IPEの果樹園2011

今週のReview

11/7-/12

 

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ユーロ危機というギリシャ悲劇 ・・・G20カンヌ・サミット ・・・アメリカのアジア重視 ・・・中国の国際的役割 ・・・アメリカ再生戦略 ・・・TV中毒システム ・・・グローバルな抗議運動 ・・・日本の国際的役割

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  ユーロ危機というギリシャ悲劇

NYT October 27, 2011

The Path Not Taken

By PAUL KRUGMAN

木曜日の市場はブラッセルの合意を歓迎した。それが何かは明確でないが、合意したことはプラスだ。

しかし、考えてみれば、そのみじめな経済原理の失敗が欧米で明らかになった。すなわち、国民が支払った、危機後の銀行救済策だ。雇用を増やすのではなく、さらに財政赤字の削減を目指している。銀行救済と財政赤字削減。他の選択肢はない、というわけだ。

この財政赤字削減は、景気を刺激し、雇用を増やす、と主張する者が増えている。つまり、「拡大的緊縮」だ。これを信じない者もいるが。つまり、私だ。

その考え方は強い影響力を持ち、アメリカでもヨーロッパでも被害を拡大している。特に、ギリシャの危機は深刻化し続けている。また、率先して「拡大的緊縮」を実行したイギリスは、この原理の成功例と思われたが、今では経済が停滞している。数か月前まで、大成功ともてはやされたラトビアでも、経済の大幅な縮小(16%)の後、今も縮小は止まっていない(危機前の18%減)。

銀行を救済して労働者を苦しめることは繁栄の処方箋ではないのだ。でも、他の選択肢はないのだから? いや、私はだからアイスランドにいる。

アイスランドは経済的破滅の代表例である、と思っている人が多い。破綻した銀行が国家債務を増やし、国家もどうしようもなくなった。しかし、アイスランドは銀行を破たんさせたが、セーフティー・ネットを拡大した。海外投資家との問題解決を支援するために資本流出規制を行った。

アイスランドは、経済破綻も生活水準の低下も避けることはできなかった。しかし、失業の増大や社会的弱者の苦しみを減らしたのだ。もっと悪化したかもしれない経済状態を避けたことは政策の勝利である。

これがアメリカにとっての教訓だ。多くの市民が不必要に苦しんでいる。これは選択されたものだ。

FT October 28, 2011

How historians will look back on Euroland’s demise

By Norman Davies

「スパルタもローマも滅んだとしたら、いかなる国家も永遠に生きることなど望めない。」と、ルソーは『社会契約論』で書いた。政治体を構成する国民というものは、誕生するや否や滅亡し始める。政治制度もそうだ。ヨーロッパの地図は国家の解体とEU拡大で何度も変わった。次に消滅するのは、ベルギーか? イタリアか?

その最新の例は「ユーロ圏」Eurolandだ。12年前に生まれたばかりだが。財政を管理し、ガバナンスを確保する力がない。ユーロ・サミットは単なる談合だ。秩序あるデフォルトなんて幻想だ。救済基金は空っぽの貯金箱でしかない。ECBには牙・実行力がない。ヨーロッパ財務省はないし、ドイツの行動は憲法裁判所が邪魔する。政治家はいつも喧嘩して、蹴り合うだけだ。

ユーロ圏が崩壊した後、歴史家たちは、拡大したEUの憲法が拒否されたときに麻痺が始まっていた、と一致して書くだろう。さまざまな委員会は互いにその正当性を否定する。フランスの銀行が崩壊し、ドイツの銀行もそれを避けられない。スペイン、アイルランド、ポルトガル。二つの単一市場が誕生し、シェンゲン型(移民)の国境開放と、20の通貨体制が現れる。

スコットランドの指導者は、議会と国民に訴える。「ギリシャ、シシリー、ラトビアのように、ロンドンに支配されるのか? あるいは、独自の政治集団を作って生きるのか?

VOX 28 October 2011

EZ rescue or recession: Fallout of the October 2011 package

Richard Baldwin

The Observer, Sunday 30 October 2011

Europe takes an inspiring leap but Britain has a lesson to learn

Will Hutton

FT October 30, 2011

What saves the euro will kill the union

By Wolfgang Münchau

アンゲラ・メルケルは、ユーロが失敗に終わるとき、ヨーロッパも失敗する、と述べた。しかし、ユーロが成功しても、それゆえ、ヨーロッパは失敗するだろう。

ユーロ圏は二つの嘘に基づいていた。一つの嘘は、政治同盟のない通貨同盟は可能だ。もう一つの嘘は、ユーロ圏の内と外は共存できる。

危機の中で、ユーロ圏の諸国はECBを最後の貸し手にした。債券の共同保証を認めた。ユーロ債の発行もありうる。構造問題を解決するために、金融部門の規制を統一し、財・サービス市場を統合し、労働市場のルールでも協力するだろう。税制も協調し、最終的にはユーロ圏で税率を統一する。

つまり、ユーロ圏の危機を回避するために、EUの政策から単一市場の政策へと、大幅に改革を進めることになる。それはユーロ圏内と、その外との違いを大きくする。

非ユーロ圏諸国は、拒否権で、この動きを止めるべきか? しかし、これは条約の改正には及ばないだろう。また非ユーロ圏(10か国)はユーロ圏(17か国)より小さく、ユーロ圏参加を嫌うイギリスと、参加を望むリトアニアなどがあり、一つにまとまらない。

ユーロ危機はミクロなレベルの共同体をもたらし、マクロなレベルにも及ぶ。イギリス、スウェーデン、デンマークの悩みは、ユーロ圏への参加を問うものから、ますます異なる大陸市場の組織にとどまるべきかを問うものになる。

WSJ OCTOBER 31, 2011

The Euro Crisis: Doubting the 'Domino' Effect

By EDWARD P. LAZEAR

SPIEGEL ONLINE 10/31/2011

The Division of Europe

EU Summit Paves the Way for a Split Continent

SPIEGEL ONLINE 10/31/2011

SPIEGEL Interview with Finance Minister Schäuble

'Germany Does Not Want to Rule Europe'

ユーロ危機の収拾、ギリシャ債務、イタリア、ユーロ圏の制度改革に関するドイツ蔵相の意見です。

SPIEGEL ONLINE 10/31/2011

Poland's Central Bank Head

'Euro Crisis Will Continue for a Long Time to Come'

ユーロ危機を見ても、ポーランドはまだユーロ圏に参加したいのか? まだ、参加したいと思うほどの魅力があるのか? 補助金などを統一して削れるか?

