IPEの果樹園2011

今週のReview

9/5-10

 

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超富裕層 ・・・バーナンキ演説 ・・・リビアの教訓 ・・・日本の首相交代 ・・・ユーロ債 ・・・グローバル・システム ・・・中国 ・・・911から10年 ・・・金融市場の混乱

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l         超富裕層

guardian.co.uk, Thursday 25 August 2011

Taxing the rich: howls of anguish

超富裕層への課税を難しくするのは、イデオロギーと政治的影響力、そして、タックス・ヘイブンだ。レーガン=サッチャーが、「富の創造」と「富の所有」を混同し、超富裕層への課税を繁栄にとってのタブーにしてしまった。しかし、2008年の金融危機以後、イデオロギーは崩壊し、最大の資産の多くが社会にとって富の創造を意味しないことが批判されるようになった。

しかし、超富裕層に課税するにはタックス・ヘイブンを閉鎖せねばならない。そのためには、主要諸国が協力して行動するべきだが、政府の対応はバラバラだ。

WP August 31, 2011

How billionaires could save the country

By Matt Miller

超資産家が国を救うのは、何も、税金を多く払うからだけではない。

民主党にも共和党にも失望した者は、第三党の大統領候補を求める。それは容易なことではないが、超富裕層たちが推薦候補リストを作って、自分たちにふさわしい候補者を支援し始めたらどうなるか? また愛国的な超資産家が、独立候補として、自ら大統領に立候補すれば?

個人で慈善事業に関わるより、この国に必要な「ショック療法」を施せる。


l         バーナンキ演説

FT August 25, 2011

Bernanke should clarify policy and sink QE3

By Michael Woodford

量的緩和QE3を再開することには反対だ。その理論(ベース・マネーの供給が物価を決める)はあやしく、前提(ベース・マネーの恒久的な増加)は実行できない。日本の実験が示すように、長期的な効果も心配だ。

確かにアメリカ経済の回復見通しは深刻だ。バーナンキは慎重に期待形成に影響するような政策を取ってきた。しかし、量的緩和は、政府が何もしないことの言い訳になってしまう。

演説で重要なことは、明確な見通しを与えることであり、連銀の行動を予測できるように説明することだ。

BLOOMBERG Aug 25, 2011

The U.S. Needs a Jobs Policy, Not More Cheap Money: View

NYT August 25, 2011

Bernanke’s Perry Problem

By PAUL KRUGMAN

世界中の投資家たちがジャクソン・ホールにおけるバーナンキの演説に注目している。ますます恒久的な準デフレと高失業に陥りそうなアメリカ経済に、連銀議長が新しい政策を示すかどうか、待っているのだ。

しかし、何か新しい政策を出せたら、私は驚くだろう。失業者を減らすことも、成長を刺激することもないだろう。

その理由は? ・・・Rick Perryだ。

テキサス州知事のRick Perryは、2012年の選挙前に金融拡大策を取ることについてバーナンキを責める。彼は景気回復の最後の希望を殺すことの象徴だ。

2000年に、ベン・バーナンキという名のエコノミストが多くの政策を提案した。それは、アメリカではなく、日本についてだったが。しかし、今こそアメリカが日本型の罠に落ち込みつつある。当時の提案を実行するときだ。・・・長期政府債の購入、短期金利を長期にわたって低くすると宣言、穏やかなインフレ水準を維持する、(日本についてだから)円を安くする。

バーナンキ議長が2000年の提案に従わないのは、連銀内部の反対が強いからであり、さらに重要なのは、外部からの政治的圧力が強いからだ。

昨年の「量的緩和」に対して激しい反対が起きた。Rick Perryは、選挙前にこれ以上の金融緩和をするのは「ほとんど反逆罪に」等しい、と非難した。テキサスに来たら懲らしめてやる、と。もし提案したような、穏やかなインフレやドル安を指示したら、それがどのような反応をもたらすか。

すでに政治は財政刺激策を殺し、今また、金融緩和策を殺しつつある。経済の回復が訪れることはない。

FT August 28, 2011

Bernanke’s missed QE3 opportunity

By Clive Crook

FT August 28, 2011

Waiting for QE3

バーナンキが述べたように、連銀は経済政策の負担を一人で負うことはできない。それゆえバーナンキは、財政刺激策と税制改革や社会的給付の見直しを求めている。

Project Syndicate 2011-08-30

Ben Bernanke’s Dream World

J. Bradford DeLong

バーナンキは三つのことを述べた。さらなる金融緩和はない。景気回復は遅いままだ。アメリカの成長の基礎的な条件は変わらない。

なぜ、いまさら、こんなことを述べるのか? アメリカ経済の投資不足は明白だ。少なくとも4兆ドル足りない。このままだとGDP2%減らすだろう。連邦政府も地方政府も、人的資本やインフラ投資を削っている。

大恐慌後の1930年代には、政府の大投資計画が第二次世界大戦まで続いた。失われた10年ではなく、ナチ・ドイツと日本帝国との戦争になった。第二次世界大戦後の不況回避策を「ルーズベルト・プット」と呼ぶべきだろう。工業諸国は、世界中で政府が不況回避に努めた。

もはや、そうではなくなった。政府が保証しても、顧客がいなくなったからだ。この投資不足を放置するツケは非常に大きい。

WSJ SEPTEMBER 1, 2011

The World Doesn't Need More Stimulus

By ANDREW SENTANCE


l         リビアの教訓

FP AUGUST 26, 2011

This Week at War: Hold That Model

BY ROBERT HADDICK

FP AUGUST 26, 2011

The Baghdad Syndrome

BY LARRY KAPLOW

リビアの勝利がイラクの失敗を繰り返さないために、何を注意すべきか?

