IPEの果樹園2011

今週のReview

11/21-/26

 

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ユーロ危機とは何か? ・・・金融官僚の政治支配 ・・・TPPの波紋 ・・・ジャーナリストの対談 ・・・リッチスタン(富裕層の国) ・・・天使ではない

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  ユーロ危機とは何か?

NYT November 10, 2011

Legends of the Fail

By PAUL KRUGMAN

ギリシャが返済できるという前提で融資したのは失敗だとわかったし、危機はイタリアにも及んだ。そもそも共通通貨とは何だったのか?

イデオロギーの違いを超えて、ユーロは支持されていた。アメリカの右派は、金本位制についで、共通通貨を支持していた。イギリスの左派は、ヨーロッパの社会民主主義を拡大するという意味で、ユーロを支持していた。他方、イギリスの保守派は同じ理由でユーロに反対し、アメリカのリベラルは、不況と闘う財政・金融政策を失うことを心配した。

ユーロ危機から得る教訓も、イデオロギーによって異なる。

多くの共和党員は、ユーロ危機を福祉国家の崩壊とみなす。ヨーロッパは福祉国家を拡大しすぎたのだ。アメリカはそれをまねてはいけない。・・・しかしヨーロッパでも、スウェーデンやドイツは、社会支出のGDP比で見てギリシャやイタリアよりも福祉国家を実現しているが、危機になっていない。また、国民皆保険を持つカナダを見ても、福祉国家は通貨危機の理由ではない。

金利は債務の大きさによって決まらない。自国通貨で借り入れることができるかどうかだ。日本はイタリアよりもはるかに大きく債務に依存しているが、金利は1%でしかない。イギリスもスペインより債務依存度が大きいけれど、金利は2%を少し超えるだけだ。スペインやイタリアは自国通貨で借り入れることができない第三世界の地位に近づいている。それが政策の弾力性を失わせた。アメリカは自国通貨で借り入れができるから、そのような危機になっていない。

ユーロ危機を財政再建の必要性と結びつけるのは間違いだ。緊縮政策で通貨危機を解決した例は世界のどこにもない。アイルランドは称賛されているが、厳しい緊縮策を経て失業率は14%に達したが、今も債券の金利はまだ8%だ。

イデオローグたちがユーロ危機をハイジャックしてしまった。

Project Syndicate 2011-11-11

Down with the Eurozone

Nouriel Roubini

ユーロ危機は頂点に達しつつある。問題は構造的である。PIIGS (Portugal, Ireland, Italy, Greece, and Spain)とコア諸国the eurozone core (Germany, the Netherlands, Austria, and France)との間に経常収支不均衡が固定している。さらに、ドイツと赤字国の間で労働コストは逆向きに変化した。周辺の赤字諸国はますます競争力を失い、公的・民間債務は維持できなくなった。

何をするべきか?

周辺における成長と競争力を回復するリフレ政策がもっとも望ましい。それと平行して、周辺諸国は構造改革と緊縮策を実施する。そのためには政府債券購入増によるECBの大幅な金融緩和が必要だ。しかし、残念なことに、ドイツが強く反対している。

ドイツとECBが周辺諸国に求めているのはデフレ調整、すなわち、緊縮策と実質的な切り下げだ。これには問題が多い。緊縮策は必要だが、当面の不況を悪化させる。構造改革も、雇用削減や赤字企業の整理など、不況が深まり、新部門への労働者の移動は徐々にしか進まない。デフレによる実質切り下げができたとしても、その間に財政赤字や企業倒産はさらに増えるだろう。

したがって、周辺諸国がデフレのわなを抜け出し、競争力と構造的な対外赤字の問題を解決するには、第3の選択肢、デフォルトとユーロ圏離脱しかない。

それが無秩序に起きるとユーロ圏は一気に崩壊し、2008年のリーマン・ショックを超える破壊的影響を生じる。そこでユーロ圏のコア諸国は、崩壊を避け、競争力を失ったままの低成長状態に、周辺諸国のユーロを維持する。それが第4の選択肢だ。そのためにコア諸国は債務の大幅な削減と巨額の財政移転を認める。

イタリアは、何十年も、南部Mezzogiornoに対してそのような政策を取ってきた。しかし同じことを、たとえユーロ圏内ではあれ、ドイツ人とギリシャ人との間で長期間行えるとは思えない。また、その場合、ECBの力が制限される。

イタリアを救済するには負担が大きすぎる。ユーロ圏は解体コースに入った。後戻りはできない。

WP November 12, 2011

Stuck in the middle with Europe

By David Ignatius

ドイツ人は、ECBによるユーロ圏全体の金融緩和と危機からの景気回復を支持するか、ギリシャの離脱とドラクマの為替レート変動による調整を認めるか、どちらかでなければならない。しかし、どちらも拒んでいる。EFSFの決断も、その協力には中身が無く、中国なども参加しなかった。

それに比べて、アメリカは超党派で銀行救済を進め、FRBの金融緩和で金融危機を解決した。

The Observer, Sunday 13 November 2011

There is only one alternative to the euro's survival: catastrophe

Will Hutton

ユーロ圏の最悪の状態を見て、イギリスがユーロ圏ではないことを喜ぶユーロ懐疑論者は、これがヨーロッパ通貨体制とガバナンスの危機であるだけでなく、現代資本主義の危機でもあることを理解していない。アメリカでも中国でも、通貨制度は現実と乖離し、民間債務は膨大で支えられないほどあり、銀行は資本不足だ。

イギリスの利益は、明らかに、ユーロ圏が存続することにある。ユーロ圏の離脱を簡単に議論するのは間違いだ。ヨーロッパ経済が不況になれば、イギリス経済も不況になる。

しかし、ギリシャもイタリアも金利が上昇し、返済するのは難しい。成長率が低い世界では、債務は免除されるか、あるいは、インフレで減らすしかない。債務免除のための基金が準備され、さらに、危機に対する緊急融資が実現するには、ECBが「最後の貸し手」とならねばならない。これをドイツは会議のたびに拒んできた。

ドイツ人がそれを嫌う理由は周知のことだ。インフレーションでヒトラーが権力を握ったから。また、ドイツの憲法も、財政移転をすべて議会が承認するよう求めている。これはドイツとヨーロッパが直面する難局を悪化させている。ユーロ圏があることで、ドイツは大きな利益を受けている。ドイツは、この10年間、世界貿易の比率を高め続けたヨーロッパで唯一の国だ。

