IPEの果樹園2011

今週のReview

12/12-/17

 

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ユーロ危機と政治的救済 ・・・金融危機と社会規範 ・・・エジプトの選挙 ・・・資本主義は持続可能か? ・・・ガバナンスの拡大 ・・・ビルマのグレート・ゲーム

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  ユーロ危機と政治的救済

FT December 1, 2011

This time they may save the euro

By Philip Stephens

NYT December 1, 2011

Killing the Euro

By PAUL KRUGMAN

ユーロ危機はなぜ起きたのか? テレビを見れば、それは明らかだ。・・・ギリシャの財政破たん。ギリシャはひどい!!!

しかし、真実はその反対に近いだろう。なぜならヨーロッパの指導者たちは財政支出が多すぎると主張するが、ほんとは財政支出が不足しているからだ。緊縮策はそれを悪化させる。

2008年の危機が起きたとき、アメリカもヨーロッパも銀行システムは債務を膨張させていた。違いは、ヨーロッパの債務がユーロ圏内だが、国外であったことだ。しかし、それはほとんど政府ではなく民間の債務だった。ギリシャ政府は好況のときも赤字だったが、アイルランド政府は黒字だった。

バブルが破裂して、民間支出が急速に減った。それを緩和するために政府は債務を増やして支出を増やす必要があったのだ。ところが、不況で財政赤字が拡大すると、EUは政府支出を削って増税するように求めた。それは不況を悪化させる、という警告は無視された。ECBのトリシェ前総裁は、財政の健全化による信頼回復が景気を刺激する、と主張した。

そんなおとぎ話は実現しない。

しかも、好況時に物価や賃金が南欧で北欧よりも上昇し、競争力を失っていた。ユーロ圏内でこれを逆転させるには、南欧のデフレか北欧のインフレが必要だ。もし南欧がデフレを強いられれば、デフレが雇用を減らし、債務負担を増やす。

北欧でインフレを起こすには、ユーロ圏全体で一時的にインフレ率を高くすることになる。ECBはこれを許さず、むしろ、インフレを警戒して金利を高めていた。アメリカにとってマイアミほどの重要性しかないギリシャがどうなるか、ECBは気にしなかったのだ。

しかし、今やユーロ圏全体が不信を持たれている。EUの緊縮財政と、インフレばかり恐れるECBは、債務の罠から抜け出せず、銀行の取り付けや金融崩壊に向かう組み合わせだ。

アメリカもヨーロッパも問題を抱えた債務者に苦しんでいる。金融的な健全性を回復するためにも、財政・金融鵜政策による刺激が必要だ。しかし、どちらもそれを拒んでいる。

guardian.co.uk, Friday 2 December 2011

Which eurozone countries will survive fiscal union?

Heather Stewart

ECBのドラギMario Draghi総裁が、サルコジとメルケルの「財政協定」に向けた合唱に加わった。来週月曜日に、メルケルとサルコジは、単一通貨に参加した諸国が課税と財政支出に関して一層緊密に協力するよう求める。そして金曜日にはマーストリヒト条約の改正を提案する。

二人の提案はこれまでにもあったが、今回は、イタリアとスペインの数十億ユーロに及ぶ債券を買い支えるECBも加わったことに意味がある。リーマン・ショック型の金融メルトダウンを避けるにはECBの行動が必要だ。

答えていない問題も多くある。たとえば、アイルランドは企業に対する低税率を諦めるのか? フランスは退職年齢を引き上げるのか? ECBが介入し、IMFを通じた融資も行われることで、危機に陥った国は負担を軽減できる。しかし、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドの競争力が回復するには、多年に及ぶ苦しい緊縮策が必要だ。

つまり、国によっては救済パッケージの条件を満たせず、シティのアナリストたちが「緊急脱出ボタン」と呼ぶ離脱のオプションを用意しておかなくてはならないだろう。緊縮財政の条件を満たせなかった国は、ユーロから追い出される。

時間が経つにつれて、ユーロ圏はより少数の、厳しい条件に耐えられる国だけになり、他の国は出口に向かう。ユーロ危機が長引いてヨーロッパが厳しい不況になるほど、輸出する機会は失われて、ユーロ圏を追い出すことも厳しい選択ではなくなるだろう。

パリやベルリンがそれを決めるというより、失業し、賃金を削られるギリシャ国民が、遠くからECBEUIMF官僚に支配される保護領になってしまった自分たちの地位を嫌って離脱するかもしれない。イタリアの「テクノクラート」政府と同じように、これが民主的とはいえない。生活水準が改善するのでなければ、こうした遠隔地からの支配を人々は受け入れない。ところが、ユーロ圏はすでに不況に入り、この先、さらに悪化しそうだ。

来週の会議で「財政協定」の合意が称賛されるかもしれないが、5年後にもユーロ圏が同じように残っているとは思えない。

guardian.co.uk, Friday 2 December 2011

A necessary euro crisis

Vicky Pryce

FT December 2, 2011

Fed bazooka aimed at the eurozone

by Gavyn Davies

FT December 2, 2011

Eurozone crisis: A light at the end of the tunnel?

