、亜米利加への第1波が1918年初め、はるかに深刻な第2波が19189月、第3波は1920年まで続いた。

さまざまな予防策は、今と同じように、行われていたが、行動は遅く、しかも続かなかった。だれも必要なだけの公衆衛生を実行しなかった。

2に、政治指導者たちは十分な刺激策を続けなかった。1936-37年のアメリカがそうだ。1936年、F.D.ルーズベルト政権は連邦政府支出を削り、増税した。連銀は金融を引き締めた。2008年の金融危機でも、アメリカの政策は逆転が早すぎた。2009年に経済のフリー・フォールは止まったが、2011年に共和党が議会の多数を制し、刺激策を終わらせた。

今も、政府は同じ間違いを犯すとみなすべき理由がある。たとえトランプが11月の選挙で敗北しても、上院は共和党が支配している。彼らはアメリカの債務/GDP比率が100%を超えることに驚き、刺激策をやめる。

2つの教訓は明らかだが、政府はそれらを病気と同様に避けるのだ。

NYT May 2, 2020

The New Great Depression Is Coming. Will There Be a New New Deal?

By Michelle Goldberg

Andrew Yangは、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)は2024年の大統領選挙で主要な争点になる、と考えていた。この4年間で、商店や企業の、ますます多くのアメリカ人が職を失うから。アマゾンのせいだ。

しかし、コロナウイルス危機ではっきりした。4年ではなく、4週間で起きた。30%ではなく、事実上、100%だ。もちろん、ロックダウンの後、多くの店は再開するだろう。しかし、できない店も多い。

さまざまな人がUBIを主張するようになった。リバタリアンの共和党大統領候補者も、民主党のペロシ下院議長も、ローマ教皇フランシスも。

COVID-19はベトナム戦争よりも多くの死者をもたらし、大恐慌よりも多くの失業者を生んだ。われわれは大統領選挙に向かうが、その混乱に見合う要求とは何か? 共和党員の多くも、小さな政府の時代は終わった、と認める。

F.D.R.モーメントである」と、マサチューセッツ州の民主党上院議員Edward Markeyは言う。彼はthe Green New Dealを共同起草した。

今、人びとは「エッセンシャル・ワーカーズ」を称賛している。医師や看護師だけでなく、食料品店員、バス運転手、食肉加工労働者、郵便配達人も。

「幼い子供たちが「ありがとう」と書いた。それを郵便配達人の窓に貼った。」と、Elizabeth Warrenは私に語った。彼女たちはある法案“Essential Workers Bill of Rights,”を提出した。

FT May 3, 2020

Can governments afford the debts they are piling up to stabilise economies?

Stephanie Kelton and Edward Chancellor

FT May 3, 2020

After lockdowns, economic sunlight or a long hard slog?

Gavyn Davies

FT May 4, 2020

Economists need to abandon their comfort zones to deal with Covid-19

Rana Foroohar

エコノミストの思考法はあまりにも線形である。しかし、金融危機は、そして、パンデミックはもっと、線形ではなく、複雑なシステムで起きている。「効率」ではなく「回復力」が問われている。

エコノミストは、異なるイデオロギーだけでなく、異なる学問、普通の人々と、対話する必要がある。

PS May 4, 2020

The Déjà-Vu Virus?

DOMINIQUE MOISI

VOX 06 May 2020

Viral recessions: Lack of demand during the coronavirus crisis

Veronica Guerrieri, Guido Lorenzoni, Ludwig Straub, Iván Werning

PS May 7, 2020

US States Need Federal Funding to Combat the Pandemic

LAURA TYSON

FT May 8, 2020

People cannot just be ordered back to work and to spending

Martin Wolf


 イギリス

FT May 1, 2020

Even in a pandemic, politicians must decide

PS May 1, 2020

The Populists’ Pandemic

ANDRÉS VELASCO

PS May 4, 2020

The Fascist Politics of the Pandemic

FEDERICO FINCHELSTEIN, JASON STANLEY

NYT May 4, 2020

The U.K. Needs a Real Government, Not Boris Johnson’s Puppet Cabinet

By Jenni Russell


 COVID-19と政府債務

FT May 1, 2020

There is a way to solve the Covid-19 bailout problem

Merryn Somerset Webb

政府は、コロナウイルス危機の不況を抑えるために、次々に企業や銀行を助け、融資する覚悟である。政府の債務は莫大に規模になるだろう。しかし、過剰な債務を抱える企業を救済することには問題がある。

むしろ、融資ではなく、株式を取得するべきだ。融資をすべて株式に転換し、国民のために企業を経営する。その例としては、日銀がETFを購入したが、その評価はまだできない。1998年、香港政庁が金融不安を抑えるため、流通する株式の11%を購入した。1932年、アメリカは復興金融公社を介して多数の企業を買収した。

有権者は、すくなくとも、2008年の銀行経営陣を残したままの救済を再現したくないだろう。

FT May 1, 2020

Capitalism is not to blame, it’s our escape route out of this mess

Robert Colvile

NYT May 1, 2020

The Immunity of the Tech Giants

By Kara Swisher

FT May 7, 2020

Coronavirus crisis is a moment the investment industry should seize

Helena Morrissey


 ロックダウン後

FT May 1, 2020

Lockdown has brought the digital future forward — but will we slip back?

Richard Waters in San Francisco

FT May 4, 2020

Algorithmic economics might help recovery from Covid-19

John Thornhill

経済政策をAIに委ねることで、パンデミックからの回復は改善できるか?


