今週のReview
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ウォール街占拠運動OWS ・・・ユーロ危機 ・・・中国と人民元 ・・・世界経済の変革 ・・・アメリカの外交・安全保障 ・・・ミルトン・フリードマン生誕100周年 ・・・ミャンマーの改革
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l ウォール街占拠運動OWS
guardian.co.uk, Friday 7 October 2011
Occupy Wall Street and the Tea Party compared
Eric Alterman, James Antle, Ayesha Kazmi, Sally Kohn, Doug Guetzloe, Frances Fox Piven and Douglas Rushkoff
どちらも草の根運動であり、銀行救済を嫌っている。
Frances Fox Pivenによれば、茶会はノスタルジアだ。想像上の過去を再建するように求めている。世界がもっとシンプルであった時代だ。茶会はほとんど白人の、一般人より豊かで高齢の支持者が参加している。「取り戻そう」というスローガンに、右派のビジネス幹部からも強く支持される。
他方、「ウォール街占拠運動」OWS(the Occupy Wall Street)の支持者は若い。人種的にも多様で、文化的反抗を歓迎し、何より包括的だ。メディアの非難とは違い、彼らは情報に通じており、思慮深い。茶会のような混乱したスローガンはない。むしろ彼らの全体会議にJoseph Stiglitzを招く。
OWSは、若者、労働者、マイノリティー、貧困層を含めた抵抗運動だ。
しかし、論者によっては二つの運動の共通性や共闘の可能性を示す。
guardian.co.uk, Friday 7 October 2011
Rein in Wall Street and rescue the middle class
Bernie Sanders
NYT October 8, 2011
Protesters Against Wall Street
ウォール街占拠運動OWSは、明確なメッセージと具体的な政策要求がない、と非難されている。しかし、メッセージは明白だ。富裕層の状態は回復したのに、不況はなおアメリカの中産階級を苦しめている。それにもかかわらず、政治家は彼らの声を聴かず、真剣に議論しない。
抵抗運動は若者たちによって始まり、失業者や貧困層を巻き込んでいる。機会を奪われた世代が発言を求めているのだ。25歳以下の大学卒業生で9.6%、高校卒業生の21.6%には仕事がない。しかも、低賃金や不十分な職場に就いている人々は含まれていない。
極端な不平等は経済の機能不全を示しており、それは金融部門に支配されて投機によって動いている。生産的な投資に向かわない。上位1%の家計が占める所得は全体の23.5%に達し、1928年以来の最高水準だ。それは1970年代後半の10%から2倍以上になった。
貧困層の苦しみが拡大するとき、教育システム、社会保障、その他の政策に関して富裕層の利益を重視した結果が、すなわち、すべてが疑われる。OWSは社会の不満を吸収する焦点になった。
アメリカには公共政策の転換が必要だ。銀行を保護するより、完全雇用を目指す。国内の製造業を拡大する強力で長期的な戦略が必要だ。
FP OCTOBER 10, 2011
'There's a Huge Amount of Anger'
INTERVIEW BY BENJAMIN PAUKER
Nouriel Roubini and Ian Bremmerを迎えて、ウォール街占拠運動やユーロ危機について、FPはインタビューしています。今後、何が起きそうか?
Nouriel Roubiniにとって、不況が来るのは確実だ。問題はその大きさだけだ。オバマはこれを阻止できないだろう、とBremmerも考える。選挙循環は働かない。
中国は世界不況やユーロ危機を解決するために行動するだろうか? 底に達してからだろう。
Roubini・・・貧困、失業、腐敗、不平等、不安を強めた人々は抗議に立ち上がり、アラブの春が始まった。それはイスラエルでも、チリでも、ロンドン、ベルリン、フランクフルト、そしてインドでも、苦境を強いられた中産階級の怒りが示されている。それはOWSの主張と重なる。
銀行は政府によって救済されたのに、人々に何もしていない。またトレードによって利益を集め始めた。人々はうんざりしており、怒りが満ちている。
Bremmer・・・OWSでそれほど大きな変化は起きないだろう。欧米に金融街への反発はあるだろうが、抗議運動は組織されていない。明確な行動計画もない。選挙の年だから、富裕層は民主党にも共和党にもさまざまな政策について献金する。
アメリカはエジプトと違う。問題はそれほど深刻でないし、政府はそれに耐えられる。1%の富裕層は行動を変えるような圧力を受けていない。
Roubini・・・十分な賃金を得ていない、不満足な職業にある者、また、刑務所に収容されている人々を加えると、失業率は30%に近い。
ユーロ危機はアメリカに波及するか?
