今週のReview
9/26-10/1
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国連におけるパレスチナ国家承認問題 ・・・中国と国際秩序の転換 ・・・ギリシャのデフォルトからユーロ圏解体 ・・・アメリカの衰退 ・・・アメリカの再建 ・・・日本の停滞を打開するには
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l 国連におけるパレスチナ国家承認問題
LAT September 15, 2011
Yes to Palestine
By Reza Aslan
アメリカは国連におけるパレスチナ国家の承認を拒んではならない。
今までアメリカはイスラエルを支持して拒否権を行使してきた。しかし、今回はそうするべきではない。その理由はいくつかある。
1.1993年のオスロ合意でパレスチナ国家の独立を含む交渉枠組みができた。当時、西岸には10万人のユダヤ人入植者がいた。しかし、その後、20年近くも交渉は成果を生まなかった。入植者は30万人以上に増えた。
2.リクード主導の現政権はパレスチナの独立国家を認めない。たとえオバマ政権の強い圧力があっても、政権内の極右勢力はいかなる合意も翻させるだろう。
3.オバマ大統領は中東和平を進めることに失敗した。大げさな演説はしたが、交渉は何も進まなかった。イスラエル政府や右派は、オバマのパワーは低下したと見ている。拒否権行使でイスラエルを守っても、弱さの表れ、と見るだけだろう。
4.イスラエルの意思を損なっても、オバマは選挙で不利にならない。アメリカの有権者は必ずしもイスラエルだけを支持していない。むしろ公平な立場を求めている。
5.パレスチナ人たちは60年前の大国が決定した現実に苦しんでいる。1948年に、アラブ人とユダヤ人の間で暴力的な衝突が激化することを抑えるため、国連は分割を決めた。しかし、ユダヤ人組織は交渉を拒み、一方的に独立を宣言した。それをアメリカ政府は直ちに承認し、国連も従った。
6.これはオバマの道義的責任を果たすことだ。選挙運動において、オバマは「パレスチナ人ほど苦しんでいる民族はない」と述べた。その信念と約束を守り、トルーマン大統領が60年前にイスラエルに与えた尊厳を、オバマはパレスチナ国家に与えるべきだ。
(China Daily) 2011-09-16
Palestinian statehood
NYT September 17, 2011
Israel: Adrift at Sea Alone
By THOMAS L. FRIEDMAN
「イスラエルの将来を、かつてこれほど心配したことはない。イスラエルの安全保障を支える柱が崩壊しつつある。エジプトとの和平条約。シリアの安定性。トルコやヨルダンとの友好関係。外交的に不器用で、戦略を欠いた、イスラエル史上最悪の政府により、非常に危険な状態にイスラエルを陥らせた。」
エジプトのムバラク体制が崩壊したのはイスラエルのせいではない。シリアの反政府抗議活動が起きたのも、トルコが地域の指導力を得るためにイスラエルを冷遇し、パレスチナの独立運動が分裂したのも、イスラエルのせいではない. しかし、イスラエルのネタニヤフ首相はそれに対応し、長期的な利益を守る戦略を持たなかった。
むしろ、ネタニヤフはトルコと対立し、オバマの要求を拒んで、その一方で、イランの核武装を阻止するように要求した。アメリカにとって見返りがないどころか、オバマをイスラエルに敵対的だと非難するロビー活動を刺激し、国内政治における不利な状況に追い込んだ。
Haaretz 紙のAluf Benn記者は言う。「イスラエルの大使がアンカラとカイロから追放され、アンマンから大使館スタッフが大挙して脱出したことで、イスラエルを中東地域の隣人として受け入れる長期の外交努力は失敗に終わった。」 「ユダヤ国家は、いかなる変化も改革も拒み、ますます城壁の内側にこもっている。中東地域が激動する中で、ネタニヤフはその強い受動性によって、他の諸国に主導権を与えてしまった。」
パレスチナが国家建設のための制度を構築し、ヨルダン川西岸ではパレスチナ以上に治安を改善した今、イスラエルがすべての占領地を返還するべきだ、と主張するのは当然だ。イスラエルが拒むなら、国連へ行こう。1967年に認められた国境に従い、国家を建設する。それが明確になったから、イスラエルは独自の和平案を示し、二つの民族の権利を確認し、交渉するテーブルに着くしかない。しかし、ネタニヤフは何もしない。
イスラエルの国民に早く気付いてほしい、この政府はイスラエルを世界から孤立させ、アメリカをその道連れにしようとしている。
BLOOMBERG Sep 17, 2011
Palestine May Win a Vote, But Won’t Be a State
By Jeffrey Goldberg
The Observer, Sunday 18 September 2011
A Palestinian state is a moral right
FP Monday, September 19, 2011
The votes the Palestinians (and the Israelis) really need
Posted By David Rothkopf
SPIEGEL ONLINE 09/20/2011
Palestinian Statehood?