1.いかなる略奪も許してはならない。イラクで、Donald Rumsfeldは政府施設や学校、石油施設、病院など、群衆が略奪するのを容認していた。政府も取り締まることへの反発を恐れた。

2.軍隊を解体するな。もし軍人が武器を下し、権力の移行に従うなら。

3.アルカイダを許すな。4.情報を規制するな。規制すれば、噂や間違った情報に人々は従う。5.たとえ地方支配者の組織内部でも、汚職や腐敗、権力の濫用を許すな。6.軍閥や武装勢力を許すな。7.拙速な民営化や契約をするな。8.国内の武力闘争を許すな。

Foreign Affairs, August 26, 2011

Libya and the Future of Humanitarian Intervention

Stewart Patrick

オバマ政権のアメリカが、リビアにおけるカダフィ政権崩壊により、人道的な軍事介入について積極的な基準を示したのかどうか。

リビアのケースでは、多くの例外的な要因が作用した。カダフィはほとんどすべての国連加盟国に嫌われていた。その時期は、国連、NATO、アメリカがアラブの春を支援することに重なった。中国とロシアはリビアに重要な利益を持たなかった。人口640万人の小国で、地中海に面した小さな地域が重要であったから、兵站も単純だった。良くまとまった反政府運動があった。リビアはRtoPの明白な事例であった。

Responsibility to ProtectR to P)はオバマ政権がthe Presidential Study Directive on Mass Atrocities (PSD-10)を発表して、外交政策の一部に組み込もうとしている。アメリカはこれを重要な道義的責任として認め、自国の安全保障の一部である、と宣言する。

これはリアリストたちに批判されるだろう。しかし、カンボジアやルワンダの虐殺を許さないという重要な目的のためには、リアリストの批判は間違っている。むしろ、この道義的目標が無視されないような具体的な行動基準が必要だ。

PSD-10RtoPの将来は、将来のアメリカ大統領と国民の態度にかかっている。問題は、一方で道義であり、もう一方で戦略的でもある。政府は介入による利益とアメリカのコストを比較考量しなければならない。ビスマルは、バルカン半島全体がポーランド人歩兵の骨にも値しない、と言った。また、支援がなければ320万人が死亡すると予想されているが、オバマ大統領も、議会も、ソマリア介入を求めていない。

今後、人道介入が国際的な規範として確立されるために、1.基準を高く設定し、グローバルなアナーキーを回避する重要な枠組みとしての国家主権を尊重する。また、アメリカの能力には限界がある。

2.最後の選択肢に限り、3.多角的な介入を優先し、4.指導者が要求を受け入れないときに限る。

guardian.co.uk, Saturday 27 August 2011

Obama: 'leading from behind' on Libya

Michael Boyle

NYT August 27, 2011

If the Arab Spring Turns Ugly

By VALI NASR

WP August 27, 2011

An imperfect triumph in Libya

By Robert Kagan

WP Saturday, August 27, 2011

Imagining a world without dictators

By William J. Dobson

独裁者のいない世界が来るだろう。2000年に、Slobodan Milosevicが倒された。2010年後半から、独裁者たちが住みにくい世界になった。

全体主義体制は、もはやコストがかかりすぎる。この世界から絶滅されるだろう。独裁者がいなくなれば、テロの支援者は減り、北朝鮮のような飢餓もなくなる。多くの人々が解放されて、創造性を発揮する。独裁者の悪行を忘れないために、博物館を建てよう。

しかし、一つ問題がある。独裁者がいない国でも、政治的自由はなかなか得られない。選挙で選ばれた権力者が、ロシアとその周辺に多くいる。ラテンアメリカにはチャベスがいる。中国の体制は毛沢東の頃から大きく変わったが、しかし、権威主義的で、非民主的な体制を続けている。マレーシアでも、タイでも、シンガポールでも、民主的とは言えない。「準権威主義的」、「複合型」、「似非民主主義」体制。

民主化の前進も難しい。独裁者からの解放は、偽りの夜明けだ。

guardian.co.uk, Sunday 28 August 2011

The right and the wrong lessons to draw from Libya's liberation

Andrew Rawnsley

一つの教訓は、通常言われていることは間違いだ、とわかった。安保理決議は得られない、と言われた。アラブ世界の支持は続かない、とも言われた。10日前にも、軍事作戦はキャメロンとサルコジの愚かな企てであり、行き詰まる、と言われた。

もう一つの教訓は、外部からの決定的な軍事行動しか独裁者の行う虐殺を止められない、というのが正しいケースはある、ということだ。しかし、これを過大に解釈してはいけない。リビアが新しい介入方式を見つけた、と言うのは誇張である。空爆が住民たちの反政府行動を支えた。それは「軽い軍事介入」と呼べるだろう。しかし、他でも適用できるとは限らない。

リビア介入は、軍事介入の法的根拠を明確にしたわけではないし、ロシアや中国の拒否権は行使されなかったけれど、次もそうとは限らない。何よりも、アメリカの支持がなければ介入はできなかった。

FT August 28, 2011

Libya, Obama and the triumph of realism

By Robert Kaplan

アラブの春を称賛する者は、リアリズムは死んだ、と宣言する。チュニジア、エジプト、今やリビアでも、次々に独裁者は倒され、新しい自由が生まれている。それはリアリズムの墓場だ、と。

しかし、バラク・オバマは、もしリアリストでないとしたら、何なのか?

国際関係の理論の一つであるリアリズムは、邪悪な者が善に勝つことを悲劇とみなすのではなく、一つの善が他の善に苦しみを与えて勝つことを悲劇と見なす。アメリカの大統領は、リビア介入で指導的役割を拒んだときリアリストであった。そして、もっと重大な危機に備えて軍事力を温存した。オバマのリアリズムはまた、カダフィ後のリビアが、たとえ最善の条件でも弱い、壊れやすい国家になるしかないため、アメリカの関与を避けさせた。

彼は、できるなら民主主義を支持したが、また、安定性を支持しなければならないところもあった。シリアの抵抗運動を外向的に支援するが、介入はしないだろう。イランで民主的な蜂起が起きるのを願っているが、サウジアラビアで蜂起が起きるのを恐れている。アフガニスタンから軍隊を引き揚げるのは、中東の国家再建に関与するのを拒んだからであり、それはより重要な問題に焦点を当てるためだ。すなわちアジアにおけるアメリカの軍事力を維持することである。こうしてリアリズムは勝利する。

リアリズムは冷戦終結で死んだはずだった。しかし、その後、9・11テロがあり、イラク占領の失敗があった。リアリズムは灰から甦り、中東でも、アジアでも、事態が混沌を深める中で、再び興隆している。

リアリズムはアラブ世界の独裁者を支持する、と批判された。しかし、アメリカはその外交によって大きな利益を得ているのだ。イスラエルとパレスチナの和平を確保し、地中海とアラビア海の貿易ルートを確保する。それはグローバルな通商と石油供給にとって重要だ。より重要なことは、最近まで、中東世界には民主化を実現する政治的・技術的条件がなかった。リアリズムは手元にある現実を扱う。

リアリズムは西側の価値に冷淡であり、それを代表していない、と非難される。しかし、国益に従うリアリズムとは、可能な、もっとも一貫した人道主義的アプローチである。なぜなら、リアリズムは戦力均衡を維持することで戦争を回避するものだから。