 パンデミックと都市・社会運動

FP MAY 1, 2020

How Life in Our Cities Will Look After the Coronavirus Pandemic

自宅にこもって、だれもいない通りに出ることはない。コロナウイルス危機の後、都市はどうなるのか? レストランは生き残り、職場に復帰できるのか? 人びとは再び込み合った地下鉄に乗って通勤するだろうか? ZOOMで会合できるのに、高層ビルのオフィスは必要か? 農村で暮らすことが、にわかに魅力的になった。

都市は仕事と遊びの多くの機会を提供して繁栄している。無限に多様な財とサービスを並べている。しかし、病気の不安が日常を支配すれば、都市は味気ない、消毒された未来を、あそらくは、ディストピアのような未来を示すだろう。

RICHARD FLORIDA・・・大都市はコロナウイルスを生き延びる。ギルガメシュ以来、都市は伝染病の震源地であったが、常に復興し、しばしば病気の前よりも強くなった。中世ヨーロッパからアジアに広がった黒死病。1918年に世界で5000万人が死んだスペイン風邪。歴史は、病気の後も、人びとが雇用の機会と高い賃金を求めて都市に流入したことを示している。

密集の恐怖は残るが、大都市の中心に向かう他の諸力が強く働く。

EDWARD GLAESER・・・パンデミック前の予想は2度と戻らない。人との交流は喜びより恐怖を生むだろう。パンデミックが状態になれば、都市の数千万のサービス雇用が消滅する。

Robert Muggah・・・グローバル都市の姿が変わる。パンデミックは、ガバナンスの質や、不平等の規模を、創り変えるだろう。Amsterdam; Bristol, England; and Melbourne, Australiaのように、イノベーションの中心地として、循環経済、気候の回復、不平等に対する不寛容を備えた、新しい都市がすでにある。

THOMAS J. CAMPANELLA・・・反都市化の伝統があった。都市の死を予言する者が増えるだろう。しかし、外出禁止が解けるとき、人びとは都市の中で話し合える喜びを求めるだろう。

REBECCA KATZ・・・人口集中は、突如、魅力を失った。ジェントリフィケーション(都市空間の高級化)を推進してきた富裕層が、夏の別荘に避難している。彼らの多くは永久に都市を優先する発想を失うだろう。都市化は逆転する。

Maimunah Mohd Sharif・・・COVID-19に感染した者の95%は都市に住む。しかし、都市の中心部にある不平等が緩和されねばならない。ウイルスは都市のインフォーマルな居住者たち、スラムの住民を襲った。同時に、十分な、安全な、居住できる家を持たない人々を襲った。地方政府が不平等を解消する先頭に立つだろう。

JANETTE SADIK-KHAN・・・世界の輸送システムが独立していること。その周りに都市は形成されている。都市の活動が、エッセンシャル・ワーカーズに大きく依存していること。彼らは公共輸送システムに依存している。

Bruce Katz・・・新しいガバナンスと制度を築くべきだ、と教えている。中小・零細業者を救うためには、公的な土地銀行や非営利の開発公社が必要だ。都市や企業をプールして、その再生を加速する。実際に、Copenhagen’s City and Port Development Corporation or Cincinnati’s Center City Development Corporationがそうしている。

PS May 4, 2020

COVID-19 and the End of Individualism

DIANE COYLE

FT May 5, 2020

Gary Younge: What, precisely, are we making noise for?

Gary Younge

毎週、木曜日。ロンドンの自宅では、7:55に同じことをする。考えすぎないようにして。台所へ行って、鍋やフライパン、木のスプーンを、玄関ドアまで持ってくる。そして8時になるのを待つ。私は外へ出て鍋を打ち、妻は私の横で拍手する。ときには子供たちが加わる。

この1週間だれもいなかった通りに、人びとが現れる。私たちは手を振り、雑談し、国民医療サービスNHSの労働者たちを励ます。彼らはわれわれを代表してCOVID-19と闘っているからだ。その後、私たちは屋内に戻る。私は自問する。

「これは、いったい、何なのか?」

パンデミックにおいて医療関係者を称える国は多い。しかし、医療サービスを国有化している国は少ない。われわれは、NHSをイギリス王室よりも誇りにしている。

だから、一斉に外へ出て、NHSを応援することは、この問題は昨年12月の総選挙でもブレグジットの主要目標であったのだが、まさに政治的行動である。政治とは、非常に激しい対立をもたらすものである。専門家によれば、イギリスは数週間遅れてイタリアを追っている。

私はNHSを称えて拍手する。私の母のように、そこで働く人々のために。そこには多くの黒人と有色の移民たちが低賃金で働いている。NHSの初期から、彼らはこの制度が機能するように、羽田らしてきたし、今や、感染の危険とロックダウンのダメージに最もさらされている。

私は、NHSを創り、維持してきた国に誇りを持って拍手する。しかし、その施設が十分でないこと、必要な検査が足りていないことに怒りを感じる。いつか彼らが十分な給与を支払われ、そのサービスに十分な投資がなされることを願っている。

ボリス・ジョンソン首相やチャールズ皇太子が同じように玄関で拍手するのを観るとき、私は思う。「もちろん、われわれは違うことを願って拍手しているのだ。」 あなたたちは国民の団結を呼びかけるが、それを強制することはできない。パンデミックに対処する政府の能力は、国民の信頼を大幅に損なうものだった。

それは現代の社会運動の典型だ。人気はあっても、問題を解決するには至らない、不十分な振る舞いである。インターネットで呼びかけられ、ソーシャルメディアで広まった。指導者も、本部も、組織もない。人びとが広く感じている雰囲気。点火を持っている無色のガス。意味を求めるネット上の行為。

#BlackLivesMatterや、#MeTooもそうだ。その始まりを示す事件と、広がる時期や関心は違う。こうした運動には、会合も組織も存在しない。急速に反応するが、急速に消滅する。われわれが何を信じているとしても、クリック、送信、リツイート、いいね、という行為は、デモ行進やピケ、座り込みとは異なる。

