IPEの果樹園2012

今週のReview

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アメリカ衰退と大統領選 ・・・日本衰退論 ・・・資本主義論争 ・・・グローバリゼーション再考 ・・・ミット・ロムニー ・・・メルケルと反対者たち ・・・グローバルな不遜さ ・・・帝国の誘い

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  アメリカ衰退と大統領選

NYT January 26, 2012

Jobs, Jobs and Cars

By PAUL KRUGMAN

オバマの年頭教書に対抗した共和党のMitch Danielsは退屈だった.故Steve Jobsが,全くそうではなかったのに,アメリカに雇用をもたらした,と述べた.そして,大統領はビジネスを妨害する,と.Appleは今や市場評価額でアメリカ最大の企業であるが,アメリカで雇用しているのはわずか43000人であり,これはGMがアメリカ最大の企業であった時の10分の1である.Appleは下請け会社などで約70万人を雇用するが,そのほとんどはアメリカ国外である.特に中国に多い.それは単に中国が低コストであるだけでなく,そこにサプライ・チェーンが集中しているからである.

これは経済地理学でよく知られた現象だ.19世紀以来,工業生産はある地域に集約されることでメリットを発揮する.同じメリットはドイツの工業生産にも見られる.企業の繁栄は孤立して起きるのではない,ということだ.共和党の世界観にはそれがない.

共和党の政治家たちは英雄的な経営者を賛美し,中産階級の労働者よりも低い税率で報いることを重視する.こうした発想だから,オバマの自動車産業救済に,彼らは“crony capitalism”として最も激しく反対した.しかし,この救済策は個別企業の繁栄はその周りに企業が繁栄するような生態学的な条件,産業のエコロジーが必要だ,という考えに拠っている.

FP Thursday, January 26, 2012

Obama embraces Romney advisor’s theory on “The Myth of American Decline”

Posted By Josh Rogin

ロムニーの顧問であるネオコンのBob(Robert) Kaganは,アメリカ衰退という考え方を否定した("The Myth of American Decline").オバマは一般教書演説でこれを採用した.

それはアメリカ衰退論の否定である.ロムニーはオバマの外交政策がアメリカ衰退論に依拠した弱腰なものだ,と批判するつもりだった.しかし,オバマは一般教書演説でこれを先取りしてしまった.

「アメリカの指導力が回復していることは世界中で見られる.」と,オバマは訴えた.「同盟諸国とともに核物質を国際管理し,貧困や病気と闘う.我々の敵に打撃を与え,アメリカは再び道義的な模範となった.アメリカはよみがえったのだ.」

オバマは自分の政策がアメリカの再生をもたらした,と主張する.

保守派によれば,アメリカの「衰退」を決めるのはアメリカの意識と政策である.すべての帝国は滅びるに違いないが,それがいつなのか,は重要な問題だ.アメリカの影響量が20年で失われるのか? 200年続くのか? ロムニーは,アメリカの衰退を議論するオバマに反論する機会を失った.

FP Friday, January 27, 2012

Is American influence really on the wane?

Posted By Daniel W. Drezner

Steve Waltのアメリカ衰退論を批判します.衰退論の前提である,冷戦期との比較,中国との比較には根拠がない.アメリカは冷戦期においても圧倒的な支配力を持たなかったし,中国の追い上げや中国のパワーを過大評価することは間違いだ,と主張します.

LAT February 1, 2012

America's waning influence

By Rosa Brooks

「アメリカは衰退しているか? アメリカのグローバルな影響力は弱まっているのか?

共和党の大統領候補者たちによれば,オバマの外交政策は「管理された衰退」である.たとえばJohn Boltonは,ロムニーの外交チームに入って,「オバマはアメリカの世界における役割をふさふさしたドアマットだと考えている」と批判する.ロムニーも手厳しい.アメリカは敗北の旗を掲げてはならない.神はアメリカを追従者として創造したのではなかった.といった具合だ.

これに対して,オバマも自分が衰退論者でないことを強調するのに熱心だ.

これは危険な論争だ.正直な外交官であれば,アメリカのパワーやグローバルな影響力は低下していると話すだろう.それを認めないことは,むしろ衰退を速めるだろう.

アメリカの衰退には二つの理由がある.第一に,アメリカの軍事力は今も世界一であるが,今まで弱かった国がより強くなったという理由で,アメリカの相対的な地位は低下した.ヨーロッパ,中国,インド,ブラジルがそうだ.これは歓迎すべきことだろう.

「その他の世界の台頭"the rise of the rest"」により,世界の生産額に占めるアメリカの割合は,この10年間で,23.5%から19.1%に低下した.しかし,『ガリバー旅行記』を思い出すなら,これは悪いことではない.巨人の国にいるときよりも,小人の国にいる方がガリバーは苦難を強いられたからだ.ガリバーのように,もし友好的な,われわれとよく似た仲間の国に囲まれるなら,アメリカは繁栄できるだろう.彼らは我々に大きな市場を提供し,われわれと負担を分かち合う.グローバルな問題について,アメリカが解決できないことを苦しむこともない.

もう一つの理由は,オバマが年頭教書で示したように,多くの点で,アメリカン・ドリームが失われてしまったことだ.アメリカ人の平均寿命は他の工業化された民主国家よりかなり短い.幼児死亡率や小学校への就学率も低い.我々は世界最悪の人口当たり収監率(犯罪・囚人の数が多い)を示す.ウォール街占拠運動が強調するように,所得格差の増大は深刻だ.まるで発展途上国のように.

こうした衰退を否定することは,愚かなだけでは済まない.第三世界の状態に向かうこうした傾向を放置すれば,アメリカが国際情勢において指導的な役割を果たすことなどできないからだ.我々は改革についての真摯な論争を必要としている.頭を砂に突っ込む場合ではない.

保守派がそうした姿勢を示すのは,自尊心を否定されるからだろう.なんにでも最高級のものを求めるというのだが,国際的な基準は無視してアメリカが最高だと断言する.

年頭教書にもかかわらず,オバマはアメリカの衰退を真剣に考えている.彼はそのことを弁解するべきではない.もしわれわれがそれを偽り続けるなら,それこそ衰退は逆転不可能になり,急激に進むだろう.