現代の最も人道主義的な行動は、ニクソン大統領が、安全保障顧問のキッシンジャーにより準備された中国訪問をしたことだ。台湾が本当の中国だという意見を放棄する代わりに、ニクソンたちは中国から、東南アジア中で起きている共産主義者の蜂起に対する支援を止める、という合意を得た。またアメリカは中国に対して、ソ連と、経済復興した日本からの、暗黙の保護を提供した。そうすることで中国は、アジアの大部分を貧困から解放する平和的な成長に取り組むことができた。10億人もの人が生活水準を改善し、個人の自由が爆発した。これもリアリズムの報酬だ。

中東を見てリアリズムが死んだという者たちは、アジアを忘れている。アジアではナショナリズムが興隆し、軍事費が増大している。半ダースの海軍が、特に中国が、エネルギーに富む南シナ海で競争している。21世紀も、道徳を無視した勢力均衡が世界を動かす。

不安定性を認めるなら、リアリズムは、オバマのような権力を行使する者にとって、再び、信頼できる唯一の信念体系である。

FP Monday, August 29, 2011

Learning the right lessons from Libya

Posted By Stephen M. Walt

リビアの成功に味をしめて、このリビア・モデルを新しい軍事介入として確立する者が出てくるかもしれない。それは、"foreign-imposed regime change" (FIRC)と呼ばれる。

@FIRCの成功率は? AFIRCの成否を決める条件は? BFIRCの成功率を高める方法は? そして戦略ができる。しかし、これは単なる願望を示しているだけで、本当にイラクのような破局を避けられるわけではない。

こうした魔法の方程式は不完全なものだ。今も、特殊部隊と、無人偵察・攻撃機と、現地同盟軍、そして国際協力軍を正しく組み合わせる方式が試みられているように。

カダフィの没落は、大量破壊兵器の放棄と対外開放政策を決めたときに分かったことだ。イランや北朝鮮が同じことを決めるとは思えない。

NYT August 29, 2011

NATO’s Teachable Moment

FT August 30, 2011

Defence: Lessons from Libya

James Blitz

NYT August 31, 2011

‘Thank You, America!’

By NICHOLAS D. KRISTOF

アメリカ人がアラブ世界で英雄になることはあまりない。しかし、リビアの首都ではひっきりなしに祝福された。私が庶民の中に入って行くと、彼らは私がどこから来たかを知って、熱狂的に、同じことを形を変えて言ってくれた。・・・「ありがとう! アメリカ」

オバマ大統領は大きな政治的リスクを冒して、虐殺を止め、憎むべき体制の転覆を助けた。それはシリアやイエメンに押し付けるものではないが、軍事力で人権を守らねばならないケースも少ないながらある、と言うことをリビアは示したと思う。

「アメリカが来なければ、われわれはここにいないだろう(殺されていた)。」と、大きな笑みを浮かべて、あるビジネスマンは私に言った。「リビアとアメリカがもっと多くの関係を持つようになってほしい。」 同じことを多くの人から聞いた。

WP September 1, 2011

How the U.S. and the world can help Iraq

By Ayad Allawi(イラク元首相)

アラブの春に関心が集まる一方で、イラクとその国民には注意が向けられない。アラブ世界で最初の独裁から民主主義へ移行した国であり、その結果はまだ明確でない。しかし、移行は、過激派を抑える積極的なものなのか、地域や国際コミュニティーに悪い影響を及ぼす危険な前例なのか?

サダム・フセインの体制が倒れてから8年以上が経った。まだ基本的なサービスも得られない。ますます頻繁に停電し、石油輸出もフセインの頃をわずかに超えるだけだ。経済は、クローニズムと管理の失敗で、失業と汚職に満ちている。治安回復の約束は守られず、宗派間紛争は激しくなった。

選挙でも敗北にもかかわらず、マリキNouri al-Maliki首相はイランの支援を受け、アメリカのお世辞によって、権力を維持している。民主主義や法の支配は無視しつつある。あからさまな独裁的手法、反対派の弾圧、基本的人権の無視、それがイラク政府だ。Human Rights Watchは、マリキ政権の拷問を糾弾している。6月には、政府の雇った殺し屋たちが平和的なデモを攻撃したときは、殴打だけでなく、性的暴行まで含む。

これが、アメリカの若い男女4000人以上を犠牲にし、数銭億ドルを費やして得た国家なのか?

2003年のイラク侵攻は、選択による戦争であっただろう。しかし、2011年に敗北しつつあるイラクは、アメリカとその他の世界が選択を許されないようなものである。

WSJ SEPTEMBER 1, 2011

Did Libya Vindicate 'Leading From Behind'?

By MAX BOOT


l         日本の首相交代

BLOOMBERG Aug 26, 2011

Steve Jobs Means More Than Japan’s Boss

By William Pesek

政府でも、企業でも、指導者の辞任は良くないが、アップル社のジョブズSteve Jobsと日本政府の菅直人が同じ週に辞任を発表した。

ジョブズのニュースはただちに市場を動かした。菅はわずかな波紋しか起こさない。1997年にジョブズがアップルのトップに戻ってから今までに、日本は9人の首相を迎えた。また、次が決まる。

なぜ12700万人の国家を率いるトップの辞任が、国際的に観て、アップル社の辞任劇の脇に押し込められるのか? 日本には、5兆ドルの市場規模と、アジアのトップ企業がいくつもあり、円はアジアで最も重要な国際通貨である。しかし、それらが余りにも機能不全であるために投資家に見捨てられ、債券格付けを下げ続けるだろう。

これほど政治的に不安定な日本が、どうして安定していられるのか? ・・・日本を動かすのは首相ではない。官僚たちだから。

官僚たちは縄張り争いに固執して、どのような政府の改革にも反対する。その結果、首相が何をしても、システムは自動操縦されている。日本の首相交代はますます加速している。平均して、1年ももたない。日本の周りの世界は急速に変わっているのに、日本は変わらないままだ。

 (China Daily) 2011-08-27

Kan's woeful legacy

(China Daily) 2011-08-27

Japan's development dilemma

By Li Wei

日本は戦後経済復興から方向を見失ったままだ。日本が目指すべきは「東アジアとの和解」であり、戦争の歴史、アメリカとの関係、領土問題を解決することだ。

guardian.co.uk, Monday 29 August 2011

Japan: sifting through the muck

どじょう。ウナギのような生き物。泥や腐った落ち葉の間を好んで住処とする。

野田新首相の掃除しなければならない遺物はふんだんにある。しかし、第一に、GDP210%に及ぶ国債残高は気にしなくてもよい。日本は国内の貯蓄で国債を保有しているからだ。消費税もイギリスに比べて低い。他方、民主党内の権力争いは激しい。

