IPEの果樹園2011

今週のReview

12/19-/24

 

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中国のWTO加盟10周年 ・・・バルカン半島の危機 ・・・EUサミットの成果 ・・・2012年の世界経済 ・・・イギリスのEU離脱 ・・・石油の呪いを免れる ・・・米軍のイラク撤退 ・・・中国からの世界革命

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  中国のWTO加盟10周年

WSJ DECEMBER 8, 2011

China's WTO Decade

By ZHIWEI ZHANG

WTOに加盟して10年間で、中国経済は劇的に変わった。その成果は素晴らしいが、次第に改革への抵抗が増えている。32000億ドルの外貨準備、賃金上昇とインフレ、これらは改革を進めなければ長期的な成長が行き詰まることを示すものだ。

 

(chinadaily.com.cn) 2011-12-08

China as WTO member is a win for all

By Jiang Heng

この10年間で、中国は3000近い法と規制を廃止、もしくは、作ってきた。中国はWTOのルールに沿った経済と貿易ンシステムを築いたのだ。

中国経済の成長は多国籍企業MNCにとっても大きな機会であった。MNCは中国の高成長を享受し、欧米経済が減速したとき、中国は保護主義を取らず、景気刺激策を取って成長を持続することができた。MNCはこのことにより大きな利益を受けている。

中国における外国企業は、その中国的な要素と西側のアイデアを組み合わせて、何が「中国製品」とも定義できないような水準に達している。中国の国際化や市場経済化はもはや後退しない。

FT December 12, 2011

Miserly progress made on Doha trade talks

By Alan Beattie

FT December 12, 2011

Trading places


l  バルカン半島の危機

FP DECEMBER 8, 2011

A More Perfect European Union

BY SEN. JEANNE SHAHEEN

ユーロ危機だけがヨーロッパの統一を脅かす問題なのではない。バルカン半島の西部で暴力が再発する危険がある。それは15年に及ぶ平和構築の成果を失わせるものだ。コソボ北部における米欧の大西洋同盟を再活性化して、セルビアのEU加盟にも方針を示すべきだった。

ヨーロッパは金融・財政危機に直面しているときでも、過去60年間、アメリカがともに戦ってきた目標である、ヨーロッパの全域における自由と平和、という目標を忘れてはならない。


l  EUサミットの成果

FT December 9, 2011

The only way to save the eurozone is to destroy the EU

Wolfgang Münchau

二重の危機、ユーロ危機とEU危機を我々は得た。ユーロ圏は分裂するかどうかまだわからない。しかし、EUは分裂するに違いない。ユーロ圏はヨーロッパの法的枠組みの外に出る。その核心になる多国間の財政同盟はEUの分裂である。

ユーロ圏がますます統一した市場と金融システムを構築するとき、労働市場や税制でも統一を進め、同時に、その金融センターがユーロ圏の外にあることを許すとは思えない。

WP December 9, 2011

Time for the IMF to step forward

By Lawrence H. Summers

1970年代にはイギリスとイタリア、1980年代はラテンアメリカの債務危機、1990年代にはメキシコ、アジア、ロシア。IMFには多くの危機を政治的な介入から切り離して処理するという原則がある。

特に、IMFが解決策を示す時には、それが世界経済においても重要な影響を持つことが考慮されるだろう。またIMFが危機の対策を示して実行を監視するほうが、ヨーロッパ内のドイツがそれを行うよりも、域内の政治対立を刺激する恐れは少ない。

VOX 9 December 2011

Getting there, slowly though

Charles Wyplosz

128日、木曜日の夜、一つの会議がユーロを救った。しかし、金曜日の朝の反応を見れば、まだ先は長い。ゆっくりとではあるが、ヨーロッパはここまで来た。正しい方向で重要な一歩を進めたが、その細部はまだ決まっていない。

重要な成果はユーロ圏の国がすべて憲法を改正して均衡予算のルールを入れると決めたことだ。

第二に、EUは二つのスピードで進むことがはっきりした。これはEUが成立時に6か国であった制度のままである以上、やむを得ないことだ。イギリスは市場の役割を重視した金融モデルを保持し、大陸は銀行を重視する。どちらが優れているとは言えない。各国はそのモデルを自由に選択する権利がある。税制や労働市場についてもそうだ。

ユーロ危機を収束させるには、三つの手段を取ることだ。

1.  ECBが政府債券の最低価格を保証する。

2.  この先50年間の財政規律を信頼できるものにする、あるいは、既存債務を十分に減らす。

3.  債務の組み替え(減額)を行う。

このサミットで問われたのは、ヨーロッパの政治指導者たちがECBに、その仕事(最後の貸し手)を行ってもモラル・ハザードを生じない(政府がますます赤字に頼ることはない)、という政治的な保証を与えることであった。それゆえ各国は財政均衡の強いルールを約束した。

「財政安定と成長のための協定Stability and Growth Pact」は失敗したが、その理由は、中央集権的な財政規律のモデルを示しながら、欧州委員会は集権化できず、各国政府に財政政策を委ねてきたからだ。しかも、できそうにない、生産的でもない、罰金をその強制手段とした。これと異なるモデルは分散化するものであり、各国が法律によって財政規律を守る。アメリカの各州がしたがうモデルと同じだ。ヨーロッパは、ドイツよりもアメリカに似てくる。

均衡予算のルールは、もし十分な弾力性があれば、財政規律に対する合理的な反応である。サミットは、スイスから取り入れた、ドイツの「債務ブレーキ」に言及した。それは循環的な予算調整として述べており、財政による受動的な安定化を許すものだ。また一時的な逸脱も許容する。ルールの解釈は、採用や実施とともに、まだ、確定していない。

債務の組み替え、民間部門の負担dubbed private sector involvement (PSI)に関して、過重債務を負う国に対する避けられない一歩を踏み出した。他方、将来の債務については集団行動条項collective actions clauses (CAC)を入れて債務の組み替えを容易にすることに決めた。サミットでは、両方を求めるドイツと、両方とも否定するフランスの間で、妥協に合意したこと。あるいは市場の反発でPSIを外した、と解釈できる。時間とともに財政規律が確立されるなら、これでもよいだろう。

他方、誤解や混乱した声明は多くあった。

ECBがユーロ圏解体を避けるために決定的な行動を取る場合、政治的な正統性を確保したか、という問題は残る。それがないと、ECBは慎重な姿勢を崩さない。

Project Syndicate 2011-12-09

A Summit to the Death

Kevin O'Rourke

ヨーロッパのサミットが残した教訓とは何か?