Mohamed El-Erian

ユーロ圏を救い、より厳格な小規模の単一通貨圏に向けて、指導者たちには決断するべき重大な責任がある。特に、ドイツ首相 Angela Merkel, フランス大統領 Nicolas Sarkozy, ECB総裁Mario Draghi, and イタリア首相Mario Montiには、市場が次のことを求めている。

1.  ユーロ圏のアンカーを合意する。メルケル、サルコジ、ドラギは「財政協定」について支持を表明した。

2.  モンティは、成長を高める具体的な方策とともに、財政緊縮を実行する。

3.  ドラギは、ECBによる財政破たんの回避に躊躇しない。

4.  公的資金を使っても、銀行システムを守り、再生する。

5.  メルケルは、ドイツがヨーロッパのパートナーを救済することを明言する。

6.  メディアに対する情報の混乱を繰り返さない。

政治家たちが再び安易な妥協で時間を稼ぐ態度を示せば、ユーロ圏を救う重大な時期を逃す。

FT December 2, 2011

Eurozone’s darkest hour is just before dawn

By Tony Barber

金曜日のサミットは、1998年の初代ECB総裁をだれにするかで妥協した独仏合意のようになるだろう。初代総裁はドイツの推すオランダのWim Duisenbergとしたが、総裁任期を半分にして、残りの半期をフランスのJacques Chiracが奪い取った。つまり、“Jean-Claude Trichenbergだ。

EU交渉では、深夜に、予想もつかないような妥協が成立する。

SPIEGEL ONLINE 12/02/2011

'No Immediate Solution'

Merkel Pledges New Fiscal Unity for Europe

FP DECEMBER 2, 2011

Compounding the Meltdown

BY MICHAEL PETTIS

市場が企業や政府の債務は多すぎるとみなせば、債務は過大になっている。そして、各部門の行動は変化し始めるが、それは政府債務の信頼性をさらに悪化させることになる。

債権者はデフォルトのリスクを心配し始め、政府債務を購入したがらない。それは価格を下げ、資金調達コストを増やして財政悪化を強める。銀行預金の凍結や通貨の切り下げを恐れ、債権者は資金を引き出し、外国に移転する。政府は企業に対する増税を考えるし、将来の売り上げは期待を下回り、高金利が予想されるから、企業の行動も変化する。投資を控えて、移転できる資産は外国に移転する。失業が増え、不況が深まり、財政赤字はさらに増える。労働者たちは組合の力を強めて政府に対策を要求し、ますます企業の流出と政治不安が強まる。

ユーロ危機は三つの形で回復に向かう。1.大規模な債務保証によってバランス・シート悪化の自己実現的な循環を止める。2.経済が損なわれる前に、迅速に債務の処理を進める。預金封鎖、通貨の切り下げ、債務の削減・整理を進める。3.財政統合を進めて長期的な解決に時間を稼ぐ。

WP December 2, 2011

Europe’s delayed debt reckoning

By Michael Gerson

これはヨーロッパのガバナンス危機である。「スローモーション型の銀行取り付け」が始まっている。アメリカは、1910年代、1930年代のように、ヨーロッパの危機に巻き込まれる。

WP December 2, 2011

Why isn’t Germany stepping up to save the euro zone?

By Thomas Kleine-Brockhoff

世界が、誰も予想しなかったような形で、ドイツのパワーが行使されることを求めている。ユーロ圏を救えるのはドイツだけだ。かつて、1914年と1939年に、ヨーロッパの運命をドイツが一方的に変えたけれど、今や、世界はドイツの行動を求めている。

ドイツは第二次世界大戦後そのパーリアの地位を払拭することが目標であった。他国を指導するより、従うことが賞賛された。ヨーロッパや世界を指導する役割を考えることはなかった。

しかし、東西再統一から20年を経て、その姿勢は変わった。ロシアやアメリカの影響が失われるにつれて、ドイツ経済は強力であり、人口規模で第2位のフランスより、ドイツは3分の1も大きい。

ドイツは、ヨーロッパ人がドイツを求めながら、ドイツに指導されるのを嫌っていることも知っている。アイルランドやポーランドでは、ドイツからの融資を、戦争のないマーシャル・プラン、あるいは、ヴェルサイユ条約だ、という論争が起きた。こうした反応を見て、ドイツが一層の支援を嫌うのは当然だろう。

もしユーロ圏が崩壊すれば、それはギリシャやイタリアの失敗ではなく、ドイツの失敗だと言われる。ユーロ債務の膨大なリスクを引き受けて、覇権国になるのか? ドイツの姿勢は、いやいやながらの覇権国だ。ドイツにとっての悲願である再統一のために、ドイツはヨーロッパ統合を強く支持してきた。しかし、再統一ができた今、その姿勢には変化が生じている。

ユーロによってドイツをヨーロッパに縛り付けておくというフランその計算は、ドイツ国民がいまだにユーロを好まない姿勢によって矛盾したものになった。ミッテランとともに、ユーロの生みの親であるコール首相は、ユーロ圏崩壊のリスクより救済のリスクは小さい、とドイツ国民にユーロ救済を訴えた。しかし、国民はギリシャやイタリア、その他の債務を永久に支払うことを恐れている。

マルクを復興のシンボルと考えていたドイツがユーロを採用するとき、法的な枠組みが確立されて、そのルールに従って経済が機能することを求めていた。ECBは物価の安定だけを担い、政治的な介入を拒むことができる。モラル・ハザードは強く否定された。ドイツの主流派エコノミストたちにとって、債務危機とは構造改革と財政改革、すなわち、自由化と緊縮によって根本から治療するべき問題だ。

それは長期において治療すべきことかもしれないが、当面の苦痛は緩和できない。ユーロへの信頼は崩れてしまった。経済原則と国家主権を守ってユーロを破壊するか、あるいは、ユーロ圏を守るために譲歩するか?