ドイツが直面する選択とは、債務の大幅な削減とドイツからの財政移転によってユーロ圏の将来を確実なものにするか、インフレーションが起きるか、である。

ここでヨーロッパの不況を避ける必要を説くより、キャメロン首相にドイツで演説するように求めたい。すなわち、ユーロ圏にとってもっともコストが小さいのは、ギリシャではなく、ショックにも耐えられる強い経済を持つドイツが、ユーロを離脱することだ、と主張すればよい。

そして、イギリスは安定したユーロ圏にポンドを固定し、究極においてはユーロ圏に参加する。しかしそれは、ドイツが積極的な役割を果たして健全に運営されるようになったユーロ圏か、あるいは、ドイツが抜けたユーロ圏である。

この演説は、ドイツに大論争を巻き起こすはずだ。ドイツはインフレを恐れる以上に、ヨーロッパで孤立することを恐れる。それゆえドイツは、ユーロ安や、ドイツに限らない全ヨーロッパの成長政策を目指すだろう。またイギリスは、ヨーロッパのゲームのルールを変えることで、ヨーロッパにおける政治的影響力を重視される。

実際には、キャメロンは小イングランド孤立主義Little England isolationismに陥り、ドイツはあまりに道徳的で、視野が狭い。その両方がヨーロッパとその経済を苦しめている。

FT November 13, 2011

The only way to save the eurozone from collapse

By Wolfgang Münchau

ヨーロッパの債券市場は機能しなくなった。ドイツ政府債券は巨額で、流動的であるが、ユーロ圏という世界第二の経済規模に匹敵するほど大きくはない。保険会社、年金基金、など、機関投資家は安全な債券を求めている。すなわち、ユーロ債だ。

いまや、新規発行よりも、既発債の保有が問題になっている。EFSFの増資にも、レバレッジのような愚かな考えを捨てるべきだ。EFSFは政府債券を購入し、これをユーロ債に変換するだけでよい。ユーロ債こそ経済的なガバナンスの拡大に見合う唯一の手段である。

ユーロ債がなければ、崩壊は避けられない。ドイツにもオランダにも、フィンランドにも、その準備はない。

FT November 13, 2011

Special drawing rights enjoy rare moment in limelight

By Alan Beattie in Washington

SDRは準備資産である。IMF加盟国政府間で使用できる。しかし、実際の支払いや購入には主要通貨に転換される。SDRは人工通貨として、また、ボタンひとつでできる「紙幣増刷」として、批判された。

G20SDRの利用を提案したのはドイツ連銀だった。SDRの発行によってIMFはユーロ圏のEFSF増資やECBによる融資を、イデオロギー的な論争から救出できる。

FT November 15, 2011

Europe must not allow Rome to burn

By Martin Wolf

今、問題になっているのは、ヨーロッパ経済の安定性、そして世界経済の安定性である。しかし、それだけでなく、1535年の西ローマ帝国崩壊後、ヨーロッパを統一しようとした試み、そのもっとも文明化された世界が生き残れるかどうか、を問われている。

Walter ScheidelStanford University)に従い、Wolfは指摘します。・・・約2000年前、人類の半分は二つの帝国によって支配されていた。ローマ帝国と漢である。二つとも滅んだが、中国では繰り返し統一の動きがあった。しかし、ローマ帝国は分裂したまま、再生しなかった。それでも、再生の夢は死ななかったのだ。法皇や神聖ローマ帝国、そして、ナポレオンがいた。その夢がEUにも生きている。

ドイツのメルケル首相は、ユーロを支持するためにヨーロッパに政治同盟を築こう、と呼びかけた。その言葉に嘘はないだろうが、ドイツのビジネス界や政治エリートは、本当に、その代価を支払う気があるのか? という疑問が残る。

ローマ帝国が滅亡してから数世紀、ヨーロッパはバベルになった。政治も、政治家も、ヨーロッパではなくその土地の問題に支配された。しかし、金融財政政策と、労働市場の規制は、民主的な政治の基礎にある。ユーロ圏内の格差が拡大するにつれて、その摩擦も激しくなった。

メルケル首相は、適時、適度な改革を、実現する戦略を取ってきた。しかし、このやり方では、危機を抑えるのに間に合わない。遅すぎるし、少なすぎる結果になるだろう。

SPIEGEL ONLINE 11/15/2011

Winning Merkel's Praise

Amid Quiet Suffering, Irish Pave Road to Recovery

By Marco Evers

FP NOVEMBER 15, 2011

The End of Italy

BY DAVID GILMOUR

なぜイタリアは分裂しないのか? 多くの言語と、あわただしい政治同盟が、イタリアを作った。百年余りしか経っていない。

FP Tuesday, November 15, 2011

Fiddling while the euro burns

Posted By Stephen M. Walt

ドイツは確かに最後にユーロを救出するかもしれない。しかし、デフレ地域に成長を回復するだろうか? ドイツは回復するとしても、他の国を救済するだろうか? それは、ナショナリズムの問題だ。ニューヨークやカリフォルニアの富裕層は、もっと貧しい諸州に財政移転を永久に続けるだろう。それができるのは、大衆の目に見えないからだ。結局、我々は同じ国の国民だ。

その感覚はヨーロッパにない。土地に根付くナショナリズムを弱めるほど、ヨーロッパ人の共通の意識は強くない。たとえユーロ債がそれを促すとしても。

FT November 16, 2011

Deeper union is risky transaction

FT November 16, 2011

Germans must stop speaking Tory to save Europe

By Denis MacShane

FT November 16, 2011

Europe cannot endure a rift between ins and outs

By Marek Belka

guardian.co.uk, Wednesday 16 November 2011

If David Cameron has a British vision for Europe, let him tell us what it is

Timothy Garton Ash

ドイツのメルケル首相とイギリスのキャメロン首相がカンヌ・サミットで会った。

メルケルは、more Europe、ヨーロッパの政治同盟を求める。キャメロンは、less Europe、ヨーロッパの政治的結びつきを弱める。我々がドイツに求めるのは、市場に浮かぶ、大きなスイスでしかない。

しかし皮肉なことに、ドイツをヨーロッパに縛り付けた通貨同盟・ユーロは、ヨーロッパの他国がなすべきことをドイツに主張させる結果になった。

メルケルが嘆くように、ドイツは何かすると非難され、何もしないと非難される。それでも、ようやくメルケルはヨーロッパがどうなるかを語り始めた。私はそれを歓迎する。

ところが、キリスト教民主同盟の議会指導者Volker Kauder は、党大会のしめくくりで語ったことにより、イギリスのメディアを大いに驚かせた。"Europe speaks German now!"