(chinadaily.com.cn) 2011-09-20
Palestinian state: a step toward peace in Middle East
By Han Dongping
FT September 20, 2011
The perils of the Palestinians’ big moment at the UN
By Michael Herzog
二国間の交渉をあきらめるという決断は、国連決議で二国家案が実現できるのかどうか、具体的な計画は何もない。感情論と戦略論とは別問題だ。かつて国連決議は紛争の激化につながり、何の解決ももたらさなかった。
パレスチナの自治政府はガザ地区においても秩序を回復できず、それが交渉の障害となっている。国連決議はイスラエルと戦う法的・政治的手段にすぎない。
NYT September 21, 2011
Peace Now, or Never
By EHUD OLMERT (prime minister of Israel from 2006 to 2009)
和平の条件は2008年9月に話し合いで決まった。アッバス大統領は国連決議を求める権利を持つが、それが賢明な選択とは思わない。
中東地域の情勢が変化し、二国家案が示す機会を実現することも不可能になるかもしれない。その前に、双方が行動するべきだ。
YaleGlobal Online, 21 September 2011
After the Arab Spring – Part I
Gustav Ranis
地域の変化に対するイスラエルの不動性Israel’s immobilityは、その外交や軍事における能力を低下させている。周辺において新しく登場する民主国家の中で、イスラエルの長期的利益は失われていくだろう。パレスチナ人に権利を、という主張は広く地域で支持されている。現状維持は望めない。
FP SEPTEMBER 21, 2011
How Not to Play Peacemaker
BY AMOS YADLIN, ROBERT SATLOFF
the Ahtisaari-Solana essay
ノーベル平和賞の受賞者Martti Ahtisaari 元EU外交代表Javier Solanaは、モーゼの十戒のように、ヨーロッパが国連でパレスチナ国家を支持する10の理由を挙げた。その主張に反対するため、ここには反対する10の理由が挙げてある。
guardian.co.uk, Thursday 22 September 2011
This UN bid for statehood will not help the Palestinian cause
Einat Wilf
NYT September 22, 2011
Support the Palestinian Bid for Statehood
By KEITH ELLISON
ミネソタ州選出の民主党下院議員であるELLISONは、キング牧師の言葉を引いて、いつでも、正しいことをするのは正しい、と考えます。ボスニア=ヘルツェゴビナ、エリトリア、南スーダンがそうであったように、国際社会の手続きに従って、パレスチナ人が国家を求めるなら、アメリカ政府はそれを拒んではならない。我々の同盟国であるイスラエルは1949年に独立を認められたが、アラブ諸国は認めていない。パレスチナ国家を求めて、2国の独立を承認すべきときだ。
FT September 22, 2011
Veto or no veto, the Middle East is on the brink
Anne-Marie Slaughter
魔法使いは瓶から出てしまったから、パレスチナ国家を求めるアラブ民衆の声は止められない。しかし、独立承認が戦乱を勃発させる危険は避けなければならない。
YaleGlobal Online 23 September 2011
After the Arab Spring – Part II
Daniel Bethlehem
l 中国と国際秩序の転換
FP SEPTEMBER 16, 2011
This Week at War: The New Pacific Theater
BY ROBERT HADDICK
アメリカの東アジアにおける安全保障体制・軍事配置は、60年前、朝鮮戦争によって決まった。今も、韓国と日本に米軍基地がある。アメリカは南シナ海の紛争に関与を明確にしたが、他方で、それ以外の問題には踏み込まない。
米軍基地問題は韓国でも日本でも摩擦を生じたが、北朝鮮の軍事的な挑戦はアメリカと日韓両国に長期の軍事的関与を合意させた。しかし、南シナ海からは遠く、2000マイルも離れている。米軍の大規模な訓練はオーストラリアトン協力で行われ、シンガポールとの関係も強化した。
米軍は、日本や韓国のような基地を維持し、政治摩擦を生じるよりも、南シナ海での関与を違う形(緊急展開部隊)で模索している。もしその計画が成果を上げれば、沖縄・韓国の基地の重要性は失われる。それらの基地は中国のミサイルの脅威にもさらされている。
WP 09/16/2011
The global power shift
By Robert Samuelson
世銀総裁Robert Zoellickの最近の講演を聞けば、誰もがグローバル・パワー・シフトの大きさを知るだろう。
l 中国が市場を支配する。世界のセメントは半分。鉄鉱石と鉄鋼と銑鉄の半分。世界の卵の半分。銅、アルミニウム、ニッケルなど、多くの金属の世界最大の消費国である。
l 中国が世界貿易のパターンを決める。1990年代、発展途上諸国は他の発展途上諸国から工業製品の15%を輸入した。今ではその3倍を輸入する。
l 発展途上諸国が成長のエンジンだ。この10年間、発展途上諸国は開発諸国の約4倍の速さで成長した。今後もそれは続きそうだ。
経済的な富の増大は、政治的なパワーを伴う。第二次世界大戦後の開放的な貿易・投資のシステムは、変化しなければ生き残れない。しかし、進行中の経済危機は欧米の権威を著しく損なっている。財政赤字に苦しむ欧米が発展途上諸国の財政赤字を批判するのか? それはできない。
(China Daily) 2011-09-17
Sarkozy has a lot to gain from China
By Wei Shen (China Daily)
(China Daily) 2011-09-19
Multilateral cyber security
FT September 20, 2011
Don’t expect China to ride to the euro’s rescue
Yao Yang
中国はユーロの安定化に国益を認めている。
EUは中国にとって2番目に重要な輸出市場であり、またドルに依存した国際通貨システムから逃れるためにはユーロが必要だ。
しかし中国政府はギリシャの債務問題が行き詰まっていることを理解できないほど愚かではない。ギリシャの問題は資金だけでなく政治的意志の問題だ。ドイツが行動しなければ問題は解決できないが、ドイツの政治家と有権者は分裂している。独仏が鉄の保障を与えない限り、中国政府はギリシャやポルトガル、アイルランド、さらにイタリア政府の債券を購入しないだろう。しかし、そのような保証は望めない。