メルケルは限定的な条約改正を合意するだろう。より厳格な財政同盟を求めている。それと交換に、長期の改革が進むまで、ECBが貨幣を供給することを許す。

ドイツの連立政権内から、キリスト教民主同盟内から、国民から、メルケルは批判されるだろう。ユーロが生き残っても、メルケルは葬られるかもしれない。

WP December 2, 2011

The euro may fall — and take the U.S. recovery with it

By Bill Gross

WSJ DECEMBER 2, 2011

How to Save the Euro

By ADAM LERRICK

LAT December 4, 2011

Now on Broadway! Waiting for Euro

By Edward Luce

LAT December 4, 2011

Merkel, mistrust and the markets

By Richard Milne in Berlin

ベルリンを訪れた者は誰でも、メルケル首相が二つの強い力を和解させるのにどれほど苦しんでいるかを見て驚くだろう。それは、50年に及ぶヨーロッパ統合を守ることと、金融市場における深い不信感である。

ECBの徹底した介入を市場は期待するが、メルケルはEFSFとヨーロッパ安定化メカニズムで十分に対処できると主張する。その対立が続く中で、和解のための時間は尽きる。

LAT December 4, 2011

France and Germany look set to fudge it yet again

By Wolfgang Münchau

メルケルが求めているのは、間違って報道されているが、財政同盟ではない。緊縮財政クラブだ。それは筋肉増強した財政安定協定である。

サルコジの提案は全く違う。いかなる主権も移譲しない。政府間のアプローチは失敗したが、彼の望むものだ。緊縮財政や財政同盟には関心がない。ユーロ債やECBの介入には賛成だ。フランスの利益にもなる。

ドラギ総裁は、無制限の保証には反対だ。

彼らは妥協できるのか? もちろん、妥協はできる。しかし、解決策はできない。

短期的には、危機回避のためにECBが強く関与し、長期的にはユーロ債も発行する。民間債権者に分担させるのはあきらめる。金融逼迫と不況を避ける。ガバナンスを改善し、ユーロ圏の意思決定を明確に行う。

そのような合意は現れないだろう。

LAT December 4, 2011

Debt crisis lessons from Latin America

By John Paul Rathbone

BLOOMBERG Dec 4, 2011

Record of Brinksmanship Shows Merkel’s Mettle

By Margaret Heckel

Project Syndicate 2011-12-04

Keep the IMF Out of Europe

Mario I. Blejer and Eduardo Levy Yeyati

IMF6000億ユーロの融資を行い、イタリア政府は債券を発行せずに、18か月間の調整期間を得る、という噂がある。しかし、ユーロ危機を緩和するためにIMF融資を行うべきではない三つの重要な理由がある。

1.ヨーロッパにはECBがすでにある。IMFの関与で危機が解消することはない。ヨーロッパがガバナンスの問題でECBを利用できないから、という理由で、IMFの資金を使うことなどできない。

2.潜在的な支払い不能の国にIMF融資を行うことは、IMFの運営にとって問題がある。

3.最後の貸し手であるべきIMFに対する返済の優先権が失われる。

guardian.co.uk, Monday 5 December 2011

Believe it or not, Angela Merkel has a plan to tackle the euro crisis

Katinka Barysch

guardian.co.uk, Monday 5 December 2011

If the ECB won't save the eurozone, the Fed must step in

Dean Baker

ECBが最後の貸し手として行動しないとき、どうすればよいのか? アメリカ連銀は、ECBの代わりに、ユーロ圏崩壊を防ぐ最後の貸し手となることができる。ユーロ圏を救出することは、大きすぎて潰せない、という問題であり、また、ユーロ建政府債券がその後に価格を回復することで、連銀に損失は発生しないだろう。

FT December 5, 2011

The eurozone won’t sink or swim; it will bob along

Ian Bremmer

SPIEGEL ONLINE 12/05/2011

Germany and France Agree

Merkozy to Seek New EU Treaty to Tackle Crisis

SPIEGEL ONLINE 12/05/2011

Plan Z

IMF Could Set up Euro Aid Fund with EU Help

BLOOMBERG Dec 5, 2011

Default a World Away Has a Greek Lesson

By Mario I. Blejer and Eduardo Levy-Yeyati

アルゼンチンとギリシャを比較する。

避けられないデフォルトを延期してはならない。延期するほど破綻の規模は大きくなり、経済に及ぼす悪影響も増大する。

また、債務を削減するなら、一気に、大幅に削減して、返済能力を回復し、資本市場に復帰させることだ。債券市場への復帰は最減額や割合と関係ない。

支払い不能の危機において、デフォルト後に、最後の貸し手が流動性を維持する必要がある。それが無ければ経済不況が大きくなり、回復も遅れる。ギリシャ危機で誰が最後の貸し手になるのか、明確にするべきだ。

迅速かつ大胆に債務を再編し、中央銀行が断固として流動性を補給する。共通通貨にとって共通の政治的意志が必要だ、というのは、それを実行する意志がある、ということだ。

WP December 5, 2011

How to Exercise Your Brain to Make It Strong

By Robert J. Samuelson

Project Syndicate 2011-12-05

The Poetry of the Euro

Harold James

ユーロを築いたのは、単に国民通貨の数を減らして貿易を刺激するためだけではなかった。それは貨幣に対する新しい考え方や姿勢を表すものだ。

貨幣とは、国家が何によって納税するかを決めたことに由来した。紙幣や人工貨幣を使用するようになっても、国家はこの特権を利用して、インフレーションを起こして過剰な債務を処理した。そして、それは20世紀前半の歴史において非常に破壊的な影響を政治秩序に及ぼした。すなわち政治家は、戦争など、政治的な事業に資金調達できる特権を悪用したのだ。