Project Syndicate 2012-02-02

America’s Three Deficits

Laura Tyson

雇用の不足.投資の不足.財政の不足.それは,技術変化,投資の海外移転(トレーニングやインフレの不足),国際的な投資環境の悪化.


l  日本衰退論

BLOOMBERG Jan 26, 2012

Krugman Take on $12 Trillion Question Rings True

By William Pesek

日本経済の問題(JGDPAGDP)は,もうとっくに終わったはずだった.しかし,31年ぶりに日本の貿易赤字が確定したというニュースは,これまで債務処理に使ってきた貯蓄が貿易赤字のために使われることを意味しており,不吉な前兆である.

日本衰退は間違った神話である,と考えるEamonn Fingletonは,貿易赤字を重視せず,日本の経済運営を非難してきたクルーグマンにも同意しない.クルーグマンとFingletonを比べれば,日本経済の間違いについて賛同する.なぜなら,債務,低成長,高齢化,少子化,というのは,政府が何もしないなら,破滅に向かう道だから.

しかし,Fingletonにも同意すべき点がある.日本は安全で,清潔で,効率的で,何事も時間通り,規則正しい.外国人が住むなら素晴らしい場所だ.日本人は平等を重視し,高い生活水準と長寿を享受している.日本の都市は最高のインフラを備え,また,料理店の質も抜群だ.

だから,アメリカ人がいつかアメリカを日本のような国にしたい,と望むのは問題だ.「日本化“Japanization”」というのは,一種の終末論だ.失われた数十年,債務,永久に続くゼロ金利,金融破たん,自殺.・・・しかし,懸念された終末は来なかった.犯罪もホームレスも爆発的には増えていないし,アラブの春のような騒乱は起きない.

しかし,アメリカ人が「日本化」を受け入れるとは思えない.十年以上もゼロ成長を続ける? 15兆ドルも家計の貯蓄を失う? 日本人には耐え忍ぶことへの驚くべき習性がある.

この点で,Fingletonなど,日本賛美派は矛盾してくる.これまで「成功」した日本モデルが,このまま将来も維持できるのか? 長い間,日本企業はゾンビである,と議論されてきたが,日本モデルがゾンビなのだ.とっくの昔に死んだはずの成長モデルである.

クルーグマンが言うように,日本経済は財政赤字の膨張と日銀の通貨供給によって維持されている.それは本当の体力を示していない.日本が成長するためには,規制緩和と,女性や移民の参加を促す必要がある.政治家たちはそれを避けている.日本のマスコミは改革を避ける政治家たちを十分に批判しない.

もし中国が無ければ,日本はまだ数年,こうした姿勢を続けられるだろう.確かに,一人当たり所得水準で中国が日本に追い付くにはまだ長い時間がかかる.しかし,1.3億人が生活水準を維持するための競争力を失った政府には,現状維持も望めない.あまりの高コストと平等主義の弊害に,半導体企業もアジア諸国に逃げ出した.

ユーロ危機の次にどの国が危機に陥るのか? 投資家たちは探している.どうして日本は気にしないのか? 若者の数は減り,支えきれない債務が残されている国だ.


FP JANUARY 26, 2012

Will There Be a Central Asian Spring?

BY JOANNA LILLIS

カザフスタンでも,中東と同じように,資源に依拠したNursultan Nazarbayevの独裁体制を西側は擁護するのか?


l  資本主義論争

guardian.co.uk, Friday 27 January 2012

The capitalism debate is anaemic – it must dig deeper

Peter Guillam

資本主義をめぐる論争はもっと深めなければ意味がない.その重要な出発点とは,資本主義には様々な変種がある,ということだ.どのような資本主義を我々は望むのか?

1970年代にも「新しい資本主義」が議論された.多くの理由があったが,ブレトン・ウッズ合意の崩壊は重要だった.1979年に登場したサッチャー政権は為替管理を撤廃し,金融市場の規制緩和,ビッグ・バンをもたらした.IMFはワシントン・コンセンサスといわれる新しい資本主義を発展途上諸国に押し付けた.NAFTAEUWTOが登場した.そしてソ連が崩壊し,自由貿易はグローバル化した.公共財・サービスが民営化された.

こうした資本主義の変遷を,その制度や規制,イデオロギーに至るまで,根本的に再検討するべきだ.資本規制の再導入もすでに議論されている.資本主義の根本的な欠陥を扱う視点なしには,新しい資本主義論争に意味はない.

WP January 27, 2012

Angry about inequality? Don’t blame the rich.

By James Q. Wilson

Project Syndicate 2012-01-27

A Crisis in Two Narratives

Raghuram Rajan

世界の工業化された民主主義諸国を襲った危機には,二つの競合する説明がなされている.一つは,いわゆる標準的なケインズ主義による説明.もう一つは,長期的な成長力の低下による説明だ.

前者によれば,危機は債務累積と需要の崩壊によるものだ.成長を回復するには,民間需要に代わって,政府が借金による支出を増やし,超低金利で貯蓄を阻止することである.

短期的には財政赤字は良いことである.そして中期的に景気回復とともに財政赤字は減らす.こうした理解が政府にも,中央銀行にも,ウォール街にもあって,支持されている.

もう一つの見方によれば,先進諸国の経済は成長のファンダメンタルズが改善しなくなった.戦後の成長は,欧米や日本で,戦後復興,保護主義の解体と市場拡大,技術移転,輸送・通信の改善,教育の拡充などが長期の成長を実現したものだった.それは1950年代,60年代に枯渇し始めた.

民主主義的な政府は革新や成長を背景に福祉国家を拡大し,給付資格を増やした.成長が衰え,分配する資源が減っても,政府は給付を続けたからインフレが高まった.インフレによって財政赤字を減らすことは,ケインズ主義の信用を損なった.成長の新しい源泉が必要である,とわかっていた.サッチャーとレーガンは規制緩和と金融改革を行って生産性を高め,ヨーロッパでも欧州委員会が各国にそれを求めた.

それにもかかわらず債務の膨張はさらに進んだ.持続的な成長経路を引き上げるために,彼らは成長の条件を改善しなければならない.ところが,安価な信用を供給し,民間債務を膨張させることで,住宅価格は上昇し,それが消費に回された.ヨーロッパでも,少し事情は違うが,ユーロによって低下した金利で住宅バブルや債務膨張が生じた.それが建設など,未熟練労働者の雇用を増やし,新しい成長である,と金融危機まで過信していたのだ.