・・・いや、それは違う。しかし、ドイツの示す基準にヨーロッパ各国が従い始めたことを、メルケルへの賛辞にしたわけだ。

「ドイツ的なヨーロッパ」と「イギリス的なヨーロッパ」が対立している。ドイツのビジョンをユートピアと批判するが、キャメロンの言う「ネットワークされたヨーロッパ」も何かわからない。二つのビジョンを示すことで、ヨーロッパは未来を描くだろう。キャメロンを支持するDaniel Finkelsteinは、ドイツのイメージを閉鎖的なAppleと呼び、イギリスのイメージをMicrosoftと呼ぶ。

次のEU閣僚会議で、各国による投票を行えばよい。

YaleGlobal Online16 November 2011

Painful Euro Crisis and Lessons for the World – Part I

Jacob Funk Kirkegaard

ユーロ危機には4つの危機が重なっている。単純な解決策はなく、それぞれが関連している。すなわち、1.制度設計の危機。2.財政の危機。3.競争力の危機。4.銀行システムの危機。

通貨同盟には、危機に陥った国を支援し、広範かつ強制的に市場の信認を回復できる、十分な規模の独立した財源が必要だ。緊急支援には、モラル・ハザードを抑制するだけの、十分に厳格な政治・経済条件が付く。また、加盟国の財政規律を通じて危機を予防しなければならない。

ところが、政治的な理由で、各国は加盟国の債券を今も区別している。ヨーロッパの市民たちは個々の国家に帰属し、債券もユーロ圏で統一されない。「共通の大義」がない。

歴史的に見て前例のない強固な制度を築けば、ユーロ圏は生き延びるかもしれないが、今のような長引く緊縮政策=ショック療法がヨーロッパの旗のもとに諸国民を統一するとは思えない。

NYT November 16, 2011

Europe’s Contagion

FT November 17, 2011

Germany is not for turning on how to save the euro

By Guido Westerwelle

SPIEGEL ONLINE 11/17/2011

Existential Euro Debate

Franco-German Battle over the ECB Intensifies

WP November 17, 2011

European financial crisis: A growing gap between France and Germany

By Anthony Faiola and Michael Birnbaum

フランスの金利も上昇した。ECBは金融の安定化も重視するべきだ、と主張する。しかし、ドイツ国民はそれを拒む。ハイパーインフレーションのリスクを受け入れないからだ。

ユーロ危機と国民感情とのジレンマに苦しむメルケルを助けるため、彼女の経済顧問団は、1度限りのユーロ債発行で3兆ユーロの安定化基金を調達することを提言した。しかし、なお加盟国のどこかが(財政赤字を埋めるために)「紙幣を印刷する」ことを恐れている。特にイタリアだ。

ドイツと他のユーロ諸国との政治的対立が激化する。

WSJ NOVEMBER 17, 2011

The Culture War Over Europe's Money

By WALTER RUSSELL MEAD

EUを目指すものは、ナポレオンか? ドイツによる占領か?


l  金融官僚の政治支配

NYT November 10, 2011

Can Italy Put Berlusconi Behind It?

By MAURIZIO VIROLI

イタリアの政治危機は、共和国が国民ではなく、一人の男のために奉仕すると考える政治階級を変えることができるか? 次の首相も、プーチンがメドヴェージェフを首相にしたように、ベルルスコーニが利用するだけだろう。ベルルスコーニが辞任するだけでなく、その政治システムから国民は離れることだ。

FT November 11, 2011

Eurozone turmoil: enter the technocrats

By Tony Barber

ユーロ危機が拡大する中で、ヨーロッパの指導者たちは50年をかけたヨーロッパの統一を守るため、ギリシャとイタリアで、選挙による政治指導者を辞任させ、金融市場の専門家に政権をゆだねた。

FT November 11, 2011

Papademos must defy the omens

SPIEGEL ONLINE 11/11/2011

A Symptom of the Crisis

Greeks Vexed By Growing Crime

By Paul Glader in Athens

ユーロ危機が深まっているギリシャで、国民の生活はどうなっているのか? 

「暗い街角には麻薬の売人が隠れている。アテネ市民たちは、ギリシャ経済が縮小する中で、麻薬取引、売春、窃盗、強盗、軽犯罪、非合法移民、が増えた、という。」

社会的緊張が高まるさまざまな条件が見られる。失業率は、1年前の12%から16.3%に上昇した。表通りで閉鎖する店舗が増え、捨てられるペットの犬や猫が増えた。ストライキが続き、町にはごみが累積する。ゲートに囲まれた富裕層の住宅地区でも不安は高まっている。

犯罪の増加と厳しい緊縮政策により、中間・上流層の中には、都市部から脱出する者、支出パターンを変える者、外国に移住する者、出身地の島に帰る者、が現れている。

アテネ市民は、「スウェーデンのように重税を支払い、アフリカのような劣悪な公共サービスしかない」と冗談を言う。不動産税が追加され、学校や病院は削減される。

SPIEGEL ONLINE 11/11/2011

Wobbling Domino

What Comes Next for Troubled Italy?

By Florian Diekmann and Christian Teevs

FP NOVEMBER 11, 2011

Papa's Got a Brand-New Bag

BY NICK MALKOUTZIS

ギリシャのパパデモスLucas Papademos新首相は、ハーヴァード大学でこの春学期に教えるはずだった。科目は「グローバル金融危機:政策対応と課題」である。彼がそのテーマについて知っていることを祈りたい。

The Observer, Sunday 13 November 2011

Guilt is both a reason, and an excuse, for German inaction

Nick Cohen

guardian.co.uk, Monday 14 November 2011

Silvio Berlusconi may be gone, but there is little unity in Italy

Alberto Nardelli

Silvio Berlusconiの時代は終わった。しかし、右派の支持者たちは'No to Monti'の横断幕を掲げる。元欧州委員のMario Montiに政権が委ねられたが、彼に何ができるのか?