ヨーロッパの連邦を目指したリベラルな政治家たちは、この点を強く意識して、個々の国家から紙幣を印刷して戦争できる特権を奪うこと、を大きな成果として重視した。不安定な、政治的に悪用された貨幣はヨーロッパを破滅させ、破壊的なナショナリズムと対立をもたらす、と近代ヨーロッパの建設者たちは考えた。また二人の偉大な経済学者、ハイエク(政治的利用を防ぐ)とケインズ(デフレの解消)が重要な影響を及ぼしている。

中央銀行の独立性とは、健全で安定した政治秩序の条件であった。その原則は今、ECBへの介入要請によって大きく損なわれようとしている。債務を貨幣化すれば、どの債務が貨幣化されるべきか、は政治が決める。

国土を愛し、王を称える詩文と同じように、安定した貨幣も政治秩序の基礎だ。当面の危機により、それを安易に忘れてはならない。

Project Syndicate 2011-12-05

What Can Save the Euro?

Joseph E. Stiglitz

経常収支不均衡も通貨危機の原因だ、という。しかし、アメリカは通貨の避難所となっているけれど、同時に大幅な経常収支赤字国である。危機のたびに、いろいろな説明が現れる。

他の政府と違って、ユーロを採用した政府には、金利や為替レートが失われるだけでなく、ほかにも政府の能力を減らすことが起きる。たとえば、課税においては競争的に税率を下げてしまい、債務を処理するため増税されるのを嫌う若者が外国の移住してしまう。連邦政府は困難に直面した地域に財政移転するべきだが、ユーロ圏内の移転は嫌われている。(アメリカの地方なら受け入れるだろうが)人々が国外に移住してしまうより、政府は内的な切り下げ策としてデフレが採用される。

こうして、民間や政府の判断ミスで生じた膨大な債務をユーロ圏の枠組みにおいて処理するのは容易でない。政治指導者たちは成長を高めることが解決をもたらすとわかっていながら、前政権や他国の政策を非難することに忙しい。

VOX 5 December 2011

Do Eurozone leaders finally ‘get it’? Not quite yet

Charles Wyplosz

解決に向けた合意は成立したのか? ECBについて姿勢を変えたことを歓迎するけれど、細部には問題がある。

メルケルは赤字国にドイツが愛する「安定性の文化」を輸出する、というが、これは失敗するだろう。すでに中央が決めた「安定と成長のための協定」でその失敗は示されている。メルケルが望むような主権の移譲には拒否権を行使されるだろう。

アメリカのような、分散型の統治を目指すことも、憲法や最高裁判所で守られた財政の均衡化も虚偽を免れない。カリフォルニアの赤字は小さいから他に波及しないのだ。また、連邦財政は大幅な赤字で、不況回避のために刺激策を取ってきた。モラル・ハザードを避けて財政を運営できるヨーロッパの財政委員会が有効である。しかし、政治家たちは財政の中央集権にばかり熱心だ。

債務の再編、銀行の再編、ECBによる介入が明確でない。銀行業界のロビーが、20年前の日本のように、政府を取り込んでしまう。改革は延期され、損失は隠されたままだ。

FT December 6, 2011

Europe’s pain must be widely shared

Raghuram Rajan

FT December 6, 2011

The fall of the Berlin Wall to a US of Europe

By HeinrichWinkler

FT December 6, 2011

Merkozy failed to save the eurozone

By Martin Wolf

サミットのたびに、指導者たちは何も学ばない。ドイツのメルケル首相には計画があった。しかし、それは重要な金融改革をあきらめ、財政緊縮を強く求めた大間違いの計画であり、他のメンバーに阻止された。ところが、他のメンバーにも良い計画はなかった。

ドイツの財政均衡主義はユーロ危機のメカニズムを説明できない。それにもかかわらず間違った理解で解決策を示す。もし危機が財政赤字によって起きたのでないとしたら、それは経常収支赤字に至る競争力の不足にある。

ECBは、長期的な競争力の回復に至るまで、危機に対する短期の介入を行う必要がある。しかし、それは解決ではない。ドイツが間違いを正すしかない。

SPIEGEL ONLINE 12/06/2011

Euro Crisis Uncertainty

Anxious Greeks Emptying Their Bank Accounts

By Ferry Batzoglou in Athens

BLOOMBERG Dec 6, 2011

The Long Shadow of German Hyperinflation

By Jeffrey Fear

BLOOMBERG Dec 6, 2011

Europe’s Real Puzzles Can’t Be Answered in a Crisis

By Clive Crook

guardian.co.uk, Wednesday 7 December 2011

The eurozone crisis: a terrifying race to become a diminished world power

Timothy Garton Ash

ユーロを救う10日間は、すぐに10週間、10か月、10年になるだろう。この「恐るべき、しかも、退屈な」危機について、メルケルはマラソン・ランナーにたとえられる。実際はクロス・カントリーの障害物レースで、偽物の夜明けを信じて、何度も大きな滝に飛び込む。

資本市場でいったん失った信用を取り戻すのは難しい。

ユーロ圏は強固な同盟に変わる。それは二つのスピードで進むEU統合であるとサルコジは言うが、マルチ・スピードで、マルチ・ダイレクションの、分解をもたらす。「独仏独裁」とDer Spiegelが呼んだ方法で全体を維持できるとも思えない。

結局、成長を回復できるかどうか、経済学に戻ってくる。ドイツの反ケインズ主義政策は成長をもたらすか? 南欧が苦しみ続けることに北欧の利益はあるのか? ユーロ圏外の諸国が高い成長を遂げている。

そしてユーロ危機は、EUの国際政治的な影響を失わせた。

FT December 7, 2011

The terrible consequences of a eurozone collapse

By Willem Buiter

ユーロ圏が解体するとどうなるか?