期待されていない首相には、失望も少ないだろう。しかし、日本の首相は官僚に動かされているだけかもしれない。日本はパックス・アメリカーナに頼って復興してきた。小泉のような指導者がなぜ生まれるのか、わからない。アメリカは、日本がなぜ戦争に踏み切ったのか、戦後の日本がなぜ弱い政治と強い官僚制によって、アメリカの軍事的要求に応えてきたのか、本当は理解していない。

野田氏が何よりもしなければならないのは、民主党を支配し、政府を動かすことだ。

FT August 29, 2011

Noda poised to become Japan premier

By Mure Dickie in Tokyo

FT August 29, 2011

Japan’s latest leader

野田は党首選で、自分は金魚ではなく、日本の「泥沼政治」を生き抜くドジョウである、と自己紹介した。しかし、ドジョウではいけない。

首相を国民に開かれた選挙で決めるべきだ。有権者は、たった数カ月で首相を批判するより、もっと我慢して政策の実現を見定めろ。官僚による安全運転では、戦略的な課題を解決できない。震災処理をどうするのか? デフレをどうするのか? 中国をどうするのか? 

政治的なパントマイムを止めて、安定した政治を始めろ。

Global Times | August 29, 2011

West faces the threat of turning Japanese politically

By Zhong Sheng

FP Monday, August 29, 2011

Japan's new prime minister is a step in the right direction

Posted By Michael J. Green

BLOOMBERG Aug 29, 2011

No Honeymoon for Japan's 6th Leader in 5 Years: The Ticker

By William Pesek

野田にハネムーンはない。すぐに解決すべき問題は、国債、そして、高齢化、少子化、長引くデフレ。次に、円高。関税引き下げとアジアからの輸入拡大。移民受け入れ。

そして、迅速に行動して成果を示せ。それが政権を維持し、他の政策に必要な時間を生みだす。

Global Times | August 30, 2011

New leader gives Japan a chance to rise

日本の隣国として、野田氏が支持率を正常な方法で維持することを願う。指導者として、日本の明確な針路と、改革の方針を示すべきだ。それは、日本がアジア・太平洋地域の変化に適応することだ。ここの地域の構造変化を、いずれの国も支配できないし、指導できない。それを知っておくべきだ。

中国は真剣に、日本と発展や繁栄を共有することを願っている。

FT August 30, 2011

US rolls eyes at Japan’s PM revolving door

By Anna Fifield in Washington

ワシントンは日本の指導者が短期間に交代することを嫌っている。こんな椅子取りゲームのような政治家たちに付き合っても無駄だ、と思うだろう。

ワシントンには、日米同盟を重視する前原を好む者が多い。しかし、夢見るだけであった鳩山より、パラグマティックで、リアリストの野田首相にオバマ政権は期待している。

FT August 30, 2011

Resilient Japan needs an injection of ambition

By Mure Dickie in Tokyo

Foreign Affairs, August 30, 2011

Japan's New Prime Minister

Sheila Smith

Global Times | August 30, 2011

Noda’s grim fate may be already sealed

By Liu Di

WP Tuesday, August 30, 2011

Japanese politicians anoint a new prime minister, again

日本は、どうしても強い指導力を必要としている。自分は醜いドジョウです、などという野田首相ではだめだ。

おめでとう、ドジョウ総理。悲観論者の予想を吹き飛ばして、長期政権を築きたまえ!

WSJ AUGUST 30, 2011

Noda Gets the Nod

LAT August 31, 2011

Testing Japan's new leader

(China Daily) 2011-08-31

Constant parade of leaders

By Feng Zhaokui

日本の首相交代は政治を弱くし、それだけアメリカの言いなりになる。アメリカの圧力に屈して、それをかわしきれないために、日本の首相は次々に交代してきた。

 (China Daily) 2011-08-31

Policy consistency matters

Global Times | August 31, 2011

Japan can't brush wartime brutality under the carpet

By Ding Gang

LAT September 1, 2011

Japan's revolving door at the top

By Bruce Klingner

不運な野球チームが次々にピッチャーを交代させるように、日本の首相がまた替わる。民主党は政策を決められない。その実施どころではない。地震と、津波と、原発事故の後でも、政治家たちはバラバラだ。

民主党は、自民党を嫌う有権者によって勝利した。しかし、自民党も、民主党も、日本を効果的に統治するビジョンも、能力もない。日本の政治システムは指導者を生み出せない。無能な政治家を欠き回して、良く似た者が続く。人気がなくても、必要な政策を実行できない。

いつの日か、日本にも戦略的な再編成を経て、対立するイデオロギーと政策目標を中心にした政党が現れて、真の選択を示すだろう。日本は「日の昇る国」ではなく、「落日の国」である。野田はこのムードを打ち破ることだ。

Global Times | September 01, 2011

Realist approach will steady relations with Japan

By Zhou Yongsheng


WSJ AUGUST 26, 2011

Obamanonics vs. Reaganomics

By STEPHEN MOORE

オバマ政権の30カ月とレーガン政権を比較すればよい。オバマは1%しか成長できないし、二番底が起きそうだ。レーガンは5%で成長し、7%、8%の成長も示した。

レーガンの哲学は生産を刺激することだ。経済のサプライ・サイドを変える。ビジネスや投資の規制を緩和した。ケインズ主義の教科書では不可能なことだが、高い成長と雇用が実現し、インフレ率も下がった。

ケインズ主義のゴッドファーザーであったPaul Samuelsonや、Lester ThurowRobert ReichPaul Krugman。彼らは愚かなことを言い続けた。

今や、オバマの財政赤字がなぜ成長をもたらさないか、Carmen Reinhart and Kenneth Rogoffの新しい理論が出てきた。

FP Wednesday, August 31, 2011

A sign of a coming Obama failure

Posted By Clyde Prestowitz

どこから雇用は来るのか? グリーン・テクノロジー? 輸出部門? しかし、アメリカの製造業は失われてしまった。


l         ユーロ債

Project Syndicate 2011-08-26

Europe’s Small Steps and Giant Leaps

Jean Pisani-Ferry

先週の独仏サミットで、世界はユーロ債を期待した。しかし、決まったのは経済ガバナンスだけだ。

ユーロ債は、誰もが自分の面倒をみる、という原則から、皆が一人を守る、という原則に変わることだ。加盟国すべてがこれによって利益を受け、ユーロ圏全体の評価が問題になる。それは、アメリカや日本、イギリスよりもかなり良い。

