今週のReview
9/12-17
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財政再建 ・・・USの再生 ・・・USと中国 ・・・9・11の回想 ・・・USのアジア戦略 ・・・ユーロ改革最終案 ・・・金融市場とG20/US ・・・スイス・フラン
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l 財政再建
FT September 1, 2011
To solve the fiscal dilemma, look to the details
By Kemal Dervis
IMFのラガルド専務理事が述べたように、市場は財政赤字を恐れているが、低成長やマイナス成長をもっと恐れている。成長が世界中で減速するとき、先進経済の財政再建が支持され、新興市場のインフレ懸念は緩和される。しかし、どちらにも問題は残る。
「今すぐに財政刺激策を採用して、赤字削減は先送りにする」という単純な議論には警戒しなければならない。企業も家計も、現在の所得だけで支出を決めない。将来を予想する。リカードの等価原理を支持しなくても、公的債務を増やし続けることに不安を感じれば、現在の消費を抑えるだろう。経済危機からは逃れられない。なぜなら、成長は減速し、刺激策は自己破壊的であるから。
財政赤字の問題を解くには、総額ではなく細部と構造を見なければならない。将来の増税を予想する、あるいは、約束した減税策は、景気刺激にならない。逆に、インフラを改善するために連邦政府や州が支出を増やすことは、そのコストを通行料金などで賄えるなら、民間部門の生産性も改善するから、強い拡大効果がある。実質金利はほとんどゼロに近いので、投資の利回りが少しでもプラスであれば、そのような支出は政府のバランス・シートを改善する。良好なインフラは民間活動を助け、利潤を増やす。
社会給付の改革も、それが受給者の不安を高めなければ、景気回復に役立つ。しかし、たとえば、受給年齢の引き上げだけでは、人々は支出を減らすだろう。負担する能力のある者にコストを分担してもらい、効率性を高めるような改革には、そのようなデフレ効果が少ない。
単純さは素晴らしい。しかし、刺激策は明確に効果的な分野を絞り込み、また赤字削減は即座に有効需要を増やすこと、政府のバランス・シートを意識すること、が求められる。異なる集団の行動を予想し、公的投資と純粋な消費とを区別する。
FT September 1, 2011
Britain must escape its longest depression
By Martin Wolf
l USの再生
NYT September 1, 2011
Argentina’s Turnaround Tango
By IAN MOUNT
アメリカ政府はアルゼンチンからも学べるだろう。アルゼンチンはかつて世界第8位の経済規模があった。しかし、その後は軍事政権と政策の失敗により後退し、2001年、1000億ドルの公的債務をデフォルトにした。そして3500万人の国民の半数以上が貧困になった。
しかしその後、経済はUターンして回復した。国際商品市場のブームだけでなく、政府は介入によって通貨価値を安くした。それは輸出を伸ばし、輸入を抑制した。輸入と輸出に課税し、ニュー・ディール型の公共投資を行った。また社会のセーフティー・ネットを強化した。たとえば、野党の支持を得て、190万の低所得家計に子供一人当たり毎月42ドルを支給した。それは景気を刺激し、政治的な支持も得た。
Project Syndicate 2011-09-02
The Great Bank Robbery
Nassim Nicholas Taleb and Mark Spitznagel
アメリカ政府は2兆2000億ドルも銀行に支払った。この5年を含めるなら、その額は5兆ドルに及ぶだろう。それは、道路、学校、その他の公共工事に使われたのではなく、銀行重役・被雇用者の個人口座に消えたのだ。
FP Friday, September 2, 2011
Obama's Immelt problem
Posted By Clyde Prestowitz
NYT September 5, 2011
Where the Jobs Aren’t
By DAVID BROOKS
仕事はどこから来るのか? グリーン・エコノミーが期待された。しかし、大規模な技術開発投資も成果をもたらしていない。Investor’s Business Dailyによれば、雇用一人につき、200万ドルも投資したことになる。
McKinseyも、クリーン・エネルギーのための投資は高度な技術を持つエンジニアを雇用するのであり、アメリカの製造業労働者には雇用をもたらさない。州政府から数1千万ドルの補助金を得たEvergreen Solar社も、倒産するより、中国へ生産拠点の移転を決めた。
NYT September 5, 2011
Yes, We Need Jobs. But What Kind?
By PAUL OSTERMAN
テキサス州知事、Rick Perryは、雇用創出に成功したことを自慢している。2000年から2010年にかけて、10年間で雇用が42%も増えた。全国平均は1%だ。
しかし、賃金水準は余りにも低い。かつて安定した職場にいた労働者の多くは解雇されている。人々は職場と賃金を心配し、子供の面倒を見る時間もない。今にもホームレスになる生活である、と不安を感じている。子供たちはTVばかりを観て、弟や妹の世話をし、早く大人びる。
単に仕事が増えるだけではなく、良い仕事が増えなければならない。連邦政府は労働者の生活水準を高めるべきだ。リオ・グランデ・ヴァレーの雇用創出モデルを広めたてほしくない。
WP September 5, 2011
The fallacy of post-industrial prosperity
By Harold Meyerson
アメリカ人がこの40年間で聞いた多くの嘘の中で、最もひどい嘘は、「ポスト工業社会が来る」という嘘だ。その転換は、結局、工業社会よりも繁栄し、安定するはずだった。
1972年、社会学者のダニエル・ベルが“The Coming of Post-Industrial Society,” という本を書いた。その後、GEのJack Welchが新しい経済秩序を説いた。アメリカはグローバル経済においても先端技術を支配し、世界中の未熟練労働者を組織する、と。
経済は製造業の灰の中からよみがえるのではなく、灰そのものになった。それは、過去数10年のThe Wall Street-Wal-Mart economyが、何百万人もの製造業雇用を海外に移転し、その一方で、サービス・小売部門の低賃金雇用をもたらしたからだ。所得水準は低迷したが、消費者はクレジット・カードを頼りに消費し続けた。また、それが崩壊するまで、住宅建設が繁栄した。
Michael Greenstone and Adam Looneyは、ハミルトン・プロジェクトにおいて、衝撃的な数字を示した。すなわち、1969年から2009年の間の40年間で、25歳から64歳までの所得の中央値が28%も低下した。金融危機を経て、アメリカでも経済思想の逆転が進むだろう。
ポスト工業社会のアメリカは破産した。将来に描くのは、再工業化したアメリカだ。
FT September 6, 2011
No, America is not going the way of Japan
By Paul Sheard
金融危機後のアメリカの回復は弱く、脆い。GDPは危機前の水準を超えていないし、連銀の金融政策は異常な緩和状態にあり、長期金利も低い。アメリカは日本の1990年代と同じ道を進むのか?