Fareed Zakariaが言うような、国際金融システムに関与する姿勢を示すことで、中国がIMFの次の専務理事のポストを指名できる、という利益は、まだ中国にふさわしい候補の準備がない。
だから、たとえ3兆ドルの外貨準備を持っているとしても、中国がユーロ圏の救済にその資金を提供することはない。
これに対して、Kerry Brownが意見を寄せています。おおむね同意しつつも、中国がワールド・パワーとして認められるチャンスを見逃さないだろう、と指摘します。それは人民元の国際化に乗り出したことでも明らかだ。
アジアで起きるといわれた金融危機がヨーロッパで起きたことは彼らの満足感を高めているだろう。しかし、国際的なパワーとして広範な展望に立つなら、EUの債務をヨーロッパ諸国と取引することは長期的に経済的な意味がある。それを見ないのは、ヨーロッパの指導者たちと同じ、政治的意志の欠如を示すだろう。
FP Tuesday, September 20, 2011
To assert its oil claims, China doesn't need a big navy
Posted By Steve LeVine
中国とフィリピンは海底油田の採掘をめぐって軍事衝突も辞さないのか? インドとベトナムについての報告もある。ブルネイ、日本、マレーシア、台湾も、南シナ海の資源採掘権を争っている。いずれの国も資源を求めており、中国が大国として上昇したことでアジアの紛争は激化する。
この問題はまったく新しくないし、驚きでもない。Robert Kaplanのすばらしい研究が詳しく描いている。「あなたがもし中国の統治者であれば、数億の人民に対して、エネルギーにいつも飢えているような中産階級の生活スタイルを実現してやらねばならないのであり、インド洋と西太平洋を守る商船隊を守るために信頼できる海軍を求めるだろう。」
アメリカ・エネルギー省の推定では、2035年までに中国とインドのエネルギー需要は膨張し、エネルギーの世界消費の割合で見て、2008年21%が、31%にまで上昇する。中国の海軍力はまだまだアメリカに及ばないが、中国政府が求めているのは7つの海でアメリカの海上覇権に挑戦することではない。台湾との軍事衝突にアメリカが介入しないこと、この地域の誰にも南シナ海の領土紛争でアメリカの支援電報を受けないようにすることである。
地域の海軍保有諸国は「交通ルール」、「会場における行動規約」を決めるべきである。
FT September 21, 2011
Why Taiwan still rattles Beijing and Washington
By David Pilling
WSJ SEPTEMBER 21, 2011
Is China Eclipsing the U.S.? Hardly
By JONATHAN ANDERSON
ドルから人民元、また覇権の、早期移行を予想するArvind Subramanianに対する批判です。
中国の経済規模が15兆ドル、現在のアメリカ市場に匹敵するのは、たとえ10%ではなく、6%か7%という成長率を考えても5年程度である。しかし、10年経っても、人民元の国際化は進まないだろう。それは日本の円に及ばず、ポンドにも負ける。
貿易の契約通貨として人民元が利用されることは、流動的な「安全」資産として証券投資の選択肢に入ることを意味しない。中国国内の資産市場に、投資家が自由かつ無制限にアクセスできなければならない。それは現在の主要通貨が認めていることであるが、中国はまったく異なる。
中国の金融政策や金融制度は閉鎖的な国内経済管理のためにある。低金利や、景気刺激策や、銀行融資の増大が、外国投資家を気にせず、政府の指導で行われる。国内投資家も、国内のほか、どこへも投資できない。それゆえ、中国には十分な金融市場がなく、外国投資家が買うような資産はない。資本規制はこのシステムの一部であり、撤廃されない。
それにもかかわらず国際化するのは、そうしなければドル資産をますます保有するしかないからだ。中国の国内貯蓄が国内投資よりも多ければ、人民元が国際化しても、中国からの投資と海外資産が増えるだろう。その意味で、人民元の国際化は中国政府の問題を解決しない。むしろ国内政策を縛るのだ。
中国はグローバル市場の巨人になったが、金融的には小人でしかない。
WSJ SEPTEMBER 21, 2011
Why China Is a Financial Midget
By JONATHAN ANDERSON
Global Times | September 21, 2011
China just wants fair treatment over Eurobonds
By Ding Gang
ヨーロッパに対する不満を述べています。
中国の投資は政治的に行われる、とFTは述べた。しかし中国がEU諸国の債券に投資するなら、投資家として、公平に判断するだけだ。しかも、EUはロシアを市場経済と認める一方で、中国にはそれを認めない。ロシアが市場経済か? そうではない。ヨーロッパ人の勝手な主張だ。中国製品をダンピングで提訴するためだ。EUは、政治的な理由で、中国に武器輸出を禁止する。
WSJ SEPTEMBER 22, 2011
The India-Vietnam Axis
By HARSH V. PANT
南シナ海の領土紛争で中国がベトナムに圧力を加えるなら、ベトナムはインドを招き入れるだろう。安全保障に関して協定を結び、インド海軍が寄港する。インドが積極的に応えたことが新しい。
「もし中国が南アジアやインド洋で拠点を増やすなら、インドも同じことを東アジアでやろう、とインド政府は考えた。」
WSJ SEPTEMBER 22, 2011
China's New Competitors
By JOSEPH STERNBERG
guardian.co.uk, Thursday 22 September 2011
China's chance to be our economic saviour
Dean Baker
中国が、動けなくなった豊かな諸国(ECB、アメリカ、日本)に代わって、EUの債務危機を救済する役割を担うだろう。その外貨準備のごく一部で、ギリシャ政府の債券を買うことだ。そして、中国政府の保証は債券価格に下限を(金利に上限を)与えることで、債務危機の悪循環を断つ。その保証は、危機が収まり、正常な成長過程が回復することで中国に何のコストをももたらさないだろう。
すでに中国はアメリカ政府の安定化に協力したことがある。中国が世界経済を安定化する重要な役割を果たす、ということを豊かな諸国も認めるだろう。
l ギリシャのデフォルトからユーロ圏解体
SPIEGEL ONLINE 09/16/2011
Interview with Polish Finance Minister
'There Is No Choice But to Go Forward' with Euro
ユーロ圏はどのような政策決定の協力体制を必要としているのか? 経済学教授からポーランド財務相になったJacek Rostowskiがインタビューに応えています。
WSJ SEPTEMBER 16, 2011
When Greece Defaults
By HOLMAN W. JENKINS, JR.