小国が離脱することでも破壊的だが、もしドイツが、他の数か国とともに離脱して、新しいドイツ・マルクを作るとすれば、それは破滅的な結果になる。イタリアやスペインが離脱しても、EUや北米の主要金融機関がいくつか破たんするだろう。それはグローバルな金融システム危機と世界不況につながる。

財政的にも、競争力においても、ギリシャのように弱い、小国が離脱する確率は2025%あるだろう。銀行預金、政府債券、年金、賃金、などが新ドラクマに転換され、大幅に(たとえば65%)切り下げられる。離脱が予想されると、預金の引き出しや新規融資は禁止され、離脱前から政府機関や銀行システムが破たんするだろう。バランス・シートが管理できなくなり、ギリシャ経済が崩壊する。ギリシャは切り下げによって一時的な競争上の優位を得るが、賃金と部下が上昇し、優位を維持することはできない。外部からの資金が得られないことで、輸入と国内生産が崩壊する。総需要と総供給とが互いに低下し続ける。

もしギリシャがユーロからの離脱を強いられれば、市場は次に離脱する国を探し始める。危機は伝染し、周辺諸国から「ソフト・コア」諸国、ベルギー、オーストリア、フランスに及ぶ。

ギリシャだけが離脱するなら、ユーロ圏はそれを管理できるだろう。ギリシャのGDPはユーロ圏全体の2.2%、公的債務の4%でしかない。可能性は5%もないと思うが、無秩序な政府債券のデフォルトとイタリアまで離脱することになれば、ヨーロッパの銀行システムが崩壊し、グローバルな銀行システムでもそれに応じた破綻が生じる。世界GDP10%低下し、西側では20%の減少にもなる。新興市場でも減少する。

ドイツと他の数か国(フランスは含まない)が離脱するなら、さらに破壊的である。可能性は3%もないが、ユーロ圏の周辺諸国がデフォルトになり、新ドイツ・マルクは急激に増価する。新しい通貨圏の金融機関は、旧周辺諸国への債権を大幅に失い、救済されねばならない。すべてのユーロ建契約と金融手段が法的な意味や価値を失い、奪い合いになる。弁護士を除いて、すべての人が貧しくなる。

ユーロ圏が崩壊しても、EUが残れば紛争や戦争は回避されるだろう。

FT December 7, 2011

Bundesbank and ECB need not clash

By Ralph Atkins in Frankfurt

SPIEGEL ONLINE 12/07/2011

Fateful Day for Europe

Four Ideas to Save the Common Currency

By Charles Hawley

SPIEGEL ONLINE 12/07/2011

Battle to Save the Euro

Summit Seen Backing 'Merkozy' Plan - But Then What?

By CarstenVolkery and Philipp Wittrock

WP December 7, 2011

Democracy is on the retreat in Europe

By Harold Meyerson

アラブの春では民主主義の進展を喜んだが、ヨーロッパでは民主主義が後退し続けている。独仏の占めるユーロ危機の対策に他国の指導者も合意すれば、国民は何年も生活水準の悪化を耐えなければならない。この合意は、失業を増やし、しかも、次の金融危機を回避できるわけでもない。むしろ、各国政府にケインズ主義的な刺激策を禁止するものだ。

指導者たちには他の選択肢がないように見える。それは危機回避の制約による民主主義的政府の否定だ。クリントン政権の財務副長官であったRoger Altmanが述べたように、核兵器は使用しないけれど、それ以外なら何もできる超世界政府a global supra-governmentが登場した。それは金融市場の膨張、グローバル・メガバンクの誕生、などによって要請されてきた。

Project Syndicate 2011-12-07

Europe, Heal Thyself

Daniel Gros

FT December 8, 2011

Now the Franco-German question

By Philip Stephens

ドイツが指導し、フランスは従う。東西ドイツの再統一によって、ヨーロッパのゲームのルールは永久的に変わった。ユーロ危機の意味はそこにある。

ドイツはヨーロッパ内で均衡を欠いている。ドイツ問題に対する新しい答えが求められる。フランスはヨーロッパ統合なしには国際政治の舞台から消えてしまうだろう。ユーロ圏を維持する財政安定協定は、独仏で発表しても、明らかにドイツの作文である。しかし、それゆえ、長期の解決にならない。

1944年のブレトン・ウッズ会議でケインズが主張したように、安定した為替レートの国際合意は対照的な行動を求めている。一方が緊縮策を採用すれば、他方は成長を刺激してバランスするのだ。

しかし、ケインズは敗北した。しかし論争は何度も再発する。1980年代にはアメリカと日独が対立し、今も貿易不均衡について米中が対立する。ヨーロッパ内でも、成長を優先するフランスは、物価安定を重視するドイツの政策と対立した。単一通貨はこの対立を解消するはずだった。