これは、加盟各国にとって直接に納税者に関係しており、誰かがデフォルトになれば支払うことになる。それには事前に、予算の厳しい審査が必要だろう。その決定の性質から、これは専門官僚の委員会でも、大臣たちの会議でも、決められない。これは各国の議会に匹敵する、民主的な権限を持った機関だけが決める。言いかえれば、ユーロ債の発行とは、ヨーロッパ連邦政府の設立を意味するのだ。それはヨーロッパの諸国と住民が認めたものである。

メルケルとサルコジは、明らかに、これを嫌った。彼らの提案は二つに分けられたのだ。最初は、ヨーロッパのガバナンスを強化する。その後、ユーロ圏の結束を強める。

しかし、ユーロ危機は統合を進めるようにうながした。小さな歩みではなく、跳躍せよ。

FT August 28, 2011

Even a joint bond might not save the euro

By Wolfgang Münchau

ユーロ債は、ユーロの導入と同じくらい、新しい制度を準備し、条約を、国によっては憲法を変えなければならない。それは危機に対する解決策として間に合わない。

危機に対しては政治的な意志が必要であるが、ユーロ圏はバラバラだ。救済融資に関して、フィンランドはギリシャに追加の担保を要求した。ドイツ、オランダ、フィンランドがユーロ圏を離脱するかもしれない。メルケルは、先週、毎日その可能性を否定しなければならなかった。しかしこれまで、危機対策のすべてを。メルケルは当初拒んでいたのだ。

短期的には、ECBが債券を購入するしかない。

BLOOMBERG Aug 28, 2011

Euro’s Appeal Masks the Gathering Storm in Europe: Simon Johnson

By Simon Johnson

FT August 29, 2011

A sceptic’s solution – a breakaway currency

By Hans-Olaf Henkel

ドイツの経団連と見える団体the Federation of German Industries (BDI)の元会長で、ギリシャ融資を憲法違反として反対する運動の指導者が、必要な解決策を示します。・・・

ユーロを支持したことは、私が専門家として犯した最大の失敗であった。しかし、拡大する危機に対する解決策はある。

私が変心した理由は三つある。1.政治家たちはマーストリヒト条約を破った。2.ユーロ圏は誰にもふさわしくない。3.ヨーロッパは統合化するより紛争が増えた。

本当の原因を解決せずに、政治家たちは痛み止めを繰り返す。しかしユーロ圏は、金融危機の後遺症、不安定化、ユーロ高に苦しんでいる。

これ以外に仕方ない、と言うのは間違いだ。計画Aは、どのような犠牲を払ってもユーロを守る。しかし、これは無責任な財政移転同盟に向かう。全員が全員の債務に責任を持つ。それは、だれも責任を持たないことだ。債務は累積し、激しいインフレが起きて、生活水準が低下する。

計画Bは、ジョージ・ソロスが示した、秩序あるギリシャの破綻計画である。そしてギリシャはユーロ圏を離脱し、切り下げる。しかし、ギリシャが離脱すれば、ポルトガル、スペイン、イタリアも続くだろう。人々が銀行に殺到する。債務削減は何度も繰り返され、危機はフランスにも及ぶ。

計画Cは、オーストリア、フィンランド、ドイツ、オランダがユーロ圏を離脱し、新通貨を創る。ユーロは安くなり、ユーロ圏諸国の輸出と成長を刺激する。「北部」諸国は輸出を減らすが、インフレを抑えられる。二つの通貨同盟間で、メンバーについての弾力的な合意を結んでもよい。

この計画Cでは、ユーロ圏ではなく、銀行を救う。救済はEUではなく各国が行う。ユーロ圏のギリシャやポルトガルなどへ、ドイツなどは金融保証する。また、この新通貨は新マルクではないが、ドイツ連銀が中心になって管理する。新加盟はユーロと同じように条件を示す。

メルケルがドイツのユーロ圏離脱を決断するのは非常に困難だろう。しかし、助けは南から来る。南部諸国の有権者たちが、北からの説教を嫌って、分離を促すのだ。

SPIEGEL ONLINE 08/30/2011

Head of Euro-Zone Bailout Fund

'The Crisis Will Be Over in Two to Three Years'

By Christian Reiermann

WSJ AUGUST 30, 2011

A TARP for Europe?

SPIEGEL ONLINE 08/31/2011

Interview With Historian Hans-Joachim Voth

'The Euro Can't Survive in Its Current Form'

Interview by Alexander Jung and Gerhard Spörl

ユーロはあとどれくらい生き延びると思いますか? ・・・5年だ。硬直的な労働市場しかなく、各国の通貨価値を変えることはできないからだ。赤字諸国は労働コストを15%ほど下げるべきだ。

2009年は1919年と比較するべきだ。ただし、民主主義が危機に瀕するのは、ドイツではなくギリシャにおいてだ。

WSJ AUGUST 31, 2011

Who Would Bail Out the European Central Bank?

By BENN STEIL AND PAUL SWARTZ

Project Syndicate 2011-09-01

Will the IMF Stand Up to Europe?

Kenneth Rogoff

IMFの新専務理事Christine Lagardeは、ヨーロッパ諸国に破綻した銀行システムの資本増強を強制するように求めた。救済融資を繰り返しても危機は終わらない。


l         グローバル・システム

Project Syndicate 2011-08-26

The Asian Power Squeeze

Gareth Evans

韓国も、オーストラリアも、米中が対立して、どちらかの立場を選択しなければならない事態を恐れている。

中国を安心させて、相互の信頼関係を醸成し、グローバルな核軍縮などを一緒に指導する。10年前にクリントンが述べたことは、今も正しい。

「我々は史上空前の軍事的・経済的なパワーを利用して、永久にグローバルなブロックの最高位に君臨できるだろう。・・・しかし、もっと良い選択は、われわれがその優位を使って世界を変えることだ。我々がグローバル・ブロックの最高位でなくなったときでも、快適に暮らせるように。」

NYT August 27, 2011

All Together Now

By THOMAS L. FRIEDMAN

冷戦終結以来、グローバル・システムは4つの重要な取引によって維持されてきた。今や、この4つが同時に再建されねばならない。すなわち、EUの分裂。アラブ世界の亀裂。中国の成長モデルにかかる圧力。アメリカの信用拡大型資本主義モデルに起きた心臓マヒ。

