IPEの果樹園2011

今週のReview

9/19-24

 

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人民元による三極通貨体制 ・・・911の憎しみ ・・・オバマの雇用計画 ・・・金融・財政政策 ・・・国際政治の変化 ・・・ヨーロッパの通貨・政治危機 ・・・制度の想像力 ・・・保護主義

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  人民元による三極通貨体制

FP SEPTEMBER 7, 2011

The Renminbi: The Political Economy of a Currency

BY ARTHUR KROEBER

人民元の為替レートを引き上げるように求めるアメリカ議会の圧力が、これまでにも何度か法案を提出してきた。人民元の為替レートは人為的に低く抑えられている。アメリカの製造業や労働者はそのせいで大幅な貿易赤字を強いられている、という不満が強い。

しかし、アメリカは為替レートを不均衡に対する単なる価格とみるが、中国政府はそうではない。為替レートは、中国がキャッチアップ型の成長と工業の高度化を実現する、という輸出型成長戦略の手段なのだ。工業化のために国内市場を保護し、優れた技術を輸入することは、すべての工業国が歴史的に行ったことであり、第二次世界大戦後は、GATTそしてWTOによる保護主義の規制により、為替レートがその手段となった。

確かに、中国の外貨準備は3兆ドルにも及び、その4分の3はアメリカの財務省証券である。中国がアメリカの銀行になった、という批判や不満を聞く。アメリカを超える世界最大の輸入国であり、世界最大の輸出国にもなるだろう(なった)中国が、その通貨の国際化を急速に進める、と考える者もある。

しかし、中国の為替レートや外貨準備はその国内工業化によって制約されており、簡単に止めることはできない。人民元の国際化も、まだ多くの問題が残っている。

中国政府は、プラザ合意後の金融的な混乱が日本経済の衰退につながったことを中国が繰り返さないよう、警戒している。日本がアメリカからの圧力に屈して円高を進めたのは、日本が安全保障上の従属的な地位を認めていたからだ、と考えている。中国はアメリカにそのような弱みを持っておらず、人民元の為替レートを国内政策目標に従わせるのを当然と考える。また、2008年の金融危機も、規制されない金融取引の危険性を示したし、その後の中国経済の回復が欧米に比べて非常に速かったことで自信を深めた。

為替レートを固定し、外貨準備が累積することでインフレを招く、という批判は抑えてきた。しかし、国際取引や外貨準備をドルに大きく依存していることは、アメリカの金融市場や金融政策のせいで貿易が減り、外貨準備の価値が減ることを意味しており、中国も人民元の国際化に積極的になった。この姿勢を、中国の外貨準備を利用したアメリカへの圧力や世界支配であると誤解してはならない。

なぜなら、中国はアメリカに投資するしか選択肢はなく、政治的に利用して輸出市場を失うことを最も恐れている。アメリカの資産はもっぱらアメリカ人が供給し保有しており、むしろ中国はアメリカの金融市場に預金しているに等しい。中国の債券を買うのは、もっぱら中国の国営銀行だ。中国の金融市場が、アメリカに匹敵するような、外国投資家にも安全で、流動的で、リスクの低い市場になるのか、まだ、まったく見込みがない。

かつて、同じような条件を得た日本が、結局、債券を外国投資家に売ることを政府は好まず、円の国際化に失敗した。

つまり、今、アメリカ政府は中国の為替レートや外貨準備を非難するべきではないのだ。むしろ急速に成長する中国市場をWTOのルールに従って解放させておくことに注意を向けるべきだ。

FP SEPTEMBER 7, 2011

The New Triumvirate

BY MANSOOR DAILAMI

Mansoor Dailamiの論説も面白い。ここでは「さよなら、円」という副題にドキッとするが、円の話は何も出てこない。3通貨が併存する多通貨体制へ再び世界は移行する、という話だ。1930年代、英仏米。1980年代、米独日。そして、2025年には、米欧中。ドルとユーロに人民元が加わるだろう。

この論説では、人民元の国際化が時間をかけて実現できる、と見ている。しかも、それは米中関係を大きく変えるだろう。すなわち、国際通貨を兼ねることで発生する大きな利益、シニョレッジ、国内マクロ管理の容易さ、国際収支制約の緩和、をアメリカが失うことを意味する。他方、中国も一気に国際化することを恐れて、ASEANなどと、地域的な人民元国際化を優先するだろう。

その過程では、世界の投資家が保有する対米債権の95%がドル建てであることから、ドル安やアメリカの金融・財政政策に対する不安・不信が急激なドル売りを招く危険もある。他方、安定的な多通貨システムが成立すれば、ドルだけに頼るシステムよりも、国際流動性の供給や金融政策に対称性が強まり、費用と便益の公平な分配、そして高い正当性が得られると期待される。

つまり、それは貧しい諸国の経済運営にも安定性と弾力性が増すこと、何より、地政学的な優位を争う軍事力の使用が控えられるのではないか、とまで示唆する結びとなっている。・・・面白い。

FP SEPTEMBER 7, 2011

The Buck Stays Here

BY DANIEL W. DREZNER

FP SEPTEMBER 7, 2011

Dreaming of SDRs

BY DAVID BOSCO

FT September 11, 2011

Fixing currencies

FT September 11, 2011

Coming soon: when the renminbi rules the world

By Arvind Subramanian

中国の人民元は国際化を始めている。それは中国のやり方によるが、その動きは後戻りしないだろう。中国ン経済規模がアメリカを超えるだけでなく、準備通貨としてのドルの役割も、この10年で、人民元が引き継ぐだろう。