ドイツの財政安定化同盟が、緊縮策以上のものを目標にすることを、フランスやヨーロッパ諸国はドイツの指導力に従う条件とする。

FT December 8, 2011

IMF must play its part in any euro solution

By Lawrence Summers

SPIEGEL ONLINE 12/08/2011

Taking on the Doubters

Chancellor Merkel's Difficult Battle in Brussels

By Philipp Wittrock

WP December 8, 2011

Europe 2.0?


l  金融危機と社会規範

NYT December 1, 2011

The Spirit of Enterprise

By DAVID BROOKS

なぜドイツやアメリカは豊かなのか? 資源がある? 習慣、価値観、社会資本。努力することが報われる、という単純な道徳律を信じている。

この精神・エートスが様々な形で蝕まれている。ロビー活動。投機的な短期取引。政府も将来世代から奪っている。正当性の危機、信頼の喪失、努力はもはや報われない。

ヨーロッパでも、ドイツやオランダのような優れたガバナンスを築いていた国は繁栄してきた。今、彼らは自分たちのガバナンスとは異なる、膨大な債務による危機に陥った諸国の救済を求められている。その規模は、第一次世界大戦後のドイツ賠償金を超えるかもしれない。

救済するべきだというさまざまな理由は正しいだろう。しかし、私はドイツ人たちに同情する。彼らは救済と交換に構造改革を主張することで自分たちの利益を求めない。彼らは偏狭なイデオロギーやインフレーションの悪夢に迷わされていない。彼らは西側の繁栄を支える価値観、習慣、社会契約を守っているのだ。

アメリカでも、ヨーロッパでも、金融危機が道徳破壊や金融システムの救済だけで、改革をもたらしていない。それは経済の回復を蝕む。

SPIEGEL ONLINE 12/02/2011

Citizens of the EU

How to Forge a Common European Identity

By Thomas Darnstädt, ChristophSchult and Helene Zuber

guardian.co.uk, Tuesday 6 December 2011

Canada's multiculturalism is no model for Europe

Kenan Malik

guardian.co.uk, Thursday 8 December 2011

A Euro-sentimentalist's lament

Jessica Reed

Project Syndicate 2011-12-08

Is the European Dream Over?

Ian Buruma

危機は政治的なものだ。国家は通貨を発行し、市民たちは税金を支払う。その税金は貧しい地域に支出されるが、そのことを否定する者はいない。それは国民の連帯である。危機においては集合財を供給する。このことは、イタリアやベルギーが示すように、一国内でも自明のことではない。

しかし、EUは国民国家ではないし、民主主義でもない。困難な時期にもヨーロッパ市民だと感じていない。裕福なドイツ人やオランダ人は、ギリシャ人やポルトガル人、スペイン人の苦境を救うために支払いたくない。国民国家が単一民族であるとは限らない。民主主義は一国内部でも機能しない。では、この超国民国家のEUはどうすれば政治的に機能するのか?

ユーロを捨て、ヨーロッパ統合の夢を捨てるのは悪夢である。もし解体を避けたいなら、EUを強化することだろう。財政を統一して単一の財務省を作る。ブラッセルの官僚が作る国家や国旗ではなく、ヨーロッパの連帯意識を高める。それはEU政治家や制度に依存している。

誰がそんなことを可能だと思うのか? フットボール・クラブを見ればよい。30年前に、ロンドンの最も人気ある二つのクラブ(Arsenal and Chelsea)でフランス人とポルトガル人の監督を迎えている、と誰が予想しただろうか? そして、選手はスペイン、フランス、ブラジル、ポルトガル、ロシア、セルビア、チェコ、ポーランド、メキシコ、ガーナ、韓国、オランダ、ベルギー、ナイジェリア、アイボリー・コーストから来ている。それと、イギリス人も一人か二人。


l  エジプトの選挙

WP December 2, 2011

After the hope of the Arab Spring, the chill of an Arab Winter

By Daniel Byman

FT December 6, 2011

Western dreams and Egypt’s reality

By Gideon Rachman

FP DECEMBER 5, 2011

America's Second Chance and the Arab Spring

BY KENNETH M. POLLACK

guardian.co.uk, Wednesday 7 December 2011

The big challenge for a new Egypt: water

Jonno Evans

NYT December 6, 2011

Egypt, the Beginning or the End?

By THOMAS L. FRIEDMAN


l  資本主義は持続可能か?

Project Syndicate 2011-12-02

Is Modern Capitalism Sustainable?

Kenneth Rogoff

世界金融危機の後も資本主義は続くのか? という質問をよく受ける。実際のところ、アングロ・サクソン型の資本主義に変わるとしたら、他のタイプの資本主義しかない。大陸ヨーロッパ型。中国ダーウィニズム型。・・・いずれの資本主義も過渡期でしかない。

資本主義の欠陥は膨張し続けている。1.空気や水のような公共財。2.不平等。3.医療のような基本的ニーズ。4.将来世代の福祉。5.リスク。

原則的には、こうした資本主義の問題を克服できる。エコノミストたちは市場型の解決を用意している。しかし、政治システムは混迷を深めている。だから、資本主義が持続可能過疎化、確かなことは言えない。

LAT December 4, 2011

A manifesto for the Occupy movement

guardian.co.uk, Wednesday 7 December 2011

A three-step programme to re-civilise capitalism

Michael Lipton, Stephany Griffith-Jones and Robert Wade

抗議の声は経済システムの欠陥に向けられている。その対案はあるのか?