WP September 17, 2011
Growing mistrust among European banks
By David Ignatius
The Observer, Sunday 18 September 2011
The ailing euro is part of a wider crisis. Our capitalist system is near meltdown
Will Hutton
さまざまな危機が語られるが、それらはもっと大きな危機の一部でしかない。「過去30年間、資本主義が理解され運営されてきた方法が限界に達した。それを認めない限り、西側経済は停滞に落ち込み、さらに深刻な経済破局へと転化する。」
ごく小さな資産から、何兆ドルもの債務を作り出し、その上でいっそう巨額の金融取引という賭博が行われていた。これでシステムのリスクを最小化するわけがない。資本主義は、国家や社会に関係ない銀行家と企業家で動かすのがよい、とされてきた。
市場の不安定さは害悪であり、責任や応分の貢献を無視した資本主義はゆすりや搾取に堕落する。無制限に巨額の報酬は悪行や犯罪をもたらす。資本主義は、レフェリーや制度があって初めて改善され、正常に機能する。それらは両方とも資本主義それ自体が生み出すことはなく、民主的な政府が必要だ。
ユーロがあるから、今のところ彼らは破局を回避できているのだ。もし2008年の金融危機が、多くの変動レート制を取る通貨と、ECBの存在しない状態で起きていたらどうなったか? それはユーロ懐疑論者の理想の世界である。アイルランド、ポルトガル、スペイン、ギリシャ、イタリア、フランスの銀行システムは単独で生き残れたのか? それらがドミノのように崩壊すれば、イギリスやアメリカの経済も巨大なショックを受け、ドイツの銀行でさえ無事では済まなかった。1930年代のように、EUは解体し、各国は自国市場を重視する近隣窮乏化政策に走ったはずだ。
ラガルドIMF専務理事が述べたように、すでにフランスの銀行システムは破綻している状態だ。安定化基金は今すぐに行動するべきであるし、イギリス、アメリカ、スイス、日本、さらに中国や産油諸国も、ドイツと一緒に資金を提供するべきだ。その条件として、EUが統一した銀行システムの保護を整備しなければならないし、ドイツを含めて余裕のある諸国が景気刺激策を実施しなければならない。
guardian.co.uk, Sunday 18 September 2011
Euro crisis: Chucking spears at a nuclear threat
FT September 18, 2011
The world must insist that Europe act
By Lawrence Summers
Summersは、ヨーロッパの政治家たちがユーロ危機の回避に失敗して混乱を深める様子を、アメリカ政府とペンタゴンがベトナム戦争の泥沼から抜け出せなかった歴史と重ねて批判します。
これはヨーロッパだけの問題ではなくなった。銀行システムを守り、資本を増強し、景気刺激策を取れ。
FT September 18, 2011
Eurobonds and fiscal union are the only way out
By Wolfgang Münchau
ユーロ債もECBによる債券の買い支えも、結局はユーロ圏を救えない。債務が現金化されない、という規律を維持できないからだ。Willem Buiter and Ebrahim Rahbariは、結局、EU指導者たちはデフォルトと救済を混ぜ合わせ、部分的な財政統合に終わるだろう、と主張した。
しかし、危機は終わらないのだ。なぜならイタリアも危機に向かうから。部分的な財政統合を認めるEUの仕組みは、すべて小国の処理ケースを前提している。イタリアの危機を前提すれば、解決策はユーロ債による完全な財政統合しかない。ドイツの憲法裁判所や有権者がそれを拒むなら、ユーロ圏の解体が待っている。
guardian.co.uk, Monday 19 September 2011
Greece must default and quit the euro. The real debate is how
Costas Lapavitsas
ギリシャは経済の破滅に直面している。それは「トロイカ」、EU=IMF=ECBが押し付けた、いわゆる救済のせいだ。ギリシャは進路を転換し、債務のデフォルトとユーロ圏離脱を選択すべきだ。
SPIEGEL ONLINE 09/19/2011
SPIEGEL Interview with Bundesbank President Jens Weidmann
'Greece Must Live Up to Its Commitments'
FT September 19, 2011
The single currency’s true fatal flaw
By Gideon Rachman
ユーロの紙幣がそうであるように、ユーロ圏には具体的なアイデンティティーがない。それが危機を救済する政治的意志を欠く事態となった。共通通貨に共通のアイデンティティーが無いのは、致命的な欠陥だ。ドイツを含めて、多くの国が国民に問うことなくユーロを選択した。より繁栄し、より強力なヨーロッパに参加するからだ。しかし、そうでなくなったとき、緊縮策を求め、犠牲を分担するとき、崩壊過程を止める連帯感や政治的決断は誰にも足りない。
Nouriel Roubiniが述べるように、ユーロ離脱に長期的な利益はあるが、短期的な結果は恐ろしいものだ。いっそうの緊縮財政、大量失業、社会不安、政治の過激化、国家間の緊張、EU解体もありえる。
FT September 19, 2011
Greece should default and abandon the euro
Nouriel Roubini
ギリシャは悪循環にある。債務の支払い不能、競争力不足、さらに深刻な不況。財政赤字を減らす予算は不況を悪化させる。これを逃れるために、ギリシャは秩序あるデフォルトと、自発的なユーロ圏離脱を決定し、ドラクマに戻るべきだ。
ヨーロッパが示したギリシャへの債務返済計画は債務免除がまるで不十分だった。ギリシャはデフォルトを取引の条件として、もっとよい計画を要求するべきだ。しかし、たとえ債務免除されても、競争力は回復しない。返済もできない。そのためには実質の為替切り下げが必要だ。
その方法は三つある。1.ユーロの大幅な減価。アメリカがドル安を進めている。また、ドイツの競争力が強くなり過ぎる。2.労働コストを減らす。ドイツでさえ10年を必要とした。3.物価と賃金の引き下げ。いわゆる「内的切り下げ」。5年間も不況が続くだろう。
これらが選択できないなら、ギリシャはユーロ圏を離脱し、ドラクマを切り下げるしかない。競争力は回復し、成長できるだろう。アルゼンチンや多くの発展途上国が行ったことだ。
しかし、この過程には苦痛が多い。ユーロ圏の金融機関が損失をこうむる。ギリシャの銀行は、ドル建債務を強制的にドラクマに変えることで救済できる。他国では銀行に資本増強を求め、公的な資金を加える。無秩序な資本流出を止める資本規制や銀行休日が必要だ。また、国際機関がユーロ離脱過程を支援して、混乱を回避するべきだ。
ギリシャの実質GDPが「耐え難いほど低下するというのは間違いだ。実質減価による低下でしかない。それは成長を回復する減価であり、何年も不況が続くことを回避できる。危機の伝染を避けることもできる。ユーロ圏の銀行システムを強化し、監視することは、ギリシャのユーロ圏離脱によって刺激されるだろう。国によってはギリシャと同じ、離脱を選択する。
ユーロ圏からの離脱は、離婚と同じように、双方の被害を最小にするようなルールに基づいて行うべきだ。それは、大きな痛みを伴うが、不本意な結婚を続けるよりもよい。
Project Syndicate 2011-09-19
Getting to Yes (Again) with Germany
Marc Flandreau
この危機は初めてではない。数十年前に経験したERMの崩壊と、今回の危機はどこが違うのか?