第一に、収縮的なcontractionary財政政策とは、収縮でしかない、ということだ。それが経済を拡大する効果などなかった。

第二に、名目賃金を下げることは難しい、ということだ。そのためには景気が大きく悪化してしまう。アイルランドのように、弾力的な、小規模の、開放的国でさえ、失業率は14.5%にまで上昇した。19世紀的な「内的切下げ」戦略は、賃金と物価を引き下げることで成長をもたらす、と言われたが、アイルランドでその難しさが示された。EUはそれをユーロ圏の周辺全体で実現するというのか?

通貨同盟の損益がエコノミストによって計算されてきた。ユーロ圏は、為替レートを引き下げることができなくなることを、その重大な損失と示した。賃金を引き下げること、また、そのために不況を促すことは、為替レートの引き下げに代わる手段にならない。調整のコストをすべて赤字国に負担させるのは破滅への道である。

現代世界で、通貨同盟に対する反対の考え方は財政同盟である。もしある産業が衰退して不況になれば、その地域の住民は連邦税の支払いを減らし、より多くの財政移転を受け取る。金融の流れは不況を緩和するように働く。ヨーロッパでも財政同盟があれば、ドイツからユーロ圏の周辺へ2011年に財政移転が行われただろう。しかし、正しい財政同盟が、1990年には、東ドイツとの再統一コストに苦しむドイツに悩まされた。

それが念頭にあるため、最近のサミットで明確な点は、「財政安定同盟」がそのような財政同盟とは全く異なることだった。景気循環を抑制する財政移転を含む地域間の保険メカニズムを目指すのではなく、不況に陥った国に景気循環を増幅する調整を憲法に成文化するもの、その効果をユーロ圏内の他の地域で打ち消すような景気刺激策をともなわないものだった。これを「財政同盟」と呼ぶのは、そんな愚か者がいるけれど、まったくオーウェル的な言葉の乱用(ニュー・スピーク)だ。

ユーロ圏をすくためにはそれが必要だ、という意見が多い。だが、ユーロ圏を救うのは金融的な権力を確立したECBだ。確かに、ドイツはECBが最低限の流動性をユーロに保証するだけでも、この「財政安定同盟」を条件として求めている。しかし、それは政治的な議論である。経済的に見れば、そのような条件はユーロ圏の制度をさらに悪化させる。

中期的に見て、ユーロ圏を救うのは、インフレだけではないもっと多くの目標を追求する完全な中央銀行である。すなわち、失業、金融安定性、単一通貨の維持、である。金融システムを規制する共通の金融制度も必要だ。銀行と債券保有者の利益でなく、納税者と政府債券保有者の利益を守る共通の銀行整理制度が必要だ。そのためには財政同盟が求められる。

ユーロ圏崩壊の破壊的なコストを避けるために、EUの枠組みの外で、「財政安定同盟」との組み合わせが可能でも、それでは周辺における緊縮策が続き、それを緩和する刺激策もなく、反ヨーロッパ感情が爆発し、ポピュリスト政党が躍進するだろう。暴力的な衝突も否定できない。

苦痛の多い、長期化された没落過程が続く。そして、ユーロの崩壊は災厄ではなく、解放とみなされるのだ。

FP DECEMBER 9, 2011

The Merkelization of Europe

BY PAUL HOCKENOS

NYT December 10, 2011

Euro Crisis Pits Germany and U.S. in Tactical Fight

By NICHOLAS KULISH

オバマとメルケルは、金融ビジネスの役割について異なる考えを持っている。これはアイデアの戦いだ。グローバル化した世界で、持続可能な経済をどのようにしたら築けるか、異なった理解がある。

世界を大恐慌から救った、というオバマの自信は、メルケルの財政均衡優先に反対する。ドイツ人は、過去の記憶を捨てることはない。そして市場の信認が失われてベルルスコーニが退陣したことを歓迎している。

EUサミットの前に、ガイトナーはヨーロッパで警告を発したが、彼らはドイツに従うしかなかった。そのメルケルの勝利が成功であったかどうか、それは市場の結果次第である。

FT December 11, 2011

Snags, diversions – and the crisis goes on

By Wolfgang Münchau

NYT December 11, 2011

Depression and Democracy

By PAUL KRUGMAN

FT December 12, 2011

The summit will prove a footnote

By Gideon Rachman

guardian.co.uk, Tuesday 13 December 2011

Europe's hopeless last stand in defence of the single currency

Simon Jenkins

FT December 13, 2011

A disastrous failure at the summit

By Martin Wolf

キャメロン首相の行動は、EUサミットの失敗から関心をそらせた。財政の逸脱を許さない、というのはよさそうに感じるだろうが、失敗する。

メルケルとサルコジが合意したのは、“stability and growth union”ではなく、“instability and stagnation union”である。