北部同盟以外のすべての党派は新政権支持を表明しているが、その主張はバラバラだ。すでに選挙運動が始まっており、与党は分裂し、政治的混乱が続く危険性は高い。

guardian.co.uk, Monday 14 November 2011

Letting technocrats run Europe is bad politics and bad economics

Aditya Chakrabortty

Mario Monti and Lucas Papademosはイデオロギー的に中立の政治家である。しかし、経済学や金融の専門家が政府を組織しても、それでユーロ危機が解決できるとは思えない。

ギリシャやイタリアの金融危機を招いたのは、年金生活者や学生、公務員の利益を重視した政府ではなく、銀行家の支持する政府であった。しかし、新政権は北欧の要求に従う必要があるから、Monti EUの委員であったし、Papademos ECBのスタッフであった、というのはその条件に合う。

経済学について専門的に学んだことが政策を決めるうえで重要か? ヨーロッパの政治家の経済学に関する知識を調べれば、1973年以来、ギリシャの財務大臣の69%、ポルトガルの財務大臣の55%は、経済学のPh.Dを持っていた。他方、イギリスの財務大臣にはそれほどの高学歴はない。

危機になるまで、ユーロこそ経済学の専門技術官僚による勝利であった。重要な政治制度や、まして共通の財務省を欠いたユーロ圏の問題を、我々は今、深刻に、理解している。

FT November 14, 2011

IMF must reassert itself in the euro crisis

By Bill Rhodes

ユーロ圏内の協力と規律をもたらす、独立した、強力な、中央機関が必要である。その候補の一つが、IMFである。最近まで、その影響力は薄れていたが。

もしIMFが現在、一定の賢慮奥を持って行動するとしたら、それは特別な財源を必要とするだろう。巨額の外貨準備を持つ諸国(China, Saudi Arabia and other members of the Gulf Co-operation Council, as well as India, South Korea and Brazil)がそれを提供する考えを示している。金融市場もIMFが金融システムの健全なアンカーとして再建されることを歓迎する。IMFは加盟国の政策を監視し、専門家の明晰な分析と、過去の失敗からは切り離された独立の姿勢を示すだろう。

FT November 14, 2011

Look behind you, Lucas and Mario

By Gideon Rachman

SPIEGEL ONLINE 11/15/2011

Saving the Euro

Germany's Central Bank against the World

ドイツ連銀の新総裁Jens Weidmannは、ECBが最後の貸し手になることに強く反対している。中央銀行の目標はただ一つ、物価の安定、というWeidmannが、ユーロ圏を解体に導くのか? 

FT November 15, 2011

Money alone will not rescue the euro

guardian.co.uk, Wednesday 16 November 2011

In defence of Europe's technocrats

Philip Oltermann

WP Wednesday, November 16, 2011

Will anyone rescue Europe from its economic crisis?

By Robert J. Samuelson

IMFはどこに行ったのか? このような危機を救済する機関ではなかったか?

Arvind SubramanianIMFChristine Lagarde専務理事に公開書簡を送った。IMFはヨーロッパの債務危機に対する救済基金を設けるべきだ、と。それは少なくとも1兆ドルから2兆ドルになる。それに各国は出資し、ヨーロッパの不況を回避する。

ヨーロッパの状況は三つの現実に制約されている。1.福祉国家の財政悪化という社会・政治的な危機が伴う。2.債務者が多すぎて、ECBによる救済策があってもインフレに至る危険があり、ヨーロッパ自身の救済は不可能だ。3.世界経済のパワーが急速にシフトしつつあり、アメリカは自分自身の債務に制約される。中国が加わらなければ、その他の新興諸国だけでは意味がない。

IMFは、こうした政治的変化を救済基金の経済的必要に一致させる役割を担うべきだ。もちろん、反対はあるだろう。しかし、それぞれの国が世界経済の安定性と成長を必要としている。

WSJ NOVEMBER 16, 2011

Pressure Rises on the ECB

By MATT PHILLIPS, MARCUS WALKER and WILLIAM BOSTON

WSJ NOVEMBER 18, 2011

The IMF and the European Crisis


l  TPPの波紋

BLOOMBERG Nov 10, 2011

Trans-Pacific Trade Deal Could Revolutionize Commerce

FP NOVEMBER 11, 2011, 2011

Look South, Not East

BY PARAG KHANNA

アメリカは、アジアよりもラテンアメリカを重視し、統合を推進するべきだ。

ラテンアメリカは、資源が豊富であり、何より、エネルギーを自給できる。また、中国と同じ人口規模(9億人)や市場規模(6兆ドル)がある。ラテンアメリカのほうが、中国より若く、都市化している。また、ラテンアメリカ経済は、アメリカと同じ、中国からの輸入品に苦しみつつある。

アメリカ企業は、中国にアウトソーシングするより、ラテンアメリカを生産拠点として開発するだろう。他方、ラテンアメリカ諸国は技術や資本を得るプラグマティズムによって政策を変えつつある。アメリカのFTAは、コロンビアやパナマだけでなく、ラテンアメリカ全域に拡大するべきだ。もはや中米カリブ海域の「バナナ共和国」支配がアメリカの利益ではない。

南北アメリカにおける市場と産業の融合が、成長とより大きな競争力につながる。アメリカ政府も、ブラジルの外務大臣Celso Amorimに賛同するだろう。「世界がブロック化する中で、団結することが優位をもたらす。」

FP NOVEMBER 11, 2011, 2011

America's Pacific Century

BY HILLARY CLINTON

アメリカ外交の転換を世界に向けて説得する明晰な文章です。

「アジア太平洋は世界政治の重要な運転手である。インド亜大陸から南北アメリカ大陸西岸まで、この地域は、輸送と軍事戦略でますます連結される、二つの大洋(インド洋と太平洋)を含む。世界人口の半分が済み、世界経済の主要なエンジンがあり、世界の温暖化ガスの最大排出地でもある。そこにはアメリカの重要な同盟国があり、中国、インド、インドネシアのような重要な新興諸国がある。」

クリントン国務長官は、アメリカの新しい外交を「前方展開」外交と呼びます。すべての外交資産を動員して、アジア太平洋地域の各国、重要会議に人員を派遣する。その際、①二国間の安全保障協定を強化する。②中国など、新興諸国を重視する。③地域の国際機関を強化する。④貿易と投資を拡大する。⑤米軍基地だけでなく、様々な形の軍事的関与を拡大する。⑥民主主義と人権を推進する。

アメリカは、イラクとアフガニスタンから撤退することを契機に、また、ヨーロッパで戦後60年間に達成した平和と繁栄をもたらす制度の構築を大きな成果として、アジア太平洋地域に次の60年間の目標を掲げます。

