今週のReview
10/10-/15
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ユーロ危機の新しい主張 ・・・アメリカの国家戦略 ・・・ウォール街を占拠せよ ・・・米中通貨紛争 ・・・アメリカ大統領選挙とユーロ危機、世界不況 ・・・スティーブ・ジョブズ死去
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l ユーロ危機の新しい主張
BLOOMBERG Sep 28, 2011
Euro Area’s Rescue Options Are Shrinking Fast
By Anil K Kashyap
状況の整理と解決策に関する整理です。その後の提案を読む前に、読むとよいでしょう。・・・
Frankfurt, Madrid and Londonの市場関係者と話し合って得た印象は三つある。1.現状維持は不可能だ。2.ユーロ圏は一層の統合と協力を進めるか、分離するしかない。3.ユーロ圏外の専門家は、ヨーロッパの大銀行が資本不足になったと考えている。先に行われたストレス・テストは政府債務のデフォルトを考えていなかった。
資本不足に対してはEFSFがある。その資金も増額された。しかし三つの問題が起きている。1.増額は小さすぎた。2.その増額にも反対する国がある。3.スペインとイタリアにも破たんの危険が示されている。
政策決定の機能麻痺が危機を悪化させている。ヨーロッパの政治家たちは一時的な解決策を示すだけで、最終的な結果に責任を負わない。この漸進主義が将来の選択肢を狭めてしまう。
近視眼的なアプローチは、増額を反対派との妥協の繰り返しにしてしまい、安定化基金それ自体への信頼を失わせた。
ユーロ債の発行も、銀行に対する救済資金を準備する有効な方策であった。しかし、ここでも政治家は反対した。特にドイツの憲法裁判所は議会にいかなる救済も禁止し、大きな障害を作った。
こうして現実にカノな選択肢は一つしかなかった。ECBによる新規債券の大規模購入である。しかし、これは伝統的な中央銀行家を怯えさせた。政府の債務を維持するために中央銀行が紙幣を印刷すれば、ハイパーインフレーションになる。特に、ドイツの金融政策スタッフが強く反対し、Juergen StarkはECB理事を辞任した。
ECBによる政府債券購入は、おそらくイタリア政府の債券発行で、市場売却に失敗することにより始まるだろう。その場合、政治家たちは「ブリッジ・ファイナンス(つなぎ融資)」をECBに求めるだろう。中央銀行は新しい機関が、おそらくESFSを修正するという形で、この債権を保有するように求める。同時に、財政状態の弱い、危機にさらされた国の政治家たちは、成長と財政再建を進める広範な改革を約束する。
そのシナリオも不確実だ。たとえば9か月たって、苦しい改革が決断され、ECBから融資は実行されるだろうか? この融資に納税者は反対するだろう。債務国の改革も国民に支持されないから実行されないだろう。
そうなればECBは永久に融資するだけの機関となり、ECBがその役割を拒否するか、そうでなければ、ドイツやその他の国はユーロを離脱する。
その決断は、慎重な研究や民主的な討議によってではなく、危機的な状況で行われるだろう。
・・・新しいアイデアを、読者は発見するでしょう。
Global Times | September 29, 2011
Debt crisis bump in road to EU political unity
By Agencies
中国はEUを助けるために介入するべきなのか? 中国の専門家がTongji Universityに集まってシンポジウムを開いています。・・・
EU経済・政治の管理能力、回復力、国際政治における役割が問われる。金融危機は一層の統合を進める契機になるかもしれない。しかし、現時点では危機回避が手遅れにならないよう行動するしかない。IMF専務理事、DSKの逮捕スキャンダルも、ドルを脅かすユーロに対するアメリカの攻撃であったかもしれない。
中国にEUを救済する力はないし、その義務もない。それは中国の役割ではない。
中国は、ECBやIMFとともにESFSの債券を購入できる。
guardian.co.uk, Monday 3 October 2011
The euro debt crisis must force a re-evaluation of capitalism
Tom Strohschneider for Der Freitag, part of the Guardian Comment Network
SPIEGEL ONLINE 10/03/2011
Merkel and the Euro
Is Germany's Finance Minister Going Rogue?
SPIEGEL ONLINE 10/03/2011
Former Obama Adviser
Euro Crisis 'Could Become a Global Conflagration'
Austan Goolsbee
オバマ大統領の新しい経済顧問Austan Goolsbeeがインタビューに応えます。
ユーロ危機はアメリカの銀行にも波及しかねない。銀行の自己資本強化が必要であるし、危機の波及を抑えるために中央銀行は介入するべきだ。メルケル首相の対応が非常に重要だ。
最初に資金を準備することが必要だ。これはどの国でも非常に不人気であるが、金融システムの崩壊を防ぐために避けられない政策だ。
ギリシャのデフォルトは非常に危険だ。その債権を保有する銀行に取り付けが起き、自己資本を強化しないままでは、銀行システムが危険になる。
オバマ政権のスタッフも、ドイツ国民が救済を嫌うことを知っている。アメリカでもAIGを救済したとき、そうだった。
ドイツが輸出超過しているからと言って、ギリシャの放漫財政の責任を負うべきなのか? もし切り下げでなきのであれば、EUは東西ドイツ再統一のモデルに従うべきだ。すなわち、赤字国への巨額の財政移転である。
2008年に金融危機を起こしたアメリカの責任を無視して、また、巨額の財政赤字に対する格付けの低下を無視して、アメリカ政府はヨーロッパに説教できるか? ・・・オバマ政権はヨーロッパに説教しているのではないと思う。
オバマ大統領も決断力を欠き、すべての党派から嫌われているのではないか? 再選のためにヨーロッパを非難するのか? ・・・それは違う。ユーロ危機は2008年の危機と異なる。メルケル首相だけでなく、ヨーロッパ全体が危機解決への決断を欠いている。
SPIEGEL ONLINE 10/04/2011
A 'Half-Baked' Deal
Former German Chancellor Considered Buying East Germany
By Jan Friedmann and Axel Frohn
FT October 4, 2011
How to keep the euro on the road
By Martin Wolf
ユーロ圏の問題は、危機を処理するメカニズムを欠いていたことだ。それは加盟諸国が意見をまとめられず、初期の成功に酔っていたから放置されてきた。
問題は、まず、「ストックとフロー」であり、次に、「融資と調整」にある。
これまで融資によって繁栄したように思っていたが、それは間違いだった。ストックが疑われたら、返済できない部分は切り捨て、残りのストックは融資され、調整を進める。こうして支出が再開されるようにして、成長を回復しなければならない。
民間によって融資できない部分は、公的に財源を投入する。融資をしなければ、返済は支出の抑制によって行われる。これは古典的なデフレ政策であり、嫌われるものだ。それしかない、と誰も理解していなかったし、政治家も説明していない。あるいは、ユーロ圏を出るしかない。
つまり、問題はフローなのだ。経済が競争力を大きく失ったせいで、ストックを融資できないし、調整も行えない。ユーロ危機では、その道筋が見えない。
FT October 4, 2011
A slippery rescue
Project Syndicate 2011-10-04
Bleed the Foreigner
Harold James
アメリカの金融危機は複雑に組み替えられた債権が原因だったが、ユーロ危機は違う。それは世界で最も古い金融手段、国債が原因だ。
