IPEの果樹園2012

今週のReview

1/9-/14

 

*****************************

2011年から2012年へ ・・・繁栄・成長という理想は続かない ・・・中国共産党は崩壊する ・・・ユーロ危機の解剖 ・・・不況のときに支出削減するな ・・・ホルムズ海峡封鎖に怯えるな ・・・TPPは差別化と中国封じ込めだ ・・・金融危機の後に続く改革とは ・・・世界経済を救う

 [長いReview]

******************************

主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  2011年から2012年へ

FT December 29, 2011

Our age of mounting indignation

By Gideon Rachman

地中海が文明の中心地であったのは,もう何世紀も前のことだ.しかし,2011年に地中海は国際情勢の真ん中に戻ってきた.

2011年の5つの重大事件を考えるとき,最初に,地中海の北岸と南岸に注目する.1.南岸では,チュニジアとエジプトに革命が起きた.2.北岸では,ユーロ圏の政府債務危機が深刻化した.

どちらの事件も群衆が街頭を占拠したが,前者は少なくとも将来への希望を持った人々であるが,後者は自分たちの運命を変える力が失われたことへの不安が満ちていた.これら二つは全く異なった社会において起きたが,共通する要因が容易に指摘できる.すなわち,若者たちは高い失業率に強く抗議した.

3.不平等や汚職に対する抗議デモは世界中に広まった.ロンドン,チリ,中国,イスラエル,インド,・・・ アメリカは例外だと思ったが,そうではなかった.ウォール街占拠運動OWSはアメリカの政府債券格付けが下げられた事態と重なった.OWSはヨーロッパの緊縮政策に対する抗議を刺激し,アジアの汚職反対にも影響した.彼らは不平等とエリート主義に反対したのだ.

4つ目の重大事件として,アルカイダの首謀者殺害を挙げる.それはオバマ大統領が「テロとの戦い」に勝利を宣言して,アメリカが外交政策の束縛を解かれたことを示す.イラクとアフガニスタンから米軍は撤退する.

5.日本で起きた大地震と津波,それに耐えた日本人の尊厳,忍耐は,政治や経済の問題にまで適用されるなら世界を変えるだろう.しかし,もう一つの年末に起きた事件が重要である.ロシアの不正選挙に対する民衆の抗議運動が広がったことだ.ロシアの「管理された民主主義」は行き詰まり,プーチンの大統領復帰にも不確かな要素が加わった.

世界中で,大衆の抗議デモがその価値を取り戻した年であった.

FT December 30, 2011

Forecasts for a future imperfect

By FT writers

FT December 30, 2011

Finding reasons to be cheerful

WP December 31, 2011

Is 2012 the end of the world as we know it?

By Matthew Restall and Amara Solari

なぜマヤ文明は世界が20121221日に終わると考えたのか? 世界終末論ビジネスは2012年説で大繁盛です.なぜ多くの人がマヤの終末論に関心を持つのか?

FT January 2, 2012

The big questions for 2012

By Gideon Rachman

Gideon Rachman・・・政治は指導力を求められるが,不況によって,必要とされる国際的な協力はますます難しくなる.アメリカも,ドイツも,中国も,それを示せないだろう.

Deanne Julius・・・政府と民間との境界線をどこに見るか? 経済における政府の役割とは何か? それは経済問題のように見えるが,そうではない.政治的な問題だ.政府の最適規模は経済学で決めることができない.ユーロ危機も,アメリカ大統領選挙も,政治に答を求めている.

2012年は,ますます多くの金融危機が政治的な危機を呼び起こす.

Moisés Naím ・・・2012年の最重要なテーマは不平等だ.

不況によって,不平等が政治的に維持可能な水準は大きく変化した.“Six Walmart heirs are wealthier than US’ entire bottom 30 per cent”というthe Los Angeles Timesの記事にそれが見える.

JPMorgan Chaseの幹部Jamie Dimonが不満を述べたように,社会にとって,富を革新や才能,ハード・ワークの成果とみなすことは重要だ.しかし,現実の富は,誰もが知っているように,汚職,差別,独占,企業犯罪,マドフのようなあからさまな詐欺からも生じている.

難しいのはその先だ.不平等を減らすことが,投資,革新,リスク・テイク,ハード・ワークを損なわないようにしなければならない.

Anne-Marie Slaughter・・・情報技術がパワーを変えた.ますます多くの革命が起きるだろう.

そのスピード,スケール,信頼性において,情報の利用は大きく変わった.個人を破壊することは,その社会を破壊する.逮捕,殴打,拷問,強姦,監禁,誘拐,殺害,など,個人は権力によって破壊されてきた.しかし,その言葉やイメージは,今や瞬時にして社会に波及する.一人の痛みや憤慨は人々を動かし,抗議の声と街頭行動の奔流になる.

しかし,革命は究極の破壊である.改革を通じて制度を変えるより,一気に破壊する.賢明な政府であれば,革命を予防し,抗議の声に対して迅速な,意味のある改革を実行する.賢明な政府は少なく,革命は波及する.

