IPEの果樹園2012

今週のReview

9/3-8

 

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東アジアの紛争激化・・・ ロボット労働の拡大・・・ 中国は経済危機を回避できるか?

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  震災後のハイチ

NYT August 23, 2012

Haiti’s Unnatural Disaster


l  東アジアの紛争激化

NYT August 23, 2012

Why China Resents Japan, and Us

By PETER HAYS GRIES

「たとえ中国が墓で埋まっても,われわれは日本人をすべて殺さねばならない!」 ・・・これが中国のナショナリズムである.

815日に中国の運動家が尖閣諸島に上陸しようとして阻止され,それに刺激された日本の運動家は近くまで船で行って泳いで上陸を果たし,ますます中国のナショナリズムを刺激した.

中国共産党は反日を政治的イデオロギーとして利用してきた.毛沢東主義を称えるために,解放される前の中国が日本によっていかに苦しめられていたかを強調するようになった.多くの中国人にとって日本人は「鬼」である.それは歴史上の事件,たとえば南京虐殺などを繰り返して宣伝することで意識に浸透している.反日の攻撃的な言動は,それ以外の形のナショナリズムと違って,政府が容認しやすい.

さらに,ナショナリズムは反米にも向かう.なぜなら,中国人はアメリカの第7艦隊がいなければ,台湾はもっと以前に再統合され,日本は外交姿勢をもっと抑えたはずだ,と考えているからだ.選挙のたびに,再選を目指す大統領を批判して,対立候補は対中外交を弱腰と批判し,中国非難を繰り返す.それは中国の懸念を実証しているように見える.

現在,アメリカも中国も指導部の交代時期にあり,こうしたナショナリズムを抑制するべきだとしても,それを放置した方が無難である,と判断しかねない.ナショナリズムの攻撃性と紛争のエスカレーションが起きるだろう.

Global Times | 2012-8-27

Diaoyu slowly drifting into crosshairs

YaleGlobal, 30 August 2012

East Asia’s Free for All

Frank Ching

Project Syndicate 31 August 2012

Islands of Nationalism

Wenran Jiang


l  ジョージ・オーウェル

guardian.co.uk, Friday 24 August 2012

Why George Orwell is as relevant today as ever

Geoffrey Wheatcroft


l  ドイツの人種差別

SPIEGEL ONLINE 08/24/2012

Twenty Years after Rostock

Racism and Xenophobia Still Prevalent in Germany

By Charles Hawley and Daryl Lindsey


l  デンマークの民主主義

SPIEGEL ONLINE 08/24/2012

Embracing the Wind

Denmark's Recipe for a Model Democracy

By Manfred Ertel and Gerald Traufetter


l  ユーロ危機

NYT August 24, 2012

In Euro Crisis, Plenty of Blame to Go Around

By JACK EWING

guardian.co.uk, Sunday 26 August 2012

The German people will decide Europe's fate

Hans Kundnani

FT August 30, 2012

How to protect EU taxpayers against bank failures

By WolfgangSchäuble

Project Syndicate 31 August 2012

Federalism or Bust for Europe?

Jean Pisani-Ferry


l  ロボット労働の拡大

NYT August 25, 2012

I Made the Robot Do It

By THOMAS L. FRIEDMAN

アメリカが将来も,世界で最も豊かな,強力な国であるためには,どうすれば良いか? アメリカには発明家と投資家が多くいるから,彼らがその答えを出してくれるだろう.

そこで,ボストン空港に近いRethink Roboticsを訪ねた.これまでのような,一つの動作しかできない,プログラムが難しい,硬い,危険なロボットではなく,もっといろいろな作業が,簡単なプログラムでできる,柔らかくて,一緒に居ても安全なロボットが開発されている.

世界中から優れた技術者が集まって,政策に参加している.大統領選挙では「アウトソーシング」が論争になっているが,ここでは「アウト」も「イン」もなく,良い仕事か,もっと良い仕事,最高の仕事しかない.パソコンやiPhoneで操作できる新しいロボットたちが,アメリカに多くの製造業をもたらすだろう.