Bremmer・・・アメリカはユーロ危機に関心を高めているが、ヨーロッパはアメリカが金融危機の震源地であり、その後の管理にも失敗したと考えているから、アメリカの助言を聞くことはないだろう。国内の経済状況や政治環境から見て、アメリカがIMF融資ではなく、独自の財源をユーロ危機の処理に使うことはありえない。もちろん、危機が最終局面に達すれば議会は合意するかもしれない。
Roubini・・・オバマの"jobs plan"が通過しなければ、アメリカ経済は財政的な需要不足が強まる。共和党は様々な理由をつけて政策を阻止し、不況を悪化させるだろう。選挙の年だから、景気悪化が自分たちの政治的利益なのだ。
Bremmer・・・そうは思わない。しかし、来年11月が近づくほど、そのような考え方が強くなる。共和党にも経済戦略がある。
ドイツはユーロ圏を壊したくないからEFSFの拡大を指示するだろう。しかし、その時期が問題だ。様々な制約があり、信用リスクがある。有権者はもう十分に支援したと感じており、金融危機を起こしてしまう。
しかし、国内の政治的制約があっても、EUには政策を動かす強力な制度、滑り止め、がある。
中国がユーロ危機の救済にホワイト・ナイトを演じることはないだろう。
Roubini・・・かつて、メキシコや韓国が債務危機に陥ったとき、アメリカに救済融資を打診した。しかし、今はアメリカにユーロ圏の支払いを保証する財政的な余裕がない。だから、中国が代わりに注目されるのだ。
SPIEGEL ONLINE 10/11/2011
Occupying Wall Street
The Start of a New American Movement
By UllrichFichtner
"We are the 99 percent"も金融危機への政策対応に不満を示す言葉として、インターネットにあふれている。
NYT October 11, 2011
Something’s Happening Here
By THOMAS L. FRIEDMAN
チュニジア、テルアビブ、ウォール・ストリート、・・・社会の抵抗運動、改革派が行動を起こした。ある者は“The Great Disruption” と呼び、他の者は “The Big Shift” と呼ぶ。
オーストラリアのエコロジストであり、経済学者でもある著者Paul Gilding, “The Great Disruption,” は「成長に固執した資本主義システムの限界」を見ている。世界市場資本主義は崩壊した。放置すれば、利潤と環境汚染を拡大し続ける。富は集中し、雇用を失う。懸命に働く者、学ぶ者、環境を回復する富を、我々は持っているのに。
John Hagel III with John Seely Brown, “The Power of Pull” は、我々がグローバリゼーションと情報技術革命の初期段階にあると考える。ますます機能しない制度や慣行に阻まれている以上、抵抗運動が現れるのは当然だ。だからこそ、この流れを止めるのではなく、効果的に受け入れて生産性が上昇するように、個人、企業、国家は高い能力を得るよう求める。
私のハートはThe Great Disruption” を恐れ、頭脳は “The Big Shift” を支持する。
NYT October 11, 2011
Finally Making Sense on Wall Street
By MARK BITTMAN
WP October 11, 2011
The Occupy protests: A timely call for justice
By Eugene Robinson
この国を騒がせる「ウォール街を占拠せよ! OWS」が、不器用で、まとまりのない、どうしようもなく空想的な運動であるとしても、私は彼らが好きだ。
素人が行う座り込み。自然発生的な運動。指導者もなく、だれでも参加する。経済的な正義を求める以上に、特定の問題を主張しない。法則はなく、傾向だけがある。
ハンドマイクは使わない。話し手の言葉を繰り返す。唱和することで全体に伝える。あまりにも愚かなようで、それがうまくいく。
下院・院内総務Eric Cantorは「膨張する群衆・モッブ」と呼んだ。茶会を称賛したはずだが。
様々なことのすべてが、私を占拠運動の支持者にする。何よりも、彼らはまさに正しい時期に、正しい目標を掲げたのだ。これは大きく、重大なことが起きる、始まりだろう。
「経済的正義」は人によって異なる意味を持つ。しかし、それが無意味な言葉であることにはならない。我々が公平さの感覚を持てなくなった時、政治にとって経済的な不正義を正すことが求められる。
革命的な技術進歩やグローバリゼーションは、アメリカ経済を空洞化させるもっとも重要な力である。しかし、我々の政策がそれらの破壊的影響を緩和するのではなく、強めるように作用した。富裕層はますます超資産家になり、中産階級はその経済基盤を失い、貧困が耐え難い水準に固定した。
OWSは、この状況に対して、焦点を絞らないまま、しかし、その起点を金融システムの震源地においた。ウォール街だ。
金融部門は、資本を最も効率的に利用する企業に送る、という重要なサービスを提供するはずだった。しかし、急激な技術変化や経済・政治の変化によるこの数十年にウォール街は資本を基礎のない証券に注ぎ込み、金融危機に至った。彼らはもはやアメリカの最善の利益を代表しない。
だからボロ集団が、大規模でもないが、理想主義的で決然とした集団が、ロウワー・マンハッタンで寝泊まりし始めたのだ。アメリカ各地で同じような運動が生まれている。
この国に足りないのは政治家ではない。正義に奉仕する情熱とエネルギーだ。健全で、単純な、素朴な疑問に、政治家たちが答えるように強いられるべきだ。それは倫理や価値を問うものだ。政策の細部は後でもよい。
いつか泊まり込みは消えて、あんな運動は無意味だった、と言われるだろう。しかし、そうではない。ウォール街を占拠した若者たちの進歩性は、もっと大きな何かを生み出す始まりになるだろう。
guardian.co.uk, Wednesday 12 October 2011
What Occupy Wall Street can do for Barack Obama
Amy Goodman
WP Wednesday,October 12, 2011
Will Occupy Wall Street’s spark reshape our politics?
By Katrina vandenHeuvel
OWSは、今や全米の800以上の町に広がっている。メディアもようやく茶会だけが重要な市民運動ではないことを認めた。
彼らは選挙を目的としてない。確立された進歩派の運動にもかかわらない。不正義の核心をめがけて攻撃する。
この数日で運動は試練に直面する。彼らはそのエネルギー、切れ味、道義性を維持できるのか? その圧力を高めて、必要なら自ら発展できるのか? もしそれに成功すれば、この国の政治的な視野が転換するだろう。進歩的な運動や選挙戦が活気づく。
NYT October 12, 2011
To the Barricades
By DAVID BROOKS AND GAIL COLLINS
Gail Collins・・・あなたはOWSに共感しないのね。彼らはもっと国内政策について厳しい選択を示すべきなのか?
David Brooks・・・OWSとは誰か、New York magazineによる調査では、3%の正統派(オバマ的)リベラル、12%の攻撃的(クルーグマン的)リベラル、40%は二大政党に満足しない(ラルフ・ネーダー的)怒りの人、34%はアルカイダとアメリカを区別しないハードな左派、である。
つまり彼らの3分の1には同意できないし、リベラルが過激派を区別しないことは驚きだ。
Gail Collins・・・雨に打たれる抵抗運度は極端な反対を示すものだ。それは関心を引くための発言で、政策ではない。
David Brooks・・・彼らは何かを実現するための困難な取引をすることなく、自分たちの正義だけを求めている。それが彼らを好きになれない理由だ。
Gail Collins・・・誰もが街頭の抗議運動家になってほしいとは思わない。しかし、誰も街頭で抗議しないとしたら、多くのものを失うだろう。
WSJ OCTOBER 13, 2011
Democrats Court the Wall Street Protesters
By KARL ROVE
オバマ大統領、ナンシー・ペロシ前下院議長、ジョー・バイデン副大統領、などがウォール街占拠を称賛し、支持した。
政治的な計算は明白だ。民主とはOWSを来年の大統領選挙で民主党に加勢する勢力として利用する気だ。OWSで、リベラル派は茶会運動に対抗する戦略だ。
しかし、OWSは政治運動ではない。アナキスト、反ユダヤ、社会主義、まで含む。銀行、投資家、富裕層、ブルジョアを嫌う、という共通性があるだけだ。
茶会運動は憲法を逆転し、法律を変えて、この国を繁栄に導こうとする。OWSはマンハッタンの公園を占拠し、ブルックリン・ブリッジを封鎖し、多くの逮捕者を出した。
茶会は共和党の候補者選択や選挙戦に貢献したが、OWSはアメリカの政治システムから切り離されている。民主党は強く願っているが、オバマや民主党の政策に失望したOWSが民主党の選挙運動を支持することはないだろう。オバマのせいでアメリカは失業者にあふれ、あるいは、リベラルではなくなって、アメリカ政府はアルカイダのように最悪の集団だ、と思っている。
むしろオバマがOWSとあわてて協力すれば、保守的なブルー・カラー労働者に嫌われ、選挙戦の足を引っ張る結果になる。
l ユーロ危機
SPIEGEL ONLINE 10/07/2011
The Ticking Euro Bomb
What Options Are Left for the Common Currency?