それゆえ,ケインズ主義的刺激策による需要の回復は続かない.正常さへの回帰は幻想だ.技術革新と生産性上昇を目指すしかない.すなわち,IT技術,低コストのエネルギー,新興市場の需要が爆発的に増大すること,がそれを助けるだろう.

危機の間違った説明は,未来を破壊する.

guardian.co.uk, Saturday 28 January 2012

Stephen Hester's pay deal discredits an entire bonus culture

Will Hutton

FT January 29, 2012

Knowledge lies at the heart of western capitalism

By Hernando de Soto

Project Syndicate 2012-01-31

Blaming Capitalism for Corporatism

Edmund S. Phelps and Saifedean Ammous

資本主義は生き残れるか?

「資本主義」という言葉は,資本が指摘に所有され,取引されるシステムを指している.資本の所有者は,その最善の使い途を決める.企業家の先見の明や創造的アイデア,革新的思想家に依拠して,利益を得る.それは個人の自由と責任からなるシステムであり,政府が経済的な意思決定を左右する余地を与えない.その成功は利潤を意味し,失敗は損失となる.企業は自由な個人が進んでその商品を買う限り存在し,買い手を失えば速やかに消滅する.

19世紀に入って,資本主義はその革新をもたらす能力で世界に広まった.資本主義システムを採用した社会は,繁栄と雇用の改善,多くの人々を貧困から解放した.

しかし今,資本主義は腐敗してしまった.管理国家が中産階級の所得から大企業の利潤,産業発展まで責任を持つように求められている.こんなシステムは資本主義ではない.19世紀のビスマルク,20世紀のムッソリーニが行ったような,コーポラティズムである.

さまざまなやり方でコーポラティズムは市場のダイナミズムを奪う.それは,無気力で,無駄で,非生産的である.ダイナミックな新規参入者やアウトサイダーを,政府にコネのある企業が排除してしまう.個人の経済的自由や責任よりも,工業化や経済発展の目標を好み,偉大な国家を唱える.航空,自動車生産,農業,投資銀行,ヘッジ・ファンド,など,多くの分野で,「公共財」の名のもとに,自由市場に委ねるには重要過ぎるということで,政府が支援している.

コーポラティズムのコストとして,顧客を失って失敗した企業が生き延び,成長も誇張ももたらさない硬直した経済に縛られ,財政は破たんし,富はますますコーポラティストたちの手に集まる.これは資本主義のアンチテーゼである.

しかし,インターネット世代の若者たちはこの悪弊に染まらないだろう.彼らはインターネット上で優れた企業と契約し,顧客の満足によって評価する.政府の規制なしに,プライバシーと利潤との妥協点を見つけ出し,より安全な環境を探し出す.インターネットは新しいアイデアの自由な講監視上であり,コーポラティズムにそぐわない.

政府や政治家は財政破たんに向かうから,コーポラティズムの正当性が失われるだろう.その先において,「資本主義」が本来の意味を取り戻す.

FT February 1, 2012

Our ignorance will yield more crises in capitalism

By KennethRogoff

資本主義の危機に関する論争記事を読んで気づくのは,事実上,すべての意見が市場システムを支持していることだ.

金融規制の失敗,環境保護,消費者保護,特に,所得分配の規制に失敗したと主張されている.ビル・クリントンは,事前においても市場システムは効果的だ,と語り,ジェフリー・サックスは消費中毒が成長のダイナミズムをゆがめている,と主張した.Occupy Londonの代表が,たとえ所得水準が高くても,極端な不平等は社会に害悪をもたらす,と言うのはもっともだ.しかし,誰一人,市場システムに反対していない.効果的で公平な,正しい規制を求めている.

しかし,市場への支持は,政治システムに拡大できていない.イギリスのGeorge Osborne蔵相とEd Miliband労働党党首が,ともに,政治の短期思考short-termismを批判したことは興味深い.金融政策だけでなく,地球温暖化や食糧生産など,政治の短期思考が解決困難にしている重要問題は多い.

政治の悪影響は発展した諸国に固有のものではない.中国は,投資・輸出主導から消費主導に,成長モデルを転換しなければなあないが,既存の産業利益に結び付いた政治システムはそれを指導できない.中国資本主義の優秀さを喧伝し,発展途上諸国に普及させるというのは誇大妄想である.ソ連も日本も,中国と同じようにインフラ投資には成功したが,その後の成長モデルへ移行することには失敗した.

Martin Wolfが述べたように,現代資本主義は私的財の豊富さを実現したが,公的財の供給に失敗している.すなわち,教育,インフラ,環境,安定した金融システム,など.政治的市場,すなわち規制を改善することは,世界のすべての国の課題である.ヨーロッパとカナダは両者(民間財と公共財)のバランスに英米よりも成功している.世界最高の幸福度を示す北欧モデルが注目される.しかし,年金給付や日弾力的な労働市場など,ヨーロッパがグローバリゼーションに適応するための課題も多い.

どのようにしてバランスを取るべきか? それは,教育の改善,である.持続可能性の問題に対する答えは他にないだろう.初等教育も,高等教育も,社会人のための再教育,再訓練が重要だ.社会は成人に対する教育プログラムを拡大し,たとえば,経済情報や金融情報を効果的に伝えるべきだ.こうした教育を受けた有権者がいなければ,短期思考の政策がもたらす害悪を知らず,そうした政治家を支持してしまうだろう.まして,資本主義の改善など望めない.

アメリカ大統領候補者の予備選が示す論戦を見れば,そのような教育が無意味だと思うかもしれない.しかし,それは逆である.有権者が知らないから,愚かな主張が政治的市場から駆逐されないのだ.ウェブ上に優れた教育材料を提供し,公共ラジオ・テレビ放送を充実し,子供たちに教育の選択肢を増やすことが,現代資本主義の政治問題を長期的に解決する.

SPIEGEL ONLINE 02/01/2012

SPIEGEL Interview with Francis Fukuyama

'Where Is the Uprising from the Left?'

『歴史の終わり』でネンコンの代表的思想家とみなされたFrancis Fukuyamaが,資本主義の行き過ぎが民主主義を破壊する,と警告している.なぜ変わったのか? インタビューに答えています.

とはいえ,資本主義以外の選択肢は今もない.資本主義は技術革新を通じて人々の雇用を破壊する.それは民主主義の政治システムにとって,ある種のグローバリゼーションにともなう経済変化を耐えがたいものにする.たとえば,多くの製造拠点は中国に移転してしまった.

