今週のReview
10/31-11/5
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EUサミットによる危機打開策 ・・・タイの洪水 ・・・オバマ・ドクトリンの勝利 ・・・外交と戦争 ・・・ウォール街占拠運動(OWS)の意味 ・・・中国の経済政策 ・・・政府=??? ・・・日本的ガバナンス ・・・中央銀行の革新
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l EUサミットによる危機打開策
FT October 20, 2011
Look to America for lessons in sharing a currency
By Steven Rattner
Eurobonds. EFSF. IMF austerity. ESM. Budgetary rules. A European finance minister ・・・
余りにも多くの信頼できないアイデアをもたらすだけで、アメリカの高官も加わった異例のEUサミットは、ユーロ危機を解決できないだろう。なぜなら構造的な問題があるからだ。
共通通貨は、財政政策だけでなく、他の政策とも統合しなければ機能しない。
最も重要な点は、競争力が収斂しないことだ。この10年で、ドイツの生産性は9.4%上昇したが、イタリアは変わらなかった。だからドイツは10%近く成長し、イタリアはほとんど成長していない。たとえば、ユーロ債を導入しても、流動性の不足は解消されるかもしれないが、イタリアの生産性は改善しない。
また、アメリカのTARPをまねても、それは新しい流動性供給プログラムでしかなく、競争力が一致することにはならない。アメリカのような財務省を作っても、イタリア人がドイツ人のように高い生産性を示すわけではない。
通貨を共有するとは、単に中央銀行を一つにするとか、財政を中央集権化するとか、厳格な財政規律を求める以上の問題である。たとえば、アメリカでは、地域間で生産性に格差が生じれば、雇用の見込みに応じて労働者が地域間を移動する。しかし、ヨーロッパでは国内でさえなかなか移動しない。言葉が違う国際間では移動がもっと少ない。
アメリカの財政制度では、「自動的な安定化」が作用し、資源が必要な地域に再分配される。ヨーロッパではそのプログラムを「財政移転」と呼び、EU予算内でわずかに行われている。政治家がそれを拡大するような考えを示すのは、ドイツのような諸国で自殺行為だ。
チャーチルがアメリカについて述べたことは、ユーロ参加諸国についても正しい。他の方策がすべて尽きた時だけ、正しいことをするのだ。もっと正直にユーロが機能するために必要なことを認め合うことだ。
SPIEGEL ONLINE 10/21/2011
Germany and the Euro
Currency Crisis Heightens Trans-Atlantic Tensions
By Charles Hawley
オバマ大統領は、ユーロ危機を解決できないヨーロッパにいら立ちます。独仏は、ユーロ圏を守るEFSFの拡大にも同意できません。
FT October 21, 2011
Forcing Greek restructuring is not the answer
By Lucas Papademos
WSJ OCTOBER 21, 2011
Why Europe Dithers
By HOLMAN W. JENKINS, JR.
Project Syndicate 2011-10-21
Three Ways to Save the Eurozone
Jean Pisani-Ferry
危機打開には三つの案がある。1.EFSFの新設。2.銀行システムを守る自己資本の強化。3.ユーロ圏を守る保証と監視の強化。
いずれも政治的に受け入れは困難である。補完的に扱うことも可能だ。市場に何を示せるか?
The Guardian, Saturday 22 October 2011
The EU must create a mechanism to discipline or eject errant members
Jan-Werner Mueller
FT October 23, 2011
Europe is now leveraging for a catastrophe
By Wolfgang Münchau
ユーロ圏が生き残る可能性は消滅しつつある。EUサミットが失敗するからではなく、その合意がもたらす結果について私は心配している。
合意されるものとしては、EFSFの拡充とIMFからの融資が組み合わされるだろう。しかし、レバレッジによるEFSF拡充は、サブプライム・ローンと同じだ。すなわち、本当は金がないのをごまかすだけである。EFSFは、政府債券に対するモノラインの保険業と同じになる。それは結局、危機を激化させるのだ。
政府による債券保証はトリプルAの格付けを失わせる。ECBによる債券の現金化が始まった。その結果、(激しいインフレと)ユーロ圏の解体も起きるだろう。
「通貨同盟は、単に、ユーロ債や小規模な財政同盟にとどまらない。たとえ部分的であれ主権を公式に委譲しなければならない。課税権限、生産物や労働・金融市場の規制、財政ルールの決定、である。」
こうした政治的決断を、通常の状態では、ヨーロッパの有権者はだれも受け入れないだろう。しかし、ユーロ崩壊を防ぐために、受け入れざるを得ないかもしれない。しかし、その場合でも、私は彼らが決断できないと思う。
彼らは様々な代案を描いて議論するが、それを集約する単一の権力・権威がどこにもない。この多重性を持つ不確実性が、いかなるシナリオも予測不可能にし、破局的な事件が起きる可能性が増している。
NYT October 23, 2011
The Hole in Europe’s Bucket
By PAUL KRUGMAN
「イギリス、日本、アメリカを観ればわかる。いずれも巨額の債務を抱え、財政赤字を出すが、低金利である。その秘密は何か? それは大部分、独自通貨を持っているから、困ったときは、紙幣を印刷して財政赤字をファイナンスできる、と投資家が知っていることだ。もしECBがヨーロッパの債務返済を保証するなら、危機は劇的に緩和するだろう。」
それではインフレになる? デフレ経済で通貨を創造してもインフレは起きない。むしろ、ヨーロッパは穏やかなインフレが必要なのだ。インフレ率が低すぎると、ギリシャは長期間デフレを続けて、高失業率とデフォルトの不安に苦しむ。
ユーロ・システム全体が、この前の経済戦争に合わせて作られた。1930年代の再現を防ぐより、1970年代のインフレを恐れている。それは1930年代の金本位制がそうであったように、大陸規模で金本位制の硬直性を再生した。
ユーロ・システムの崩壊はますます宿命となりつつある。しかもヨーロッパ経済は、より早く崩壊することによって、それを引き延ばすよりも改善されるだろう。
guardian.co.uk, Monday 24 October 2011
Jean-Claude Trichet's dire tenure at the ECB
Dean Baker
SPIEGEL ONLINE 10/24/2011
Bonjour Tristesse
France Stares into the Euro-Crisis Chasm
By Stefan Simons and IsabellHülsen
SPIEGEL ONLINE 10/24/2011
A Bumpy Road in Brussels
EU Leaders Battle Image of Troubled Summit
By CarstenVolkery in Brussels
メルケルやサルコジなど、ヨーロッパの指導者たちが週末のブラッセルに集まる。EUサミットのマラソン会議が抱える課題と各国の戦略的な利得計算を考察する。
Merkel and Sarkozy二人がBerlusconi に圧力をかけた。会議を進めるのは"Merkozy"の方針である、と皆わかっている。しかし、往年の独仏主導によるEU改革は空転している。フランスには改革の意欲だけで実力がない。ドイツには実力があるけれど、指導する気がない。EFSFの大幅拡大にも、ECBによる政府債券購入にも、ドイツは反対だ。しかも、議会や銀行からの反対が強い。
緊縮策を続けることには、ギリシャ国民が反対している。ギリシャの財政再建は目標を達成せず、トロイカ体制(ECB、IMF、欧州委員会)の報告は財務大臣たちにショックを与えている。再び、一層、大規模な救済融資を準備するのか?