かつてERMの下で為替レートを安定的に維持していた諸国の通貨が、何かの理由で投機にさらされたとき、弱い通貨を強い通貨が「無限に」支持すれば、投機は必ず失敗した。それが「無限に支持する」ことが重要だった。
しかし、ドイツはマルクによるリラやフランの支援を嫌った。インフレをもたらすから、という理由だ。ドイツ連銀は政府から独立を保証されていたから、その保証と介入を断れた。ERMが崩壊した後、ヨーロッパ諸国は共通通貨に向かい、相互の為替レートを廃止した。投機は起こらなくなった。
今起きていることは、ユーロで債務を累積した国に財政に余裕のある国から融資することだ。「無限に」融資すれば危機は回避できる。ECBはドイツ連銀のような完全な独立を保証されていない。しかし、ドイツがこれを嫌えば、EFSFによる融資は無限に行えない。
ここに、同じ問題が起きている。ECBは債務危機の国や金融機関を無限に支援し、その代わりに、財政政策を管理しなければならない。それができないなら、危機は回避できない。
Project Syndicate 2011-09-19
How to Prevent a Depression
Nouriel Roubini
この論説では、ギリシャの問題を含めて、世界不況を回避せよ、と政府に行動を求めています。
第一に、財政破綻を回避するために緊縮政策は必要だが、それは景気を悪化させる効果がある。だから、強い諸国が短期の刺激策を取らねばならない。アメリカ、イギリス、ドイツ、ユーロ圏の中核諸国、日本、である。
第二に、流動性不足ではなく、債務超過の現状では、効果は限られているが、量的緩和だけでなく、金融政策を緩和する(金利を下げる)べきだ。
第三に、融資を増加させるために、銀行の自己資本を公的資金で増やすべきだ。金融逼迫や債務の圧縮を避けるよう、EU規模で行うことだ。
第四に、金利差の拡大を抑え、市場アクセスを保つため、支払い可能な政府に対する大規模な流動性の供給が必要だ。政策の転換が効果を発揮するには時間がかかる。
第五に、債務負担を成長、貯蓄、インフレで軽減する場合は、持続可能な水準まで軽減するべきだ。秩序ある債務の組替、削減、株式への交換、などによる。政府、家計、金融機関に対して必要だ。
第六に、ギリシャなど、ユーロ圏の周辺諸国は、たとえ債務を削減しても競争力を回復できない。それゆえ成長も回復しないし、デフォルトや社会混乱が避けられない。ユーロ圏を離脱し、独自通貨に戻るべきだ。そのさまざまな痛みを抑える公的支援が必要だ。
第七に、先進諸国の経済が高失業と貧血症の低水準に落ち込んだのは、新興市場との競争といった構造的理由がある。これに対処する方法は、保護主義ではなく、高等教育、職業訓練、人的資本形成、インフラ、代替・再生可能エネルギーへの大規模な投資で競争力を高めることある。
第八に、新興市場は政策的に余裕があるから、金融緩和と財政刺激策を取るべきだ。また、IMFと世界銀行は新興市場に対する最後の貸し手として、融資条件を改革するべきだ。中国のように、輸出に依存した成長に頼りすぎている国は、為替レートの増加も含めて、国内需要・消費を増やす改革を急ぐべきだ。
二番底だけでなく、大恐慌が再現するリスクがある。
BLOOMBERG Sep 19, 2011
Strong Countries, Not Greece, Should Ditch Euro
By Ramesh Ponnuru
WSJ SEPTEMBER 19, 2011
What Comes After 'Europe'?