日本は、三つの重大な政策失敗によってデフレを続けた。1.危機の認識が遅かった。銀行システムの回復に時間がかかった。2.デフレを回避する日銀の強い政策が遅れた。3.景気回復が固まる前に増税して、回復を頓挫させた。
アメリカはデフレを回避している。しかし、早期の財政赤字削減は同じ失敗につながる、とビジネス界は心配している。
FT September 7, 2011
How to attack America’s jobs depression
By Robert Reich
オバマ大統領は、大統領選挙に向けて、共和党支配の議会と妥協して小規模の刺激策を通過させるプランBを主張しています。それは景気を十分に刺激せず、多くの雇用をもたらさない点で間違いでしょう。
guardian.co.uk, Thursday 8 September 2011
Let's find progressive ways to tax the winners in our trickle-up economy
Simon Jenkins
guardian.co.uk, Thursday 8 September 2011
The false promise of Obama's trade deals
Kevin Gallagher and Timothy Wise
WTOの交渉が破たんしてから、21世紀の貿易自由化交渉として、アメリカはTPP(the Trans-Pacific Partnership)を重視している。今週、オバマ政権は、シカゴで開催する。
しかし、それは事実上、オバマが選挙戦で反対してきたNAFTA型の自由貿易協定だ。NAFTAは、労働や環境の権利について「リッピ・サービス」しか含まない、と。
雇用や成長、金融サービスの自由化について、アメリカに有利な、非対称的な合意である。
WSJ SEPTEMBER 9, 2011
The Euro's Problems Are America's Too
By DESMOND LACHMAN
ユーロ圏の銀行システムがさらされているリスクを思うと、オバマは夜も眠れないだろう。2012年の大統領選挙で争点となるのは、経済(景気、雇用)、ただ一つだ。
l USと中国
FT September 2, 2011
China and the world: A chilly reception
By Andrew Ward, Jamil Anderlini and Leslie Hook
アイスランドの観光娯楽産業the Northern Lightsに中国のビジネスマンHuang Nuboが投資した。それは中国共産党がアイスランドの戦略的に重要な位置を意識して、土地を確保するための「トロイの木馬」なのか? ヨーロッパとアメリカの中間にあり、海路や北極圏の資源探査に重要な拠点だ。
Global Times | September 05, 2011
No end in sight for crisis of Western capitalism
By Guo Ji
BLOOMBERG Sep 6, 2011
China in Time of Millionaires Snubs Neighbor
By William Pesek
FP SEPTEMBER 6, 2011
Red Dawn
BY CHARLES KENNY
アメリカの一極世界はわずか10年で完全に消えた。中国の台頭をアメリカは懸念する。購買力平価でみれば、中国の市場規模はすでにアメリカを超えた。Arvind Subramanianの研究を紹介しながら、イギリスやアメリカを超えて世界経済の指導的な地位に就く中国を予想する。
Angus Maddisonのデータで見ても、中国は過去500年間で最大のシェアを占める国家になる。もちろん、最も豊かな国ではない。貿易に比べて、技術や知識ではまだ追い上げが続く過程であり、国際投資では大幅に遅れている。資本規制をどうするか、政府が意識したとしても、人民元が国際通貨になるかどうかも分からない。しかし、重要なことは、19世紀や20世紀と違い、イギリスやアメリカ以上に、中国経済は世界経済に深く統合されている、ということだ。
中国はグローバリゼーションの一部として急速に「追い上げ」型成長の加速に成功してきた。中国は豊かな国で普及している最新技術を自由に輸入し、輸出の急増に際して生じる摩擦や輸入国側の保護主義をWTOが大幅に抑えてきた。中国は全く新しいタイプのグローバル・パワーなのである。
今後も、アメリカの軍事的優位を続くだろう。また、中国はグローバルな貿易・金融のリンクに依存しており、安全保障でも経済成長でも、アメリカの重要なパートナーである。多角主義的な国際システムを維持することが、中国自信の重要な国益だ。
たとえアメリカ人の多くが恐れる(嫌う)としても、中国の台頭をアメリカは歓迎するだろう。
FT September 7, 2011
China’s rich list has a new #1
by Patti Waldmeir
FT September 7, 2011
China’s migrant workers expect more
By John Gapper
「オバマ大統領は、今日、アメリカの失業問題に対する彼の雇用計画を発表するだろう。それは、(すでに中国において多く行われているような)インフラ投資を含むはずだ。しかし、深圳市(Shenzhen)で働く出稼ぎの女子労働者、Li嬢は中国の雇用危機を象徴している。そこでは急速に成長する経済が多くの雇用をもたらしている。しかし、労働者たちの希望と不満は、上昇する彼らの報酬よりも、さらに膨れ上がっている。中国の雇用問題はアメリカほど緊急性はないかもしれないが、同様に扱いにくい。1億4500万人の出稼ぎ労働者の不満をなだめることは、経済改革や地方の居住システムを改善するだけでなく、金融資源に対する共産党の厳しい管理を緩めることになる。」
彼女たちは、もはや極端な貧困から脱した故郷に仕送りすることもなく、都市での生活を続けたいと願っている。彼らの不満を解消するためには、中国政府は二つの改革を進めねばならない。すなわち、1.都市と農村を分ける戸籍制度の廃止。2.腐敗・汚職を招く、すべての国家管理の廃止。
NYT September 7, 2011
China’s Rise Isn’t Our Demise
By JOSEPH R. BIDEN Jr.