SPIEGEL ONLINE 10/07/2011
Bailouts or Bankruptcies?
Europe Begins Working on Plan B for the Euro
By Stefan Kaiser
FT October 7, 2011
Trichet leaves Europe in his debt
Project Syndicate 2011-10-07
The Euro’s Hard Rain Falls
Leif Pagrotsky
危機には非難合戦(責任のなすり合い)が続く。今のヨーロッパ全体がそれだ。犯人探しが続き、銀行家と政治家が主犯を競っている。
銀行家たちは、その無責任な融資や投機が責められる。アイルランドやラトビアはそれで経済が崩壊したし、ポルトガルやスペインでは深刻な問題が残った。政治家たちは、明白な不動産バブルが起きているとき、これを抑制する財政引き締めを行わなかった。それは経済を過熱させた。バブルは破裂し、不動産市場は崩壊した。その結果、銀行、財政、労働市場が苦しい調整を強いられ、犯人探しに翻弄される。
しかし、それは的外れだ。政治家も銀行家も現在の危機に至る重大なミスを犯した。ユーロ圏の周辺で、彼らが突然、無能で、不道徳な人間になったわけではない。危機によって犠牲になる前は、アイルランドやラトビアが改革のモデルとして賞賛されていた。
リスクがありながら、金融政策の決定を放棄し、金利を低くし過ぎた人々に責任がある。ユーロ圏周辺部の小国が持つリスクは、EMUのシステム設計に含まれた問題だ。それはヨーロッパ統一の善意によって決められたが、今や、共通通貨が危機の条件となった。
リスクは過小評価され、利益が誇張された。それが強めた短期的なユーロ支持は自己破壊的であった。ユーロ圏は、EU加盟国が、成長、繁栄、規律を実現する約束をしたはずだ。政治的に独立した中央銀行が金融市場の過熱を止める重要な役割を担う。周辺部の小国が景気の過熱やバブルに向かう最も大きな危険があった。
それが非難合戦の源だ。
FT October 9, 2011
Merkel and Sarkozy set euro deadline
By Quentin Peel in Berlin
FT October 9, 2011
Eurozone quick-fix will create political monster
By Wolfgang Münchau
ユーロ危機は、銀行の資本増強策で解決できるのか? 財政統合よりも政治的に受け入れやすいからきめられる銀行への公的支援や保証は、結局、一層大きな負担をもたらす怪物になりかねない。
FT October 9, 2011
Save Europe’s unity now
SPIEGEL ONLINE 10/10/2011
The Financial Crisis Returns
Europe's Attention Shifts to Its Ailing Banks
WSJ OCTOBER 10, 2011
The European TARP Solution
By KAREL LANNOO
FT October 10, 2011
Eurozone leaders must stop trying to “muddle through” the crisis
Jim O'Neill
FT October 10, 2011
It’s time for a radical blueprint for a new Europe
By David Owen and David Marsh
ユーロ圏に参加していないEU加盟10か国はthe “Non-Eurogroup” (NEG)を結成するべきだ。この10か国はユーロ圏に比べて経済の健全な運営を維持している。特に、イギリス、スウェーデン、デンマークは、ユーロ圏よりも長期金利が低い。また、チェコの短期金利はユーロ圏より低く、ポーランドは、この数年、EUで最も高い成長率を実現した。
NEGを結成することで、ユーロ圏に参加していないEU加盟国は、二流市民の扱いを改めさせるべきだ。そして彼ら自身の政治的・経済的利益を守ることができる。EU内の差別をなくし、ユーロ圏に参加するか離脱するかも、自由に選択できるようにすべきだろう。そうでないと、今のギリシャのように、ユーロ圏の離脱がEU離脱を結びつけられてしまう。
NEGは10か国間で中央銀行・政府の相互融資を認め、安定化メカニズムを強めることができる。
FT October 10, 2011
Merkel and Sarkozy struggle for common ground
By Quentin Peel in Berlin
FT October 10, 2011
How to stabilise the eurozone’s banks – and satisfy voters
By Jessica Einhorn
FT October 11, 2011
First aid is not a cure
By Martin Wolf
ECBによる融資は、白手形を無責任な政府に渡すモラル・ハザード問題や、ドイツのイデオロギーと対立する点を指摘する。それ以上に、Wolfは、今回の危機は2008年と同様に、赤字国の競争力低下、国際通貨システムの欠陥から生じている。救済融資や債務免除などの支援、銀行への資本増強策で、それは解決できない。
ドイツはユーロ圏を守ろうとするだろう。しかし、その限界は自国の支払い能力を損なわないことであり、それは近づきつつある。リスクの波及により、イギリスの金利のほうがドイツよりも低くなっている。必要なのは、融資と調整、である。それが達成されるまで、支援が続く。
VOX, 3 October 2011
How to rescue the euro: Ten commandments
Hans-Werner Sinn
FT October 11, 2011
The Swedish model for Europe’s bail-out
By Anders Borg and Carl Bildt
1990年代初めのスウェーデン金融危機の経験から、そのEU版と言える今回の金融危機に解決策を示すことができる。重要なことは、信頼を回復することであり、そのためには資本増強が不可欠だ、ということだ。その際に、必要なら政府による資本注入も行う。
どれくらいの資本があればよいかは、直接、オープンに議論する。厳密なストレステストを行う。信頼回復のために、1.株主ではなく金融システムを守る。2.納税者の資金は投資になる。3.公的資本を受け入れた銀行は経営権を政府に委ねる。4.政治的な介入をしない。
FT October 11, 2011
America’s blueprint for saving Europe’s banks