しかし、人びとはかつてない規模とスピードで集合する。厳密な目標はないまま、意識を高めるが、要求はしない。それが成功したかどうか、明確に測ることもできない。#MeToo運動が、その1年後に、アメリカ下院で記録的な女性議員の当選につながった、という因果関係は主張できない。

ウォール街占拠運動Occupy Wall Streetもそうだ。それが金融制度改革をもたらしたわけではない。しかし、オバマ政権の報道官は、それがオバマの再選に重要な影響を与えた、と述べた。不平等の拡大や不公正に関して、オープンに議論してこなかったような問題を、人びとは議論できるようになった、と。

だから私は、次の木曜日も、考えすぎないようにしよう。玄関から出て、あいまいな希望のために雑音を立てるのだ。その延長に、何か改革が起きるのではないか、と願って。

FP MAY 5, 2020

Can Cities Fix a Post-Pandemic World Order?

BY NINA HACHIGIAN, ANTHONY F. PIPA

NYT May 6, 2020

A Former Farmworker on American Hypocrisy

By Alfredo Corchado


 第2次世界大戦

PS May 1, 2020

How Will the Great Cessation End?

TODD G. BUCHHOLZ

2次世界大戦後のアメリカ経済復活に有効であった経済政策を、COVID-19の経済不況から抜け出すためにも使うべきだ。規制緩和、減税、柔軟なビジネス環境。

FP MAY 7, 2020

We Remember World War II Wrong

BY ADAM TOOZE

2次世界大戦では、ドイツ・第3帝国による3つの戦争が同時に進行していた。英米とソ連がベルリンを挟撃したのは、その1つでしかない。3つの戦争が、現代世界の秩序を形成した。

1に、大規模な地上軍の衝突と、戦術的な空軍が補完した戦争。第2に、大規模な植民地化を進める戦争。第3に、空軍による衝突と海上封鎖をともなう現代の戦争。


 北朝鮮

FP MAY 1, 2020

What Would North Korea’s Collapse Mean for U.S. Security?

BY EMMA ASHFORD, MATTHEW KROENIG


 COVID-19EU・ドイツ

FT May 3, 2020

Don’t blame German judges if they say No to ECB asset purchases

Wolfgang Münchau

FT May 4, 2020

The ECB can ease Italian debt worries without risking inflation

Carlo Cottarelli

VOX 04 May 2020

The case for a new Marshall Plan

Alexia Delfino, Raffaella Sadun

NYT May 4, 2020

How Italy Coped, and Will Keep Coping

By Beppe Severgnini

イタリアで、アジアの外で最初の、コロナウイルスによるパンデミックが大規模に起きた。最初にロックダウンし、国全体が交通遮断して防疫体制を採用した。53日において、COVID-19による死者が29000人。

月曜日、イタリアは経済を再開し始めた。しかし、注意深く。屋外の活動を制限し、親せきやパートナー、恋人に会えるようになった。工場や建設会社が再開し、その後、商店が再開される。もし感染率が低いままであれば、バー、レストランも再開する。学校、スタジアム、劇場、教会は閉鎖されたままだ。

コロナウイルスが襲った国は、同じパターンを繰り返した。過小評価し、不安、ショック、そして、ロックダウンを実施した。スマホで冗談を交わし、音楽、国歌を流す。2週間たって、われわれは現実を受け入れた。これは長距離走だ。今、走り始めた。

われわれはロックダウンを緩和した。注意深く、不安を抱えて。イタリアはウイルスに適応した、といえる。医療システムは、153人の医師と50人の看護師を亡くしたが、衝撃に耐えた。6000万院が自宅にとどまり、おおむね、ルールを守った。規律がないというので有名なイタリア人が、驚異的に。

いや、それは驚くことではない。イタリア人は、まず疑問を示すことなしに、規制に従わない。われわれにふさわしい規制やルールは、自分で決める。それを決めたら、われわれは尊重する。

われわれが適用できたのは、他の資源があったからだ。リアリズム、発明精神、拡大家族、連帯、記憶。家族と個人的関係性は危機において重要だった。バルコニーで食前酒を飲み、隣人と乾杯する。多くの人が、特に一人暮らしの者は、それが生活を温和にした。

イタリアはEU加盟孤高で最も80歳以上の人口比率が高い。

イタリアには、今までのところ、放火も、反乱も、暴動もない。もちろん、武装した反政府行動はない。われわれはロックダウンが必要だと決めた。それは2か月間に及んだ。ルールは尊重され、イタリア人は祝福されるに値する。

ローマ政府は、EUからの資金援助が届くにつれて、旧体制よりも効率的な、新しいイタリアを再建するべきだろう。政府の経験がないコンテGiuseppe Conte首相は、70%の高い支持を得ている。この信頼と好意を無駄にしてはならない。イタリア人は、その忍耐、再生、多くの人を驚かせた、勤勉さを示した。

情熱がイタリア人の動力である。この国を良い方向に変えるだろう。

FT May 5, 2020

German court has set a bomb under the EU legal order

Martin Sandbu

The Guardian, Wed 6 May 2020

A better world can emerge after coronavirus. Or a much worse one

Timothy Garton Ash

コロナウイルス危機はラディカルな変化を求める力になる。ヨーロッパの市民の71%が。ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入を支持する、というのは驚きだ。逆に、若者の53%が、気候変動を扱うのに、民主主義より、権威主義的国家を優れていると考える。今や、パンデミックに対してアメリカと中国のどちらが優れているのか、とヨーロッパ市民は考えている。

パンデミックが過ぎても、われわれは医療サービス従事者やエッセンシャル・ワーカーズに対する肖サンだけでなく、所得や敬意を、社会的に再分配するべきだろう。そのような再分配を通じて、ナショナリストやポピュリストが力を得るのを予防できる。