債務問題の秩序ある処理を妨げるのは、見知らぬ者への債務を拒む気持ちがある。住宅の債務は、今や地元の銀行に負っているのではない。難解な金融技術で世界中にばらまかれている。同様に、ギリシャの債券もほとんどが外国で保有されている。
スペインもフランスも、近代初期にはデフォルトを繰り返し、ギリシャも1830年に独立してから政治的混乱が続いたから、歴史的にはデフォルト常習犯だ。しかし、そのような歴史の知識ではなく、本当に問題になるのは債権者のアイデンティティである。近代初期にスペインもフランスの王様がデフォルトしたのは、その債務を外国人に負っていたからだ。
オランダとイギリスは違った。彼らは外国の債権者より国内債権者に依存していた。オランダのモデルはイギリスに輸出されたものだ。すなわち、1688年の名誉革命で、カソリックのジェームズ2世を廃位し、オランダ人でプロテスタントのオレンジ公ウィリアムをイギリス王位に就けた。それは同時に財政・金融の革命であった。
債権者階級が議会に代表を送って、財政を常に管理するようにした。彼らは財政を健全化し、返済を確実にしたのだ。立憲君主制は、近代初期の専制君主がその目印にしたほどの華美な宮廷生活と軍事支出を、無駄使いとして、やめさせた。
こうして、財政革命は、近代の政治秩序の上に築かれ、全面的な民主制へと移行する前段階であった。そこにおいては債権者が政治を支配したのだ。
1945年以後、豊かな工業諸国の財政は、最初、圧倒的に国内で賄われ、1688年の原則が生きていた。しかし、その後、大きな変化が生じた。1970年代から外国融資が利用され、1980年代半ばに、アメリカが純債務国になった。ますます外国人に多くの債務を負うようになった。
ヨーロッパもこれを追いかけ、1980年代に金融を統合し、1990年代には新通貨がイタリアやスペインの政治家・債務者を喜ばせた。それでも1990年代後半、ユーロの導入まで、債務の多くは国内に負うものだった。しかし2008年、金融危機の直前には、ポルトガル債務の4分の3、スペインやギリシャ債務の半分、イタリア債務の40%を、外国人に負っていた。
外国人に負う債務額が増えれば、政治家は外国人に負担させることを考える。1930年代の世界恐慌では、債権者を非難し、デフォルト(返済拒否)を広める強い政治的感情があった。
エコノミストが通貨同盟には財政統合が必要だ、という深い意味を考えるべきだ。債務というのは、それに対する共同社会の、集団的責任という感覚がなければ、めったに維持されないものだから。その感覚こそが、債権の没収を抑制させ、債務を確実かつ安価にするメカニズムなのだ。
現在の危機を出るには、ヨーロッパ人が政治的責任と管理の集中を受け入れ、負担を共有することで、将来の債務が確実に返済されることを示すことだ。
SPIEGEL ONLINE 10/05/2011
The Ticking Euro Bomb
How a Good Idea Became a Tragedy
SPIEGEL ONLINE 10/05/2011
'Whole Set of Options'
IMF Offers to Dramatically Expand Euro-Zone Help
FT October 5, 2011
Untreated, the Greek infection now threatens Europe’s core
Mohamed El-Erian
ユーロ圏の危機は、医者の診断ミスと治療ミスで風邪から頭脳を侵され生命も危険な状態である。それは危機の電線、低成長、グローバルな銀行システムを介してアメリカにも及ぶ。
ヨーロッパの銀行システム強化と政府による財政・経済改革を急ぐべきだ。さもなければ、世界亭な規模で成長を損ない、雇用を破壊し、財政の健全さを悪化させ、社会的な結束を失わせる。
FT October 5, 2011
It’s time for plain-speaking to Europe’s electorates
Howard Davies
ユーロ危機の複雑さと、富や所得の分配に与える影響を思えば、政治指導力が危機の解消に明確な方針を示さないことは驚くことではない。
しかし、政治家たちはシンプルな真実を有権者たちに説明しなければならない。それができなければ必要な手段や技術的な解決策も進めることができない。
債権諸国の政治指導者は特に三つのことを説明するべきだ。
まず、ある国や諸国がユーロを離脱すれば、危機は解消する、という思い込みは間違っている。通貨的な「離婚」は単純な問題ではない。ラテンアメリカや東側のケースを間違った類推に利用している。
現在、ユーロ建ての契約が、離脱によってどうなるのか、だれにも分からない。それは世界中に存在しており、新通貨に転換されねばならない。契約者の国籍、居住地、契約した場所、何を基準に転換し、どの裁判所が最終的に決定できるのかもわからない。
何年もたてば、ギリシャは競争力を回復し、激しい緊縮財政とともに、債務を大幅に減らせているかもしれない。しかし、今、ユーロ圏を離脱するボタンを押せば、飛行機全体が地面に向けて墜落するだろう。
だから、三つのことを説明するべきだ。1.既存のユーロ圏のガバナンスは微調整できない。中期的に、財政の連邦制へ向かうことは避けられない。ドイツの政治家たちも、急速に、それを認め始めている。
2.いくつかの政府には債務の免除が必要だ。戦後賠償であれ、債務支払いであれ、それを社会的・政治的に強制することの(恐ろしい)結末はよく知られている。
債権国の指導者は責任を分かち持つことを有権者に説明するべきだ。融資する意思がなければ、債務はできないし、輸出もできなかった。融資も輸出もなければ、債権国の経済はもっと苦しかっただろう。債務免除は慈善・チャリティーではない。通貨同盟の内部では必要なのだ。それが誰によって、どのような条件で行われるか、すべてが状況次第である。
3.ECBは日々の経済活動を維持するための資金を供給するべきだ。自分たちの顧客に対する融資を続けるべきだ。これは銀行の救済ではないし、モラル・ハザードも起きない。他国の中央銀行は、政府債券を購入して市場を維持する。有権者に、納税者としてそれを支持するよう説明するべきだ。
FT October 5, 2011
Save the sovereigns to save the banks
Project Syndicate 2011-10-05
A Liquid Europe
Daniel Gros
投資家たちが、EFSFは周辺諸国だけにしか準備していない、ということに気付いて、ユーロ危機は、悪化した。スペインやイタリアの財政赤字を融資できないのだ。他方で、ECBは政府債券を大規模に購入したくない。
つまり、ユーロ圏には、政府に対する流動性供給に不安があるのだ。「正常な」経済では、通貨当局が財政当局に資金の枯渇を生じることはない。政府は、潜在的に、いつでも中央銀行の資金供給に依存できるからだ。しかし、ユーロ圏の政府は危険な状態にある。一方では非常に長期の資産(国民への課税権)をもち、他方には短期の、多くは毎年借り換える債務を負っている。銀行も、同様に、すぐに市場化できない長期の債権を持ち、短期の債務を負っている。
一国の銀行には流動性を供給する制度がある。ユーロ圏にも政府債務の不安を抑えるメカニズムが必要だ。唯一、ECBにそれができる。
しかし、いつものように、そこには法的・政治的な障害がある。だが、政治家ならだれでも、行動しなければ大きなリスクがあるとわかっている。ECBが政府を救済できないという法的な障害も克服可能だ。
ドイツ政府とECBがそれを認めて、本格的な改革に進むべきだ。
SPIEGEL ONLINE 10/06/2011
The Ticking Euro Bomb
How the Euro Zone Ignored Its Own Rules
SPIEGEL ONLINE 10/06/2011
Uncommon Currency
A Possible Scenario for the End of the Euro
A Commentary by Henrik Müller
NYT October 6, 2011
The Trouble With Greece
FT October 6, 2011
America’s six key lessons for a ‘euro Tarp’
By Gillian Tett
アメリカの銀行家や政府関係者はヨーロッパについて、「だから言っただろう」と苦情を言う。アメリカの2008年の金融危機処理から、今、ユーロ危機処理にかかわる者が学ぶべき教訓とは、何だったのか?