Roger Altman・・・技術による効率性の改善は,新規の供給とともに,石油の枯渇と価格変動,その国際政治における重要性を大幅に減らした.アメリカ,カナダ,ブラジル,カナダのような政治的に安定した諸国がエネルギー供給を増やすだろう.環境への影響はわからないが.

FT January 3, 2012

Welcome to another year of protest and instability

Jeffrey Sachs

FP Tuesday, January 3, 2012

The top risks of 2012

Posted By Eurasia Group

1The End of the 9/11 Era・・・経済的なリスクへ. 2G-Zero and the Middle East・・・主要国間の不協和音. 3Eurozone: the rollercoaster ride rolls on・・・ユーロ危機. 4United States: right after elections 5North Korea: implosion or explosion 6Pakistan: turmoil, spillover 7China: trouble in the neighborhood 8Egypt: a transition in trouble 9South Africa: populism ascendant 10Venezuela: a no-win election


l  繁栄・成長という理想は続かない

Project Syndicate 2012-01-04

Schadenfreude Capitalism

Harold James

経済を組織する答えはないのか? 永久に繁栄できる仕組みはないか?

社会主義圏が崩壊し,アメリカ型の資本主義,金融ビジネスの膨張が破裂した.そして,ユーロ危機はヨーロッパの福祉国家によって導かれた破滅のように見える.誰でも,他人の不幸を観るのは楽しいものだろう.中国は欧米の愚かさを笑っているのか?

高速鉄道の事故を隠ぺいした事件だけでなく,中国人も政府が正しい政策を取れるかどうか,心配している.ロシアやアルゼンチンの管理された民主主義も国民の幻滅に苦しみ始めた.

要するに世界の主要諸国は脆弱さの源をますます多く共有している.他人の不幸は,すぐに自分たちのものになる.グローバル経済とは,経済モデルの失敗と暴動に満ちた世界だ.幸福のモデルにはますます大きな期待がかかる.

永久に繁栄し,完璧に安全な,支配を約束してくれる経済の仕組みなど,無いのだ.グローバルな経済モデルの競争は,少しでも反映しているモデルをまねて,急速に広めるだろう.そのような成功は一時的なものでしかなく,すぐに一斉に崩壊し始める.

産業革命の時代には,繊維産業,鉄鋼業,鉄道建設でさまざまな革新を取り入れた者が,結局,豊かにはなれなかった.利潤は激しい競争で消え去ったのだ.しかし,19世紀後半から20世紀にかけて,異なった種類の成長が現れた.彼らは富を蓄積し,公共政策を使って激しい競争圧力から守られる.

成長モデルを求めるのは,経済の成功を永続化できると思うからだ.民間ができないように,政府もそんなモデルを持っていない.

Project Syndicate 2012-01-02

Rethinking the Growth Imperative

Kenneth Rogoff

成長が政策の究極の目標なのか?

人間の幸福を図るためにその他の統計が優れているという批判がある.それ以上に根本的な批判は,人間が社会的な生物であることを成長モデルが正しく反映していない,というものだ.たとえば,急速に成長する国は,どのような統計で見ても改善を示すけれど,人々の満足が同じように高いとは限らない.また先進諸国では,個人が他者の生活水準と比較して満足を得る.また,他者の行動による評価は,環境破壊と満足度などにも影響する.

また,成長率が高いことは他のリスクを生じている.たとえ1%の成長率でも70年で約2倍の生活水準に達する.2世紀で8倍になる.2%であれば35年で2倍になり,わずか1世紀で8倍になる.しかし,それが長期的に持続可能か? 世界にはどのような影響を生じるのか? 絶対的な生活水準によって,どれほど実質的に満足が高まったと言えるのか?

むしろ,成長は国家の競争であり,威信なのだ.安全保障のために国家は競争を競っている.富と生産力は世界的なステイタスだ.

不確実性が増し,危機の時代にあれば,成長の意味を問い直すべきだ.


l  中国共産党は崩壊する

FP DECEMBER 29, 2011

The Coming Collapse of China: 2012 Edition

BY GORDON G. CHANG

2001年半ば,私は中国の崩壊を予言した.なぜならWTOに中国が加盟したことで,共産党はその衝撃から権力を失うはずだと考えたから.

中国が共産党支配の下で成長しているように見えるのは,そのショックを和らげる介入に他の主要国が寛容であったからだ.また,1.改革開放政策,2.冷戦終結とフロンティアの拡大,3.人口転換の「配当」,を利用できたからだ.

その効果は続かない.いずれもすでに終わった.1.共産党は鄧小平の政策に背を向けた.2.世界の成長は金融バブルで2008年に終わった.3.人口転換は急速に高齢化による負担になる.

2008-09年の世界市場に例のないほどの景気刺激策を取った結果,バブルとインフレの処理が迫っている.金融崩壊は避けても,日本型の長期停滞が来るだろう.上昇を阻まれた人々の不満は共産党政権に向かう.社会変化は加速している.豊かになって都市化した人々は,共産党の一党支配を時代遅れなものとみなすだろう.

グローバルの変化の受益者であった中国が,その犠牲者になる.