ヨーロッパの2030年は、最良のものにもなるが、最悪のものかもしれない。ベルリンの壁崩壊が多くの者の最高の瞬間で、ブレグジットは最悪の瞬間だった。

FT May 6, 2020

A misguided court judgment in Germany

PS May 6, 2020

Germany’s Judges Declare War on the ECB

WILLEM H. BUITER

ドイツの憲法裁判所は、公式に、CJEUEU司法裁判所)の司法権原に疑問を示した。

もしドイツが、突然、PSPP(公的部門購入プログラム)を「やめろ」と言うなら、1つもしくはそれ以上の国がユーロ圏を離脱することになるだろう。

さらに悪いことには、ドイツの裁判所がPSPPと公的債権の関係に支配的影響を与えることだ。

確かに、ECBの量的緩和や質的緩和は資産の利回りや価格に影響する。それは室物経済の活動や、国内と外国の居住者の経済的福祉に影響する。こうしたことはECB、欧州議会、欧州理事会の考えるべきことだ。ドイツの裁判所が決めることではない。


 アルゼンチン

FT May 3, 2020

Martín Guzmán: Argentina cannot afford to pay creditors more

Martín GuzmánArgentina’s Minister of Economy

パンデミックの前でも、アルゼンチン人は不況、失業、インフレーション、貧困の深刻さに苦しんでいた。今、COVID-19が輸出と財政収入を破壊した。完全な経済崩壊の間際にある。あらゆるところで、ウイルス対策や、失業者の最低生活保障が行われている。

こうした状況で、われわれは国際債権団と650億ドルの公的債務について交渉している。アルゼンチンの歴史には、8回のデフォルト、2度のハイパーインフレーション、60年間で繰り返し起きた国際収支危機と20IMF経済プログラムがある。

その歴史に立って、われわれは債務の組み換えを提案する。長期的に持続可能な経済にするため、誠意をもって、債務を組み換えるのだ。そうすることで、アルゼンチンは債権者への約束を守ることができる。過去のパターンを繰り返すことは債権者の利益にならない。

私が明確にしたことは、われわれはこれ以上支払えない、ということだ。

FT May 5, 2020

Debt relief alone will not save Argentina

PS May 6, 2020

Restructuring Argentina’s Private Debt is Essential

JOSEPH E. STIGLITZ, EDMUND S. PHELPS, CARMEN M. REINHART

パンデミックが近代における最悪の世界不況を人類にもたらしつつある。財政におよぶ債務負担は莫大で、特に、発展途上諸国はすでに債務が累積している。

世界銀行、IMF、国連は、公的債務を軽減するさまざまな行動を求めている。この瞬間に、グローバルな金融アーキテクチャーは試されている。「持続可能性」という言葉がどこにでも見られるが、その最も深刻なケースが発展途上諸国の政府債務である。

アルゼンチンは、公的債務の再交渉を、先陣を切って始めようとしている。建設的に、誠意をもって、国内のすべての政治部門から支持されている。すでにコロナウイルス危機の前に、IMFはアルゼンチン債務を「持続不可能」とみなした。政府の提案する再交渉条件は、IMFの分析に従っている。

国際金融界は、政府債務危機を秩序ある、効率的な、持続可能な仕方で処理することを示す機会である。われわれは持続可能な合意が両者の利益になると確信する。

責任ある解決は、アルゼンチンだけでなく、国際金融システムにとって積極的な先例となるだろう。

PS May 7, 2020

Argentina and How to Avoid Global Financial Catastrophe

JEFFREY D. SACHS

1つの破綻から金融システムはパニックになる。2020年、パンデミック危機に向かい世界金融システムで、アルゼンチンがそうだ。

1907年、ジョン・ピアモント・モルガンと彼の銀行が金融システムを危機の淵から救った。2020年、アルゼンチンの主要債権者であるBlackRockが、その役割を果たすべきだ。


 産業構造

FT May 3, 2020

Pandemic crisis offers glimpse into oil industry’s future 

David Sheppard in London

FT May 4, 2020

Dysfunctional oil market needs a new model

John Padilla


 米中欧の脆弱なガバナンス

FT May 4, 2020

The US and China’s dangerous blame game will do no good

Gideon Rachman

FP MAY 5, 2020

The United States Forgot Its Strategy for Winning Cold Wars

BY STEPHEN M. WALT

アメリカは冷戦初期にオフショア・バランシングを捨てたのか? しかし、このGadyの理解は間違っている。冷戦期の封じ込め戦略をオフショア・バランシングと対立する考えと誤解している。それは間違いだ。封じ込めは明らかにオフショア・バランシングの応用である。

オフショア・バランシングは、重要な地域で、敵対する大国が現れるのを地域内の勢力均衡によって抑える考え方だ。もしそれができないときは、イギリスが、そして後には、アメリカが軍事介入した。

それはリアリストの性慮億均衡を、アメリカの安全保障にあてはめたものだ。しかし、今、ヨーロッパや中東では、オフショア・バランシングが維持できるとしても、アジアには中国が現れた。アジアの主要諸国は協力して中国を抑えることがむつかしい。そこで、アメリカはヨーロッパや中東から銀磁力を引き上げ、アジアに積極的に展開するのである。

アメリカは長期の戦略を論争しなければならない時期になった。

FP MAY 5, 2020

China Has a Playbook for Managing Coronavirus Chaos

BY DIANA FU

PS May 6, 2020

The Threat of Enfeebled Great Powers

ARVIND SUBRAMANIAN

COVID-19の危機は3つの分水嶺を示すだろう。ヨーロッパ統合のプロジェクトが終わる。統合した、機能するアメリカという国が終わる。そして、中国の国家と市民との間にある暗黙の社会契約が終わる。その結果、これら3つの大国はパンデミック後に内部から弱体化し、グローバルな指導力を示せなくなるだろう。