ユーロ家の銀行では保有債権(特に政府債)の質が悪化している。いくつかの銀行は資本不足の疑いがある。そうであれば、解決策は「ユーロ版TARP」の創設であろう。ストレス・テストによって銀行に資本を注入する。
しかし、それをまねる前に、それが有効に機能するための重要点について、私見を列挙する。
l 十分な規模が必要だ。
l 政府財政・金融当局の協力が欠かせない。
l 過度の民主主義を求めてはならない。
l 資金の利用は弾力的であるべきだ。
l ストレス・テストは、明確なリスクを人々が意識しているときに有効だ。
l 7000億ドルの資金を失うことをアメリカ人は心配したかもしれないが、いったん資金が投入されて、安定化すれば、資産価格は回復し、500億ドルの損失で済んだ。
しかしヨーロッパには、ポールソンのような「バズーカ」を要求する役職・人物がいない。おそらくトリシェだけだ。
FT October 6, 2011
Europe’s crisis is all about the north-south split
Alan Greenspan
ユーロ圏が直面する危機は、労働コストや物価だけではない。それは文化の危機だ。金利差を観れば、ユーロ圏の南ではギリシャがドイツよりも1960ベーシス・ポイント、イタリアは370ベーシス・ポイント高い。ユーロ圏の南ではオランダやオーストリア、フィンランド、フランスが40から80ベーシス・ポイントだ。ユーロ圏は南北に分裂した。
1999年、ユーロが成立して以来、2011年初めまで、北のユーロ圏は南の消費に補助金を支払ってきた。何の証拠もないのに、ギリシャ人はドイツ人のように働くと信じたのだ。人間の行動は容易に変わらない。1990年代も、ユーロ成立後も、南欧の物価はドイツよりも早く上昇した。ほとんど変わらなかったのだ。
その傾向は2008年の金融危機は出変わらなかった。その後、物価は北でも南でも安定した。
北欧は、歴史的に、高貯蓄率と低インフレ、目先の消費よりも長期の投資を重視する文化があった。他方、南欧のギリシャやポルトガルは、マイナスの貯蓄率、過剰消費の文化を共有している。
南欧諸国が北欧文化に転換できるかどうかはわからない。しかし、北欧諸国に限らないユーロ圏が存続するには、ユーロ圏の国がすべて同様の文化を採用しなければならないだろう。もしそうでなければ、南欧が北欧を利用して浪費するだろう。
FT October 6, 2011
Save the euro – let Greece default
By Philip Stephens
ギリシャを離脱させる時だ。ユーロの崖に指先でぶら下がるのでは惨事を待つだけだ。今、ヨーロッパには、ギリシャの離脱を管理するプランが必要だ。
二つの問題がある。債務危機に直面する諸国の政府と、競争力を失ったデフレ経済だ。最初の問題を解決しても、第二の問題が解決できるとは限らない。
ユーロ圏の今の救済策は、単に、決断を先送りするものだ。もはや連鎖のダイナミズムはユーロ圏の中枢、独仏の銀行に向かっている。
管理されたデフォルトは、容易ではないし、リスクを含むものだ。そうでなければならない。政治家たちはリーマン・ブラザーズの悪夢を思い出しているだろう。ギリシャ債務の50%や60%も免除する結果が管理できるとは、保証できない。しかし、確実に言えることは、管理されないデフォルトがもたらす経済的・金融的な破局的影響だ。
リスクと衝撃を緩和するために、ヨーロッパは協力して行動するべきだ。銀行の資本を増強し、ECBは危機に対する行動を取る。政府は資源を投入しなければならない。
スペインやポルトガルは近代化に努めてきたが、ギリシャはそうではない。彼らが近代化に取り組むか、変わらないことでユーロから離脱するか、それはギリシャの選択だ。
WSJ OCTOBER 7, 2011
Europe and Its Money
WSJ OCTOBER 7, 2011
Lessons of the Irish Comeback
By MICHAEL HASENSTAB
Global Times | September 29, 2011
Time to teach those around South China Sea a lesson
By Long Tao
1970年代には南シナ海の領土問題は起きなかった。1970年代、ベトナムが南北統一してから、問題は起きるようになった。それにアメリカの意図が加わった。この地域にかかわる諸国では軍備拡大競争が起きている。しかし、この地域に紛争が起きることを最も心配しているのは、資源や貿易に頼る中国だ。
中東などに関わるアメリカの威嚇は、それほど重視しなくてもよいだろう。紛争が起きるかもしれない。2008年のロシアがカスピ海域で示したように、大国の行動はその後、小国に影響する。
l アジアの女性輸出
BLOOMBERG Sep 30, 2011
Global Women Have a Heroine in Hong Kong
By William Pesek
Arlie Russell Hochschild and Barbara Ehrenreichが、新著でアジアの指導者たちを批判している。毎年、第三世界から数百万の女性たちが第一世界へ、家事労働、看護・介護、売春といった仕事を求めて移動している。
その典型は香港だ。彼らの居住資格を違法として追放するより、その労働を正当に評価するほうがよい。
l アメリカの国家戦略
WP October 1, 2011
“That Used to be Us” by Thomas L. Friedman and Michael Mandelbaum
By Robert D. Atkinson
新著の紹介です。「スプートニク・モーメント」に慣れてしまったアメリカ人は、もう一度この本で「目覚まし」の警報を受ける。
アメリカが抱える4つの課題にこたえるべきだ。1.グローバリゼーション。2.情報革命による職場のミスマッチ。3.地球温暖化。4.財政赤字。
グローバリゼーションや中国との競争で我々は苦しんでいるのではない。アジアの豊かさは我々の豊かさにつながる。我々の職場と平等社会、豊かな工業労働者を奪ったのは情報技術革命だ。それは同時に、我々の生活を快適にした。
豊かな国に将来の競争力と雇用をもたらすのは環境技術だ、という。しかし、その証拠は示さない。どうすればよいか? 簡単だ。排出権取引か、炭素税を導入し、温暖化ガスの削減を目指す。その自己矛盾し、不完全な分析は、アメリカの成功を導く対策にも示される。教育、研究開発、インフラ整備、そして、スマートな規制改革。
単純化と誇張に満ちている。たとえば、教育への投資を強調し、中国と比較する。しかし、アメリカの労働者に十分な職場がないのは、彼らの教育が不足しているからではない。
「創造的破壊」に逆らってはいけない、という。失業者たちは彼らの主張に何の解決策も見ないだろう。彼らが言及しないことは多い。アメリカの実行法人税率は高すぎる。知的財産は奪われ、技術移転を強制され、保護主義や通貨価値の操作によって、アメリカは雇用を奪われている。金融市場や企業の短期的利益を重視する姿勢も批判していない。
NYT October 1, 2011
How Did the Robot End Up With My Job?