ロボットが仕事を奪う,という不安は間違いだ.パソコンと同じように,ロボットは悪い仕事を減らし,良い仕事を増やし,もっと高度な技術や知識が必要なものにする.より少ない人数で,より多くの創造性を求められる.


l  共和党の副大統領候補はライアン

NYT August 25, 2012

Romney’s First 100 Days

By DAVID LEONHARDT

guardian.co.uk, Sunday 26 August 2012

US Republican convention: an ocean of difference

FT August 26, 2012

The elephant in the room: Romney the pragmatist

By Edward Luce

WP August 30

Mr. Ryan’s misleading speech

BLOOMBERG Aug 30, 2012

Paul Ryan's Winning, Worrying Speech

By Ramesh Ponnuru and Margaret Carlson - Aug 30, 2012

FT August 31, 2012

A shallow, treacly but devastating speech

By Christopher Caldwell

FT August 31, 2012

US politics: Mitt’s moment

By Richard McGregor


l  南アフリカのエリートと鉱山ストライキ

FT August 26, 2012

A wake up call for South Africa’s Armani elitists

By Jay Naidoo


l  サウジアラビアの衰退

FT August 26, 2012

Saudi Arabia: In a restless realm

By Abeer Allam


l  中国は経済危機を回避できるか?

FP AUGUST 29, 2012

Everything You Think You Know About China Is Wrong

BY MINXIN PEI

BLOOMBERG Aug 30, 2012

China’s Growing Economic Crisis

By William Pesek

FP AUGUST 30, 2012

The China Bubble

BY RICHARD D'AVENI

SPIEGEL ONLINE 08/31/2012

Putting the Plan into Action

How China's Leaders Steer a Massive Nation

By Sandra Schulz

「グッド・ガバナンス」に関する特集の第4回.中国です.ヨーロッパの諸国と同じ規模の人口が中国の各省には住んでいる.ヨーロッパ各国がユーロ危機や財政赤字に苦しむとき,中国はそれを回避している.非民主的な政府が,「グッド・ガバナンス」であることは可能なのか?

西部大開発を担う副大臣Ms. Li Yingmingは語る.数万キロの鉄道と高速道路を建設した.水力発電,空港,ガス・パイプライン,光ファイバー・ケーブル,も含む.それでも,西部の生活水準が東部と等しくなるまでには長い道のりだ.

「開発には有能な人材が移動する必要がある.」・・・「1万人以上の大学卒業生が西部に行って,英語などを教えた.」彼らはボランタリズムの精神を強く持ち,社会に貢献したいと願っている.

Ding Wenguangは,開発における農民の参加を重視する.北京政府が開発の二つのアプローチ,上から,と,下から,を結びつける試みに関心を示していることを知っていた.Dingが貧困を戦う方法は,投資ではなく,アイデアだった.山林を切り倒して土地の浸食を招く村人の行動を改めようとした.それではますます貧しくなるだけだから.

Dingは「好循環」をもたらした.村人は家畜を育て,そのために山に木を植える.家畜の糞はバイオ燃料になる.最も貧しい農民には家畜の子供を寄付によって与えた.今では農民たちも携帯電話やカラーテレビを持っている.

中国の文化や慣行が,「グッド・ガバナンス」の実現に役立っている.

Global Times | 2012-8-31

Choices facing a superpower – fight or befriend a new challenger


l  バーナンキと通貨供給

FT August 30, 2012

Come on Bernanke, fire up the helicopter engines

By SamuelBrittan

FT August 30, 2012

What to expect from Bernanke at Jackson Hole

Mohamed El-Erian

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The Economist August 18th 2012

Microbes maketh man

Brazil: A moment of truth for Dilma

ASEAN in crisis: Divided we stagger

(コメント) 宇宙の探検を進めたように,人類は,人間という生命体が様々な細菌などと形成している生命圏を探検する時代に入ったようです.この複合的な生命圏のおかげで,人間は健康を維持し,毒素や病気から守られ,栄養さえ与えられています.