文明化された資本主義re-civilising capitalismの文化を創ることだ。194080年、ケインズ主義的な、混合経済体制は、成長、雇用、安全を実現していた。貧困を減らし、自由を維持した。それは政治における社会民主主義が資本主義を監視し、共産主義に反対したからだ。

共産主義体制が崩壊し、「新古典派」経済学が勝利して、ドグマとなってから、それは知識人のアヘンとなって、金融自由化を正当化し、メディアや政治家を汚染した。しかし、その「国家は何もできない・するな」の教義は危機によって葬られた。

より平等な対案を導く上で重要なエコノミストたちは、classical ones (like David Ricardo), liberals and social democrats (like Alfred Marshall, Keynes and Hyman Minsky) and modern successors (Nobel laureates Paul Krugman, AmartyaSen, Joseph Stiglitz and James Tobin)である。

1.富裕層、金融ビジネスへの課税。2.金融規制と巨大銀行の分割。3.所得再分配で最貧困層と再富裕層の割合を変える。

新古典派経済学と既得権による政治を変えることで、金融ビジネスの利益ではなく、安定した、多くの者が繁栄を享受できる成長を実現できる。


LAT December 2, 2011

The American century: That was then

By Tom Engelhardt


l  ガバナンスの拡大

NYT December 2, 2011

How Bad Are Things, Really?

By ROGER COHEN

民主主義的な旧秩序を支える裕福な諸国は、金融危機に落ち込んで回復に時間がかかりそうだ。彼らはますます、新興諸国の増大する人口や富に比べて、世界の少数派になっていく。統治システムがバラバラなユーロ圏は、その救済資金を中国の外貨準備にまで頼ろうとした。

我々はガバナンスの再編に苦しんでいる。協力するために集まった国々も、そのガバナンスについては全く異なった意見を持つ。より多くの統合を求めながら、人々は自分たちの部族的な背景を捨てようとはしない。どうすれば世界をより公平に管理できるか、その方法がわからない。

中国であれ、インドであれ、ブラジルであれ、パックス・アメリカーナの配当を得るばかりで、自分たちが優れたモデルを示すことはない。資本主義を改善する、というのは古くからあるテーマであり、福祉国家が試みてきた。トービン税、インターネット、OSW運動、・・・

恥辱は強力な動機であり、革命や戦争を引き起こした。アラブ諸国では、チュニジアでも、エジプトでも、パレスチナでも、変化が急速に起きている。彼らの目指すものは、より多く自分たちの声を反映した、代表たちによるガバナンスだ。

ヨーロッパでもアラブでも、統合は避けられない。問題は、どこまで流血を避けられるか、である。


l  福島後の日本

NYT December 2, 2011

After Fukushima: Now, More Than Ever

By NATHAN MYHRVOLD

guardian.co.uk, Monday 5 December 2011

How will Britain cope with its lost decade? Take a look at Japan

Aditya Chakrabortty


Project Syndicate 2011-12-02

China’s Dam Frenzy

Brahma Chellaney


l  ビルマのグレート・ゲーム

YaleGlobal Online 5 December 2011

Burma in the US-China Great Game – Part I

David I. Steinberg

YaleGlobal Online7 December 2011

Burma in the US-China Great Game – Part II

Aung Zaw

Project Syndicate 2011-12-08

Burmese Days

Shashi Tharoor


l  中国の関与

Global Times | December 05, 2011

Embattled West unprepared for rise of a practical China

By Yang Rui

Global Times | December 06, 2011

Global chaos offers hints of new world order

By Zhang Yuyan

Global Times | December 07, 2011

China can play critical role in reshaping global order

FT December 8, 2011

Leave China out of a trade pact at your peril

By AadityaMattoo and Arvind Subramanian

SPIEGEL ONLINE 12/08/2011

The Global Crisis Reaches China

Unrest Spreads as Growth Stalls

By Wieland Wagner

WSJ DECEMBER 9, 2011

The Incredible Falling Yuan

Global Times | December 08, 2011 19:23

Yuan fall chance to speed up exchange reform

By Yu Yongding

Project Syndicate 2011-12-08

Europe on a Chinese Shoestring

Yao Yang


l  オバマの反撃

NYT December 6, 2011

Obama in Osawatomie

WP December 8, 2011

Obama’s New Square Deal

By E.J. Dionne Jr.

WP December 8, 2011

Obama’s economic speech shifts the focus from deficits

By FareedZakaria


l  真珠湾攻撃の記念日

NYT December 6, 2011

Remembering Pearl Harbor

WSJ DECEMBER 7, 2011

Pearl Harbor, Iran and North Korea

By WARREN KOZAK


l  アイルランドとアイスランド

guardian.co.uk, Thursday 8 December 2011

An Irish budget, made in Germany?

Elaine Byrne

SPIEGEL ONLINE 12/08/2011

Iceland's Toxic Legacy

Mountains of Debt Temper Hopes despite Recovery

By Jan Puhl

金融破たんから3年を経て、アイスランドは財政の主権を取り戻す。しかし民間債務の山は残ったままであり、EU加盟やユーロを採用しても支援は何も得られないだろう。

当時の首相Geir Haardeや、危機後の生活水準低下により国外に職を探す若者などから、金融危機の影響がわかる。


FT December 8, 2011

Spring comes to Moscow – the tug of war begins

By KonstantinvonEggert

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The Economist, November 26th 2011

Is this really the end?