By THOMAS L. FRIEDMAN
WSJ OCTOBER 1, 2011
America's Enduring Ideal
By PAUL RYAN(chairman of the House Budget Committee)
Jeffrey Sachs の"The Price of Civilization" に対する批判です。それは、18世紀のジャン・ジャック・ルソーも行った、財・サービスの自由取引、自由企業への非難である、と。
Sachsは、経済危機の原因を、アメリカの政治・経済エリートが市民的な価値を失った、道徳的な危機である、と主張する。もっと「心の通う経済」が必要だ。そのために税制と規制を改革するよう求めている。雇用をもたらすためには、もっと高い税率が求められる。ドイツやスカンジナビア諸国が彼の理想なのだ。
それはジェレミー・ベンサムの「幸福」を否定し、アメリカ建国の原理を否定する。
FP Tuesday, October 4, 2011
The evolution -- or devolution -- of American economic statecraft?
Posted By Daniel W. Drezner
アメリカ外交の中心に位置する「経済国家戦略economic statecraft」に注目する。ヒラリー・クリントン国務省は、グローバルな経済政策を指導するつもりだ。
現在の景気悪化に対処するには、関心を財政赤字から、雇用を刺激するグローバルな成長戦略に向ける必要がある。ほかにも、ユーロ危機を封じ込め、中国やインド、ブラジルなど、新興諸国からの挑戦に対抗しなければならない。
そのためにもクリントンは、国務省をグローバル経済学・経済政策で武装する。彼女の顧問は述べた。新興諸国に対しては、国家安全保障と経済安全保障との違いは消滅するだろう。彼らの安全保障とは、その経済的利益を高めることだ。
われわれは経済の回復と成長を追求しており、経済学が外交政策の優先課題になる、とクリントンは述べた。「経済進歩はますます強力な外交関係に依存し、外交の進展はますます強力な経済関係に依存する。だからこそアメリカはすべての対外的な関係を駆使して、相互の成長を支持するのだ。」
しかし、「経済国家戦略」が有効なのは、その国に経済力があるからだ。すなわち、大規模で、ダイナミックで、成長する経済が輸入を増やす。金融市場の深さが様々な需要にこたえ、ショックを吸収する。援助を潤沢に提供し、経済発展の優れたモデルを提供できる。
国務省はハリケーンに突入するだろう。議会は通商政策を阻止している。ドーハ・ラウンドは死に、TPPも実現していない。経済成長は回復せず、ダイナミズムを失ったままだ。資本市場も神経質になっている。
財政赤字削減で民主・共和両政党が協力した最初の成果は、援助の大幅削減だ。オバマとクリントンの「スマート・パワー」は財政赤字によって消滅し、防衛予算も削減する。世界におけるアメリカの経済力は下降しつつあり、アメリカの政治経済モデルはその魅力を失った。
このようなときに、「経済国家戦略」か?
l ウォール街を占拠せよ
NYT October 1, 2011
The Bankers and the Revolutionaries
By NICHOLAS D. KRISTOF
「ウォール街を占拠せよ “Occupy Wall Street”」の運動に賛同する人々はマンハッタンの金融街に集まった。そこの公園を革命キャンプに変えようとする。
“Occupy Wall Street” もちろん、それは一種のジョークだった。しかし、数週間で牽引力を帯びてきた。シカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ワシントンでも、同じような占拠が起きている。
銃弾に立ち向かうわけではないし、倒すべき独裁者もいないが、それはカイロのタハリール広場に少し似ている。同じように疎外された若者たちが、トウィッターや同じようなソーシャル・メディアを通じて賛同者を引き寄せる。何よりもそこには若者たちの同じ怒りがある。破綻し、腐敗し、機能しなくなった、無責任な政治・経済システムへの不満だ。
「私は抗議する者たちの反市場感覚には賛成できない。銀行は重要な機関であり、それが正しく機能するなら、銀行によって資本が最善の用途に向かい、私たちの生活水準を向上させる。しかし同時に、銀行の膨張するレバレッジは好況時に彼らの利潤ばかりを増やし、不況になればリスクを膨張させた。」
リスクは社会が負い、利益は彼らが独占した。住宅債権を証券化して銀行は儲けたが、結局、それは政府の債務を増やし、ホームレスを増やした。
“Occupy Wall Street” ・・・そこには何の要求もない、と言われる。しかし、彼らは社会の要求の変化を示している。そのいくつかはすでに明らかだ。
金融取引への課税。税制の抜け穴をふさぐ。巨大銀行のリスクから自衛する。
LAT October 4, 2011
Occupy Wall Street's message
guardian.co.uk, Tuesday 4 October 2011
Occupy Wall Street: echoes of the past as protesters grasp the future
Ana Marie Cox
FT October 4, 2011
China’s delight at Wall Street Revolution
by David Pilling
中国の新聞が民主主義的な大衆抗議活動に賛成した。これは喜ぶべきだろう。China Dailyがウォール街の占拠に賛同したのだ。
左派のアカデミックな集団も占拠に賛同した。毛沢東派のウェブサイトにはトマスモアのユートピアが翻訳されている。ウォール街の占拠は、世界革命の進展だ。1%の資本家たちが利益を独占している。企業帝国ではなく、民主的な国家を求める。
資本主義的なエリートたちの支配に反対し、団結せよ。バラク・オバマ、デイヴィッド・キャメロン、胡錦濤、お前たちのことだ。
WP 10/04/2011
What Occupy Wall Street could learn from the Tea Party
By Jonathan Capehart
FT October 5, 2011
Wall Street protesters should dig in
By John Gapper
WP October 5, 2011
Rescuing America from Wall Street
By Harold Meyerson
たとえ遅れてでも、運動が起きたことを喜ぶべきだ。アメリカをウォール街から取り戻そう。運動は広がり続けている。市民組織の希望に、ウォール街の占拠が火をつけた。
銀行や金融ビジネスに対する抗議活動は金融危機以来続いてきた。しかし、ウォール街の占拠で国民の想像力は刺激され、ようやくメディアも注目したのだ。
そこには計画もなく、様々な集団と潮流が混合する。彼らは皆、銀行が彼らにしたことに怒っている。経済的不平等と金融家による支配に対する反攻が始まった。The New Bottom Line groupsは、それを具体的な要求にしている。学生と住宅の債務を削減すること。金融取引に課税すること。1932年のグラス=スティーガル法を再建すること。
われわれの経済を、もっと安定した、もっと生産的なものに変えることだ。
LAT October 6, 2011
Occupy Wall Street: The new Populists?