Project Syndicate 2011-10-31

The ECB’s Battle against Central Banking

J. Bradford DeLong

政府債券の購入を嫌い、一時的な安定化だけを認めたECBの態度は、中央銀行の原則に反している。

VOX 31 October 2011

The Eurozone needs exit rules

Christian Fahrholz and CezaryWójcik

ユーロ危機の回避策には様々な提案がある。長期的な改革を重視するものもあれば、長期的改革を犠牲にしても、短期的な危機を回避するものもある。

ユーロ圏を崩壊させるような交渉を返済条件の材料にするより、ユーロ圏からの離脱ルール‘exit rules’を、市場からの圧力も組み込んだ形であらかじめ決めておくのがよい。それはユーロ圏参加諸国が、放漫財政に陥った国との交渉力を強めるとともに、不確実さによる市場のパニックを防ぐだろう。

わざわざ不安定な時期にパンドラの箱を開ける、という反対意見もあるが、それは間違いだ。市場は明確なメッセージを発しており、その応えを求めているのだ。無視することはできない。明確な離脱ルールは、離脱国の現れる可能性を減らすだろう。

guardian.co.uk, Tuesday 1 November 2011

Greece crisis: Papandreou's referendum is a gamble too far

Costas Lapavitsas

国民投票は、ギリシャのデフォルトとユーロ圏離脱を告げる鐘である。彼らに問われているのは、救済融資を受けるべきかどうかではない。"Euro or drachma?"

パパンドレウの発言を軽視してはいけない。国民投票にかけるという決断は、ギリシャがますます統治できない状態になっていることを示すものだ。各党派が首相の辞任を求め、街頭で何度も激しい抗議デモが起きた。EUの緊縮計画が高めていた不満が、1028日、第二次世界大戦参戦記念日に、ドイツによる占領の記憶と重なってナショナリズムを刺激し、大規模なデモが起きた。

しかし、これはまだ悪性のナショナリズムではないし、パパンドレウはこれを利用していない。内閣が崩壊すれば、選挙で与党は敗北するとわかっている。そこで国民投票という賭けに出たのだ。これこそギリシャ国民が経験しているジレンマそのものである。

ユーロを選択する保証はない。否決すればユーロ圏の解体が始まるかもしれない。ギリシャに緊縮を強いたブラッセルのEU官僚たちが、これを予想したとは思えない。

FT November 1, 2011

How to restore trust in the ECB

By Guntram Wolff

Mario Draghi新総裁はECBへの信頼を取り戻すことだ。すなわち、金利を下げる。政府債券を購入する。各国の改革を監視する。

FT November 1, 2011

Athens makes high stakes bet on ballot

FT November 1, 2011

Creditors can huff but they need debtors

By Martin Wolf

すべての国が黒字国・債権国であれば、債務危機に苦しむ心配も無いのに・・・ と債権諸国は思っているかもしれない。しかし、それは愚かな考えだ。債権があれば、その反対には、債務がある。

世界の4大経済のうち3つが経常黒字を出す債権国である。中国、ドイツ、日本だ。彼らは赤字の債務国に説教する権利があると信じている。中国はアメリカの無分別をなじる。日本は、アメリカの同盟国として、もっと慎重である。ドイツの関心は国内にあり、ユーロ圏をすべてドイツのようにしたいと思っている。

しかし、債権国の経済も脆弱である。その経済は債務国が求める財やサーボスを生産することで成り立っているからだ。債権国と債務国の経済は鏡のように対照的だ。債権国の生産者は債務国への融資を促す強力なロビーを形成する。民間融資が止まれば公的な融資がそれを補う。ユーロ危機もそうだった。市場が拒んだ債券に対しても厳しい判断を緩和し、延期する。もし債務者を罰するなら、その債権者・自国市民が傷つくからだ。

誰もがこの混乱を作り出したように、誰もが解決に貢献しなければならない。

黒字国・債権国の考える危機の原因や解決策を、赤字国・債務国が押し付けられるのは、三つの点で正しくない。1.その考えは間違っている。2.その解決策は自己破壊的だ。3.それは世界経済を不安定化する。

債権国が世界を支配するのか? それは間違いだ。長期的には、債権国への支払いは債務国が借り入れる能力と同意にかかっている。なぜそれほど債務ができたのか、といえば、それが融資に値すると考えて貸す者がいたからだ。どちらも間違っている、と認めることで、双方の調整が受け入れられる。

ギリシャや、大恐慌のときのアメリカが知ったように、あまりにも多くのダメージが債務者の側にだけ強いられる。いますぐ、相互利益を確認するべきだ。誰も火星に売ることはできない。売り手も買い手も地球にしかいない。債務危機の収拾に合意することだ。

SPIEGEL ONLINE 11/01/2011

Fresh Trouble for Euro

EU Shocked and Furious at Greek Referendum Plan

SPIEGEL ONLINE 11/01/2011

Euro Referendum

Papandreou Is Right to Let the Greeks Decide

A Commentary By Sven Böll

ギリシャ国民が自分たちで前進するために決断するのはよいことだ。事実上、この1年半の間、ギリシャ国民は外国の管理下にあった。デフォルトを回避するため緊縮政策を実行するためだけの政府で、主権国家ではなかった。EU委員会、ECBIMFによるトロイカによる独裁である。

この国民投票は、すでに激しいストライキが示したように、国民によるユーロへの反対表明になる、と関係者たちが恐れるのは当然だ。しかし、国民投票には正当な理由がいくつかある。

1.パパンドレウ首相の権限を正当化するために必要だ。ユーロ危機が激化する前の選挙で首相となったから、厳しい緊縮策を受け入れる権限を国民に認められていない。

2.危機の解決策について、反対派にも意見表明の機会を与える。

3.いっそうの緊縮策を求められるだろうが、国民が危機からの脱出を求めて政府を支持するなら、ストライキの正当性を打ち破ることができる。国民は改革のスピードに憤慨しているが、改革が必要なことを認めている。

ドラクマに戻れば、大幅に価値を下げるだろう。それゆえユーロ建ての債務を負う政府や民間企業、個人は破産する。いずれにせよ、大幅な債務の削減は避けられない。ギリシャ債券はECBやユーロ圏諸国に残る。これはギリシャがユーロ圏にとどまっても同じことだ。

FP NOVEMBER 1, 2011

Deal Breaker

BY MOHAMED EL-ERIAN

ユーロ危機を回避するためにメルケルとサルコジが示した合意案は、ヨーロッパ諸政府と国際金融協会IIFとの合意として成果を生んだ。ギリシャ債務の大幅カット。銀行の自己資本増強。EFSFを1兆ユーロに拡大。