The euro: Beware of falling masonry

Charlemagne: The sinking euro

Egypt’s turmoil: The generals must go

Egypt’s turmoil: Who will benefit from the chaos?

Governing China: The Guangdong model

Congo’s election: That sinking feeling

Reviving manufacturing: No land of giants

E-commerce in China: The great leap online

(コメント) ユーロ危機に関する終末の分析です。銀行システムや金融市場はパニック・モードに入り、財政危機も悪循環を示しています。ECBが行動しなければならないのに、モラル・ハザードを避けることが重視されます。ドイツを説得するには、EU諸国が財政規律について堅い約束をし、EU機関がそれを強制できると確信させねばなりません。

エジプト、中国、コンゴも、そのガバナンスについて想像力が試されています。

しかし、日本から製造業が失われてしまうのか、という不安は、二つの記事によって未来を刺激されます。イギリスの製造業復活と、中国のインターネット・ショッピングです。イギリスはドイツやアメリカのそうな製造業の裾野がなく、直接投資を受け入れる環境が重要になります。しかし、そのためにもEU単一市場だけでなく、ユーロ圏の安定が欠かせません。キャメロンは、この矛盾を解決できるのか?

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IPEの想像力 12/12/11

ゼミ生がメンバーの同志社グリークラブ定期演奏会を聴きに行きました。昨晩から厳しい冷え込みで、行くのも大変だな、と少し迷っていたのですが、今年も寒梅館の会場は大盛況でした。彼らの熱唱に感動する年配の社会人がこれほど集まることに、よき伝統や練習の成果を見ました。

電車の中ではThe Economistを開いて、コンゴ民主共和国で行われた大統領選挙や、エジプトで行われる総選挙の話を読んでいました。(どちらも終わっています。)

コンゴの選挙は、私たちがイメージするものとは全く異なる、形を変えた内戦です。現大統領のカビラJoseph Calbila と対立候補のチセケディEtienne Tshisekediが争いました。コンゴの面積は西ヨーロッパにほぼ等しく、7000万人を超える国民をまとめる政治システムはまだありません。カビラは東部の資源地帯を基盤とし、チセケディは首都キンシャサと出身地を支持基盤としています。しかし野党UDPSの事務所は、すでにカビラの支持者たちによる投石で破壊されています。選挙結果にかかわらず、内戦が再現することを心配する人が多いのです。

選挙が国民の意思を反映する機会や道具としての正当性を得られないのは、社会が深く分裂しているからであり、同時に、選挙の手続きが容易に実行できないからです。投票用紙や投票箱の輸送が大問題です。道路の状態はどこでも悪く、ヘリコプターで輸送するのも気象・地理条件に左右されます。大統領候補が11人、定数500人の議会に立候補した数は18000人。そこにはポップスターや、コンゴ東部で300人以上の女性を強姦するよう命令した武装集団の指導者も含まれます。ときには50ページを超える、という投票用紙を読む有権者がどれほどいるのか?

正当性を高めるために、最初の選挙は国連が実施し、欧米のNGOが参加して選挙の過程を監視しました。今回はそれらがありません。

エジプトは、軍事管理体制が長期化しつつあります。若者たちは再び体制を批判し始めました。革命後も、多くの労働者には仕事がなく、激しい抗議活動や政治そのものが彼らを苦しめているように見えるわけです。選挙では、国民的な組織を持ち、政治資金を手にしたムスリム同胞団が勝利するでしょう。ムバラクを倒したタハリール広場の群衆が期待したような選挙は期待できません。

イラクでも、アフガニスタンでも、選挙が民主主義の実現である、という欧米社会におけるイデオロギーを利用することの限界が示されたと思います。外国を見るまでもなく、日本の選挙を見ても、こうした作業が私たちに優れた政府や政治家を与えてくれたとは決して思えません。

同志社グリークラブの歴史をHPで見て、戦争の間、占領地域にも慰問に訪れているのを知りました。彼らの歌声は戦地の兵士たちを勇気づけ、苦境にある人々を励ましたでしょう。しかし、占領支配や虐殺行為の正当化にも利用されたのではないか、という疑いを否定できません。

Harold Jamesは問いかけています。ユーロは何のためにあるのか? そして、詩人は何のために生きているのか? それらは経済的に見て役に立たない、というのは間違いです。詩人は人々の感情を豊かにします。王を称える詩人も、革命を称える詩人もいます。市民文化や近代的な文明を生きながら、詩人は自然や伝統の素晴らしさを歌うのです。

毎週、辻説法をして政治感覚を鍛えた、と言われる野田首相なら、もっと国民に向けて政治課題や国会の論争内容、国際情勢を説明できるはずです。そして、毎月最初の日曜日は街頭演説の日として、午前中、すべての政治家とその候補者を日本中で一斉に街頭演説に立たせてほしいです。若者たちが政治家の演説をはしごして聞いて回るような、熱気ある政治の舞台を示すべきです。

もし彼ら、国民の代表であるはずの政治家たちが、重要課題を取り上げて正面から議論しなければ、インターネット上の闇サイトや匿名掲示板、投稿画像が、国民の政治意識を蝕みます。

「理想的な世界では、・・・選挙が新しい指導部と明確な権限を与える。」 そのときこそ、詩人やグリークラブの熱唱が、人々に大きな勇気を与えます。

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