By Christopher Ketcham
FP OCTOBER 5, 2011
From Tahrir Square to Wall Street
BY JOSHUA E. KEATING
彼らがタハリール広場から学ぶことは何か?
BLOOMBERG Oct 6, 2011
Anti-Wall Street Protests Ignore Legitimate Gripe
By Caroline Baum
単一税率を主張してはどうか?
NYT October 6, 2011
Confronting the Malefactors
By PAUL KRUGMAN
彼らの行動はいよいよ無視できないほどの規模になった。彼らの感覚は間違っていない。ウォール街は、経済的にも政治的にも、破壊的な力である。政治家や評論家たちには、正義の実現に対する冷笑主義がある。
抗議する人たちが奇妙なコスチュームで、愚劣なスローガンを連呼している、という批判があるかもしれない。この運動には入場制限などないのだから。むしろ、政府や官僚に守られた莫大な利益を、感謝することもない人々について、もっと憤慨するべきだ。スーツを着た人々だけが知恵を独占し、論争に参加できると思うのは偏見だ。
彼らの具体的な要求がないことを非難するのは間違いだ。彼らの主張は明確である。それを政策の細部にまで加えるのは専門家や政治家の仕事である。彼らはこう叫んでいる。「働くアメリカ人のために債務を削減せよ。」 「なぜなら、それは経済的な正義を実現することであり、それと同時に景気回復と雇用をもたらすから。」 「減税よりも、インフラ投資を増やせ。」
ここには政治的な機会がある。オバマ政権は政治的な善意を抑えて、銀行家にやさしい政策を採用してきた。銀行家は景気を回復できず、オバマを嫌っているけれど。しかし、今やオバマの党派が回復する。この抗議運動を真剣に受け止めるべきだ。
政治家たちがなすべきことに突進するよう、彼らの尻を突き刺すことに成功したら、ウォール街の占拠はその目的を達成する。
NYT October 6, 2011
Occupied Wall Street, Seen From Abroad
By ANNE-MARIE SLAUGHTER
彼らはチュニジアの青年、Bouaziziのように、焼身自殺はしていない。しかし、金融危機と不況によって中産階級の夢はつぶされた。彼らが希望と変化を託して選んだ大統領も、その結果を変えられず、彼らは裏切られたと感じている。一握りの富裕層だけがますます豊かになり、多くのも羽野は貧しくなった。
問題の見えにくさは解決を難しくする。アメリカ人の6人に一人は貧困に分類され、大恐慌以来、最悪だ。しかし、政治システムは二大政党の対立によって機能マヒを続けている。政党の支持しない候補が当選する可能性はほとんどない。誰も自分たちの声を代表してくれない。彼らは政治システムの外に自分たちの表現を求めた。いくつかの州や都市で、選挙制度改革が試みられている。
中東のメディアが最初にこの占拠運動に注目したが、それは彼らがアメリカの政治死す天武をよく理解していないものだった。自分たちの政治解釈で他国を見ている。
しかし、中東世界のジャーナリストたちは政治から疎外された民衆をずっと見てきた。ウォール街の占拠に関する彼らの解釈は、もしかすると、アメリカ人よりも優れているだろう。
NYT October 1, 2011
An Illegal and Counterproductive Assassination
By YASIR QADHI
The Guardian, Tuesday 4 October 2011
On the world stage, Obama the idealist has taken fright
Simon Tisdall
l 資本主義の改造
The Observer, Sunday 2 October 2011
Good capitalism does exist. And it's more crucial now than ever
Will Hutton
イギリス経済がかつてない沈滞状態に苦しむとき、労働党大会でEd Milibandが演説した。人々の債務は膨大で、景気が回復する中でも需要の伸びは非常に遅く、北海油田は減少し、イギリスが依存する唯一の貿易ブロックであるEUはむしろ需要を奪い取る。大幅なポンドの減価があったのに巨額の貿易赤字があり、経済の大部分が公的部門や福祉の所得移転に依存している。
過去30年間支配的であった、資本主義、のブランドが破綻したのだ。
Ed Milibandは「ネオリベラリズム」との戦いを称賛する。トニー・ブレアの様々な名演説にもかかわらず、労働党はイギリス経済の機能不全を容認してきた。Ed Milibandの演説は、資本主義を支持し、企業に友好的なものだ。しかし、彼は資本主義の良い部分と悪い部分を明確にする。「生産者」、「略奪者」、「資産の剥ぎ取り屋」である。
こうした言葉で様々な企業のCEOを非難し、あるいは、賞賛するだけではない。どのような気候が望ましく、どのような動機づけが間違っているのか、彼は議論する。よい資本主義は企業の所有制から違うだろう。企業の利益関係者とは、単に、その市場で資産価値を最大にする責任だけ負うのではない。彼らは、重役たちの報酬を増やし、投資を怠り、革新を欠いてきた、という失敗にも責任を負う。
金融規制がもっと銀行に厳しく問うべきなのは、経済的、社会的に有益なことのためにリスクを取れ、ということだ。中小企業やインフラのために融資する新しい機構が必要だ。技術や革新を助けるナショナル・センターを政府は各地に設けるべきだろう。
革新とリスクに挑むのは、社会である。貧しい労働者階級の家庭の子供たちも、学ぶことのできる平等な機会を得なければならない。社会的な利益の実現と経済的成果とは好循環をなす。
Ed Milibandの演説は、資本主義のほかに選択肢はない、という主張に反対した。資本主義には良いものも悪いものもあり、改善するべきなのだ。民主主義はすべてのものの利益に奉仕する。
l 米中通貨紛争
NYT October 2, 2011
Holding China to Account
By PAUL KRUGMAN
中国の通貨操作に対する議会による制裁法案について、アメリカの貿易赤字が減ることを理由に、支持します。