しかし、この合意は瞬く間に失望に変わった。そして開催の迫るG20の課題はユーロ危機の封じ込めになってしまう。失望に変わった理由は、1.パパンドレウ首相が国民投票を唱えた。融資と緊縮策の受け入れが承認されるとは限らない。2.いくつかの銀行がギリシャ債権の50%削減を拒んだ。3.ECBが政府債券の購入(金利上昇抑制)を、特にイタリア政府の姿勢に不満を持ち、保証しなかった。

その結果、G20 カンヌ・サミットでは、世界経済の重要テーマがすべて討議から追放されてしまうだろう。債務危機拡大・ユーロ崩壊の阻止に忙殺されて、雇用や成長に向けた政策協力は準備できない。北アフリカや中東の事態も議論できない。地球温暖化も何も扱えない。

ヨーロッパへの新しい緊急バンド・エイドに終わる。

NYT November 1, 2011

How to Prop Up the Euro

By STEVEN RATTNER

最初の失敗が是正できないから、危機に対して症状を抑えるだけで何も進展しない。第二次世界大戦の灰燼からヨーロッパの統合を求めたことに立ち返って、ヨーロッパ人として考えることだ。

同じような不均衡や生産性上昇の格差、地域的な財政難があっても、アメリカには危機が起きていない。EUの労働市場改革が政府によって強制的に実現できるわけではないが、それ以外の点では、単一の財政政策も、競争力の改善に向けた協力も、自分たちで実現できる。

国民国家の政治過程にこだわり、ドイツへの恐怖をあおることから卒業するべきだ。

NYT November 1, 2011

Will Greece Destroy the Euro Zone?

Project Syndicate 2011-11-01

Striking Euro Gold (and Silver)

Harold James

ギリシャには、このまま緊縮策を繰り返すか、ユーロ圏を巻き込んで破綻するか、どちらかのように見える。しかし、複数通貨体制の過去の経験はもっと生産的なアプローチになる。ギリシャの競争力問題を解決するための手段には、歴史上の先例があるのだ。

ヨーロッパ人は危機に際して繰り返し革新的な手段を採用した。19929月~937月のEMS危機では、イタリアの問題からイギリス、ポルトガル、スペイン、そしてフランスへと危機が広がった。その解決策は、最初は破壊的に見えたが、変動幅を一気に15%まで拡大したことだった。しかしこの決定は成功して、EMS崩壊を期待する一方的投機は終わった。

1993年にも変動幅が拡大され、各国は自国通貨建の債券を発行できる、とした。それは国によって大幅に割り引かれた。財政の安定と成長回復が無ければ、債券は発行できないのだ。1993年以後、フランスは改革に成功し、旧レートから大きく低下していたフランの価値を回復した。この方式は銀行の資産・債務の通貨建を変更する必要が無い点で優れている。法的な問題も起きない。

新旧レートが短期には収斂しないケースも起きるだろう。1990年の通貨同盟案では、共通通貨が単一通貨を意味していなかった。共通通貨と各国の独自通貨が長期にわたって流通するケースは実現可能だ。1870年に金本位制が広まる以前は、ヨーロッパで金銀複本位制が支配的であった。しかも、それはうまく機能した。

金価値は銀に比べて高かったので、高価な奢侈的商品や国際取引に金貨が使用された。他方、日用品の取引や賃金、地代などは銀貨が使用された。金に比べて銀の価値が下がれば、実質賃金が低下して競争力が改善した。つまり、ギリシャの賃金も自国通貨で支払えば、それが割り引かれるだろう。銀貨がそうであったように。そしてユーロは金貨になる。

FT November 2, 2011

Papandreou will fall but he is right to take this gamble

By StathisKalyvas

彼は狂ったのか? 債務に関する合意を国民投票にかけるというパパンドレウ首相の決断に対して、世界は疑問を示した。

ギリシャの政治システムは2大政党によって組織されている。集票マシーンである組織を破壊するような緊縮政策と公的部門改革の実行は与野党ともに反対であり、パパンドレウにとって自殺行為である。構造改革を進めれば、政治的・社会的な機能麻痺が起きるだろう。

パパンドレウには三つの選択肢があるだけだ。1.緩やかな死。政治的麻痺、支持の低下、統治能力の喪失に向かう。2.即死。解散、総選挙。与党の敗北は確実だ。3.再生に向けた賭け。国民投票で政治的な再生を目指す。その意味で、パパンドレウの決断は政治的に見て意味がある。

国民投票で否決される、という予想が多い。しかし、否決されるとは限らない。ユーロを離脱した後に破綻することと比較すれば、国民はユーロにとどまる緊縮策を支持するかもしれない。もし勝利すれば、パパンドレウは政治的な正当性を得る。

ただし、彼の政党は敗北・崩壊するだろう。彼の犠牲によって、ギリシャの政治システムは方針を転換し、前進できる。そしてユーロ圏も包括的な危機対策と改革を進める。

SPIEGEL ONLINE 11/02/2011

German Economists on Greek Referendum

'The Euro Zone Could Face Ruin'

By Christian Teevs

FP NOVEMBER 2, 2011

The Hemlock Ballot

BY NICK MALKOUTZIS

LAT November 2, 2011

The Achilles' heel of the Eurozone

By Dimitri B. Papadimitriou

ギリシャだけでなく、ユーロ圏全体の改革が必要だ。それは、ECBがユーロ版TARPを作ることだ。

WSJ NOVEMBER 2, 2011

Greek Premier Faces Revolt

By ALKMAN GRANITSAS, MARCUS WALKER and COSTAS PARIS

WSJ NOVEMBER 2, 2011

Why We Can't Escape the Eurocrisis

By GERALD P. O'DRISCOLL JR.

WSJ NOVEMBER 3, 2011

A Greek Lesson in Democracy

パパンドレウはヨーロッパ最悪の政治家にされてしまった。ドイツの政治家はパパンドレウの決定をヨーロッパ的ではない、と非難した。しかし、パパンドレウが国民のために民主主義国家の正しい姿勢を示した、とも言える。

国民投票で支持されれば、パパンドレウは改革を進めるだろう。反対されれば、その結果は国民が受けるしかない。ギリシャのデフォルトはその債権者を巻き込む。

危機が始まって2年たっても、ヨーロッパのエリートたちは経済を自由化して成長を回復しようとは考えない。世界銀行によれば、企業活動にふさわしい順位で、ギリシャは100位である。イエメンの下、パプア・ニューギニアの上だ。投資家保護の順位では、150位である。

あえて希望があるとすれば、逆に、政治家が決断すれば、その改革の余地は大きいということだ。

FT November 3, 2011

An EU architect writes: time for a two-speed union

By Jean-Claude Piris

イギリスのWilliam Hague外相は、ユーロ圏を、出口なしの燃える家、にたとえた。EUの政治システムや制度は機能していない。15カ国から27カ国への拡大は早すぎた。EUを、一時的に、先進グループとそれ以外に分けるべきだ。ユーロ圏からなる「硬派」とそれ以外の「軟派」という、2速のEUが登場する。硬派はいっそうの統合化を進め、軟派は硬派との協調を進める。民主主義が機能するようになり、二つのグループ間で移動も自由である。

SPIEGEL ONLINE 11/03/2011

Caretaker Government in Athens?