まず、ヨーロッパだ。2010-212年のユーロ危機と同様に、今も、イタリアを通る地殻の亀裂として走っている。何十年もダイナミズムを失い、財政的に脆くなったが、イタリアは大きすぎて、ヨーロッパが救済することも、崩壊させるまま放置することもできない。パンデミックにおいて、イタリア人は生死の危機にありながら、ヨーロッパの仲間に見捨てられた、と感じた。それはポピュリスト政治家たちに肥沃な土壌を与えている。

パンデミックに傷ついた諸国に対して、EUは官僚主義的な、恐ろしいことに目をふさぐエリートの失策から、ECB, ESM, OMT, MFF, and PEPPと、アルファベットのスープでごまかした。大陸の指導者たちは動揺し、決断できなかった。たとえ限定的な前進を示すときでも、ドイツはその保守的な本能から、例えば最近も憲法裁判所がECBの行動を否定したように、ヨーロッパ統合の生命力を回復することはできなかった。

いかなる政治統合も、永久に下層にとどまる諸国が、近隣諸国の繁栄を分かち合えず、危機において困窮するときにも自分だけで何とかしろ、というような話では、生き延びることなどあり得ない。

アメリカ衰退論は、あまりにも多く予告されたために、信じる者がいない。しかし、COVID-19の危機前にも、重要な諸制度は侵食されていた。自分を抑えることのできないドナルド・トランプ大統領、選挙区の党派的な書き換え、最高裁判所の政治利用、連邦制の解体、規制当局の私物化。その中で、アメリカ連銀だけが例外である。

アメリカ人の多くは衰退論を信じない。アメリカには非国家の諸制度の深い網の目がある。そこから生じる強さが、アメリカの優位を再生する、と信じている。しかし、世界で最も豊かな国が、パンデミックに対して最悪の結果を示している。アメリカの信用やグローバル・リーダーシップは、帝国の過剰拡大(イラク戦争)、経済システムのいかさま(世界金融危機)、政治に機能不全(トランプ大統領)、そして現在、COVID-19に対する無能さが、立て続けに起きたことで、一気に破壊された

これらの病理の多くは、深く、毒を放つ、アメリカ社会の分極化から生じている。トランプは、今や、支持者たちを反乱に駆り立てている。11月には、自由かつ公平な選挙という民主的な基準でさえも翻すかもしれない。

最後に、中国だ。ケ小平の時代以来、中国の繁栄はシンプルな暗黙の合意に基づいてきた。市民たちは政治を語らず、自由やその諸価値を奪われ、共産党が支配する国家の命じることに従うが、同時に、繁栄を享受する。しかし、COVID-19の危機は2つの意味でこれを損なった。

1に、中国当局がパンデミックを処理する初期の恐るべき間違いが、特に武漢で、真実を弾圧した破滅的な振る舞いが、体制の正統性と能力に関する疑義を生じた。国家が市民の基本的な福祉、生命そのものを保障できないとしたら、この社会契約には意味がない。COVID-19の犠牲者は、明らかに当局が認めた以上であろうが、この点を明らかにした。そして、台湾や香港のような、より自由な社会が、パンデミックに対する優れた反応を示した。

2に、パンデミックが貿易、投資、金融を縮小させる外的要因になる。グローバリゼーションの逆転は、他国が中国に頼る程度を減らすだろう。中国の貿易機会は縮小する。より多くの中国企業が、安全保障だけでなく、さまざまな意味で投資を阻まれる。一帯一路イニシアチブが、パンデミックによって損なわれる貧しい諸国で債務のデフォルトを生むリスクとなる。

それゆえCOVID-19の危機は、中国の成長を長期的に引き下げる。外には見えなくても、内部の不満が広がるだろう。習近平主席はすでに、無慈悲かつ効果的な弾圧を、一層高い水準に引き上げているから、反乱は起きそうにない。しかし、現在の社会契約は、市民たちにとってますます悪魔的なものとなる。

弱く、分裂した社会は、どれほど豊かであっても、戦略的な影響を及ぼすことはできず、国際的な指導力を発揮できない。

われわれは、米中のG2が指導力の欠如からマイナスをもたらす世界に生きている。貿易戦争から国際機関の侵食まで、両国は、安定性や解放された市場、金融のようなグローバル公共財goodsではなく、グローバルな公共「悪bads」を供給している。

ヨーロッパ、アメリカ、中国におけるコロナウイルス危機は、地政学的な悪夢をもたらす条件になる。

PS May 6, 2020

Who’s Afraid of COVID-19?

KAUSHIK BASU

FT May 7, 2020

China’s Covid-19 QR code surveillance state

Don Weinland

PS May 7, 2020

An Abysmal Failure of Leadership

JOSEPH S. NYE, JR.


 債務累積の管理

FT May 4, 2020

Why the courts are standing between me and a decent haircut

Patti Waldmeir

FT May 5, 2020

Who pays the bill? The coming deluge of pandemic litigation

Alex Barker, Kate Beioley and Jane Croft in London

パンデミックによる訴訟の増加にどう対処するのか?