ユーロ圏内の赤字国にとっては、不況を続けるか、他の黒字国が景気を刺激し、インフレを許すか、ユーロ圏全体として黒字を増やすしかない。

FT December 13, 2011

A word of advice for my emotional German friends

Beppe Severgnini

Project Syndicate 2011-12-13

The ECB Fear Factor

Philippe Legrain

BLOOMBERG Dec 13, 2011

EU Pact Could Make Germany’s Nightmare Come True

By Clive Crook

BLOOMBERG Dec 13, 2011

Four Ways to End the Euro’s Crisis of Confidence

By Peter Kurer

ユーロ危機を終わらせるためには、4つの対策が必要だ。政府債務の削減、成長回復、金融市場における信認回復、制度改革。

WSJ DECEMBER 13, 2011

The Euro Zone's German Crisis

By ALAN S. BLINDER

ユーロ圏は二つの重大な問題を抱えている。債務・銀行危機とユーロ圏内の競争力格差問題だ。

ユーロ圏は「非対称的なショック」を免れてきたから問題を生じなかった。今や、共通通貨のせいで問題が悪化してしまう。通常、景気の弱い経済は三つの方法で対処する。金融緩和、財政刺激策、通貨の減価、である。しかし、ユーロ圏内の国は二つを失い、財政刺激策で赤字を増やすしかなかった。

ECBがギリシャなどの政府債券を買い支えることはできる。しかし、難しいのは競争力の回復だ。為替レートは、生産性の差、物価・賃金の差、を反映して決まる。通貨同盟内では、各国の生産性上昇と物価・賃金の水準が一致する必要がある。

ところがユーロ圏内の物価変動は異なっていた。ギリシャやスペインのインフレ率が高かったのだ。他方、生産性の変化では、ドイツの上昇率についていけなかった。

ドイツとの差を解消するには三つの方法がある。第一に、ドイツのインフレ率をユーロ圏の他の諸国よりも高くする。財政刺激策や賃金の抑制を緩和することだ。第二に、他国がドイツの奇跡(生産性上昇)を学ぶ。第三は、他国がデフレを続ける。それは不況が続くことを意味する。

ユーロ危機は、ギリシャ問題であるとともに、ドイツ問題だ。

FT December 14, 2011

Europe needs a firewall to stabilise markets

By JohnPaulson

リーマン・ブラザーズの倒産に続く企業の再編から教訓を学ぶとすれば、ECBが政府債券の返済保証をすることだろう。アメリカの連邦預金保険公社はTemporary Liquidity Guarantee Programによって金融機関を救った。

1%の保険料を取って、ECBIMFは改革計画を示す。それを実施することで、イタリアとスペイン政府は満期になった債券をECBの保証を付けて、再度、資金調達できる。債券市場は安定化し、ECBのバランス・シートは拡大せず、インフレをもたらさず、ECBは流通市場に介入せず、イタリア・スペイン政府は流動性危機や支払い不能を回避できるから、保険は行使されることなく、ECBが手数料を得る。

BLOOMBERG Dec 14, 2011

German Force-Fed Austerity to Hurt for Years: Sebastian Dullien

By Sebastian Dullien

VOX 14 December 2011

The political endgame for the euro crisis

Charles A.E. Goodhart & Dirk Schoenmaker

欧州委員会の委員長を選挙で決めるべきだ。こうして高められた政治的正当性によって、委員長は加盟国に財政規律を求め、ユーロ圏全体に危機が波及することを防ぐ。また、銀行の監視と整理を行い、ユーロ圏全体の銀行システムを守る。

民主的に支持されていない財務大臣には力がない。財源のない政治指導者にも力はない。テクノクラートでは問題を解決できない。

guardian.co.uk, Thursday 15 December 2011

The IMF must realise that, in Greece, the treatment is worse than the disease

Costas Douzinas

SPIEGEL ONLINE 12/15/2011

Euro Worries

Berlin Remains Stoic in the Face of Growing Crisis

WP December 15, 2011

Europe’s clueless economic solutions

By Harold Meyerson

メルケルは、危機解消への期待を裏切って、ユーロ債発行に反対した。EUサミットは緊縮策を合意しただけだ。しかし、赤字諸国への主要な輸出国はドイツである。財政緊縮協定は、赤字国の教育やインフラへの投資を阻止する。それはより競争力をつけて、ドイツの輸出を減らす投資である。もちろん、メルケルは赤字国が破たんすればドイツに被害が及ぶことも知っているが。

間違った政策思想はドイツに限らず、アメリカにもみられる。アメリカのハイテク産業は海岸移転してしまい、低生産性のサービス部門で雇用を増やす。生産性を高めるインフラ投資は削減され、輸出産業を失い、雇用や賃金は減少した。

アメリカ人は消費の規律を求められ、ヨーロッパの赤字諸国は財政の規律を求められる。それらはともに、生産的な投資と生産的な労働者への報酬を高めてこなかった、政策の失敗だ。

WP December 15, 2011

Europe’s economic purgatory

By Robert J. Samuelson

Project Syndicate 2011-12-15

The Worst and the Best of Austerity

Jean Pisani-Ferry

Project Syndicate 2011-12-15

The Euro in a Shrinking Zone

Robert Skidelsky

EUサミットは失敗だった。イギリスのキャメロン首相は、イギリスをヨーロッパから切り離した。ドイツのメルケル首相は、ユーロ圏を現実から引き離した。

もしキャメロンが成長戦略を持ってサミットに臨めば、交渉できただろう。しかし、メルケルの緊縮策に賛同し、シティの利益を守って合意から離脱した。メルケルも間違っている。政府債務はユーロ危機の原因ではない。むしろ銀行危機の結果、不況を緩和するために財政赤字を増やしたのだ。必要なのは財政緊縮同盟ではなく、財政刺激策と銀行規制である。

財政と銀行、ユーロ危機は連動している。政府や銀行を救済しても、それだけでは危機の解決にはならない。ユーロ圏を救うためには、歴史的な規模で、ECBが金融の量的緩和を行い、同時に、その効果を上げるために、たとえば、南東欧へのインフラ投資に向けて提案されているthe European Investment Bank (EIB)を使って、投資を実行しなければならない。