FT October 24, 2011
Europe’s dithering over banking risks 2008 again
By Oliver Sarkozy
FT October 24, 2011
My seven-point plan to save the eurozone
George Soros
ECBとEFSFとを完全に利用できる体制にすることで、金融システムの参加者が持つ不安を解消する、という主張です。
NYT October 24, 2011
The Beauty of Institutions
By ROGER COHEN
guardian.co.uk, Tuesday 25 October 2011
Time to unleash financial firepower or face euro breakup
Larry Elliott Economics editor
FT October 25, 2011
Be bold, MrDraghi, put out that fire
By Martin Wolf
親愛なるマリオへ
お祝いとともに、同情申し上げます。来週、君は世界で最も重要な中央銀行の一つで職に就く。ECBだけがユーロ圏の危機を鎮静化するパワーを持っている。君には二つの道がある。政党的な政策で崩壊に至るか、非正統的な政策で成功を得るか。
結局、何が政府債券の価格を決めるのか? 政府には何の補償もない。税収への債権など幻想だ。イギリスには中央銀行がある。しかし、ユーロ圏の国には中央銀行がない。彼らは、事実上、外貨で借りているのだ。
ECBが最後の貸し手になることに反対する意見がある。中央銀行が損失を被る。モラル・ハザードをもたらす。インフレを激しくする。
中央銀行の目的が経済の安定化であるなら、そのために損失を出すことは問題にならない。財政政策や経済政策には明確なルールが必要だろう。インフレが爆発するという条件は、現在、ない。
ECBが政府債券市場の安定化に乗り出せば、自動的に銀行も安定する。政府がデフォルトする必要などない。一部の周辺における例外を除けば、ユーロ圏にはバブルの苦しみはなかった。深刻な不況が来る証拠もないが、ECBは貨幣供給を抑えている。
かわいそうなマリオ。君は選択に直面する。金融政策のタカ派になるか、ユーロ圏を救済するか。後者を取るように。その選択を説明すればよい。
FT October 25, 2011
Eurozone must end its miserliness
SPIEGEL ONLINE 10/25/2011
Risky Business
Merkel Gambles on Parliamentary Support for Euro Backstop
By Florian Gathmann and Philipp Wittrock
guardian.co.uk, Wednesday 26 October 2011
Britain should consider joining the euro
John Monks
guardian.co.uk, Wednesday 26 October 2011
These national Euro-debates are just what we need – if there is still time
Timothy Garton Ash
国から国へ、議会から議会へ。
白熱した議論が続く。あるところの主張は、他のところで受け入れられない。ドイツは「せねばならない」というが、ギリシャは「できない」という。サルコジは「欠かせない」というが、メルケルは「不可能だ」という。スロヴァキアの上限でも、それはスペインの最低限だ。毎日、この民族民主主義の不協和音は市場の超国家的パワーの餌食となる。
二つの素晴らしい議会論争をコンピューター上で生中継していた。一つはイギリスの議会下院。もう一つはドイツの連邦議会だ。イギリス議会の伝統的な外観・装飾は、ドイツ議会の近代的なそれとあまりにも対照的である。しかし、その本質は共通している。・・・民主主義だ。
ドイツ社会民主党の元外相Frank-Walter Steinmeierは、ユーロ問題に関するメルケル首相の議会に対する扱いを「恥知らず」と非難した。発言者が次々に代わっても、皆、ドイツがユーロ圏の救済についてメルケルが与えた約束を、「ここで、ドイツ連邦議会で “hier, imdeutschen Bundestag”」議論し、決めなければならない、と主張する。それはまるでイギリス議会で聞く保守党の声("hear, hear!")のようだ。
どちらでも明確なことは、ヨーロッパが意思決定する声は各国議会から聞こえるのであって、ヨーロッパ議会ではない。
しかも、その声はますます声高に否定するものだ。すべての国民がその声を聴くように求めている。問題は、彼らの言いたいことがヨーロッパの他の人々が求めていることと和解できないことだ。
メルケル首相はギリシャ人の努力を称える。ギリシャ問題の解決を助けるのは単に「厳しい条件」を押し付けることではない。ギリシャにおける恒久的な監視体制を求めることだ。それがギリシャ人にはどう響くか?