PS May 5, 2020

Planning for an American Bankruptcy Epidemic

BEN IVERSON, MARK ROE

PS May 5, 2020

The Day After Tomorrow

HAROLD JAMES

論争の核心は、危機によって急増する経済的、財政的コストをどのように分担するか、ということだ。その歴史的な類似ケースは、20世紀の戦間期である。

COVID-19危機と同様に、第1次世界大戦WW1も、人びとが最初に予想していたよりも、はるかに長引いた。経済ショックは、当初、大幅に過小評価されたのだ。

交戦国のどこも、大規模な軍事動員を課税のみで実行しなかった。戦争の費用は対部分を借り入れで、しかも結果的には中央銀行による貨幣化で賄われた。非常事態に対しては、それが必要であり、適当な方法である。

それが財政に与えた影響はおおむね類似していた。戦争の最後の年に、赤字に占める戦費の割合は、イタリア、USUK70%、フランスは80%、ドイツは90%以上であった。物価の上昇も各国が2倍程度と、ロシアを除いて、似た水準であった。

大きな違いは戦後に生じた。UKUSは、戦時債務の巨大な支払い負担に直面して、できるだけ速やかに正常状態へ復帰しようとした。それは大幅増税(しかも、富裕層へのかつてない高い税率)による財政均衡、近代における最初の意図された緊縮策であった。それは需要を削減し、短期の激しい不況を生じた。

対照的に、戦争に負けたドイツや、他の中欧諸国は、深刻なデフレを恐れた。人口は減少し、人心の荒廃と敗戦による絶望が広まっていたため、政府は新規に課税しなかった。むしろ中央銀行の融資による、福祉や公的雇用を支出し続けて、平和と秩序を維持した。

英米と異なり、ドイツ政府は戦争の非常事態が続いている、と考えた。政策論争は、戦時と同じような激しいレトリックで支出を正当化した。もちろん、ドイツはその結果、ハイパーインフレーションと、その後のはるかに深刻な社会崩壊を経験する。

現在、政策担当者たちは同じ状況にある。非常事態を延長し、コストの分担は考えていない。さらに、2008年の世界金融危機が先例となっている。危機への迅速は対応は必要だが、脆弱性と不安定さは危機後もしばらく続く。新しい金融危機を招くと恐れて、どの国も債務の削減をやる意志も能力もなかった。

この一時的な救済策は、新しい福祉国家の導入なのか? ある種の最低生活保障やベーシック・インカムを受け入れたのか?

1920年代も、ラディカルな社会政策の実験を行った時代であった。その教訓は、非常時の手段だけでは財源がない、ということだ。それを維持するためには、正しく価格を支払い、増税(ときには、債務削減)しなければならない。

ロックダウンが終わるとき、率直に、かつ、オープンに、将来のコストを分担することについて議論するべきだ。厳しい問題を避けることは、破滅への道を開くものだ。

FT May 6, 2020

How to escape the trap of excessive debt

Martin Wolf

債務は弱さにつながる。問題は、どうやって罠を逃れるかだ。

それに答えるには、われわれが債務に依存した世界経済に至った理由を分析することだ。それは中央銀行家の思い付きで起きたのではない。投資機会に比べて、過剰な貯蓄がなされたからだ。それは実質金利を低下させ、債務への過度の需要をもたらした。債務超過は需要を弱め、金利を下げ、悪循環となる。

ある点を超えると、不平等は経済を弱めて、政策を破滅的な選択にする。高失業か、あるいは、債務の累積か。第1に、アメリカの不平等は、所得の最上位1%に巨大な貯蓄をもたらした。それは投資の増加によって対応するどころか、実質金利が低下しても、投資率が低下したのだ。富裕層の過剰貯蓄は、所得階層の会90%による貯蓄の取り崩し、所得を超える消費と同時に進行した。

19世紀後半のイギリスでは、富裕層の貯蓄が経常収支の黒字(海外投資)につながった。しかし、その他の世界の富裕層がアメリカの資産を蓄積したため、アメリカは経常収支の赤字を続けた。金融危機の前に、住宅バブルや政府支出が増えて、内外の貯蓄を投資したが、それは例外だ。

富裕層の貯蓄と富裕層以外の貯蓄減少、資産と債務の蓄積は、明らかに連動している。しかも、アメリカに限らない、世界中で起きている。

債務が増大すると、経済はますます金融に依存し、脆弱になる。「債務による需要」、あるいは、リチャード・クーの言う「バランス・シート不況」が問題になる。債務が増えると、ますます人は借り入れを増やすことを嫌うから、金利が下がる。需要と供給を均衡させる、不況を回避するための金利は、ますます低下する。COVID-19の前に、実質金利はゼロ近辺になり、ローレンス・サマーズは「長期停滞」とよんだ。

債務の罠から、どうやって脱け出せるのか?

1に、株式より債務を好むような動機をすべて取り除くべきだ。税制がそうだ。しかも、COVID-19の危機の中、政府が一種の公的投資信託となって、超低金利で集めた資金を企業に投資できる。

政府が債務を引き継いで膨張するなら、最終的には、デフォルトになるだろう。その多くは富裕層が保有するものだ。あるいは、そうではなく、実質的な需要、実質的な投資をもたらすように所得分配を変える。

消費者と政府の債務を累積することも、住宅バブルを繰り返すことも、われわれの経済が成長する道ではない。

FT May 6, 2020

Companies are dangerously drunk on debt

Robert Armstrong

FT May 7, 2020

Rebuilding better after Covid-19, part 2

Martin Sandbu

M. Wolfは、不平等と拡大と債務依存の増大を問題にした。私は違う点で、懸念している。1980年代から金融自由化が急激に進んだことだ。それは融資と債務を増やし、資産価格の上昇、人びとが債務に頼って住宅を所有することになった。

COVID-19の危機を経て、世界経済はもっと株式に依存した成長に代わるだろう。


 COVID-19と金融政策

PS May 4, 2020

The Problem With MMT

WILLEM H. BUITER

MMTは、財政赤字を気にすることなく、政府が支援策を拡大することを主張する。政府の支出を担う財務省と、貨幣を発行する中央銀行とを区別しない。

それは、今は正しいが、将来も、正しいとは言えない。MMTには、貨幣の需要に関する理論が欠けている。

金利がゼロ近辺である現状では、「ヘリコプター・マネー」(財政赤字の貨幣化)が可能である。しかし、外出禁止が解け、生産が再開されれば、民間部門が需要する実質的な貨幣ベースを超えて、MMTが考えるような、貨幣を供給することはできない。貨幣需要は、経済活動と金利によって変化する。