By BRET STEPHENS
FT September 20, 2011
Why breaking up is so hard to do
By Martin Wolf
新しい要素は、1.ドイツが中央銀行の緩和策に反対していること。2.オランダのMark Rutte首相など、多くの政治家が強制的な離脱を主張していること。
Nouriel Roubiniが主張したように、ギリシャはデフォルトと離脱をするべきだ。しかし、強制的な離脱ではない。減価はインフレによって無効になる、とBuiterは主張したが、私はRoubiniに賛成だ。ギリシャは減価によって競争力を回復するべきだ。しかし、政府債券や銀行預金の取り付けが起きる。国際的な伝染も起きるだろう。UBSの推定では、ギリシャのGDRが初年度に40−50%も減少する。
強い国、たとえばドイツが離脱する場合、ドイツに向けて資本逃避が殺到する。ユーロ圏は崩壊し、その影響は、対外資産の損失、輸出減少などで、ドイツのGDPを初年度に20−25%も減少させる。戦後のヨーロッパ協調の枠組みが、独仏関係も含めて、瓦解するだろう。
離脱案そのものがまさに不安定化をもたらす。ユーロ圏は後戻りできない。中核諸国が大規模な景気刺激策を取ることだ。ECBは直ちに金融を緩和し、政府債券を支持し、場合によっては債務削減を行う。長期的には、ユーロ圏の連帯と規律、そして、資本を増強した、全体としての銀行システムが必要だ。
FT September 20, 2011
Greece’s tragedy is made at home
WSJ SEPTEMBER 20, 2011
Euro Bonds Won't Save the Euro
By Philippe Marini
ユーロ債では危機を回避できない。中央銀行に十分な安定化基金を用意することだ。
WSJ SEPTEMBER 20, 2011
The Reality of Greece's 'Reforms'
By TAKIS MICHAS
SPIEGEL ONLINE 09/20/2011
Resenting Greece
Slovakia Threatens Euro Rescue Package
By Jan Puhl
Project Syndicate 2011-09-20
Decision Time for the Eurozone
Yannos Papantoniou
Project Syndicate 2011-09-20
The Consequences of Angela Merkel
Robert Skidelsky
ユーロ圏で債務負担を減らす提案はドイツが反対して実現しなかった。今の仕組みは再融資でしかない。債権者(ドイツとフランスの銀行)は損失を免れるが、債務者(ギリシャなど)の負担は増え続ける。1989年のブレディー・プランでも、債権者(アメリカの銀行)は結局、平均で50%の債務削減による新債券との交換を受け入れた。
ドイツが債務削減に反対するのは、経済、政治(国内では支持されても)、歴史から見て間違っている。ドイツは1920年代の賠償金問題から学ぶべきだ。
ヴェルサイユ条約で連合諸国はドイツに「戦争のコスト」を支払わせることにした。ドイツは30年の分割払いで66億ポンド(GDPの85%)を支払う。それは国民所得の8−10%、輸出額の65−76%を支払うことを意味した。
1年もたたずにドイツはモラトリアムを求め、1924年に債券(ドーズ債)を発行して、借金で支払いを開始した。それは債務返済をたらいまわしするクレージー・システムだった。アメリカは(ドーズ債を購入して)ドイツに払い、ドイツは英仏とベルギーに賠償金を払い、フランスとベルギーはそのごく一部をイギリスに払い、イギリスはそれ以上をアメリカに支払った。
この債務のもつれた糸は、事実上、1932年に世界不況において償却された。その後も、1980年まで、ドイツはそれにかかわる債務返済を続けたのだ。
ケインズは三つの理由で賠償金に反対した。1.賠償金を支払えば、ドイツは正常な生活水準に戻れない。2.それを強制すれば革命が起きる。3.ドイツが賠償金を支払えるほど輸出を伸ばすには、それを受け取る国の輸出が減る。
ケインズは、賠償と戦債を全体としてキャンセルし、ヨーロッパ経済復興のための大規模な融資を提案した。しかし、その資金を出せるアメリカはこれに反対し、実現しなかった。
もちろん、ギリシャは債務を強制されたのではない。しかし、誰もが債務を取り立てれば、誰も返済できない。1920年代の賠償金を、ドイツはほんの一部しか払わなかったが、ヨーロッパの経済回復を遅れ、ドイツは大恐慌の犠牲となった。その怨嗟は政治的な結果をもたらす。
メルケル首相は歴史を熟考するのがよいだろう。
guardian.co.uk, Wednesday 21 September 2011
Leaving the eurozone would be a disaster for Greece
Dionyssis Dimitrakopoulos
Costas Lapavitsasへの反論です。ユーロ圏を離脱して大幅に減価しても、それは(たとえばエネルギー価格の上昇など)急激なインフレによって競争力の回復にならず、市民の生活水準を激しく悪化させるだけだ。
SPIEGEL ONLINE 09/21/2011
Italy's Credit Downgrade
Belligerent Berlusconi Toys With Europe
An Analysis by David Böcking
SPIEGEL ONLINE 09/21/2011
Berlin and Paris Battle Contagion
The Weakness Behind Sarkozy's European Vision
By Romain Leick
FT September 21, 2011
Eurozone crisis has making of horror sequel
By Alan Beattie in Washington
FT September 21, 2011
Fiddling in Rome
FP SEPTEMBER 21, 2011
Bank Shot
BY MOHAMED A. EL-ERIAN
SPIEGEL ONLINE 09/22/2011
The Euro Whisperer
Merkel's Secret Weapon in Parliament
By Peter Müller
FT September 22, 2011
French banks could tip Europe back into a full-blown crisis
Mohamed El-Erian
Project Syndicate 2011-09-22
Europe’s Triple Threat
Michael Boskin
政府債務危機、銀行危機、ユーロ危機は結びついている。その解決にはヨーロッパの景気回復が求められる。ただし、緊急に、1989年のアメリカで行われた整理信託公社のような、債券買取・交換制度が必要だ。それには「政治資本」を求められる。
NYT September 17, 2011
Glimpses of the Next Great Famine
By NICHOLAS D. KRISTOF
WSJ SEPTEMBER 17, 2011
A Pro-Trade Agenda for U.S. Jobs
By ANDREW H. CARD, THOMAS A. DASCHLE, MATTHEW J. SLAUGHTER And EDWARD ALDEN
共和党が民主党と合意できるひとつのテーマは、貿易の拡大がアメリカンに雇用をもたらす、ということだ。そして、過去5年、インド、中国、ブラジルなど、新興市場の成長は先進諸国の8倍に達した。アメリカ経済の将来は、こうした新興市場でアメリカ製品を売ることにかかっている。
ところがアメリカの通商政策は停滞している。地域的な自由貿易協定は議会で承認されず、ドーハ・ラウンドは死につつあり、新興市場の開放はEUやカナダ、中国にゆだねている。消費者はグローバリゼーションの利益を享受しているが、雇用や賃金上昇をもたらすまでに至らないからだ。オバマ政権はグローバリゼーションの利益を労働者にもたらす通商・投資政策を実施するべきだ。すなわち、1.国際投資を誘致する。中国や新興諸国からの投資を呼び込む。2.潜在的な市場機会の大きな分野に集中する。3.グローバリゼーションにともなう失業者に対する支援を拡大する。
BLOOMBERG Sep 18, 2011
Buy American and Fairer Trade Can Solve Job Woes: Alan Tonelson
By Alan Tonelson
YaleGlobal Online, 19 September 2011
China Plays Hard Ball
François Godement
BLOOMBERG Sep 22, 2011
Chanos Bets on China's Economy Recoupling
By William Pesek
l アメリカの衰退
LAT September 18, 2011
America's costly war machine
By Linda J. Bilmes and Joseph E. Stiglitz
Project Syndicate 2011-09-19
Who Will Eclipse America?