中国脅威論にも、封じ込め論にも、クリントンは反対し米中協働・共栄論を支持します。グローバルな問題を解決するために中国が貢献するよう積極的に促したい、と。・・・米中がその意図や軍事展開を誤解しないように、透明性を高め、情報交換を緊密にする。また、南シナ海など、地域の紛争についても、制度的な交渉で安定的に解決することを中国に求める。

経済面では、特に米中の協力が世界経済の繁栄に欠かせない。確かに人権問題では対立するが、国際法を尊重し、人権を重視するオープンな政治システムを築くことは、中国自身に安定性と成長をもたらし、利益である。それられを欠くことが中国の成長を制約する。

地域の多角的な協力と制度化を、アメリカは積極的に支持する。ASEANAPEC、アジア地域フォーラムを重視している。韓国とのFTATPPの推進は、将来、太平洋をまたぐ単一の貿易圏を形成するだろう。APECのような地域的アプローチとG20のようなグローバルな取り組み、そして二国間の交渉は、開放的で、透明な、公平な市場に向けた、同時並行的に進む模索である。

安全保障面でも、日本と韓国に駐留する米軍だけでなく、変化する現実に応じた展開を絶えず実行する。アメリカはアジアの安全保障に、将来も関与するつもりだし、その力がある。それには様々な新しい軍事力の展開を含めることだ。

WP November 11, 2011

A trade opportunity Washington shouldn’t pass up

By David F. Gordon

(China Daily) 2011-11-11

High hopes for APEC

Global Times | November 12, 2011

US rule of TPP halts natural expansion

クリントン国務長官が掲げたTPP推進を、アジア太平洋の市場開放ではなく、アメリカの貿易・投資拡大に偏っている、と批判します。TPPは参加国だけでなく、地域のすべての国に合わせて調整するべきだが、大国間の権力政治がそれを妨げる。

中国はTPPの拡大を支持するが、TPPを利用してアメリカが中国を孤立させることには反対する。中国にも地域の協力国がある。

WP November 12, 2011

Japan makes a brave move toward freer trade

NYT November 12, 2011

A New Era of Gunboat Diplomacy

By MARK LANDLER

「インターネット上のサイバー戦争、無人飛行機ドローンによる攻撃、などが行われる時代に、米中の対抗する前線が熱帯の海であるのは奇妙なことだ。そこでは19世紀の砲艦外交に似た、石油と天然ガスのオフショア開発に向かう衝突が始まっている。」

南シナ海からインド洋にかけて、米中の摩擦が生じている。それは貿易や輸送の安全保障だけでなく、海底資源のエネルギー確保を狙うからだ。「海のグレート・ウォー(a watery Great Game)」と呼ぶことができる。

地中海の東、北極海においても、アメリカは新しい安全保障の枠組みを模索する。

WSJ NOVEMBER 13, 2011

Japan's Third Opening

菅直人が「第三の開国」と呼んだTPPへの参加を野田首相は決断した。日本は安全保障でも、市場圧力と組み合わせた国内改革でも、農民への説得を含めて、新しい時代に入る。

1993年のNAFTA合意がアメリカに州を越えたトラック輸送の自由化をもたらし、中国のWTO加盟が国営企業の改革を促したように、オバマ大統領が述べたように、TPP交渉は日本にとっての歴史的なチャンスである。政治家たちが多くの特殊利益を越えて国益を追求するなら、日本経済は第三の開国にふさわしい飛躍を遂げるだろう。」

WSJ NOVEMBER 13, 2011

Marry the TPP to the WTO

By JAMES BACCHUS

FP Monday, November 14, 2011

Is Beijing in control?

Posted By Clyde Prestowitz

WSJ NOVEMBER 14, 2011

South Korea in a Funk

By MICHAEL AUSLIN

Global Times | November 14, 2011

TPP tests East Asia's commitment to free trade

By Lu Jianren

Project Syndicate 2011-11-14

The Economics of Strategic Containment

Sanjaya Baru

なぜオバマはWTOのドーハ・ラウンドではなく、地域的な自由貿易協定、TPPに向かうのか? クリントン国務長官のアジア外交に関する演説は、アメリカのTPP推進における中国への圧力を示している。アメリカは、開放性、透明性、公平性、を求めており、中国の、為替レート政策、知的所有権、市場アクセスに不満を持ち続けているのだ。

貿易、投資、安全保障において、アメリカはインド洋から西太平洋を経てアメリカ西海岸まで、世界の新しい支柱を求めている。

Project Syndicate 2011-11-14

Re-Orienting America

Richard N. Haass

アメリカはアジアを再発見した。

第二次世界大戦でも、冷戦でも、ヨーロッパと並んで、アジアは重要な焦点であり戦場だった。しかし、冷戦終結においても、911後の戦争においても、アメリカはアジアを見失っていた。イラクとアフガニスタンにおいて、アメリカは6000人以上の米兵の命と1兆ドルを超える財源を費やした。

その政策は終わったのだ。中東から極東へ、アメリカの選択は正しい。

FT November 14, 2011

Asean summit: A fragmented forum

By Kevin Brown

中国とインドに挟まれたことで生じる「虚構のアイデンティティ」に依拠して成立した東南アジア諸国の地域協力機関、ASEANは、今もなお、あまりにも多様で、ばらばらな集合体である。

FT November 14, 2011

Re-engage with Asia, but carefully

貿易自由化でアジアを組織するとき、中国が参加しなければ意味はない。中国を排除したクラブであるとみなされることは地域制度の挫折だ。中国の参加を促すような目標や基準作りを求められる。

安全保障でも、オーストラリアや、他の小国と二国間で関係を強化することは、アジア諸国に不満を呼ぶ。もはやアメリカだけが、アジアの利益を代表する(守る)大国ではない。

WSJ NOVEMBER 15, 2011

China and the Rules of Trade

FP Tuesday, November 15, 2011

Obama at APEC: Good job, wrong strategy

Posted By Clyde Prestowitz

中東からアジアへ、アメリカの再来。このメッセージはよく伝わったが、間違った前提、間違った結果をもたらす、間違ったメッセージであり、間違った理由で広まった。

それが歓迎されるのは、アメリカが安全保障の傘を提供し、中国との紛争を抑えてくれるから。アメリカが自由な貿易体制を守り、アジア諸国の輸出による成長に市場を提供し続けるから。アメリカは最後の買い手であると信じるからだ。アジア太平洋のニルヴァーナ命題と言える。