Roger Altman
Project Syndicate 2011-10-11
Coco for Europe
Barry Eichengreen
1年半遅れて、ギリシャの債務は再編される。それで危機が終わるのではない。
ほかにも、ギリシャは公的部門を縮小し、税制を改革し、経済を近代化しなければならない。ヨーロッパ諸国は、スペインとイタリアに危機が波及しないように、また不安定化を回避するように、防衛策を取るべきだ。資産が損なわれる銀行には資本増強が必要だ。ユーロ圏のガバナンスの欠陥も解決しなければならない。
ギリシャの債務は大幅に(半分以上)軽減され、納税者の負担は減る。それは賃金や年金などのコストの大幅削減と取引される。こうしてギリシャの競争力回復に必要な「内的な切り下げ」が実行される。債券保有者はこの「ヘアーカット」を強いられ、将来の過剰融資・投資に対する牽制となる。
問題は、なぜこれを認めるのに1年半も要したのか? である。それは、遅らせることへの強い動機があったからだ。ギリシャ政府も、フランスなどの銀行も、ヨーロッパの政策担当者たちも、債務削減より先送りを望んだ。
これを回避するために、将来の債券発行には、自動的な債務組み換えの条件を組み込んでおくことだ。銀行改革や救済融資、民間負担も、同様だ。破産処理のような手続きがないために、政府債務の場合は、債権者への負担が先送りされ、救済融資が繰り返される。
Contingent convertible bonds, or “cocos” は、この問題を解決する。ある限界を超えた民間債務は、この条件によって、自動的に資本に転換する。政府債務に対しても“Sovereign cocos”を導入すればよい。
需要が無いとか、債券発行が難しくなる、など、反対意見もあるが、それらは間違っている。
NYT October 11, 2011
Germans Love Europe, but Not the Euro
By WOLFGANG ISCHINGER
ドイツやメルケル首相がユーロ危機に対して示した遅れは、ドイツ人がEU統合を必要と信じていると同時に、ユーロを必要と思わない感情を示している。ドイツ人はユーロを好まなかった。なぜなら、ドイツは素晴らしい通貨、ドイツ・マルクを持っており、それこそが戦後のドイツ経済の繁栄をもたらしたシンボルであったからだ。
ユーロを受け入れてマルクを放棄したのは、ドイツが再統一する代償であった。ドイツがその経済的な優位を政治的支配に転換しないように、それは意図されていた。ドイツもそれを受け入れた。なぜならヨーロッパ統一こそが、平和と繁栄をもたらす最善の道であると思ったから。
では、なぜ躊躇するのか? それはドイツの強さについて国内の意識が変化したからだ。人々はリーマン・ショック後の深刻な不況を経験し、輸出指向の経済に不安を感じている。また、長期の目標にも懸念が強まった。高齢化、人口減少、教育システム、社会福祉、移民政策、脱原発。
ドイツ人は現状維持を好む。他国を支持するために何十億ユーロも使う、というのは受け入れがたい。正しい管理方法がないのに、資金を移転するのは間違ったやり方だ、とドイツ人は考えた。
しかし、市場は条約の改正を待ってくれない。夏を通じて、ようやくメルケル首相は危機の深刻さを認めるようになった。問題は、現状維持に傾くドイツ国民から、彼女が長期の解決策に対する支持と熱意を引き出せるか、である。1989-90年、コール首相はそれを実行した。
guardian.co.uk, Wednesday 12 October 2011
Those gloating at the eurozone's plight should be careful what they wish for
Timothy Garton Ash
共通通貨はその誕生から問題を抱えていると指摘されていた。それでもヨーロッパが達成したものは素晴らしい。もしそうであれば、ユーロを失うとはどういうことなのか?
ヨーロッパの制度的組織化は、6か国の共同市場から始まって、5億人のヨーロッパ人と27か国を含む、広範かつ深化した同盟になった。それはポルトガルからエストニア、フィンランドからギリシャまで広がっている。その中で17か国はユーロを採用している。
ヨーロッパがこれほど統一され、自由で、民主主義が広まり、平等な資格で、政治・経済・安全保障のコミュニティーに参加したことは史上かつてなかった。しかし、ユーロは危機にあり、統合を進めてきた情熱も今はない。
一層の財政統合と成長戦略でユーロを守るべきだ、と推進派である私は主張した。様々な解決策も提案されている。しかしここでは、もし崩壊すれば何に向かうか、を考えよう。
ユーロを失えば、徐々に解体が進み、2030年のヨーロッパは1730年の神聖ローマ帝国のようになるだろう。つまり、紙の上だけで存在する。ユーロの維持が目的ではない。各国は主権を失わず、EUの官僚制度がなくても、人々は自由で、繁栄し、安全に住めるかもしれない。
しかし、歴史はそれを否定する。
guardian.co.uk, Wednesday 12 October 2011
In the euro crisis, the rightwing ditherers do not know any other way
Poul Nyrup Rasmussen
FT October 12, 2011
The fallacy of the ‘big bazooka’
Wolfgang Münchau
世界はユーロ危機を解消する大胆な行動を求めている。キャメロン首相はEFSFの大幅な増額a “big bazooka”を求めた。ECBによる債務の現金化。IMFによるスタンバイ融資制度。ギリシャに対する債務の資本化。
今すぐ、大きな行動を取れ、というのは、役立たずで、危機を悪化させる助言である。症状や原因を問うより、金融の安定性を問うべきだ。将来の財政統合を約束することなしに、ビッグ・バズーカを与えれば極度の不安定化につながるだろう。
EFSFの問題は、それが誰も他国に最終的保証を与えられない「危機のドミノ」になってしまうことだ。それは結局ますます増額されて、ECBによる無制限な保証か、加盟国の債務の相互承認を意味するようになる。つまり、ユーロ債の発行と同じだ。
ユーロは完全な財政統合を目指すか、解体するか、それを決める分岐点に至った。
Iain Beggの反論・・・債務を移しても無駄だ、というのは正しい。しかし、ビッグ・バズーカは撃つためにあるのではない。それがあることで市場を説得できるのだ。それはポーカー・ゲームだが、銀行が手持ち資金を豊富にすることには意味がある。投機を排除できる。
政府と中央銀行は大量の流動性を供給できる。それはプリンティング・マネーと呼ばれた。