中東世界から始めよう。この世界の石油タンクは旧モデルを維持できなくなった。どこでも王族や軍事独裁者が石油の富を支配し、潤沢な資金で軍隊と秘密警察を養い、護らせた。重要な集団や国民は買収した。教育を受けられない、仕事のない、屈辱的で、無力な地位しかない若者たちが、このモデルを拒んだ。しかし、崩壊した後には何が来るか、わからない。

北に向かえば、EUがユーロ圏を築いていた。通貨同盟、共通通貨、ただし、財政政策は各国が決める。彼らはドイツ人のように働き、貯蓄すると誓った。しかし、そんなはずはないのだ。巨大な福祉プログラムを創り、財源もないのに政府債務を増やして、貸し手が反対した。北欧の貸し手は支出超過のPIGSに融資しない。厳しい条件を求めるが、不況は深刻化して社会的ストレスが高まっている。

東では、中国モデルが安価な通貨と輸出による成長を続け、消費を抑制して高い貯蓄を維持してきた。それは共産党政府と人民との取引を維持した。仕事と生活水準の改善を約束するから、権力に従え。しかし、その輸出相手であるヨーロッパやアメリカでは失業が増えている。高齢化する前に豊かになりたいが、そのための輸出部門の高度化、知識・サービス分野の革新には、政治的自由や法の支配が求められる。

そしてアメリカだ。この何十年か、信用で膨張した消費を支えてきた。ステロイド(債務)で刺激された中産階級の筋力(教育)は衰える一方だ。新しい政治によって、支出削減と増税、税制改革を組み合わせ、インフラ・教育・研究開発に投資しなければならない。しかし、どちらの政党もその用意がない。

ますますアメリカの指導力が求められる。戦時にしか発揮できないような指導力だ。それがなければ、アメリカの危機は長引き、グローバルな危機をもたらす。

FT August 29, 2011

2011, the year of global indignation

By Gideon Rachman

これほど多くの国で、世界中に街頭抗議や大衆の反乱がおきた世界を観たことはない。2011年はグローバルな憤怒の年になりつつある。

チュニジア、エジプト、リビア、シリア。ヨーロッパでは、アテネ、マドリード、ロンドン。インド、中国、チリ、イスラエル。

それらは全く違っている。イギリスでデパートを襲う若者と、リビアで自由を求める者とは違う。しかし、それらに共通しているのは、国際的に結びついたエリートに対して、成長の利益から排除されたと感じ、腐敗や汚職に憤慨した普通の人々が抗議していることだ。

急速な成長の代償として、所得分配が不平等化することを受け入れてきた。中国のケ小平や、イギリス労働党のピーター・マンデルソン、チリやインドがそうだった。しかし多くの国に、平等主義的な政治運動が強く残っている。インドの汚職追放運動はガンジーの伝統を受け、イスラエルでは政府の自由市場政策が批判されている。マドリード、パリ、アテネで人々が叫ぶのは「ヨーロピアン・ソーシャル・モデル」だ。

グローバルな政治的ムードが形成される仕組みは謎である。おそらく2011年は、1968年や1989年に匹敵する年になる。

唯一の驚くべき例外は、アメリカだ。グローバリゼーションの同じ対立する特徴がみられるにもかかわらず、アメリカに暴動は起きていない。アメリカには強い個人主義的文化と、成功報酬も膨大だが、悪は懲らしめるという信念がある。どれほど高位の権力者も(IMF専務理事でも)方に従い、汚職は許さない、というメッセージだ。

FP AUGUST 31, 2011

Crisis Convergence

BY GEORGE MAGNUS

グローバル・システムの最も弱いリンクが破壊された。中東だ。それはヨーロッパやアメリカの経済にも影響する。バーナンキは量的緩和による刺激を与え、グローバルな金融市場に不安定さをもたらす。

さまざまな矛盾は中国の成長モデルに圧力となって襲いかかる。

FP AUGUST 31, 2011

Is There a Map to the Future?

BY ROBERT HUTCHINGS

世界のパワーと影響力は、最も深刻なシフトを生じている。それにもかかわらずアメリカを含む諸国の政府には、長期の、戦略的見通しがない。NICはそれを試みた。


NYT AUGUST 28, 2011

The Meaning of Utopia

By YVES CHARLES ZARKA


SPIEGEL ONLINE 08/29/2011

Ex-Foreign Minister Fischer

Berlin has 'Lost Touch with Reality'

Project Syndicate 2011-08-30

Europe’s Shaky Foundations

Joschka Fischer


l         中国

FT August 29, 2011

Chinese tycoon seeks to buy tract of Iceland

By Andrew Ward in Stockholm and Leslie Hook in Beijing

FT August 30, 2011

Water is the new weapon in Beijing’s armoury

By Brahma Chellaney

アジアの水源を国際共同管理する体制と、ダム建設において、中国はアジア諸国への強い影響力を確立する。

Project Syndicate 2011-08-30

A Long March with China

Wenran Jiang

中国の台頭は事実である。

空母やミサイル、潜水艦、次世代の戦闘爆撃機の数が問題なのではない。「アメリカと中国は戦争するつもりなのか?」 と、Fu Ying副首相は中国の懸念を述べた。問題は、中国が得た新しい経済的・軍事的パワーを、何に使うつもりなのか、である。

世界の主要諸国が互いを誤解することで衝突に至ることは避けなければならない。双方が、忍耐強く、創造的な意味で、不断に関与を深める政策を続けることしかない。

FT September 1, 2011

Superpower China: inevitable or fragile?

by Simon Rabinovitch

FT August 31, 2011

Hard to see the wood for the trees in China

By David Pilling

FT September 1, 2011

The big questions China still has to answer

By Robert Zoellick

世界経済は、金融危機に対して、これまで金融政策と財政政策で対処してきた。しかし、今や持続的な成長を再生するためには、それだけでは不十分だ。雇用と生産性上昇をもたらす構造的なダイナミズム、そしてグローバルな場ナンスの回復に向けて行動しなければならない。

中国政府は、その成長モデルが維持できないことを認めている。30年にわたって、中国は輸出と投資に依拠した年平均10%の高成長を実現した。もしこのまま2030年まで成長すれば、韓国経済が15個増えることになる。それは(輸入する側で)できない。また、中国内部で基本的な構造変化を実現しなければ、「中所得の罠」に陥るかもしれない。

中国政府と世界銀行の専門スタッフは、共同で、世界経済の不均衡を調整する過程で欠かせない、中国経済の不均衡調整を考える。この協力は、何が必要か、だけでなく、どうやって実現するか、という問題にまで進む。