懐疑論者は2つの理由を挙げて反対する。1.イギリスとアメリカの経験から見て、中国が経済規模でアメリカを超えてもドルの支配は続く。2.中国の金融政策や輸出重視は政府による金融支配を前提しており、金融市場に外国投資家を入れたがらない。

しかし、その批判は間違いだ。1.歴史的なイギリスの貿易・金融支配は1920年代まで続いた。だから、アメリカとの交代は比較的短期間で起きた。2.中国の人民元国際化はすでに始まっており、確実に進むだろう。

中国政府が輸出部門に強い反対を生じるとしても、ドルで貿易や投資に、特に外貨準備に依存する成長モデルに終わりを告げたのは確実である。ドルからの離脱を進めるためにも、輸出部門を説得する大きな理由として、人民元の国際通貨化は、その威信や歴史的使命を国民に感じさせるだろう。

「人民元による世界の秩序」はスローガンとして重要であるし、後戻りしないはずだ。

WSJ SEPTEMBER 12, 2011

China's False Promises

By JOHN LEE

BLOOMBERG Sep 13, 2011

China's Euro Bailout More About Trade Than Diplomacy: The Ticker

By William Pesek


l  911の憎しみ

BLOOMBERG Sep 8, 2011

Two Questions at the Heart of Bin Laden’s Jihad: Lawrence Wright

By Lawrence Wright

LAT September 9, 2011

Pearl Harbor and 9/11: A fleeting day of infamy

By Jon Wiener

もしあなたがGoogleで「Pearl Harbor and 9/11」を検索すれば、400万件以上も見つかるだろう。・・・それは、ジョージ・W・ブッシュ元大統領がthe National Geographic Channelでインタビューに答えて、アメリカ人は真珠湾と同様に911を忘れない、と述べたことにも刺激された。

実際には、真珠湾攻撃のあった127日はほとんどアメリカで取り上げられず、忘れられている。それは朝鮮半島で新しい戦争が起き、日本は安全保障条約を結ぶ同盟国になっていたからだ。朝鮮半島の共産主義者のおかげで、真珠湾攻撃は思い出されなかった。

アメリカはヒトラーと戦ったことを思い出すが、もちろん、ヒトラーは真珠湾を攻撃していない。911127と同じである。

SPIEGEL ONLINE 09/09/2011

Bush's Tragic Legacy

How 9/11 Triggered America's Decline

A Commentary by Gregor Peter Schmitz in Washington

WP September 9, 2011

The 9/11 ‘overreaction’? Nonsense.

By Charles Krauthammer

911に関する新しい通説では、我々は過剰な反応を示して、恐怖の10年を招いてしまった、という。アルカイダはa paper tigerでしかなく、愚かな戦争で、アメリカは財政破たんと経済の衰退を引き起こした。・・・

しかし、ビンラディンを抑えたのはアメリカの戦争だった。その費用がたとえ「13000億ドル」であったとしても、それはアメリカ政府債務の10分の1であり、オバマが1年で作った債務と同じだ。911は真珠湾と違って本国がない。だから戦いは困難である。

911の結果として我々の道義が退廃したのではない。我々の道義が退廃したから、911を軽視し、その戦争を過剰反応だ、などと言うのだ。

WSJ SEPTEMBER 9, 2011

9/11: Did the U.S. Overreact?

FT September 9, 2011

We need to confront the post-9/11 paradox

By Philip Zelikow

FP SEPTEMBER 9, 2011

Twilight in Manhattan, Dawn in Tripoli

BY JAMES TRAUB

WP September 10, 2011

Don’t underestimate what America has achieved since 9/11

WP September 10, 2011

Why U.S. troops should stay in Iraq

By Meghan O’Sullivan

NYT September 10, 2011

And Hate Begat Hate

By AHMED RASHID

911以後、アメリカ人はよく自問する、という。「なぜ彼らは我々を憎むのか?」

アフガニスタンとパキスタンから見るなら、アメリカは、住民のほとんどが何の罪もないこれらの国で、ごく少数のイスラム過激派を追跡し、掃討するために、国家を破壊することも厭わなかった。住民たちの目には、アメリカはソ連に劣らぬ帝国主義者に見えるのだ。

911後に行われた最高の約束は、当時のブッシュ大統領とブレア首相が示した、西側はもはや破綻国家や過激派を我慢できない、というものだった。今日、もっと多くの破綻国家ができてしまっている。アルカイダのメッセージを受けた者はヨーロッパやアフリカ、アメリカ本土にも広がっている。いずれの宗教や文化もそれ自身の過激派を生んだ。イスラム過激派に賛同し、あるいはそれに反発して(ノルウェーで大量殺戮が起きたように)。

飢饉、飢餓、貧困、経済破綻。気候変動による洪水や干ばつ。それらは911のせいではない。しかし多くの人たちは、アメリカの戦争がもたらした惨状や、アメリカが真のグローバルな問題解決に関心を失ったせいに見えるのだ。

ブッシュ政権の「国家再建」という言葉は嫌われるようになった。オバマはそれを否定する。David H. Petraeus将軍のテロ対策は、ガバナンスを改善地、各地の軍や警察を改善する制度に力を入れる。そして将来を担う人々を、つまりは、国家を再建するのだ。特殊部隊や、CIAが遠隔操作する無人爆撃機が使用されている。テロリストの暗殺として、市民の多くが犠牲になる。

アメリカはその国をどのように統治するのかも計画しないまま、アフガニスタンとイラクに進攻したのだ。政策はほとんど秘密であり、市民を尊重することなどなかった。1990年代に、タリバンが追放したアフガンの軍閥たちが、今度はアメリカ軍の同盟者、やビジネスマン、麻薬密売業者、などに変身して復活した。腐敗や汚職が蔓延している。