Greece Backs Away from Referendum Plans

LAT November 3, 2011

Greek lessons

WP November 3, 2011

On Greek debt, lessons from South America

By Juan Forero and Michael Birnbaum

ギリシャはまだ誰も公務員を解雇していない。改革は遅れている。

ウルグアイは、債券市場における評価を傷つけないようにアメリカやIMFと協力して改革を進めた。賃金や年金を削った。債務削減を受けたが、20%に抑え、返済期間を延長した。他方、アルゼンチンは、1000億ドルの債務について返済を一方的に放棄した。アルゼンチンは農産物の国際価格高騰で経済を維持できた。債務の35%しか支払わないということで債権者と交渉した。アルゼンチンは債券市場から今も締め出されている。

アイスランドやラトビアの債務処理や改革とも異なっている。ウルグアイ型を目指すべきだが、アルゼンチンに似ている。

Project Syndicate 2011-11-03

The Revolt of the Debtors

Daniel Gros

ユーロ離脱はコストが大きく、不可能である、と今まで考えられていた。しかし、ギリシャは離脱を考えている。これまでギリシャは「協調」を求められてきた。それは救済融資を受ける代わりに債権国の求める緊縮政策を受け入れることだった。しかし、債務者の反乱が始まった。

ギリシャは崩壊の引き金になる。他の債務国は、ギリシャと違うことを示さねばならない。

Project Syndicate 2011-11-03

A Gravity Test for the Euro

Kenneth Rogoff

為替レートは容易に説明できない。ユーロの価値が安定していることはなぞである。なぜ投機筋は売らないのか? ユーロ安が続くのか? それが安定し、もしくは増価する理由も6つある。

条約の改正を行わなければユーロ圏の財政・政治統合は進まない。それまでユーロ圏のジャンク・ボンドになった政府債券をECBが購入するしかない。政治家たちは財政移転を嫌う。

では、なぜユーロの価値は高いのか? たとえば、弱い諸国を追い出して、スーパー・ユーロに変身するから。あるいは、2008年の金融危機で、予想に反してドルは強くなったから。・・・

WSJ NOVEMBER 4, 2011

Behind Germany's Dithering

By JOSEF JOFFE


l  G20カンヌ・サミット

FT October 27, 2011

A firewall to stop Europe’s crisis spreading

By Barack Obama

世界の大国の指導者たちがフランスに集まり、2年前と同じように、世界経済を救出することを市民たちは待っている。

当時、G20が協力したことで、世界経済は再び成長し始めた。しかし、回復は弱いものだ。世界中で数億人が失業している。石油供給の混乱、日本の震災、ヨーロッパでは金融危機が起き、世界経済の需要を弱めた。

我々の目標は明白だ。力強い、持続可能な、バランスの取れた成長を実現することだ。それが我々に需要と雇用、機会を与えてくれる。

第一に、最大の市場を持つ国として、アメリカは指導力を示す。アメリカは雇用創出を最優先し、韓国などとのFTAにも合意した。同時に、この夏には1兆ドルの歳出削減に合意し、今後数年にわたる包括的な財政再建計画を作成した。

第二に、ヨーロッパは危機を速やかに解決する。危機の波及を止める障壁を設け、銀行システムを強化し、ギリシャが構造問題に取り組めるような道筋を示す。ヨーロッパはアメリカの最大の貿易相手であり、世界経済のアンカーだ。ヨーロッパには問題を解決する財政的・経済的な能力がある。

第三に、各国がグローバルなバランスの回復に役割を果たす。財政再建に取り組む国、巨額の経常収支黒字があれば、成長刺激策を優先する国、輸出指向型成長に依存している国は国内需要を増やすべきだ。為替レートの変動を弾力化して、市場による決定に向かうのがよい。

新しい金融危機を起こさないためには、金融改革も必要だ。ショックを吸収できる資本を銀行は持つべきだし、透明性を高めて監督を強化し、特に、デリバティブのようなリスクの高い取引を避けるべきだ。

最後に、G20はグローバルな挑戦に応じるため国際協調を深める。化石燃料への依存を減らし、貧困を解消するような、インフラ、金融、グッド・ガバナンスを備えた開発を助ける。「アフリカの角」で広がる干ばつと飢饉から人々を救うだけでなく、治安回復や農業生産性の改善に投資することだ。

2年前に示したように、リーダーシップが求められている。

Project Syndicate 2011-10-30

The G-20’s Helpful Silence on Capital Controls

Jose Antonio Ocampo, Stephany Griffith-Jones and Kevin P. Gallagher

サルコジ大統領がカンヌ・サミットに準備してきた国際金融システムの改革案、特に、金融取引に関する国際規制や課税は、奇妙なことに、議題から消えてしまった。IMFも金融規制が厳しかった国では世界金融危機の被害が少なかったと認めている。

日本やスイスのような工業国も含めて、通貨市場に厳しく介入した国もある。資本流入に規制し、外国債券・株式・デリバティブの購入に課税し、短期資本流入に準備金を求めた国もある。IMFは最後の手段として資本勘定の規制を認めた。そして発展途上国が資本規制する際の検証を行い、ガイドラインを作る、独立の調査班を設けた。

しかし、IMFが資本規制を「最後の手段」とするのは間違っている。IMF協定は資本規制の利用を完全に認めている。IMFG20FSBなどは資本自由化を促進するのではなく、資本規制が協調的な行われるグローバルな対話を促すべきだ。そして、資本規制が政策手段として非難される状況を変えるべきだろう。