しかしこの体制は、アメリカは経常収支赤字を続け、それを嫌って慢性的に保護主義を唱え、慢性的に過大評価されたドル、慢性的な防衛予算の膨張、海外に生産拠点を移転し、アメリカに良いことだけを目指している。

自由貿易はTPPに正当化する根拠を与えるが、自由化しても非関税障壁は残っている。人民元レートなど、通貨戦争はその典型だ。さらに、アメリカだけはルールに従わないし、アメリカにルールを強制する力もない。

(chinadaily.com.cn) 2011-11-15

Regional peace depends on mutual trust

By Fu Mengzi

Global Times | November 15, 2011

Sino-US war unlikely but not impossible

Project Syndicate 2011-11-15

America in the Asian Century

Dominique Moisi

ヘンリー・キッシンジャーが最近の著作(On China)で唱えたように、アメリカは「太平洋コミュニティー」を描くべきなのか? それは冷戦期の大西洋コミュニティーとは違い、直接の脅威に直面した共通の文化・価値に依拠することを意味せず、「世界秩序の均衡回復」における共通の利益を意味しなければならないのか?

アメリカが再建されるときに、国際秩序の調整は容易になる。より自信に満ちたアメリカなら、グローバルな地位の低下を受け入れられるからだ。

FT November 16, 2011

How America should adjust to the Pacific century

By David Pilling

Global Times | November 16, 2011

Australia could be caught in Sino-US crossfire

オーストラリアが米軍基地の拡大利用を認めたことを、中国側がまったく無視して関係を維持することはできない。それが制御不能になる前に、米中の対抗意識に取り込まれないよう、オーストラリアは再考するべきだ。

WP November 16, 2011

U.S. foreign policy turns toward Asia

WSJ NOVEMBER 16, 2011

Fishing For Trade

By JOHN CONNELLY

FP Thursday, November 17, 2011

America's incoherent Asia policy

Posted By Clyde Prestowitz

もしアメリカ政府がオーストラリアやフィリピンとの安全保障関係を強化すること、すなわち、中国の外交・軍事力を牽制することに「アジアへの関与」を主張するなら、なぜアメリカの経済力をそぐような中国への企業移転や経済依存を支持するのか?

WSJ NOVEMBER 17, 2011

Asia Pushes Back Against China

Global Times | November 17, 2011

Asian strategic pivot Obama's game changer

By Geoffrey Garrett

Global Times | November 18, 2011

US Asia-Pacific strategy brings steep price


l  ジャーナリストの対談

guardian.co.uk, Friday 11 November 2011

Can Europe pull back from the brink?

Newsnight's Paul Mason and the FT's Gillian Tett

Paul MasonBBc2's Newsnight)とGillian TettFinancial Times)の興味深い対談です。日本がバブルの処理に苦しみ、答えられなかったのと同じ問題を議論します。・・・

ギリシャとイタリアで政治指導者が辞任し、専門官僚が引き継いだ。これは意外なことだったか?

GTGillian Tett):いや、当然だろう。民主的な手続きで対策が遅れるのを許す状況ではないから。

PMPaul Mason):それは違う。彼らは所詮、官僚だ。政権の寿命は短い。

GT:問題は、解決策を強制できる権威を持つ者はいないし、下から積み上げる解決策をもたらす十分な自由市場も無ければ、真の民主主義も無い、ということだ。私たちは中途半端な状態で、危機から危機へと移動している。

PM:ギリシャの二大政党は強力なネットワークを持ち、国民の怒りを制御している。イタリアの危機は、短期的にはベルルスコーニ内閣の信認問題だ。

GT:この4年間、現代金融システムの機能が問われたが、今、政府のシステムも真剣に問われている。未来に向けて、危機を処理できる制度がない。だから多くの公的機関がその権威を疑われ、人々がウォール街を占拠するのだ。

イタリアとギリシャの改革は成功するか?

GT:まだ時間稼ぎでしかない。解決のためには、第一に、ヨーロッパの成長が回復しなければならない。そうすれば債務問題も緩和される。第二に、(改革に向けた)政治的な合意が形成されることだ。

PM:政治の主流において、数ヶ月で自由市場は後退し、保護主義が支配的になるだろう。

GT:(市場統合を解体する)コストは大きすぎる。銀行家たちは、複雑に結びついたグローバル金融システムの上で働いている。それが失われる恐れがわずかでもあれば、パニックが広がる。ECBがシステムを全面的に支持し、IMFも巨大銀行への資金注入を強いられるだろう。

PM:しかし、イギリスでAlistair Darlingが行ったような銀行国有化は、政治家が介入せず、銀行家たちがシステムを勝手に再建した。彼らは資本を得て、融資を怠り、成長をもたらさなかった。

GT:ギリシャが離脱すれば、他の国も不安を持たれる。アメリカ政府が挫折感を持つのは、これがブレトン・ウッズ体制崩壊後の最初の(そしてアメリカの手におえない)グローバルな金融危機であるからだ。それを沈静化できる者はいない。アメリカ政府はヨーロッパを救済できない。今年のIMF増資分もまだ支払っていないのだ。しかもECBのドラギ新総裁はまだ就任したばかりだ。

何か新しい展望はあるか?

GTCarmen Reinhartは、1945年以後にやったような、金融抑圧による処理を予想する。貯蓄機関は強制的に定理の(低利回り)債券を購入させられる。また、David Graeberは、著書Debt: The First 5,000 Yearsで、古代メソポタミア文明でそうであったように、債務免除を周期的に行うことを考える。そうしなければ、暴力が爆発して債務が破棄されるだけである。

PM:インフレによって債務者が免除され、貯蓄を奪われるか、メソポタミアのように穏やかな債務の消去をするか、そうだとしてもわれわれの社会で議論して、その負担を決める権利がある。

GT1990年代の日本では、政府・金融当局が(政治の混乱を恐れて)誰の負担になるかを決めないように、すべての支払いを維持し続けた。市場による調整を拒み、その不安を利用し続けた。ヨーロッパの政治家たちはそれを真似るかもしれないが、うまくいかないだろう。

PM:オバマ政権にも自信が欠けており、政治の硬直性が問題になる。

GT:第二次世界大戦後に財務長官たちがブレトン・ウッズに集まって金融システムを作ったように、G20の指導者たちが弧島に集まって、次の100年に向けたグローバル経済のロードマップを決めるときだ。しかし、世界の各地域は移動するプレートに乗っており、ゆっくりと、見えないほどの速さで動いている。そして突然、プレートは衝突し、新しい山脈を形成する。金融危機はその大きさを示したし、予期しない形で、すぐにやってくる。


l  リッチスタン(富裕層の国)