こうして、新しい反アメリカ主義が支持される。

10年を経て、この地域の戦争は軍事力によって勝利できないことがはっきりした。誰が誰を憎むのかも答えられない。

The Observer, Sunday 11 September 2011

Twin Towers and terrorism: the impact 10 years on

Jason Burke and Francis Fukuyama

WP September 11, 2011

The covert commander in chief

By David Ignatius


FP SEPTEMBER 8, 2011

The Final Failure

BY SAMUEL R. BERGER, STEVE ANDREASEN

世界中の紛争や民主化を背景として、核兵器の拡散が進んでいる。オバマと共和党が協力して、今すぐに取り組むべきだ。


l  オバマの雇用計画

NYT September 8, 2011

Stimulus for Skeptics

By DAVID BROOKS

大きな金融危機後に財政刺激策の効果を否定するKenneth Rogoff and Carmen M. Reinhartの研究が出たので、政府支出に反対する政治家がいる。しかし、財政赤字が景気回復に短期には役立たないとしても、教育システム、税制、財政再建、規制の改革は重要だ。不況が改革を推進するからこそ、次の拡大が準備される。

オバマの提案は二番底を避けるために必要な短期の刺激となるだろう。共和党と民主党はイデオロギー的な対立を捨てて、オバマの提案に協力して改善策を示す時だ。

NYT September 8, 2011

The Jobs Speech

WP 09/08/2011

Obama’s jobs speech: Good plan, good vision, good politics

By Harold Meyerson

オバマはこの機会にアメリカ経済の長期的な再建を描いた。中国が優位を得ている分野でも、アメリカは産業投資を積極的に行って製造業を再活性化する。それは再選に向けた宣言であるだろう。

ドイツ人は驚かないだろう。世界で、ドイツ経済だけが成功している。

guardian.co.uk, Friday 9 September 2011

America's inhumane approach to labour problems will finish Obama

Richard Sennett

FT September 9, 2011

Obama’s plan is more good than bad

by Gavyn Davies

FT September 9, 2011

Obama package a palliative, not a cure

By William A. Galston

NYT September 10, 2011

Getting Back to a Grand Bargain

By THOMAS L. FRIEDMAN

オバマ大統領は行き詰った。しかし、民主党と共和党のa Grand Bargainが成功する、と考えます。

財政再建のために既存の社会的給付を削り、それでも国民の経済的な強さを支えること(学校、道路、研究開発)にはもっと投資し、それが不況を緩和する。共和党はオバマの提案を真剣に検討するべきだ。そしてヨーロッパが転落しつつある世界経済でアメリカン回復を確実にしなければならない。

BLOOMBERG Sep 11, 2011

Obama Wins Argument as Republicans Seize Narrative: Albert Hunt

By Albert R. Hunt

WSJ SEPTEMBER 12, 2011

How to Fight Black Unemployment

By ARTHUR LAFFER


l  金融・財政政策

FT September 8, 2011

Where an Augustinian fiscal policy falls short

By Samuel Brittan

FT September 8, 2011

I can’t hear the markets but I can smell fear

By Stephen King

市場の声を聴け、というM. Wolfの主張に私は反対する。私は何かの匂いをかいだ。それは恐怖の匂いだ。

確かに債券価格は低い。低金利だ。これは政府にもっと借りて支出してくれ、という叫びではない。同じ理由で、金価格は高く、円高は進み、スイス国立銀行は為替レートを抑えようとして株価が暴落した。投資家たちは安全なポケットを探している。世界の金融システムは緩やかに倒壊しつつあると恐れているのだ。聴覚の問題ではなく、嗅覚の問題だ。

債務者だけでなく債権者・投資家も、バブル前の異常に高い成長率予想を修正しなければならない。長期の成長率は2%か、それ以下かもしれない。この新しい現実に対して、債務は大きすぎる。誰かがこの損失を受けるしかない。納税者、債券保有者、株式保有者、社会サービスの受給者、外国投資家。それを究極的に決めるのは、政治家たちだ。

人々は損失を恐れている。財務省証券でリスクの保険を期待することはできる。しかし、リスクはなくならない。

NYT September 8, 2011

Setting Their Hair on Fire

By PAUL KRUGMAN

シカゴ連銀議長、Charles Evansは述べた。「もしインフレ率が5%に達しているなら、我々の目標である2%をはるかに超えており、中央銀行家たちが何をするか、疑う者などいないだろう。」今はインフレ率が十分に低く、失業者が多い。「彼らは髪に火がついたように、インフレ率だけでなく、労働市場についても」それを改善するようにすべてのエネルギーを注ぐべきだ。」

そしてオバマの雇用計画が出た。それは予想したものよりはるかに良いし、大胆なものだ。雇用の改善にもつながるだろう。しかし、この法案は成立しないだろう。労働市場が悪化する中でも、共和党の反対派は力を増してきた。

政府は議会を意識して、財政政策よりも金融政策に偏り、一時的な政府支出より減税を重視してきた。しかし、今や、共和党は減税にも、金融政策にも反対している。

オバマはようやく戦端を開いた。アメリカ国民が行動を求めなければ、何も起こらない。


l  国際政治の変化

FT September 8, 2011

The dangers of American retreat

By Philip Stephens

かつてドイツのシュレーダー首相、フランスのシラク大統領が、ロシアのプーチンと並んで、唯一の超大国となったアメリカを牽制して、多極的世界を守るチャンピオンと称賛された。その後、グローバル・パワーの移動は進み、没落するアメリカと、ヨーロッパの復活より新興のアジアが注目されている。

トニー・ブレアが、イラク戦争を含めて、ジョージ・W・ブッシュと緊密な関係を維持したのは、少なくとも彼の言った理由は、アメリカのユニラテラリズムが戦後の多角的秩序を破壊してしまうのを恐れたからであった。

しかし、中国やその他の世界から新興諸国が直線的に上昇し続けて支配するようになる、と仮定するのは間違いだ。特に、北京からくる訪問者の示す強烈な不安は印象的だ。中国の経済・社会モデルが持続できるのか、彼らは心配している。

アメリカが余りにも強いときはそれを嫌っていた諸国が、アメリカの衰退を恐れるのは皮肉である。たとえば、もしアメリカが財政再建のために防衛予算を削り、海外の安全保障問題に関与しなくなったらどうなるか? ヨーロッパは安全保障を担えるのか? 湾岸の米軍がイランを牽制しているのではないか? 中東で危機が起きればどうなるか? 東アジアで、地政学的な不満を抱える中国の台頭は何を求めるのか?