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IPEの想像力 9/3/12

93日から10日にかけて,中国雲南省の元陽へ行ってきました.ナップサック一つだけで旅行するのは気楽です.関空から北京経由で昆明まで行き,その後,長距離バスで7時間余り.2日目の夕方,ようやく元陽・新街鎮に着きました.バスから降りた私に,蔡さんが話しかけてくれました.それは,とても大きな幸運であった,と思います.

雨や霧が多い,靄につつまれた早朝の元陽を歩くのが楽しみでした.元陽・南沙から,バスが急峻な山道を登ること1時間,一気に涼しくなった新街鎮に着きます.ここからさらに数時間バスに乗れば,ベトナムやラオスとの国境を超えます(メコン河流域開発協力が進んでいます).中国の急成長で沿岸部と内陸部との経済格差が問題になり,西部大開発を唱えた中国政府が雲南省をどのように変えようとしているのか.グローバリゼーションの焦点である中国の,内陸部が観たい,と思いました.

今は雨期だというので,大いに心配しましたが,幸い,私が棚田を歩いた2日間はほとんど雨も降らす,良い天気でした.蔡さんにトレッキングを案内してもらい,他の村までマーケットも見物に行きました.棚田の風景は,乾期の冬がいちばん美しいということです.今は,収穫前の稲が茂っています.

収穫する人々の様子が見られるかな,と思って行きました.見渡す限りの棚田を実感するのが楽しみでした.何百,何千・・・何万もの棚田の耕作や収穫を,どのように行うのか,不思議でした.

 

中国語会話のテキストやCDはありましたが,直前まで,論文を書けずに苦しんでいたので,なかなか集中して聴くこともなく,言葉がさっぱりわからないまま中国へ向かいました.ホテルや観光地でも,英語が全く通じないことに驚き,中国語を発音しても理解してもらえず,電子辞書や指さし中国語も役に立たないので,字句のメモを見せました.「私は大観楼に行きたい」といった具合です.

もちろん,それが通じたとしても,彼らが説明してくれる中国語がまた解りません.そこで,紙とペンを出して,とにかく書いてもらいました.「左折して1000メートル余り行くと交差点があって,その向かい側に建水文廟がある」というようなことが書いてある・・・らしい,と勝手に解釈するだけですが.それでも,親切な人が身振り手振りで教えてくれたので,何とかなりました.

中国で英語が全く通じないのは,漢字のみで表現するため,英語の音が失われるからでしょう.だからタクシーもバターも通じません.中国文明には,さまざまな試み(漢字の蓄積)があったので,すべて過去の言葉で表現できるのかもしれません.結局,私は朝食にバター(黄油)を出してもらえませんでした.

独自の言葉だけでなく,知識や文化の面で特に感銘を受けたのは,やはり儒教でした.建水文廟への道を歩いて行くと,目の見えない老いた父親の手を引く息子がいました.がっしりした体格の息子で,何か力仕事をしそうな印象です.そう言えば,父親の背も高かったと思います.彼らは何を話すということもなく,朝の道を建水文廟へ向かい,さらに,その大きな池の周囲を散歩していました.

孔子は神ではなく,思想家ですから,その業績を称える廟は宗教施設ではないのでしょう.さまざまな建築物には,それぞれ孔子の思想を表わす文字が掲げられ,その配置にも(おそらく)工夫がしてあると思いました.たとえば,この大きな池は伴池あるいは学海と呼ばれ,その説明の碑には以下のような字句が彫られていました(中国語と英語で).

「学海とは,孔子の思想と知識の高さ,深さ,博さは大海のようである,という意味を示す.」

早朝,一人の女子生徒がノートを持って,何かを一生懸命に暗記しながら,学海の周りを歩いているのは,まったくふさわしい光景です.

いわゆる「征服王朝」であった元の時代に建てられた,ということに私は興味を持ちます.あまりにも多くの漢民族を支配するために,軍事的な優位を持つ騎馬民族も,やはり,儒者の思想や官僚体制に頼るしかなく,その思想を通じて「正しい」支配者であることを受け入れたのか,と思いました.元や清が,こうした儒教の振興に国家的な事業の性格を加えたのは,正統性を実証したかったからでしょう(あるいは,外国に植民地化されつつあった明,そして江戸幕府).春秋期に,戦乱の世を放浪した一人の思想家が,ガバナンスの理想を説き,時代や国を超えて権力者の行動に重要な影響を与えた,ということに驚きます.