副大統領の中国訪問は、アメリカからの懇請や謝罪ではないか? 国際秩序の再編に向けた共謀・裏取引ではないか? など、内外の批判を喚起したはずです。
アメリカ国民に向けて、副大統領はアメリカ政府の取るべき方針を明快に説得しています。
中国の成長はアメリカにとって脅威である。中国の軍事力はアジア太平洋地域における封じ込めを必要とする。バイデンはこうした主張に反対します。
一方で、中国の軍備増強には、地域の同盟諸国とともにアメリカが対抗する。アメリカは将来もこの地域にとどまる。しかし、同時に、中国の繁栄はアメリカの繁栄をもたらす。衰退ではない。貿易額で観ても、アメリカは中国への輸出を増やしており、それはアメリカ人の雇用を増やしている。中国の指導者たちも、経済を輸出から国内消費やサービスに転換することを考えている。
米中は協力もするが、競争は続くだろう。しかもこの競争はアメリカに繁栄をもたらす。
確かに、アメリカは中国からの投資に負っている。しかし、政府債務の8%であり、70%はアメリカ国民に負っている。我々は内外に対して債務を必ず支払い、デフォルトはあり得ない。
さらに重要なことは、21世紀の競争は、20世紀と違って、人々の創造的な能力、自由な技術革新によって決まることだ。アメリカはこの点に強みがあり、中国は弱い。我々は将来もアメリカ人に良い仕事を確保するつもりだ。アメリカの将来はアメリカにかかっている。今以上に強くなるだろう。
アメリカは衰退しない。中国もそうだ。
Global Times | September 08, 2011
US remembers the partnerships it needs
By Barack Obama
この論説が中国のために書かれたとは思えませんが、少なくとも中国の英字紙が紹介しています。
オバマ大統領は、9・11に示されたアメリカと国際社会の団結を思い返します。90カ国以上からニューヨークに来て働いていた3000人近い無辜の市民たちが犠牲になった。その悲しみに世界中の都市が黙とうし、教会や寺院が祈ってくれた。
「大統領として、私はグローバルな協力を再生するために働いた。世界が直面する何打を解決するには、それが必要である。」
未来の平和と繁栄を求める諸国と人々は、アメリカのパートナーである。国内に経済危機を抱えてもアメリカは世界における特別な役割を引き受けるだろう。
9・11の犯人たちは、アメリカと世界の間に亀裂を生じることを狙った。彼らは失敗したのだ。
BLOOMBERG Sep 8, 2011
China May Not Be Ready for Prime Time in 2015: The Ticker
By William Pesek
l 9・11の回想
WP September 2, 2011
Bush and Cheney remind us how we got into this mess
By Eugene Robinson
ジョージ・W・ブッシュはNational Geographicのインタビューに応え、ディック・チェイニーは回想録を出版した。こうしたわれわれは現在の惨状に至る過程が偶然ではないことを理解できた。彼らの努力に感謝しよう。
共和党は、この大きな状況を忘れて、愚かにもオバマ大統領を批判する。ブッシュ=チェイニーが決めた二つの戦争と多くの政策失敗を、共和党は支持してきたのだ。また、金融の規制緩和を称賛し、危機が起きてから8000億ドルのTARPで銀行を救済したのだ。
WP September 2, 2011
Five myths about 9/11
By Brian Michael Jenkins
1.9・11は想像もできなかった。2.テロ攻撃はアルカイダの戦略上の勝利であった。3.アメリカ政府の反応は過剰であった。4.書くテロ攻撃も避けがたいだろう。5.アメリカ市民の自由は大きく削られた。
こうした俗説にBrian Michael Jenkinsは反対しています。
WP September 3, 2011
The price we paid for the war on terror
By Anne Applebaum
1989年のベルリンの壁崩壊で世界は大きく変わった。「新しい世界秩序」と呼ばれながら、その中身は理解できず、アメリカの外交政策は定まらなかった。9・11は、冷戦に代わる「テロとの戦争」を提供し、すべての政策や組織を変更する新しい秩序を与えた。
それは、もっと重要な、多方面で起きる問題からアメリカの関心を奪った。中国の台頭とその周辺地域の変化、ロシアの変化、メキシコとの移民政策、グローバルな経済環境の変化が捉えられなかった。
guardian.co.uk, Sunday 4 September 2011
Can the United States move beyond the narcissism of 9/11?
Gary Younge
9・11の直後、国務省顧問であったCondoleezza Riceは、スタッフたちに述べた。「この機会をどうやって利用するか」を真剣に考えてほしい、と。
2004年に、ブッシュの参謀の一人(Karl Roveだと信じられている)はNYTのジャーナリストに、認識可能な現実の法的解釈を求める人々について、冗談を言った。「世界はもはやそんなふうに動いていない。我々は帝国であり、われわれが行動するとき、われわれが現実を創るのだ。あなたが現実を研究する、まあ、法的に研究する間に、われわれは再び鼓動して、現実を変える。・・・我々は歴史の主体である。あなたたちは、皆、われわれがやることを研究するだけだ。」
しかし、世界はそんなふうに動かなかった。10年経って、現実はそのレトリックを倒した。
guardian.co.uk, Monday 5 September 2011
What impact did 9/11 have on the world?
Simon Jenkins, Jonathan Powell, Mohammed Hanif, PJ Crowley, Orzala Ashraf Nemat, George Galloway, Aditya Chakrabortty, Inayat Bunglawala and Carne Ross
FT September 5, 2011
The end of US hegemony: Legacy of 9/11
By Lionel Barber
この10年間で最も重要な三つの単語は、「テロとの戦争“war on terror”」ではなく、「メイド・イン・チャイナ“made in China”」である。
NYT September 6, 2011
The Whole Truth and Nothing But
By THOMAS L. FRIEDMAN
独裁者は嘘をつく。そして崩壊した、とKishore Mahbubaniは述べた。同じように、民主主義も嘘をついて混乱を招いた、と主張する。財政統合なしにはユーロ圏は上手くいかない。アメリカ政府は、景気回復がもうすぐ始まると約束する。
国家の指導者が、国民の目を見て困難な真実を語ったのは、いつのことか? 9・11の10周年と、オバマの雇用談話が発表される前に、それを考えておくことだ。
アイゼンハワーが冷戦と向き合った姿勢と、ジョージ・W・ブッシュが9・11を利用した姿勢は異なる。冷戦は、アメリカ国内の困難な目標を達成することに利用された。しかし、ブッシュは逆だ。彼は9・11を利用して減税し、二つの戦争を始めた。
「想像してみることだ。もし9月12日の朝、いくつかの提案があったように、ブッシュ大統領が1ガロン当たり1ドルのガソリン税を提唱し、それで教育、インフラ、政府の研究支援に役立て、戦費をまかない、中東の石油に対する依存を減らすことに使っていたら、どうなったか? 」
WP September 6, 2011
Sept. 11, the day that never ends
By Richard Cohen
guardian.co.uk, Wednesday 7 September 2011
The years since 9/11 already look like a detour, not the main road of history
Timothy Garton Ash
2031年の9・11に、過去30年を振り返るとき、テロとの戦争を重視する者がいるだろうか? 私は、居ないと思う。世界政治を決めるのは、イスラム過激派との戦争ではなく、世界のパワーが西から東に移ったこと、はるかに強力になった中国と弱くなったアメリカに示されるグローバルな地政学的変化である。西側は、次第に光から闇の側に移る。
戦争のコストは膨大だ。しかし、機会費用を考えるなら、その失われたエネルギーと想像力を忘れてはならない。その国を理解したかったら、ヒーローを知ることだ。この10年間、それはビジネス界のスティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツであったが、同時に、海軍、特殊部隊、消防士、などの制服姿だった。
guardian.co.uk, Wednesday 7 September 2011
The legacy of 9/11: endless war without oversight
Hina Shamsi
Project Syndicate 2011-09-07
The Spirit of September 12
Michael Mandelbaum
9・11の再現を防いだことはアメリカの勝利だった。そのコストに値するものだ。しかし、アメリカの将来を決めるのは4つの課題に応えることができるか、である。1.グローバリゼーション、2.情報技術革命、3.公的債務、4.エネルギー利用。
超党派的な支持によって、政府支出を見直し、増税し、投資しなければならない。
FP SEPTEMBER 7, 2011
Mission Accomplished. Finally.