ところが、サミットが示したのは貯蓄を強要するメカニズムだ。ユーロ圏は生き残るが、それは縮小するだろう。デフレを耐えることができない諸国はユーロ圏を離脱する。ギリシャなど、地中海諸国が自国通貨を発行し、為替レートを切り下げるだろう。


l  2012年の世界経済

Project Syndicate 2011-12-09

Disaster Can Wait

Barry Eichengreen

ユーロ危機に関する提案はあふれている。2012年は崩壊の年にあるのか? 私はそう思わない。2012年も問題は尽きないが、危機回避の試行錯誤が続くだろう。

多くの予想では、2012年は飛躍の年だ。危機を避けるために、ヨーロッパ統合が加速する。財政統合化、財政同盟、ユーロ債を認めるか、ユーロ圏は崩壊し、世界の金融危機へと波及する。

しかし、どちらのシナリオも正しくない。

ユーロ圏は崩壊しない。なぜなら、ECBはいやいやながらも、危機を回避するために、イタリアやスペインの債券を購入した。また、イタリアとスペインの政府はECBの求める改革を受け入れた。改革を進めるなら、事態が改善する前に、一層悪化する時期がある。しかし、投資家は将来を見ているから、改革が成長を回復させると確信すれば、投資は戻ってくる。

ただし、2012年に危機を回避しても、ユーロ圏が生き残れるとは限らない。条約の改正と承認は時間のかかる過程であり、二国間条約の形を取るだろう。

アメリカは、住宅市場のストックがまだ残っている。しかし、成長が減速すれば連銀は量的緩和策QE3を採用するだろう。二番底は避けられる。他方、中国の経済はまだ計画経済の政策手段が残っている。悲観論者が予告したハード・ランディングは避けられるが、二桁の成長から7.5-8%の『成長に減速するだろう。欧米市場が不況を脱するなら、輸出の機会もある。

こうして世界は2012年もどうにかして成長を続けるだろう。

Project Syndicate 2011-12-15

Fragile and Unbalanced in 2012

Nouriel Roubini


l  アメリカの労働者

guardian.co.uk, Friday 9 December 2011

Land of the free, home of the hungry

Gary Younge

FT December 11, 2011

Can America regain most dynamic labour market mantle?

By Edward Luce

FT December 15, 2011

How America is strangling the state

Jeffrey Sachs


l  イギリスのEU離脱

guardian.co.uk, Friday 9 December 2011

David Cameron's 'no' is bad for Britain and for Europe

Timothy Garton Ash

もし各国が課税や財政支出についての相互監視を認めるなら、通貨危機が政治同盟を加速したことになるだろう。他方、イギリスは圧倒的な多数が占めるコアの同盟から切り離された。

EMUの強化を支持したブラッセルの共同声明は、未来の学校で児童たちがジェファーソンの宣言を復唱するようなものではない。むしろ素晴らしい精巧なベルギー式の拷問だ。しかし、少なくとも23国の予算はその法的な命令に従うと決めた。このままでは予算赤字がGDP3%の上限を超えている17か国が処罰を受ける。・・・ドイツ的なヨーロッパにようこそ!

皮肉なことに、キャメロンが拒否したせいで、EU条約の改正ではなく、二国間協定による変化を加速した。アイルランドの国民投票などで、拒否する国もあるだろう。しかし、EU条約と違って、全加盟国の承認は必要ない。

イギリスはスイスになるのか? という質問に、保守党のユーロ懐疑派議員は、そうだ、それは良いことだ、と答えている。しかし、キャメロンが守ったという国益は、短期的に見て、金融サービスの利益でしかないし、長期的に見て、間違いだろう。イギリスは単一市場のルールについても影響力を失った。25ないし26国によるクラブと、1ないし2国の別行動と、どちらが支配的になるかは、5歳の子供でも分かることだ。

これはイギリスにとって良くないだけでなく、ヨーロッパにも良くないことだ。イギリスはヨーロッパで最大級の経済の一つであり、指導的な金融センターもある。イギリスを欠いたヨーロッパの外交や安全保障政策も信頼を欠くだろう。ヨーロッパは、中国やアメリカの視界から消えてしまう。

guardian.co.uk, Friday 9 December 2011

David Cameron has let Britain down

Ed Miliband

guardian.co.uk, Friday 9 December 2011

How Europe's papers bid goodbye to Britain

Gerry Feehily

FT December 9, 2011

How long will Britain stay in the EU?

By Philip Stephens

FT December 9, 2011

This is not a ‘fight on the beaches’ moment

By Joseph Joffe

FT December 9, 2011

Britain opts for the empty chair

SPIEGEL ONLINE 12/09/2011

Britain vs. the EU 26

The Man Who Said No to Europe

By CarstenVolkery in Brussels

SPIEGEL ONLINE 12/09/2011

Bye Bye Britain

The European Union's New Face

A Commentary by Roland Nelles

guardian.co.uk, Sunday 11 December 2011

David Cameron is no bulldog. Even Thatcher never left the European table

Peter Mandelson

大陸ではイギリスに対する不満が高まり、イギリスでは反ヨーロッパのポピュリズムが高まるかもしれない。それはイギリスのEU離脱や、将来の経済的繁栄に影響する。イギリスはEU内で、フランスやドイツにとってのバランスを取る役割を果たしてきた。イギリスの利益を守るために合意しなかった、という政府の説明は、まったくばかげている。