アメリカが多角的秩序の改革を唱える地位にはない。しかも、新興諸国(中国、インド、ブラジル、トルコ)の描く世界は、20世紀後半よりも、19世紀にますます似てくるだろう。しかし、彼らこそ、アメリカの築いた多角的国際秩序に依拠して台頭してきたのだ。

 (China Daily) 2011-09-09

World's worries addressed

By Qu Xing

FP SEPTEMBER 12, 2011

Asia's New Great Game

BY THANT MYINT-U

古代文明以来、山脈や砂漠によって分割されてきた2つの文明圏、中国とインドが交流を増やす。中国は「新しいシルクロード」の建設に乗り出し、戦略的な「マラッカ・ジレンマ」(中東からの石油輸入の80%がマラッカ海峡の安全に依存する)を解消したい。そして、太平洋とインド洋、「2つの海」戦略を推進する。

軍事政権下で西側の制裁を受け、国際的に孤立してきた、資源が豊富で貧しいビルマに、中国とインドが接近する。ビルマが、中国にとってのカリフォルニアになるだろう。これは21世紀のナショナリズムに従う「新しいグレイト・ゲーム」なのか、あるいは活発な成長と中産階級が支配する、アジアとヨーロッパを市場が統合する「新しいシルクロード」なのか?

この大変動を受け止める国内政治体制をビルマは準備しなければならない。独裁体制を一部で後退させ、民政移管を装うだけでなく、Aung San Suu KyiNGOにも接近した。ビルマが独自の発展を遂げるためには西側との交流が欠かせないだろう。もしビルマが民主化を実現し、中国とインドを結びつけ、西側の豊富な資本や技術、情報を入れるなら、アジアのゲームが大きく転換するだろう。

FT September 13, 2011

Seize the moment for a new golden age of coercive diplomacy

By Ray Takeyh


BLOOMBERG Sep 8, 2011

Keynes, Schumpeter and the Great Post-War Mistake: Sylvia Nasar

By Sylvia Nasar

BLOOMBERG Sep 11, 2011

Fisher, the Crash and an ‘Economics of the Whole’: Sylvia Nasar

By Sylvia Nasar

FT September 12, 2011

The 2012 rivals can be named: Hayek v Keynes

By Steven Rattner

BLOOMBERG Sep 12, 2011

Rethinking Bastiat and Broken Windows: Amity Shlaes

By Amity Shlaes

BLOOMBERG Sep 12, 2011

Hayek, Keynes and How to Prevent Economic Crises: Sylvia Nasar

By Sylvia Nasar

第一次世界大戦、インフレ、債務危機、金融恐慌、通貨戦争、関税戦争、ファシズム、第二次世界大戦などが、現在の経済制度と思想を作りました。


l  ヨーロッパの通貨・政治危機

Project Syndicate 2011-09-09

Europe on the Verge of a Political Breakdown

Barry Eichengreen

ヨーロッパは再び危機に瀕している。指導者たちはさまざまな提案を示した。しかし、財政規律や競争力を高める政策監視は将来の危機回避に役立つだけで、現在の危機を解決できない。財政統合やユーロ債の発行は、条約の改正や各国有権者の合意形成に多くの時間がかかる。

しかし、ヨーロッパには、数年、数か月も時間がない。現時点で、数日中に最悪の事態を回避する必要がある。今すぐやるべきことと、その後にやれることとを区別するべきだ。

第一の緊急課題は、ヨーロッパの銀行を安全なものにすることだ。フランスやドイツは自分たちで負担できる。財政状態の悪い国には、EFSFがあるし、それで不足するときはIMFが特別融資枠を設けるとか、アジア諸国、政府系投資信託SWFがそれに協力するだろう。

第二の緊急課題は、ギリシャに経済の回復余地を与えることだ。その超人的な努力にもかかわらず、ギリシャの財政再建目標はむしろ世界景気の悪化によって達成されないだろう。EUIMFは救済融資を止めねばならなくなる。しかし、このまま緊縮政策を強化するなら、政治的・社会的な安定性は失われ、経済崩壊、さらには内戦さえ起きかねない。

債権諸国はギリシャの財政目標を緩和できる。独仏による財政支援や、新マーシャル・プランを提案することもあるだろう。

第三の緊急課題は、経済成長の再開だ。金融の安定化も、財政再建も、社会的な安定性も、すべては成長にかかっているからだ。成長がなければ、緊縮政策は耐えられない。

解決策はある。たとえば、ドイツが減税することだ。北欧諸国が協力して財政刺激策を取ることができれば、さらに優れている。しかし、ヨーロッパ諸国の政府は国民の不満に制約されている。この状況では、唯一の可能な刺激策がECBによるものである。金利を下げて、資産を大規模に購入する必要がある。

こうした危機回避が行われてから、十分な時間をかけて、多くの改革を行うことになる。予算に関する新しいルール、各国の政策のハーモナイゼーション、そして完全な財政統合。