中産階級の弱体化した民主主義は,失業や分配問題の解決について,ポピュリズムや政治紛争に向かいやすい.政府やエリートに裏切られた,と憤慨するティー・パーティー運動のように.アメリカでも,人々は分配や不平等に強い関心を示し始めた.

なぜ左派からの抗議がないのか? ウォール街占拠運動OWSは重要ではない.その社会的な基盤は狭すぎる.アメリカの左派にとって重要な問題は,ヨーロッパでは社会民主主義に好意的な集団,すなわち,ホワイト・カラーや中産階級の下層が,アメリカでは共和党の支持者,もしくは同調者になりやすいことだ.

私は,1930年代と同様に,すべての巨大銀行を分解・再編するしかない,と思うが,政府が救済や介入によって深刻な不況を回避したせいで,そうした要求は支持されないだろう.オバマやガイトナーは明らかに「1パーセント」の仲間であり,彼らを守っている.共和党も,ティー・パーティーも,超資産家たちに資金をもらい,飼いならされている.エリートによる支配を嫌うアメリカ政治の伝統は,左派の政治的な発言の余地を奪ってしまう.

アメリカはドイツ・モデルに学べるだろう.ドイツの社会民主党は,労働市場を弾力化し,福祉国家をグローバルな資本主義的競争にふさわしいものにした.

中国が成功したのは,資本主義諸国を相互に競争させて,有利な条件で資本や技術を移転させたからだ.世界中の製造業が中国によって奪われた.

Project Syndicate 2012-02-01

Coronary Capitalism

Kenneth Rogoff


l  グローバリゼーション再考

FT January 27, 2012

Decline of global institutions means we best embrace regionalism

Ian Bremmer

グローバリゼーションは進むがガバナンスは不十分だ.第二次世界大戦後の制度が必要な改革を容易に実現できない.その結果として,地域主義が強まっている.公式・非公式に地域的な協力や会議,制度が増えている.しかし,その機能はまだ効果的でないし,権限も弱い.そのためには,地域制度へのアメリカと中国の支持が欠かせないだろう.グローバリゼーションの成功には,こうした地域制度が効果的に意思決定して,バラバラな基準ではなく,相互に協力できる体制が求められる.

NYT January 28, 2012

Made in the World

By THOMAS L. FRIEDMAN

昨年2月に,オバマ大統領はスティーブ・ジョブズに尋ねた.7000万台のiPhones, 3000万台のiPads,そして5900万台も他の製品を販売するAppleが,そのほとんどを海外で生産しているのはなぜか? それらをアメリカで生産して雇用を国内で増やしてくれないか? ・・・ジョブズの答えは簡単だった.仕事は戻って来ません.

政治家たちは世界を有権者ごとに分かれた特別な場所だと思っている.しかし,企業幹部たちは世界をひとつの場所と考える.製品はサプライ・チェーンのどこか,組合のない,コストが最も安い土地で生産され,世界のどこにでも売る.

優れた製品はすべて,“Made in the World” であり “Made in America”ではない.企業は自分たちを世界市民と考えるが,オバマはアメリカの大統領でしかない.

香港最古の繊維会社の一つであるLi & Fung Victor Fung会長は,かつて,アジアで生産し,アメリカやヨーロッパの市場に輸出した,と言う.今は違う.どこからでも調達し,どこででも生産し,どこへでも売る.「輸出」という言葉もなくなった.

Dell Inc.の創業者Michael Dellは,われわれの製品の新しい顧客はその96%がアメリカ国外にいることを忘れるな,と言う.彼らに売るためには,われわれはデザインや生産を彼らの国に移すしかない.

M.I.T. の物流専門家であるYossi Sheffiは,できるだけ多くの労働者を,さまざまなグローバル・サプライ・チェーンに入れるべきだ,と言う.彼らは製品を想像し,デザインし,販売する.製品のサプライ・チェーンを,最高級品の生産と大量販売とをアレンジする.そうすることで我々のシェアは拡大する.

アメリカは,この競争において優位にある.世界で最も想像力に富んだ国,才能ある移民を歓迎してきた国,確かな知的所有権とベンチャーを育てる資本市場を持つ国,バイオ,新技術,クリーン・エネルギーを育てる政府を持つ国,そして,FedExU.P.S.のような物流企業が奥の雇用をもたらす国は,アメリカだから.

FT January 29, 2012

A veteran Wall-Streeter confronts the Occupy movement

By Stephen Roach

ダヴォスは二度と以前の姿に戻れない.

人々はthe 2012 World Economic ForumWEF)にもウォール街占拠運動OWSを見ただろう.24歳のマリアはOWSの代表として,WEFの最終フォーラムのパネリストに参加した.彼女は宣言を読み上げた.彼らは「システム」に憤慨し,平等,尊厳,敬意に依拠した新しいシステムを構築する必要がある,と主張している.そして,iPhone中心の物質主義的な価値観を否定した.

私が思うのは,1.エコノミストは分配についてあまりにも無関心であった.2.しかし,99%が1%を批判しても資本主義は変わらない.現代の不平等は,たとえ社会主義を掲げる中国にも広がった,グローバルな不平等である.3.OWSの憤慨はまだ鎮静化しない.特に,若者たちの失業率は高いままである.

最後に解決策を求めて,成長と安定性のバランスを取る,政策や規制や制度をめぐる様々な再編成が議論されたが,こうした話が何か良いものをもたらすとは思えない.金融エンジニアリングや共通通貨の魔法が我々を破滅の淵にさ迷わせているのだから.

私は非常口から逃げ出した.・・・もう戻れない.

The Observer, Sunday 29 January 2012

Globalisation can work, but only with a unified international plan

Will Hutton

世界中の豊かな工業諸国は,どこでも,十分な所得をもたらす技術や熟練を要する仕事の不足に苦しんでいる.

TataはイギリスのJaguar Land Roverを買収して,世界にエンジンを輸出している.イギリスの自動車輸出は140万台,エンジン輸出は300万機以上に及ぶ.しかし,生産性を高める技術進歩により,雇用は急速に減っている.Wolverhamptonに立つ最新鋭のエンジン工場は,わずか750人しか雇用しない.

他方で,マクドナルドは今年も2500人の新規雇用を発表した.ハンバーガーを焼くだけの仕事は,時に乱暴な客をあしらう以外に,大した技術や能力を必要としないだろう.マクドナルドが高付加価値の職場や,イギリスの輸出を増やすことは,期待できない.