財政赤字の貨幣化を続ければ、金利が上昇するか、インフレーションが起きる。

PS May 4, 2020

The Case for Deeply Negative Interest Rates

KENNETH ROGOFF

実質マイナス金利を大幅に進め、同時に、現金保有を禁止することで、金融政策は機能する。

短期の流動性だけが問題で、COVID-19の危機から急速に回復するのであれば、債務をすべて政府が保証するのは良い方法だろう。

しかし、もし急速に回復しなかったらどうなるのか? 回復に数年かかるとしたら、すべての企業が生き残れるとは限らない。大規模に富が破壊されるだろう。債権者が負担の一部を引き受けるが、そのためには何年も交渉と訴訟が続く。

むしろ、こう考えてはどうか。連銀が保証するだけでなく、短期金利をゼロかマイナスにする。たとえば、マイナス3%とか、もっと下げる。

マイナス金利は、多くの企業や国家、都市をデフォルトから救い出す。もしマイナス金利が正常な金融政策として機能するなら、通常の金融政策と同様、総需要を増やし、雇用を生むだろう。それゆえ債務組み換えの外科手術をする前に、金融政策で刺激する方がよいだろう。

インフレと実質金利が、墓場からよみがえって、上昇するときまで、唯一、実行マイナス金利を大幅に下げることが仕事をこなす。

PS May 5, 2020

It’s Time to Target Nominal GDP

JIM O'NEILL

VOX 05 May 2020

Central bankers should not be forward-looking in times of crisis

Paul De Grauwe, Yuemei Ji

極端に不確実な時期には、中央銀行は慎重に、信頼できない予測ではなく、観察した事実によって金融政策を決めるべきだ。


 グローバリゼーション

PS May 5, 2020

The Misguided War on Global Value Chains

CÉLESTIN MONGA

FT May 6, 2020

The World Health Organization can be reformed

Jennifer Prah Ruger

YaleGlobal, Thursday, May 7, 2020

Don’t Blame Supply Chains

Stephen Roach

FT May 7, 2020

My pity package of Chinese face masks sends a bigger message

Gillian Tett


 ソ連

PS May 5, 2020

The Victor Who Lost the USSR

ANDREI KOLESNIKOV


 貧困問題

The Guardian, Wed 6 May 2020

Esther Duflo and Abhijit Banerjee won the 2019 Nobel prize in economics for their work on poverty alleviation

Esther Duflo and Abhijit Banerjee


 リフレとスタグフレーション

FT May 6, 2020

A return to 1970s stagflation is only a broken supply chain away

Stephen Roach

中央銀行はインフレ期待が安定しているという。1970年代のスタグフレーションの恐怖映画を、逆回しで観ている。原油価格が暴落し、他の国際商品価格も下落しており、失業者が増大して、いかなる賃金上昇も起こらない。消費は、ソーシャル・ディスタンシングで伸びない。

しかし、消費者が我慢しているのはCOVID-19の不安があるからだ。延期された需要の圧力はかつてない規模である。さらに、グローバル・サプライチェーンの混乱が追加される。グローバル・サプライチェーンはディスインフレーションの重要な要因であったからだ。リカード以来の比較優位を無視して、生産拠点を自国に回帰させる政策が取られている。

しかも、債務の累積、財政赤字は、インフレの再現、金利上昇によって、アメリカ経済の成長が損なわれるだろう。アメリカが、第2次世界大戦後の膨大な債務を削減したのはリフレ政策を採ったからだ。成長減速による債務負担の解決策として、インフレを促す政策への誘惑は強くなる。

そのとき、株価や債券市場では暴落が起きるだろう。


 COVID-19と炭素税

PS May 6, 2020

The Carbon-Tax Opportunity

KEMAL DERVIŞ, SEBASTIÁN STRAUSS

COVID-19が経済・社会活動を停めて、2酸化炭素排出量が急速に減少した。大都市の空は、何十年ぶりかに晴れ渡っている。

しかし、「脱成長」が環境破壊を防ぐ持続可能な戦略にはならない。人類は経済活動をやめることで環境を保護するのではなく、それを回復力のある、頑健な、持続可能なものに変えることで、環境を守るべきである。

態様や風力による発電に代表されるグリーン・テクノロジーのコストが急速に低下してきたことは良いニュースである。しかし、その市場競争力は、パンデミックで需要の減った化石燃料の価格が暴落したことで失われるだろう。

それをプラスに変えることもできる。原油価格の下落は炭素税を増やすことで環境政策を加速するチャンスであるからだ。この機会を逃してはならない。

FT May 7, 2020

Can we tackle both climate change and Covid-19 recovery?

Christiana Figueres and Benjamin Zycher

COVID-19危機からの回復では、低炭素社会への転換を促すべきか?

Yes (Christiana Figueres) 気候変動を転換する行動は十分に取られていない。この10年が重要であり、このままではCOVID-19の危機を超える被害が生じる。温暖化ガス排出量を半減するべきだ。COVID-19からの回復に際して、世界経済を持続可能な成長に転換できる。

政府は、再生可能エネルギーやインフラ整備、効率改善を支援するべきだ。

No (Benjamin Zycher) 環境対策にはコストがかかる。それは成長と雇用を損なうものだ。この事実を無視して、既存のエネルギーにイデオロギー的な反対を強めるのは間違いだ。「再生可能エネルギー」へのシフトや「グリーン」産業における投資や雇用を主張するが、非伝統的なエネルギーはコストが劣り、それを補助金や市場シェアの保証で逆転している。震災と同じように、旧産業を破壊することが経済的価値をもたらすことはない。

成長を支持する者も地球を愛している。環境を保護する者は人類や地球を嫌っている。

PS May 7, 2020

Put a Price on Carbon Now!