NYT January 1, 2012

In China, the Grievances Keep Coming

By YU HUA

WSJ JANUARY 4, 2012

China's New Cultural Revolution

FT January 4, 2012

China’s princelings should not rule alone

By John Gapper


l  ユーロ危機の解剖

FP DECEMBER 29, 2011

China to the Rescue?

BY JEAN PISANI-FERRY

FT December 30, 2011

The Euro Clouds

guardian.co.uk, Sunday 1 January 2012

An unhappy anniversary for the euro

John Grahl

1999年に誕生したユーロが,コインや紙幣として,市民の前にその姿を現したのは3年後であった.2012年は10周年だ.

先の10周年,2009年で,ECBのトリシェ総裁は,ユーロが15000万人のヨーロッパの雇用を増やした,と称賛した.しかし,そのうちの8900万人はヨーロッパの周辺,すなわち,アイルランド,スペイン,ギリシャ,ポルトガルで生まれた.

それはユーロの成功ではなく,むしろ不均衡を拡大してしまう,その失敗を示すものだった.

財政再建・緊縮の「監視同盟」を強化するドイツの提案は成功しないだろう.なぜなら,そのマネタリストにも似た数量制限目標には合理的な基礎がないから.それに代わる政策には,現下の諸問題を観るなら,三つの基本要素がなければならない.1.大規模な債務免除.2.強い経済から弱い経済への財政移転.3.マクロ経済政策の協調.

中国に次ぐ貿易黒字を出しているドイツ経済は,数年前に社会保障コストを削り,VATの増税でまかなった.これは内的な切り下げだった.今はこれを逆転し,減税するべきだ.

FT January 2, 2012

EU still a model for a volatile world

SPIEGEL ONLINE 01/03/2012

Merkozy's Men

Advisers Seek to Bridge Euro Differences

By Ralf Neukirch and Mathieu von Rohr

Project Syndicate 2012-01-03

The Decline and Fall of the Euro?

Daniel Gros

帝国は外部からの攻撃によって滅びるより,内部の反体制派によって蝕まれる.ユーロ圏もそうだ.ユーロ圏全体のマクロデータは決して悪くないからだ.その意味では,ユーロ圏が滅びると決めつけるのは,まだ早い.

貯蓄がないのではなく,その配分が偏っている.全体として,ユーロ圏は十分な貯蓄があるのに,北欧の人々は南欧に融資したくない.

黒字国のドイツがすべて融資すれば問題は解決するはずだが,当然,彼らはそれを望まない.ECBが債務のすべてを返済保証すれば問題は解決するはずだが,当然,ECBはそれを望まない.

過重債務を組み替えることは難しい.それはしばしば債務奴隷からの暴力的な解放になった.今は債権者と債務者が,もっと平和的に,欧州委員会やECBの中で争っている.

しかし,問題は解決しないままである.ユーロが崩壊するとしたら,それは解決不可能だからではなく,政治家たちが必要なことをしないからだ.もし生き残れるとしたら,債務者の調整,債務の削減,そして改革をするために必要な時間を与える融資,が適切に組み合わせられるからだ.

資源(貯蓄)はある.それを動かす政治的意志が必要だ.

VOX 3 January 2012

Happy 2012?

Charles Wyplosz

2011年は2010年よりも良い年であるように願ったけれど,危機は悪化し,2012年も見通しは悪い.不況になるのはほぼ確実だ.

なぜ危機は長引き,深まり,拡大しているのか? 財政規律がなく,モラル・ハザードがはびこった.経常収支の不均衡はそのおまけだ.しかし,投機や格付け会社を非難するのは的外れであり,インフレや予算赤字は問題にならない.銀行の資産は悪化し,デフォルトのリスクが高まり,不況が強まるだろう.

完全な処方箋はなかったし,誰にも描けない.民間部門が債務負担を分担する提案(PSI)は,出たり消えたりして,誰も債券市場に復帰する見込みを持てないままだ.財政安定協定を強化する提案も多かったが,それは主権国家間では不可能な合意だ.いくら議論しても無駄だろう.

ギリシャ,アイルランド,ポルトガルの危機が,イタリア,スペインに広がって,今ではベルギーとフランスも巻き込んだ.不況が事態を悪化させるのはもちろんだ.

危機は,不思議なことだが,サミットによって一時的に緩和し,結局,また悪化した.政治家たちは金融市場についても,その複数均衡の性質も理解しなかった.専門家たちが十分に検討した提案であると思うだろうが,そうではなかったのだ.なぜか?

欧州委員会は,サミット(政府閣僚会議)から締め出されていたし,彼らと対立したくなかった.あるいはサルコジとメルケルは,政治だけで解決できる,と考えたのかもしれない.何度も失敗してから,ようやく経済学を無視できない,とわかったのだろう.

そもそも政治は特殊利益に支配されているのか? たとえば自国の銀行を守ることだ.ECBは財政規律を守らせるために危機を利用しているのではないか? さらに,政治的に受け入れ可能な範囲を拡大することを目指している.