キャメロンは保守党内のユーロ懐疑派を抑えるために交渉に参加し、危機に振り回されて予期しない離脱を決めたのだろう。

guardian.co.uk, Sunday 11 December 2011

David Cameron has taken the first steps to solving the euro mess

Norman Tebbit

FT December 11, 2011

Cameron has betrayed 200 years of history

By Jonathan Powell

1955年、アンソニー・イーデンが率いる保守党政権はヨーロッパ共同体の創設に参加しないという、衝動的で、十分に考え抜いたものではない、破滅的な決定を下した。イギリスはその後、何度も拒否されながら、1972年にようやく加盟するが、そのときまでにヨーロッパの形は決まってしまい、影響力を行使することはできなかった。そして、それ以来、イギリス人は居心地の悪いメンバーと感じている。」

ワーテルロー以来、200年にわたって、イギリスはヨーロッパの主導権を争っていた。キャメロンはそれを放棄した。今回の決定が、さらに破滅的であるのは、イギリスがもはやアメリカとの「特別な関係」を利用できないからだ。

WSJ DECEMBER 12, 2011

David Cameron's Veto

By RUPERT DARWALL

WP December 12, 2011

Cameron’s eyes are on the City

By Anne Applebaum

ロンドンで金融の記事を書くとき、世界中から集まった多くのバイヤーが、債券や油田について、周りで世界中の都市に電話している。ロシア人、フランス人、リビア人、ナイジェリア人、イタリア人、トルコ人、インド人、ブラジル人、ガーナ人、カザフ人、中国人、日本人、など。

彼らがイギリスに銀行を利用する限り、ロンドンは誰でも歓迎する。外国人のビジネスマンは、パリやニューヨークよりもロンドンが住みやすい、という。ここはニューヨークとモスクワの中間にあり、極東への飛行機にいつでも乗れる。

キャメロン首相はEUを離脱して孤立するつもりなどなかっただろう。イギリスは、シティのために特別な保護を求めたのだ。しかし、交渉に集まった政治家たちは新しいヨーロッパの条約、もしくは、旧条約の改定を議論していた。イギリスの要求は余計であり、傲慢なものだ、と感じた。ユーロを救うという重大な交渉をしているとき、キャメロンが要求したのはわずかなピーナッツだった、と一人の外交官は語った。時期と場所を考えるべきだ、と。だから26か国はキャメロン抜きで話し合った。

それほどロンドンでは金融サービスの利益が支配的なのだ。そしてロンドンの雰囲気が変わった。イギリスはこの10年で最悪の不況であるが、ロンドンの中心部ではそれが見えない。シティは今や、パリやベルリンよりも、オフショアのハブ市場であるドバイに似ている。

Project Syndicate 2011-12-11

The British “Non”

Harold James

キャメロン首相の拒否を、ヨーロッパ大陸に現れた独裁者に対して抵抗したウィンストン・チャーチルにたとえるユーロ懐疑論者がいる。

ヨーロッパ通貨制度でも、決定的な転換はイギリスの拒否だった。1978年の、ドイツのシュミット首相とフランスのジスカール・でスタン大統領の会談がEMSを決めた。そのときイギリス保守党政権のキャラハン首相は、二人との会談を欠席して、アメリカのカーター大統領と話し合っていた。

また、EMS内でフランスのミッテラン政権が、その社会主義的政策の失敗で、深刻な危機に直面したとき、ドロール財務大臣が危機を収拾し、その後のEMUの指導者になった。ドイツ通貨の強さを利用した戦略であったが、それには国内の反対も多かった。イギリスはそのような複雑なヨーロッパ的妥協を嫌い、単純に、メージャー首相がオプト・アウトの権利を求めた。

1992年から93年の危機が通貨統合の決定につながったが、イギリスは外にとどまった。イギリスの存在はEU政治において貴重なバランスを提供した。ただし、それはイギリス経済にとって厳しい結果をもたらすものであった。

キャラハンやメージャーをイギリスの偉大な首相に含める者がいないように、キャメロンの拒否も不名誉な人物の言動になるだろう。

guardian.co.uk, Monday 12 December 2011

Britain is ruled by the banks, for the banks

Aditya Chakrabortty

FT December 12, 2011

This sceptred isle’ cannot save itself on its own

Dominique Moïsi

FP DECEMBER 12, 2011

Alone on the Island

BY ALEX MASSIE

イギリスはいつも二枚舌を使って、EU加盟の利益をできるだけ追求し、そのコストをできるだけ避けようとする。あるフランスの外交官は不満を漏らした。イギリスは、「自分の妻を連れていかないスワッピング・パーティーの参加者」である。

NYT December 12, 2011

The British Euro Farce

By ROGER COHEN

FP December 13, 2011

Let Britain join NAFTA

Posted By Clyde Prestowitz

NAFTAはイギリスを加えてNAFTAthe North Atlantic Free Trade Area)にしてはどうか? そして、シティの利益を守れるような、共通通貨Dolep (U.S. dollar and Canadian dollar + Mexican Peso+ Pound Sterling )を採用する。

もちろん、メキシコやカナダが同意しないかもしれない。そのときはアメリカがイギリスの国家を吸収する。そして、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドはアメリカの州に加わる。そうすればドイツやフランス、あるいはブラッセルの官僚たちがシティに規制を加える心配がなくなるだろう。

LAT December 14, 2011

A United States of Europe?

By Bruce Ackerman

われわれはヨーロッパ合衆国の誕生を見ているのか?