工業諸国が回復のために貯蓄を国内に温存したいと考え、発展途上諸国も短期的な資本流入を嫌っている。こうして資本規制の協調を求める条件がそろった。

FT November 1, 2011

Cannes conundrums

By Alan Beattie

guardian.co.uk, Tuesday 1 November 2011

The eurozone debt crisis and the G20

Kevin Gallagher

危機のたびに公的債務の新しい処理メカニズムが提案されてきた。2001年のアルゼンチン危機もそうだった。ギリシャの債務もそうなる。

FT November 2, 2011

G20 urged to stop demonising bankers

By Alan Beattie in Washington

FT November 2, 2011

Five grim and essential lessons for world leaders

By Lawrence Summers

G20に集まり指導者たちはカンヌ・サミットで何をするべきか? 最初の集まりから3年がたった。いくつかの教訓を知るのがよいだろう。

1.あいまいな声明や安直な約束は事態を悪化させるだけだ。失敗した政策と成功した政策を比べれば、必要最低限を満たした明確な行動が重要だとわかる。2.政策担当者のあいまいな保証は信認を失わせる。むしろユーロ圏の救済資金が足りないことを認めるほうがよい。3.金融的なリスクを封じ込めるだけでは成長を回復できない。4.政府債務危機になる最大のリスクは、放漫財政ではなく、低成長とデフレである。5.拡大的な財政引き締めという原理は、現状では、矛盾した主張である。1990年代のカナダについてはそれが正しかった。しかし、今では金利が低い。中国やドイツのような、大幅な黒字国は需要を拡大しなければならない。

調整のための口約だけであれば、世界経済の破滅が広がる。

guardian.co.uk, Wednesday 2 November 2011

G20 summit: yes they Cannes

FP NOVEMBER 2, 2011

20 Things the G-20 Could Have Done -- But Didn't

BY DAVID ROTHKOPF

NYT November 2, 2011

Whistling in Cannes

(China Daily) 2011-11-03

Moment of leadership

WSJ NOVEMBER 4, 2011

Middle Powers Can Punch Above Their Weight

By ANDREW COOPER AND JONGRYN MO


l  アメリカのアジア重視

FP Thursday, October 27, 2011

Make wealth not war in Asia

Posted By Clyde Prestowitz

オバマの国防長官Leon Panettaが東京でアジアにおける軍事力の強化を語った。

しかし、アメリカがアジアに回帰するとはどういう意味か? アメリカはアジアから撤退しなかった。これ以上、何をするのか? アジアの脅威を、中国の人民解放軍が近代化すること、というなら、アメリカがそれを阻止できるのか? 中国がアメリカと戦争するとは思えないのに、対抗するのか? 石油を買うわけでもないのに、中国製品が輸入できない恐れがあるのに? 日本や韓国が抱える領土問題にもっと関わるのか? 彼らがもっと自国の防衛力を強化するべきなのに?

この10年間にアメリカの影響力が大きく低下したのは真実だ。それはアメリカの軍事的なプレゼンスのことではなく、経済的な競争力に原因がある。つまり、アメリカ政府は経済的な劣位を軍事的優位で補おうとしているのだ。

それはうまくいかないだろう。むしろ経済力の劣化を早める。新スローガンは、「戦争するより、富を増やせ。」"make wealth not war." である。

FP OCTOBER 28, 2011

Plan Afghanistan

BY PAUL WOLFOWITZ , MICHAEL O'HANLON

アフガニスタンに当てはめるべきは、イラクではなく、コロンビアのモデルである。山岳地帯やジャングルの治安は回復できていない。コロンビアの反政府軍がヴェネズエラによる支援を受けていたように、アフガニスタンのタリバンはパキスタンの支援を受けている。

クリントン大統領とブッシュ大統領は、コロンビア政府とともに、麻薬組織やテロリストと戦った。

WP October 28

The continuing need for a strong NATO

By Tom Donilon

guardian.co.uk, Monday 31 October 2011

America's new Middle East 'mini-Nato'

Simon Tisdall

オバマによるイラクからの撤退は中東の安全保障について各国の不安を高めている。アメリカは、イスラエルを含む中東諸国がイラクの不安定化やイランの影響力拡大に対応するために、地域安全保障メカニズムとして<ミニNATO>を考えている。

FP Monday, October 31, 2011

Giving Obama credit -- when he's followed Bush's footsteps

Posted By Peter Feaver

WSJ OCTOBER 31, 2011

Obama's Tragic Iraq Withdrawal

By MAX BOOT

イラクからの米軍撤退は、勝利ではなく、悲劇である。

Project Syndicate 2011-10-31

Obama and Asia’s Two Futures

Yuriko Koike

アジア諸国が、中国の台頭について、もっとも必要としているのは地域の多角的制度化である。A “Trans-Pacific Partnership”として、協力体制は始まっている。米中が協力して、地域の他の主要諸国を参加させ、安全保障の責任を分担することだ。

FP OCTOBER 31, 2011

A Friend in Need

BY CHARLES KENNY

NYT November 1, 2011

A Long List of Suckers

By THOMAS L. FRIEDMAN

WSJ NOVEMBER 1, 2011

A Slow-Growth America Can't Lead the World

By JOHN B. TAYLOR

FP Wednesday, November 2, 2011

Offshore balancing: An idea whose time has come

Posted By Stephen M. Walt

guardian.co.uk, Wednesday 2 November 2011

Iran: war games

FP NOVEMBER 3, 2011

The FP Interview: Condoleezza Rice on Obama, “Leading from Behind,” Iraq, and More

BY JOSH ROGIN


l  中国の国際的役割

NYT October 27, 2011

Why China Should Bail Out Europe

By ARVIND SUBRAMANIAN

おぼれるヨーロッパに誰が助け舟を出せるのか? 中国だ。

サルコジ大統領が中国の胡錦濤主席にEFSF増資への協力を求める電話をかけたことは、現状維持の欧米勢力に対して、中国の経済的な支配力を確認する事件であった。ドイツは直接の財政移転も、間接的なECBによる債券購入も拒んだ。安定化への関与を控えたアメリカは、自国の経済的・財政的な脆弱さを知っている。中国に救難信号SOSが届くのは当然だ。

ユーロ危機は、中国の利害に関わる問題だ。中国は世界最大の輸出国であり、ヨーロッパの債権がデフォルトになることを好まない。

しかし、救済については二つの選択肢がある。中国と各国間のバイラテラルな合意か、IMF増資など、マルチラテラルな合意で行うか? バイラテラルな交渉のほうが中国の利益を実現できる。しかし、それはヨーロッパ政治の対立や紛糾を中国の判断・評価に持ち込むことになる。IMFによる関与はそうした政治的コストを回避するが、中国に利益が無ければならない。

中国は新しい世界経済の現実にあわせたIMF改革を求めるだろう。中国政府は、アメリカやヨーロッパに比べて中国の地位を回復する要求を実現できれば、ナショナリストたちの支持を得るだろう。それはまた、中国の台頭を多角的国際秩序に強く結び付けたい主要諸国の外交的関心とも一致する。