ユーロ危機が複雑であるのは,マクロ経済の不均衡を是正するために,金融システムの混乱とガバナンスの混乱が二重に難しい状況を作っているからだ.債務危機は悪化し,市場アクセスが制限され,金利が上昇する.それは悪循環だ.さらに,債務危機は銀行危機と結びつく.なぜなら政府債券は銀行の主要な資産だから.政府が銀行を救済しても,政府自身の債務危機を悪化させるだけだ.政府による銀行救済のモラル・ハザードは深刻だ.

ユーロ危機を解決するには二つのこと(そして2つ追加)をするしかない.

1.   市場アクセスを失った政府債券は救済する.しかし,救済はすべてではない.債務の組み替えを促す必要がある.部分的なデフォルトが必要だ.

2.   救済額は評価が難しく,非常に大きなものであるから,ECBが行うしかない.ユーロ圏の政府債務は総額で9兆ユーロに達する.・・・それに加えて

3.   銀行の資本が増加されるべきだ.できれば部分的デフォルトの前に.

4.   ユーロ圏の財政規律を早急に確立するべきだ.しかし,条約や憲法改正では間に合わない.

条約で財政規律を強めるのはすでに失敗した.規律は外部から与えられる.すなわち,財政破たんすればIMF融資を申請し,その再建計画に従うのだ.これは今までと全く違う問題になる.新しい条約は必要ない.これまでECBは勝手な政府債券を引き受けさせられた.今後はECBが引き受ける資産は「財政規律委員会(the Fiscal Discipline Board)」が決めたものに限る.

こうした改革は,ほとんど一晩でできる.

guardian.co.uk, Wednesday 4 January 2012

This Hungarian hangover could cost the EU more credibility than a failed euro

Esther Kinsky

FT January 4, 2012

How to stop the fire spreading in Europe’s banks

By Enrico Perotti

(China Daily) 2012-01-04

The Europe of the future

By Jean-Claude Trichet

SPIEGEL ONLINE 01/05/2012

Ponzi Planet

The Danger Debt Poses to the Western World

By Alexander Jung

FP JAN/FEB 2012

The Myth of Europe

BY GARETH HARDING


l  不況のときに支出削減するな

NYT December 29, 2011

Keynes Was Right

By PAUL KRUGMAN

ケインズは,スランプのときではなく,ブームのときに支出を削れ,と大蔵省に宣告した.景気がよくなるまでは緊縮財政など取るべきではない.

オバマの景気刺激策は効果がなかった,という批判を受けている.しかし,2009年に法案が通過したとき,不況の大きさに比べてその刺激策では小さすぎる,とわれわれは警告した.ヨーロッパではギリシャやアイルランドが救済融資の条件として緊縮を求められ,経済が二桁の割合で悪化している.短期の予算赤字にこだわれば,不況と失業が悪化する.

ケインズの忠告は75年前と同じように正しい.

NYT January 1, 2012

Nobody Understands Debt

By PAUL KRUGMAN

SPIEGEL ONLINE 01/05/2012

Ponzi Planet

The Danger Debt Poses to the Western World

By Alexander Jung


l  ホルムズ海峡封鎖に怯えるな

NYT December 29, 2011

Iran and the Strait

FT January 4, 2012

Iran is baiting, but America won’t bite

By Ian Bremmer and Cliff Kupchan

イランはホルムズ海峡を封鎖すると脅している.イラン政府はアメリカの貨物機に二度と戻ってくるな,と警告した.

しかし,イランの言葉ははったりBluffingである.予想される将来に戦争が起きることはないだろう.

テヘランはこの数か月にわたって不満を高めてきた.特に,最近の法案は,イランの石油販売を難しくし,利益を減らすだろう.それはイランの生命線を損ない,ハメネイとその仲間を苦しめる.彼らが西側の市場と外交官を攻撃するのは予測されたことだ.

しかし,イランは戦争を望まない.ホルムズ海峡を軍事的な封鎖すれば,自分も輸出できなくなる.海峡封鎖はアメリカ海軍によって数週間で解除されるだろう.その攻撃はイランの宝石である核施設にも容易に拡大される.ハメネイは通貨価値の下落と内紛を得るだけだ.テヘランの主要な目的はアメリカと同盟諸国を怖気づかせて,イランの石油輸出に対する制裁を解除することである.実際,その好戦的な主張とは別に,交渉を求めるサインを出している.

戦争するには敵が要る.しかし,アメリカもイスラエルも戦う気はない.イスラエルは制裁を歓迎している.イラン攻撃は大きなギャンブルだ.また,アメリカの軍はイラン攻撃に反対し,世論はイラクから撤退し,これ以上の中東における紛争を支持しない.それは石油価格を上昇させて世界経済を本格的に悪化させるだけだ.

もちろん,判断ミスから戦争は起きうる.もっと将来にも戦争が起きるかも知れない.しかし,今はいくらイランが噛み付いても,戦争にならない.

LAT January 4, 2012

Strait talk with Iran

By Frederick W. Kagan

WSJ JANUARY 4, 2012

Iran Won't Close the Strait of Hormuz

By BRADLEY S. RUSSELL AND MAX BOOT

guardian.co.uk, Thursday 5 January 2012

Iran could be bluffing in the strait of Hormuz – but can US risk calling it?