FT November 11, 2011

Trouble in Richistan

By Gillian Tett

4年前に、ジャーナリストのフランクRobert Frankはアメリカのエリート層を観察したリッチスタンRichistanという面白い本を書いた。さらに、The High-Beta Richを著した。なぜなら2007年に金融市場が混乱と崩壊に向かい、リッチスタンの富や生活スタイルは破局に向かったはずだから。

しかし、The High-Beta Richは破局を利用して富を得る新しい階級、レポ・クラス(“repo” – or “repossession”)を描く。破産した富裕層から土地や個人ジェット機、ボート、絵画などを買い取るのだ。「1995年から2010年にかけて個人ジェット機は2倍以上に増えた。」今や、その価格は半分以下に下落した。

フランクの本は、富裕層もレポ・クラスも非難していない。歴史を通じて、アメリカ社会はリッチスタンを嘆くよりも賞賛してきた。誰でも頭さえ切れれば豊かになれる、anybody could get rich, if they were smart enough.という信念があったからだ。この社会的な移動性に関する神話が、アメリカ社会をまとめるカギであった。ところが、今では社会的な地位の転落を恐れている。アメリカの底辺層から裕福な1%に入ることは、ヨーロッパよりも難しいのだ。

フランクの本は、レポ・クラスとして、この神話の継承を称揚するが、同時に、金融市場を介した移動性が余りにも浮動的であり、社会への帰属意識を失わせたことも示している。富裕層はいつ転落するかわからず、それゆえ、ノーブル・オブリージュとしての社会貢献を重視しなくなり、慈善活動や寄付にも参加しない。

ウォール街を占拠する若者とリッチスタンの住民は、未来への不安、を共有する。

NYT November 12, 2011

The New Progressive Movement

By JEFFREY D. SACHS

OWS(ウォール街占拠運動)はアメリカの新しい時代を告げている。不平等を拡大したレーガン時代の30年を終えて、アメリカは99%の国民のために繁栄を取り戻す。

19世紀末の金ぴか時代、狂騒の20年代、その後、ともに経済や政治の制度が改革された。そして現代の金融危機を経験して、第三の革新時代が始まる。その要点は、1.公共サービス(教育、職業訓練、公共投資、環境)の再建、2.金融取引や富裕層の犯罪に対する厳しい姿勢、3.政治献金ではなく、人々の声を再断言重視する政治、である。

Zuccotti Parkの若者たちが挙げた抗議の声は、アメリカの1000以上の町に広がった。それは政治圧力を生み、政策集団を育て、選挙結果を動かすだろう。新しい指導者の世代が誕生する。

FP NOVEMBER 14, 2011

The Accidental Capitalists

BY CHARLES KENNY

guardian.co.uk, Tuesday 15 November 2011

Anti-capitalist? Too simple. Occupy can be the catalyst for a radical rethink

Ha-Joon Chang

FT November 15, 2011

Its camp is gone, but the Occupy movement will grow

Richard Lambert

ニューヨーク氏が講演を封鎖したことでOWSが終わることはないだろう。市場資本主義に対する人々の意識は強まっているのであり、個々の占拠運動が問題ではない。人々は、1.より効率的な方法を見出す点で、2.長期的には社会全体が繁栄する点で、市場システムを支持してきた。そのどちらも最近お数年で疑いをもたれた。

資本主義は、過去にそうであったように、政治・社会的な圧力を受けて変化しなければならない。

Global Times | November 17, 2011

Occupy movement must find global answers

WP November 17, 2011

Where Occupy Wall Street must go from here

By Harold Meyerson

公園を占拠するのが違法であるとして封鎖した。では、業績が乏しく、株主の利益も大して実現しないまま、100億ドルをボーナスや給与の当てるゴールドマンサックスは違法ではないのか? それどころか、多くのアメリカ人にとって金融は悪をなすものだ。住宅バブルを起こして、なぜ罰せられないか?


FP NOVEMBER 11, 2011

The Nuclear Options

BY JAMES TRAUB

LAT November 13, 2011

Facing a nuclear Iran

Doyle McManus

WP November 14, 2011

For Israel, a tough call on attacking Iran

By Jackson Diehl

イスラエル民主主義の不思議な、しかし素晴らしい特徴は、イランの核施設を爆撃する、というような安全保障の重大な決定でも、まるで道路工事や水道料金のように公的に論争され、内閣の評決や政治的動機に関する憶測まで、新聞が報道することだ。ネタニヤフとバラクが攻撃を支持する報道に、イラン政府は驚くだろう。

しかし、賛成反対の意見が新聞を埋めている。イスラエルとアメリカの関係も理解するのは難しい。1981年にシリアで、2007年にはイラクで、イスラエルは核施設を爆撃した。アメリカは認めなかったが。

NYT November 14, 2011

Contain and Constrain Iran

By ROGER COHEN

guardian.co.uk, Thursday 17 November 2011

If you lived in Iran, wouldn't you want the nuclear bomb?

Mehdi Hasan


l  天使ではない

FP Monday, November 14, 2011

Men behaving badly

Posted By Stephen M. Walt

カダフィ、ベルルスコーニ、マードック。彼らに共通しているのは、2011年が彼らにとって最悪の年であったことだ。カダフィはともかく、彼らには立派な業績があった。しかし、許されない悪行を秘めていた。

「もし人がすべて天使であれば」と、ジェイムズ・マディソンは『ザ・フェデラリスト』51編で述べた、「政府は必要ないだろう。」 我々は天使ではないし、あまりに強大で、強力で、責任を問われないような状況において、人間性の暗黒面が現れる。


WSJ NOVEMBER 14, 2011

The Folly of the Flat Tax

By ALAN S. BLINDER


VOX 14 November 2011

Capital controls are exactly wrong for Iceland

Ragnar Arnason, Jon Danielsson

アイスランドの2008年における資本規制はソフトではなく、ホット・マネーを抑えるモダンなものでもなかった。それは1950年代の極端な資本規制で、アイスランド人の市民権や成長を損なった。

しかし、最近アイスランドで開催された国際会議では、興味深い対象があった。ノーベル賞受賞者を含む海外のエコノミストは資本規制を称賛し、アイスランドのエコノミストはそれを批判した。


FP Monday, November 14, 2011

The GOP foreign-policy debate and 10 other reasons why Obama will win in 2012

Posted By David Rothkopf

FT November 16, 2011

Disillusioned with DC

By Richard McGregor and Anna Fifield


WSJ NOVEMBER 15, 2011

Is South Korea Headed for Trouble?