Simon Johnson
ローマ帝国の崩壊に比べて、アメリカも過剰に拡大してしまったのか?
工業生産では、19世紀のはじめにアメリカはイギリスを超えていた。そして第一次・第二次世界大戦により大幅な貿易赤字を出すようになったイギリスに代わって、世界の金準備を集めたアメリカはようやくドルを国際通貨にした。
再び、アメリカが貿易赤字を出し、中国は3兆ドルを超える外貨準備を持つとき、中国がアメリカに代わって人民元を国際通貨にするのか? しかし、数年前には日本やヨーロッパがそう言われた。今では誰もそう思わないが。どちらも金融システムが暴走して、破綻した。
もしアメリカが衰退するとしたら、それは社会の結束が失われ、政治の機能麻痺を生じたせいだ。中国とは関係ない。
l アメリカの再建
NYT September 18, 2011
A Little Inflation Can Be a Dangerous Thing
By PAUL A. VOLCKER
大規模な失業、経済の低迷、不況が再来する危険もある。政策の手段が尽きて、一層の金融緩和が求められ、もう少しインフレ率が高くてもよい、という主張が出てくる。
・・・連銀はインフレ期待を高めるべきだ。物価上昇の期待で投資を増やし、住宅・商品・金の価格を引き上げる。賃金も続くし、ドルは安くなる。貿易赤字の解消にも役立つし、経済が十分に拡大したら、物価の安定という目標に戻ればよい。
それを証明する数学モデルも作れるだろう。しかし、歴史はそういう風に動かないのだ。1970年代から学ぶべきだ。インフレと低成長という組み合わせで、スタグフレーションが起きた。
小さなインフレを求める者は、それで効き目がないと、すぐにもっと大きなインフレを求める。しかし、インフレに火がつけば、刺激する効果も無くなる。インフレを容認するという中央銀行の評価は、容易に元へ戻せない。しかも、何兆ドルも海外の投資家が保有しているのだ。
金融政策は、必ず、物価の安定を前提して行うべきだ。そして、オバマ大統領と議会が雇用対策や景気回復、財政再建に成功することを願う。
FT September 19, 2011
Obama’s political tax on millionaires
FP Monday, September 19, 2011
Jeff Immelt and the American dream
Posted By Clyde Prestowitz
Fareed Zakaria が、オバマ政権の顧問であったGEのCEO、Jeff Immelt と対談した。二人がアメリカン・ドリームの再生で競演するのは意外だ。Zakaria は熱烈なグローバリゼーション支持者で、中国が豊かになることでアメリカも豊かになる、と主張していた。彼の新著、The Post American World 2.0では、ようやく、アメリカの競争力を気にしている。
興味深いのはImmeltのコメントだ。GEは中国政府との合弁企業に航空電子工学の重要技術を移転する。アメリカの競争力にかかわる技術で、決して移転させないはずのものだ。しかしGEは、技術移転を否定し、Immeltはアメリカで生産することを支持する。そして政府の産業政策も。中国の工場では技術が容易に盗まれ、5カ年計画に従うシステムは市場経済ではない、と認めている。
ZakariaやImmeltは、どうやってアメリカン・ドリームを再生するのか? Immeltは税制の改革を求める。しかし、重商主義的な政策、中国のような通貨価値の引き下げや他国への市場アクセス制限は認めない。GEの経営者であれば、報復が怖いからだ。
LAT September 20, 2011
Why (and how) to tax the super-rich
By Bruce Ackerman and Anne Alstott
FT September 20, 2011
Operation twist and shout at the Fed
by Gavyn Davies
NYT September 20, 2011
Are We Going to Roll Up Our Sleeves or Limp On?
By THOMAS L. FRIEDMAN
Project Syndicate 2011-09-21
Closing America’s Growth Deficit
Michael Spence
WP September 21, 2011
Twisting away our economic woes?
NYT September 21, 2011
Taxes, the Deficit and the Economy
共和党員はオバマの計画に反対するだろう。富裕層と企業に増税して、財政赤字を減らし、雇用創出計画を実施する、というものだ。しかし、アメリカ国民はオバマの提案をよく見るべきだ。それは富裕層が中産階級よりも負担を軽減されているシステムに公平さを取り戻すものだ。
WP September 22, 2011
GM is back, thanks to Uncle Sam
By E.J. Dionne Jr.