「最近の騒動と交渉は、アメリカ合衆国の創設と、神秘的な類似性がある。1787年、フィラデルフィア会議では二度目の大陸同盟であった。(最初)1781年に、13州が憲法条約の下に集まったのは、概ね、現在のヨーロッパの制度と似ている。」

独自の財政制度に依拠したままでは各州の債券価格が暴落したため、戦争のための大規模な債券発行と独立した徴税権を失う代わりに、金融危機からの財政的な保証を得る制度に移行した。1787年の憲法は、新しい徴税権と中央銀行を設立した。しかし、より完全な政治同盟を目指した運動に対して、ロード・アイランドは憲法を承認しなかった。

当時のロード・アイランドはイギリスの植民地で、フィラデルフィアの大陸会議に代表を送らなかった。分離主義者と非難された上に、秘密会議において、13州のうちの9州が承認した時点で新しい憲法は成立する、と決められた。この根本的なルールの変更に対して、ロード・アイランドはノース・カロライナとともに承認を拒否し、11州による同盟成立となったが、反対した2州は関税賦課のような強い圧力を受けた。

イギリスは、ユーロ圏の合意を拒んで、ロード・アイランドのようにEUから切り離されつつある。オバマ政権にとっても、今は外交の重要な局面である。アメリカは、大陸ヨーロッパとイギリス保守党・リベラル派の連立政権とを仲介し、交渉のテーブルに就くよう助けるべきだ。もし大陸ヨーロッパ合衆国からイギリスが分類されれば、西側同盟は大幅に弱まるだろう。

Project Syndicate 2011-12-14

London vs. the Eurozone

Howard Davies

イギリス政府とイングランド銀行は全欧金融取引税the pan-European Financial Transactions Taxに反対した。金融市場の反応はこれからであり、英欧の争いは始まったばかりだ。金融機関はロンドンにとどまるか、あるいは、フランクフルトに移るのか?

guardian.co.uk, Thursday 15 December 2011

Britain can build a Europe outside the euro

Phillip Blond


l  地球温暖化防止

LAT December 9, 2011

Ignoring a global warning

YaleGlobal Online 9 December 2011

From Brussels to Durban: Debt and Climate Crises Spotlight Free Riders

Scott Barrett

SPIEGEL ONLINE 12/12/2011

Lessons from Durban

How To Create a Successful UN Climate Summit

A Commentary By Christian Schwägerl

WSJ DECEMBER 12, 2011

Global Warming and Adaptability

By BJØRN LOMBORG

SPIEGEL ONLINE 12/15/2011

Leading German Climate Expert

'Kyoto Has Only Carrots and No Sticks'


l  石油の呪いを免れる

Project Syndicate 2011-12-09

Escaping the Oil Curse

Jeffrey Frankel

リビアもイラクも、戦争から国家の再建に移る。両国の市民たちは石油資源がそれを容易にすると期待しているだろう。西アフリカからモンゴルまで、世界市場は歴史的な高騰に沸き、石油や鉱物資源の発見で思わぬ利益を得た国がある。

しかし、政治指導者たちが弧の利益を生かせるかどうかは、歴史をよく知り、悪名高い「資源の呪い」を回避する方法を知るかどうかにかかっている。

資源採取には6つの落とし穴がある。1.価格が変動しやすい、2.製造業が締め出される、3.オランダ病(通貨価値が余りにも高くなって他の国内輸出産業を破壊する)、4.制度の発展を妨げる、5.内戦が起きる、6.過度の採取と資源の枯渇が起きる。

価格が余りにも浮動的であることは価格メカニズムを損なう。一時的な資源ブームが、労働者や資本、土地を、製造業や国際的な競争にさらされる国内産業から奪う。資源配置の失敗は長期の経済発展を損なう。資源ブームは建設やサービス産業の雇用を増やし、製造業が完全に失われることもある。

そのような国では権威主義的な支配構造が資源地代だけを争って、しばしば内戦が起きる。むしろ資源のない国で、エリートたちは個人の勤労や貯蓄の動機を促し、分散した(市場を生かした)経済構造を目指す。

さまざまな政策や制度が試みられた。失敗したものは、価格管理、輸出管理、輸出商品管理制度、商品カルテル、である。他方、輸出収入のヘッジング(石油価格オプションによる)、反循環的な財政政策(チリの予算ルール)、政府信託を専門家に委託する、などは成功した。ドルではなく石油価格で発行する債券や、インフレや為替レートではなく、商品価格を目標にした金融政策のルール、石油収入の国民に対する人口配分、などは未だに実施されたことはないが、有望なアイデアだ。

政治指導者にはこれらを実行できる自由意志がある。エリートたちの利益ではなく、国民の利益のために使うべきだ。


l  日本

FP Friday, December 9, 2011

Japan's enduring challenge

Posted By Clyde Prestowitz

Global Times | December 11, 2011

Security heaviest force in Sino-Japanese ties

By Liu Jiangyong


l  米軍のイラク撤退

FP Friday, December 9, 2011

Four political risks in marking the end of this phase in the Iraq saga

Posted By Peter Feaver

guardian.co.uk, Wednesday 14 December 2011

US withdrawal from Iraq is a beginning, not an ending

Simon Tisdall

米軍の撤退は歓迎されているが、それは不安定化をもたらす。それはアフリカ植民地からイギリス軍が撤退したような終わりではなく、新しい局面の始まりだ。イランの支配者たちはそれをよく知っており、イラク戦争の本当の勝利者は、ワシントンではなく、テヘランだ。しかも、イラク戦争は国境を越えて広がっている。

7000億ドルのイラク戦争は、アフガニスタン戦争と金融危機を伴ったが、アメリカから中国へとバランス・オブ・パワーの優位を変える決定的な転換をもたらした。EUは分裂し、NATOのリビア介入にドイツが反対したように、その分裂状態は固まった。しかし何よりも損なわれたものは、戦争の悲惨な後遺症とともに、西側民主主義の信念であった。

guardian.co.uk, Thursday 15 December 2011

Be warned, America's withdrawal from Iraq heralds a world of instability

John Bolton

guardian.co.uk, Thursday 15 December 2011

Last Post in Iraq: this is the death knell of the American empire

George Galloway


l  中国からの世界革命

LAT December 11, 2011

Chinese Autumn is no Arab Spring

By Yu Hua

かつて毛沢東は無学な民衆に革命を教えるために、箸(ハシ)を使った。一本の箸は簡単に二つに折れる。しかし、一握りの箸をつかめば、それは折れないだろう。今、怒りに震える箸が中国各地において抗議のために集まっている。