中国を加えて、世界の指導者たちは明日の成長のエンジンをデザインする必要がある。

FT September 1, 2011

South China spree

WSJ SEPTEMBER 2, 2011

Chinese Monetary Reserve-ations


l         911から10

FP AUGUST 29, 2011

The Black Hole of 9/11

BY DAVID J. ROTHKOPF

911は過大評価されやすい事件だった。我々は911を真珠湾攻撃のように扱い、新しい世界大戦が始まったかのように語った。それは、アルカイダに限らず、アメリカの生活スタイルを破壊する様々な敵だった。我々は文化戦争を語り、世界の分割を語った。安全保障の専門家たちとシステムの全体が、数1,000人の容疑者を追跡した。それは狂気だった。

しかし、今や正気を取り戻しつつある。イラクから撤退し、アフガニスタンからも撤退し始める。ビン・ラディンとその支援者たちは葬った。そこで、この10年を振り返り、歴史の正常な感覚を取り戻そう。911よりも重要な事件を10だけ考える。

10.アメリカの反応。・・・9.アラブの春。・・・8.アジアの再バランス。・・・7.アメリカと旧開発世界の景気停滞。・・・6.ソーシャル・メディアの発明。・・・5.携帯電話と持ち歩けるコンピューターの普及。・・・4.2008年の金融破たん。・・・3.2011-12年のユーロ危機とユーロ圏崩壊。・・・2.地球温暖化対策の失敗。・・・1.中国とその他の新興諸国の台頭。

Project Syndicate 2011-08-31

9/11 in Perspective

Richard N. Haass

911は歴史を変えなかった。「テロとの戦争」に関心が集まったけれど、この10年間で最も重要な事件は、情報技術革新とその普及、グローバリゼーション、イラクとアフガニスタンでの戦争、中東における政治変化、であろう。

テロがこの世界から完全に消滅することはないだろう。国内におけるテロの発生もある。必殺の対策はないのだ。パレスチナ国家ができて、カシミールの和解が成立し、失業や貧困が減るのは良いことだ。中東やその他の世界で、政府がより民主的に振る舞い、人々を阻害してテロに走らないようにすることだ。しかし、それはわかるが、実現するのは非常に難しい。

何よりも、社会がテロを受容しないことだ。両親、教師、コミュニティーの指導者が、テロへの勧誘を許さない。テロがその能力より前に、容認する社会を失うように。

FT September 1, 2011

No, 9/11 did not change the world

By Philip Stephens

Project Syndicate 2011-09-01

Ten Years after the Mouse Roared

Joseph S. Nye

911の最も重要な教訓は、半世紀前にアイゼンハワーが述べたものだ。「占領に関する地上戦には関与せず、アメリカはその強い経済を維持することに集中するべきだ。」

Project Syndicate 2011-09-01

The Price of 9/11

Joseph E. Stiglitz


l         金融市場の混乱

FT August 30, 2011

Struggling with a great contraction

By Martin Wolf

8月の金融市場の混乱が意味することは三つある。1.債務に苦しむ高所得経済は脆弱だ。2.投資家たちは政治家の問題処理能力を信用していない。3.不安な時期には、何であれ、金でも債券でも、最も危険のない資産を求める。デフレを恐れる者は債券を買い、インフレを恐れる者は金を買い、どちらかわからない者は両方を買う。しかし、経営者は長期の投資を嫌った。

Carmen Reinhart and Kenneth Rogoffの「第二の大収縮」が始まった。もしくは、「日本病」。

二番底を恐れる者が多いけれど、これはまだ最初の不況が長引いているのだ。より深く、より長い。どの国もまだ、2008年のピークを超えていない。アメリカも日本病に似てきたし、デフレを迎えるかもしれない。それは、ハイパーインフレーションよりも恐ろしい。

債務の圧縮と回復の弱さは、どちらも経済的脆弱さの原因であり結果でもある。資産価格の下落が、特に住宅価格の下落が需要を抑えてしまう。成長は期待できず、融資も伸びない。経済は地面に激突するのを避けるだけの脱出速度を得られない。

人々は、メルケル首相やオバマ大統領が問題を解決できないのを見ている。アメリカの政治家たちは政府が働けないようにする点で超党派の同盟を組んでいる。メルケルも同様に、連立政権の相手に足を引っ張られている。どちらからも成長を回復する政策は出てこない。だから投資家たちは不安を深め、リスクを避けようとする。日本のような2%成長とデフレに向かっている。

ルービニが言うように、政策手段はほとんど尽きた。しかしまだ、すべてが失われたわけではない。アメリカは財政刺激策をとる余地があるし、中央銀行も金融緩和できる。問題は、伝統的な思考がそれを禁じていることだ。


FT August 30, 2011

Ugly truths from a bold Lagarde

NYT August 30, 2011

Christine Lagarde’s Tough Message

IMF専務理事としてLagarde求めている。大幅な輸出超過の発展途上諸国が積極的な需要刺激策を取って、グローバルな不均衡を解消せよ。アメリカはもっと積極的に住宅債務の救済を行え。アメリカもヨーロッパも、財政赤字の削減より、雇用創出を重視せよ。その通りだ。

また壊れやすくなっているヨーロッパの銀行に公的・私的な資本を大幅に追加しなければならない。

もし彼女が強力にプッシュし続ければ、いつか政治家たちも目を覚ますだろう。

guardian.co.uk, Wednesday 31 August 2011

Banking reform: ringfencing is the only solution

Will Hutton


FT August 31, 2011

It is right to curtail web anonymity

By John Gapper

インターネット文化を変えるときだ。かつてニューヨーカー誌が描いた。“On the internet, nobody knows you’re a dog.” 「インターネットの上では、誰もあなたが犬だとは知らないよ。」 

たとえば、民主主義が投票の匿名性を求めるように、匿名性は重要だ。しかし、匿名性を例外にした方が、ほとんどの利用者の利益になるだろう。Governments and law enforcement agenies have other mechanisms to track down criminals, whether they are inciting riots on social networks, sending pornography and spam, hacking, or stealing money.