NYT September 10, 2011

Europe’s Fiscal Fantasies

FT September 11, 2011

Stop rejoicing. This was no victory for the eurozone

By Wolfgang Munchau

ユーロ圏の危機には二つの解決策しかないだろう。一つは、共通のユーロ債を発行する。もう一つは、ECBが各国政府の債務を貨幣化する。メルケルは前者を拒み、ECBは後者を拒む。ECBの理事Jürgen Starkは両方に反対して辞任した。そして保守派のエコノミストたちとともに、第三の解決策を支持した。不況によって政府・民間の債務を縮小し、調整を完成せよ。

ドイツの憲法裁判所の判決は、救済融資を肯定したように見えるが、実際はすべての解決策を拒んでしまった。主権はEFSFにわずかに譲歩されたが、それは一時的でしかない。

財政統合には国民投票が必要だ。ドイツの有権者が認める可能性は低い。ギリシャへの追加の救済融資、ポルトガルへの融資をドイツ議会が承認するか? EFSFが債券を購入するとか、銀行の資本を強化することに彼らが賛成するか? それらの一つが拒まれたとき、デフォルトが始まる。

FT September 11, 2011

A critical turn in eurozone politics

NYT September 11, 2011

An Impeccable Disaster

By PAUL KRUGMAN

アメリカにおいて経済問題が「財政化」されていることを批判してきた。政府は雇用問題に手を付けられない。しかし、ヨーロッパはもっと悪い。

ドイツ人の議論は単純だ。債務を返済しなければ、処罰されるべきだ。緊縮財政が唯一の答えだ。しかし、これはギリシャにしか当てはまらない。スペインの財政は黒字であり、2008年の金融危機後もイギリスより健全だった。

スペインが問題になったのは、銀行の取り付けと同じ理屈だ。投資家はデフォルトが心配で、政府の債券を買わなくなった。あるいは、高い利回りを必要とした。それは財政の見通しを悪化させ、デフォルトの見込みは高まった。信用不安が自己実現的な予言となった。銀行は多くの債券を保有しているから、危機は銀行に波及した。

もしイギリスのように独自の中央銀行があれば、通貨を発行して政府債券を購入するだろう。それはインフレになるかもしれないが、投資家にとってデフォルトよりましだ。しかし、スペインやイタリアにはそれができない。

ECBはそれを少し始めた。しかし、トリシェ総裁は価格の安定性を守るという使命に傷をつけたくない、とこだわっている。成長のためには緩やかなインフレが求められている。ECBはその想像にだけ存在するインフレと戦っている。

SPIEGEL ONLINE 09/12/2011

Interview with Former German Finance Minister

'Germans Will Have to Pay'

SPIEGEL ONLINE 09/12/2011

Euro-Zone Exit Scenarios

Germany Plans for Possible Greek Default

FT September 12, 2011

Greek bail-out: A pillar in peril

By Peter Spiegel in Brussels and Kerin Hope in Athens

FT September 12, 2011

Italy turns to China for help in debt crisis

By Guy Dinmore in Rome

WSJ SEPTEMBER 13, 2011

The Euro Zone's Refuseniks

By DALIBOR ROHAC

SPIEGEL ONLINE 09/13/2011

Property Pinch

Greeks Vow to Rebel Against New 'Monster Tax'

By David Böcking in Athens

FT September 13, 2011

Time for Germany to make its fateful choice

By Martin Wolf

これは最初から予想された危機だった。そして信頼を書き、アイデンティティーを共有できないことが、人々を不愉快な結婚に縛り付けた。

ECBのトリシェ総裁は、ドイツ連銀よりも優れたインフレ抑制の成果を強調した。しかしその結果、デフレを防ぐ手段を失った国のデフォルトが迫っている。ユーロ圏の崩壊が迫り、投資家の資産が安全な通貨へ向けて逃避し始めた。

ユーロ圏には重要な制度が欠けている。特に、最後の貸し手は重要だが、救済基金には資金がない。強力な制度を持たないから、主要国の態度と政策が重要になる。ドイツの第二次世界大戦後の復興、東西再統一後の回復は素晴らしい。しかし、ドイツはユーロ圏を同様に開放的な小国と見ている。それは間違いだ。ユーロ圏は大きく、相対的に閉鎖している。民間部門が投資しないとき、政府部門がそれを補うべきだ。

ラトビアやアイルランドにはデフレによって輸出を伸ばすことができる。しかし、イタリアにはできない。ユーロ圏内で、財政赤字の制約がある国にできないときは、ドイツが需要を補うべきだ。しかし、ドイツのWolfgang Schäuble財務相は緊縮策を求めた。

ECBEFSFが大規模な債券購入や救済融資を始めたら、ドイツはどうするだろうか? オーストリア、オランダ、フィンランドも続くだろう。その結果によっては、彼らの輸出、金融システム、GDPも破壊するだろう。

FT September 13 2011

Discord at the ECB heralds the eurozone’s endgame

By David Marsh

ドイツの中央銀行はドイツ政治の栄枯盛衰を表してきた。1923年のインフレーション、1948年のドイツ・マルク、1999-2002年のユーロ導入、そして今、Jürgen StarkECB理事を辞任したことは、それを象徴している。ドイツは、最初から、同じように安定通貨を求める国とだけ、小さな通貨同盟を求めてきた。

次期総裁をめぐって、ドイツのAxel Weber連銀総裁が辞任したことよりも衝撃的だ。なぜなら、Weberは中央銀行家というより学者であった。Starkはドイツ政府のトラブル・シューターだった。彼がユーロ救済に反対するなら、それは彼だけにとどまらない。

ドイツの政治家も、金融市場も、債権者も債務者も、ドイツ連銀の新総裁Jens Weidmannに注目している。

NYT September 13, 2011

A Europe Divided?