BY BRUCE ACKERMAN
BLOOMBERG Sep 8, 2011
The First Shot in the War on Terrorism: John B. Taylor
By John B. Taylor
WSJ SEPTEMBER 8, 2011
From 9/11 to the Arab Spring
By FOUAD AJAMI
l USのアジア戦略
FP SEPTEMBER 2, 2011
Over the Horizon
BY JAMES TRAUB
9・11から10年。アメリカは中国という本当の敵を見失って、テロ集団のような非国家主体を追跡していたのか?
中国はアメリカの財務省証券を1兆5000億ドルも保有し、人民元の為替レートを調整するように求めても拒み続け、アメリカとの貿易不均衡を拡大し、アメリカの不動産やその他の資産を購入し始めている。中国の軍備拡大はアジアにおけるアメリカの同盟諸国を脅かし、アメリカの安全保障の約束を疑い始めている。
他方、他の意見では、中国は現状維持を支持しており、軍備拡大は2国間・多国間の信頼構築の範囲内で行われる、と主張される。
しかし、中国海軍の増強は、南シナ海や日本海ですでに摩擦を生じており、Kaplanは、アメリカが準備すべき将来の戦争は、中東の砂漠ではなく、南シナ海にある、と考える。
中国の「平和的台頭(和平演変)」は決して言葉だけでなく、中国政府の外交の指導原理なのであるから、これを疑うことは悪循環を招く、という警告もある。報告書"Asian Alliances in the 21st Century"は、アジアが新しい戦略概念を共有するように求めている。
NYT September 4, 2011
China’s Challenge at Sea
By AARON L. FRIEDBERG
WSJ SEPTEMBER 5, 2011
Asia's Great Naval Rivalry
By MOHAN MALIK
FP Tuesday, September 6, 2011
Avoiding Armageddon with China
Posted By Dan Blumenthal, Mark Stokes, Michael Mazza
James Traubが我々の報告を認めたことは喜ばしい。しかし、現実には、過去のすべての新興大国と同じように、自分たちが弱い時期に決められたルールや領土、法律を変えたいと願っている。中国の軍備拡大は周辺諸国やアメリカを威嚇している。
アメリカが中国に対抗する道は残されている。しかし、財政再建が政治で重視される中で、米軍の装備は低下するだろう。アメリカの作戦計画やそれに必要な資源を削るのか? アメリカの撤退を、台湾や日本、南シナ海の関係諸国はどう見るか? アジアを中国に平和的に移譲するのか? その時地域の核軍拡競争はどうなるか? アメリカはアジアとの貿易について中国の許しを得るのか?
中国は冷戦時代の単純な敵対国ではない。経済的にはパートナーであり、外交においても重要な役割を期待している。それと同時に、アメリカは中国の軍事力に対するバランスを取り、中国が敵対的になる場合にも備えるべきだ。つまり、アメリカは正しく、中国を包摂し、バランスを取り、そのリスクに備えるのだ。
中国を封じ込める戦略は自己実現的な破滅をもたらす予言である、とJames Traubは拒む。しかし、他方で、中国に対する宥和的姿勢が、必ず、自己実現的に友好国を創るわけではない。
アメリカが何をしようとも、すでに中国の軍備拡大にアジア諸国は反応している。我々はアメリカがアジアの軍拡競争を放置するのではなく、アジアの安全保障に強い介入を行うべきだと考える。アメリカが情報や監視、特別な偵察行動を行うことで、また同盟諸国や友好諸国のそうした能力を高めることで、戦争のリスクを抑えるのだ。
この戦略によってアジアが均衡を保つなら、中国を現状維持国家に変えることができる。
FT September 7, 2011
Time to talk to the regime that cannot clothe its troops
By David Pilling
WP Sunday, September 3, 2011
A successful post-Bush foreign policy
By David Ignatius
LAT September 6, 2011
Goldberg: Obama, abroad, is adrift
Jonah Goldberg
l ユーロ改革最終案
(China Daily European Weekly) 2011-09-02
Time to get to the root of the problem
By Giles Chance
中央銀行の金融緩和にできることは限られている。今は銀行システムに資本を増やすことだ。世界の政治指導者たちが行動を求められている。フランスのサルコジ大統領が、急遽、中国へ飛んだ。それはギリシャ救済を含むユーロ危機への中国の支持を確実にするためだ。
FT September 4, 2011
The worst of the euro crisis is yet to come
By Wolfgang Münchau
SPIEGEL ONLINE 09/05/2011
Runaway Debts
Doubts Escalate about Greek Rescue Deal
By Christoph Schult, Anne Seith and Christoph Pauly
SPIEGEL ONLINE 09/05/2011
Divide and Rescue
Berlin Lays Groundwork for a Two-Speed Europe
SPIEGEL ONLINE 09/05/2011
SPIEGEL Interview with Gerhard Schröder
'Europe Needs to Wake Up'
FT September 5, 2011
Why austerity is only cure for the eurozone
By Wolfgang Schäuble
支払が超過する政府は債務を維持できなくなる。債務の増加は長期の成長を損なう。財政再建だけが、短期的な破綻と長期の衰退を免れる唯一の道だ。公的部門を縮小し、労働市場を弾力化する。それは消費者や投資家の信頼を高め、短期的な消費の減少を経て、失業の減少など、中期の成果をもたらす。
ユーロ圏の国は、資本市場から切り離されても、条件付きの融資を得られる。そのようにして得られる時間で、財政を再建し、競争力を回復しなければならない。この戦略にはリスクがあるけれど、それを拒むことはさらに危険だ。政府は市場による規律を必要としているのであって、問題は、市場が必ずしも合理的に行動しないことだ。
金融危機の真実とは、リスクを取る者が債務を負うべきだ、ということだ。この関係が薄れると、危機が準備される。だから、一気にユーロ圏の財政統合を望む政治家やエコノミストたちは間違っている。
FT September 5, 2011
Hang on to your purse, Ms Merkel
By Gideon Rachman
メルケル首相が決断力と行動力を欠いていることは、ヨーロッパの保守派指導者たちの間でも非難されている。ユーロを救済するためには何でもする、と約束したはずではないか?