製造業の中枢部分は海外に移転してしまい,西側の工業諸国にはサービス部門が残る.マクドナルドのように,それ自体がグローバルな産業の一部であるが,付加価値をもたらすというより,紺人所得から一部を取り込む,エージェントやトレーダーというサービス分野が繁栄している.これを「エージェント資本主義"agentist" capitalism」と呼ぼう.

エージェント資本主義は,特に英米で拡大してきたが,不安定で,不均衡を拡大し続ける,いびつなグローバリゼーションの一部であった.ドイツ,中国,インド,日本,などはグローバル・サプライ・チェーンを構成し,貿易黒字を増やし続けている.他方には,貿易赤字を増やし続ける諸国があった.不均衡を調整するメカニズムが欠けたまま,その間を融資する銀行ビジネスは,規制のないシャドー・バンキングも含めて,崩壊してしまったのだ.

グローバリゼーションも現代資本主義も,深刻な批判にさらされている.肥大化し,過剰な報酬を得てきたエージェント資本主義は,中産階級を滅ぼしてしまい,政治的なバランサーを欠いたままである.政府にビジネスや銀行を厳しく監視するように求めるグローバルな政治勢力がなければならない.ギリシャやポルトガル,アイルランドの抗議運動は,いずれも国家に囚われている.

もし可能なら,超国家的な労働組合を制度化して,世界の生産手段を社会化するより,世界規模で,責任ある資本主義を求める政治圧力と手段を実現することだ.

The Observer, Sunday 29 January 2012

We can now see the true cost of globalisation

カール・マルクスが,バンコクの労働者に団結を呼びかけたとき,iPhoneのボイコットを考えてはいなかっただろう.AppleのボスであるTim Cookは,批判を受けて,世界中の生産工場に査察を行い,もはや地下工場における生産などない,という最新の証拠を提示した.

世界資本主義はその暗黒面を切り離しつつある.

グローバリゼーションの予想外の破壊的な副作用に我々は戸惑っている.1990年代にはアジア金融危機などが政府を転覆した.アメリカの住宅バブルから,1930年代以来の最悪の金融危機と不況が始まった.政府は対策を講じてきたが,雇用は回復せず,若者の失業はスペインで50%に及ぶ.新自由主義のドグマは破たんしたのだ.不平等は拡大し,労働者たちは何千マイルも離れた失業者と競争している.消費者を委縮させ,裕福なエリートたちは,グローバリゼーションから多大の利益を得たにも関わらず,それを使うよりもスイス銀行に隠しておく.

グローバリゼーションの利益は疑われ,正しく扱うときが来た.国内において,アウトソーシングや民営化,勝者総取りの報酬システム,などを放置せず,その利益に課税し,バランスを回復する.国際的にも,外国企業による買収を阻止し,放任されてきた資本移動に制限を課すことだ.

我々は中国の労働者たちが権利に目覚め,報酬の引き上げを要求し始めたことを支持する.それは我々の市場における中国製品の価格を引き上げ,中国経済の中産階級とその消費を重視する成長政策になるだろう.

Appleへの批判は,無知でナイーブな意見と否定された.しかし今は,世界恐慌の大破壊を経て,われわれもマルクスの言葉に気付くだろう.万国の労働者は団結する.

FT January 30, 2012

Davos consensus’ under siege

By Gideon Rachman


FT January 27, 2012

Untied kingdom

By Brian Groom

170751日,スコットランドの議会はイングランドとの永遠の統一王国に合意した.

205年後,英連邦は解体の危機に瀕している.スコットランドの分離を問う国民投票を,Alex Salmond首相が2014年秋に行う,と計画しているからだ.

The Observer, Sunday 29 January 2012

Who most wants independence for Scotland? The English…

Andrew Rawnsley

SPIEGEL ONLINE 02/02/2012

The End of Great Britain?

Scottish Separatists Have High Hopes for Referendum

By Marco Evers


The Observer, Sunday 29 January 2012

Save West Africa from the drugs barons

Kofi Annan

過去10年間で,西アフリカは大きく前進した.長年にわたって地域を焦土と化した内戦は終結した.開発,健康,教育において実質的な改善が見られた.経済成長が加速し,民主主義が根付き始めた.

しかし,この前進が国際的な麻薬密売組織と密輸の背後にある犯罪組織によって脅かされている.麻薬の輸送・密売は,政治腐敗を広め,犯罪やテロを招き,社会の団結を損なう.

guardian.co.uk, Sunday 29 January 2012

The South Sudan dream is turning sour

Simon Tisdall


l  ミット・ロムニー

guardian.co.uk, Sunday 29 January 2012

US elections: no matter who you vote for, money always wins

Gary Younge

ミット・ロムニーの資産は過去8人の大統領を合わせた額の倍もある.

フロリダの予備選挙では,Rick Santorumがラテンアメリカにおけるイスラム過激派について警告し,Newt Gingrichは毎日7便の月への定期便が飛ばす,と述べた.民間企業が月にコロニーを建設するからだ.また,パレスチナ人というのは,1970年代後半にねつ造されたものだ,とも述べた.誰が何を言うとしても,金が無い者は選挙を戦えない.しかも,莫大な金が要る.

共和党の予備選挙は,そんな意見も影響しないだろう.オバマの出征証明書を要求し続けた陰謀論者,気候変動を拒み続ける人々,あるいは,天地創造の神話を現実の歴史であると主張する人が,共和党の理論や運動を支えているのだから.誰もがイスラエルを愛していると言い,ロナルド・レーガンを愛していると言い,妻を愛しているという.なんとも狂った政治宣言だ.

この傾向は,2010年に最高裁が選挙資金を広く認め,しかも匿名を支持したことで,ひどくなった.アメリカ政治における金の役割は,誰もが知っているが触れないことである.政治は金銭で動かされ,議会には200人以上の金持ちが議席を得て,彼らに有利な条件を守っている.

金持ちを引くむのは,貧乏人の妬み・僻みである,と彼らは主張する.しかし,これは政治システムの問題だ.王さまは裸である.あなたが誰に投票しても,金のある者しか当選しない.

NYT February 1, 2012

Mitt Speaks. Oh, No!