By MICHAEL AUSLIN

韓国経済の現状を黄金時代として誇るのは慎重であるべきだ。出生率の低下(日本より低い)、人口減少、農業部門の低生産性、など。韓国も日本病にかかるだろう。


FT November 16, 2011

US sees renminbi as threat to top dollar

By Alan Beattie in Washington

アメリカ議会の独立委員会が、中国の人民元はこの10年間でアメリカ・ドルの国際的支配を脅かす、と結論した。中国は人民元の国際的な使用を促す政策を取る。

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The Economist, November 5th 2011

George Papandreau’s referendum: Greece’s woes

Brazil’s economy: The devil in the deep-sea oil

Charlemagne: A Greek bearing gifts

Economics focus: Pulling for the home term

(コメント) ほかにも、アメリカの中産階級没落や大統領選共和党候補者選び、日本の東電に対する政府資金供与と原発事故被害補償、トルコの外交政策、アメリカのアジア重視と南シナ海にかかわるイギリス植民地の時代に作った地域安全保障、インドの情報技術関連企業、タイの洪水、裕福なカタールが認めたイスラム圏報道ジャーナリズムによる国際戦略、イン核開発、ニカラグア・・・・

しかし、とにかく議論として記憶に残るのはギリシャからイタリアに波及したユーロ危機です。なぜ国民投票はつぶされるのか? なぜECBは最後の貸し手として政府を救済しないのか?

答は、ありません。 “In the end, won’t pay matters more than can’t pay.”

国民投票ができないことはおかしいし、最後の貸し手がなければ危機を回避するのは難しいのです。中国など、新興市場の外貨準備や、IMFに頼ることも、答えにはなりません。

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IPEの想像力 11/21/11

ユーロ危機とTPP交渉は、貨幣を共有し、貿易のルールを(そして、農業を)共有することの意味を問います。私たちは、ずっと以前から、国家の領土を超えた社会秩序の構築・再編について、試行錯誤を続けています。・・・5000年以上も。

この週末のニュースを聞き、新聞記事を読むと、日本(12600万人)が突然、国際政治の真ん中に飛び込んだことを実感します。野田首相はTPP交渉への参加を各国と協議するという決意を伝え、それは中国(13億人4000万人)やASEAN58000万人)を刺激して、ASEAN+3(そして+6)によるFTA交渉を加速することになったからです。

これは、アジアをめぐる、政治的な「機関車論」と言えないでしょうか。

かつて、アメリカ(31000万人)の貿易赤字を嫌ったヨーロッパ諸国がSDRを創出し、その後、変動レートに移行して高まった世界インフレと石油危機後の世界不況を主要諸国で緩和するため、「機関車論」が唱えられました。ユーロ危機の鎮静化を図るG20カンヌ・サミットは失敗に終わりましたが、SDRや「機関車論」の時代を想起させます。

それは、競争的な自由化であり、民主化の時代でもあるでしょう。政治秩序が、国家の内外において、変形しつつあるのです。

最初に動くのは小国です。The Economistの記事が、ミャンマー(4800万人)の民主化を伝えていました。中国からの援助によるダム建設を中止した(勇気のいる)決定と関係がある、という見方を示します。ミャンマーの軍事政権が、アウン・サン・スーチー女史を自宅軟禁から解放し、政治犯の釈放や批判政党の活動を許した背景には、アジアの地殻変動がありそうです。

また、ロシアと中国に挟まれたモンゴル(275万人)が、資源開発にそれ以外の国際投資を呼び込む姿勢も、強大な隣国からの影響を少しでも抑えて、独立した判断の余地を得たいからだ、と指摘していました。

新聞に載った写真で、タイ(6900万人)のインラック首相と、実に嬉しそうに握手する野田首相が印象的です。日本を訪れたブータン(73万人)の若い国王と王妃は、すでに何度もTVニュースに登場しました。

ベトナム(8800万人)だけでなく、オーストラリア(2200万人)もアメリカとの安全保障を強化しました。ギラード首相は、アメリカ軍が駐留部隊を増加することに合意し、中国の怒りを刺激したでしょう。貿易面で、ますます中国との関係が重要になる中で、国際秩序の性格をめぐる論争は続きます。

日本がアジア・太平洋における市場統合と政治・社会関係の緊密化、さらには「政治的コミュニティー」の形成に向かう運動の「機関車」になれるでしょうか?

そのためには、次のような問題について、他国の共感を得る形で率直に語れる政治家(と国民)が育たなければなりません。すなわち、領土問題、歴史認識、農業問題、資本主義システム、原発・エネルギー問題です。その上で、通貨や資本移動、核兵器の廃絶など、国際秩序の改革に向けた優れたビジョンを示す日本の力が問われるのです。

領土や安全保障を、一方的に主張し、対立をエスカレートさせる状況を変える力が、日本にあるでしょうか? もちろん、これは世界中の国家が問われてきた問題です。アジアにおけるパワーの配分が変化する中で、現状を維持することの意味が変わりました。

侵略や虐殺、戦争犯罪、和平交渉の歴史を、正確に語り、国家を超えて同情や共感を得るには、人間性に訴える知性の深さを示す必要があります。自国の政治家が行った発言や選択について、自国の軍隊や民兵集団が行った非人道的行為について、あいまいに言い逃れることはできません。

農業において、通貨や資本主義システムにおいて、エネルギーの確保において、個人や企業ではなく、政治とコミュニティーのあり方が問われます。

ユーロ圏(33000万人)の危機も、TPP参加も、それは安全保障やコミュニティーの意識を共有することと、完全には切り離せないことを問うのです。

2050年。世界の人口予測は90億人を越えます。その半分以上、52億人がアジアに住み、日本はまだ11000万人を維持していますが、減少し続けます。中国は14億人、インドは16億人です。国際秩序を共有しなければ、小国は自由や豊かさを望めません。現在、人口5億人のEUにおいて50分の1の人口と言えば、ベルギー(1000万人)です。

世界で最も優れた社会・政治制度から多くを学ぶ市民たちの勇気と、内外の反対意見を説得できる指導者が、小国にはどうしても必要です。

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