NYT September 18, 2011
The Bleeding Cure
By PAUL KRUGMAN
瀉血が治療だと信じていた時代の医者たちのように、EUやアメリカの指導者たちはその効き目が無い解決策についての批判を禁止する。
緊縮策を強要することで、ヨーロッパはユーロ圏や統一市場を失い、アメリカは工業基盤を失う。
Project Syndicate 2011-09-19
Countering the Contagious West
Mohamed A. El-Erian
FT September 21, 2011
America and Europe are on the verge of disastrous recession
Roger Altman
guardian.co.uk, Thursday 22 September 2011
Economic crisis: new world, old maps
FP SEPTEMBER 19, 2011
The Myth of the Middle Class
BY CHARLES KENNY
l 日本の停滞を打開するには
BLOOMBERG Sep 20, 2011
Underwear Model Shows Aging Economy How to Grow
By William Pesek
日本の製造業の将来は、自動車、カラーテレビ、産業ロボット・・・ではなく、高齢者用の下着にかかっているだろう。
中国の経済規模が日本を抜き、Appleが中国でiPadの生産を開始したとき、日本の製造業はグローバル競争の順位を失った。デフレと政治的混迷は続き、Forbes誌のアジア・トップ企業50位から日本が追放された。日本経済は弱く、指導者は弱く、高齢化が進む。
しかし、絶望するより高齢化産業に目を向けるべきだ。ユニクロUniqloを見よ。その戦略、雇用、企業の社会的責任において、日本の伝統的な経営を破壊し、世界市場の変化を視野に入れている。
WSJ SEPTEMBER 23, 2011
Speed Dating With Japan's Leaders
By MICHAEL AUSLIN
国連総会のために集まる機会に、野田首相はオバマ大統領と手っ取り早い見合いspeed datingを済ませた。オバマが会う4人目の日本の首相だ。
これでは日米の首脳間で安定した関係を基に作業に当たることなど不可能だ。日本はアメリカの関心から消失してしまう。日本の指導者がアメリカで売り込むイメージもどうかしている。麻生は「漫画好き」。鳩山は「エイリアン」。菅は「けんか早い闘争家」。そして野田首相は「泥の中のドジョウ」。彼らは世界第二の民主主義大国を自ら辱めている。
普天間基地移転問題は2007年の安倍首相から始まった。それは今も打開されていない。困難が増すばかりだ。牛肉輸入問題でも、TPP参加問題でも、官僚たちが話し合っても、日本の政治のトップが決断しないままだ。
アメリカは、日本には進路を変える力のある指導者がいない、と思っている。政策を示し、アジアにおける負担を引き受け、日本が脇役ではないことを示すべきだ。
FT September 21 2011
Brazil will fight back against the currency manipulators
By Dilma Rousseff
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The Economist, September 10th 2011
The quest for jobs
The great mismatch: Special report – the Future of Jobs
Exchange-rate targets: Francly wrong
Britain and emerging-market firms: The new special relationship
The mood of Russia: Time to shove off
Charlemagne: Germany’s euro question
Europe’s debt crisis: Fudge, the final frontier
Buttonwood: All in the same boat
Economics focus: The celestial economy
(コメント) いろいろ挙げましたが、どうしても読むべきだ、という論説はありません。特に、雇用問題の特集記事には期待しましたが、それほどの内容とは思いませんでした。期待はずれであったのは、ミクロの問題に集中しているからでしょう。インターネット、教育など、重要ですが、物足りません。
スイスの中央銀行がフランの増価を無制限に介入して阻止する、という話。新興市場、あるいは、旧植民地から企業買収に投資がイギリスに集まる話。ロシアの若者や知識人が憂鬱である、という話。いずれも、日本ならどんな話になるのかな、と思いました。
最後に、ユーロ危機の話が錯綜してきた話では、David Marsh, Barry Eichengreen, Daniel Gros, Charles Wyplosz, などの発言が引用されています。そして、中国が、アメリカを超えて、国際秩序を支える時代の話は、最も面白い内容でしょう。
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IPEの想像力 9/26/11
日本は、それを意識しないとしても、<アジアのドイツ>でした。先の大戦争(ベトナム戦争や朝鮮戦争ではなく)で、アジア各地を侵略したからです。
しかし、日本はドイツほど近隣諸国との和解に熱心ではありませんでした。それはドイツのように国土を分断されていなかったからでしょう。再統一という政治的大義がなかったのです。しかも、アジア諸国とは陸続きでもなく、むしろ、原爆を投下されたという被害者意識を持ちました。また中国は、ソ連と違って内戦と政治混乱による経済の崩壊に苦しみ、国外に目を向ける余裕がなかったのです。
日本は、ドイツと同じように安全保障をアメリカに依存しつつ、さらに、輸出市場やエネルギー・資源でも圧倒的なアメリカの国際システムに従属し続けました。保守派とリベラル派が国内の政治体制を固めた後は、経済復興に関心を集中したのです。
しかし今、その姿勢は全く行き詰まっています。ソ連崩壊や北朝鮮の核武装を除幕として、東アジアの国際政治は急速に変化しています。中国の経済成長と軍備の近代化は、すでに、アジアと国際秩序の全体に強い影響を及ぼしています。日本は、今も、バブル後のデフレや、大震災、原発事故の処理、復興財源に注意を奪われ、国際情勢の変化から取り残されたままです。
・・・なぜ、こうした当然のことを、わざわざ書くのか?
パレスチナ国家の独立に関する国連の論争を読んだからです。
日本は、ドイツになりませんでした。和解と市場統合に向けた政治交渉とアジアの制度化は始まったばかりです。日本は、イギリスになれるでしょうか? あるいは、スイスになれるでしょうか? もしかしたら、日本はアジアのイスラエルになるのですか? あるいは、パレスチナに?
こう考えてもいいでしょう。いつまでタイ政府は、中国よりも日本を重視するのか? そして、モンゴルやカンボジアだけでなく、韓国政府はどうか? インドネシアは? オーストラリアは? 日本は中国との友好関係を築くためにも、中国を含むアジア諸国に向けて、一緒に参加できる、優れた国際秩序を提唱しなければなりません。
・・・日本は、アラブの春、をイギリスやフランスほど心配しなくてもよいのでしょう。日本は、中国や東南アジアと為替レートの安定的な調整を制度化していません。日本は、円の国際化を進めませんでした。日本の財政赤字は膨大ですが、議会には共和党がおらず、市民にはティー・パーティーもなく、大震災に復興財源を与えるのを拒む他地域の政治家もいません。円高で苦しくても企業は政府や日銀に期待しておらず、企業の海外流出や若者の失業に政治家たちが次の選挙を意識することもないのでしょう。
これは変だ。間違っている。もっと議論しなければならないことがあるはずだ。
首相は、いつも、日本の問題を海外の事例と比較して議論してください。ギリシャのようになるぞ、と脅かすのは拙劣な議論に思いますが、それでも何も意識しないよりは優れています。もし政治家たちが議論し、熱意をもって行動すれば、私たちは世界中の様々なガバナンスを実現できるはずです。そして、まだ起きていない危機に備え、ここにはない制度や機会を想像によって具体化する力が国民にも広がるでしょう。
この閉塞した現状を打開できると、被災者や、中小企業、若者たちに示すことです。
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