もしアメリカに住宅バブルがなく、完全雇用が達成されているとしたら、何が変わるだろか? 貿易赤字がもっと縮小するだろう。アメリカ人は輸出する以上に、毎年、5000億ドルも多く輸入する。アメリカ経済を健全化するためには、ドルが他の通貨に比べて安くなる必要がある。
通貨価値を下げることは経済を強くするために必要な場合がある。イスラエルやスイスがそうしたように。アメリカには世界的な役割があるが、ドル安はアメリカの国益に沿う。
人民元の価値を批判するとき、中国当局の行動を精査する必要はない。外貨準備の蓄積だけで十分だ。中国がアメリカの債券を売るだろうという心配も、むしろ逆の状況が問題であるから意味がない。アメリカ企業が中国で生産して輸出しているとしても、関係ない。それは形を変えた増税だ、という反対もある。いずれもアメリカの国益を無視している。
確かに、中国のインフレはその通貨の過小評価を徐々に緩和するだろう。しかし、数年を要する。人民元への制裁は、グローバルな貿易戦争と失業増大につながる、という不安を聞く。それは正しい。しかし、アメリカ国内の高失業は続いている。
FP OCTOBER 3, 2011
The Top 10 Unicorns of China Policy
BY DANIEL BLUMENTHAL
米中関係に関する10の神話・迷信・ユニコーンを批判する。
中国を批判すれば米中対立が激化し、反米国家にしてしまう? 台湾問題をあきらめれば米中融和が進む? 中国がアメリカを超えるのは避けられない? 中国はアメリカの銀行になった。銀行には逆らえない? ・・・など。
FT October 4, 2011
Bernanke criticises China over currency
By Alan Beattie in Washington and Kathrin Hille in Beijing
NYT October 4, 2011
The Wrong Way to Deal With China
アメリカやグローバルな経済の利益になるだけでなく、中国自身の利益であるから、人民元の為替レートは切り上げるべきだ。中国が報復を決めれば、アメリカ経済には一層のダメージになる。
WSJ OCTOBER 4, 2011
The Obama-Romney Tariff
これは1980年代に経験した、日本との貿易不均衡の再現だ。円の交換レートは1ドル対して25年間で360円から80円になり、貿易黒字は続いたが、バブル崩壊以後はその相対的な規模が縮小した。アメリカは日本のバブル崩壊を避けるよう、中国政府に金融改革を求めてきた。
新興国が世界貿易で重要な役割を担うとき、歴史的に、通貨戦争や貿易戦争が起きる。世界経済の崩壊はドイツや日本をファシズムに追いやった。キンドルバーガーが書いたように、今も、アメリカ大統領の指導力が求められる。
WP Friday, October 7, 2011
Our one-sided trade war with China
By Robert J. Samuelson
l 資本規制
FT October 2, 2011
Tighter rules on capital: Bankers versus Basel
By Brooke Masters and Tom Braithwaite
Project Syndicate 2011-10-03
The Wrong Tax for Europe
Kenneth Rogoff
BISもEUも、資本規制や課税financial transactions tax (FTT)を求めている。しかし、その効果や思想には強い反対がある。
FT October 3, 2011
China or the US? Make your choice
By Gideon Rachman
21世紀の地政学を決めるのは、パワーと影響力を求める米中の戦いだ。すでにアジア諸国は選択を迫られている。
日本、インド、オーストラリア、韓国、その他の東南アジア諸国は、アメリカとの軍事同盟を結んでいるが、すでに中国が貿易相手国の第一位になった。
日本とフィリピンとの海軍の協力を合意した声明に、中国当局は反発した。南沙諸島における中国との領海問題で、各国は連携を深め、アメリカとの軍事関係を強化している。
経済規模、対米債権、軍事力の点で、中国はその地位を着実に強化している。外交による交渉は続く。
Project Syndicate 2011-10-06
The Decline and Fall of America’s Decline and Fall
Joseph S. Nye
アメリカは、軍事的にも技術的にも、まだ中国に対して大きな優位が続く。また、アジアには、日本やインドなど、アメリカとの友好関係を重視する国が多くある。その文化も、経済の復活を促すだろう。
l アメリカ大統領選挙とユーロ危機、世界不況
FT October 3, 2011
2012 elections portend even greater turmoil and instability
Kenneth Rogoff
アメリカの大統領選挙と、中国の指導部の移行が重なる2012年は、その翌年のフランスやドイツの選挙とともに、重大な意味を持つ。残念ながら、選挙は経済問題を悪化させる。
古典的には選挙循環だ。政府は選挙の前に好景気を求めて景気刺激策を取る。ニクソン大統領が1972年の再選を目指し、バーンズ連銀議長に金融緩和を求めた。それが対外赤字やインフレを加速し、ブレトンウッズ体制の崩壊につながった。
しかし、現在の問題は異なる。金融危機の後、世界経済はデフレを回避するために金融部門と公的部門の赤字で埋まっている。長期の低成長が政権を弱めている。むしろ欧米ともに、党派争いや債務危機などでマクロ経済政策はマヒし、財政赤字の削減が強く求められている。金融危機による不況の回避に成功した中国でさえ、経済運営には慎重である。
中央銀行の独立性にも限界がある。すでに連銀は厳しい政治圧力を受けている。現在経済が直面している強いリスク回避傾向では1970年代のスタグフレーションを心配するのは愚かなことであるが。むしろ日本型の「失われた10年」や、大恐慌の再現を恐れるべきだろう。