しかし、ドイツ政府は大胆な選択を取らないことには理由がある。むしろその冷静な対応に、ヨーロッパ諸国は感謝するべきだろう。コールが行ったような大胆な決断が、その後の混乱をもたらしている。
1.メルケル首相が行動するときの制約を忘れてはならない。救済融資はドイツの憲法裁判所で合憲性を問い直され、ドイツ議会で採決しなければならない。首相はこの二つに勝利すると前提できない。
2.ユーロ債を勧める者が、過去にはユーロを安定通貨として主張していた。メルケルにはユーロ債の成功を描けないが、ドイツ国民の負担が増すことはわかる。
3.南欧諸国が財源を浪費してしまうことは、タブロイド紙の誇張ではなく、歴史的に繰り返されてきた。EUの資金は汚職を増やす。
4.ドイツなら救済できるという前提が間違っている。ドイツの債務はGDPに対して83%に達しており、フランス、スペイン、イギリスよりも高い。ドイツの成長が減速し、高齢化すれば、ドイツが保証するEUの債務が過大になる。
5.ユーロを守ることはドイツの利益だ。それは、当り前だ。問題は、その手段を採用して危機を止められるか? 危機は悪化しないか? さらに、ドイツの銀行が再建を保有しているとか、ドイツ企業が分裂後のユーロ高に耐えられない、という批判も間違っている。
メルケル首相はユーロの維持を望んでいる。しかし、ドイツの政治的・経済的安定性を損なうようなことは、決して選択しない。
FT September 5, 2011
It is time for outsiders to save the single currency
By Barry Eichengreen, Peter Allen and Gary Evans
ユーロ危機は悪循環を生じており、すでにヨーロッパの指導者たちの手に余る。IMFとG20が介入して、グローバルな金融システムの再編に取り組むときだ。・・・この壮大な改革案に、あなたも感銘を受けるでしょう。
ヨーロッパの所銀行が保有する政府債券を一貫した会計と監督が必要だ。準備が不十分であれば債務の救済を止める。このような国際システムは、すでに1979年にアメリカによって創られたことがある。カントリー・リスクで損なわれた銀行の準備を増やすように、監視委員会が強制できた。それはブレディー・プランにつながり、ラテンアメリカの債務危機を解消した。
準備を要請するのは各国の銀行監督局にはできない。IMFと国際監視委員会が決めるべきだ。
第二に、EFSFには準備を増やす十分な資金がない。それはG20や資金が豊富なアジア諸国に頼るべきだ。アジア諸国はこれを望むだろう。ヨーロッパを含む世界経済の安定を望んでおり、救済されたヨーロッパに対して大きな投資が行える。G20は、アメリカ連銀に頼るだけでなく、アジア諸国の融資にもスワップを拡大するべきだ。アメリカには大統領選挙前の不測の事態も懸念される。
最後に、ヨーロッパもブレディー・プランのような債務処理メニューを示すべきだ。新債券との交換にIMF融資を利用し、株式との交換、環境保護の権利、教育、などを債務と交換する。アジアの政府系投資信託も資金を出すだろう。
IMF、G20、中国など、アジア諸国も、すでにこの危機に関わっている。危機回避への深い国際的関与は、EU指導者たちの言い訳や弁解によって遅れるが、そのたびに強まるだろう。
Project Syndicate 2011-09-05
The Eurozone’s Strength in Disunity
Harold James
ユーロ危機にもかかわらず、ユーロの為替レートは安定している。そもそも、ヨーロッパ諸国における各国通貨間の為替レートが不安定になったからユーロはできた。
1970年代の初めに固定為替レートが崩壊し、国際通貨が不安定化して各国にコストを強いた。特に、ドイツ・マルクと日本の円には資本が流入して、強くなった通貨が輸出産業を破壊した。両国は国際通貨になるのを避けようとしたが、無駄であった。
今は、国際通貨の不安定化によって、スイス、スウェーデン、ノルウェイ、カナダ、オーストラリアの通貨が増価している。こうした小国の財・サービスは競争力を失って、産業が破壊されている。
こうして、通貨的な混乱はヨーロッパの小国を、ユーロとより緊密な関係を結ぶように向かわせた。ユーロに参加した小国は、為替レートの安定だけでなく、有利な条件を金融を利用できるという利益を享受している。
普通の人々は大幅な為替レートの変動リスクに耐えられない。たとえイギリスでも、変動レートによる金融政策の有利さが強調されたが、輸出の回復はスペインの方が早かったし、インフレ圧力は将来の金融政策を制約するだろう。
もちろん、ユーロ圏には深刻なガバナンスの問題がある。他国の債務を負担したがらない大国間で戦争している。しかし、矛盾したことだが、ヨーロッパにはECBを制約するような政治的な権威はなく、公的債券を購入しろとか、ユーロを安くせよ、という政治圧力はかからない。
それゆえ、債務危機や国際通貨危機において、ユーロは信頼を高めるのだ。
WSJ SEPTEMBER 6, 2011
The Worst-Case Euro Scenario
By SAJID JAVID
SPIEGEL ONLINE 09/06/2011
Help for Poorer Neighbors
Designing a Transfer Union to Save the Euro
By Michael Sauga
ユーロ圏を財政移転同盟にすることが正しい解決策だというエコノミストも多い。単一通貨を守るために、豊かな諸国から貧しい諸国に財政移転する。1990年夏に、ドイツ・マルクが東ドイツでも採用され、その3ヵ月後に、西ドイツが東ドイツの5つの州を吸収したように。政治家やエコノミストは、同じことを全ユーロ圏にすればよい、と考えている。
合意は「全ドイツ人の連帯のしるしだ」と、当時のコール首相は称賛した。彼は、すぐに東側が「楽園」に変わると約束した。
しかし、彼の希望は何の根拠もなかった。その後、1兆4000億ユーロ(1.98兆ドル)を西側から東側に移転した。しかし、コールが述べたような楽園は実現していない。所得、輸出、生産性で見て、東側は西側の数分の1にとどまる。東の諸州は最大の失業率を示し、最高の債務依存率を示す。
「イタリアでは、豊かな北部が貧しい南部に対して、第二次世界大戦以来、最近まで、毎年500億ユーロの支援をしてきた。資金は、道路や製鉄所、中小企業の育成に使われた。しかし、これは地域格差を埋めなかった。それどころか、資金は無駄な大規模施設やマフィアのポケットにも大量に流れ込んだ。」
ベルギーでも、地域的な格差と財政移転が政治的混乱を深めている。ユーロ導入後も、対立は悪化するばかりだ。
他方、ドイツのような州が調整過程のコストを負担するのではなく、普通の人々が負担するのがアメリカのモデルだ。アメリカでは、ヨーロッパよりもはるかに進んで労働者たちが報酬の良い州へ移動する。これはもちろん、すべての州で同じ言葉が使用できるからだ。その結果、経済格差は速やかに縮小し、連邦政府の介入は少ない。
アメリカには州政府を救済するための基金はない。各州の財政赤字は政府機関の閉鎖や労働者の解雇、無給の自宅待機になる。返済は保証されないから、州の債務比率も低い。
つまり、ユーロ圏が従うべきは、ドイツの州間財政移転ではなく、アメリカ的な「競争的封建制」である。