Simon Tisdall

WP January 5, 2012

Iran’s growing state of desperation

By Fareed Zakaria

ロムニーなど,共和党の大統領候補たちはイランを最大の脅威と見なしているが,それは間違いだ.イランは以前よりも弱くなった.制裁はイラン経済を突き落すだろう.政治システムもばらばらだ.唯一の同盟国であるシリアは反政府デモに苦しみ,湾岸の王国は反イランの包囲網を築く.ヨーロッパでさえ,制裁強化を決めた.通貨価値の下落はイランの弱体化を示す.

核施設は古い技術であり,止められない.しかし,核保有で北朝鮮が強くなったのか? 

オバマ政権はイランとの交渉による和解をあきらめたようだ.イランの体制はまとまりがなく,和解への用意がない.制裁による圧力を強めることで,交渉に本気で取り組むように求めている.


guardian.co.uk, Friday 30 December 2011

Europe's crisis of faith

Pope Benedict XVI


WP December 30, 2011

The year of the befuddled leader

By David Ignatius, Published: December 30

NYT December 31, 2011

A World in Denial of What It Knows

By GEOFFREY WHEATCROFT


l  TPPは差別化と中国封じ込めだ

Project Syndicate 2011-12-30

America’s Threat to Trans-Pacific Trade

Jagdish Bhagwati

WTOを掘り崩すのがまだ足りないかのように,アメリカは自由貿易を破壊するTPPthe Trans-Pacific Partnership)を推進している.TPPはアメリカの指導力を示すものではない.世界貿易システムを守るためには,TPPをいわゆる「ドラキュラ効果」によって死滅させるべきだ.すなわち,正しいことを知れば,日を浴びたドラキュラのように滅び去る.

TPPとは,アメリカの産業利益を代表する議会が唱えた公共政策を装う信条表明である.それは差別化に依拠した二国間もしくは多国間の「自由貿易協定」であるが,「自由」ではなく,「特恵的」もしくは「差別的」なシステムpreferential-trade agreements (PTAs)である.「パートナーシップ」という言葉で「協力」や「世界市民的」な意味を偽装している.

原則としてはどの国もTPPに参加できる.しかしよく見ると,中国は参加していない.TPPは中国の攻勢に対抗するため組織された,対抗戦略,封じ込め策である.TPPは自由貿易ではなく差別化するためのものであるから,貿易に関係ない項目がいっぱいある.労働基準や資本規制の抑制を含めたことにより,中国は参加できない.

そもそもTPPの目指す開放性は間違っている.ベトナム,シンガポール,ニュージーランドのような小国を騙して結んだアメリカに有利な取り決めを,そのあとで,日本のような,他の大国にも拡大しようとしている.彼らは差別的な取り決めを,「21世紀型の『高度な』貿易協定」と称するのだ.

アメリカの地域主義は,近隣諸国を結ぶ南北アメリカ自由貿易協定(FTAA)を目指している.それはNAFTAを南米に拡大するだけでなく,貿易に関係ない多くの条件を含めている.だからブラジルの元大統領で労働組合指導者のLuiz Lula Inácio da Silvaはアメリカの求める労働規制を受け入れなかったのだ.

こうしてアメリカは南北アメリカを二つの地域に分割し,アジアも同じように分割するだろう.アメリカがアジアに向けてTPPを提唱できたのは,中国がインドや日本に対抗し,南シナ海の領有権を主張するような,攻撃的主張を始めたからだ.多くのアジア諸国はTPP参加を,中国に対抗するアメリカの力を地域につなぎとめることだと理解している.旧ソ連圏の諸国がEUNATOに逃げ込んだように.

TPPはアメリカの中国封じ込め策であり,産業利益を代表するロビイストの要求を入れたものだ.TPPに中国を入れるためには,こうしたロビイストをすべて排除して,自由貿易の信用を高めるしかない.


Project Syndicate 2011-12-30

America’s Financial Leviathan

J. Bradford DeLong

NYT January 3, 2012

Bring Back Boring Banks

By AMAR BHIDÉ

Project Syndicate 2012-01-05

Global Finance’s Supply-Chain Revolution

Andrew Sheng


Project Syndicate 2011-12-30

Europe’s Market-Led Integration

Joschka Fischer


Project Syndicate 2011-12-30

The Streets of 2012

Naomi Wolf

WP January 5, 2012

The danger in a declining middle class

By David Ignatius


FP Friday, December 30, 2011

Personal favorites from 2011

Posted By Stephen M. Walt

FP JAN/FEB 2012

8 Geopolitically Endangered Species

BY ZBIGNIEW BRZEZINSKI


guardian.co.uk, Tuesday 3 January 2012

Liam Byrne's call for a new welfare state: panel verdict

Diane Abbott, Sandra Bond, Kaliya Franklin, Alison Banville, Campbell Robb


FP JAN/FEB 2012

Epiphanies from Austan Goolsbee

INTERVIEW BY BENJAMIN PAUKER


FP JAN/FEB 2012

The Post-Colonial Hangover

BY JOSHUA E. KEATING


l  金融危機の後に続く改革とは

BLOOMBERG Jan 2, 2012

Why We Are Uneasy About Global Economy in 2012

By Harold James

金融市場と政府関係者の間に大恐慌以来の大きな不安が広まる中で新年を迎えた.2008年にリーマン・ブラザーズが倒産したときよりもひどいくらいだ.利用可能な政策手段がない,効果が限られている,と思うからだ.