SPIEGEL ONLINE 09/14/2011

Beijing as the Euro's Savior

Europe and China Bound by Mutual Fears

By Stefan Schultz

「貨幣が世界を支配する。」 グローバル・パワー・バランスには新しい意味が与えられる。中国の優位だ。アメリカは警告するだけであるが、中国は救済できる。より大きな政治的威信、政治的パワーと交換に。ただし、中国はユーロ圏崩壊を恐れているから、政治的な武器にはしないだろう。

FT September 14, 2011

No free Chinese lunch for Europe

BLOOMBERG Sep 14, 2011

Euro Bonds Won’t Cure What Ails Europe

By Hans-Helmut Kotz, Jan Pieter Krahnen and Christian Leuz

guardian.co.uk, Thursday 15 September 2011

Europe is turning back to national identity – and it's exhilarating

Simon Jenkins

「ヨーロッパ統合」論は、政策ではない。カルト集団だ。

市場を統合し、異なった文化や愛エンティティーを維持するために、ユーロは必要ない。

FT September 15, 2011

A cheer for ECB’s attempt at shock and awe

By Sebastian Mallaby

危機はユーロ圏で解決できるはずだった。しかし、IMFが救済融資に参加した。今や、世界の5つの中央銀行(ECB、アメリカ、日本、イギリス、スイス)が、ヨーロッパの銀行システムを守るために、新しいグローバル金融協調を開始した。

なぜECBは、銀行を救済するのに、政府は救済しないのか? それは危機的な経済状態(25歳以下の失業率が、イタリアでは29%、スペインでは44%)にある政府に融資条件を守らせることはできないからだ。外から融資に参加するIMFやアメリカは、こうしたドイツ有権者の懸念を少し緩和するだろう。

救済が遅れるほど、その規模は大きくなり、長期化する。

FT September 15, 2011

German hotheads are close to destroying the euro

By Jeffrey Sachs

ドイツ政府のマクロ思考は間違っている。ユーロ圏が健全に成長していない。ギリシャに緊縮策だけを求めることも不可能だ。

SPIEGEL ONLINE 09/15/2011

Greece Dispute

Merkel's Government Remains Divided on Euro Policy

NYT September 15, 2011

Stand or Fall Together

WP September 15, 2011

How China can help Europe get out of debt

By Fareed Zakaria

ユーロ危機はグローバルな危機になった。それはリーマン・ショックを超える危険だ。

問題はイタリアの債務だ。それはイタリアのGDP120%1.9兆ユーロもある。スペイン、ポルトガル、アイルランド、ギリシャの債務を合計したよりも大きい。

ユーロ債の発行、財政統合によるEU全体の政策調整も、ドイツの有権者はもちろん、他の加盟諸国も容易に受け入れないだろう。たとえ実現するとしても間に合わない。2008年に危機に直面したポールソン財務長官は、市場が怯えて従うほどの「バズーカ」が要る、と述べた。ヨーロッパにはそれがない。ドイツにも用意できないだろう。

現在、世界の外貨準備は10兆ドルある。バズーカと呼べるほどの資金量はこれしかない。IMFがその保有諸国に頼んで、すなわち、中国、日本、ブラジル、サウジアラビア、から7500億ドルの融資枠を得る。それからIMFは、経済改革を注意深く監視し、経済の再編が進むにつれて、イタリアとスペインに融資を行う。その融資は両国に2年以上にわたる必要な資金を供給し、改革への圧力を維持しつつ、その成長を可能にする。

中国の外貨準備に対する姿勢は保守的だ。安全で、流動的な資産であり、十分な利回りを求める。世界を救済するのが目的ではない。すでにイタリア政府に頼まれた。温家宝首相は、債券を追加で購入すると示唆しつつ、伝統的な外交姿勢を示した。慎重に、漸進的に、中国の国益に限定する。

しかし今、中国は国益をより広い意味で再定義するときだろう。中国は世界システムの責任ある参加者a “responsible stakeholder” in the global systemである。もし世界経済が次の不況に入れば、欧米を市場とする中国経済も大きなダメージを受ける。

その見返りに中国は、IMFでより大きな発言力を得るだろう。ラガルド専務理事の次は中国人であろう。債務におぼれる世界ではパワーが債権者にシフトする。第一次世界大戦後に、ヨーロッパとドイツの賠償金問題を救ったのはアメリカだった。その後、アメリカは世界政治の主要なプレーヤーになる。中国もそうだ。

Project Syndicate 2011-09-15

Thinking the Unthinkable in Europe

George Soros

WSJ SEPTEMBER 16, 2011

Dollars to the European Rescue

Project Syndicate 2011-09-16

The ECB’s Moment of Decision

Gene Frieda

WP Friday, September 16, 2011

Is another banking crisis looming in Europe?

By Robert J. Samuelson

FT September 16, 2011

Eurozone: A nightmare scenario

By Chris Giles

ユーロ圏をめぐってはメルケル首相は明確に指示している。しかし、政治型投資家たちはギリシャのデフォルトを否定できない。

どのような事情からギリシャはデフォルトするか? その場合、他の国にもユーロ圏離脱のリスクが高まるが、ECBはそれを阻止できるか? ラテンアメリカの経験やアルゼンチンは何を意味するか?