あるいは,これもまた少数民族への同化政策,エスニック・クレンジングなのでしょうか.M・マンの指摘した,多数派による民主的支配が帰着する少数派弾圧の矛盾を感じました.

 

私が元陽の棚田を訪問した関心とは,アイスランドにも共通する,「グローバリゼーションの極北」というイメージを具体化することです.

インターネットで検索すればわかるように,元陽の棚田はあまりにも美しく,大規模で,これを作った少数民族の歴史を想像したくなります.その調査はまだこれからですが,私が感じたのは,グローバリゼーションの過程で,この棚田も急速に消滅するのではないか,ということです.あるいは,今見なければ,数年後にはなくなっているような焦燥感が湧きました.

蔡さんと話しながら歩いて,その不安は少し解消されました.少なくとも,放棄された棚田は全く見かけませんでしたし,その水の供給は自然が与えたものであり,森林は守られていました.貧困から逃れるために,農民が都市に出稼ぎに出て労働者となってしまう,というのは事実ですが,かといって棚田が消滅するような形ではなく,基本的に,棚田のコメは家族で消費しているようです.都市部での仕事は追加の所得をもたらし,政府の行う大規模なインフラ整備とともに,農民たちはテレビや携帯電話を持つようになっていました.

まさに蔡さんがそうであるように,グローバリゼーションは内陸に住む少数民族をも刺激し,英語を学んで,外国人ツーリスト向けのガイドや情報提供を行い,民宿を経営する,才能ある人たちが登場しています.道路が整備され,長距離バスが定期的に着き,外国人も泊まるような世界標準のホテルが建ちました.蔡さんが大学入試のために勉強していた頃(5年か10年ほど前),まだ街に電気もなく,夜は勉強できなかった,と言います.

しかし他面で,こうした変化やチャンスを生かせない人が多くいるのも確かです.伝統的な農民の生活は貧しく,労働条件は厳しく,山を削って新しい舗装された道路ができるたびに,彼らの歩く山道は寸断され,自動車は家畜や子供を危険にさらしたでしょう.山の斜面から現れて道路に降りた農民たちが,籠を背負い,ブタや水牛などの家畜を連れて,道路をしばらく歩いた後,再びその先の山へ消えて行くのを見ました.

自動車で案内してもらっていたとき,道路沿いに民家のある場所で,一人の少年が振りかぶって,走る自動車に何かを激しく投げつけました.驚いた運転手が身をよじって避けたほど,少年の行動は激しいものでした.彼がなぜそれほど自動車を嫌っていたのか,その理由はわかりません.しかし,自動車やテレビが増えるとき,近代的な生活と社会不安の種が撒かれ,彼らを根本から変えてしまうのでしょう.

険しい山腹を削る道路の両側で,山は崩壊し始めているような懸念を持ちました.

 

帰国するとき,上海・浦東空港からの飛行機は,ほとんどが空席でした(機内食がとても美味しくて,うれしかったですが).搭乗の際にもらったChina Dailyで,中国と日本の報道の大きな違いを眺めていました.尖閣諸島の問題により,日中関係は急速に悪化していたのです.

旅行中,人種的な偏見による不快な思いをしたことはありません.しかし,中国語が話せないことに驚いて,「韓国人か?」と聞かれたことがあります.違うとわかると,「日本人か」と残念そうに(あるいは,少し嫌そうに)言われました.国営放送のニュースでは,日本政府が釣魚島を国有化したことに対して,その間違いを指摘する(詳しい内容はわかりませんが)解説が繰り返されていました.

大規模な抗議デモが主要都市に広がり,次には,日本製品の不買運動,漁船による大量の領海侵犯,島への上陸が試みられるのでしょうか? 日本の海上保安庁が彼らを実力で排除するなら,中国からも艦艇が派遣され,両国とも,国内政治不安とナショナリストの要求とが交渉や妥協を不可能にしてしまいます.