By GAIL COLLINS

フロリダの勝利に酔っていたロムニーはベッドから放り出された.CNNが,ロムニーは貧困層のことを気にしない,という発言を紹介していたからだ.

WP Thursday, February 2, 2012

Mitt Romney won in Florida but lost overall

By E.J. Dionne Jr.

FT February 2, 2012

Mitt can win by battling America’s debt addiction

By Sebastian Mallaby

WP February 2, 2012

The world has changed, Mr. Romney

By Fareed Zakaria

親愛なるミット・ロムニーへ

あなたは選挙運動でオバマ大統領を批判し,こう言ってますね.「これは次の世紀はポスト・アメリカの世紀であると信じる大統領だ.」私は“The Post-American World”という本の著者として,あなたが攻撃しているものは何か,説明しておきましょう.

ポスト・アメリカの世界とは,アメリカが衰退するのではなく,他の誰もが台頭する世界なのです.私はアメリカの将来を楽観しています.アメリカはこの新しい世界で繁栄できるし,最も力のある国に留まるでしょう.ソ連の崩壊で始まったアメリカ一極の世界は終わりました.アメリカの思想,アメリカのモデルが世界に広まって,各地で受け入れられたからです.

1990年,中国は世界GDP2%でしたが,今ではその4倍の8%に達し,増大し続けています.2016年から2018年の間に,世界最大の経済になるでしょう.経済分野だけでなく,軍事力の面でも,外交の面でも,中国は重要性を増しています.

中国だけでなく,各大陸に新興諸国が現れて政治的安定性と経済成長を達成し,グローバルな舞台で確約し始めています.独裁や3000%のインフレに苦しんだブラジルが,今では安定した民主主義を実現し,3500億ドルの外貨準備を保有しています.ラテンアメリカで指導力を発揮し,キューバの港湾を再整備する工事に68000万ドルを融資します.また,30年間拒まれていたインドは,核保有国の地位を西側諸国から正式に承認されました.成長するアジアの操縦席に入って,欧米諸国がこぞってインドとの同盟関係を望んでいます.

これが新しい世界です.一世代前のアメリカ中心の世界とは全く違います.オバマはそれを正しく理解し,彼らと一緒に仕事を進める用意があります.オバマはG20を世界経済の中心的な意思決定機関に据えました.イランに対する制裁は中国とロシアの支持があったからできたのであり,リビアへの介入もアラブ連盟の支持があったからできたのです.

あなたはこうした外交をばかげていると言う.そして,アメリカは軍備を拡大し,一方的に行動して,それを弁解するのは止めるべきだ,という.共和党員には受けても,そんな威嚇的な態度は,強力なプレーヤーが増えた新しい世界において,アメリカの国益や理想を守るものではない.


l  メルケルと反対者たち

FT January 29, 2012

Fear and greed in the eurozone

Gavyn Davies

ECBのドラギ総裁が銀行システムに流動性を供給したことで,ユーロ危機の最悪期は終わった,と言われる.しかし,市場が動くには,恐怖が退けられるだけでなく,強欲が復活する必要がある.それはまだだ.ECBの救命装置によって,ECB内の預金操作で,銀行は資金をやり取りしている.

FT January 29, 2012

Fiscal treaty could trigger a debt explosion

By Wolfgang Münchau

ヨーロッパが財政の健全化を約束した条約は,狂っており,せいぜい,どうでもよいものである.

スペインが求められている財政再建は,Richard Kooが「バランス・シート不況」と呼ぶ,間違った政策による不況を激化させる.むしろ,日本が1990年代にしたように,民間部門が債務の削減に取り組む間,政府は不況回避のための財政赤字を拡大するべきだ.

NYT January 29, 2012

The Austerity Debacle

By PAUL KRUGMAN

イギリスは,その空想的・イデオロギー的な解釈“expansionary austerity”,つまり,財政緊縮によって景気が刺激できる,という幻想の実験である.イギリスのキャメロン首相は,最初に財政再建が必要だ,という.しかし,すでに失業者があふれる中で,さらに雇用を削ることが景気を良くするなどと,どうして思うのか? その理由は,信頼だ! また,ECBのトリシェ前総裁も言った.信頼を取り戻すことが,現在の段階では,景気を刺激するのだ,と.

オバマがキャメロンの愚行を共有しなかったことに,われわれは感謝するべきだ.しかし,大陸ヨーロッパは間違いに向かって進んでいる.多くの政治家やエコノミストたちが,政治的理由で,経済学の重要な知識を忘れてしまったようだ.

FT January 30, 2012

The dilemma of German leadership

Project Syndicate 2012-01-30

Neville Chamberlain was Right

J. Bradford DeLong

飢餓があなたを健康にすることはない.失業を増やすことが,市場の信頼を取り戻す方法ではない.

Project Syndicate 2012-01-30

Austerity vs. Europe

Javier Solana

FP JANUARY 30, 2012

On a Knife's Edge

BY MOHAMED EL-ERIAN

FT January 31, 2012

Europe is stuck on life support

By Martin Wolf

ドラギ総裁の政策で,せっかく心臓麻痺を免れても,メルケル=サルコジの処方箋である財政緊縮を強いれば,弱った患者を殺してしまうだろう.

NYT JANUARY 31, 2012

What Are the Germans Thinking?

By ANDREW ROSENTHAL

ドイツは財政緊縮を苦にしない.ドイツには,既に巨額の投資で優れた産業政策とインフラがあり,労働者は教育されている.ドイツは共通通貨によって,赤字やユーロ危機に苦しむ諸国が通貨を切り下げる選択肢を奪っている.そしてメルケルたちが求める緊縮政策は,ユーロ圏諸国にとって,ドイツのような産業育成を不可能にするものだ.

WSJ JANUARY 31, 2012

Send In the IMF

By ANDREW TYRIE

Project Syndicate 2012-01-31

The Chancellor Who Played with Fire

Joschka Fischer

SPIEGEL ONLINE 02/01/2012

The Hard Sell

Merkel Seeks Euro Zone Investments from Beijing

By Philipp Wittrock

FT February 2, 2012

China considering deeper involvement in EFSF

By Kathrin Hille and Jamil Anderlini in Beijing

FT February 2, 2012

End this masochism in economic policymaking

Martin Wolf

FP FEBRUARY 2, 2012

The Revenge of Montozy

BY AARON WIENER

「スーパー・マリオ」モンティ首相が,優れた政治的本能を持っているとしたら,メルケルのプードルになることなくイタリア国民に男の誇りを示し,メルケル首相とサルコジ大統領の熱愛を邪魔するだろう.