危機には二つの部分がある.長期の見通しが立たないこと.さらに,その結果として,安全な,確かな資産が失われること.これらが合わさって短期志向になる.

リーマン・ショックの時には,優れた政策によって危機が解消される,という信仰があった.特に,景気循環を抑える財政・金融政策によって大恐慌は防げただろう,という広い合意があった.

確かに金融政策は2009年に安定化を促したが,工業大国の取った金融緩和政策には,新興諸国,ブラジルやトルコ,から批判が起きた.インフレやバブルを輸出している,というのだ.

さらに,財政刺激策の結果は失望をもたらした.アメリカの財政刺激策7670億ドル失業率は目標ほど下がらなかったし.中国の財政刺激策6300億ドルは,成長を維持したが,今や資産バブルや銀行融資の膨張が破裂しつつある.

ヨーロッパ諸国は,EUや他国,特にアメリカから迫られて,刺激策を協調した.しかし,政府債務の見直しが始まると,それは彼らを脆弱にしただけであった.緊張が高まった結果,サミットを繰り返した末に,ECBが銀行に融資し,政府債券を購入したが,不安は収まらない.

景気回復と長期的な安定性を実現するためには,大恐慌から類推して,三つの難問を解かねばならない.

1.金融政策は多くの国で為替レートにより制約されている.・・・ユーロ圏のショックは為替レートを失った.単一通貨を採用して,1920年代の金本位制を再現したようなものだ.しかし,金本位制(ユーロ圏)からの離脱は,債務の膨張と,今でも支払えない債務負担を増しただけだった.離脱は苦しみを増すだけで,解決策にならない.

2.政府は,金融危機が引き起こした財政破たんをどうして処理したらよいか,わかっていない.政府債券が持続可能でないと疑われると,突然,金利が上昇し,デフォルトが起きると考えてリスク・プレミアムが劇的に増大する.

そうした状況では刺激策よりも追加のコストが問題になる.短期的には意味のある刺激策も,長期的な財政不安をもたらす.ギリシャが問題であるのは,それがイタリアやフランスのデフォルトにつながる可能性を示すからだ.

3.政策の無効は,銀行の不安や危機によって強められた.金融部門の弱さと政府債券の危機とが結びついて債務返済を不確かなものにした.1931年にも,中欧で起きた銀行パニックがイギリスに影響し,アメリカとフランスにも広がった.金融不安が決定的な形で加わり,それは不況から大恐慌に変わった.

金融不安に正しいマクロ対応策はない.それはゆっくりと,苦しみつつ,バランスシートを改善する.そして,インセンティブを見直し,銀行が危険な行為に走らないようにする.たとえ銀行のバランスシートをきれいにしても,融資はなかなか増やさない.

唯一確実に正しい対応策とは,通商政策の保護主義化を止めることだ.1930年代には,デフレと戦うために保護主義の雪崩が起きた.その政治過程は解明されて,議会から大統領府に通商政策の責任が移されることになった.

同じことを財政政策についても言える.財政的な安定性を確保するシステムが有効だ.たとえば,1990年代の危機の後にスウェーデンがやったように,アメリカなどで独立財政(監督)委員会を設置する.地域的に重要でも,一般には機能しないような,プロジェクトを削り,赤字を減らして財政の信頼性を高める.

欧米において,財政政策決定の政治的仕組みを合理化する試みは,非常に困難である.


l  世界経済を救う

FP JAN/FEB 2012

How to Save the Global Economy: Whip Up Inflation. Now.

BY MENZIE CHINN, JEFFRY FRIEDEN

現在の金融危機に際して興味深いのは,債務に苦しむ国がどれも伝統的な対応策を採用していないことだ.すなわち,インフレによる債務負担の軽減だ.

債務危機から回復する過程は,常に,緩やかで苦痛に満ちている.それには経済的,かつ,政治的な理由がある.経済的に,債権者は損なわれたバランスシートを回復しなければならず,融資には非常に慎重になる.債務者は債務を減らすために貯蓄しなければならず,支出が増えることはすべて嫌う.同時に,債務国では負担をめぐる押し付け合いが政治的に加熱する.納税者,銀行家,公務員,投資家?

インフレが少し高めることで,これらの問題がすべて緩和できる.債務額は名目で固定されているから,インフレはその負担を軽減する.それは確かに強制された債務の組み替えである.債権者が負担を強いられている.しかし,同じことはもっと明白な交渉においても,結局,行われる.

アメリカやユーロ圏では,ほとんどの債務を家計が負っているから,この何百万もの住宅債務を交渉によって組み替えることは不可能だ.しかし,インフレなら経済全体に対して行える.それは政治対立をいくらか緩和し,経済負担をいくらか軽減できる.