アメリカ、ヨーロッパ、中国のすべてが、経済と社会の将来を決める重大な決断を行う。指導者たちが明確な政治的権限を獲得すれば、構造改革が進み、長期的な成長と安定性とに役立つだろう。しかし、選挙が重大な政策決定に機能マヒを延長するようであれば、最悪の時期が増幅される。
2012年は、たとえ最善のシナリオにおいても、2011年より政治的な変動が増すはずだ。
Project Syndicate 2011-10-03
To Cure the Economy
Joseph E. Stiglitz
2007年に始まった不況がまだ続いている。なぜか? 正しい理解がなければ、その回復戦略も得られない。
危機に際して、銀行の救済に関心が集まった。しかし、銀行は利潤を回復し、ボーナスを支払っているのに、景気は回復しない。低金利にもかかわらず。金融部門の無分別と規制緩和の失敗は明らかだ。その後の債務処理は容易に進まない。
しかし、経済は危機前から重病だった。住宅バブルによる消費がなければ、総需要は大幅に不足していただろう。過去の繁栄を取り戻したいと思うのは幻想だ。
第一に、アメリカは過去の成功の犠牲となった。製造業部門で起きた生産性の急速な上昇は、需要の増大を超えており、労働者が大規模に製造業からサービス部門へ移動する必要を生じた。20世紀の初めに、農村から都市への移動が生じたのに似ている。
しかし、農村部にとどまった労働者たちは貧困の罠に落ちた。資源が移動せず、所得が減って、総需要が低下すると、都市の工業部門でも失業が生じた。アメリカでもヨーロッパでも、比較優位の変化に応じて、労働者は製造業から移動しなければならない。グローバルな製造業の雇用が限定されるだけでなく、ローカルな雇用も減っている。
グローバリゼーションは不平等をもたらす。たとえば石油価格の上昇は産油諸国の所得を増やすが、価格の下落もあると知っている彼らは消費を増やさない。また、1997-98年のアジア通貨危機は、IMFとアメリカ財務省が処理を誤ったせいで、アジア諸国に強いデフレ的な政策を強いた。そのせいで彼らはIMF融資に信頼を置かず、外貨準備の蓄積に頼った。同様に、銀行家のボーナスは戻っても、労働者たちは賃金を減らし、不平等が拡大している。
政府は社会福祉や教育、労働者の職業訓練に重要な役割を担っている。しかし、財政緊縮が優先されて、経済転換と労働者の移動は支援できていない。
すなわち正しい処方箋は、経済の再編、エネルギー転換、不平等の緩和に向けて、政府が積極的に支出することだ。そして、グローバルな金融システムを改革して外貨準備の蓄積を不要にする。
SPIEGEL ONLINE 10/03/2011
America's Debt Crisis
Why Europe Is Right and Obama Is Wrong
A Commentary by Michael Sauga
ヨーロッパはもっと債務を増やして景気を刺激するべきだ、と、最近、オバマ大統領は示唆した。
オバマ大統領は現代のKleist村の判事だ。それはドイツ人がもっともよく観る劇"The Broken Jug"の再現である。過去20年間の、ターボ資本主義、ターボ・ケインズ主義は、経済的な破局につながった。支出を増やすことが経済不況の最良の対策だと信じていたのだ。
アジア危機も、ITバブルも、サブプライム危機も、金融\財政政策を使って支出を増やし、一層大きな危機につながった。この10年で、アメリカの融資は実物経済の5倍にも拡大した。低金利が金融ビジネス肥大化の沃土であるのは明らかだ。
バーナンキは今もまた貨幣を大量に供給しているが、アメリカに不足しているのは貨幣ではない。世界市場で競争できる財だ。
NYT OCTOBER 5, 2011
The Long Stagnation
By DAVID BROOKS AND GAIL COLLINS
FP OCTOBER 4, 2011
The Not-So-Great Game
BY ALEXANDER BENARD, ELI SUGARMAN
FP OCTOBER 4, 2011
A Slow-Motion Revolution That Is Changing the World
An interview with Daniel Yergin.
BY DAVID ROTHKOPF
重要なエネルギー・資源を得るために、世界中で企業や大国の外交官は競い合う。
SPIEGEL ONLINE 10/05/2011
Violence Escalates in Turkey
Kurds Fear New Civil War May Be Brewing
By Jürgen Gottschlich
SPIEGEL ONLINE 10/06/2011
A Calculated Offensive
Why Is Erdogan Attacking Germany's Foundations?
By Jürgen Gottschlich in Istanbul
YaleGlobal, 5 October 2011
Japan in a Post 3/11 World – Part I
Daniel Sneider
日本人がたとえ忍耐強く、自己犠牲の精神に富むとしても、日本のガバナンスの失敗が日本を衰退させる。アメリカにおいて政治的麻痺が起きたのと同じような状態が、日本では永久に続いている。アジアのパワー・ハウスになるはずの日本が、東電や原子力エネルギー関係者の利益集団に支配されて、管政権は崩壊し、次のエネルギー政策も描けない。
l スティーブ・ジョブズ死去
FP Thursday, October 6, 2011
It's not about Jobs, it's about hope
Posted By David Rothkopf
guardian.co.uk, Thursday 6 October 2011
Steve Jobs: think different
ジョブズは偉大な発明家なのか? それとも経営者を救世主として演じることのできた天才なのか? 5万人のApple就労者に熱意を高める信条となり、優れた販売戦略にもなった。
WSJ OCTOBER 6, 2011
Steve Jobs and the Coolest Show on Earth
By DAVID GELERNTER
技術を美しく見せる。天才的なエンジニア。
NYT October 6, 2011
Where Are the Jobs?