WP February 2, 2012

Two cheers for ‘Super Mario’ Draghi

By David Ignatius

もう一人の「スーパー・マリオ」ドラギECB総裁は,天才的な金融政策で金融逼迫を解消し,ユーロ危機を緩和しました.しかし,ドイツとギリシャの文化は全く異なっており,共通通貨の安定には財政の厳しい規律が必要である.ドイツとギリシャの経済DNAがまったく異なることを前提にした構造を築くことだ.

VOX 3 February 2012

What Europe might look like without the Eurozone and EU

Bruno S Frey

VOX 2 February 2012

Sovereign ratings when default can come explicitly or via inflation

Charles A.E. Goodhart


l  グローバルな不遜さ

WSJ JANUARY 29, 2012

A Bridge to the Next Asian Boom

By HAROLD MCGRAW III

欧米の金融市場に漂うユーロ危機や財政赤字,緊縮策の不安は,世界の投資家を新興市場,特に.アジアのインフラ投資に注目させる.彼らが未だ銀行融資に大きく依存した金融市場を変えることができれば.

Global Times | January 29, 2012

Latin American lessons may enlighten China

Jiang Shixue ()

FT January 30, 2012

Beware the hubris of the Brics

Moisés Naím

人を狂わせるのは過剰な成功である.Hubris不遜さ,と呼ぶ.古代ギリシャ人はそれを知っていた.

現在,われわれにはBRICsがある.貧しい諸国だが,経済的・地政学的に成功して,影響力を急速に強めている.そして不遜さも.

ダヴォスの世界経済会議に多年にわたって参加してきた私は,多くの不遜さを見てきた.1990年代半ば,私はそのすぐ後に苦境を知るメキシコのサリナス大統領に会った.エンロンのKenneth Layにも会った.アルゼンチンのメネム大統領にも会った.・・・アジア通貨危機の前に,タイやインドネシア,マレーシア,韓国の大臣にも会った.

すべてではないが,あまりにも多くの人物が不遜さに冒された.BRICsやその他の新興諸国も同じだろうか? スイスのアルプス山上に集まるトルコ人,インド人,ブラジル人,インドネシア人,ロシア人,中国人の姿にも,多くの兆候を見る.祝福と,その裏にある不遜さ.


l  帝国の誘い

Project Syndicate 2012-01-30

Rattling the Renminbi

Yu Yongding

FT January 30, 2012

Letting China’s economy bloom

YaleGlobal Online, 30 January 2012

China Courts the Middle East

Dilip Hiro

FT February 1, 2012

The trials of a reluctant superpower

By David Pilling

1793年,中国の乾隆帝はジョージ3世の使いを断った.中国は自給自足している世界の中心であるから,何も輸入するものはない,と.現代の中国は幸いである.外国の優れた技術だけでなく,外国の石油,外国の銅,外国の鉄,その他の外国の財を輸入して,<メイド・イン・チャイナ>へと加工する.

だから中国企業や中国人労働者がこれほど世界中に展開しているのだ.スーダンと南スーダンには25000人の中国人がいる.中国にとって7番目に重要な石油供給国だ.そして,海外で活動することは代償を伴う.時には命の代償を支払うことになる.先週末,スーダン国境地帯で,29人の中国人労働者が誘拐された.一人は行方不明で,おそらく殺されたのだろう.昨日,エジプトのシナイ半島では25人が解放された.1013日,タイのメコン河では13人の中国人労働者が殺害された.

海外の自国民を守ることはどの国にとっても難しい.中国は,国際的な関与を低く見せることに執着する「嫌々ながらの超大国」であるから,この問題の解決は一層難しい.それは中国の世界的な商業的利益と矛盾する.昨年は,35000人の中国人がリビアから国外退去した.

スーダンは,KhartoumJubaの南北に国家が分裂した.中国政府は,人権に対する犯罪を国際刑事裁判所に告発されているOmar al-Bashir大統領のKhartoum政府を支持し続けている.中国人労働者は国境地帯で,スーダン政府軍の反政府勢力弾圧に利用する道路を建設していたようだ.反政府軍が彼らを襲撃することは十分に予想できた.中国政府の「中立」には,いろいろな意味がある.

日本も,アジアで最も近代的な軍隊を持つが,同様の問題を抱えている.その軟弱な姿勢は多くの身代金を求められる.中国と同様,日本政府も不介入の姿勢を強調した.特に1973年,アメリカに逆らって,アラブ諸国との友好関係を維持したのだ.原油の蛇口を守ったわけだ.そして,日本政府は経済的拡大と中立性とを融合する「全方位外交」なるものを発明した.

中国人労働者は海外に85万人いる.アフリカ,アジア,ラテンアメリカ,中東の不安定な地域で,何万人もが働いている.彼らを守るために,人民解放軍を退いた軍人たちが「民間警備会社」を設立した,という.中国市民にとって,遠く離れた外国のぼろをまとった兵士たちに,中国人が誘拐されるニュースや映像は衝撃的である.国威を踏みにじられた,と不満をネットで見る.中国政府が海外の権益を守るためには外国に中国軍を駐留させる必要がある,という海軍関係者もいる.

1949年以来,中国は公式のイデオロギーとして反帝国主義や非同盟を掲げてきた.しかし,新しい世代は違うかもしれない.

アフリカ連合AUの本部ビルがアジス・アベバで,今週,開設された.それは2億ドルを要した中国の善意を示す幻影だ.開設を記念する中国共産党の政治局員Jia Qinglinは,集まったアフリカの指導者たちに向けて,非介入主義のあいさつを述べた.「大小に関わらず,すべての国は平等であります.大きな,強い,裕福な国が,小さな,弱く,貧しい国をいじめることに,私たちは反対します.」 ここには,大きく,強く,しかし,貧しい国が入っていない.それが中国だ.

SPIEGEL ONLINE 02/01/2012

Challenging America

Europe Seeks Space Cooperation With China

By Christian Schwägerl

ユーロ危機の安定化だけでなく,宇宙開発においても,ヨーロッパと中国は協力する.

WSJ FEBRUARY 3, 2012

The Wukan Experiment


Global Times | January 31, 2012

Australia needs to face tough choice

By Huge White

Global Times | January 31, 2012

New friendships don’t expel old ties

By Neil Orme


WP Friday, February 3, 2012

Is Israel preparing to attack Iran?