メルケル首相はECBをユーロ圏の最後の貸し手、ユーロFedにはしない、という。連邦議会が賛同の声に揺れる。しかし、彼女はフランスが求めるユーロ債を即座に否定した。彼女が求める解決策とは、条約の改正だ。しかし、それには10年かかるだろう。
メルケルの理想は、キャメロンの悪夢だ。イギリスはEUとの関係を国民投票に付すのか? 保守党をまとめられるか? サッチャーと違って、ドイツの鉄の女は金融取引税を導入する。それはイギリス保守党の主要な資金提供者であるシティを直撃する。
ドイツの有権者とギリシャ国民。あるいは、ポルトガル、イタリア、フランス、イギリスの指導者たちが、それぞれの国で演説する。間違ってほしくないが、私は、こうした諸国の民主的討論が悪いことだ、などと言うのではない。逆に、それが待ち望まれていた。ドイツでは政治家たちがユーロについての疑問を隠し続けた。イギリスでも国民投票を避けてきた。
こうした民主的討論は必要なだけでなく、時間が許せば、今日のEUが継続するべきことを支持するはずだ。確かに懐疑論が論争を引き起こしたが、それは「ヨーロッパ」を支持する力強い声を集めている。公開討論を恐れるべきではない。むしろ、それを引き寄せるべきだ。
ただし、時間が許せば、という問題がある。10年前であれば、時間があっただろう。すでに市場では債券トレーダーがスペイン、イタリア、フランスの債券投資から引き揚げつつある。しかも、彼らは年金受給者の利益を守るためにそうしているのだ。
FT October 26, 2011
Europe’s leaders must start making tough decisions
Jean Pisani-Ferry
国家の赤字を厳しく管理するか、銀行や金融システムを厳しく管理するか、ECBがその権限を強めるか。いずれにも長所と短所がある。その選択次第で、ヨーロッパは変わる。
FT October 26, 2011
The price of the drift to fiscal union
By John Major
イギリス元首相John Majorは、ユーロ不参加の決断を振り返ります。
「ユーロ圏の欠陥は構造的なものだ。財政同盟なしの通貨統合は危険であった。強力な北欧が南欧と収斂することは起きそうになかった(特にドイツが東部を吸収してから)。私は政治的にも反対した。ユーロに参加すれば、イギリスはポンドを失い、重要な政策手段を失う。だから私は、マーストリヒトで、オプトアウトを選択した。」
もしユーロ圏が財政同盟に進んで連邦制になれば、イギリスも非ユーロ圏でEFTAを再生するだろう。イギリスでも、どこでも、EU離脱を求める運動がある。それは問題を解決する以上に作り出す。イギリスは選択しないだろう。
SPIEGEL ONLINE 10/26/2011
German Parliamentary Vote
Merkel Says Future Peace and Prosperity At Stake in Crisis Talks
SPIEGEL ONLINE 10/26/2011
'It's Politics, Stupid!'
Don't Just Bash the Bankers
A Commentary by Thomas Tuma
WP October 26, 2011
Europe’s bailout can’t succeed without an economic boom
アメリカの多くの金融機関がヨーロッパに投資している。もしヨーロッパの銀行が破たんすれば、それらも巻き込まれる。オバマ政権は、ヨーロッパの指導者たちが協力して基金を用意するように求めた。約2兆ドルにもなる安定化基金を用意できるのはドイツだけだ。
財政同盟があれば、危機は起きなかったし、ギリシャの財政赤字も続かなかっただろう。しかし、サミットが解決すべきなのは、「成長の危機」である。ヨーロッパは長い間、アメリカや新興諸国よりも成長率が低かった。それを続ければ生活水準やヨーロッパの社会モデルを維持できない。
ドイツがギリシャに求める緊縮策は間違っている。南欧のビジネスを制約している、規制、保護政策、硬直的な労働市場を改革させる必要がある。北欧はそれに並行して、輸出を減らし、南欧に市場を提供するべきだろう。それは長い、複雑な過程だ。
WSJ OCTOBER 26, 2011
The Greek Debt Fallout
By ATHANASIOS T. LADOPOULOS
Project Syndicate 2011-10-26
Strengthening the Stabilizers
Olin L. Wethington
VOX 26 October 2011
European summits in ivory towers
Paul De Grauwe
いつもの光景だ。財務大臣たちが週末に集まって声明を発するが、月曜日には市場がそれを否定する。政治家たちは見放されているし、ECBはその力を行使しない。
戦争に向かう軍隊を想像してほしい。彼らは十分な破壊力を持つが、将軍たちは事態を嫌っており、その軍事力をできるだけ使いたくない、という。開戦に至ったことに動揺し、辞任した将軍までいる。とどまった将軍たちも、発砲は一時的なもので、できるだけ早く帰国したい、と敵に話しかける。こんな戦争がどうなるか、予想してほしい。
ECBは金融市場における戦争に負けるだろう。ECBの介入は一時的であり、債券価格はまたすぐに下落する、と投資家たちは思っている。債券を保有し続けるはずがない。ECBが全力で政府債券を購入し、その価格を維持し続けると知らせることで、投資家たちは安心する。その結果、実際に購入する債券はそれほど多くならないのだ。
なぜそうしないのか?
ECBは、その理事会があるフランクフルトは、インフレというたった一つの関心に合わせて金融政策を考えているからだ。ECBが最後の貸し手になろうとしないから、EFSF/ESMも機能しない。制度は機能せず、ユーロは信認を失ってしまう。
ヨーロッパの政治指導者たちは、こうした欠陥を隠すために、EFSFにレバレッジを工夫する。そしてECBはインフレ目標の夢想に耽ったままでいられる。しかし、レバレッジを増やすほど、リスクも増えるのだ。流動性危機が生じたときに、そのリスクは爆発する。そうなったら政府のトリプルA評価も一挙に失われるだろう。
研究者は、現実の世界ではなく象牙の塔に住んでいる、と言われる。しかし、象牙の塔の住人とは、ヨーロッパの指導者たちだ。
guardian.co.uk, Thursday 27 October 2011
In trying to save the euro, Germany is making demands that cannot be met
Simon Jenkins
FT October 27, 2011
Half measures and wishful thinking do not a solution make
Wolfgang Münchau
包括的な解決策は午前4時に合意された。銀行は「自発的に」ギリシャ債権を50%カットする、とIIF(the Institute of International Finance)は銀行業界を代表して合意した。しかし、危機は終わらないだろう。
まず、IIFに従わない銀行が出るだろう。自発的なデフォルトではCDS(credit default swaps)が行使できない。強制的な債務削減のほうが銀行には利益がある。しかし政治家たちは、特にドイツなど北欧の政治家たちは、ギリシャのデフォルトを強く嫌う。
第2に、この合意が2020年までにギリシャの債務/GDP比率を120%にまで下げる、という予測には無理がある。緊縮財政を強いられるギリシャは、経済成長を実現できないから、財政赤字が増えるだろう。
第3に、120%の債務依存度でギリシャが資本市場に復帰できる、とは思えない。もっと低い、たとえば80%にならなければ、ギリシャ債券は売れないだろう。
EFSFの1兆ユーロまで増額したが、それは政府の出資ではなく、銀行によるレバレッジで行った。なぜ銀行が行えるのか? それは政府と中央銀行が銀行に保証するからだ。このレバレッジが効果を発揮するのは、本当に無制限な流動性が得られるときだけだ。しかし、ドイツは制限するという。
こうして危機は続く。
FT October 27, 2011
China could play key role in EU rescue
By JamilAnderlini in Beijing and Richard Milne in London
FT October 27, 2011
China: growing taste for European m&a
by Denise Law
FT October 27, 2011
Merkel’s mantra works without ‘big bazooka’
By Quentin Peel
FT October 27, 2011
EMU summit leaves €1,000 billion to be raised
by Gavyn Davies
次の関心は、中国の参加と、新しいECB総裁Mario Draghiの行動だ。
SPIEGEL ONLINE 10/27/2011
An Apocryphal Apology
Merkel Denies Saying Sorry to Berlusconi
BLOOMBERG Oct 27, 2011
Europe Shouldn't Bank on China's Deep Pockets
By William Pesek
WSJ OCTOBER 27, 2011
The Fiscal Union Delusion
By FRED SMITH AND IAIN MURRAY
ヨーロッパの「財政同盟」が追及され、議論はアメリカ・モデルに向かう。しかし、もしそれが、苦境にあるアイルランド経済にドイツの税率を強いて、オランダ市民にフランスの社会福祉を許す、ということなら、間違った問題に、間違った答えを押し付けているだけだ。
ヨーロッパは超国家的なルールを実現しようとして繰り返し失敗してきた。もしアメリカから学ぶとしたら、それは競争こそが持続的な富の創造に向けた規律をもたらす、ということだ。
Project Syndicate 2011-10-27
Europeanizing Europe
Joschka Fischer
ユーロ危機は30年に及ぶネオリベラリズムのせいではないし、投機によって生じた資産バブルのせいでもない。マーストリヒトや、債務膨張や、強欲な銀行のせいでもない。むしろ、起きたことではなく、起きなかったことが問題だ。すなわち、共通のヨーロッパ政府を作らなかったことだ。
ユーロ圏が制度を確立するためには、真の政府と、実効性のある議会による支配、本当に民主的な正当性、を必要とする。
VOX 27 October 2011
EZ rescue: Déjà vu all over again
Guido Tabellini
VOX 27 October 2011
The pitfalls of official first-loss bond insurance
Daniel Gros
もしあなたが原発の隣に住んでいたら、事故が起きた時の損失を最初の20%だけ保険でカバーすると言われたら、安心して眠れますか?