guardian.co.uk, Wednesday 7 September 2011
Stop dithering. Only full integration can save Europe
Nouriel Roubini and Nicolas Berggruen
何カ月も試行錯誤を続けたが、ユーロ危機は頂点に達した。もはや、完全な政治統合に踏み切るしか、ユーロ圏を救う道はない。
すでに安定化基金には合意ができている。銀行部門への資本増強も必要だ。ユーロ債の発行による公共財投資も、債務国政府に悪用されない条件が必要だ。赤字主体には救済と秩序ある破産処理を用意しなければならない。
財政再建と改革を求めるなら、ユーロ圏の成長を回復させることが必要だ。ECBは金融緩和し、ユーロ圏全体の成長戦略で、競争力や成長に貢献する投資を積極的に行うべきだ。
これは、ヨーロッパの社会契約を再生する試みである。セーフティー・ネットは労働力の移動性を高め、高齢化にも対応しなければならない。そのために、ヨーロッパの諸機関は政治的な正当性を高めるべきだ。問題はすべて政治的な面を含んでおり、ユーロ圏の政治統合を推進することにつながる。
ヨーロッパの指導者たちは、改めて、ヨーロッパ統合の理想を市民に訴える必要がある。ヨーロッパに戦争がなく、自由に移動でき、経済的な繁栄を実現する条件を得たのは、戦後の統合化によるものだ。ナショナリストが求める過去から、市民たちを将来の統一に向けて呼び戻すべきだ。
guardian.co.uk, Wednesday 7 September 2011
My two-step solution to Europe's democratic and economic crisis
Stefan Collignon for the Social Europe Journal, part of the Guardian Comment Network
SPIEGEL ONLINE 09/07/2011
German Euro Ruling
Karlsruhe Demands Greater Parliamentary Role in Bailouts
By David Böcking in Karlsruhe
WP September 7
A reality check on European unity
危機が高まり、ユーロ圏の持続可能性や、EU自体の存続が疑われている。
自存できる政治体として世界に統一ヨーロッパが存在する利益は、特にアメリカにとって、大きいだろう。国家間の対立を調整し、世界貿易や政治におけるバランスを取る大国が現れる。しかし、そこではドイツのように高税率で、ギリシャのように厳しい緊縮策が続くのか? ヨーロッパ域内の様々な違いを克服できるのか? 指導者たちがヨーロッパ市民のコモン・センスを形成する力が問われている。
FT September 7, 2011
German court upholds eurozone rescue
By Quentin Peel in Berlin
FT September 7, 2011
Expulsion from the eurozone has to be the final penalty
By Mark Rutte and Jan Kees de Jager
(China Daily) 2011-09-08
High cost of inaction
FP AUGUST 9, 2011
The Euro and the Scalpel
BY EDWARD HUGH
NYT September 4, 2011
Japan’s Latest Prime Minister
首相の誕生に対して、非常に厳しい評価を示しています。ナショナリストで、戦争犯罪者を擁護し、近隣諸国と強硬策で紛争を生じ、アメリカとの友好関係と言いながら米軍基地の移設は進みそうにない。増税して財政再建を唱えるのも時期が違うだろう。経済改革を進める意欲もない。
WSJ SEPTEMBER 8, 2011
The End of Japan's China Optimism
By MICHAEL AUSLIN
ここでも、野田内閣の対中強硬姿勢を警戒しています。
l 金融市場とG20/US
Project Syndicate 2011-09-05
Divided We Fall
Gordon Brown
アメリカでは政治がまともな経済学を切り捨てた。ヨーロッパの指導者たちは、デフォルトも、切下げも赤字も刺激策も排除して、麻痺してしまった。中央銀行は、マイナスの実質金利、通貨の増刷、流動性の注入、商業銀行の救済、何でもやった。そして、限界に達した。
今は、敗北主義のために時間はない。各国の政策が出尽くしたと言われる。しかし、持続的成長と雇用への道は各国が一度唱えただけで終わってはいけない。それをグローバルな政策協調として行うのだ。
2009年4月のG20は三つの重要な課題を示した。恐慌の回避には成功した。今や、残された二つ、グローバルな金融システムと、成長のための協定を実現するときだ。IMFの推定では、マクロ政策、通商政策、構造改革を協調することで、2500万から5000万人の雇用が増え、9000万人が貧困から脱する。
深刻な金融危機は、1930年代がそうであったように、より大きな問題を示している。1990年からのグローバリゼーションは20億人の新しい生産者を世界経済に参加させた。150年間で始めて、製造業、生産額、輸出額、貿易額、投資学で、西側はその他の世界に抜かれた。2020年代の半ばに、アジアの消費はアメリカ市場の2倍になる。西側とアジアとは大きく相互依存している。
10年前、アメリカは世界経済のエンジンだった。10年後、新興市場、特にその中産階級がその役割を引き継ぐ。欧米は輸出を必要とするが、今は、中国や新興市場が西側市場の回復を必要としている。
第一に、G20の成長協定the G20 Growth Pactは広範なグローバル協調を描くものだ。中国は家計支出を増やし、消費財輸入を増やす。インドは市場を開放し、貧困層に安価な輸入品を供給する。欧米は輸出を増やすために競争力を高める。
将来の金融危機に備えて、グローバルな金融レジームが必要だ。自己資本と流動性の国際基準、透明性と早期警戒システム、を整備する。また、ヨーロッパの銀行システムは債務依存が過大になっている。銀行の資本増強、ユーロ改革は重要だ。財政金融政策の協調と、最後の貸し手としてのECBを強化する。
長期債務を減らすべきだが、衰退の悪循環を避けるために、Robert Skidelskyの提案する投資銀行を採用する。インフラを整備し、特に若者の雇用にも新しいアプローチ、すなわち開発銀行と訓練・見習い制度が必要だ。
グローバルな経済政策の協調には、G20のような多角的な機関だけが有効だ。残念ながら、各国は独自の対策に向かっているが、それは失敗するだろう。そしてG20が再発見される。
FT September 6, 2011
We must listen to what bond markets are telling us
By Martin Wolf
市場に聞け。・・・もっと借りて、もっと支出してください。どうか。
しかし、市場の魔法と説く者たちが最も強く市場の叫びを無視している。そして、彼らは叫ぶのだ。財政の天井が落ちてくる!