FT September 16, 2011

Democracy’s slow cure for the euro


l  制度の想像力

Project Syndicate 2011-09-12

The Crisis of Fiscal Imagination

Dani Rodrik

問題の解決は難しくない。民主主義がそれを妨げている。すなわち、民主主義は短期的な目標(次の選挙)を超えて中期の目標を取引することが難しい。アメリカでもヨーロッパでも、政治家は約束を守れない(信用できない)のだ。

アメリカの財政再建が必要なことは明白だ。しかし、短期的に景気刺激策も必要だ。しかし、オバマ大統領が短期の刺激策を提案すれば、それは長期の再建計画を示しても信用されず、歯止めのない放漫財政であると非難される。

ヨーロッパはさらに深刻だ。財政赤字の大きな国の債券が次々に資本市場で攻撃されている。彼らは民営化、支出削減、構造改革を提案するが、それは失業を増やし、不況が深まって財政赤字を増やす。ユーロ圏には金融政策が一つしかないことも問題だ。

解決策を示すことは難しくない。ユーロ圏で信用力の高い国は、ギリシャやイタリアの債券発行を、ユーロ債などで、保証してやればよい。その代わりに、高債務国は多年後にわたる財政制度改革と競争力改善の計画を実行する。改革の成果は中期的にしか現れない。

ここでも問題は約束を守るかどうかだ。ドイツの政治家は自分の有権者たちに、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの政府が現在の指導者の約束を将来も守ると信用してもらえない。そうなれば、ユーロ圏の債務国は緊縮策と債務危機の悪循環になる。

民主主義が将来の政治家に約束を守らせる制度的な工夫は、中央銀行のように、独立の権限を得た機関に政治的な判断とは区別した中長期の目標達成を委ねることだ。残念ながら、欧米の政府は財政政策に対してこれを行うことは考えない。

金融政策に比べて、財政政策はトレード・オフになる競争的な問題が多く、中央銀行と同じ独立した制度は実行できないし、望ましくない。しかし、独自の委員会が景気循環と債務水準に合わせた財政赤字の望ましい規模を示すことはできるだろう。

ヨーロッパでは、ギリシャやイタリアなど、赤字国の財政再建をベルリンで決めるだろう。共通の財政政策決定には、ギリシャやイタリアの政治指導者も参加するだろう。財政統合が必要だと認められるが、それをどのように受け入れるのかは政治家たちに合意できない。ドイツ人がギリシャ人との政治共同体を築くという考えに従えないなら、経済同盟も崩壊する。

政治家たちに制度的想像力が不足している。


guardian.co.uk, Sunday 11 September 2011

Israel must come to terms with its changing neighbours

Peter Preston

FT September 12, 2011

Palestinians push for UN recognition

FP SEPTEMBER 14, 2011

Think Again: The Two-State Solution

BY MICHAEL A. COHEN

FT September 15, 2011

Israel should back a Palestinian state

By Philip Stephens

中東世界にアラブの春が起きた以上、イスラエルが何も変わらないままでは生き残れない。パレスチナ国家を求める国連総会での決議を控えるようにアッバスを説得するため、4者協議(国連、アメリカ、EU、ロシア)の代表としてトニー・ブレアも参加するだろう。

アラブの春は中東ン地政学的な配置を変えた。イスラエルの孤立は深まるだろう。


FT September 11, 2011

An olive branch to Obama: I will share the pain

By Steve Schwarzman (chairman, chief executive and co-founder of the Blackstone Group)


NYT September 14, 2011

Walking Out on China

By LIAO YIWU


l  保護主義

FT September 12, 2011

The long slide into protectionism

By Gideon Rachman

FP Thursday, September 15, 2011

The protectionism humbug

Posted By Clyde Prestowitz

日本が第二次世界大戦後に開発した「輸出志向型新重商主義成長戦略」が広まって、金融市場の混乱と各国の不況対策に対する相互不信も深まり、最後には、急速に保護主義へと転落して行くのではないか?


NYT September 13, 2011

No Justice for Anna Politkovskaya


l  日本

(China Daily) 2011-09-16

Cooperation potential is big with Japan

By Chi Fulin

WSJ SEPTEMBER 16, 2011

Japan's Chance for Trade Leadership

By CLAYTON YEUTTER AND JONATHAN STOEL

中国とアメリカの論説が、同時に、日本に言及した記事は興味を引くでしょう。中国と日本が経済成長の点で協力による多くの利益を得られることは明らかだ。相互の貿易や投資は増え、日本の環境保護技術やサービス、教育、医療など、中国において多くのビジネスチャンスがあるだろう。

他方、アメリカは日本に対してTPPへの参加を呼び掛けている。日本は世界市場を必要としているからだ。日本はアジア太平洋の市場拡大を推進し、国内改革を進めると同時に、世界経済の回復に指導力を発揮するべきだ。

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The Economist, September 3rd 2011

Ten years on

A new prime minister for Japan: Here we go again

Politics in emerging markets: The new middle classes rise up

Barack Obama’s new economist: Micro scope

Charlemagne: The end of Monnet

Economics focus: Too strong for comfort

(コメント) 911は今も歴史を変えている。アメリカが反撃し、世界の脆弱さを修復することに成果を上げているからだ。しかし、控えめな推定によっても、137000人の市民がイラク、アフガニスタン、パキスタンなどで殺害され、780万人の難民が発生した。しかも、アメリカが撤退するイラクには、民主的でも、親米的でもない政権が残る。政治家たちは人権を尊重することもなく、投票を歓迎することもない。中東がジハードによって変わるのではなく、アラブの春に目覚めた。もちろん、これはアメリカの勝利ではない。NATOは解体寸前であり、パキスタンという核武装した危険な国家を残した。・・・

10年を経て、多くの論説が出る最後の年である、と予感させます。アメリカは国内に回帰し、またアジアのバランス・オブ・パワーが重視されます。日本の新首相には、何の期待も示しません。