しかし,ユーロ圏のギリシャ,アイルランド,イタリア,ポルトガル,スペインはインフレを促す金融政策を取れない.実際,彼らの債務は3分の2から4分の3が対外債務であり,フランスやドイツに債権者がいる.それゆえECBがインフレを進める政策を取れば,強力な黒字国の債権者から奪って,赤字国の債務者に再分配することを意味する.それがどれほど政治的に難しいとしても,債務危機の解決策には必要な部分である.政治家たちが集まって解決策を示すのはあまりにも襲う,結局,解決できないのではないか,と思えば思うほど,インフレだけが政治的な実行可能な解決策になる.

アメリカの連銀は金融緩和を行い,まさに景気刺激と超低金利に加えて,「量的緩和」によるインフレを促した.それはドル安による輸出刺激策でもあるが,ドル安は主に中国の介入で抑えられている.また,金危機の中では,ドルが避難所として資金を集めているから,ドル安にならない.

我々は大幅なインフレを支持しているのではなく,いくらか高めのインフレ率を目標にするよう提案する.おそらく,4-6%のインフレ率を数年間続ける.連銀は弾力的に4-6%の幅に目標を定めて,失業率にも目標を固定する.同じような提案をシカゴ連銀総裁のCharles Evansが行っている.失業率7%以下,インフレ率3%以下を目標にする.こうすれば,インフレ率が低くても,失業率が高まれば金融緩和するという意味で,インフレ期待を創りだすだろう.失業率が下がればインフレ期待も下がる.

現在の最優先目標は,投資,成長,雇用を刺激することだ.インフレ期待が高まれば,実質金利は下がり,投資や消費が増える.中国のようなドル・ペッグの国は政策を維持するのが難しくなる.ドル安は輸出を刺激し,輸入を抑え,国内生産を増やす.アメリカは成長し,債務を減らし,回復し,長期の財政再建を進める.

FP JAN/FEB 2012

How to Save the Global Economy: Raise the Minimum Wage. A Lot.

BY JAMES K. GALBRAITH

FP JAN/FEB 2012

How to Save the Global Economy: Tame the World's Crazy Currency System

BY DAVID M. SMICK

中国だけではない.どの国も通貨市場に介入して為替レートを操作している.スイス,日本,その他.しかし,重商主義的な政策の結果は,通貨の競争的な切り下げだ.アメリカの支配力が低下するとともに,国際通貨市場は混乱に向かうだろう.ますます勝手なゲームをし始めている.

日本と資本財の輸出競争にも参加する中国は,円高を支持する介入を行った,と日本政府が神経をとがらせる.ユーロが危機にもかかわらず下落しないのは,やはり中国が主要な輸出市場としてユーロ安を望まず,介入しているからだ.

IMFは数十年間の方針を改め,新興諸国の資本規制を許した.すると早速,ドイツも資本規制の準備をした.もしユーロ圏が崩壊すれば,周りの国から激しい切上げ圧力を受けるからだ.

グローバルな貿易システムがそうであるように,資本・通貨市場も,透明性を高めた,交渉によって成立したルールを,すべての者に開いたシステムで実現するべきだ.

FP JAN/FEB 2012

The FP Survey: Follow the Money


NYT January 2, 2012

Workers of the World, Unite!

By DAVID BROOKS

WP January 3, 2012

Isolationism redux via Ron Paul

By Richard Cohen

NYT January 3, 2012

So Much Fun. So Irrelevant.

By THOMAS L. FRIEDMAN

情報革命,グローバリゼーション,労働市場.成長のための都市・研究施設を構築する.

NYT January 3, 2012

Iowa Caucuses

FT January 4, 2012

Just about everyone is unhappy bar Mr Romney

By Jacob Weisberg


FT January 3, 2012

The Tea Party tsunami and US fiscal deadlock

Alan Greenspan


Project Syndicate 2012-01-03

Peril or Promise in North Korea?

Javier Solana

Global Times | January 04, 2012

Kim’s death chance for joint Sino-US efforts

By Abraham M. Denmark

Project Syndicate 2012-01-04

North Korea’s Tears

Ian Buruma


WSJ JANUARY 4, 2012

Defense Boost Ends Tokyo Drift

By MICHAEL AUSLIN

FT January 4, 2012

Japanese manufacturing in search of salvation

By Jonathan Soble

日本株式会社の事務所や工場には警報ベルが鳴り響く.円高,電力不足,高い法人税率,関税自由化の遅れ,中国と韓国の厳しい追い上げ,日本が誇る自動車・電機産業でさえ,低コストの海外生産拠点に逃げ出す圧力が高まっている.政治家,実業界,メディアは悲鳴を上げている.もし何もしなければ,日本にかつて成長をもたらした製造業が消滅する,と.