金融市場におけるイタリアは、福島原発によく似ている。何もかもうまくいっているときは、災害など起きそうにない。20%の保険でも十分だ。確かに災害はめったに起きないが、福島原発が津波に襲われたように、金融市場で災害が起きれば20%ではなくもっと大きな損害を生じる。こんな保険では役に立たない。
WSJ OCTOBER 28, 2011
Brussels Non-Breakthrough
l タイの洪水
guardian.co.uk, Friday 21 October 2011
The politics behind Thailand's floods
Thitinan Pongsudhirak
不正確な情報、管理不足、天災が混じりあって、数十年来の大洪水となった。インラックYingluck Shinawatra新首相は、兄のタクシン元首相からポピュリストの政治基盤と政策を引き継いだが、それを実現する時間を失った。
伝統的なコメの生産地であるから、タイの洪水は珍しくない。しかし、最近の数十年で、多国籍企業の生産拠点が拡大していた。タイ中心部やバンコクにも、1983年、95年に洪水が襲い、特に1942年は最悪の被害を出した。洪水の被害額は、タイの発展とともに急激に増大している。
インラックは困難な決断を避け、権限を委ねてきた。しかし、扇情的な報道やニュースの洪水によって国民の不満は高まっている。次第に権限を集中し、政府を動かし始めた。
洪水は、タイの都市部と農村との対立を刺激する。タクシンが追放されて以来、この政治的な分断が国家を機能マヒに陥れ、衝突を生じてきた。バンコクを守るために下流域の洪水が放置されることになる。
首都バンコクには経済機能が集中し、GDPの40%を占める。そこは社会対立の焦点である。しかも、バンコク市長職は野党からのSukhumbhand Paribatraが占める。彼がインラックと異なる視点で洪水を見ているのは当然だ。
バンコクが洪水の被害を分かち合い、経済的な被害を広げる補が平等や正義の感覚を維持しやすいだろう。洪水は首都を抜けて、より早く海に流出する。そしてインラックは急速に政治を学びつつある。洪水の危機は彼女により大きな自律性を与える。タクシンの影から出ることになる。
災害後の経済復興・景気回復に手腕を示せば、インラックはより広い支持を得て、政策構想を示せるだろう。
WSJ OCTOBER 23, 2011
Yingluck's First Test
By PAVIN CHACHAVALPONGPUN
インラックの政治生命を左右する二つの問題がある。洪水の危機がどのように政治的危機につながるのか? 既得権を持つと信じるタイ・エリートの集まるバンコクに洪水を入れるのか?
それは政治的な罠だ。タイ経済の80%を占める首都バンコクを守るのか? それとも他の地域を犠牲にしたという非難を避けるために、洪水を広げるのか?
YaleGlobal Online 24 October 2011
Floods Threaten Global Trade Hub
Pavin Chachavalpongpun
FT October 26, 2011
Why the mad migration of parts for your iPhone matters
By David Pilling
世界はタイの生産拠点が洪水に侵されたことよって、再び、グローバル・サプライ・チェーンの重要性に気づいた。
l オバマ・ドクトリンの勝利
guardian.co.uk, Friday 21 October 2011
Another win for the Obama Doctrine
Michael Williams
ブッシュの"shock and awe"と違って、オバマは軍事力の行使を抑制することで成果を上げている。ブッシュはテロとの世界戦争を拡大したが、オバマは諜報活動や精密兵器、特殊部隊でビン・ラディンを殺害した。法的・倫理的問題を生じるが、ドローンによる偵察と攻撃はテロ・ネットワークやタリバンの勢力圏を破壊した。リビアへの介入もアメリカ軍の支援があって可能だった。
guardian.co.uk, Friday 21 October 2011
Libya's path to democracy
Paddy Ashdown
guardian.co.uk, Friday 21 October 2011
Libya's revolution has triumphed, but will democracy?
Benjamin Barber
カダフィの死はリビアに民主主義をもたらすのか? それとも、イラクの再現か?
成功の鍵は、「法の支配」(汚職の追放、治安回復)を最優先することだ。次に、経済を回復させ、雇用をもたらすことだ。その後に選挙を行う。この順序が重要だ。選挙を先にしてはいけない。
他方、カダフィが殺害されたことで、残された武装集団は内戦状態に向かうだろう、という懸念がある。NATOの空爆ではそれを防げない。憲法や選挙を準備しても、民主主義は実現しない。革命は無政府状態に至り、次の独裁者を生む。カダフィの暴力的支配が残した社会の亀裂は深い。
FT October 21, 2011
Harvesting fruits of the Arab spring
WP October 21, 2011
Obama chose the right course on Libya
By David Ignatius
広範な国際連携で独裁政権を倒すオバマの描いた見通しは正しかった。
WP October 22, 2011
What’s next for Libya? Paul Bremer says to remember post-Saddam Iraq.