債券市場は悲観的だ。欧米の長期金利は低下している。市場は間違っているのか? 賢人たちは、最大のリスクが市場の恐れる不況ではなく、デフォルトだ、という。しかし、政府債の市場がそれほど間違えるのであれば、なぜそれを真面目に取るべきいなのか?
現在、政府が膨大な赤字を抱えるのは、ケインズ主義的な景気の調整に赤字を増やしたのではなく、金融危機の結果である。政府は財政赤字が増えるのを許し、民間部門はしゃにむに債務を減らした。これこそ、リチャード・クーが主張したように、財政赤字が民間の債務処理を助けた過程であった。アメリカでは家計もビジネス部門も貯蓄超過になり、政府の赤字に外国から資本が流入し続けた。政府は最後の借り手になったのだ。
どの政府が借りるのか? それは通貨圏ごとに投資家が決めた避難所である。そして、通貨間では、金利よりも為替レートによって調整が行われている。民間部門の黒字(貯蓄)が大きいほど、政府部門の赤字は大きくなる。民間部門が債務処理を進める上で、財政赤字の増加は有益である。しかも、財政赤字が重要なのは、それが経済を早期に回復させるからではなく、債務依存から離脱する苦しい過程を緩和するからだ。
ハーヴァード大学のケネス・ロゴフKenneth Rogoffの主張には納得できない。人々は将来の増税を恐れるから貯蓄を増やす、と彼は言う。しかし、日本の家計は貯蓄を減らしている。むしろ、低金利を利用して将来の富を増やすべきであり、そうすれば長期的な財政状態は改善する。これほどの低金利であれば、政府が、あるいは民間との協力も得て、物的・人的資産に投資できないはずはない。また、政府が民間部門の債務超過を解消するため支援できるはずだ。銀行の資本を強化して、倒産や支出削減を抑えることもできる。
ロゴフとラインハートの、政府債務がGDPの90%を超えると成長が大きく減速する、というもう一つの主張も「鉄の法則」ではない。重要なのが、借りて何をするか、である。しかも、それ以上に、今はもっと考えてみるべきだ。もし政府が借りなければどうなるのか? 財政赤字を大幅に減らせば、経済の他の分野で黒字が減る。民間の急激な債務削減は、結局、大量倒産、利潤減少、銀行の資産悪化、つまり、不況がやってくる。
特に、ユーロ圏ではそれが迫っている。ドイツのWolfgang Schäuble蔵相は、@政府と民間とが同時に債務を減らすことは、対外黒字がなければ、不可能だ。A通貨同盟の内部で対外赤字国に民間が融資しなければ、黒字国が融資を強制されることはない。しかし、政府が融資しないなら、政府でも民間部門でも破産する。それはドイツのような輸出経済にダメージとなる。ECBが赤字を融資しているが、ドイツはこれを止めるのか?
財政政策にはまだ力がある。バランス・シート不況において、日本が財政再建を急ぎ過ぎた失敗を、今や世界規模で再現しつつある。財政再建を求める常識は間違っている。
金融政策も必要だし、特に、供給側での改革、グローバルな均衡回復も重要だ。しかし、何よりも、過剰な貯蓄のある世界で、信用力のある政府が借入を減らすことは絶対の避けるべきだ。市場は大声で叫んでいる。これを聞くべきだ。
FT September 8, 2011
Geithner calls for boost to growth
By Chris Giles in London
FT September 8, 2011
What the world must do to boost growth
Tim Geithner
これは、非常に見事な、世界経済政策の提唱です。世界連邦財政と世界連銀があれば、世界経済の現状を、雇用・失業状態、インフレ・デフレ、石油価格、各政府の財政状況、各地の金融政策、などについて概観するでしょう。ガイトナーのロジックが自然に読めるのは、アメリカ合衆国の中で、すでに行われているからだと思います。
そして、米欧中による三極主導の世界マクロ政策協調を提唱します。
FT September 6 2011
‘Helicopter Ben’ risks destroying credit creation
By Bill Gross
FT September 6, 2011
Buy gilts – or even schools – to boost demand
By Chris Giles
Project Syndicate 2011-09-06
The Saver’s Dilemma
Daniel Gros
開発世界の金利はゼロ日回が景気は再び減速した。ここにある問題は金融政策によって解決できないことを示している。正常な状態なら、貯蓄は投資に向かうはずだ。
特にユーロ圏の危機は深刻だ。ドイツなど北欧の黒字国は、その貯蓄が他国の債券に投資されるのを嫌っている。低金利にしても、市場は均衡に向かわない。ドイツの低金利は、実質でマイナスになっている。その効果は、退職後の貯蓄額を目標にして、さらに支出を減らすことになる。株価も下落し、ドイツ経済も減速すれば、ユーロ圏周辺部の調整はさらに難しくなる。
ヨーロッパの金融市場が機能するためには、それを促し、介入もできる、European Monetary Fundが必要だ。
同時に、世界に多くの過剰貯蓄国(ドイツ、日本、中国、産油諸国)がある限り、ユーロ圏やアメリカの債務危機と不況は終わらない。彼らは融資するか、投資するか、成長率を高めて輸入するべきだ。
Project Syndicate 2011-09-08
Is Inflation the Answer?