By DAVID BROOKS
1970年から時間を旅行して現在に誰かがたどりついたと想像してみよう。あなたは彼女にスティーブ・ジョブズが開発を進めたiPhoneを見せる。彼女は驚愕するだろう。当時の人々も無線によるコミュニケーションは知っていた。しかし、この小さな道具で世界中から情報を手に入れることができることは想像もしなかっただろう。
その他の技術は、しかし、彼女の予想に反して何も成功していない。火星の植民地、空飛ぶ自動車、核エネルギー飛行機、人工臓器、・・・
技術進歩が減速し、停滞してきたことに多くの科学ジャーナリストは気づいている。ジョブズが例外なのだ。彼は、1960年代のカウンター・カルチャー、初期のコンピューター狂、アメリカ企業文化、これら三つを融合させた。それは単なる新製品ではなく、経営スタイルであり、新しい人格でもあった。
NYT October 6, 2011
Steven Paul Jobs
By ANDREW ROSENTHAL
FT October 6, 2011
A disruptive digital visionary
By Richard Waters and Joseph Menn
guardian.co.uk, Friday 7 October 2011
Beware false sightings of Adam Smith's invisible hand
Phillip Inman
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The Economist, September 24th 2011
Hunting the rich
Israel, Palestine and the United Nations: Yes to Palestinian Statehood
The West Bank: Villagers v settlers
The United States and Taiwan: Dim sum for China
America’s arms sales to Taiwan: Delicate dance
Banyan: Where Asia left its heart
A game of catch-up: Special report
The Hong Kong dollar: Pershing missile
Iceland and China: Hands off our wilderness
Democratic Republic of Congo: Digging for victory
(コメント) 10の記事を選びましたが、その半分以上は中国に関係しています。
そうではない記事は、富裕層への課税問題と、パレスチナの国家承認問題です。The Economistは、富裕層への課税には反対し、パレスチナ国家承認を支持します。西岸における入植者と農民との対立は深刻です。EUはヴァチカン・オプションを提案します。
中国、インド、ブラジルなど、新興諸国の追い上げによって世界経済が変化することを考察した特集記事があります。@供給に制約のある資源・エネルギー、人材など、争奪戦が強まるでしょう。A世界的な規模で比較優位が変化し、旧産業は衰退し、労働者の大規模な移動、もしくは失業が生じるでしょう。B新興諸国は、旧富裕諸国に比べて、景気の変動が激しく、国際的な安定化に積極的な役割を引き受けないでしょう。・・・しかし、「中所得国の罠」に陥ってしまうことも十分に考えられます。
台湾へのアメリカの武器売却問題は、「宥和政策」の再現です。アメリカは、台湾の防衛から手を引き、中国に対する融和政策によって国際秩序の平和的な調整を実現するべきでしょうか? 太平洋の東半分は中国に主導権を認め、地域安全保障に協力する。・・・The Economistは反対します。
香港、アイスランド、コンゴ。中国の影響は世界に及びます。香港は今もドル・ペッグを続け、その代償として、物価や賃金が高度に弾力的な経済を維持しています。アイスランドには、国土の0.3%に及ぶ土地の取得とリゾート開発を望む中国の投資家が現れました。金融危機後の回復を模索するアイスランドに、冷戦時の大西洋における軍事・航空路の重要性や北極海開発の拠点を見ているかもしれません。コンゴは、政権の安定化と資源の開発による国家建設を望む、長期の内戦で分裂した社会です。アメリカの新立法と中国の資源需要が、その安定化に影響します。
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IPEの想像力 10/10/11
立教大学で報告しました。桜井先生と世界経済研究会の皆さんが機会を与えてくださったことに感謝します。
前半と後半に分けて、<IPEの誕生>を意識する理由を述べ、その重要な4人の研究者から誕生の契機や視点を学ぶつもりでした。
IPEが誕生するのは、国際秩序が動揺するときであり、それは金融危機や通貨・貿易戦争が激化し、軍備拡大競争と戦争の不安が高まるような時期であると思います。私は、R.カプランの旅行記(まるで『ガリバー旅行記』や『ユートピア』のように感じます)にその表現を求めました。
ベルリンの壁が崩れ、東西冷戦が終わった1989年に、カプランはバルカン半島を取材していたそうです。そして、ヨーロッパの東西を分断する境界は消えても、貧富の格差や社会・政治的な基盤、民族紛争の歴史的経験など、南北の境界線が重要になるだろう、と予感したのです。現在のギリシャ危機を聞きながら、また世界各地の秩序の溶解を読みながら、「新しいアナーキー」を議論する重要性を考えました。
<IPEの誕生>を意識するもう一つの理由は、IPE内部の論争です。アメリカのIPEがますます統計的な実証研究に傾斜し、客観的真実について経済学をまねるようになったことで、不満や不安を感じる研究者がいます。私は、アメリカ的な政策志向のIPEを重視しますが、同時に、統計で実証することが研究の中心だとは思いませんでした。そこで、アメリカ的なOEP(Open Economy Politics)の意味と、それに反対するコンストラクティビズムの重要性を検討したい、と考えました。
このIPE論争は、もっと本格的に考察しなければ問題提起にならないな、と反省しました。私が提示したかった点は、たとえばB.コーエンが “Really Big Questions” (RBQ) と呼んだような問題をIPEの中心に据えることでした。中国の台頭による国際秩序の動揺と、調整への合意形成過程を、生起し続ける諸問題・紛争事例により歴史的・社会的に問う、というような研究姿勢です。
それは、国際関係論であり、IPEは国際関係論と国際経済学とが融合した学問だ、と研究会の参加者は受け取ったようです。確かに、S.ストレンジも、(彼女が批判した)アメリカの公共財供給を重視するレジーム論も、概ね、そういう理解であったと思います。
しかし、私が強調したかった論点は少し違います。それは4人の研究者の選択にも示されていますが、彼らの初期の研究が扱った、政治と経済が融合してしまう時間や場所、歴史的事例を重視する姿勢です。「世界不況」、「相互依存」、「帝国主義」、「世界通貨」、「戦争」、という彼らの研究のタイトルはそれを示しています。
しかも、この根源的な(つまり、アナーキーを再発見する)政治=経済問題の解決を導くのは、国家ではなく、市場の構造変化、(境界を越えて及ぼす)市場からの圧力である、というのが彼らの主張です。こうした問題を意識し、その展開(新しい国際秩序への道筋)を市場を介して理解しようとするとき、IPEは<誕生>したのです。
その後、後半はまったく表面的な議論になってしまい、準備不足を痛感しました。キンドルバーガーに関しては、『ドル不足』に示された「政治的均衡」という視点で、マーシャル・プランを考えました。そして、金融恐慌に示された危機の解決策を、国際的な「最後の貸し手」、もしくは、それを可能にする覇権国家(や国際協調体制)の成立に求めます。
また、ギルピンからは「リアリズム」の重要性を学びたいし、クーパーの驚くほど現代的な世界経済の市場統合と国家の自律性というジレンマを学ぼうと思いました。そして、「政治的共同体(コミュニティー)」の拡大によって、このジレンマを解決する過程、その変化に依拠した国際通貨制度」という政治=経済メカニズムの深い理解も、私は学びました。
そのような議論を整然と展開する準備がなく、思い付きを並べたような話で終わったことが残念です。私はともかく、4人の研究に対して。
この研究をまとめることができるのか? わかりません。ともかくも、できるところから描くでしょう。
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翌日は、宿の近くにある個性的な神社まで散歩し、神田の古本街と高円寺を回って、新幹線で帰りました。
山の手線に乗れば高層ビル群の間を抜け、駅の乗り換えでは地下通路や階段を早足で歩き、夜になれば、さまざまな飲食店と歓楽街の照明がこれほど輝くのは、日本でもここだけでしょう。東京は、台湾料理をつつきながら、香港やニューヨークの話を聞くような、そして、地下鉄に降りるエスカレーターは美しく飾られているのに、若者が騒ぐ石畳の広場のわきに、人がぼろにくるまって寝ていることを気にしても仕方ないような、都会なのです。
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