By L. Paul Bremer III
サダム・フセインを倒してアメリカ軍がバクダッドを解放した2003年とよく似ている。12月3日、午前2時に、CIAはフセインを捕えた、という情報を伝えてきた。
しかし、独裁者の終末がその国を再生することには容易につながらない。国民は新しい独裁者が登場することを非常に恐れている。だから米軍には協力しなかった。
FP OCTOBER 25, 2011
Coming Up Empty
BY STEPHEN WALT
FP OCTOBER 25, 2011
Outside the Law
BY ERIC A. POSNER
WP Friday, October 28, 2011
What Libya has inherited from Moammar Gaddafi
By Anne Applebaum
l 外交と戦争
SPIEGEL ONLINE 10/21/2011
'Messengers of Death'
Are Drones Creating a New Global Arms Race?
By Andreas Lorenz, Juliane von Mittelstaedt and Gregor Peter Schmitz
安価で、人命のコストを抑えることができる。アメリカ政府が無人偵察・攻撃機の開発と配備を進めれば、国際的な法律も監視もないまま、主要国間で新しい軍備拡大競争が始まるだろう。そして、戦争が容易になるかもしれない。
NYT October 25, 2011
Barack Kissinger Obama
By THOMAS L. FRIEDMAN
オバマがこれほど、ブッシュ自身よりも、ブッシュの外交政策を実現するとは、だれが予想しただろか? オバマは適切な戦略・手段でそれを行った。諜報活動、テロリストの殺害、限定的な軍事介入。ブッシュとチェイニーも、アフガニスタンとイラクでそうするべきだった。
しかし、オバマは、自分の外交政策には失敗している。中東和平も、イランとの和解も、実現していない。アラブの春はエジプトの政権を崩壊させ、その後に不安を残した。パキスタン、中国、ロシア、など、オバマの外交には従わない。
なぜか?
オバマの外交政策は、交渉による合意形成だ。しかし、世界は混乱を増しており、アメリカは交渉のための手段を失った。
かつて1970年代にキッシンジャーが中東和平を実現したとき、シリア、エジプト、イスラエルで3人の権力者を説得すればよかった。しかし今は、オバマもクリントンも、崩壊するエジプトと交渉し、動揺するシリアと話し合う。イスラエルは弱体な連立政権であり、パレスチナは分裂している。パキスタンもインドも、壊れやすい政府だ。冷戦が終わって、ますます破綻国家が増えた。外交する前に、国家の再建が必要だ。
他方、ロシア、中国、イランのような強力な国家には、交渉のためのレバレッジが必要だ。それは結局、経済力に依存する。アメリカはエネルギー政策を見直し、国内貯蓄率を高めなければ、こうした諸国に対する交渉上のレバレッジを得られないだろう。
つまり、オバマが外交で成功するためには、自国の再建から始めることだろう。
FP OCTOBER 26, 2011
It’s a Small World
BY COLUM LYNCH
FT October 27, 2011
A return to the world of Hobbes
By Philip Stephens
最近まで、EUが多極化する世界のモデルであり、G20はそのグローバルな表現だった。今ではどうか? EUは混乱し、G20は停滞している。
多極化は新しいナショナリズムに変わった。グローバル・ガバナンスを目指した末に、我々は19世紀の国家主権に戻った。資本移動やグローバル・サプライ・チェーンが比較優位を頻繁に変え、24時間の衛星テレビやインターネットが情報管理を変えた。その結果、政治や市民は危機にある。
大西洋の両岸で、外国人を排斥するポピュリズムが広まっている。
誰もがルールに基づくグローバル・ガバナンスを望んでいたはずだった。西側の規範や価値を保ったまま国際秩序が維持されるような新興勢力を期待して、Robert Zoellickは彼らを「責任あるステークホルダー」と呼んだ。それは様々なルールからなるグローバルなシステムだった。
しかし、ヨーロッパもアメリカも国際秩序を維持する役割に自覚が足りなかった。財政赤字は累積債務と化し、議会や域内諸国は対立を深めて政治が機能しなくなった。ユーロ危機がゼロサム・ゲーム思考を強めて、ヨーロッパはすっかり新ウェストファリア体制だ。
メルケル、サルコジに加えて、胡錦濤、オバマが、一緒にグローバル・ガバナンスを築けるだろうか? 誰もそんなことを期待しない。政治は今もローカルな利害に従い決定する。
いつの時点であれ、新興諸国もグローバリゼーションの同じ問題に直面するだろう。アフリカがアジアを追い上げ、中国の雇用はバングラデシュに流出する。新しい繁栄は安全を脅かし、海外との相互依存がナショナリズムをもたらす。
アラブの春は、独裁体制でも民衆の不満から逃れることはできない、と教えている。グローバル・システムを支配するのは、イマニュエル・カントではなくトマス・ホッブズのように見える。ナショナリズムの再生は諸国家に新しい危機をもたらす。
Global Times | October 27, 2011
Quest for global democracy may backfire on US
By Aaron Adams
l ウォール街占拠運動(OWS)の意味
NYT OCTOBER 21, 2011
Rawls on Wall Street
By STEVEN V. MAZIE
ウォール街占拠運動(OWS)が関心を集めたように、アメリカの不平等ははなはだしい。彼らの要求を考えるとき、John Rawlsの思想が手掛かりになるだろう。彼は正義に関する理論を示し、その起源はアメリカの歴史と憲法にあるからだ。
そして、もちろん、マルクス主義でもない。公正な社会には所得格差もある。ただし、貧しいものも所得を増やせることが条件だ。
WP October 21, 2011
Obama’s risky embrace of Occupy Wall Street
By Michael Gerson
WP October 22, 2011
What should Occupy Wall Street’s agenda be?