財政統合とは単一の財政ルールに従うことであり、ユーロ圏でもゆっくりと形成されてきた。それは遅すぎただろうが、達成されないわけではない。それは流動性供給を相互に行うことにも言える。ユーロ債の発行はその帰結だ。
財政統合を主張すれば行動できない。短期の危機対策と長期のガバナンス改善とを区別するべきだ。
FT October 12, 2011
Eurozone ‘outs’ must stick up for the single market
By Charles Grant
ユーロ危機は市場自由化を脅かす。すでに、ド・ゴール将軍が常に求めたヨーロッパの政治統一へ向かう危険が強まっている。独仏は、市場自由化を求める欧州委員会を嫌ってきた。
ユーロ危機は、経済不安をEUのせいにするポピュリズムを強める。ユーロからの離脱が起きれば懐疑論は強まり、各国は市場のルールを無視するだろう。ユーロ圏の外では競争的な切り下げに向かう国が増える。
1987年、イタリアの経済学者、Tommaso Padoa-Schioppaは、当時のドロールJacques Delors委員長に、ERMは資本規制の自由化を生き残れないだろう、と述べた。ドロールは、ERMの崩壊が競争的な切り下げをもたらし、それが保護主義による報復に至ることを心配した。通貨同盟への動きを強めることが、市場にERMの維持を信じさせる、と理解した。
ユーロ圏だけで規制を強めれば、シティはますますユーロへの関心を失う。ユーロ危機がEU内部のポピュリズムや保護主義を強めないように、イギリスなど自由主義的なユーロ圏外の諸国は行動し、ユーロ圏の閣僚会議にも参加を主張するべきだ。
Project Syndicate 2011-10-12
A Standby Program for the Eurozone
Raghuram Rajan
1.銀行の資本増強。2.イタリア、スペインの融資。3.ギリシャの赤字処理。
それには何百億ユーロも必要であり、ドイツが認めない。ドイツ人は東ドイツを吸収した。EFSFを考えたが資金が足りない。ユーロ圏内では、資金提供する政府の財政状態も同時に悪化する。
それゆえ外部の資金源が必要だ。アメリカや信仰ショックも加わったNew Arrangements to Borrow (NAB)をIMFで設定する。まず、ギリシャの債務を削減することだ。
Project Syndicate 2011-10-12
A Path through Europe’s Minefield
George Soros
WP October 12, 2011
Europe’s day of reckoning on its financial crisis is at hand
FT October 13, 2011
FT interview: Jean-Claude Trichet
By Lionel Barber and Ralph Atkins in London
FT October 13, 2011
Insurance, not leverage, is way to stabiliseeurozone
By Paul Achleitner
財政を移転するより、債務保証でよい。
WP October 13, 2011
Europe’s real problem: a lack of growth
By FareedZakaria
ユーロ危機の中心問題は、ヨーロッパ経済の成長回復である。
数週間前、ドイツは悪夢のシナリオを観た。資本市場はイタリアに注目し、その債券を売って金利を上げた。ECBがイタリア債権を購入して、イタリア政府の借入金利を下げた。すると、事態が沈静化するや否や、ベルルスコーニ首相は改革の約束を緩めた。
ドイツ政府は、ギリシャ、スペイン、イタリアが財政を大幅に改革しなければ危機を終わらせるつもりはない。なぜなら、彼らが財政再建を回避すれば、危機は必ず再発するからだ。しかも、もっと大規模に。
問題は二重になっている。一つは政府の赤字。もう一つは銀行の資本不足。ますます多くの融資や資本増強が求められる。
ヨーロッパの危機は、成長が欠けていることに帰着する。ドイツの成長率も低下し、ヨーロッパの成長のエンジンにはなれない。西側経済の動脈硬化が問題だ。高賃金、中産階級と政治の補助金依存、複雑すぎる規制と課税。それらは三つの圧力にさらされている。人口減少、技術変化、グローバリゼーション。
調整を受け入れて成長を回復しなければ、嵐は避けられない。
WP October 8, 2011
Obama, the loner president
By Scott Wilson
オバマは選挙で支持を得ても、アメリカの政治システムになじめない。オバマは孤独な大統領だ。
ホワイトハウスの外でオバマ政権を見てきた関係者たちへのインタビューからオバマを分析する。選挙戦における理想主義が政権初期のオバマのスタイルを決めた。・・・
l 中国と人民元
(China Daily) 2011-10-08
The US legislative farce
FT October 9, 2011
Cracks in Beijing’s financial edifice
By James Kynge
中国は2008年の後半に欧米の金融危機が及ぼす悪影響を払拭して、経済統制を利用した素晴らしい刺激策を実施し、その後の世界経済の回復を指導した。しかし、今はそれを再現するどころか、自分たちの経済を制御するレバーが壊れかかっている。
大規模にインフラ投資を行い、金利を下げた結果、インフレ率が高まり、闇の金融機関に資金が流れたからだ。かつて共産党のパワーを代表した中国の金融部門は、今や、規制されない信託会社、民間銀行、闇融資、高利貸しによって機能している。携帯電話に現れる激しい広告競争がそれを示している。
また、北京政府に促された地方政府の融資や投資対象は劣悪で、財政状態が悪化している。もはや景気刺激策を再現することは不可能だ。
中国の市場管理を担当するthe National Development and Reform Commissionの人々を、専門家は“a bunch of smart people doing something really stupid”とみなす。政府介入と市場改革とは矛盾した目標だ。
(chinadaily.com.cn) 2011-10-09
Yuan can't solve US problems
By Han Dongping
Global Times | October 10, 2011
Yuan appreciation nightmare for US
By Zhou Jimo
VOX, 10 October 2011
The rise of the renminbi as international currency: Historical precedents
Jeffrey Frankel
人民元が国際通貨になる、という予言は正しいか?