繰り返し指摘されているように,中国の政治権力は正統性の根拠を,共産主義と革命のイデオロギー,日本との戦争に勝利したこと,国民生活の物質的な改善,に求めています.しかし,共産主義は中国の現実に適合せず(あるいは,適合するからこそ支配する側には好まれず),生活の改善は大きな期待に応えることが難しい局面を迎えています.

天安門事件以後の,共産党支配に対する正統性の再確認は,成長と支配(あるいは安全保障)との「暗黙の取引」に大きく頼っていました.同じような合意は世界各地にあります.しかし,それ以上に,中国では「愛国教育」として,日本や外国勢力に対する防衛を国民に求め,攻撃的な宣伝を繰り返している,と聞きます.

明治維新後の日本においても起きた,征韓論や西南戦争が果たした革命期の侵略と内戦を,私たちはどこまで深く理解しているでしょうか? そして中国は,今もまだ,孫文らが指導したのと同じ,外国製品のボイコットや街頭デモという政治表現を手法として継承しているように見えます.しかし,考えてみるべきでしょう.軍事力や技術の圧倒的劣位にある植民地ではなく,独立した国家の指導者であるなら,国民の不満や対立を外交交渉や国内の制度改革によって解決する方が優れている,ということを.

日系の商店・レストランに対する略奪と破壊,日本企業の工場への放火,などが報道されています.こうした暴力行為を容認し,支持する政府の姿勢は,中国への外国投資を減らし,成長の減速をさらに悪化させて,社会不安とデモ激化の悪循環になるかもしれません.フォークランド紛争がサッチャー政権への国民の支持を固め,その後の経済改革を可能にした,と言われますが,尖閣諸島における軍事衝突が日本や中国の国内改革を促すとはとても思えません.

むしろ,アメリカにとってのスエズ危機になるかもしれません.台湾周辺での安全保障問題で,中国はアメリカを抑え,優位を示す機会を得るのです.

また,商店の破壊や略奪は,イギリスのフーリガンや近年の都市暴動に見られる現象と同じではないか,と思いました.イギリス社会が様々な不満や不安を抱えているように,それ以上の社会変動を経験する中国国民は政府の姿勢を問い正したいはずです.鬱屈した毎日と,繁華街や高層マンションと隣接する貧しい住民や出稼ぎ労働者たちは,若者たちの反日デモとも異質な怨嗟を抱えていると思います.

権力の正統性は,もちろん,侵略者を撃退したことからも得られるでしょう.しかし,実際は,権力者の容認姿勢を利用して,彼らは「反日」という自己主張を試み,秩序を破壊できる機会と考えているのかもしれません.情報化時代のデモと政府とは,暴動の呼びかけや鎮圧手法,監視・情報管理体制の実験を,双方が繰り返しています.

帰国する朝,私がホテルの前で空港バスを待っていると,乗客とともに同乗を誘いに来た若い運転手が,最後に25元を受け取って笑顔を見せたことを思い出します.空港バスも25元ですが,タクシーは4人乗せて,もっと早く着きました(約100元なのです).私は彼と利益を実現し,この若い企業家の共感を得たことを喜びました.

 

わずかな滞在期間中に,雲南省と貴州省との境界付近で,大きな地震がありました.私が訪れた元陽からは遠く,何の影響もなかったのですが,テレビ映像を観るとまったく同じような地形です.つい先ほどまで歩いていた険しい山間の村に巨大な岩石が落ちて来たら,と思うと,道路にうずくまる人々,学校のような建物で毛布にくるまる人々に,深い同情を覚えました.

ホテル近くのマーケットを歩いて,夕食を探しました.「公安」の自動車や,道路わきに椅子を出して座る数人の警官が,夜のマーケットを監視していました.スリや売春婦のいない通りを自由に歩きながら,私はこのとき「公安」の提供してくれる秩序に感謝しました.

私が理解することは,元陽の棚田を埋める稲穂の,一粒のモミにも満たないのでしょう.IPEは永久に,年齢を超えたバックパッカーです.

蔡さんにもらったDVDのお礼に,「風の谷のナウシカ」を贈りたいと思います.

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