Raghuram Rajan
l スイス・フラン
FT September 6, 2011
Saving Switzerland from the Swissie
WSJ SEPTEMBER 7, 2011
Won-dering as They Wander
FT September 7, 2011
The SNB’s measures will work for now
By Mansoor Mohi-uddin
BLOOMBERG Sep 7, 2011
Japan Should Just Peg the Yen and Move On: The Ticker
By William Pesek
日本は円をペッグするべきだ。将来の国益を考えれば、ドルではなく、人民元がよいだろう。日本は反発を恐れているのかもしれないが、世界を見れば通貨戦争は始まっている。
WSJ SEPTEMBER 8, 2011
Swiss Franc-ensense
大西洋の両岸で金融危機が発生し、日本の首相は半年おきに交代するとき、小国スイスの通貨が残された逃避地に見えるのだ。
貨幣という商品は供給するのが国家である。対外価値について市場に委ねるという決定は、いつでも我慢できるわけではない。
FP SEPTEMBER 7, 2011
The Icarus Zone
BY DAVID MARSH
FP SEPTEMBER 7, 2011
The Renminbi: The Political Economy of a Currency
BY ARTHUR KROEBER
FP SEPTEMBER 7, 2011
An Exorbitant Burden
BY MICHAEL PETTIS
アメリカのドルが国際通貨であることの「途方もない特権」an "exorbitant privilege"について、むしろ「準備通貨の呪い」と呼ぶべきだ、と考えます。実際、日本が円高を歓迎しているわけではありません。貯蓄が流入すれば、失業を増やさないために債務を増やす。
FP SEPTEMBER 7, 2011
The New Triumvirate
BY MANSOOR DAILAMI
FP SEPTEMBER 7, 2011
The Multilateral Vacuum
BY PHIL LEVY
FP SEPTEMBER 7, 2011
The Buck Stays Here
BY DANIEL W. DREZNER
FP SEPTEMBER 7, 2011
Dreaming of SDRs
BY DAVID BOSCO
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The Economist, August 27th 2011
The West’s economy: How to avoid a double dip
Immigration: Let them come
Asia’s economies: Claws or jaws
Japan’s economic prospects: Out of the ruins
Economics focus: Changing target
Migration after the crash: Moving out, on and back
(コメント) 世界経済は回復するどころか、危機に向かっているようだ。しかし、それは「西側」の話だろう、と言われます。少なくとも西側では、協調して金融緩和や財政刺激策を採り、為替レートを安定させる、という合意にもかかわらず、景気は回復しないまま、財政赤字や通貨不安が自国優先の競争的悪化を避けられない情勢にしています。協調を強化する条件とは ・・・もっと深刻な危機。
他方、新興市場、特に中国とアジア市場の堅調さには称賛がふさわしいでしょう。興味深いことですが、タイの中央銀行は、西側の不況を恐れるべきか、中国やアジアのインフレを恐れるべきか、悩みを深めています。タイの言葉では、これを「トラから逃げて、ワニに食われる」と言うそうです。こうしたインフレとデフレの混ざった、供給側のショックなどにも対抗する金融政策として、インフレ目標ではなく、名目GDPを目標にするアイデアが重視されています。
そうした事情を反映したからでなく、震災からの復興を準備していた日本経済は、西側でも、アジアでもなく、莫大な債務を抱えつつ、それでも着実な回復を遂げるだろう、と楽観する記事があります。円高は新しい圧力ですが、実質レートで見れば企業の収益をそれほど圧迫していない、と。
金融崩壊でブームの諸国から締め出され、あるいは、逃げ出した移民たちは、単に自国に帰ったというのではない。世界の移民パターンは、常時、変化し続けている、という特集記事があります。
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IPEの想像力 9/12/11
リチャード・クーのバランス・シート不況を称賛したM.ウルフが、世界金融市場を解釈する論説で、欧米の財政再建論を厳しく批判しています。金融危機によって債務の返済に向かう民間部門が需要を減らすショックを、政府が財政赤字によって吸収するのは正しいことである。この理由で増えた財政赤字を非難する(そして削減を急ぐ)のは間違いだ。
他方、金融政策については、その限界が議論されています。金融緩和だけで投資を増やすことはできず、債務を減らすことにもなりません。それは政府が行う様々な救済策や、債務の削減・組換方式の提示、公的資金投入の基準やその強制、にかかっているのです。この点でも、インフレの爆発を懸念し、ドル安を非難する資産家たちの不満に対して、中央銀行は十分に反論していません。
しかも、金融緩和と財政破綻で、最も懸念されるのは為替レートの混乱です。銀行不安、資本逃避、新興諸国への資本流入と増価、インフレとバブル、通貨危機、あるいは、輸出産業の崩壊、など、小国にとっては耐えがたい苦しみです。
「円高対策」とは何でしょうか? 日本政府は、まるで円高が外から侵入した伝染病のように、それを持ちこむ投機的な市場を非難します。しかし、それは違うでしょう。1995年に出た河合正弘/通産省通商産業研究所の本(『円高はなぜ起こる』)は優れた分析と展望を示しています。大臣たちの好む「投機的な動き」を非難するような浅薄な対応を、彼らは決して容認しないはずです。
企業は生産拠点を今後も移転するでしょう。中国か、ユーロ圏か、ドル圏へ。主要な通貨圏で生産拠点を持てば、為替レートの変化を吸収できるからです。ただし、その場合、各地域・国の雇用や需要水準に与える影響は強まります。企業だけでなく、労働者や国家も、為替レートの変動に対応して調整を行います。その結果、国家を超えて、労働者の移動が促され、財政的な調整支援策が充実します。
国際通貨システムが動揺する時期には、小国は主要な取引相手国の通貨に為替レートを固定するでしょう。世界には200もの独立国が独自通貨を発行していますが、国際通貨システムで重要な通貨を供給するのは数カ国です。為替市場や金融市場の集中化が急速に進むことを思えば、世界には、たった一つの通貨しか必要ないはずです。
早朝に目が覚めて、眠れないままReviewの要約をしていたとき、an "exorbitant privilege"をWikipediaで検索して、Barry Eichengreenの本と、LSEにおける彼の講演をYouTubeで見つけました。彼は、基本的に世界貿易額の25%でしかない対米取引では、外貨準備や国際貿易・金融取引の圧倒的なドル依存が続くことはない、と主張しています。それゆえ、世界はドルだけでなく、ユーロ、そして、人民元にも依存するようになり、多通貨による国際通貨システムへと移行するだろう、というのです。ナイジェリアは、外貨準備に人民元を選択する、と新聞は伝えています。
ドル体制から多通貨体制への移行は、何十年も先の話ではなく、たとえば、わずか10年で起きることです。日本政府はドルから人民元へのバランスを取る時代に備え、将来の国際通貨システムを構想しているでしょうか? 日本は小国ではありません。アジアの安定的な貿易と投資の拡大を持続できる、しかも、各国の生産性上昇やインフレ率を吸収する調整メカニズムを提案する立場にあります。
1960年代のドル不安や、1970年代の石油危機には、IMFにSDR建の資本逃避用勘定を設けることが検討されました。何重にも悪条件を抱えた日本で起きた急激な円高について、同じようなことを考えましたが、成功しないのでしょう。しかし、スイス・フランの上限設定と積極介入、中国の資本規制などは、日本がまねるべきモデルにならない、と思うのです。
週末、世界的な課題に立ち向かうG7の映像で見た安住財務大臣の笑顔は、何とも意味のない、国際会議における日本政府の無気力さを示しているように思いました。周回遅れ、と思っていましたが、もはや孤絶したパーリア国家なのです。
ユーロ圏が本当に解体したら、どうなるのか? アジアや日本に何が起きるのか? さまざまな問題や可能性、歴史的経験を駆使して、世界における日本の未来を構想しなければなりません。
円高の効用を発揮させる一つの仕組みとして、留学奨励基金を積み立ててはどうでしょうか? 日本中の大学の成績優秀者、トップ5%を、語学試験とテーマで選好し、海外長期留学(3年〜5年)を可能にします。日本が日本であり続けるためにも、ますます多くの若者が世界に出て、優れたアイデアや経験を集めるべきだ、と思うのです。
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