BLOOMBERG Jan 4, 2012

Japanese Don't Want a Nuclear Future: The Ticker

By William Pesek

WSJ JANUARY 5, 2012

Eun-Funny


SPIEGEL ONLINE 01/04/2012

Encounters with the Calabrian Mafia

Inside the World of the 'Ndrangheta

By Andreas Ulrich


WP January 4, 2012

No longer the land of opportunity

By Harold Meyerson

******************************

The Economist, December 17th 2011

A comedy of euros

The European Union and the euro: Game, set and mismatch

Life outside the EU: In with the out crowd

Bagehot: How Britain could leave Europe

Economics focus: One nation overdrawn

(コメント) クリスマス特集号にも,ユーロ危機に関する記事が多く載っています.最後の論説は,アメリカは財政同盟によって通貨統合できたじゃないか,という単純な比較を複雑な歴史によって検討しています.緊密な政治的統合がなされるまでは,通貨統合も財政統合も,決定的な解決策にならない,と考えているようです.

******************************

IPEの想像力 1/9/12

お正月には、古本市場が500円分の割引券を送ってくれました。散歩に行って,Z・ブレジンスキー著『地政学で世界を読む』を買いました。ブレジンスキーの議論は、カンナやカプチャン、アイケンベリーとともに、注意を惹きました。

余りにも面白い本は、少ししか読まない。そんなことはありませんか?

トニー・ブレア著『ブレア回顧録』がそうです。何が問題だと考えたか.それをどのように変えたかったのか.何が障害であったか.自分は誰と,どう戦ったか.ブレアのメッセージは実に明快で,一緒の冒険しているような気になります.もちろん,イラク戦争のように,その自信が災いしたこともあるわけですが.

どうして日本には,こうした雄弁な指導者がいないのでしょうか?

ブレアに唸ったのは、10年前です。

「私がトニー・ブレアについて思い出すことと言えば,イギリス全土の牛に口蹄疫が拡大しつつあったとき,決してひるむことなく,その対策と被害農家への補償に邁進した姿です.空を覆う煙と異臭を発する家畜の焼却作業を指揮することは,政治家にとって最も困難な仕事であったと思います.そんな中でも国民の支持を失わなかったことに,私は驚嘆しました.」(IPEの果樹園 2003630日 http://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2003/063003rev.htm

ブレアは明確に伝えます.

「私は英国を,階級よりも実力に関心を向け,開かれた社会とグローバル経済を受け入れる国にしたかった.公的サービスと福祉国家を,第二次世界大戦後の1945年ではなく,21世紀初頭の世界にふさわしいものに改革しようとした.」

私は,通貨危機の起きない国として北朝鮮を挙げたアイケングリーンと,このブレアの目指した英国を比較します.ここに,「グローバル国家」がある,と思います.さらに,ブレアのもう一つのメッセージも強烈です.

「たとえ英国の力が新興国に比べて減退しても,欧州の一員であることと米国との同盟を活用して,世界の決定に影響力を持とうとした.」

私は,日本の首相が「東アジア共同体を目指す」と言い,「TPPへの参加を検討する」と言うときに,同じメッセージを,もっと強く示せばよかったのに,と思いました.ここに,「国際秩序の問題」がある,と思います.日本はアメリカに保護された二流の国家ではないし,中国は敵ではない.同じ国際秩序の下で,平和と繁栄を実現できる.

日本にブレアがいたら,きっとそのように訴えて,従軍慰安婦や南京大虐殺についても,アジアの戦争犯罪「真実と和解」委員会を設置したでしょう.

しかし、ビル・エモットはブレアに厳しい評価を示しています。政治家にとって辞任の時期は重要だ.エモットの見るところ,小泉純一郎は優れた指導者で,ブレアは辞める時期を逸した独裁者に近かったようです.その点でも,ブレアはサッチャーに似たのかもしれません.

ブレアの回顧録と並べて,一冊の本を取ってあります.細谷雄一著,『倫理的な戦争:トニー・ブレアの栄光と挫折』,です.日本人の書いた本で、わざわざゆっくり読みたいと思ったのは、小説を別にして、この本より前にもあったでしょうが、いつのことか思い出せませんが。

日経新聞の朝刊でも、全く同じ内容(?)がところどころ紹介されています。これも、毎日読んでいますが、そのたび呻吟してしまうのです。

「私が労働党を変革したいと思ったのは,父のように上昇志向のある人々の党にしたいと思ったからだ.成功すると同時に,同情心を持ち,自分より不遇な人を思いやる.個人だけでなく社会の力も信じる.」「思いやりを持つ実力主義」というのが新しい労働党の信条だ,とブレアは雄弁に語っています.

*****

実は115日です.自分も年末に書き上げるはずが延び延びになった論説を書くため,Reviewを飛ばしました.不規則ですが,部分的に紹介します.簡略ですが,時間がありません.

さて,そのおかげで,ミャンマー政府が政治犯をすべて釈放する,というニュースを聞きました.オバマ政権,クリントン国務長官は支持を表明しているようです.ミャンマーがアメリカとの国交を回復することから,もしかすると,北朝鮮やイランにも,政治的変化が起きるかもしれません.もう一つの「ベルリンの壁」が崩壊し,もう一つの「アラブの春」が爆発する瞬間に近付きます.

******************************