中国政府は民衆による革命を何よりも恐れている。

争議は、比較的小さなことから起きる。2008年、若い女性の不慮の死から、160の事務所を焼き討ちし、40台の自動車が破壊され、150人以上が負傷した。警察との衝突が多数起きている。

中国の将来は、民主化するか、革命になるしかない。

(China Daily) 2011-12-13

Mekong patrols begin

Global Times | December 13, 2011

China needs to prepare for leadership role on climate

By Xu Ming

WSJ DECEMBER 15, 2011

All the Hot Air in China

By JOSEPH STERNBERG

WSJ DECEMBER 14, 2011

As China Rises, A New U.S. Strategy

By ZBIGNIEW BRZEZINSKI

今後数十年間、アメリカが取り組むべき課題は、アメリカ自身の再活性化と、中国の台頭に対して、より拡大した西側の力を育成することだ。

西側を拡大するとは、北米とヨーロッパから、ユーラシア(究極的に民主化を受け入れたロシアとトルコ)を経て、日本と韓国に至る。そこでは西側の基本原則が受け入れられ、民主的な政治文化が次第に広まっていく。

アメリカはアジアを包摂する努力を続けねばならない。米中が様々な問題で相互に政策・制度を調和させるなら、アジアの安定性は高まるだろう。また、アメリカは日中間の摩擦を解消し、中国とインドとの対抗的な成長が和解するように促すだろう。

アメリカに、ユーラシアの東西で、改革を促す意思があることを示すには、アメリカ国内の改革を進めることだ。それには、技術革新や教育のような、国力のより難しい側面を扱わねばならない。そして、ヨーロッパとは緊密な関係を維持し、NATOを今後も重視し、トルコや民主化したロシアを西側に迎え入れなければならない。そうすれば、2025年以降も、西側の拡大した枠組みが世界を安定化できるだろう。

西側の拡大には、各地の歴史的な怨嗟がよみがえらないように、アメリカが諸国の和解を促す必要がある。ヨーロッパでは、ウクライナや、ロシアとの関係、英仏とポーランド、バルチック諸国とアメリカ、など。アジアでは、アメリカは19世紀と20世紀初め、イギリスがヨーロッパにおいて展開した役割を担う。イギリスは、潜在的なライバルの間に力の不均衡が生じないよう、紛争に介入した。

アメリカは中国が極東において占める特別な歴史的・地政学的役割を尊重するとともに、中国が対話によって地域の安定性を維持するように促すべきだ。それは米中間の紛争を減らすだけでなく、中日、中印、中露の間で誤解(と衝突)が生じることを回避させる。

同時に、アメリカはアジアの平和がアジアの諸国によって担われる必要を主張して、日本と韓国に対するアメリカの安全保障の義務を維持するが、しかし、中国本土で紛争を生じたとき、アメリカが巻き込まれないようにすべきだ。

Global Times | December 15, 2011

Global turmoil set to worsen in coming New Year

VOX 15 December 2011

China’s dominance hypothesis and the emergence of a tripolar global currency system

Marcel Fratzscher & Arnaud Mehl

1980年代・90年代のドイツ支配仮説と比べて、現在の中国が支配的になるという主張を検討する。

当時、アメリカのドルが国際通貨制度を支配していたが、ドイツ・マルクはEMSの下で他のヨーロッパ通貨と為替レートを安定化し、他国はドイツの金融政策に従った。ドイツの支配を受け入れることで、各国は低インフレ(そして為替レートの安定性)を実現したのだ。

現在、アジア諸国の通貨・金融政策は、中国を中心とした「再建ブレトン・ウッズ体制」もしくは「アジア版ドル本位制」に近い。アジアにとって望ましい通貨制度は何か?


Project Syndicate 2011-12-11

Occupy the Classroom?

Dani Rodrik


WSJ DECEMBER 12, 2011

America's New Energy Security

By DANIEL YERGIN


l  Feldsteinの予言

WP December 13, 2011

The man who predicted the European debt crisis

By Charles Lane

1997年、Martin Feldsteinは、Foreign Affairsでヨーロッパの単一通貨計画は失敗に終わる、と予告した。その理由は、財政・政治統合がないからであるが、それをさらに、通貨統合に合わせて財政統合を進めることが政治的な対立を激化させ、ヨーロッパ内、もしくは、欧米間で衝突が増える、と考えた。

ドイツをヨーロッパの政治組織の中に封じ込めるという考え方が問題になる。それはむしろ、ドイツが覇権を求める行動につながる。1997年、単一通貨が崩壊した後、ヨーロッパは戦争になる、とFeldsteinは考えた。それはまだ極端な考えだろう。しかしすでに、非難合戦は始まっている。

WSJ DECEMBER 15, 2011

The Euro Zone's Double Failure

By MARTIN FELDSTEIN

結局、新しい予算均衡のメカニズムは、財政安定と成長のための協定と同じであり、それはすでには失敗した。ECBのドラギ総裁がサルコジの、金利を低く維持するために無制限に債券購入する、という要求を拒んだのは正しい。

イタリアの債券が満期になるとどうなるか? 一つは、IMFの融資を受けることだ。IMFは財政再建の計画を示して監視する。あるいは、イタリア政府が自ら予算赤字を削り、旧債券を新債券で支払うことだ。将来の財政再建に向けた能力を示せば、イタリア政府は資本市場に復帰できる。

メルケルとサルコジが政治統合にユーロ危機の解決を求めることは間違いだ。各国による財政再建策が求められている。


FP DECEMBER 13, 2011

Nine Days That Shook the Kremlin

BY JULIA IOFFE

WSJ DECEMBER 14, 2011

The Russian Spring Has Begun

By ANDREI PIONTKOVSKY


FP DECEMBER 14, 2011

A Crisis in the Congo

BY MVEMBA PHEZO DIZOLELE


FT December 14, 2011

Just two cheers for a sputtering Indonesian dream

By David Pilling

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The Economist, December 3rd 2011

Africa rising

Africa’s hopeful economies: The sun shines bright

Afghanistan and the west: How to end it

Myanmar and America: A new Great Game?