この1年か2年の間に、中国な人民元の国際化を多方面で進めた。香港では人民元債券市場が発達し、銀行預金もある。貿易の人民元建契約や、他国の中央銀行による外貨準備にもされている。
人民元がドルに代わる国際通貨になる、という主張は、主に二つの根拠による。中国の経済規模がアメリカを超えること。ドルがポンドに代わった歴史的な先例。
以前は、国際通貨の使用には慣性があり、交代には長期の時間的な遅れがある(1972年に経済規模が逆転し、1946年にドルが国際通貨になった)、と言われていた。しかし、新しい見解Eichengreen (2011) and Eichengreen and Flandreau (2010)は、その移行の遅れは短期であった、とみなす。移行期の初めを短縮する(1920年代)のは正しいが、終わりは短くならない。それは、国際通貨の条件が容易に形成できないからだ。
アメリカは世界貿易に占める割合だけなら1913年までにイギリスを超えた。しかし、その他の条件が必要だった。債権国の地位、通貨価値の強さ、深い、流動的な、開放された金融市場。
ドル、マルク、円と比べて、人民元の国際通貨に向かう姿勢は異なっている。人民元は、他の通貨と違って、金融部門の強い要求を支配的な少数意見として確立していない。通貨の国際化には国内に反対意見が強く、それを抑える政治的な力が必要だ。輸出による成長の仕組みを放棄する覚悟があるのは少数派であろう。
BLOOMBERG Oct 11, 2011
‘Made in China’ Tag Makes Hypocrites of Us All
By William Pesek
WSJ OCTOBER 12, 2011
Is China's Economy Headed for Trouble?
BY YIPING HUANG
Global Times | October 12, 2011
China's new rich look for fresh redemption
Huang Nubo
FT October 12, 2011
Why Americans should learn to love the renminbi
By David Pilling
人民元の切り上げを求めるまでもなく、中国の賃金は上昇していく。
最近まで、欧米諸国や日本の労働者の賃金が、中国人労働者の賃金の20倍、30倍というのを不思議に思わなかった。勤労態度や、社会制度(法、教育、インフラ、技術)の優秀さを考える程度であっただろう。
しかし、今は違う。新興市場の何億人もの労働者が世界市場に参加して、賃金水準を上げつつある。発展途上諸国の教育水準やインフラ、技術が急速に改善し、産業革命以来の生産性と所得の差は消滅する。1990年から2010年に、一人当たりGDPで見たアメリカと中国との差は、29倍から6.2倍に縮小した。2015年には4.3倍になるだろう。
人民元の為替レートを操作しているという下院決議は、アメリカの中産階級消滅や9.1%の失業率に対する強い不満を示している。しかし、グローバリゼーションは発展途上諸国にもグローバル・エリートに参加する機会を与えた。
WSJ OCTOBER 14, 2011
Anchoring Land Rights in China
By TIM HANSTAD
l 世界経済の変革
The Observer, Sunday 9 October 2011
The financial crisis: without demand, the economy is doomed
NYT October 10, 2011
This Time, It Really Is Different
By JOE NOCERA
Daniel Alpert, Robert Hockett, and NourielRoubini が書いた新しい政策論争の提案、“The Way Forward”の紹介です。・・・
金融危機の影響は、今度こそ、大きく異なっている。なぜなら近代世界経済の構造変化と重なっているから。そのもっとも重要な要素は、中国、インド、ロシアなどが、世界市場に統合されたことだ。かつて5億人であった開発諸国の労働者に、世界市場を介して20億人の労働者が加わった。
それだけでも、賃金の停滞や所得分配の不平等化、アメリカの労働供給過剰に関係あるだろう。さらに、低利融資によるバブルとその破裂が加わった。人々は支出を恐れ、住宅価格は下がっている。
財政赤字の削減を超党派委員会に委ねて、景気を悪化させる短期的な政府支出の削減を回避するべきだ。むしろ、今こそ長期のインフラ投資にとって好機である。また、アメリカ国民に住宅債務の負担軽減をもたらすべきだ。そして、グローバル・インバランスを解消するには、IMFが管理する世界通貨が必要だ。
Project Syndicate 2011-10-13
The Instability of Inequality
Nouriel Roubini
世界中の抗議運動には関連性がある。中産階級や労働者たちは生活水準の低下や不平等に怒っている。所得分配の不平等と最終需要の不足が不況を悪化させている。それはカール・マルクスが主張したものだ。グローバリゼーション、規制のない金融資本主義、そして労働から資本への富の再分配(搾取・窮乏化)が資本主義システムの死をもたらす、と彼は論じた。
大恐慌の前でも、ヨーロッパの啓蒙的な「ブルジョア」階級は、革命を避けるために、労働者の権利を守り、賃金や労働条件を改善し、福祉国家が富の再分配や公共財を供給した。共産主義や社会主義、人民革命を恐れたリベラルな資本主義の改造という試みを、しかし、サッチャーとレーガンは破棄してしまった。
今や、自由放任的なアングロサクソン資本主義の失敗は明らかだ。市場と公共財供給とのバランスを回復し、規制のない金融市場や、債務に依存した福祉国家ではなく、不平等の拡大をさえたアジア型の成長モデルが優位にある。
市場と国家の役割は見直されるべきだ。
WP October 10, 2011
How to disarm a nuclear North Korea
By Victor D. Cha
北朝鮮の核開発を放置しておくことは極めて危険である。アメリカは交渉を再開するべきだ。韓国や日本が反対しても。
l アメリカの外交・安全保障
WP October 11, 2011
Can the U.S. restore its might in the Asia-Pacific region?
By Fred Hiatt
FP NOVEMBER 2011
Napoleon's Curse
BY IAN BURUMA
アメリカ外交のナポレオン的側面がある。キリスト教的な伝導・布教の精神だ。それは1989年以降、世界を再編しようとしてきた。それは同盟諸国に大きな負担を強いた。そしてそれには代償がともなった。社会の軍事化や予算の制約。
東アジアでパックス・アメリカーナが続いているのは、日本が憲法を変えず、中国が現状維持を好むからだ。日本が米軍基地を接収した後、何が起きるのか?