もっとさまざまな論者の考えるOWSの目指すべき政策要求です。
DAN SCHNUR・・・社会運動は、単に不幸な者の不満であってはならない。雇用を求めることで支持を得たが、これからは法案を求め、アメリカ政治における勢力となることが求められる。
SIMON JOHNSON・・・大銀行への集中は進み、住宅債務者の負担は変わらないとしたら、OWSがこれを変えるべきだ。など。
BLOOMBERG Oct 23, 2011
China, India Protesters Are the Real ‘99 Percent’
By Pankaj Mishra
FT October 23, 2011
Capitalism and its global malcontents
これは単に1999年のシアトルに現れた反グローバリゼーション運動ではない。OWSは資本主義を拒否するだけではない。成長よりも、より公平な果実の分配を求めている。すなわち、資本主義の改善だ。しかし、政治家は景気回復を重視するあまり、銀行救済に集中して、グローバリゼーションにさらされた労働者には対策を示さなかった。労働市場の硬直性や若者の失業も解消されなかった。その答えは所得再分配や保護主義ではない。
資本主義のモデルを維持するには、たえざる改革が必要だ。
guardian.co.uk, Monday 24 October 2011
How the Occupy movement won me over
David Haack
Project Syndicate 2011-10-24
The Language of Global Protest
Jan-Werner Mueller
NYT October 25, 2011
Will Extremists Hijack Occupy Wall Street?
By JAMES MILLER
1960年代の運動が示す教訓とは、その要求が民主党や労働運動の中に共通する部分であると認め、連携することだ。逆に、フーリガンや過激な行動に支配されれば政治的な支持を失うだろう。
guardian.co.uk, Wednesday 26 October 2011
Occupy first. Demands come later
Slavoj Žižek
FT October 26, 2011
Take note America: the public is angry
Moisés Naím
反対側の道路が走っているなら、交通が渋滞しても我慢できる。もしすべての車線が長時間止まったら、不満は爆発するだろう。しかも、警察が到着して、少数の選ばれた自動車に特別通行証を配布したら、暴動が起きるのは確実だ。これがウォール街占拠運動の感覚であることに、注意しなければならない。
交通渋滞のたとえは、経済的移動性の政治的帰結を示したものだ。1973年に、ハーシュマンAlbert Hirschmanが、貧しい諸国の不平等に関して許容度が異なることを説明するために用いた。人々は自分の親戚や隣人の生活が改善するのを見て、自分たちも改善する番が来るのを待つ。
この仮説は貧しい国について提案されたが、今や、世界で最も裕福な諸国にも適用できる。ウォール街やロンドン、イタリア、ギリシャで抗議する者たちは、道路が渋滞しただけでなく、自分たちが後退しているのを見ているからだ。他社と同じように成功する、という希望ではなく、他者を蹴落として卑劣にも裕福に暮らすエリートたちへの集団的憎悪である。
1世紀までに、トクヴィルAlexis De Tocquevilleは、アメリカ人がヨーロッパ人より不平等に寛容であるのは、社会的移動性が高いからだ、と考えた。しかし、これは終わった。少なくとも今は。
アメリカの不平等は新しいことではない。新しいのは、経済危機の中でも「少数者」が計り知れない富をため込むことへの不寛容だ。富者は銀行救済からも、景気刺激策からも利益を上げ、緊縮財政には無関係だ。
財政赤字の削減と、抗議や反政府暴動、ストライキの頻度とには、関係がある。私たちは新しい政治領域に入ったのだ。彼らか、少なくとも彼らの親せきや隣人たちが前進するまで、その怒りは収まらない。
NYT October 26, 2011
Crony Capitalism Comes Home
By NICHOLAS D. KRISTOF
彼らはアメリカの経済システムを破壊する半裸体のコミュニストたちではない。ドラッグも吸わないし、街頭でセックスもしない。むしろ彼らは資本主義に、説明責任のような、基本的な原理を回復させるだろう。
これは、クローニー・キャピタリズムから、資本主義を救出する運動なのだ。
1990年代にアメリカ政府が、経済危機に陥ったアジア諸国を批判したことを思い出すべきだろう。アメリカの資本主義にも構造的な改革、たとえば、貧困層の教育改善を通じた極端な不平等の解消、が必要だ。それは、通りにバリケードを築く、幼稚なアナーキスト的抗議からは生まれない。
FT October 27, 2011
The big questions raised by anti-capitalist protests
By Martin Wolf
なぜこれほど時間がかかったのか? 金融危機が起きてから4年以上が経っている。セント・ポール寺院の前にも反資本主義の抗議デモが現れた。左派の政治運動? そうではないだろう。なぜなら、そこには信頼できる新しいイデオロギーがないし、運動を支える社会勢力もない。
では、自由市場と金融ビジネスが復活するのか? そうでもない。人々は民主主義による改革を求めている。なぜなら、ナショナリズム、好戦的愛国心、レイシズムによる外国人排斥、という政治の暗黒面が控えているからだ。エリートたちが失敗し、不満が高まっても、こうした悲劇を繰り返したくない。
1930年代の論争を思い出せば、一方は政府にすべての責任を見ていた。オーストリア学派の経済学者たち、Ludwig von Mises and Friedrich Hayekの主張は、現代の茶会運動や、イギリスでもゴードン・ブラウンの財政刺激策を非難し、イングランド銀行の金融緩和を非難する人々に見られる。他方、ケインズ主義が起きたように、今も一層の市場介入を主張する者が現れている。
こうした意見はどちらも必要であり、重要な論争である。
市場資本主義には本来、難点がある。特に、マクロ経済の不安定性と極度の不平等は顕著な欠陥である。自由市場派の人々は、金本位制に戻り、100%準備銀行制度を再生すれば、すべては解決すると主張する。私はそう思わない。不安定性は未来に対する賭けであり、楽観と悲観を繰り返す人間性と切り離せない。
不平等の受け入れ可能な水準を定義することも不可能だ。いかなる不平等も不正な富であれば腐敗する。不平等が拡大すれば市民の感覚は失われ、民主主義が最も高い値をつける者に買い取られる。共和制の歴史でしばしば起きたことだ。平和的な抗議は自由な民の権利である。重要なことは、それが問題提起であることだ。
左派は市場に代わる代案を持たない。市場を支持する者たちの抗議は重要だ。
l 中国の経済政策
Project Syndicate 2011-10-21
China’s Crippled Financial Sector
Yao Yang
WSJ OCTOBER 23, 2011
The Bailout That Busted China's Banks
By JOSEPH STERNBERG
FT October 24, 2011
Resolving China’s local debt woes
WSJ OCTOBER 25, 2011
The Phony Success of China's Stimulus
By JOSEPH STERNBERG
中国経済に関する最も顕著な神話は、世界金融危機から財政刺激策によって中国が危機を回避した、というものだ。それは中国政府の優秀さを示す、といわれた。
BLOOMBERG Oct 26, 2011
Crisis of 2012 May Hurt China More Than U.S.