SPIEGEL ONLINE 10/28/2011

Investing in the EFSF

China May Impose Conditions for Helping Euro Zone

Project Syndicate 2011-10-28

America's Other 87 Deficits

Stephen S. Roach

アメリカは多角的な貿易において赤字を負っている。対中貿易の赤字は大きいが、それ以外にも87カ国との間に赤字がある。それでも中国叩きChina bashersの声は高まっている。

アメリカの膨大な貿易赤字は空前の国内貯蓄不足の結果である。アメリカはGDP6%に当たる貯蓄不足を、「途方も無い特権」と非難された準備通貨として、ドルによる外国からの資本流入でまかなっている。近代の歴史において、これほどの貯蓄不足を経験した指導的経済大国は無い。

中国を非難する政治ゲームほど愚かなものも無い。人民元の為替レート操作に対する非難は、アメリカが鉄鋼に課している関税をごまかすための煙幕だ。悪しき経済学は悪しき政治をもたらす。

中国は今やアメリカの輸出先としても第3位であり、内需依存の成長モデルに転換しつつある。アメリカは中国市場にビジネス機会を見るべきであり、脅威ではなくチャンスなのだ。中国の外貨準備は膨大だが、漸進的な調整を目指してドルに対する人民元の実効為替レートは増価しつつある。

Global Times | October 28, 2011 14:08

China and Europe: Who's the pinch-fist?

guardian.co.uk, Sunday 30 October 2011

How China can save the eurozone

Li Wei

Global Times | October 30, 2011

Let Chinese money speak loudly in euro crisis

By John Gong

FT October 30, 2011

Reshoring’ jobs from China won’t happen

By Tim Leunig

中国の賃金が上昇し、人民元も増価すれば、雇用が再び戻ってくる(‘Reshoring)。それは、アメリカの工業地帯がオバマに寄せる期待である。しかし、その考えは間違っている。

中国の賃金はまだ非常に低い。都市の工場労働者3400万人の平均賃金は時給2ドルである。地方都市や農村の工場労働者はわずか64セントだ。労働者の供給も枯渇していない。たとえ時給2ドルの労働者が枯渇しても、雇用はアメリカに帰ってこない。インドやバングラデシュ、アフリカに行く。

電子産業は事情が異なる。質のよい労働者を確保するために高賃金を支払った。しかし、その生産性の上昇が賃金上昇を上回り、ここでも中国の競争力は衰えない。アメリカの労働者の生産性は中国に比べて高いために、中国人労働者が12人で生産する量をアメリカ人労働者は一人で生産する。中国の電子産業が30万人の雇用を失っても、アメリカでは4万人も雇用が増えない。

西側製造業の生産性は高く、今後も製造業の労働者数は減少するだろう。アメリカでも中国でも、減少する。完全雇用のためには、中国の製造業を抑えるのではなく、自国のサービス業を拡大することだ。

FT October 31, 2011

Do not rush to pawn the euro

FT October 31, 2011

Beijing will not ride to eurozone’s rescue

By Yu Yongding

中国がヨーロッパの回復を支持する地政学的な理由はある。中国にはユーロ圏を助ける外貨準備もある。しかし、どのように支援するのか?

中国はアメリカ・ドルを信用したことで失敗し、同じような失敗をユーロに対して犯したくない。EU諸国の財政難を助けることは、国内政治に反対を生じる。中国の高齢者たちは、ヨーロッパの贅沢な年金制度を守るために貧しい中国人が財政支援することを支持しないだろう。ユーロ圏は全体として対外黒字であり、域内で赤字国を救済する力がある。なぜドイツ人が財政支援したくないときに、中国人がするのか? と問われるだろう。

中国は支援をしないというのではない。EFSFの債券なら投資するし、ユーロ債が発行されれば購入するだろう。どのような政府債券であれ、安全でなければならない。すなわち、確実な保証とIMFの関与が必要だ。また、政府債券への投資だけでなく、企業による直接投資や、人民元のユーロに対する増価を支持できる。それらは互恵的でなければならない。個別の国に対してではなく、集団的な形でユーロ圏の救済パッケージに参加するだろう。ヨーロッパ政治の紛糾に中国は関与したくないからだ。

中国がヨーロッパの危機を政治的に利用している、と思われてはならない。支援は必ず金融的な基準を満たすべきだ。ヨーロッパの支援要請に応えないからといって、中国を非難してはいけない。あなた方を債務の竜から救い出すことは中国にできない。そんなつもりもない。

Project Syndicate 2011-10-31

China’s Trouble with the Neighbors

Zhu Feng

WSJ NOVEMBER 1, 2011

Europe Doesn't Need China's Money

By PHILIP BOWRING

FT November 3, 2011

A Beijing cabby’s view of the world

By Philip Stephens

人権問題で中国を攻めていたヨーロッパが、今では物乞いのように資金援助を願っている。一人当たり所得水準がヨーロッパの何分の一でしかない中国に支援を求めるなら、その見返りに何を出すのか? 中国を市場経済として認めて輸入規制を解除し、天安門事件後の武器輸出禁止を解除する?

近隣地域で日本やアメリカ、ベトナムと紛争が起これば、中国の要求はもっと攻撃的なものになるだろう。中国の指導者たちには、国内の安定性が何より重要である。


l  アメリカ再生戦略

NYT October 27, 2011

Free Trade Can Lift Labor Standards Abroad

By LAYNA MOSLEY

WP October 28, 2011

Unions investing in America’s infrastructure

By Harold Meyerson

NYT October 30, 2011

Bombs, Bridges and Jobs

By PAUL KRUGMAN

武器の生産と橋の建設とがあれば、なぜケインズ主義的な刺激策として武器を取るのか? 軍事的ケインズ主義weaponized Keynesiansが強い理由は、それがいっそうの無駄(生産力を増やすことが無い純粋な支出)であるからだけでなく、雇用をもたらさず、それゆえ「左派」と非難されないからである。そして富裕層への課税や規制強化から関心をそらすことができる。

FP NOVEMBER 1, 2011

Can Trade Save Obama?