アメリカの偏在という幻想にもかかわらず、アメリカの衰退は加速する。
FP NOVEMBER 2011
The Perils of Loose Living
BY HELEEN MEES
FP NOVEMBER 2011
Cashing Out
BY FAN GANG
FP NOVEMBER 2011
America's Pacific Century
BY HILLARY CLINTON
この10年、アメリカはイラクとアフガニスタンに莫大な資源を投下してきた。その地域から撤退することで、今後10年間にアメリカはその指導力を発揮し、利害を確保するため、アジア太平洋地域に資源を投下する。
アジア太平洋地域が世界政治の方向を決める。そこには太平洋とインド洋があり、物資の輸送と戦略にかかわる重要性を持つ。世界人口の半分が済み、世界経済の成長のエンジンであるとともに、温暖化ガスの最大の発生源である。アメリカの主要な同盟国とともに、中国、インド、インドネシアのような重要な新興諸国がある。
この地域に成熟した安全保障と、安定性と繁栄をもたらす経済的なアーキテクチャーが完成するまで、アメリカの関与は欠かせない。第二次世界大戦後にアメリカが大西洋世界に対して行ったように、同じことを太平洋とアジアに対して行うときだ。
ヒラリー・クリントン国務長官が、アメリカのアジア太平洋戦略を主張します。
FP NOVEMBER 2011
The Myth of American Exceptionalism
BY STEPHEN M. WALT
アメリカの「例外主義に関する5つの神話。
1.前例がない。2.他国の支配よりも良い。3.特別な優位がある。4.公共財への責任。5.神に導かれて。
l ミルトン・フリードマン生誕100周年
Project Syndicate 2011-10-11
Milton Friedman’s Magical Thinking
Dani Rodrik
来年は、ミルトン・フリードマンの生誕100周年である。金融政策と消費理論で重要な貢献をしたが、彼が有名であるのは、自由市場という思想を復活させたからだ。1980年以後、経済政策は劇的に変わった。市場に対する懐疑論が蔓延していたときに、フリードマンはわかりやすい言葉で私企業が経済的繁栄の基礎であることを説明した。18世紀にアダム・スミスがしたことを、フリードマンは20世紀に行った。
1980年にテレビ・シリーズ「選択の自由」“Free to Choose”が放映された。その後、世界経済の変化に応じて、マーガレット・サッチャーやロナルド・レーガンなど、多くの政治指導者が政府管理や規制を解体した。中国も自由市場を許し、ラテンアメリカでも貿易障壁が取り除かれ、国有企業の民営化が進んだ。1990年にベルリンの壁が崩壊したとき、かつての指令経済が自由市場へと転換したことは明らかだった。
しかし、フリードマンはあまり幸せな遺産を持たなかった。市場の素晴らしさを強調し、市場と国家を厳しく区別するあまり、政府を市場の敵にしてしまった。彼は、成功した経済はこれらの混合経済であった、という現実をわれわれに見えなくしたのだ。
フリードマン主義者たちは市場に必要な制度を大幅に過小評価した。政府は単に所有権と契約を強制すればよい。後は、市場の奇跡が起きるのを待つだけだ。しかし、現代の経済を動かす市場は、その成立、規制、安定化、合法化、において自動的ではない。政府が輸送やコミュニケーションに投資し、情報の非対称性や市場の外部性、不平等な交渉力を是正し、金融パニックや不況を抑え、セーフティー・ネットや社会保険の要求にこたえている。
市場が市場経済のエッセンスである、というのは、レモン果汁がレモネードのエッセンスである、というのと同じだ。純粋なレモン果汁は飲めない。水と砂糖を適度に加えるから美味しく飲める。政府介入が多すぎても市場は機能しないが、重要なのは正しいバランスだ。フリードマンが自由市場社会として賞賛した香港も、住宅のための土地供給に政府が大きな役割を担っている。
カメラの前で自由市場の素晴らしさを説明するため、笑顔で鉛筆を持った、小柄で、気取らないフリードマンの姿を記憶する人は多い。この鉛筆を作るために世界中で何千人もが働いた、と彼は述べた。黒鉛の鉱山で、木材の切り出しで、部品の組み立てで、最終市場でも、人々は働いた。その行動を協力させた中央管理局は一つもない。自由市場と価格システムがこれを実現したのだ。
しかし、30年後の現在、世界の鉛筆はほとんどすべて中国で生産されている。メキシコや韓国にはもっと優れた黒鉛鉱山がある。森林はインドネシアやブラジルにある。優れた技術はドイツやアメリカにある。確かに中国には安価な労働力が豊富にあるが、それはバングラデシュやエチオピアなど、低所得国にいくらでもある。
現在の鉛筆産業は、中国の国営企業なしにはあり得なかった。政府は、初期の技術投資や労働者の訓練を行い、森林管理を緩和し、木材を安価にした。豊富な輸出補助金と通貨市場(人民元の価値)に介入した。こうして中国企業は価格で優位に立った。中国政府は急速な工業化を支え、世界の分業構造を変えたのだ。
フリードマンはこうした政策を悔やむだろう。しかし、中国の鉛筆工場で働く何万人もの労働者たちが、もし政府による工業化政策がなければ、貧しい農夫のままであったことを思えば、政府の貢献は否定できない。
経済史上で重要なのは成功した政府介入であって、自由市場ではない。
l ミャンマーの改革
BLOOMBERG Oct 12, 2011
Is Myanmar Giving Democracy a Try?