By William Pesek
ヨーロッパ経済の問題も、中国経済の問題も深刻だ。グローバル・インバランスを解決するのは、相対的な意味で、アメリカが最も有利であろう。たとえ中国やヨーロッパの官僚が時間をさかのぼれても、彼らが陥った問題を解決することは難しいだろう。中国の成長モデルを調整するためにもっと果敢に行動しない官僚たちは、今から10年後に、同じような悔恨を覚えるだろう。
l 政府=資源・技術・独裁・選挙・安全・金融・貿易・・・???
YaleGlobal Online 21 October 2011
Mongolia Opens Doors for Foreign Investment
Steven Borowiec
モンゴル。資源の開発と輸出。それを国民にどう分配するか? 中国とロシアの間。中国への警戒感。独立の維持。
NYT October 22, 2011
One Country, Two Revolutions
By THOMAS L. FRIEDMAN
アメリカにおける金融革命と情報革命。どちらも優れた人材を集め、アメリカの豊かさを象徴したはずだが、ウォール街の破壊力とシリコン・バレーの創造力は全く異なる。
FT October 24, 2011
Burma: At freedom’s gate
By Amy Kazmin
WP October 24, 2011
Answering Burma
ビルマ。独裁政府がにわかに自由化を進めている。西側は制裁措置を解除するか?
Project Syndicate 2011-10-24
Cristina Kirchner’s Choice
Roberto Guareschi
アルゼンチン。債務危機、通貨危機、金融危機、そして、キルチネル夫妻が大統領を交代するはずだった。しかし今は未亡人だ。ラテンアメリカの多くの国がそうだが、大統領に権力が集中し、レイムダックを恐れる。
LAT October 24, 2011
The Tunisian model
FT October 25, 2011
Jasmine revolution begins to blossom
チュニジア。独裁者に代わって、国民の声を代表する民主的な選挙が行われた。穏健なイスラム政党が勝利した。多元主義的な民主的社会を支持している。
WSJ OCTOBER 25, 2011
Battle for the Soul of Korea
By DONALD KIRK
韓国。ソウル市長に当選したPark Won-soonは、新しいポピュリズムの傾向を示す人物だ。
LAT October 25, 2011
In Sudan, peace remains elusive
By Jehanne Henry and Gerry Simpson
スーダン。22年間の内戦を経て、停戦合意はできても対立は解消しない。各地で武力衝突も続いている。政府による爆撃も行われている。ダルフールにおける人権蹂躙は国際刑事裁判所で告発が検討されている。戦争は終わっていない。
WSJ OCTOBER 27, 2011
Indonesian Lessons for Pakistan
By SADANAND DHUME
パキスタン。アフガニスタン戦争をベトナム戦争と比較するより、東南アジアに安定と繁栄をもたらしたアメリカの政策を、南アジアにも適用する可能性を学ぶことが重要だ。かつてのインドネシアは、今日のパキスタンと似ている。親米的なスハルト体制に10人のエコノミストを送り込んだ。
Project Syndicate 2011-10-27
Does Redistributing Income Reduce Poverty?
Jagdish Bhagwati
左派の多くの人々は、成長が発展途上諸国の貧困を減らす、とは信じない。そして成長よりも再分配を重視する。それは間違いだ。
l 日本的ガバナンス
FT October 21, 2011
Camera-maker obscurer
By Jonathan Soble
FT October 25, 2011
Trade talks offer leadership test for Noda
By MureDickie in Tokyo
決断力のない政府を観たいなら、日本の野田政権を観ればよい。PTTをめぐる論争は、日本の指導者たちの典型的な優柔不断に流れる傾向を示している。人口減少、デフレ、財政赤字に苦しむ日本が、国民を分断するような政策課題にも応えることができるのか、野田政権は試されている。
FT October 27, 2011
Good luck changing Japanese business
By Robert Boxwell
FT October 27, 2011
Olympus redux
l 世界経済の回復
VOX 22 October 2011
A proposal to enhance the G20’s “input” legitimacy
Pradumna B. Rana
guardian.co.uk, Tuesday 25 October 2011
Straws grasped from China won't solve this world crisis
Jayati Ghosh
中国や新興市場の成長によって欧米の輸出が伸びる、と期待するのは無理だろう。むしろグローバルなマクロ政策協調による景気刺激策が必要だ。
l アメリカの住宅市場
FT October 23, 2011
Why the housing burden stalls America’s economic recovery
By Lawrence Summers
Project Syndicate 2011-10-26
America’s Economic Stalemate
Martin Feldstein
WSJ OCTOBER 27, 2011
The Mortgage Crisis: Some Inside Views
By CHARLES W. CALOMIRIS
l 中央銀行の革新
FT October 24, 2011
Central banks need a bigger and bolder mandate
By Barry Eichengreen, RaghuramRajan and Eswar Prasad
世界金融危機は、中央銀行がインフレ目標だけに頼っていてはいけない、という合意を形成しつつある。金融政策は、物価の安定だけでなく、資産価格、商品価格、融資、レバレッジ、資本移動、為替レートへの効果を介して、金融の安定性に影響する。
その効果は、一国にも限定されない。
中央銀行の権限や行動は見直される時が来ている。物価の安定性と並んで、金融の安定性が目標に掲げられる。金融政策は、マクロ・プルーデンシャルの監視にふさわしい道具である。バブルを予測するだけでなく、金融条件の変化が経済にとって破壊的なものではないか、問うべきだ。
もしそれが破壊的であれば、金融政策を駆使してこれを防ぐべきだ。
物価と金融の「二重の安定性」を目指す、という権限の拡大について、透明性とコミュニケーションの改善が欠かせない。金融の安定性を得るために資産価格が下落するような政策を取れば、国民や政治家は反発する。そのためリスク評価や政策の正しさを示す情報が欠かせない。
また、政策の国外への波及効果は、グローバルなレベルで金融の安定性に影響する。経済規模が大きな国は、この効果を考慮に入れる必要がある。大国の金融政策が集合的な変化を示してグローバルに効果を及ぼすことは注意されるべきだ。このためシステムに重要な影響を及ぼす少数の中央銀行は、定期的に集まって、グローバルな流動性、レバレッジ、エクスポージャーに対する政策の効果を評価するべきだろう。彼らの集合的な金融政策が、グローバルな物価、生産量、金融安定性の維持に適当であるか、評価するべきだ。
こうした問題について、委員会は定期的にG20に対して報告する。中央銀行の政策が矛盾を避けるよう助けるために、それは公表される。
大国は中央銀行がグローバルな責任を持つことに躊躇するかもしれない。特に、国内の成長減速に苦戦している国ではそうだ。
しかし、我々は将来を観るべきだ。国内の責任を引き受けつつも、悪影響を最小化するために、大国の中央銀行はその権限を修正する。
l 米軍のイラク撤退とアジア
WSJ OCTOBER 24, 2011
After Iraq War, U.S. to Shift Focus to Asia
By GERALD F. SEIB
Project Syndicate 2011-10-24
Asia’s Giants Colliding at Sea?