BY KATI SUOMINEN

WP November 2, 2011

Here’s to the makers of fabulous things

By Harold Meyerson

技術革新や発明だけで、アメリカは経済的な指導権を回復できるだろうか? Steve Jobsの訃報はその点で問題を示している。

Walter Isaacsonによるジョブズの伝記は、革新がアメリカの競争力になると信じている。しかし、革新だけでは製造業は復活しない。90年代後半にApple経営陣に戻ったジョブズは新製品iPod, iTunes, iPhone and iPadを開発した。電気にはそれが詳細に描かれているが、製造に関する叙述は何も無い。

ジョブズはオバマ大統領との食事に招かれた。そしてアメリカにもっと多くのエンジニアを育てるよう進言した。Appleは中国で70万人の工場労働者を雇用している、とも述べた。その数字は世界最大の雇用をもたらすWal-Martに匹敵するほどだ。Apple6万人あまりを雇用するが、その製品を作る中国の工場は、台湾のFoxconnによって管理され、事実上、Appleの雇用者なのだ。

確かに、シリコンバレーでAppleは労働者に高給を支払うが、アメリカ経済に対する影響力は小さい。そして製造業を失えば、技術や製品の革新もできなくなる。Appleは例外である。ジョブズの親友であり、Intelの経営幹部でもあったAndy Groveは、アメリカの「革新ヒステリー」を批判した。そして、たとえ関税などを駆使してでも、製造業をアメリカに復活するよう求めている。


l  TV中毒システム

Project Syndicate 2011-10-28

A Nation of Vidiots

Jeffrey D. Sachs

近年の電子媒体によるマス・メディアの氾濫が政治を大きく変えた。TVだけでなく、DVDやゲーム機からスマート・フォンまで、人々は多くの情報に接している。

アメリカ国民の多くがあまりにも長時間こうしたメディアに接している結果、世界に対する重大な脅威が生じている。長時間TVを観る人々は、中毒患者と同じで、短期的な楽しみを増やすけれど、長期的には不幸な感覚、激しい後悔に苦しむ。それはまた社会的な分裂と原子化social atomizationをもたらす。Robert Putnamは、アメリカ人に結束をもたらしてきた「社会資本」をTVが失わせた、と指摘した。

TVの資金源は絶えず流されている広告だ。それらは主にfood, sex, and statusに関わる情報で消費を促す。それは消費社会をもたらすだけでなく、政治も変えた。アメリカの政治家はいまや商品名と同じであり、朝食のシリアルのように、きれいなパッケージが重要だ。そしてTVの広告時間を買うには莫大な資金が必要だ。

戦争さえも、新製品のように普及する。存在もしなかったフセインの大量破壊兵器が、イラク戦争の前提として宣伝された。そして戦争は、「衝撃と恐怖」によって短時間で終わるはずだった。もちろん軍事作戦の中継は最高のTVショーであった。

TVは、根本的に、視聴者の脳や認識能力を損なう。特に子供の場合、その影響が大きい。教育や情報、娯楽、政治意識でさえ、その多くをTVなどの電子メディアに頼っている。アメリカの、特に貧困家庭の子供たちは、裕福な家庭よりもTVを観ている。

世界中で、子供が見るTV番組の広告を規制し始めている。広告の無い、BBCのような公共放送が重視されている。政治キャンペーンから自由なTVが求められている。

個人の健康と社会の信頼を築くためには、われわれ自身がTVの害を自覚するべきだ。


l  グローバルな抗議運動

FT October 28, 2011

Why the City should heed the discordant voices of St Paul’s

By Ken Costa

SPIEGEL ONLINE 10/28/2011

The Second Gilded Age

Has America Become an Oligarchy?

By Thomas Schulz

NYT October 29, 2011

Wall Street Protesters Hit the Bull’s-Eye

By EDUARDO PORTER

WSJ OCTOBER 29, 2011

So Who Needs Wall Street?

By MARY KISSEL

FT October 30, 2011

Why America is embracing protest

By Edward Luce

guardian.co.uk, Monday 31 October 2011

The medieval, unaccountable Corporation of London is ripe for protest

George Monbiot

YaleGlobal Online 31 October 2011

The 19th-Century World-System: Yesterday and Tomorrow

Immanuel Wallerstein

現在の危機を理解するために、半世紀以上も発展してきた世界システムを振り返ることが有益であろう。20世紀半ばに全盛を迎えた「穏健リベラリズム」は、アメリカを覇権国家として、対立する力による崩壊が避けられないような不均衡に至った。半世紀前まで、その起源をさかのぼる。

FT November 1, 2011

Capitalism need not be about greed and gambling

By John Kay

WP November 2, 2011

Justice, inequality and the 99 percent

By Matt Miller

WSJ NOVEMBER 2, 2011

Time For a Tax on Speculation

By RALPH NADER


FT October 28, 2011

Malthus’s ghost and baby number 7bn

By Tim Harford

LAT October 30, 2011

A lot of people? Yes. Apocalypse? No.

By David Lam


LAT October 28, 2011

A realistic fix for the mortgage crisis

By Elyse Cherry


FP Friday, October 28, 2011

Argentina: The boom before the bust

Posted By José R. Cárdenas


l  日本の国際的役割

FT October 30, 2011

Japan PM’s fears over Olympus scandal

By MichiyoNakamoto and MureDickie in Tokyo

FT October 31, 2011

Yen intervention raises fear of currency wars

By Chris Giles in London, Lindsay Whipp in Tokyo and Hugh Carnegy in Paris

FT October 31, 2011

Yen move takes G20 by surprise

By Alan Beattie in Washington

日本政府はG20を前に単独介入を行った。それは日本がカンヌ・サミットのような国際協調の意味を重視していないことを示す。日本が示した「通貨戦争」の肯定姿勢はサミットへの準備を大きく損なった。日本はスイスの「成功」に刺激されたのだ。フランスのサミット準備スタッフたちは、中国の態度が、日本の円安介入に刺激されないことを願っている。

日本は、政治的にも心理的にも正しいことをした、と思っている。しかし、アメリカ財務省の元スタッフTed Trumanは、G20の声明で為替市場の過度の浮動性や無秩序な動きをけん制することは、日本の行動を承認したという口実を与える。

WSJ NOVEMBER 1, 2011

Tokyo's Intervention That Can't

By RICHARD KATZ

円高はスケープゴートだ。日本に過度の円高は起きていない。成長促進やデフレ対策に真剣に取り組むべきだ。

WSJ NOVEMBER 2, 2011

A Corporate Governance To-Do List for Japan

By NICHOLAS BENES

WSJ NOVEMBER 3, 2011

It's Hardly the Time to Lecture the Japanese

By KATIE MARTIN

WSJ NOVEMBER 4, 2011

Japan Steps Up Defense Alliances

By MICHAEL AUSLIN


l  タイの洪水

BLOOMBERG Oct 30, 2011

Thailand’s Water Crisis Is Bad Omen

By William Pesek

LAT November 2, 2011

Thailand's heart attack

By Michael D. Lemonick

WSJ NOVEMBER 3, 2011

Drying Off Thailand's Supply Chains

By JOSEPH STERNBERG

FT November 3, 2011

Supply chain disruption: sunken ambitions

By Ben Bland and Robin Kwong


Project Syndicate 2011-10-31

The Coming Global Credit Glut

Andrew Sheng

VOX 31 October 2011

Investment banking

Charles A.E. Goodhart

Project Syndicate 2011-11-02

The ECB’s Risky Business

Daniel Gros


FP Monday, October 31, 2011

Five comments on Palestine joining UNESCO

Posted By Daniel Levy

guardian.co.uk, Tuesday 1 November 2011

Obama will rue his lack of principle on Palestine's Unesco membership

Ian Williams

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The Economist, October 22nd 2011

Capitalism and its critics: Rage against the machine

German politics: Daylight piracy

Protests: Not quite together

Economics focus: Unrest in peace

Argentina’s presidential election: The widow takes it all

Demography: A tale of three islands

After the tsunami: Old habits die hard

Banyan: Not as close as lips and teeth

The European Central Bank: Ready for the ruck?