Banyan: Tribal Japan

Sweden and the euro: Out and happy

Climate-change talk: Wilted greenery

Schumpeter: Khaki capitalism

(コメント) アフリカ経済の成長が、単に援助や資源価格の上昇に頼らない、自立的なものに変わってきた、という記事です。すなわち、ガバナンスが改善されて、人口転換に技術移転が加わり、資源の高価格がもたらす利益も、ますますインフラや教育など、生産的な投資に向けられている、と。

アフガニスタンやイラクから西側の軍隊が撤退するとき、これからは自分たちで治安が回復されねばなりません。治安が少しでも改善されて、投資への条件が育つなら、その地域には期待を持てます。

ミャンマーが米中のグレート・ゲームに最新の舞台を提供し、突如として注目を集めています。それが軍事政権内の改革派と、弾圧や選挙ボイコットで勢力を失ったスー・チー女史の政治的復活を目指す野党との協力であるとしても、改革の進展を支持するのは正しい選択でしょう。

他方、日本人の部族主義tribalism、スウェーデンのユーロ圏外にとどまる危機意識がもたらした慎重な経済運営、気候変動の国際会議の目標、軍事資本主義の功罪、は、アフリカやミャンマーの指導者たちが学ぶべき教訓も含むでしょう。

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IPEの想像力 12/19/11

アンドルー・ギャンブルの『資本主義の妖怪』を読み、危機の進行する中で、先鋭な問題意識と深い思考を、平易な言葉で著す姿勢に、感嘆しました。「危機は常に社会的に形成され、高度に政治的である。」とギャンブルは書いています。危機は、既存の政治経済モデル、社会契約の確かさ、秩序とそれを守る人々への信頼を破壊します。それゆえ、危機そのものではなく、危機の解釈やその責任、危機からの回復を指導する思想や人物、隠されてきた真実(現実)を暴く言説が重要なのです。

旧秩序への回帰を急ぐ支配層に対して、根本的な問題提起と改革・革命(権力奪取)の思想が、不安や怒りに刈られる人々の心を動かす瞬間があります。危機とは、既存の考え方や手続きが期待された成果や効果を失い、その正当性を否定されたから生じたのです。金融危機もそうです。

「危機管理」という言葉や、「モラル・ハザード」という言葉に、私は基本的な違和感を覚えます。

従来のやり方、支配的な秩序、規制や制度をめぐって、根本的な問題が提起されているとき、「危機管理」という発想は、それとまったく逆行した方針、すなわち、旧秩序や支配構造の保守を意味するように思います。危機管理の専門家が、しばしば治安維持やテロ対策の担当者であり、政治家のリーダーシップばかりを強調するのは、それ以外の問題を圧殺する姿勢を感じます。

「モラル・ハザード」という言葉にも、何が「モラル」か? という問いかけを無視した市場の擁護を感じます。元来は保険契約の問題であった言葉が、為替レートを安定化・固定した政策や金融行政などに転用されたと思います。これは、モラルではなく、契約や制度の側の欠陥です。金融危機が起きたとき、まるで救済したことが政府の失敗であるかのような、そもそも規制したことが悪いというような、金融ビジネスで巨万の富を築ける者こそが「正義」を証明したかのような、誤解(イデオロギー)を生じたと思います。

保守主義に重要な意味があるとしたら、それは国家や秩序の重要性を、市民生活の安寧と経済回復への信頼と結びつけるからでしょう。

左派の政権が激しいインフレーションや為替レートに示された通貨価値の破壊に至ったとき、軍事クーデタと金融ネットワークの協力関係、もしくは、独自通貨と自給体制・準戦時管理経済が現れるのは、政治・経済秩序の崩壊を食い止める暴力的な手段を独占していることを、政府の前面に出て示すためでしょう。それは貨幣の価値や投資家の信用を維持する最後の手段です。

大学院生が発した、アジアで戦争は起きないか? という問いに答えることは、当然、難しいでしょう。しかし、私に言わせれば、世界が独自の軍事力を持つ諸国家に分割されている以上、軍事衝突や威嚇の生じないことこそ例外なのです。それが戦争に至らないとしたら、軍事力の行使を限定し、拡大することを抑える国家間の合意やルールが(特に大国によって)支持されているからでしょう。

そして、歴史を振り返れば、大国間のパワーのバランスが急速に変化するとき、戦争は予想もしない形で大規模に起きました。

そんなことを考えていたら、北朝鮮の金正日が死亡した、というニュースを聞きました。若い息子が権力を容易に継承できるとは思えません。ベルリンの壁が崩壊したように、突発的な事件が累積し、東アジアでも冷戦後の秩序再編が起きる可能性は、完全に否定できないのです。

ベルリンの壁が崩壊したとき、何が旧秩序の崩壊を告げ、次の秩序を決めたのか? Marry Elise Sarotte, 1989. を読み始めました。封印列車と押し寄せる人々、記者会見のハプニング、壁を越える人々への西ドイツの歓迎、セックス・ショップの大繁盛、再統一を進めたコール首相の執念と、激しい反対意見を述べたサッチャー首相、など、興味深いドラマが一杯です。「カリギュラの瞳とマリリン・モンローの笑みをもつ女性」というミッテラン大統領のサッチャー描写が秀逸です。

歴史が溶解し始めます。北朝鮮における権力闘争の行方が私たちの未来に深く影響するでしょう。

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