PETER SINGER, KIAN MINTZ-WOO


 食糧安全保障

PS May 7, 2020

Building Food Security During the Pandemic

TONY BLAIR, AGNES KALIBATA


 プーチンのロシア

FP MAY 7, 2020

How Putin Changed Russia Forever

BY YEVGENIA ALBATS, CATHERINE BELTON, IRINA BOROGAN, SUSAN GLASSER, VLADIMIR KARA-MURZA, ANDREA KENDALL-TAYLOR, VLADIMIR MILOV, MICHAEL MCFAUL, OLGA OLIKER, ANDREI SOLDATOV, ANGELA STENT

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The Economist April 25th 2020

A pandemic of power grabs

Public finances: After the disease, the debt

Migrants and the virus: Essential workers

Cov-19 and public finances: Undercut

India on lockdown: Impossible sums

Argentina: The Peronist and the pandemic

Hedge fund: Back in the game

Buttonwood: Hard money

Free exchange: Tough love

(コメント) パンデミックと強権指導者の独裁化。民主的諸国における公的債務の急増。それらは予想された話です。しかし、シンガポールやクウェート、あるいは、ニューヨークやロンドンで働く移民労働者たちが、パンデミックで住居の改善、公衆衛生、社会的な地位の改善を達成するとしたら、危機の遺産として社会を変える条件になるでしょう。

インドのロックダウン、アルゼンチンの債務組み換え交渉、あるいは、ユーロ圏がそうです。パンデミックに際して、積極的に政府が融資・補償を与えることを支持する「モラル・ハザード」の記事を読んで思いました。これは「人類愛」の問題なのです。宗教が利殖を嫌ったように、愛と営利は対立します。それは、愛が「経済構造の調整」を無視しているからです。

この2つを両立させることは可能だ、と思いませんか。

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IPEの想像力 5/11/20

The Economistを読みながら思いました。「愛と営利は両立するか?」

経済活動が盛んになった中世ヨーロッパの都市で、あるいは、シルクロードのイスラム圏で、利殖が宗教指導者たちによって禁止されたのは当然です。

にわかに職を失うこと、家族を養えないこと、お金のために子供を売り、債務に苦しんで自殺し、あるいは、金貸しを殺害する話に、宗教は信仰の反対物を観るでしょう。

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インドのロックダウンは、多くの移民労働者から職を奪った。彼らはYamuna riverの橋の下で暮らしている。悲惨な光景だが、川はいつもよりはるかにきれいだ。乾季の川は汚水で墨を流したような状態だが、今は奇跡的な清流となっている。流域の工場が閉鎖され、水中の酸素が増えて、生命がよみがえったからだ。

コロナウイルスによる死者は700人に近づき、もっと増えるだろう(3000人を超えた)。しかし、大気汚染は、毎年、インドで少なくとも120万人の命を奪う。ロックダウンで犯罪は急減し、デリーで報告されたレイプ件数は83%減少した。

アルゼンチンの新大統領Alberto Fernandezは、2つの危機に対処しなければならない。1つは、前政権が残した経済危機。もう1つは、コロナウイルス危機である。記事は、2つの危機に対処したFernandezを称賛する。財政を安定化するため、就任直後に増税し、賃金と年金を凍結した。パンデミックを抑えるために、312日に国境を封鎖し、ビジネスと交通を遮断した。支持率は81%に高まっている。

しかし、この先はわからない。失業者が増えてくる。パンデミックを抑えるにも財源がないため、中央銀行の融資に頼っている。対外債務返済を繰り延べ、条件を再交渉するよう、政府は債権者に求めている。インフレ率はすでに50%を超えている。もしこのまま9度目のデフォルトになれば、アルゼンチンはパンデミックに襲われ、社会秩序も含めて崩壊するだろう。

ユーロ圏のコロナウイルス対策では、ユーロ圏やECBが生き残ると予想する。パンデミックを恐れる人びとが現金を余分に保有するとき、発行番号から、ドイツで印刷されたユーロ紙幣(Xで始まる)を選んで残し、ギリシャ(Y)やイタリア(S)の紙幣を残さない、という話を紹介する。それは何の意味もない。すべてのユーロ紙幣はECBの管理する同じ貨幣である。

通貨圏として生き残るためには、財政を統合する必要がある、と言われる。しかし、政府債務の少ないドイツなどは、債務の多いイタリアなどを信用しない。税制や政府支出を統一してから通貨も統一する歴史を無視して、ヨーロッパは通貨同盟を先行させた。共通の財政が存在すれば、地域に偏った危機にも、自動的に、危機の及ばない地域から財源が再分配される。ユーロ圏にはそれがない。

しかしECBがあるから、事実上、政府債券は共同保証されている。コロナウイルス危機で発生したコストは、当面、公的に融資される。しかし債務は積み上がり、いつかその分担を合意しなければならない。それはユーロ圏に限らない。納税者(増税)、消費者(インフレ)、債券保有者(削減や低利回り)、そして、ユーロ圏では加盟諸国間で、分担が政治論争になる。

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一気に共通の危機を経験することは、人間本性の中から、愛を覚醒するのかもしれません。

愛と営利は異なるものですが、この2つが共存し、共鳴できる仕組みや空間もあるでしょう。あってほしいと思います。新技術のもたらす社会的革新や産業構造の転換は、金融都市や経済特区を超えて、文明の深いところでつながっているのです。

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