(コメント) 資本主義システムへの批判。既存の政治支配を拒否する運動。緊縮政策と社会不安・政治対立激化との関係。社会に渦巻く不満と怒りは、情報伝達やTV映像によって地球規模で伝染します。それは金融市場における「逆向き」の不満と合わさって、既存のメカニズムによる政治支配を破綻させるといえるでしょう。ウォール街占拠だけでなく、ドイツ都市部に現れた政治運動に驚きます。

アルゼンチンのクリスチーナ・フェルナンデス・キルチネル大統領が再選されたことで、2001年の金融危機以降、輸出農産物の国際価格上昇が支えてきた景気回復の後が問われます。記事は、ヴェネズエラや中国に対する依存を深めて、憲法改正により3選を目指すことを警戒しています。

それは、ユーロ危機の将来かもしれません。マリオ・ドラギECB新総裁の置かれた厳しい状況が描かれています。日本の野田政権は、衆参のねじれによって、自民党政権下で認められていた既得権をすべて継承するしかない? 中国は、ベトナムとインドの関係強化に対抗するでしょうか?

70億人に達した地球人口は、環境破壊によって滅ぶのか、人口転換の配当によって貧困解消に成功するのか?

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IPEの想像力 11/7/11

ユーロ危機は、なかなか終わらない。いつまで続くのか? どうなれば終わるのか?・・・学生に質問されますが、答えることはとても難しいです。

実際、「答え」があるのかどうかもわからない。そういう問題は、しかし、政治経済学において珍しくないでしょう。TPPに参加すべきですか? というのもそうです。

財政赤字が問題であれば、歳出削減か、増税か、債券市場に拒まれたら公的融資を受けるか、という話です。政府がスリムになって、民間部門も無駄を省く、国営企業の民営化や外国からの直接投資を促す、という条件を、これまで債務危機に陥った発展途上諸国はIMFによって示されました。

しかし、こうした改革には時間がかかります。成果を急げば社会不安や政治対立が激化し、市場のパニックや制度の崩壊が政治を麻痺させて逆効果でしょう(IMF暴動)。何よりも改革に向けた合意形成と新しい成長パターンを見出すことが重要です。

債務国政府は、内外において信頼を回復しなければなりません。政権交代や国民投票、債権国・国際機関との交渉によって新しい条件を合意することが、その契機になるのです。

11月はじめのG20カンヌ・サミットが成功すれば危機は終わる、と私は説明していました。また、このとき根本的な対策を示せないなら、市場はパニックに向かうだろう、と。アメリカや中国も参加し、主要な債権諸国と新興諸国が参加する会議です。だからこそ、ユーロ危機の根本的な解決策が、国際通貨制度の改革と合わせて議論される、と期待しました。

しかし、機会は失われました。ユーロ圏が用意した解決策をギリシャが国民投票で拒むかもしれない。そんな状態でG20を説得することはできなかったのです。ギリシャ政府を脅迫し、懐柔することで、市場は小パニックに終わり、ユーロ危機は次の焦点をイタリアに向けました。

再び、どうなれば危機は終わるのか? ・・・普通は、ギリシャの財政赤字が大幅に減って、労働コストも引き下げられたときに終わる、と答えるでしょう。そしてギリシャの政府債券は市場で売却でき、ギリシャに民間投資が行われて、輸出も増えるからです。しかし、いつになったらそうなるのか? 結局、無理じゃないか?

改革推進派は、「そうなる。実現できる。」と主張します。もしユーロ圏が真の政治経済コミュニティーになれば、ドイツはその一部としてギリシャを支援するでしょう。また、ギリシャもドイツが求めるコミュニティーの基準を守るでしょう。統一を維持することでユーロ圏が何を目指すのか? 1776年のアメリカ独立なのか、1871年のドイツ統一なのか、1990年の東西ドイツ再統一なのか、あるいは、もっとほかの「国家」に転換する中で、ユーロ危機は終わります。

ユーロ圏からの離脱、分裂・解体を主張する意見も強いです。ユーロ圏がドイツ中心の「強いユーロ」と、南欧などの非ドイツ圏・「弱いユーロ」に分裂する。あるいは、一体化を加速するユーロ圏の内部と、それに参加しない外部との間に分裂が生じる。そうではなく、個別の国がユーロ圏を離脱するかもしれません。その場合も、離脱や復帰のルールが合意されるかどうか。それがあれば市場の混乱を抑制できるでしょう。しかも、ユーロを使用しつつ、自国通貨を復活・流通させる、という提案を、H. Jamesは金銀複本位制の時代を根拠に、支持しています。

望ましい金融政策について、望ましい為替レートについて、共通通貨がすべてを解決することはできません。共通通貨ユーロは市場統合の一部であり、ヨーロッパの政治的統一と平和を実現し、国際政治における発言力を求めてきました。同時に、グローバリゼーションに対抗して各地域の文化や言語を守り、社会福祉や雇用の水準を維持するために国家主権をプールする戦略であった、と思います。

それは「協調のルール」、「政治的合意形成のメカニズム」と呼ぶことができます。その理念や制度の細部をめぐって、さまざまな理想が語られ、イデオロギーが形成されます。支配的な原理を住民が話し合い、投票するのが民主主義である以上、市場のパニックや危機は繰り返し起きます。

ユーロ危機が終わらないのは、政治システムの調整と金融市場の反応が根本的に不整合であるからです。双方が、時代にあった制度を発見する必要があります。

TPPに反対し、あるいは賛成する政治家は、政党を分割し(イギリスが穀物法を撤廃)、国家を分裂させる(アメリカの南北戦争)激しい論争を回避せず、未来の日本を指導してほしいです。その戦いが、旧システムや旧世代を一掃します。

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