WP August 31, 2011

What Steve Jobs could do for the U.S. working class

By Harold Meyerson


WSJ AUGUST 31, 2011

Singapore Divides Over Elite Rule

By GARRY RODAN

先週の土曜日、シンガポールの大統領選挙があった。それは儀礼的なものであるが、与党である人民行動党People's Action Party (PAP)のエリート主義的な構造とイデオロギーに対する不満を示す機会になった。

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The Economist, August 20th 2011

Asia’s lonely hearts

Asian demography: The flight from marriage

Europe and the euro: The bonds that tie – or untie

Economics focus: An unpalatable solution

Diaspora bonds: Milking migrants

(コメント) アジアの女性が結婚から逃げ出す話は興味深いです。日本で起きていることですが、アジア全体で起きている、というのに気が付きませんでした。再就職は難しく、離婚も容易にできないなら、結婚しない。伝統的な、あるいは、社会的な強制による結婚制度から、教育や雇用の機会を得たアジアの女性たちは逃げ出し、ますます少子化と、男性の失業? 未婚? 国際的な花嫁の売買が増えていきます。

ヨーロッパで問題になっているのは、いわば国家の離婚です。ユーロ債が解決策になるのか? 記事は全面的に支持していないようです。そもそも債券の返済保証に限界がある。他国が保証して金利を下げられるなら、苦しい財政再建策は採用しない。そもそも負担増や格付けの悪化が予想されることをドイツが認めない。

もう一つ面白い記事は、民族離散による海外居住者に債券を買ってもらい、母国の再建に役立てよう、というディアスポラ・ボンドです。

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IPEの想像力 9/5/11

野田総理の誕生に、珍しく欧米の英字紙が日本を論じています。「どじょう」the dojo loachの説明や図解まであります。しかし、英語のたとえ、としては「バカ、まぬけ」を意味します。欧米は、日本的な謙虚さ、を重視しないでしょう。彼らが注目したのは、また替わった、という日本政治の愚劣さです。

The Economistの特集記事を読んでください。日本は、アジアで始まった人口変化の先頭を走っています。それは、結婚の回避、少子化、人口減少・高齢化、に現れています。2010年に、日本人の30歳代の女性は、その3分の1が独身です。そして、その半分以上は結婚しないでしょう。特に、高学歴の、定職を得た女性たちは結婚しません。

日本やアジアでは家族の価値が重視されます。その中には、家事・育児が女性の役割として求められ、さらに、老いた両親の世話も含まれます。彼女たちは仕事を持っても、この負担を免れません。しかも、いったん出産や育児のために退職すれば、再就職はほとんどありません。

アジアの成長は女性の教育水準を高め、雇用の機会を増やしました。こうして独立した女性たちが、結婚という伝統的な家族の檻に閉じ込められるのを嫌うのは当然です。彼女たちは、結婚を遅らせ、自分と同じか、それ以上の所得と学歴を男性に求めます。そして多くは結婚も出産もやめてしまいます。欧米では、育児休暇や社会保障を充実させ、男女の役割分担を変えて、同棲や離婚が増え、婚外出産が増えたそうです。結婚は減っても、独立し自由を得た欧米の女性たちは、子供を諦めません。

私が野田新内閣に感じる不満は、1.増税による復興と財政再建を優先する、2.民主党内の投票だけで誕生した、3.郵政改革にもTPPにも、後ろ向きである、4.野党との協調を優先して、解散・選挙を考えない、という点です。

政府が本当に重要な施策に必要と訴えるなら、増税は受け入れられるでしょう。それこそが子供手当や授業料無料化、高速道路無料化、などでした。財源が無いから失敗したのではなく、旧来の施策と比較して、民主党が目指す政策の説得に失敗したのです。無駄をなくすのは当然であり、それで増税が支持されることはありません。ギリシャやアメリカの財政赤字、ユーロ危機などを例に挙げて、国民を威し、あるいは不安を煽ることが、(官僚ではなく)政府の優れた手腕とは思えません。もっと積極的な社会改革を主張することで、だから財源が必要だ、と説得すべきでしょう。政策体系を転換し、旧政策を廃止しないから失敗したのです。

この半年で議論を進め、2月末に解散してください。日本の変革を唱える政権として、国民の多数から支持を得るために、以下の二つの方針を示すことです。

一つは、女性の社会進出を促し、出産や育児を支援する、という主張です。財政的な支援だけでなく、制度や法律、社会のルールを変えることです。

もっと学びたい、意味のある仕事がしたい、と感じている若い女性は多くいます。彼女たちに多くの機会を保証することが社会を変えるでしょう。伝統的な社会規範や家族の檻に閉じ込められて、自分の能力を活かせない女性たち、出産や育児をあきらめた女性たちに、もっと自由や機会を保証するべきです。女性が活躍する企業や団体を紹介し、積極的な行動や起業を助けます。彼女たちが都市だけでなく、過疎地域にも進出するように、「女性特区」を設けて働く女性を最大限支援してはどうでしょうか? 場所や時間に制約されることが少ない、知識集約型の産業が重要になる過程で、女性の発言力を増すことが社会や政治を変えるのです。

野田政権が自民党を圧倒し、日本を変える積極的な主張がもう一つあります。それは、アジアや世界の安全保障の枠組みを積極的に構築することです。

米軍との協力関係や基地の問題を解決するため、また、アジアの安全保障に関与するため、財源を求めることです。同時に、中国に対してナショナリズムを相互に抑制し、将来に向けた建設的な関係を築くように対話を深めることが重要です。それには二国間だけでなく多角的に、安全保障やアジアの領土問題を扱う枠組みが必要でしょう。

この二つで方針を示し、国民を支持を得たら、時間のかかる財政再建、すなわち、税と社会保障の一体改革を進め、また、郵政改革とTPPを日本の成長力を高める戦略として、その最も頑固な反対派を説得できるような優れた改革案を示し、時間をかけて積極的に推進することです。

まだ生まれたばかりの小さな子供を抱く女性を見かけることがほとんどありません。あるいは、小さな子供を背中の籠にかついで通勤する若いお父さんなんて、まったく見かけません。街はあまりにも静かで、バスに乗っているのは老人ばかりです。

かつて人口増加を恐れる「人口爆発」という表現がありました。アジアにおける人口減少、結婚からの逃避、高齢化と財政破綻、若い女性や子供の国際売買、などは「人口戦争」と呼ぶべきアジアの不安定化を予感させます。

子供を抱いた若い女性を多く見たのはベーシック・インカムの公開講演でした(IPEの風 11/16/09)。社会保障制度や女性の社会進出が増えれば、若者の同棲や結婚、出産は増えます。中高年の離婚や再婚ももっと増えるでしょう。そして、企業行動や政治家も変わるのです。地域を狭く限定して、グローバル・ベーシック・インカムを導入してください。世界中から高学歴の、日本が好きで、才能豊かな女性と子供たちが集まります。

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