Jaswant Singh
FP OCTOBER 24, 2011
Welcome to the Shadow War
BY MICHAEL KNIGHTS
NYT October 24, 2011
The Fighter Fallacy
By DAVID BROOKS
LAT October 25, 2011
American imperialism? Please
Jonah Goldberg
LAT October 27, 2011
Out of Iraq
By Frederick W. Kagan and Kimberly Kagan
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The Economist, October 15th 2011
Nowhere to hide
Economics focus: Realism rewarded
Civil war, famine and piracy in Somalia: Don’t aim too high
Thailand’s new government: Swept away
Banyan: A taste of freedom
Ukraine, Russia and the Eurasian Union: YuliaTymoshenko’s trials
(コメント) 機関投資家や資産家は世界中の債券利回りが低下すること、デフォルトのリスクに苦しみます。そして、ノーベル経済学賞を受賞した二人の実証的なマクロ経済学者が紹介されています。
ソマリア、タイ、ミャンマー、ウクライナ、そしてユーラシア同盟にロシアが引き寄せる国々では、グローバルなマクロ経済学とは別に、政治経済学の亀裂が生じています。選挙戦で勝利を得たインラック首相が洪水に悩まされ、弾圧と自宅軟禁に苦しんだスー・チー女史が新政権との和解に踏み出し、ジャンヌ・ダルクのように民衆を率いて革命を指導したユリア・ティモシェンコ元首相が政治裁判で有罪となりました。
タイの記事には、冒頭にハロルド・マクミラン首相の発言が紹介されています。政治家にとって最大の試練と何か? 「事件だ。」
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IPEの想像力 10/31/11
野田内閣の姿を見定めるのは、行方不明の猫を探すような、当てのない作業です。
政府は、何をすることで、正当な権力の行使を説明できるのか? 1.安全保障、2.経済成長、3.社会福祉。それらはすべて、国民の社会参加と能力改善に役立つ、教育システムとインフラ・制度の整備に帰着すると思います。
モンゴル、アメリカ、ビルマ、アルゼンチン、チュニジア、韓国、スーダン、パキスタン、タイ、イラク、そして、ユーロ圏諸国が、私の集めたコラムの渦中に現れます。いつもと違って、中国の姿は目立ちません。そして、いつも通り、日本は同情と諦観、軽蔑の調子を帯びて描かれます。
政府=資源・技術・独裁・選挙・安全・金融・貿易・・・
たとえば地中に埋蔵された資源は、石油・天然ガスであれ、レアメタルであれ、住民にとって自覚されなかった、世界市場によって顕現する富です。それは自由化で利益を得る、というだけでなく、外国企業や豊かな国との外交、地域安全保障への参加、国内の富の分配と地域・社会対立、インフラ整備や教育による新産業と雇用の確保、政治システムの革新、などを意味するでしょう。
普天間基地の移設。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加。放射性物質を含む土砂の洗浄や保管場所の確保。 ・・・20年も延期してきたABCDフィッピーの打開策。自衛隊をスーダンに派遣する? 周辺諸国との領土問題は60年以上も未解決です。
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The Economist, October 22nd, 2011 にBill Smithの訃報が載っています。Fell-runnerという言葉に、何を想像したらよいのか?
「リバプールで、Blacklerデパートのポーターとして働くのは、世界で一番素晴らしい仕事、というわけではない。朝から晩まで、地下の倉庫にいて、トレーや荷物を運ぶ。」
しかし、Smithはほかの人たちと違っていました。
「雨の日も、晴れの日も、彼はバスに乗らず、自宅と職場の間の6マイルを徒歩で行き来した。リバプールで生まれ、そこで育ち、15歳からずっとポーターとして働いたが、1971年からは週末を他の土地で過ごした。」 彼は自動車を持たなかったので、鉄道やバスに乗って野生の自然を求めました。「工場地帯が尽き、山岳が現れた。」
Smithは、集団で道路を走るより、アマチュア・ランナーとして、山岳走破を一人で楽しむようになったのです。さまざまな組織を育てて仲間を増やしました。しかし「真の冒険は一人でやるものだ。」 滑りやすい草地や険しい岩場、羊飼いと羊しか来ないような土地を駆け抜けました。
最高の日、24時間内に、Smithは、42の山を越えて66マイル(105.6キロ)以上を走破し、3万フィート(9100メートル)を上り下りした、ということです。Independentには、1975年、24時間で55の山(翌年には63)を越えた、と書かれています。
彼はまた、フェル・ランニングに関する走る百科事典でした。歴史、記録、会議などの詳しい知識を、注意深く、600ページを超える本に書きました。その本はランナーたちのバイブルとなりましたが、その中に彼は自分のことをほんの少ししか言及していません。本からの利益はすべてフェル・ランナー協会に寄付しています。アマチュアとして謙虚に生きることで、彼は満足したのです。
Smithは「伝説」のランナーとなり、75歳で亡くなりました。9月に走っていて山中で心臓が停止し、3週間、発見されなかったということです。一番好きなことをして、亡くなりました。ポケットにはEvertonへ帰る列車の切符がありました。
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野田内閣は、さまざまな事件に見舞われて振り回されるのではなく、自分たちの目指す理想や政治的信念を実現しなければなりません。TPPに賛成か、反対か? と言えば、私は賛成です。しかしその理由は、輸出市場の拡大、安価な輸入財、投資・資源の効率的な利用、ではありません。
反対する理由の多くは、国内問題を解決できなかったことです。政府はTPPに参加して、その機会や衝撃に対して積極的な行動を取り、国民に競争心と社会的連帯感を高めるべきです。自由化と社会的な革新によって、新しいコミュニティーを築く刺激が得られる、と思います。
Bill Smithがトラック競技ではなく、野山を一人で駆け抜けたように、人の生き方やガバナンスに答えはありません。ABCDフィッピー以外にも、挑戦する問題に不足はないでしょう。それが難題であるほど、日本政府は自由な発想と果敢な姿勢を示して、国民を励ますべきなのです。
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