By David Ignatius

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The Economist, January 21st 2012

The rise of state capitalism

Taxing the rich in America: The politics of plutocracy

Income inequality: Who exactly are the 1%?

Corporate anonymity: Light and wrong

Booming Mongolia: Mine, all mine

Charlemagne: And then there was one

Free exchange: The hangover

(コメント) どの記事もあまり面白くないのです.一つを除いて.

国家資本主義の台頭に関する特集記事は,レーニンの影や「管制高地」,などが出てくるものの,平凡な内容です.むしろアメリカの富裕層,1%,の話が少し面白いです.株式会社が匿名性を悪用する話も,ヨーロッパがドイツの一人勝ちになって,J.スティグリッツに言わせれば集団自殺のような財政緊縮を強要し,また,スウェーデンやフィンランドの金融破たん処理に優れた先例があるのに,ヨーロッパよりもアメリカの方が債務処理を進めていること,は興味深いです.

しかし,何より面白い記事は,モンゴルの資源採掘ブームです.同じ広大な大地でも,かつては遊牧民が繁栄し(特に,優れた騎馬軍団の支配力で帝国を築き),長い空白期間を経て,今は資源採取によって繁栄します(特に,隣国の急速な工業化と資源需要を得て).遊牧から採掘へ,大草原を愛し,敬って,住処としてきた人々が,都市へ,地底へ,マンホールへと移住します.

これは,かつてなかったほどの「オランダ病」です.とはいえ,資本流入や通貨価値の増大で駆逐される産業は遊牧以外にないのですが.20%を超える成長率や,非合法な採掘と有毒廃液,外国人や文化の流入と不平等が,彼らにとってこの上なく美しい土地を荒廃させるとき,政治的不満の土壌が形成されます.

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IPEの想像力 2/6/12

梅田のレストランでランチを食べました.高層ビルからの摩天楼を眺めて,ちょっとした,ごちそうです.

阪神百貨店の地階が待ち合わせ場所であったために,日本が誇る?デパートの食料品売り場,お惣菜,弁当屋さんを観察してきました.素晴らしい品数です!!! 抑えられた価格,目の覚めるほど?美味しそうな食品・弁当・パン・・・などの展示に感心しました.

少し歩くと,お酒があり,フルーツも色とりどりに並びます.干物,味噌,漬物は押しのけられた感じですが,和菓子,洋菓子の充実した陳列に陶然とした気分を味わえます.お茶,海苔,佃煮など,伝統食品もありますが,売り場の配置や面積はどんどん変化するのでしょう.なるほど,これがデパ地下なのだ,と納得しました.食品世界のバランス・オブ・パワー,地政学を見たわけです.

しかし,想うに,デパートという販売様式は,このままでは滅ぶでしょう.あれほど多くの美しいフロアが何層にも,まさに超豪華ケーキのように積み重なっていても,それほど人は集まりません.この婦人服や紳士服,子供服,宝飾,おもちゃ・文具,靴,バッグ,などを並べて売っている規模に見合う購買層など,今の日本にはいないのです.洗練された店員たちの数に比べて,財布の口が開かない中年・高齢層が各階にちらほら歩くだけです.

もっと安い製品を,もっと価格競争に徹した販売方法で,繁華街ではなく居住区において,巨大スーパーが競争している時代に,また,必要なものなら,なんでもコンビニで済ませ,300円の弁当でも,それなりにおいしく食べられる日本で,時代遅れの百貨店の未来とは何なのか? ・・・地階だけを独立させて,上の階層はコンビニやホテルにしたほうがよいのでは?

私は,観察するうちに,想像をめぐらせました.商品は買わなくても,値札や産地を見たら楽しいだろう,と.ルーマニア製とか,カンボジア製の衣類はあるでしょうか? 食品はタイ,トンガ,スリランカ,リビア,アルゼンチンからも来ているのか? この膨大な商品を,その産地や生産された国でフロアを分けたら,日本産・日本製品はどれくらい残るのか?

きっとスーパーでは日本製品の値段の半分や3分の1,いや5分の1で,中国製の家電を売っているのでしょう.日本が自動車と並んで誇ってきた家電業界が,軒並み大幅な赤字を出していることに,貿易赤字以上の不安を感じます.まともな給与を得る職場が無くなり,勤労や熟練,優れた技術では,企業が生き残れなくなったのでしょうか?

他方,デパートの優れた商品と店員たちのマナーを見るとき,このまま滅亡して良いものか? という憤慨が湧きます.これほどすぐれた巨大なショッピング拠点なら,生産拠点を海外に移転してしまうのとは逆に,世界中からショッピング・ツアーを招き寄せるのではないでしょうか? すでに,中国,台湾,その他の新興諸国から,観光客が日本の空港,京都の観光地,九州の温泉旅館,などに出現していると想います.

あるいは・・・ 衣食足りて礼節を知る,と言いますね.しかし,衣食の詰まった老舗デパートに集まらない客層が,梅田の真ん中にできた若者向けのファッション店舗,そして,カメラ・パソコン・音楽の店に集まります.Loftやヨドバシカメラの若さと活気は,デフレや高齢化に苦しむ国とは別世界です.スタバの狭いカウンター席で,こぞって本やノート,パソコンを広げる彼・彼女たちは,一体,どこから来るのか? と驚きます.

そして ・・・東北の地震や津波,原発事故の被災地で人々が味わう苦しみを想いました.

Googleを見れば,被災地の状態が詳しく映ります.家屋は流され,更地になった地域もあれば,がれきが残る地区もあります.建物の傷みが激しい,と思います.住宅や雇用を,震災前の水準まで回復するのに,何年かかるのでしょうか? 失われた友人や家族は永久に戻りません.

消費を自粛することは,何も改善しないでしょう.しかし,デパ地下やLoft,ヨドバシカメラ,高層ビルのレストラン街,などの楽しみが,被災地の苦しみと共鳴し,共振する仕掛けがあれば,私たちはより深い満足を得るのではないでしょうか? たとえば,・・・東北の民謡を流して,彼らの再起を願い,公共財を寄付する運動をお店で工夫し,あるいは,・・・町全体の深甚な破壊から,再建に向かう住民やボランティアたちをたたえる映像を,何かの記念日に紹介します.

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