By William Pesek
政府は反対の多いダム建設計画を撤回し、6300人以上に恩赦を与えた。Thein Sein大統領は国家管理を緩和し、反政府指導者Aung San SuuKyiとの対話を求めた。
アメリカ政府はまだ疑いを持ち、慎重だが、もし転換が進むなら、資源豊富なミャンマーへの民間投資が始まるだろう。近年、中国、インド、タイなどが、その港や鉄道、石油・天然ガスのパイプラインに投資している。
FT October 12, 2011
Change in Burma
釈放された囚人には、2008年、台風への破滅的な対策を批判したコメディアンZarganarなど、反対派も含まれている。
事態は昨年11月の選挙から急速に進んだ。解放されたMs SuuKyiはThein Sein大統領と面談した。新大統領が議会で演説し、いくつかの会場がテレビに放映された。
これに対して西側はどう対応するべきか? 注意深く、しかし、積極的に対応するべきだ。傍観してはいけない。ミャンマーの改革派を励ますことだ。そして、さらに改革が進むなら制裁を緩和する。
WSJ OCTOBER 14, 2011
Burma's Prisoner Shell Game
By DAVID SCOTT MATHIESON
NYT October 12, 2011
How to Stop the Drop in Home Values
By MARTIN S. FELDSTEIN
LAT October 12, 2011
U.S. should call Iran's bluff
By James M. Acton
FP OCTOBER 12, 2011
The Iranian Connection
BY MARTIN INDYK
FP OCTOBER 12, 2011
The Iran plot: How should the U.S. retaliate?
Posted By Will Inboden
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The Economist, October 1st 2011
The World Economy: Be afraid
The euro crisis: Is anyone in charge
Charlemagne: Keep the fire burning
Tobin tax and audit reform: The blizzard from Brussels
Economics focus: Tinker, tailor
(コメント) 世界経済は墜落の恐怖を味わっています。ユーロ危機もアメリカの財政赤字削減も、終わりが見えません。問題は大きく、それに比べて、政治家たちがますます小さく見えるから、人々の恐怖は高まります。
メルケル首相、トリシェECB総裁、サルコジ大統領、ファン・ロン・パイ・・・誰を責めるべきか? ドイツ政府はユーロ危機を救済すれば、より大きな危機を将来招く、と恐れます。イタリア政府がその懸念を実証した、と感じたから。
金融取引税(もしくは、トービン・タックス、ロビン・フッド・タックス)と産業政策に関しての記事があります。The Economistはどちらにも反対です。
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IPEの想像力 10/17/11
もし実現できたら、グローバリゼーションの姿が変わるだろう、と思うけれど、経済学者が余り支持しない、もしくは議論しない4つのテーマがあります。それらを最近見かけました。すなわち、産業政策、資本取引税、移民雇用制度、世界通貨、です。
l 不況地域(ギリシャ)や、好条件があるのに投資が十分に行われていない分野(グリーン)に、政府が介入して産業を振興できれば、素晴らしいことではないか?
高速道路や情報通信ネットワークへの大規模なインフラ投資や、環境保護技術、温暖化防止や脱原発の新エネルギーなど、技術開発と新興産業の育成によって各国は競争するでしょう。それが互いを害することがないようにルールを確立するなら、産業政策は支持されると思います。
l 短期的な取引を繰り返すことで利潤を増やす手法が市場の不安定化を増幅しているなら、これに課税して、もっと社会的に有益な分野で資本や税収を利用するべきではないか?
ウォール街占拠運動が世界の多くの都市に広まっています。政治家たちは経済システムや金融ビジネスが社会全体にとってどのように役立つのか、もっと積極的に説明し、当事者に説明させるべきです。失業者や貧困層が増えて、社会的に固定されるなら、政治対立は激化し、資産家の富に対する正当性も失われます。
l 地域や国による賃金・所得格差が大きく開いているとき、明らかに労働者が不足している分野に、外国人労働者が合法的に働ける制度を築くべきではないか?
外国人への偏見や差別がなく、言葉や文化の障壁が低ければ、国境を越えて雇用される労働者は大きな利益を実現するでしょう。非合法移民として搾取されるのではなく、様々な社会的・政治的権利が認められ、統合化が支援されることで、受け入れ社会の活性化にもなります。日本の農業や工場の単純労働において、勤労意欲に富む若い労働者がいくらでも雇用できれば、新興企業が増えるでしょう。過疎地域でも、老人介護やさまざまな社会的給付において人手が確保できます。
l 金融政策や競争力に関する政策手段である特定の国の通貨が、貿易や国際投資を媒介し、外貨準備として蓄積されることは不適当ではないか?
中国の政治指導者たちは、まだ国内の貧困や所得格差を解決しなければなりません。金融ビジネスの国際化よりも、高い成長率と雇用や輸出の安定を重視し、それゆえ、人民元を国際化することに強い政治的合意・イデオロギーを形成しないと思います。
アメリカは、国際通貨として、ドルの安定的な供給を続けられないでしょう。財政赤字、インフレ、金融危機、失業問題、貿易摩擦、ドル安、などを繰り返すようになれば、ドルからの逃避が起きるからです。貿易や決済、資本取引、金融センター、準備資産、などについて、ドルに代わる通貨が求められます。それは、ユーロのような地域的な共通通貨かもしれません。
もちろん、ユーロ危機によって、アジアの共通通貨や、ラテンアメリカ、アフリカ、中東など、地域通貨同盟の模索は、当面、大幅に後退するでしょう。
しかし、国際収支不均衡やバブル、急激な資本流入・流出を抑える仕組みが求められ、為替レートの調整や金利の決定に際して、各国の雇用拡大や工業化、財政再建の目標と対立するのを避ける手段が求められます。SDRの利用拡大や、商品準備通貨の導入、GDPなど、何らかの指標による証券の発行と主要国中央銀行の市場介入に関する合意があれば、ドルでも、人民元でもない、世界通貨が登場する時代になるはずです。
ノーベル賞授与式やミス・ユニバース、ダボス会議に欧米の白人ばかりが集まる時代は終わった(終わりが始まった)ように、アメリカの軍事力とドルによって築かれた国際秩序もやがて(急速に?)終わります。そして、それがアメリカにとっても住みやすい世界であるように、オバマ政権やクリントン国務長官はアジア太平洋における制度を構築する、という目標を掲げています。ヨーロッパで成功したように、今度はアジアでそれを支援する、と。
政治は過去の補償に筋道を立てるだけでなく、未来への希望が持てるような構想を示して、社会が持つパワーを結集させる舞台であるはずです。身近な集会でも、職場でも、国内政治や世界外交でも、日本は大きく劣っていることに不安を感じます。
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