オバマが指名した新しい経済諮問委員会の委員長はプリンストン大学のミクロ経済学者Alan Kruegerです。それまでの委員長Christina Romerは、大恐慌に関するマクロ経済学者でした。再選に向けたオバマの政策手段としては、巨額の財政刺激策といったマクロ政策ではなく、さまざまなミクロ政策を提案し、共和党の支持を得て実現するしかないからです。

シャルルマーニュの記事は、ジャン・モネのヨーロッパ統合観とその限界です。それは漸進主義であり、エリート主義と民衆の支持とをバランスするものでした。最初から大計画があるのではなく、官僚たちが具体的な改革を積み重ねたのです。主権を失うことへの各国の抵抗は、「民主主義の赤字」という批判を生みました。今、通貨を共有しても、財布を共有することは難しい。

オーストラリア・ドルの増価は、2009年初めから43%に達しています。オランダ病が問われます。しかし、それは悪いことか? 製造業の喪失、資本流入規制、巨額の為替介入、あるいは、増価とともに生きる産業構造を目指す。

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IPEの想像力 9/19/11

パソコンが壊れて、少し(かなり!)パニックになりました。まるでドライヤーか洗濯機のような音がするのです。それはないよな・・・と、異常を確信しました。

ともかくシステムは生きているようなので、ハード・ディスクが割れる? あるいは、パソコンが火を噴く?前に、データを保存しなければなりません。ところで・・・本当に皆さんは、外部のハード・ディスクに毎日データをバックアップしていますか? 企業や営業所ならそうかもしれませんが・・・ノーマルな個人でも。しかし、私はダメでした。

新しいパソコンに様々な設定をするのも難しい。この数日、たっぷり悩んでいます。これは取引コストですね。これを一気に減少させる技術的・制度的革新を期待します。

為替レートの変動もそうです。為替レートが完全に固定され、あるいは、共通通貨を採用すれば、為替リスクに関する取引コストはなくなります。貿易や投資が増えるでしょう。しかし、為替レート(あるいは価格)が変化しないときは、他の要因が変化します。たとえば、金利や生産量・雇用水準です。国際金本位制は、決して、現代に比べて安定した時代ではなかった、というわけです。

なぜ一国の内部では為替レートを失ってもよいのか? なぜ香港は為替レートをドルに固定できるのか? なぜ東北の被災地は東京の金利や為替レートと同じでよいのか? なぜギリシャやアイルランドはドイツと同じなのか? なぜ・・・

パソコンが壊れた私のような技術音痴の個人にも、超国家的解決法があるはずです。パソコンのOSやアプリケーション・ソフトに統一した規格とシステム間の移行保証を求めます。インターネット上に様々なソフトを登録し、その互換性やデータの移行を検証し、作業を詳しく報告・開示するセンターを設けてください。個人でもするし、代行業者も現れるでしょう。移行できないソフトや作業が煩雑なケースは、金融デリバティブを取り締まるように、利用者に警告し、ときには一般の利用を禁止します。

あるいは、それ(Windowsやドルからの離脱)をマイクロソフトやアメリカ政府が拒むなら、日本のメーカーと政府は中国やインドと連携してはどうでしょうか? 共通のアジアOSやアジア版Officeを開発して、インターネット上において、多言語が完全に自由に互換できるようにしてください。5万円のパソコンでも、あるいは、無料で配られる携帯端末でも、それさえあればアジアにおける言語と通貨の違いがなくなるのです。

それは、生産者や消費者にとっても、究極の円高対策でしょう。為替レートの変化は、今よりもはるかにその利益と損失を即座に、しかも、均等に実現します。企業は仕入れ先や輸出相手を容易に変えることができ、消費者はインターネットでグローバルな価格を検索します。わずかな為替レートの変化によって、不均衡の調整が進むし、それゆえ為替レートの変動を避けるために政策協調や制度改革が避けられません。そうなれば政治家たちは、目先の為替変動に騒ぐことなく(なぜならほとんど変動しないのですから)、中長期的な政策決定の枠組みや制度改革を、国境を越えて常に議論するのです。

安全保障上の危険地帯を除けば、インターネットと物流を担う世界企業、各地の輸送業者の連携によって、世界は緊密に統合されます。それは、世界企業・銀行(とその通貨や国家)への権力集中を意味する、と批判されそうです。

しかし、結局、政治家や企業が何をもくろんでも、重要なのは消費者です。クラウド・コンピューティングが話題になって、これでやっとWindowsの地代を支払う世界から解放されるかもしれない、と私は思いました。パソコンは空っぽの端末でしかなく、様々なシステムやソフトはクラウド内の共有センターから、有償・無償で利用すればよいのです。様々な利用者がグローバルな組合を結成し、利用者のために改善を要求します。

同時に、地域の政治共同体は、生活水準や雇用を確保するような政策手段を開発しなければなりません。それが移民を含めて、地域に固有の産業や文化、有能な人々を中心とした諸都市と農村の盛衰を決めるのです。

私は、移行させたいパソコンやソフトに関する情報と作業を、中国やインドの技術者に協力してもらい、あるいは、すべて委ねたいです。インターネット上であれ、彼らが移住して来るのであれ、情報や成長モデルを静かに共有します。

しかし、パソコンが次々に火を噴いたら、この世界はどうなるのか? 安全保障、情報環境、国際通貨、・・・むしろ安価なパソコンの普及が国際基準とユニバーサル秩序を築くかもしれませんね。

・・・まだわたしは、Outlook Expressの旧メールを移せないままで、困っています。・・・以前のソフトがなければ、そのデータも使えません。・・・インターネットにはやっとつながりました。・・・新世界秩序は旧種族を穏やかに受け入れてほしいです。

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